2023年8月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。

 なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであり、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下に記載する事項は、当社の事業に関して将来において発生の可能性がある全てのリスクを網羅するものではありませんので、ご留意ください。

 

(1)インターネット印刷通販市場について

 国内の商業印刷市場は緩やかな縮小傾向にある一方、当社が事業を展開する国内のインターネット印刷通販市場は年々拡大しているものと考えられております。

 具体的には、国内の一般印刷市場規模推移は、2017年度が3兆4,940億円、2018年度が3兆4,531億円、2019年度が3兆4,390億円となっており、2020年度の見込みとして3兆1,940億円、2021年度の見込みとして3兆740億円となっております(矢野経済研究所『2020年版 印刷企業の徹底分析』)。一方、国内の印刷通販市場は、2017年度に1,000億円を超え、2019年度は1,300億円台に達したと推定(公益社団法人日本印刷技術協会が発表した『印刷白書2020』)されております。

 当社はインターネット印刷通販市場が今後も成長を続けると考えておりますが、国内の人口減少や景気の悪化等により、国内印刷市場またはインターネット印刷通販の市場が成長しなかった場合には当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(2)インターネット関連市場について

 当社の事業は、インターネットによる印刷物の通信販売が売上高の大部分を占めるため、Webサイトを受注活動の基盤としており、インターネット関連市場の拡大が、事業展開の基本条件であると考えております。

 しかしながら、新たな法的規制の導入や技術革新の遅れ、利用料金の改定を含む通信事業者の動向など、予期せぬ要因によりインターネット関連市場の発展が阻害される場合、システム関連の投資額や費用が想定を超えて増加した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、顧客の嗜好の変化により適切な商品が供給できなかった場合には、販売不振等により当社の業績に影響を与える可能性があります。

 

(3)システムトラブルについて

 当社の事業は、通信ネットワークやコンピュータシステムに依存していることから、事業の安定的な運用のためのシステム強化及びセキュリティ対策を行っております。しかしながら、自然災害、事故、停電、人的ミス、アクセス急増等によるシステムの不具合、または、当社受注サイトへの不正アクセス等予期せぬ事象の発生によって、当社設備または通信ネットワークに障害が発生した場合には、当社の事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)競合企業との競合リスク

 現在、国内にはインターネット印刷通販の事業者が複数あり、競合企業とは、商品やサービス、価格に関して厳しい競争にさらされています。このため当社は、各種競争に対応すべく事業を推進しておりますが、新たな高付加価値サービスや更なる低価格サービスの提供等が行われるなどにより、事業競争力が相対的に低下した場合、また、競合他社との価格競争が激化した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5)特定取引先への依存のリスク

 当社はラクスル株式会社との業務提携契約を締結しており、印刷及び配送業務を受託しているほか、印刷機1台の貸与を受け、印刷物を製造しております。同社への売上割合は、2022年8月期において30.4%、2023年8月期においては28.2%となっております。当社では、知名度の向上による新規会員の更なる獲得、プリントプロサービス開始による顧客層の拡大、ラクスル株式会社以外の大口得意先の開拓等、ラクスル株式会社に対する依存度を下げる取組みを行っております。

 当事業年度末現在において、同社とは良好な関係を継続しておりますが、同社の経営方針変更又は何らかの事由により、同社からの受注が大幅に減少した場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(6)材料価格の変動

 当社の事業にとって用紙等の印刷材料は不可欠な存在であり、当社の製品の材料費の大部分を印刷用紙代が占めています。用紙等の市況、供給量の変動により仕入価格が上昇し、当社の販売価格に転嫁できなかった場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)配送コスト等の変動

 当社では、一部の商品を除き、商品価格に配送料が含まれておりますが、今後配送コストが上昇し、当社の販売価格に転嫁できなかった場合、想定以上の配送コストが発生する場合や大量の商品の発送依頼に発送業者が対応できない場合には、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)事業の季節変動

 当社の主力製品であるチラシ、パンフレット、フリーペーパーといった印刷物は、多くの企業や官公庁の年度末である3月前後に、その需要が集中する傾向があります。そのため当社の第3四半期以外の四半期は第3四半期に比べて売上が落ち込み、それに伴い利益も落ち込む可能性があります。

 

(9)有利子負債依存度について

 当社の印刷事業を行うためには多額の設備投資資金を要します。そのため設備投資に要する資金を自己資金及び金融機関からの借入金により調達しており、総資産の内有利子負債の占める比率(有利子負債依存度)は、2023年8月期末で28.1%となっております。当社として自己資本の充実に努め財務体質の改善に努めてまいりますが、今後、金利水準が変動した場合には、当社の業績、財政状態に影響を与える可能性があります。

 

(10)人材の育成と確保

 当社が将来にわたり事業を発展していくためには、多様な専門技術に精通した人材(例えば印刷工場において、刷版機、印刷機、断裁機、折り機や綴じ機等の取扱技術を持った人材)、また、経営戦略や組織運営といったマネジメント能力に優れた人材の確保、育成を継続的に推進していくことが重要な課題であります。そのため、新卒者だけでなく経験者の採用も積極的に行い、公平な評価・処遇制度の充実等、社員のモチベーションを向上する仕組みを構築し、社員の定着と育成に努めています。

