人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数1,676名(単体) 53,712名(連結)
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平均年齢43.0歳(単体)
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平均勤続年数14.8年(単体)
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平均年収7,568,204円(単体)
従業員の状況
5 【従業員の状況】
(1) 連結会社の状況
(2024年3月31日現在)
(注) 1 従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員数であり、臨時従業員数は[ ]内に年間の平均人員を外数で記載しております。
2 臨時従業員には、パートタイマーを含み、派遣社員を除いております。
3 全社(共通)として記載されている従業員数は、特定のセグメントに区分できない当社及び連結子会社の本社部門及び基礎研究部門等に所属している就業人員数であります。
(2) 提出会社の状況
(2024年3月31日現在)
(注) 1 従業員数は、当社から他社への出向者を除き、他社から当社への出向者を含む就業人員数であります。
2 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。
3 提出会社の従業員数は全てセグメントの「全社(共通)」に含まれるため、合計人数のみを記載しております。
4 前連結会計年度末に比べ従業員数が9,167名減少しております。主な理由は、2023年10月1日付で会社分割を行い、持株会社体制へ移行したことによるものであります。
(3) 労働組合の状況
主要な労働組合として、凸版印刷労働組合があり、2024年3月31日現在における組合員数は13,445名であります。凸版印刷労働組合はTOPPAN株式会社(組合員数7,113名)、株式会社トッパンコミュニケーションプロダクツ(同1,868名)、株式会社トッパンパッケージプロダクツ(同1,944名)、株式会社トッパンエレクトロニクスプロダクツ(同795名)、株式会社トッパングラフィックコミュニケーションズ(同1,197名)、トッパンプラスチック株式会社(同227名)、株式会社トッパン建装プロダクツ(同254名)、株式会社トッパン・コスモ(同47名)のそれぞれの組合員をその構成員としております。なお、当社の従業員は出向者のみのため、出向元の組合員数に含んでおります。
現在の労働協約は、2022年10月1日に締結したものであり、その主旨に従って労働条件その他に関する労使の交渉は全て経営協議会を通じて行われ、労使一体となって業績向上に邁進しております。
その他の労働組合として、TOPPANエッジ株式会社にトッパン・フォームズフレンドシップユニオン本社(2024年3月31日現在における同社組合員数1,201名)、図書印刷株式会社に図書印刷労働組合(同713名)などがあり、いずれも安定した労使関係を築いております。
凸版印刷労働組合、トッパン・フォームズフレンドシップユニオン及び図書印刷労働組合は、印刷情報メディア産業労働組合連合会(印刷労連)に、印刷労連は、日本労働組合総連合会に加盟しております。
なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。
(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
①提出会社
(注) 1 ※1:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しております。
2 ※2:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
②主要な連結子会社
(注) 1 ※1:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しております。海外現地法人に関しては、上記基準に準じた方法にて算出しております。
2 ※2:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。海外現地法人に関しては、上記基準に準じた方法にて算出しております。対象となる男性従業員がいない場合は「―」を記載しております。
3 ※3:海外現地法人に関しては、海外現地法人にて算出された平均賃金を2024年3月31日時点の為替レートにて日本円に換算した上で算出しております。
4 「労働者の男女の賃金の差異」は、各社の事業年度において集計したものであり、当社の事業年度と異なる場合があります。「管理職に占める女性労働者の割合」及び「男性労働者の育児休業取得率」については、当社の事業年度と合わせて集計をしております。
5 連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」に記載しております。
③連結会社
(注) 1 ※1:「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出しております。海外現地法人に関しては、上記基準に照らし、基準に準じた方法にて算出しております。
2 ※2:「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。海外現地法人に関しては、上記基準に照らし、基準に準じた方法にて算出しております。
3 ※3:海外現地法人に関しては、海外現地法人にて算出された平均賃金を2024年3月31日時点の為替レートにて日本円に換算した上で算出しております。
