2026年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 517 100.0 -1,360 - -263.4

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社イーディーピー)及び子会社2社により構成されており、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業を主たる業務としております。

なお、当社グループは、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

 

当社はダイヤモンドの持つ優れた特性を広く利用する応用を開拓することで、ダイヤモンドを宝石として以外の価値を生み出して行くことを目標として2009年に設立しました。特にダイヤモンドの半導体としての特性は、理論的には非常に優れているとされていましたが、実際に利用する場合には、素材が応用に適した形状等になっていないという課題があり、その解決を目指しました。それは現在も続く課題で、半導体製造プロセスに使用する大面積のウエハを開発することです。当初より、この課題解決には長期間を要すると見込まれましたが、平板上のダイヤモンド単結晶を製作する技術を産総研から移転して、これを果たすことを目指しました。しかし、設立から3年程度で人工宝石製造がビジネスとなり始め、人工宝石製造に用いる元となる結晶(以下、「種結晶」という。)を大量に供給するビジネスを開始し、企業規模を拡大しました。

人工ダイヤモンドは宝石や研磨剤として60年以上前から広く使われています。1955年に超高圧合成法(注1)による人工合成技術が開発され、1981年には気相合成技術が開発され、各種の応用に人工ダイヤモンドが使用されています。宝石については、天然ダイヤモンドが使用されてきましたが、10数年前から人工ダイヤモンドの製品が出始め、今では相当量の人工宝石が宝石店やネットで販売されております。このような人工宝石は、ラボラトリーグローンダイヤモンド(人工ダイヤモンド:以下、「ラボグローンダイヤモンド」という。)と呼ばれ、既に欧米のみならず全世界において、市場における認知が進んでおります。

当社はこの人工宝石を製造する手法の一つである気相合成法において、宝石を成長させるための元となる「種結晶」を主要製品として、2012年以来販売してきました。販売先のラボグローンダイヤモンドのメーカーは、この種結晶を厚く成長させて原石を作り、これをカットと研磨を行い、宝石を作ります。最終的には指輪等の宝飾品に加工して、消費者に届きます。従って、当社は、ラボグローンダイヤモンド市場のサプライチェーンにおいて、最上流のポジションに位置しておりました。当社は産総研の開発した大型ダイヤモンド結晶製造技術を移転し、それによって平板状の単結晶から種結晶を製造し、ラボグローンダイヤモンドを製造する企業への販売を主なビジネスとして行ってきました。

当社が販売しております種結晶は、7x7mm~15x15mmの正方形で、厚さが0.2mmや0.3mmの薄い板であります。人工宝石製造会社は、これを気相合成法によって、3~10mmの厚さまで成長させます。成長しますと形状としては粒状あるいは厚い板状の宝石の原料となる結晶(原石)ができあがります。このような結晶を、カットし研磨しますと、ルース(裸石)になり、これを指輪等の宝飾品に取り付けます。当社のユーザーは原石を作っている企業でありますが、多くの場合、原石を製作する企業は、ルースまで製作し、自ら宝飾品を製造したり、宝飾業者や宝石店にルースを販売しております。当社は種結晶は直接もしくは商社を通じて人工宝石製造会社等に供給してきました。一方、当社の生産技術は、産総研が開発した手法を元にしており、この技術の知的財産権は産総研が有し、当社は特許等実施許諾契約(契約期限2026年10月31日)を締結しており、当該契約に基づき、他の製品を含み、販売した製品金額から算出した実施料を、産総研に納入しております。

当社のこのような事業は、グローバルに展開していますが、その事業系統図を以下に示します。

当社種結晶の事業系統図

宝石や研磨剤は、粒状のダイヤモンドを利用していますが、電子部品や光学部品等として利用する場合は、通常は板状の材料を使用します。当社は、ダイヤモンドの単結晶を、ガスから成長させる人工的な手法で製作し、これを電子材料の分野などへも工業材料として販売しております。一旦作製した粒状のダイヤモンドを切断して板状のダイヤモンドを作るのではなく、直接板状の単結晶ダイヤモンドを製造できることが大きな特徴です。これによって、砥粒(注2)や宝石分野以外の応用分野にとっては適用しやすいとともに、当社が採用する気相合成法以外の他の製造手法や競合他社に比べ大型で良質な単結晶が製造できるという、優位性を持っております。

現在では、当社の製品は、次第に一般的になってきている人工宝石製造に用いる元となる種結晶、ダイヤモンドを半導体材料として様々なデバイス(注3)へ使うための基板、高発熱のデバイスを冷やすための材料(ヒートシンク)、原子レベルまでの精度が要求される精密加工切削工具等の分野において利用されております。当社はこれらの分野へ製品を開発し、出荷しております。

 

ダイヤモンドは硬度が最も高いことから、従来から、石材などの硬質材料を切断、研磨する砥石として広く使われており、このための微小(0.3mm以下のもの)なダイヤモンド砥粒も、従来から一般的に人工合成技術によって作られておりました。一方で、ある程度のサイズを持ったダイヤモンド単結晶は、宝石としては多くの人の目に入るものですが、切削工具や光学部品として、工業用にはごく少量しか使われておりませんでした。最近になって、人工合成手法によって、ダイヤモンド宝石材料を製造する技術が完成し、大量の生産が行われるようになりました。当社のダイヤモンド単結晶は、この製造において重要な役割を果たす種結晶として使用されております。

当社のダイヤモンド単結晶製造技術は、産総研によって基本技術が生み出され、当社がこれを実用化するために、数々の開発を進めてきました。産総研はこの技術について基本的な知的財産権を持っており、当社は「産総研発ベンチャー」としてこれらの知的財産権の独占的実施権を有しています。

 

(1) 当社の製造技術

①ダイヤモンドの人工合成技術

ダイヤモンドは一般には天然に産するものと考えられていますが、現在使用されている工業用ダイヤモンドのほとんどは人工合成で製作されています。ダイヤモンドの人工合成法は1955年に超高圧合成法が確立し、その後当社が採用する気相合成法を含む他の2種法が登場しました。