 しかしながら、少子高齢化や労働人口の減少が急速に進んでおり、必要な人材を継続的に獲得するための環境は厳しい状況にあります。印刷工場での業務が他業種に比べ重労働であるという固定観念があると思われ、景気の回復による人材不足の影響により優秀な人材が他社に流れる等、人材獲得や育成が計画通りに進まなかった場合、長期的視点から、事業展開、業績及び成長見通しに影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)特定人物への依存

 代表取締役会長兼社長である小田原洋一は、当社の事業立案において、重要な役割を果たしております。

 同氏に過度に依存しないよう、権限移譲や経営層の育成等、会社運営体制の構築を目指しておりますが、現時点では具体的な体制の構築に至っていないため、何らかの理由により同氏が業務遂行できなくなった場合、またそのような重要な役割を担い得る人材を確保できなかった場合、当社の経営に多大な影響を与える可能性があります。

 

(12)法的リスクへの対応

 当社が事業運営を行う上で、特定商品取引法、個人情報の保護に関する法律、景品表示法、廃棄物処理等に関する法律、電気通信事業法、環境法、製造物責任法など、さまざまな法的規制等を受けており、今後その規制が強化されることも考えられます。その場合、事業活動に対する制約の拡大、規制の変化に対応するための負荷やコストの増加も予想され、当社の事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)情報セキュリティ及び個人情報保護

 当社は情報セキュリティ及び個人情報保護を事業運営上の重要事項と捉え、プライバシーマークやISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証取得により、自社内の機密情報を厳重に管理しております。これらの情報については、社内システム上でアクセス制限を設けて権限者を必要最小限に抑え、個人情報管理規程等の社内規程を制定し、全社員に周知を行う等の対策を行っております。

 しかし、当社の社員や業務委託先が情報を漏洩又は誤用した場合、また、ハッカー等の不正アクセス等による情報漏洩が発生した場合には、当社が損害賠償を含む法的責任を追及される可能性があるほか、当社の信頼性が毀損し、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)入稿データに係る入稿審査

 当社においては、第三者の知的財産権を含む権利侵害や公序良俗に反する印刷物等の入稿防止に関して、利用規約にその内容を規定し、第三者の権利侵害や公序良俗に反する印刷物等を入稿しないような審査を実施しております。

 なお、入稿データ審査にあたっては、顧問弁護士等の外部専門家の意見を盛り込んだ入稿データ審査マニュアルを整備・更新した上で、複数人によるクロスチェックを行うことで、当該審査体制の強化を図っております。

 しかしながら、当社の認識していない第三者の知的財産権を含む権利に対する権利侵害や公序良俗概念の社会的変動等により、当社の責任が問われ、特定の印刷物に対する差止請求による当社事業の一時中断、損害賠償を含む法的責任、あるいは社会的信用の毀損により、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(15)訴訟に関するリスクについて

 当社では当事業年度末現在において、重大な訴訟を提起されている事実はありません。しかしながら、当社が事業活動を行うなかで、顧客等から当社が提供するサービス及び品質等の不備等により、損害賠償請求等の訴訟を受ける可能性があり、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(16)災害の発生

 当社の本社は鹿児島県に、主たる生産拠点は山梨県及び鹿児島県にあります。

 同地域内で、大地震、津波、気候変動に伴う暴風雨や洪水等の大規模災害の発生により本社又は生産拠点が被害を受けた場合、また、社会インフラの大規模な損壊や機能低下、生産活動の停止にもつながるような予想を超える事態が発生した場合は、当社の業績に多大な影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)配当政策について

 当社は、業績の推移を見据え、将来の事業の発展と財務基盤の強化のための内部留保とのバランスを保ちながら、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。

 創業以来配当は実施しておりませんでしたが、2021年8月期より1株につき10円の配当を実施しており、2023年8月期には12円に増配しております。

 

(18)ネット印刷通信販売事業への依存について

 前事業年度において、当社は飲食事業に進出しましたが、当社の売上高は、主力事業であるネット印刷通信販売事業へ依存している状態となっております。国内印刷市場またはインターネット印刷通販の市場が、コロナ禍から回復基調にあることに加え、ユーザー数の増加やサービスの拡充等により今後も印刷事業は拡大していくものと考えておりますが、当社の運営するプリントネット・プリントプロの利用者の減少や市場規模の縮小等の要因によりネット印刷通信販売事業の売上高が減少した場合には、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、業績の推移を見据え、将来の事業の発展と財務基盤の強化のための内部留保とのバランスを保ちながら、経営成績や配当性向等を総合的に勘案し、安定的かつ継続的な配当の実施を基本方針としております。

 当社は期末配当として年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。また、剰余金の配当の決定機関は、取締役会であります。なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 当事業年度の期末配当につきましては、上記方針に基づき1株当たり12円の配当を実施することと決定しました。この結果、当事業年度の配当性向は、13.9%となりました。

 

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2023年8月14日

取締役会

57,947

12