4 「労働者の男女の賃金の差異」は、各社の事業年度において集計したものであり、当社の事業年度と異なる場合があります。「管理職に占める女性労働者の割合」及び「男性労働者の育児休業取得率」については、当社の事業年度と合わせて集計をしております。
5 ※4:当社及び国内連結子会社の集計は、加重平均にて集計を行い、算出しております。
6 ※5:アジア地域、北米地域、欧州地域連結子会社、当社及び連結子会社の集計は、加重平均にて集計を行い、算出しております。「労働者の男女の賃金の差異」について、海外現地法人にて算出された平均賃金を2024年3月31日時点の為替レートにて、日本円に換算した上で加重平均を行い、算出しております。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。実際の結果は、社会動向の変化等の影響により異なる可能性があります。
当社グループは1900年の創業以来、「印刷」を原点とするあらゆる技術・ノウハウを活用した製品・サービスの提供を通じてステークホルダーであるお客さま、従業員、取引先、地域社会、株主・投資家、行政・自治体等、広く社会に関わり、社会課題の解決に寄与する事業活動を行ってまいりました。今日、気候変動に伴う災害多発や自然破壊等、環境問題の深刻化をはじめ、人権リスクや地政学リスクの高まり等、グローバル規模で問題が多発し、将来予測が困難な時代を迎えております。当社グループは当社事業が社会に与えるインパクトを認識し、企業として責任を果たすとともに、事業を通じて社会課題を解決しながら企業価値向上を目指すサステナビリティ(持続可能性)経営を推進しております。
また、グローバルな社会課題により積極的に対応するため、2019年に「TOPPAN SDGs STATEMENT」、2020年には「TOPPAN Business Action for SDGs」を策定し、SDGs貢献を見据えながら、事業活動と全社活動それぞれのマテリアリティ(重要課題)を定義しております。さらに事業の成長とサステナビリティの実現を同期化し企業価値を高めるべく、2021年の中期経営計画では「Digital & Sustainable Transformation」を掲げております。様々な社会課題の視点を事業に取り込み、「DX」と「SX」を中心に事業ポートフォリオを変革し、事業による価値創造を通じて課題解決につなげ、持続可能なグローバル社会の実現を目指しております。
(1) サステナビリティ共通
①ガバナンス
当社グループは、2020年4月より代表取締役社長を委員長とするサステナビリティ推進委員会(以下「サステナ委員会」という。)を設置しております。サステナ委員会は、コーポレートガバナンス体制の中に位置付けられ、グループ全体のサステナビリティ推進の役割を担っております。
1) 取締役会及びサステナビリティ推進委員会
取締役会はサステナ委員会に、当社グループのサステナビリティ課題についての検討・審議を担当させております。サステナ委員会で検討・審議された具体的な取り組み施策は、経営会議を通じて取締役会に報告され、取締役会においてサステナビリティ経営についての総合的な意思決定を行っております。また、取締役会では、サステナビリティの取り組み施策、目標設定及び進捗について、継続的に議論・モニタリング・監督を行っております。
2) TOPPANグループESG経営推進会議
サステナ委員会内に、当社グループ企業の代表取締役社長及び取締役をメンバーとするTOPPANグループESG経営推進会議を設置しており、当社グループ内のESG、SDGsテーマに関する議論を深めるとともに、連携して取り組みを進めております。
3) SDGs推進プロジェクト及びコーポレートESGプロジェクト
サステナ委員会の下部には、部門横断で編成されたSDGs推進プロジェクトとコーポレートESGプロジェクトを設定し、各プロジェクトが連携しながら、個別テーマの対応・推進を担っております。SDGs推進プロジェクトでは主に事業活動におけるサステナビリティの取り組みを推進し、事業におけるSDGs貢献の注力分野「TOPPAN Business Action for SDGs」の活動推進と進捗確認を担っております。コーポレートESGプロジェクトでは、主に自社活動におけるサステナビリティ課題を担当し、2023年度は、地球環境ワーキンググループ(以下WG)、人的資本WG、SCM(サプライチェーンマネジメント)WG、リスクマネジメントWGが編成され、各テーマのプロジェクトを推進いたしました。
4) エグゼクティブ・サステナビリティ推進委員会
将来的なサステナビリティ課題について意見交換を行う場として、エグゼクティブ・サステナビリティ推進委員会を設置しております。外部有識者と当社取締役が意見交換等を行い、重要な課題についてはサステナ委員会と連携して、検討しております。
◇TOPPANグループ サステナビリティ推進体制
②戦略
当社グループは、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトに、社会やお客さま、当社グループのビジネスを、デジタルを起点として変革させる「DX」と、事業を通じた社会課題の解決とともに持続可能性を重視した経営を目指す「SX」により、ワールドワイドで社会課題を解決するリーディングカンパニーとして企業価値向上とサステナブルな社会の実現を目指しております。その一環として、事業ポートフォリオを変革し、経営基盤の強化とESGの取り組み深化を推進しております。2023年度を初年度とする中期経営計画において、2026年3月期には「DX」「SX」関連を含む成長事業の営業利益構成が全体の過半となるよう変革を進めております。