この中で気相合成法は、メタンなどの炭素を含んだガスを、何等かの手段で活性化し、1,000℃程度の温度でダイヤモンドを生成する方法であります。1981年に、日本の無機材質研究所(現在の研究開発法人物質材料研究機構)が発表して、その後多くの研究者が取り組んだ手法です。気相合成法とは物質形成手法の一つで、基本的には気相(ガス)から物質が生じる現象を利用します。気相から元素を取り出す方法が2種類あり、物理的な手法(Physical Vapor Deposition ; PVD)と、化学的な手法(Chemical Vapor Deposition ; CVD)の2つに分類されます。この内、CVD法のみでダイヤモンドを生成することができます。

CVD法では、ガスを原料として使用し、温度を上げる方法やその他の手段により、目的の物質を作り出すための反応を促進します。ガスの活性化の手段の一つが放電現象によって発生するプラズマ(注4)であり、プラズマを利用することで、目的の物質を作り出すことが可能であります。当社は、ダイヤモンドを成長させる手段として、プラズマを利用する「プラズマCVD法」を使用しております。

プラズマCVD法以外の手法でも、金属やセラミックス上にダイヤモンドを形成できますが、その場合は多結晶(非常に小さい単結晶粒子が固まったもの)のダイヤモンドとなります。単結晶のダイヤモンドを生成させるには、ダイヤモンド単結晶の上に成長させることが必要です。ある種のCVD法では、成長したダイヤモンドに、金属などの不純物が結果的に混入してしまう手法があります。当社のダイヤモンドを利用する製品用途では、ほとんどの場合純粋なダイヤモンドを成長させることが必要で、そのために成長させるための成長手法は限定されます。また、厚さ方向への成長速度が速すぎると、結晶が乱れたり、多結晶が発生することがあり、成長速度を制御できることも重要な要素です。

不純物の混入がほとんどなく、成長速度を制御できる方法は、プラズマCVD法です。この方法は、反応ガスを放電などで生成するプラズマによって分解するもので、プラズマ生成手段は色々ありますが、当社は、この手段として2.45GHzの電波であるマイクロ波(注5)を採用しております。

各プラズマ発生源(装置)がダイヤモンド成長にとって有効であることは確かめられていますが、安定性と不純物制御の観点から、当社はマイクロ波を選択しています。使用できるマイクロ波の周波数は電波法などで管理されており、2.45GHzもしくは915MHzの周波数の電波を使うことができます。当社は現在、2.45GHzのマイクロ波を使った装置で、ダイヤモンドを成長させています。この装置では、概ね直径約5cmの領域に、ダイヤモンドを形成できることが知られています。この装置の大きな特徴は、長時間の運転を安定して行うことができることや、数mmといった厚いダイヤモンドを製造することができることであります。

 

②ダイヤモンド単結晶を成長させる技術

単結晶とは、一つの結晶(構成する分子が規則正しく並んでいる状態)でできているもので、天然に産するダイヤモンドはほとんどが単結晶です。多結晶は、微小な単結晶が集まったもので、結晶と結晶の隣り合う部分は結晶粒界と呼ばれ、分子の整列状態が乱れた状態になっています。

ダイヤモンド単結晶を、CVD法のダイヤモンドが成長できる条件下に置くと、その上を覆うように単結晶が積み上がってきます。ここでは、成長させるための結晶を「親結晶」と言い、成長した結晶を「子結晶」と称します。成長した子結晶は、成長させた親結晶と同じ原子配列となるので、成長後には親結晶と一体の単結晶となります。成長装置形状等による限界はありますが、数mmといった厚さまでの成長は、各種の成長装置で実現しています。

単結晶の成長速度は1時間当たり1µm~20µmとされています。つまり、1mm程度の厚さを作るのに、50時間(20µm/時間)~1,000時間(1µm/時間)が必要な成長速度です。成長速度によってでき上がる結晶の特性は変化し、遅い成長速度である程、高品質の結晶が得られます。成長速度が遅ければ、成長に要する製造コストは高くなります。従って、求められる結晶品質によって、成長の条件を選択することが重要です。

気相成長した結晶の品質は、成長速度だけで決まるのではなく、混入する不純物や子結晶を成長させる親結晶の品質によっても左右されます。不純物としては窒素(N)が代表的な元素ですが、成長中の反応ガスに含まれる窒素濃度が変化すれば、広い範囲の結晶品質の変化が見られます。高窒素濃度の成長では、見た目にも黒くなり、結晶品質が悪くなります。また、親結晶に結晶欠陥(分子の整列が乱れた部分)が多数あると、成長した結晶にこの欠陥が引き継がれます。引き継がれる程度は、成長条件によってある程度制御は可能ですが、一般的にはより良い親結晶を使うことは、より良い子結晶を成長させることになります。また、同じ成長条件で同じ親結晶を使っても、成長前の親結晶の表面が汚れていれば、それが子結晶の品質悪化の原因ともなります。

多くの半導体材料(シリコン、ガリウムひ素、炭化ケイ素等)は、小さな種結晶を成長させて大きくしており、シリコンの場合では30cm(12インチ)の直径を持つ単結晶ウエハも製作できます。ダイヤモンドの気相からの成長では、この様に結晶の面積を拡大する方法は見つかっていません。すなわち、あるサイズの親結晶から成長させても、親結晶のサイズよりそれほど大きくはならず、ただ単に厚さが増すだけです。従って、ダイヤモンド単結晶の成長では、必ず最終的に必要なサイズの親結晶を使う必要があります。

単結晶を大型化するには、結晶の成長方向を変えて、繰り返し成長することが唯一の方法です。当社でも4x4mm程度の小さな元結晶から、成長させる方向を6回ほど変更することで、12x12mm以上の面積を持つ大型単結晶を製作できました。しかし、この手法を使っても、装置内でダイヤモンドが成長できる大きさには限界があり、製作できる形状も限られます。また、複数回の成長を繰り返すため、大型結晶にするには非常に長時間の成長を安定的に行うことが必要です。

2025年2月13日には、以下の写真に示すような、世界最大級の30x30mm単結晶を基板として製品化することに成功しまし、それを公表しました。この大型単結晶を開発するのには、2年以上の期間を要しました。

