リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループでは、リスクマネジメントの最高責任者である社長の下、審議機関として半期ごとに「リスク・倫理会議」を開催し、当社が優先して対策を講じるべきリスクやコンプライアンスに関わるリスクに対する取組について報告し必要事項を決定しています。
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりです。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものです。
(1) 国内外の市場の動向
当社グループは、当社(日本)と世界各地の子会社が密接に連携し、各地域の市場規模や産業構造に応じて販売戦略を策定・実行しています。しかしながら、日本を含む世界各国の政策や景気動向、設備投資動向などにおいて、戦略策定時には予期できなかった変化が当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。また、戦争やテロ行為、疫病の蔓延等がもたらすサプライチェーンの混乱や資源価格の高騰は世界各国の経済活動を停滞させ、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 海外での事業活動
当社グループは、事業戦略の一環として海外市場における事業の拡大を図っており、これを通じて、売上高の増加、コストの削減および収益性の向上を目指しています。海外での事業活動を支える経営基盤を強化し、適正かつ効率的な運営を実現するため、「島津グループマネジメント基本規定」を制定して必要な統制、管理を行っています。さらに各地域の主要な子会社に域内のガバナンスを統括する機能を持たせ、各地域におけるリスクの把握と適切な対応に努めています。最近の国際情勢変化に対しては、社内外のリソースを活用して情勢をモニタリングし、グループ内で情報を共有・周知し、変化に対応しています。しかしながら、海外での事業活動には、予期できない法律や規制および政策の変更、産業基盤の脆弱性、国家間の貿易制限措置および報復措置、テロ、戦争その他の要因による社会的または政治的混乱といったリスクがあるため、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 製品品質
当社グループは、ISO規格の認証を受けた品質システムを構築し、「品質保証基本方針」を定め、開発・製造・販売・サービスなど製品ライフサイクルの各段階での絶え間ない改善を通して、優れた品質で顧客にとって最大の価値を生み出す製品・サービスを提供するように努めています。また、顧客の満足を得る上で、基本的かつ重要である製品安全性のさらなる向上を目指した「製品安全基本方針」により、グループ一丸となって顧客の安全と信頼を最優先に行動することを宣言しています。しかしながら、想定が難しい多様な環境下での製品使用による品質トラブルや製品安全への懸念などが発生する場合には、当社グループの信頼性やブランド力の低下にも繋がり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 新製品開発力
当社グループの事業は、専門性が高く、高度な技術力を必要とします。そのため、新製品・新技術の研究開発には多額の投資を行っていますが、商品化遅れや、市場ニーズを満たす新製品を開発できない場合には、競合力の低下や市場トレンドに沿ったビジネスの取り込みが進まないことにより、将来の事業成長と収益性が低下し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 購買調達
当社グループは、品質および環境面で当社グループの要求を満たす原材料やサービスを安定的に入手するため、信頼のおける調達先を選定しています。また、重要な原材料等について一定の在庫を確保するとともに、代替調達先の選定、特定調達先に依存しないよう自社における生産能力獲得等を実施しています。しかしながら、自然災害や疫 病、事故、調達先の倒産に加え、地政学リスクなどにより、原材料等が不足または供給量が制限され当社グループの生産活動に影響を及ぼす場合があります。また、長期にわたる原材料等の供給悪化や、急激に調達価格が高騰する場合には、機会損失の発生や製品の価格競争力の低下、利益率の悪化等により、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 人材確保
当社グループの事業成長に必要な人材は、研究開発に従事する人材をはじめ、製造業各社にとっても必要な人材候補と重なります。そのため採用活動においては企業間の獲得競争になることがあります。特に当社の研究開発部門の多くが所在する日本では、今後、労働人口の減少を背景に、社内需要を充足出来なくなるリスクがあります。また、当社における人材定着率は比較的安定していますが、日本の労働市場における人材流動化が一層進展した場合、社員の離職が増加するリスクがあります。これに対応するため、当社ではインターンシップやカムバック採用などの多様な採用活動を通じて、グローバル人材、博士等の専門人材、即戦力人材の採用に力を入れています。また、人材流出を防ぐための魅力的な処遇への改善や柔軟な勤務制度の整備、社員の強みを活かす複線型人事制度の導入、自律的なキャリア形成を支援する社内公募制の実施、65歳定年制による豊富な経験やスキルを持った人材の確保を通じて、事業への影響を低減させるべく取り組んでいます。しかしながら、有能な人材の確保が出来ない場合や、人材流出を防止出来ない場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 法令・規制