ESGの取り組み深化の観点では、2030年までの長期視点で、事業活動マテリアリティとして定めている、「環境」「まち」「ひと」の3つのテーマにおける注力分野「TOPPAN Business Action for SDGs」を中期経営計画に織り込み、中期経営計画の事業ポートフォリオ変革とも連動させております。また、事業活動マテリアリティを支える基盤として全社活動マテリアリティを設定し、「環境配慮・持続可能な生産」と「従業員の健康・働きがい」を掲げております。
こうした一連の取り組みを、「気候変動」「人的資本・多様性」「知的財産」「人権」「サプライチェーン」というサステナビリティの重要テーマと連携させ、グループ全体で推進しております。
当社グループでは、ワールドワイドでの社会課題解決への貢献と持続的成長のため、グローバル規模で事業を加速させており、国内だけでなく海外にも拠点・サプライチェーンが拡大していることからも、世界共通の課題となっている気候変動への対応は経営の重要課題であると認識しております。地球環境課題への長期的な取り組み方針を定めた「TOPPANグループ環境ビジョン2050」では、「脱炭素社会への貢献」についても設定しており、「2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロ」に向けた取り組みを進めております。また、本ビジョンからバックキャストで検討した「TOPPANグループ2030年度中長期環境目標」においても、指標の1つとして温室効果ガス排出量削減を設定し、中長期視点での取り組みを進めております。
また、当社グループは、1900年に大蔵省印刷局から独立した技術者集団が立ち上げたベンチャー企業として創業して以来、「人によるイノベーション」や「共創」は事業成長にとって必要不可欠であると考えております。事業の土台として「人間尊重」を重要な価値観としており、従業員やお客さま等の関係性を重視し、従業員を資源ではなく、会社の貴重な財産である「人財」、すなわち「人的資本」と捉えております。また、価値創造のプロセスにおいては、多様な人財が個々の属性や価値観の違いを認め、尊重し合い、多様な人財の能力を生かし互いに高め合うダイバーシティ&インクルージョンを推進しております。人的資本・多様性は、サステナビリティ経営の重要課題であると認識しております。
当社グループの価値創造における強みは、創業以来培われてきた独自の技術体系「印刷テクノロジー」であり、それらを複合的に組み合わせることで、常に新しい製品・サービスを生み出し続けております。今後さらに複雑化・高度化する社会課題に対応していくために、継続的な技術の深耕と拡充を重要な経営課題として認識し、当社グループ全体で研究開発に注力しております。この研究開発によって生み出されている「知的財産」は、当社グループにとって事業競争力の源泉となる重要な経営資産であり、マーケット志向と研究開発活動を一層密着させた知的財産戦略のもと、グローバルな視点での積極的な知的財産活動を展開しております。
当社グループは、事業を通じて多くのお客さまに多種多様な製品・サービスを提供しており、その事業を維持・発展させるため、グローバルに広がる幅広いサプライチェーンを有しております。当社グループが社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するためには、サプライチェーン全体でサステナビリティに取り組むことが必要不可欠と考えております。その中でグローバルな社会課題である人権課題についても、サプライチェーン全体で取り組むべき課題と認識しております。
③リスク管理
当社グループのサステナビリティ課題についてのリスク管理は、取締役会の管理のもと、本社主管部門、グループ会社事業(本)部各部門とサステナ委員会の下部組織であるコーポレートESGプロジェクトの1つであるリスクマネジメントWG(責任者:リスク管理担当役員、メンバー:本社主管部門リスク担当者、事務局:法務本部コンプライアンス部)が密接に連携して推進する総合的なリスク管理に組み込まれております。
リスクマネジメントWGは、年1回のリスクアセスメントを実施し、当社グループの経営に重大な影響を与えるリスクを「重大リスク」として特定しております。
「重大リスク」の特定にあたっては、本社主管部門が統括しているグループ会社事業(本)部各部門でのアセスメント結果及び中長期視点での顕在化の可能性、発生頻度やインパクトの強弱等を踏まえております。「重大リスク」は当社グループが事業を展開するグローバルな社会・経済環境の変化に加えて、気候変動に伴う環境問題、デジタル化の進展によるサイバー攻撃の巧妙化、強制労働をはじめとする人権課題等様々なグローバルリスクへの対応も含め、サステナビリティ経営推進の観点からも十分に検討されております。2024年度の「重大リスク」としては、「気候変動及び生物多様性の損失に関するリスク」「人権リスク」「研究開発投資の損失等、製品の研究開発上のリスク」「事業の発展を支える人材の確保」「サプライチェーンに関するリスク」等を含む、19項目が選定されております。(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」参照)
「重大リスク」は、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、取締役会の管理のもと毎年見直しされております。
また、「重大リスク」を含む様々なリスクが顕在化しないように、本社主管部門及びグループ会社事業(本)部各部門で対応策を検討し、国内外の事業活動に結びつけて適切なリスク管理を実施しております。取締役会は、そのリスクへの対応状況について、本社主管部門からリスク管理担当役員を通じて定期的に報告されております。リスクが顕在化した場合には危機管理体制に基づき、迅速な対応が図られております。