                 30x30mmの単結晶ダイヤモンド

このようにして成長したダイヤモンドは、原子の配列が完全なダイヤモンド単結晶であり、不純物を少なく制御できれば、純粋なダイヤモンドとなります。宝石として使用されている天然ダイヤモンドのほとんどは、0.2%程度窒素を含有していますが、上記のように製作したダイヤモンドは、窒素量を0.0001%以下(1ppm)まで制御することが可能です。純粋で結晶欠陥の少ないダイヤモンドほど、宝石としての価値も高くなりますが、高品質が必要となる半導体材料や光学材料としても適した性質を実現しています。

 

③当社の大型単結晶製造技術

当社は産総研の技術を基にして、板状のダイヤモンド単結晶の量産技術を確立してきました。産総研の開発した大型単結晶の製造技術は、以下の2つの特徴ある技術によって構成されており、その特許を産総研が保有しています。

a.イオン注入法(注6)を用いた、成長した単結晶の親結晶からの分離技術

b.モザイク結晶の製造法(複数の単結晶を接続し、大面積の疑似単結晶を製作する技術)

以下、これらの技術について概要を説明します。

 

a.イオン注入法を用いた、成長した単結晶の親結晶からの分離技術

上記のように、ダイヤモンド単結晶上にダイヤモンド単結晶を成長させると、一体になった単結晶ができます。親結晶と子結晶は、同じ結晶であるので境界は存在しません。子結晶を親結晶から剥がさなければ、親結晶をもう一度使うことができません。ダイヤモンドの切断は、レーザーによって行うことができるため、成長したダイヤモンドをレーザーによって切り離すことが考えられます。

数mm程度の小型のダイヤモンドをレーザー切断するのは短時間で可能で、大出力のレーザーも必要ありません。切断部分が20x20mmといった大きさになると、レーザーがダイヤモンドに入り込む深さが限定されますので、切断に非常に長時間を要します。このことは切断コストが高くなることを意味し、現在のところ強力なレーザーを用いても工業的に切断できる大きさには、30x30mmといった形状の限界があります。

近年利用が進んできたウォータージェットレーザーを使えば、ある程度大きな結晶を切断することは可能です。しかし、ダイヤモンドデバイス生産で要求されているのが2インチ(5cm)ウエハと呼ばれる円盤状のダイヤモンド単結晶で、この場合は直径5cmを横に切る必要があり、実現はかなり難しいと考えられています。そこでレーザー切断以外の方法で、以下の図に示す成長した結晶を切り離す技術を開発しました。

 

親結晶からの分離技術

 

 

この方法は、イオン注入を用いて、切り離す方法です。イオン注入は、非常に高いエネルギーにより加速したイオン(電荷を帯びた分子等)を、物質表面にぶつける手法で、半導体デバイスの製造において不純物元素を半導体材料に入れるために使用されています。少量のイオンが入った場合には、結晶は元のままを維持できますが、多量にイオンを注入した場合には、表面から侵入したイオンが一定の深さで止まりますが、その部分の結晶を乱します。当社ではダイヤモンドに炭素イオンを打ち込みますが、イオンが止まった部分で結晶を崩し、カーボン状の領域を作ります。しかし、一定の厚さの最表面はイオンが通過することができるので、ダイヤモンドの結晶は崩れておらず元の整列した状態を維持できます。どのような深さまで侵入するかは、イオンの種類、イオンの加速エネルギー、注入する相手物質の結晶構造によって異なります。

ダイヤモンドの場合は、C+(炭素原子の電子が一つ少ないイオン)を使ってイオン注入していますが、ダイヤモンドを構成する炭素ですので、不純物混入の心配がなく処理が可能です。1MeV(メガエレクトロンボルト;1,000,000Vの電圧で加速した状態)のC+イオンは約1.2µmの深さに侵入し、その周辺の結晶を崩します。上記のように、これでも最表面はダイヤモンドの結晶が元のきちんとした整列状態を維持しています。

マイクロ波プラズマCVD法で、このイオン注入した結晶の表面にダイヤモンドを成長させると、最表面の結晶が崩れていませんので、ダイヤモンド単結晶が成長できます。所定の厚さまで成長させた後でも、この親結晶と成長した結晶は、離れていません。これを、電気化学的な手法を用いて、結晶が崩れた薄い部分を除去します。そうすると、先に成長したダイヤモンドが親結晶から分離して、板として取り出すことができます。

イオン注入によって結晶が崩れる部分は、わずか1µm程度の薄い層ですので、エッチングによって喪失する部分はごくわずかです。従って、親結晶はこの分離作業が完了した時、イオン注入前の形状で少しだけ薄い状態となります。その表面に再度イオン注入を行って、同じような手順で新たな子結晶を製作することも可能です。分離した子結晶は、基本的には親の結晶と同じ形状で、成長した厚さの板状です。厚さは成長時間で制御できますので、必要な厚さまで成長を行えばいいということです。

この手法は、面積が大きな親結晶を使っても、同じように実現することができます。すなわち、大型の親結晶が製作できれば、その後は、その同じサイズの単結晶を次々に製作できます。デバイスの製作を目指すなら、2インチ(直径5cm)の親結晶を開発できれば、2インチの薄い板が製作できます。

 

b.モザイク結晶の製造法(複数の単結晶を接続し、大面積の疑似単結晶を製作する技術)

2インチのウエハを作るために、2インチの単結晶を作る必要がありますが、これはまだ実現していません。現在においては、30x30mmの単結晶が最大の形状であり、2インチにするためにはこれを接続して、2インチの大きさにすることが考えられます。そこで、横方向の接続方法が開発されました。

上記の分離技術を使い、同じ親結晶から複数枚の子結晶を製作します。この子結晶を横に並べ、その上にさらにダイヤモンドを成長させると、複数の子結晶は新たに成長した部分でつながります。このようにして、1個の結晶ではなく、複数個の連結した結晶を得ることが可能です。当社ではこのような連結した結晶のことを「モザイク結晶」と呼んでいます。

モザイク結晶を作る際の問題は単結晶同士の連結部分の結晶の品質にありました。連結部分はいわゆる結晶粒界になるのですが、この状態が悪くなると、その部分に多結晶ができ、見た目にも黒い線ができます。隣り合わせる結晶は、表面の結晶方位(注7)を合わせなくては、きれいに接続できませんが、それでも微妙な結晶方向の違いが発生するために、境界をきれいにすることは難しいことが知られています。