当社グループは、グローバルに様々な事業を展開しているため、安全保障貿易管理、贈収賄防止、独占禁止法令など、国内外の各種法令、行政による許認可および規制の適用を受けており、その遵守に努めています。また、当社グループでは、法令の遵守のみならず、社是・経営理念・島津グループサステナビリティ憲章のもと、役員および従業員が共有・遵守すべき倫理規範を「島津グループ企業倫理規定」として定めています。集合研修やEラーニングなどの教育活動により、当該規定の内容を啓発・浸透させることでコンプライアンス上の問題発生の予防に取り組むとともに、上記法令等への対応状況を適時にモニタリングすること、相談・通報窓口を社内外に設置し、問題発生時の報告体制を整備することなどにより、当社グループにおけるコンプライアンスの実効性を担保しています。しかしながら、法令・規制に対する理解が不十分、または予期せぬ変更への対応が適切でない場合等には、コンプライアンス違反と判定され、過料、課徴金等による損失や営業停止等の行政処分、または信用の低下などにより、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 知的財産権
当社グループは、現在の事業活動および将来の事業展開に有用な知的財産権を取得できるよう、研究所、事業部、知的財産部が一体となり知的財産創出活動を行っています。一方、他社知的財産権の調査・検討体制を整備し、問題発生を未然に防止するよう努めています。また、技術者を対象とした知的財産研修会を定期的に開催することにより、技術者の知的財産に対するスキルの底上げを図っています。しかしながら、権利範囲の解釈によっては他社との間に知的財産紛争が生じる場合があり、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 環境規制・気候変動への対応
当社グループは、気候変動、水質汚濁、大気汚染、騒音、土壌汚染、廃棄物、使用する有害化学物質などにおいて、国内外の様々な環境法令および規制等の適用を受けており、その遵守に努めています。さらに、ISO14001の国際規格に基づいた環境マネジメントシステムを構築し、第三者認証を受けています。「TCFD:Task Force on Climate-related Financial Disclosures(気候関連財務情報開示タスクフォース)」提言に賛同し、気候変動対策を含めた環境情報の適切な開示を行うとともに、環境課題の解決に向けてリスクや機会を踏まえながら適切に取り組んでいます。しかし、将来、環境規制への適応が極めて困難な事象や不測の事態が発生する場合には、環境対応に関する費用の増加や事業活動の停止など、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティ
当社グループは、事業活動における重要情報や顧客から入手した個人情報などの機密情報を保有しています。当社グループでは、IT資産の盗難・紛失などを通じた情報漏洩や、サイバー攻撃による改ざん・流出・システム停止等の被害を防ぐために情報セキュリティ推進体制を構築し、「情報セキュリティポリシー:セキュリティ基本方針」を定め、外部からの不正侵入防止、データの暗号化、社外向けWEBサイトの情報漏洩・改ざん防止などのセキュリティ対策を実施しています。また、ネットワークやIT資産に対するセキュリティ対策はもとより、従業員への定期的な情報セキュリティ教育も実施しています。しかしながら、想定を超えるサイバー攻撃や、予期せぬ不正利用などにより、重要情報や個人情報の漏洩や事業活動停止などの被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 自然災害等
当社グループは、大規模地震を始めとする災害や新型インフルエンザ等の感染症の発生等を想定し、必要とされる安全対策の実施、早期復旧のための事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの導入、防災訓練等の対策を講じています。また、新型コロナウイルス感染症への対応を通じて、感染症の感染拡大防止のための様々な知見を獲得しました。しかしながら、当社グループの事業活動はグローバルに展開されていることから、新たな感染症の流行、自然災害等が発生する場合のリスクを全て回避・管理することは困難であり、想定外の規模の被害が発生する場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 為替変動の影響
当社グループは、グローバルに事業を展開しているため、外国通貨建て取引にかかる事業活動は為替変動によるリスクに晒されています。為替変動リスクは、現地生産体制や、為替予約等により、最小限に抑える努力をしていますが、影響を完全に排除することは困難です。また、連結財務諸表の作成においては、各地域の現地通貨建ての項目を円換算しているため、換算時の為替レートにより、換算後の価値が変動します。通常、他の通貨に対する円高は当社グループの事業に悪影響となり、過度な為替相場の変動は、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 国際税務
当社グループは、グローバルに事業を展開しており、グループ内でも相互に取引を行っていることから、移転価格税制等の国際税務リスクが伴います。各国の税法に準拠した適正な納税を行っており、国際税務リスクについて細心の注意を払っていますが、各国の税制の変化や税務当局との見解の相違等により、予期せぬ税負担が発生し、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要な政策の一つとして位置づけています。
配当につきましては、収益やキャッシュ・フローの状況を総合的に勘案しつつ、配当性向30%以上の維持と継続的な株主還元を実施していくことを基本方針としています。また、内部留保資金につきましては、持続的な成長に向け、財務健全性を確保しながら、社会価値創生領域での成長投資および人財/開発/製造/DX関連の基盤強化への投資に重点的に活用してまいります。
当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としており、会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めています。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会です。
なお、当事業年度の剰余金の配当はつぎのとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2023年11月7日 |
7,075 |
24.00 |
取締役会決議 |
||
2024年6月26日 |
10,613 |
36.00 |
定時株主総会決議 |