なお、経営環境の不確実性が高まり続ける現状を踏まえ、全社リスク管理体制のさらなる強化を目指し、2024年4月1日に新たにChief Risk Officer(CRO)を任命するとともに、今後のリスク統括部門となるGRC本部を新設しております。CROはTOPPANグループ全体のリスク及びその対応状況を、網羅的かつ俯瞰的に管理する責任を担っております。現在CRO指揮のもと、リスクマネジメント手続き・リスクマネジメントに関する会議体の見直しを含め、全社リスクマネジメント体制をさらに強化するための検討を進めております。
④指標と目標
「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトとした事業ポートフォリオ変革による持続可能な社会の実現と企業価値の向上を評価するため、成長事業「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業」の営業利益構成及びSDGsに対する事業貢献を定めた「TOPPAN Business Action for SDGs」にて「環境」「まち」「ひと」の3つのテーマに区分した各成長事業と連携する目標値を設定し、これらを指標としております。
「環境」における「サステナブルパッケージの売上比率」は生活系事業のエコプロダクツ・ソリューションの拡大の指標として、「まち」における「生活を豊かにするサービス数(メタバースやweb3時代を見据えたプラットフォーム活用)」はDX事業における安全なパーソナルデータ関連ビジネスの指標として、「ひと」における「健康に貢献するサービス数」は新事業における健康寿命延伸関連ビジネスの指標としてそれぞれ位置付けております。
◇成長事業「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業」の営業利益構成
◇成長事業と連携する「TOPPAN Business Action for SDGs」
(2) 気候変動
当社グループは、気候変動がグローバルで事業を展開しているグループ全体に与える影響の大きさを認識し、気候変動を当社グループのサステナビリティ経営における重要課題の1つとしております。金融安定理事会が設立したTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の提言に対し、2019年に賛同を表明しております。2020年から提言に基づいたシナリオ分析を開始し、TCFDの提言に沿った気候変動に関する財務インパクト及びその対応について継続して開示を行っております。
また、「TOPPANグループ環境ビジョン2050」では生物多様性保全に向けてビジョンも設定しており、2024年1月にはTNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)最終提言への賛同を表明し、2024年中のTNFD開示に向けて取り組みを進めております。
①ガバナンス
取締役会は、気候変動対策を経営上の重要課題と位置づけ、気候変動によるリスク回避のための緩和策や適応策への投資判断及び機会の獲得のための成長投資判断(「DX」「SX」を柱とする事業ポートフォリオの変革を含む)を行っております。
取締役会は、サステナ委員会に気候変動関連課題を担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおける地球環境WG(本社関連部門及びグループ会社事業部門が参画)が取り組みを主導しております。地球環境WGはSDGs推進プロジェクト、リスクマネジメントWGと連携して気候関連課題の評価と対応策の取りまとめを行っております。
取締役会は、サステナ委員会より経営会議を通じて、気候関連課題の評価や状況、目標管理についての報告を受けるとともに、気候関連の課題を考慮し、経営戦略の策定等について総合的な意思決定を行っております。
取締役会は毎年4月に、「TOPPANグループ環境ビジョン2050」達成に向けて設定された「TOPPANグループ2030年中長期環境目標」における温室効果ガス排出量の前年度実績及び当該年度の単年度温室効果ガス排出量目標について報告を受け、承認を行っております。
②戦略
地球環境WGは、気候変動に関する重要リスク・重要機会の洗い出し、財務面のインパクト評価、その評価に基づいた対応策検討を行っております。
シナリオ分析として、当社グループの主要事業地域である日本国内拠点に海外拠点を加え、研究開発から調達、生産、製品供給までのバリューチェーン全体に対し、1.5℃シナリオ、4℃シナリオで、2050年までの長期を想定し、考察しております。リスク及び機会の時間軸としては、短期1年以内、中期1~3年、長期4~30年以上として、当社グループの事業活動計画である年度計画、中期計画、長期ビジョンの時間軸との整合を図り、気候関連課題におけるリスクと機会について関係部門による検討を行っております。
シナリオ分析の実施にあたっては、「国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)World Energy Outlook 2021(以下IEA WEO2021)のNZE(Net Zero Emissions by 2050)シナリオ」「IEA WEO2023のSTEPS (Stated Policies Scenario)ないしはAPS(Announced Pledges)シナリオ」「気候変動に関する政府間パネル (IPCC:Intergovernmental Panel on Climate Change)第6次報告書における共有社会経済経路シナリオ (SSP:Shared Socio-economic Pathways)と放射強制力を組み合わせたシナリオ及び第5次報告書の代表濃度経路シナリオ(RCP:Representative Concentration Pathways)」の複数シナリオを利用し、定性的・定量的に分析を行っております。対象期間は2030年から2050年としております。