産総研の開発した技術は、以下の図に示すように、複数個の結晶を同じ親結晶から、上記a.の技術を使って分離した子結晶を使います。

モザイク結晶の製作技術

同じ親結晶から複数個の結晶を作ることで、結晶面の揃った複数個の結晶を得ることができます。これを横に並べ、その上に成長させることによって連結し、境界がきれいなモザイク結晶を得ることができます。以下の図(30x30mmのモザイク結晶の写真)はこのような当社のモザイク結晶の例であります。9個の約10x10mm単結晶が接合され、30x30mmの大きな一つの結晶として扱うことが可能であります。

 

 30x30mmのモザイク結晶の写真

 

 

 

④生産プロセスへの適用

当社の生産プロセスの全容は、以下の図のとおりであります。

 

当社の生産プロセス概略図

当社の生産技術で重要なことは、製作したモザイク結晶を使って、親結晶からの分離技術を使い、同じサイズのモザイク結晶を作ることであります。いわばモザイク結晶の複製を作り続けることで、多くの同じサイズのモザイク結晶を製作しております。結晶粒界の内側は単結晶であり、その部分を切り取れば、単結晶の製品とすることができます。

モザイク結晶を親結晶として、親結晶からの分離技術によって、比較的薄い板を製作します。製品ごとにダイヤモンドの厚さへの要求は異なりますが、厚い製品場合は分離した結晶にさらにダイヤモンドを積み増して、所定の厚さとします。

所定の形状への切断は、レーザーで行っています。丸や四角形等の形状を、数10µmの長さ精度で切り出すことができます。製品によっては表面の研磨が必要で、当社はスカイフ(注8)と呼ばれる手法で、10µm程の粒径を持った砥粒を研磨剤として使って研磨しております。

イオン注入を用いて成長した結晶を分離する手法は、個々の単結晶を使っていると、煩雑となるため、当社は複数個の単結晶を接合したモザイク結晶を使用しています。すなわち、上図の親結晶は、10x10mmの単結晶が2~9つ接合したモザイク結晶となります。完成する薄板も、同じように2~9個の単結晶が接合したモザイク結晶を得ることができます。一つ一つの単結晶サイズが大きくなると、単結晶部分の面積が大きくなり、大きい単結晶製品を製作することが可能となります。

親結晶は、複数回使用することが可能ですが、表面状態が悪くなれば、再研磨を行ってきれいな表面に仕上げます。何度かこれを繰り返すことができ、一つの親結晶から20個以上の子結晶を得ることも可能であります。しかし、永久に親結晶を使えると言う訳ではなく、ある程度使用しますと割れたり、大きな欠陥が入ったりしますので、そのような状態になれば、親結晶としての使用を止めます。

親結晶は常にイオン注入する面の状態を、良い状態にすることが必要であります。イオン注入を経て、分離が終わると、新しい子結晶の特性は、親結晶の表面状態の影響を強く受けます。親結晶の管理は、当社製品の特性を良好に保つために、重要な管理項目であります。当社は単結晶製品を大量に製造していますので、このモザイク親結晶を多数保有し、これらを次々に生産プロセスに投入し、分離したモザイク子結晶素材を使って製品を製作しております。

成長はマイクロ波プラズマCVD法と呼ばれる手法で、安定的に良質の単結晶を成長させることができます。成長を薄い状態で止めれば、薄い素材ができます。また、一旦分離した素材をさらに積み増して、厚い素材を作ることもできます。現在のところ、製作できる結晶の厚さや大きさは、以下のような範囲です。

 a.大きさ:1x1mm~38x38mm(モザイク結晶を含む)

 b.厚さ:0.03mm~3mm

モザイク結晶を構成する最大の単結晶は、現時点では30x30mmですので、モザイク結晶から作る単結晶の最大の大きさは30x30mmです。30x30mm以上の大きさの場合は、モザイク結晶を製品としています。

当社は、このモザイク結晶で2インチウエハを製作することを検討しており、2026年5月27日に、上記の30x30mm単結晶を4個接続し、53x53mmのモザイク結晶の製作に成功したことを公表しました。これによって、2インチウエハが製作可能なモザイク結晶が完成しましたので、それにイオン注入を行って、子結晶を分離する技術で2インチウエハを製造する計画です。

 

(2) 当社製品の特長

 当社の単結晶は、上述の生産工程に関連して、以下に示すような特長を持っています。

①大型の単結晶

当社は、大型の単結晶を、大量に製造することができます。30x30mmの四角形の単結晶、38x38mmのモザイク結晶を製品として出荷しています。単結晶として製品化している30x30mmは世界最大と考えられます。

 

②板状の形態

天然や超高圧で製造したダイヤモンド単結晶は通常粒子状です。用途の多くは板状で使用するため、粒子から板を切断によって製作することが求められます。これに対し、当社は元々板状の単結晶を製作できますので、このような切断工程が必要ありません。このために、板状の製品を製作するコストが安くなります。

 

③広い厚さ範囲

当社の生産プロセスにおいて、成長させる結晶が薄いうちに(短時間で)成長を止めれば、薄板を製作できます。

一方、ある程度の厚さの板を作った後で、追加の成長を行えば厚板ができます。当社の生産手法は、板厚に対する制限がほとんどないところが特徴で、板厚0.03~3mmまでの2桁の範囲の製品を生産することが可能です。

 

④様々な仕様の基板

ダイヤモンドデバイスの研究開発は、未だ基礎的な研究段階です。このため、研究者ごとに必要な基板が異なりますが、当社はこれに対応できる様々な仕様の基板を製品化しています。高品質の基板、半導体層を通常の基板上に形成したエピタキシャル成長基板、表面の結晶面を特定したもの、結晶面を少し傾けた基板等々を生産することができます。

 

<用語解説>

番号

用語

意味・内容

注1

超高圧合成法

プレス等の装置を用いて、数万気圧、1000℃以上の高温の状態を作る手法をいいます。金型などを用いて、超高圧条件に置きたい物質を閉じ込め、圧力を伝える物質を通して、プレス等の圧力をその物質に伝えます。ダイヤモンドの超高圧合成法は、5万気圧で1,500℃という極限の条件で、金属中に溶けている炭素が、ダイヤモンドに変換されます。

注2

砥粒

硬いものを削るために、硬質物質を金属やプラスチックで固めた砥石に使用する粒状の硬質物質の総称であります。また、研磨剤として粒子のままで使用することもあります。ダイヤモンドの場合は、代表的には0.005~0.3mmの直径を持つ粒子を使用します。

注3

デバイス

広義には電子機器や部品を指します。ここでは、主として動作する部品、とりわけ
電子や正孔によって動作する半導体素子(論理素子、アンプ、センサー、発光素子等)を表しております。

注4

プラズマ

物質の4態の一つで、気体よりもさらに高温の条件で現れます。気体の段階では分子は維持されていますが、プラズマになると、分子から電子が出るなどして、帯電粒子が生成されます。イオンも混在することで、反応が起こりやすくなります。プラズマの中にも段階によって異なる形態があり、当社が使用しているプラズマの状態は、非平衡プラズマと呼ばれております。このプラズマでは、分子と電子やイオンは温度が異なっております。実用的なプラズマの生成は、ほとんどの場合何らかの放電現象を用いております。

注5

マイクロ波

波長が1mm~1mを持つ電波の名称であります。周波数では300MHz~300GHzであります。加熱や通信に用いられる電波で、工業的に利用できる帯域が決まっております。広く利用されているのは電子レンジで、2.45GHzの周波数であります。ダイヤモンドを合成するために使う電波としては、この2.45GHzと915MHzの2種類があります。

注6

イオン注入法

イオンとは、通常の状態の原子が、電子を放出するか、余分に電子をもった状態で、+もしくは-の状態になっています。このような状態であれば、+極もしくは-極に引き寄せられます。引き寄せる電圧を高くすると、イオンは高速で移動し、高いエネルギーを持ちます。このような高いエネルギーを持ったイオンを、物質にぶつける手法を、イオン注入法と呼びます。高いエネルギーを持ったイオンは、被衝突物質に打ち込まれ、次第にエネルギーを奪われて停止します。ぶつかった部分は、イオンによって物質の結晶が壊されますが、イオンの量によって結晶の破壊程度は異なります。当社の場合には、炭素イオンを用いて、ダイヤモンドの表面から数µmの範囲にイオンが侵入し、ごく表面以外はダイヤモンドの結晶を壊し、カーボン状にしてしまいます。

注7

結晶方位

原子が整列した結晶では、並び方によって異なる面ができます。この面の向きを方位といいます。方位が異なっているということは、異なった面が対象となっているか、同じ面でも向いている方向が違っている、ということであります。ダイヤモンドの場合は、(100)面と呼ばれる面で成長し、その側面も(100)面となるようにしています。この側面の向きが異なることで、接続部の品質が低下します。方位を完全に合わせるのは大変難しいのですが、モザイク結晶の作り方はこの問題を簡便に解決できる方法でもあります。

注8

スカイフ

ダイヤモンドの研磨を行う最も一般的な手法であります。鋳鉄(いもの)の円盤の上にダイヤモンドの粉末状研磨剤を油で固定します。この円盤を高速回転(数1,000回転/分)して、その上に削りたいダイヤモンドを押し付けます。ダイヤモンドの表面は、1,500℃以上の高温となりますので、ダイヤモンドの粉末で削る効果と、高温で鉄とダイヤモンドが反応する効果の2つが並行して起こり、ダイヤモンドを研磨します。

 

業績状況

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

①経営成績の状況

当連結会計年度における世界経済は、ウクライナ情勢の長期化や中東地域における紛争の継続に加え、米国及びイスラエルとイランの対立激化等を背景として、地政学リスクの高い状況が続きました。パレスチナ情勢については、イスラエルとハマスの停戦合意が成立しましたが、レバノンやヨルダン川西岸地区における緊張が継続し、中東地域全体の不安定さが残りました。

また、2025年6月には米国とイスラエルが、イランの核関連施設等への攻撃を契機として軍事的緊張が高まり、2026年2月末以降はイラン指導部等を標的とした空爆やその後の報復措置等により、米国及びイスラエルとイランの対立が一段と深刻化しました。2026年3月にはホルムズ海峡における航行制限・封鎖により、原油・天然ガスの海上輸送に支障が生じ、エネルギー価格、物流、金融市場を通じて世界経済に大きな影響を及ぼす可能性が高まりました。

また、2025年5月にはインド・パキスタンの紛争、2026年1月には米国がベネズエラの大統領を拘束するといったベネズエラへの軍事行動の発生等もあり、当連結会計年度においては、複数の地域における地政学リスクが重なり、世界経済の先行きは不透明な状況で推移しました。

米国が2025年4月に発動した相互関税措置により、国・地域ごとに異なる追加関税率が設定され、世界的な通商環境の不確実性が高まりました。これにより、貿易取引の停滞や米国における輸入品価格の上昇等を通じた景気悪化が懸念され、また中国によるレアメタル等の輸出管理強化という対抗措置もあって、世界経済全体への影響が懸念されましたが、各国と米国との関税交渉による軽減もあって、世界経済への影響は限定的なものにとどまりました。また、この関税政策は、米国の司法判断により、大統領令による関税の運用政策決定が違憲と判断され、この方針の見直しと超過課税の返還の動きがみられました。

日本経済については、米国の関税政策や各国との通商政策変更による影響が懸念されたものの、雇用・所得環境の改善や企業業績の底堅さ等を背景に、総じて緩やかな回復基調で推移しました。政治面では、2025年7月の参議院選挙、2026年2月の衆議院選挙と、国政選挙が続きましたが、石破内閣の退陣及び高市内閣の発足など、政治情勢は大きく動きました。株式市場では、米国株式の上昇や政策期待や企業業績の改善等を背景に株価が上昇し、日経平均株価は5万円台を突破しました。物価上昇は当連結会計年度において継続するなか、金融政策面ではゼロ金利政策からの脱却が進んだものの、金利上昇は限定的なものにとどまりました。

 