◇シナリオタイプ
当社グループが認識する移行リスクとして、世界全体におけるカーボンニュートラル実現に向けたカーボンプライシング制度の規制拡大を背景に、運用コスト負担の増加等が考えられます。また、当社グループが認識する物理リスクでは、生産事業所の洪水等の浸水被害による生産停止や復旧費用の増加等が挙げられます。その対応として、再生可能エネルギーの段階的な導入等によるScope1+2及びScope3での温室効果ガス排出量削減、防災対策の強化等に取り組んでまいります。Scope1+2温室効果ガス排出量削減については、2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画を策定しております。将来を見据えた長期的視野での低炭素投資や対策の意思決定にICP(インターナルカーボンプライシング)制度を活用し、さらなる省エネ・再エネ設備の導入を推進しております。
当社グループの機会として、このような変化に対し、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトとした事業ポートフォリオ変革と連動させ、事業機会の創出・拡大を図ります。具体的には、サプライチェーンの温室効果ガス排出量削減に貢献するDX支援サービスの開発、リサイクル適性の向上や食品ロスの削減ができるサステナブルパッケージの充実化を図ってまいります。
◇重要リスク・重要機会の評価及び主な対応策
◇2050年カーボンニュートラルに向けた移行計画
◇ICP制度概要
※ICP(Internal Carbon Pricing):低炭素投資・対策推進に向け企業内部で独自に設定、使用する炭素価格のこと。CO2排出量1トン当たり費用を自社の基準で仮想的に費用換算し、気候変動リスクを定量化。投資判断の基準の1つとすることで、脱炭素社会に向け、低炭素設備・省エネ投資を加速させることが可能。
③リスク管理
気候変動リスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたっては地球環境WGとリスクマネジメントWGが密接に連携しております。
地球環境WGは、気候変動関連リスクについて当社グループの事業活動及び提供する製品、サービスに対する現行規制、新規規制、技術、法制、市場、評判、急激又は緩慢な物理変化といったリスクタイプから識別し、それらのリスクタイプから想定されるリスクと機会を抽出し、それぞれの財務インパクトやブランドイメージへの影響を評価しております。また、影響評価を踏まえたリスクの対応計画の策定・推進についても担当しております。気候変動リスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、気候変動リスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。
(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (1)気候変動及び生物多様性の損失に関するリスク」参照)
④指標と目標
気候変動関連リスクへの対応を評価する指標として「TOPPANグループ2030年度中長期環境目標」における「温室効果ガス排出量削減(Scope1+2)」を設定、気候変動関連機会獲得への対応を評価する指標として「TOPPAN Business Action for SDGs」における「温室効果ガス削減に貢献するサービス数」を設定しております。
◇TOPPANグループ2030年度中長期環境目標「温室効果ガス排出量削減(Scope1+2)」
◇気候変動への取り組みに連動する「TOPPAN Business Action for SDGs」
(3) 人的資本・多様性
当社グループは、「人間尊重」「企業は人なり」の理念のもと、持続的成長と社会への貢献を目指し、社員と企業がともに成長できる職場環境、組織風土を整備し、社会的価値創造を実現する「組織・人財」づくりを目指しております。「人財」を、会社の貴重な財産、すなわち「人的資本」と捉え、「人財」の価値を最大限に引き出すことで生まれる「人によるイノベーション」が事業成長の源泉であると考えております。
多様な人財が心理的安全性の高い環境で、「やる気」「元気」「本気」をもって働き、社会をWell-beingにする製品・サービスを提供することが、TOPPANグループの社会的価値創造実現の形だと考えております。その社会的価値創造の結果として、「人財」の社会への貢献実感とさらなる成長意欲が生まれ、また次の社会的価値創造につながる好循環が、当社グループが考えるWell-being経営であり、この実現に向けて事業戦略と連動した人的資本諸施策を講じております。
①ガバナンス
人事処遇制度の改革・人財の採用計画の策定・人財開発プログラムの開発等の人的資本・多様性に関わる施策立案は当社人事労政本部が担当しております。取締役会は、採用計画の審議・承認をはじめ「人的資本・多様性」施策について報告を受け、継続的に、議論・モニタリング・監督を行っております。人財開発プログラムについては、テーマごとに担当役員が報告を受け、承認しております。
②戦略