当社グループ製品の主要なビジネス分野であるダイヤモンドデバイス関係の開発状況と、ラボラトリーグローンダイヤモンド(人工ダイヤモンド。以下、「ラボグローンダイヤモンド」という。)市場は、順調に推移していると見られます。

ダイヤモンドのデバイス応用では、パワーデバイスや量子デバイスの実用化への期待が高まっており、世界各国がその開発支援を本格化しております。また、関連技術の研究開発や事業化を担うベンチャー企業は資金調達を進めており、工場の新設や新たなデバイス開発へ投資を行っております。各国政府による支援策の整備が進むなか、大学や国立研究機関に加え、関連技術の研究開発や事業化を担う企業への支援も広がりつつあります。

 パワーデバイス分野では、米国のEV(電気自動車)への支援策の見直し等を背景に、EV向け開発需要の先行きに不透明感が生じております。2025年3月に公表された国立研究開発法人産業技術総合研究所及び株式会社本田技術研究所(以下、「本田技術研究所」という。)による共著論文で、電気自動車に適用することを想定したデバイスで、大電流動作が実現する可能性が示されたこともあり、日本や米国でこの分野の開発が進んでおります。また、ダイヤモンドは高周波デバイスへの応用も期待され、レーダー等に用いられる高周波の大電力デバイスへの応用可能性も注目され、応用の可能性が広がっております。

さらに、量子デバイスとしての応用展開についても、多数の研究機関や企業において検討が進められております。オーストラリアのQuantum Brilliance社は、ダイヤモンドを用いた量子アクセレレーターを米国の国立研究所に納入したと公表しました。常温で動作し、スーパーコンピュータを補完する演算での活用が期待されております。また、弱磁場を検知する手段としてダイヤモンドの量子センサーが優れた特性を有することについても、多数の公表が行われており、このセンサーによって地磁気によるGPSが開発できる可能性等のほか、心磁場や血流の検出を可能とする医療機器への応用可能性も示されております。

 

当社は既に公表した30x30mm単結晶を用いて、1インチ(直径25mm)ウエハを2025年4月に発売しました。これまでにないサイズの単結晶ウエハであり、デバイス開発への起爆剤となると考えております。一方、2024年11月公表のダイヤモンドウエハに関する当社開発ロードマップで示しました2インチ(直径50mm)のモザイクウエハの開発は、計画しておりました2025年12月までに完了しませんでした。これまで作製してきた最大サイズである38x38mmのモザイク結晶に対し、約2倍の面積を有する2インチモザイク結晶の作製に取り組みましたが、接合時に発生する応力の影響等により、当連結会計年度中に目標とする品質・サイズを満たすモザイク結晶の作製には至らなかったものの、技術的課題の把握は進展しました。

2026年5月27日に、検討してきました2インチモザイクウエハ作製用の53x53mmのモザイク結晶の開発に成功し、これを公表しました。このモザイク結晶を親結晶として、2インチウエハを製作する計画です。2インチウエハは各ユーザーから発売を強く要請されており、2027年3月期下期から販売を開始することを計画しております。

 ダイヤモンドデバイス関連企業との継続的な情報交換を通じて、将来の実用化に向けた各企業のダイヤモンド素材に関するニーズを把握し、当社の開発計画に反映してまいりました。その中で、2026年3月26日に公表しましたとおり、本田技術研究所とは、ダイヤモンドデバイス用材料の共同研究を実施することに合意し、2026年3月19日付で共同研究を実施するための意向確認書を締結しました。

 

ラボグローンダイヤモンド市場は当連結会計年度においても引き続き規模が拡大しております。米国ではラボグローンダイヤモンドのダイヤモンド宝石市場におけるシェアが50%を大幅に超え(出典:Fortune Business Insight;Lab Grown Diamonds Global Market Report 2026)、世界での市場規模が3兆円を超えたとの推定もされています。このことが原因ともなって、天然ダイヤモンドは大幅な販売の下落が生じているとの報道がされているなど、ダイヤモンド宝石市場でラボグローンダイヤモンドが主要な製品となりつつあります。

 ラボグローンダイヤモンド関連企業は、この1年の価格下落の影響を受けて、経営破綻や事業活動の休止等が発生しております。デビアス社のラボグローンダイヤモンドブランドであるLIGHTBOX向けにラボグローンダイヤモンドを供給していたElement Six社のオレゴンの工場も、事業活動の休止に追い込まれたとの情報が広く知られています。インドでも大規模な企業の経営破綻もありました。一方で、インドでは経営破綻に追い込まれた企業から設備を購入し、事業拡大を進めた企業もありましたので、ラボグローンダイヤモンド関連企業全体としての活動規模が縮小したということではないと考えられます。

種結晶の市場では、インド国内や中国で大型の種結晶を販売する企業があるため、ラボグローンダイヤモンドの効率的な生産が可能となるために、大型種結晶を使用する企業が増加しております。当社はこれまで15x15mmまでの種結晶を供給してまいりましたが、それ以上のサイズの種結晶へのニーズの増加に伴い、当社も15x15mm以上の面積を持つ種結晶の発売を準備してまいりました。

当社はインドSurat市にSFD India Private Limited(以下、「SFD India」という。)を設立し、ラボグローンダイヤモンド関連企業が集積するこの地で当社種結晶を販売することを目指してきました。当社からSFD Indiaに種結晶を輸出するには、SFD Indiaが輸入ライセンスを取得することが必要です。2025年3月に現地事務所を決定し、輸入ライセンス取得に必要な様々な手続きを行ってきました。必要な手続きが完了するまで8ヶ月以上の期間を要し、申請後に許可が出るまでにさらに2ヶ月を要しましたが、SFD Indiaで2026年2月に輸入ライセンスを取得いたしました。

SFD Indiaでの種結晶の販売については、インドSurat市現地で種結晶在庫を保有し、現地ユーザーへの直接販売又は営業担当者による訪問販売を行う形態を計画しておりました。しかし、日本からSFD Indiaへの輸出許可申請に関し、経済産業省の担当部署より、安全保障上の観点から当該販売形態による許可取得は困難であるとの見解が示されたことから、SFD Indiaにおける販売方法については、当社からユーザーであるインド企業への直接販売を前提とした取引形態へ見直しております。

SFD Indiaによる現地での在庫による販売はできませんでしたが、インドのユーザーに対する営業活動を当社で継続してまいりました。当連結会計年度第3四半期までは、受注実績はスポット的で限定的なものにとどまりました。しかしながら、2026年1月~3月において複数のユーザーから、長期的な受注を獲得いたしました。受注の一部は2027年3月期第1~第2四半期の受注分の予約も含まれておりました。それら受注に係る輸出許可については、一部を2026年3月までに取得できましたので、同許可に基づき出荷を開始いたしました。2027年3月期第2四半期連結会計期間まで出荷予約分などを含め、継続的な出荷が出来るよう輸出申請を進めております。

また、エス・エフ・ディー株式会社(以下、「SFD」という。)の国内ユーザー向け宝石販売については、販売体制の構築を進めてまいりましたが、当連結会計年度においては本格的な販売拡大には至らず、販売実績は限定的なものにとどまりました。当社が製造した原石を使って作製した宝石を、Japan Made Diamondとして販売するコンセプトは、国内の宝飾品業界から一定の賛同を得られているものの、サプライチェーンの整備はなお途上にあります。また、SFD Antwerp BV(以下、「SFD Antwerp」という。)においては、EC(Electronic Commerce:電子商取引)を通じて販売を当連結会計年度半ばから行ってまいりましたが、営業体制及び経理体制の整備に課題があり、本格的な販売拡大には至りませんでした。このような状況を踏まえ、2026年3月31日付でSFDを当社に吸収合併し、従来重複していた間接部門の一体化による業務効率の向上及び意思決定の迅速化を図っております。さらにSFD Antwerpにつきましても、当連結会計年度末より今後の事業運営方針の見直しを行っております。

 

以上のようにインドにおける種結晶販売及び宝石の販売については、本格的な拡大には至らず、当連結会計年度において純損失が膨らみました。また、第17回新株予約権による資金調達は一部進展したものの、営業活動等による資金流出が継続したことから、手元流動性の確保が重要な経営課題となっておりました。当社グループでは、こうした状況を踏まえ、当連結会計年度の途中より費用削減を進め、種結晶受注の減少に応じて製造ラインの一部稼働を制限するなど電力費を含む固定費の削減に取り組みました。

その後、2026年1月末以降、第17回新株予約権の行使が進展し、翌月には残存する第17回新株予約権の行使が完了したことにより、合計で約6億円の資金を調達しました。これにより、手元流動性は改善し、当面の事業運営に必要な資金を確保しております。

しかし、当連結会計年度の業績動向を踏まえ、当社グループが保有する固定資産について将来の回収可能性を検討した結果、帳簿価額を回収可能価額まで減額し、当連結会計年度において1,066,796千円の減損損失を計上しました。これら会計上の損失計上により、当連結会計年度の連結損益計算書においては多額の損失を計上しました。

 

以上の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高は516,552千円(前期比42.8%減)、営業損失は1,360,496千円(前期は976,294千円の営業損失)、経常損失は1,341,129千円(前期は989,231千円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純損失は2,415,745千円(前期は2,306,367千円の親会社株主に帰属する当期純損失)となりました。

また、当連結会計年度の製品種類別売上高は、種結晶が117,197千円(前期比78.0%減)、基板及びウエハは349,489千円(前期比6.0%増)、光学部品及びヒートシンクは17,333千円(前期比18.0%増)、工具素材は10,088千円(前期比61.4%減)、原石は367千円(前期はなし)、宝石は22,075千円(前期は355千円)となりました。

なお、当社グループはダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。

 

 

 

②財政状態の状況

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は1,924,417千円となり、前連結会計年度と比べ797,472千円減少しました。その主な要因は、現金及び預金が616,584千円、商品及び製品が83,098千円、仕掛品が60,316千円減少したことであります。固定資産は585,948千円となり、前連結会計年度と比べ1,069,928千円減少しました。その主な要因は、有形固定資産が1,014,162千円減少したことであります。

この結果、総資産は2,510,365千円となり、前連結会計年度と比べ1,867,400千円減少しました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は321,526千円となり、前連結会計年度と比べ32,474千円減少しました。その主な要因は、1年内返済予定の長期借入金が19,960千円、その他流動負債が26,700千円減少したことであります。固定負債は479,136千円となり、前連結会計年度と比べ125,759千円減少しました。その主な要因は、長期借入金が135,740千円減少したことであります。

この結果、負債合計は800,663千円となり、前連結会計年度と比べ158,234千円減少しました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は1,709,702千円となり、前連結会計年度と比べ1,709,166千円減少しました。その主な要因は、資本金が358,727千円、資本剰余金が358,727千円増加したものの、利益剰余金が2,415,745千円減少したことであります。

 

③キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は825,326千円となり、前連結会計年度と比べ616,584千円減少しました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果使用した資金は968,711千円(前期は516,715千円の使用)となりました。主な獲得要因として減価償却費が202,023千円、減損損失が1,066,796千円あったものの、主な使用要因として税金等調整前当期純損失が2,408,556千円あったこと等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における投資活動の結果使用した資金は225,849千円(前期は77,962千円の使用)となりました。これは主に有形固定資産の取得による支出が201,666千円、無形固定資産の取得による支出が23,235千円あったこと等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における財務活動の結果獲得した資金は542,043千円(前期は1,249,065千円の獲得)となりました。これは主に新株予約権の行使による株式の発行による収入が703,080千円あったものの、長期借入金の返済による支出が155,700千円あったこと等によるものであります。

 

 

 

 

④生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

当社グループはダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当連結会計年度における生産実績は以下のとおりであります。

生産高

当連結会計年度

(自2025年4月1日

至2026年3月31日)

前年同期比(%)

生産高合計(千円)

934,635

109.1%

 (注)1.金額は製造原価によっております。

    2.当社グループの売上高及び生産高は、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備の規模(生産能力)に依存します。なお、最近2連結会計年度の当社の生産能力(カラットベース)は、以下のとおりであります。

 

前連結会計年度

(自2024年4月1日

至2025年3月31日)

当連結会計年度

(自2025年4月1日

至2026年3月31日)

(カラット)

(カラット)

生産能力

210,000

210,000

 

b.受注実績

 当社グループはダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当連結会計年度における製品種類別の受注実績は以下のとおりであります。

製品種類

当連結会計年度

(自2025年4月1日至2026年3月31日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

種結晶

386,512

74.8

280,029

3,326.8

基板及びウエハ

361,558

116.6

17,279

246.7

光学部品及びヒートシンク

16,682

170.5

1,440

230.4

工具素材

41,374

153.8

274

22.6

宝石

3,546

997.9

原石

367

合計

810,041

93.8

299,023

1,732.7

 

 

c.販売実績

 当社グループはダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであります。当連結会計年度における製品種類別の販売実績は、以下のとおりであります。

製品種類

当連結会計年度

(自2025年4月1日

至2026年3月31日)

前年同期比(%)

種結晶(千円)(注)2.