当社グループは、2023年度を初年度とする中期経営計画において、中長期の重点施策である事業ポートフォリオ変革に向けて、「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業」の推進に注力しております。この推進に向けて人財の確保や育成を重要な経営課題と認識し、経営基盤の強化における重要なテーマとして「成長事業を牽引する人財の確保・活用・育成」を人財戦略として設定しており、当社グループの中長期的な価値創造に資する「人財」への投資や様々な人事施策を推進しております。
1)事業の発展を支える人財の確保
事業戦略上必要な専門性を持った人財の獲得・採用については、定期採用にこだわらず、経験者・第二新卒といった外部人財採用に加え、当社グループを退職した人財(アルムナイ)との関係性の継続・再度採用する「カムバックキャリア制度」を導入するなど、多様な手法を駆使して必要な人財の確保を図ってまいります。また、定期採用においても就業型インターンシップを取り入れ、応募者と採用部署のマッチングと入社後の定着を高める取り組みを行っております。
2)人財開発プログラムの構築
当社グループでは、グループ全体の社員教育を統括する人財開発センターを2011年より設置し、TOPPANユニバーシティという新たな人財開発体系のもと、人財開発、育成施策を推進しております。その中で、2024年は、第5期「次世代型人財開発のグループ、グローバルへの実装フェーズ」と位置づけ、社員一人ひとりの業務やキャリアに合わせた能力開発を進めるため、多彩な人財開発プログラムを提供する他、当社独自の人財開発に関する R&D 拠点である「人財開発ラボ®」において、従業員の「自己革新」と、TOPPANグループならではの新しい価値創造の実現を促す次世代型人財開発プログラムの実装を図っております。
2023年度においては、社員一人当たりの研修時間は72.2時間、社員一人当たりの人財育成に関する費用は76,188円となりました。(ともにTOPPAN株式会社の社員についての数値)
a DX人財の育成
DX人財の育成にあたっては、①全ての従業員のリスキリングを目指して「リテラシーレベル」人財の拡充 ②リテラシーレベルまで到達した社員にさらに学習の機会を提供し、将来のDX中核人財となる「ベーシックレベル」層の増強 ③サイエンティスト、エンジニア、ビジネスデザイナーなど各領域における「プロフェッショナルレベル」人財のDXビジネス実践の中での育成と外部リソース確保を組み合わせた増強、以上の3つのレベルで育成方針を立て取り組みを進めております。
「リテラシーレベル」に関して2023年度、経済産業省主管の官民連携会議体であるデジタルリテラシー協議会が提唱したDi-Lite(ディライト)資格3つのうち「AIジェネラリストG検定」「データサイエンティストDS 検定」の取得推奨プログラムを新設いたしました。2023年度では、AIジェネラリストG検定を209名、データサイエンティストDS検定を106名が資格取得し、DX人財予備軍層が強化されました。
◇DX人財のレベル定義と強化施策
b SX人財の育成
当社グループが社会的価値創造企業として、ESGへの取り組みを積極的に推進し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、SXに対応できる人財育成プログラムを2013年より実施しております。
社会課題の解決と経済的価値を両立させる次世代イノベーション事業の実現をテーマに、ソーシャルイノベーションプログラム、管理職向けのフィールドワークなどを継続実施しております。東日本大震災被災地である福島県でのフィールドワークは継続的に実施しており、10年間で福島への訪問社員数は累計1,925名に上って おります。
また、社会課題解決型のビジネスモデルとして、障がいのあるアーティストの作品を価値化、ビジネスに活用し、その対価をアーティストに還元する「可能性アートプロジェクト」を2018年から実施しており、これを人財育成プログラムとして活用しております。現在では年間50件を超えるビジネス利用があり、アーティストへの累計還元額実績は1,000万円を超えております。
これらのSX人財育成プログラムを継続的に実施し、ソーシャルイノベーション事業の発展に繋げております。
◇SX人財育成プログラム
c グローバル人財の育成
グローバル人財を、語学力・異文化対応力も含めた「ビジネスコミュニケーションスキル」「ビジネスリテラシー」「海外経験」の全てを兼ね備えた人財と定義し、人員の可視化と育成計画の策定・実施をしております。
具体的には、年に一度の語学力測定アセスメント一斉受検による全社的なグローバル人財の人員数とレベルの顕在化、グローバル要員数及び育成ニーズの見極め等を行いながら、各種グローバル関連プログラムへの参加、アカウンティングやファイナンスなど海外ビジネスで求められる基礎的なビジネスリテラシーの習得、海外派遣などを掛け合わせた人事システムの中で人財を育成しております。
d 新事業開発人財の育成
新事業開発人財としての知識・スキル・マインドを醸成するプログラムを実施しております。具体的には、 新事業の創出に向けたフレームワークを体系的に学び、企業内起業家マインドを強化する「新事業開発人財育成プログラム」、アーティストの思考法を参考にした「主観」から事業案を考える「アートイノベーションフレームワーク」によって新しい価値創造に挑戦するフィールドワーク等、様々なプログラムを展開しております。その結果、2023年度末時点で、教育プログラムより経営に提案された新事業計画アイデア(事業計画書数)は312件となりました。
e 経営者人財の育成(サクセッションプラン)
事業の中核的人財となる次世代経営者人財を育成するプログラムとして、39歳以下の若手層に対し、直接トップ経営層からの講話や討議セッションを通して、リーダーとしてのマインド・行動力を学ぶ「麿'sイノベーションプログラム」、コーポレートガバナンス知識の習得と意思決定やリーダーシップなどの事業遂行能力育成を目指す「次世代経営者育成プログラム」など、各種育成プログラムを実施しております。その他、上級管理職を中心に外部のビジネススクールや経営者育成プログラムへの派遣を積極的に推進しております。
3)ダイバーシティ&インクルージョンの推進
当社グループは、価値創造のための重要な要素の1つとして、違いを変革の原動力に変えていくダイバーシティ&インクルージョンを重要視し、「ダイバーシティ&インクルージョン推進方針」のもと、事業活動と一体となった取り組みを推進しております。
事業ポートフォリオ変革においては、人財の流動性を高めるとともに、その人財が社会・環境変化に迅速・柔軟に対応し、チャレンジし続けられる風土・カルチャーを醸成することが重要だと考えております。その風土醸成のため、多様な人財が心理的安全性のもとで、個々の属性や価値観の違いを認め、尊重し合うダイバーシティ&インクルージョンを重要な経営戦略の1つと位置付けております。
2019年にはダイバーシティ推進室を発足させ、ダイバーシティ&インクルージョンを全社的な経営戦略として進化・加速させていくための方針策定と施策の企画・立案を担い、各事業所のダイバーシティ推進委員が各事業所の特色にあわせて、具体的な施策を展開しております。
社員が個々の属性や価値観の違いを認め合い尊重し、一人ひとりが能力を十分に発揮できるようにするとともに、これらの力を結集して、グループの総合力を最大限に高めることを目指しております。
a 仕事と育児の両立支援、仕事と介護の両立支援
「働く意志を支援する」という考え方に基づき、多様な状況下にある従業員が仕事と生活を両立しやすい環境づくりを進めており、ハード面(働き方改革や制度拡充など)、ソフト面(心理面のフォロー)の両面から施策を展開しております。仕事と育児の両立支援においては、2022年10月より、勤続年数を問わず機動的に利用できる「育児スタートアップ休業制度」を創設するなど、性別問わず誰もが仕事と育児を両立しながら活躍できる環境整備を推進しております。仕事と介護の両立支援においては、従業員の理解促進と不安解消に向け、セミナーなどの情報発信の他、外部専門相談窓口を設置するなど、安心して仕事に取り組める環境を整備しております。
b 女性活躍の推進、性の多様性に関する取り組み
性別を問わず、誰もが健康に働き続けられ、能力に応じて活躍できることを基本的な考え方として、女性の活躍推進を進めております。働き方改革や両立支援制度等の環境整備を施策のベースとして、さらに能力や意欲に基づき女性の管理職への登用を積極的に進めるポジティブアクションを推進しております。また、性の多様性(SOGI・LGBTQ)への理解を促し、誰もが働きやすい職場環境を実現するため、理解促進のためのセミナーや研修の開催、社内相談窓口の設置の他、同性パートナーや事実婚パートナー制度の導入など、従業員の多様な価値観・生き方を支援しております。
4)従業員のWell-being
当社グループでは、従業員のWell-being実現に向けて、各種人的資本施策を複合的に実施するとともに、そのベースとしては、従業員の健康と安全が最重要であると考えております。また、従業員Well-beingに関わる施策立案・実施に向けて、定量的な数値に基づく分析のために継続して従業員エンゲージメント調査を実施しております。
a 健康と安全
「健康経営宣言」「安全衛生・防火基本方針」に基づき、それぞれの取り組みを進めております。「健康経営宣言」では、ワーク・ライフ・バランスも含め、従業員や家族の健康づくりをより一層推進するとともに、健康関連事業を通じ、世の中全ての人々の健康づくりを支援し社会に貢献する、という2つの軸を打ち出し、取り組みを推進しております。また、「安全衛生・防火基本方針」は、社員及び契約社員をはじめとする職場で働く全ての人々を対象に、「安全は全てに優先する」を第一義に制定された方針で、ゼロ災害を目標に取り組んでおります。
メンタルヘルス対策についても重要視しており、会社、産業医、健康保険組合が連携し、一次予防から三次予防、さらに一人ひとりのこころとからだのコンディション向上や対話力アップ、チーム力アップといった「ゼロ次予防」を推進して、「メンタル不調者を出さない職場づくり」に取り組んでおります。取り組みの土台となるリスク判定としては、標準的なストレス判定・生活習慣の乱れによるコンディション低下・環境変化という3指標によるきめ細やかなリスク判定を実現する「3Dストレスチェック&ケア®」を独自開発し、活用しております。
b 従業員エンゲージメント
従業員のやりがい・働きがいを含めたWell-beingの向上に向けて、従業員エンゲージメントの状況を把握するためのサーベイを2021年度から導入しております。グループ会社を含めた45社31,000名を対象に実施しており、本調査を通じて明らかになった社員からの声をもとに、経営と現場が連携し、組織課題の解決に向けたアクションを推進しております。
5)人事処遇制度改革
当社グループは、多彩な能力・キャリアを持つ人財の適切な処遇、従業員のスキルアップ・キャリア形成、若手の抜擢、高年齢社員の活躍、チャレンジできる環境の提供等を目指し、人事諸制度の改革を進めております。
TOPPAN版ジョブ型人事処遇制度は、全職種統一の職能等級制度から職群別の要素を取り入れた等級制度に再構築し、また年功制の排除の観点から、各等級における在位年数も撤廃した制度です。社員の処遇の根幹である等級制度の改定により、多彩な能力・キャリアを持つ人財の活用が進んでおります。人事評価の指標には、新たな項目として「持続可能な社会の実現」「ダイバーシティ&インクルージョン」「人権の尊重」「社会的価値の創造」を加え、成長や行動革新のための方向性を示すことで、組織全体のパフォーマンス向上を目指しております。