117,197

22.0

基板及びウエハ(千円)

349,489

106.0

光学部品及びヒートシンク(千円)

17,333

118.0

工具素材(千円)

10,088

38.6

原石(千円)

367

宝石(千円)

22,075

6,211.9

合計(千円)

516,552

57.2

 (注)1.最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は以下のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自2024年4月1日

至2025年3月31日)

当連結会計年度

(自2025年4月1日

至2026年3月31日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

本田技研工業

113,197

12.5

140,904

27.3

FUTURE DIAMONDS(Greenlab)

56,091

10.9

2.当社グループは、大型のダイヤモンド単結晶を大量に製造することができますが、当社グループの主要な製品である種結晶について、人工宝石市場における種結晶の大型化のニーズが増大しております。なお、最近2連結会計年度におけるサイズ別の種結晶の出荷割合(出荷個数ベース)は以下のとおりであります。

種結晶サイズ

前連結会計年度

(自2024年4月1日

  至2025年3月31日)

当連結会計年度

(自2025年4月1日

至2026年3月31日)

割合(%)

割合(%)

7x7mm以下

0.4

47.6

8x8~9x9mm

26.3

4.9

10x10mm~11x11mm

38.2

12x12mm

8.6

10.7

13x13mm

10.1

10.2

14x14mm

10.3

9.8

15x15mm

6.1

16.8

 

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は、次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

①重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に基づき作成されております。この連結財務諸表を作成するにあたり重要となる会計方針については「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」に記載のとおりであります。

また、連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容については、「(1) 経営成績等の状況の概要」に含めて記載しております。

a.経営成績に重要な影響を与える要因

当社グループの事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況3 事業等のリスク」に記載のとおりであります。

 

b.資本の財源及び資金の流動性

 当社グループの資金需要のうち主なものは、ダイヤモンド単結晶の製造のための設備投資、研究開発費、人件費等の営業費用であります。

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保することを基本方針としております。

 当社グループは、日常の運転資金については自己資金で賄い、自己資金では賄えない設備投資資金等については金融機関からの長期借入で賄うとともに、資本での調達を検討することとしております。

 なお、当連結会計年度末における借入金の残高は470,180千円であり、当連結会計年度末における現金及び現金同等物の残高は825,326千円であります。

 

c.経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 当社グループは、経営上の目標の達成状況を判断するための成長性を判断する客観的な指標として、①売上高成長率、②経常利益率、③ROE、④自己資本比率を重視しております。

①当連結会計年度における売上高成長率は、△42.7%となっております。

売上高成長率は、当社グループの成長性や事業進捗のペースを表す指標として、重視しております。

当社グループの事業進捗において、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、設備投資及び研究開発活動の結果が売上高に結びつくことが必要であるため、売上高成長率の確保に努めてまいります。

 

②当連結会計年度における経常利益率は、△259.6%となっております。

経常利益率は、当社グループの売上高に対する収益性を表す指標として、重視しております。

当社グループの事業進捗及び競争優位性の確保にとって、設備投資及び研究開発活動が重要ですが、そのための長期的な資金として自己資金を継続的に確保することが必要であるため、一定の経常利益率の確保に努めてまいります。

 

③当連結会計年度におけるROEは、△94.3%となっております。

 ROEは、当社グループの投下資本に対する収益性を表す指標として、重視しております。

また、研究開発活動により、ダイヤモンド単結晶の新たな用途を開拓することにより事業領域の拡大を図ってまいります。具体的には、大型単結晶の開発、ダイヤモンド半導体デバイス開発に必要な素材の開発や光学部品として必要な高品質結晶の開発を推進してまいります。

 

④当連結会計年度の自己資本比率は、68.1%となっております。

 当社グループの事業進捗にとって設備投資は重要ですが、財務の健全性を保つためには、自己資本比率を50%以上に保ちたいと考えております。過度な借入を行うことがないよう、キャッシュ・フローにも注意を払っております。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

 当社グループは、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

【関連情報】

前連結会計年度(自 2024年4月1日 至 2025年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

(単位:千円)

 

 

種結晶

基板及びウエハ

光学部品及びヒートシンク

工具素材

宝石

合計

外部顧客への売上高

531,811

329,712

14,688

26,162

355

902,729

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

日本

インド

米国

イスラエル

フランス

その他

合計

645,133

136,449

52,906

43,629

9,217

15,393

902,729

(注)売上高は顧客の所在地を基礎とし、国別に分類しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

CBC株式会社

319,378

ダイヤモンド単結晶関連事業

本田技研工業株式会社

113,197

ダイヤモンド単結晶関連事業

 

当連結会計年度(自 2025年4月1日 至 2026年3月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

(単位:千円)

 

 

種結晶

基板及びウエハ

光学部品及びヒートシンク

工具素材

原石

宝石

合計

外部顧客への売上高

117,197

349,489

17,333

10,088

367

22,075

516,552

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

日本

インド

米国

イスラエル

フランス

その他

合計

320,130

80,306

59,746

1,862

10,540

43,962

516,552

(注)売上高は顧客の所在地を基礎とし、国別に分類しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

本田技研工業

140,904

ダイヤモンド単結晶関連事業

FUTURE DIAMONDS(Greenlab)

56,091

ダイヤモンド単結晶関連事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

 当社グループは、ダイヤモンド単結晶の製造、販売、開発事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

該当事項はありません。