さらに、2024年度より人財流動性を高める施策として、新たな常設型社内公募制度「ジョブチャレンジ制度」を新設しております。各部門の業務内容や求める人材スキルなどを掲げて部署異動の希望者を公募する制度で、従業員自らの意思に基づく自律的なキャリア形成を可能とし、やりがいの向上につなげるとともに、事業ポートフォリオと連動した成長事業への人員配置を加速してまいります。
また、2023年10月の持株会社体制移行を踏まえて、TOPPANホールディングス株式会社・TOPPAN株式会社・TOPPANエッジ株式会社・TOPPANデジタル株式会社の人事諸制度の統合を進めております。今後グループ全体での人財流動性を高め、グループシナジーによる企業価値向上を目指してまいります。
③リスク管理
「人的資本・多様性」の観点から、「事業の発展を支える人材の確保」「人権リスク」「労働安全衛生に関するリスク」は、当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「重大リスク」にかかるリスク管理は、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。当リスクについては人事労政本部が主管部門として、法務部門・製造部門等の関係部門と連携し、対応を行っております。これらのリスクへの対応状況については、定期的にリスク担当役員から取締役会が報告を受け、管理を行っております。
(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (4)人権リスク、(12)事業の発展を支える人材の確保、(17)労働安全衛生に関するリスク」参照)
④指標と目標
事業ポートフォリオ変革を支える人財確保の進捗状況を評価する指標として「Erhoeht-X※(DX事業)従事人財数」、ダイバーシティ&インクルージョンを評価する指標として「管理職に占める女性管理職比率」、従業員のWell-beingを評価する指標として「エンゲージメントスコア」・「健康リスク値」・「コンディション危険判定」を設定しております。
なお、当社においては、関連する指標のデータ管理とともに、具体的な取り組みが行われているものの、連結グループに属する全ての会社では行われていないため、連結グループにおける記載が困難であります。このため、次の指標のうち「管理職に占める女性管理職比率」を除く合計4項目の実績及び目標は、連結グループにおける主要な事業を営む当社及び一部の連結子会社のものを記載しております。
※「Erhoeht-X®(エルヘートクロス)」:TOPPANグループが全社を挙げ、社会や企業のデジタル革新を支援するとともに、当社自体のデジタル変革を推進するコンセプト
(4) 知的財産
当社グループでは、「知的財産」を事業競争力の源泉であると考え、知的財産戦略を推進して事業における競争優位性の確保に努めております。
当社グループは、「エルへート凸版法」を用いた技術ベンチャーとして1900年に創業いたしました。以降、基盤となる印刷技術を他の分野にも応用し、さらに複合的に組み合わせることで多様な製品・サービスを生み出し、新たな価値を提供することで社会課題の解決に寄与してきました。新たな価値創造のためには、既存の技術に基づく製品・サービス展開だけでなく、テクノロジーによる高付加価値化やイノベーションが重要と考え、従来から研究開発、技術開発、それと連動した知的財産マネジメントに注力してまいりました。
当社グループは、現在、「Digital & Sustainable Transformation」をキーコンセプトとした中期経営計画に基づく事業戦略を推進しており、成長分野である「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業」「エレクトロニクス重点事業」を中心に積極投資を推進し、将来を見据えた事業開発、研究開発活動をさらに強化しております。これらの活動によって生み出される「知的財産」は継続的・将来的な事業競争力を高める重要な経営資産です。創出した知的財産の戦略的な活用によるグループ経営の実行や社会課題の解決、事業利益の増大を通じて企業価値向上に貢献することによる持続的な成長を目指し、知的財産戦略と事業戦略・研究開発戦略を一体化させた、グローバルな視点での積極的な知的財産活動を展開しております。
(知的財産活動と連動する研究開発については「第2事業の状況 6 研究開発活動」参照)
①ガバナンス
当社グループは、事業戦略・研究開発戦略と知的財産戦略を一体化させ、全社で知的財産強化を推進できる体制として、「知財強化プロジェクト」を発足しております。本プロジェクトには、知的財産本部に加えて、研究開発戦略を担う技術戦略室及び事業開発本部、グループ会社の事業(本)部内に設置された知的財産戦略部門が参画しております。本プロジェクトにおいてプロジェクト主幹である知的財産本部が中心となり、当社グループの知的財産活動全体を掌握することで、全社横断的な知的財産課題の解決を進めております。
②戦略
当社グループの知的財産戦略は、事業ポートフォリオの変革を支えるために事業計画及び研究開発計画に基づき立案されるものと考え、知的財産活動をマーケット志向と研究開発活動により一層密着させる取り組みを進めております。中期経営計画においても、「成長を支える経営基盤の強化」の1テーマとして知的財産戦略を設定し、「IPランドスケープの活用による強固なビジネスモデルの創出」「グループ知的資産ガバナンス体制の構築」に取り組んでおります。
知的財産マネジメント活動として、全保有特許の分類、評価による価値の定量化を進め、特許ポートフォリオの管理基盤を構築し、事業ポートフォリオの変革に合わせた特許ポートフォリオの「あるべき姿」を描き、最適化を推進しております。
中期経営計画においても、注力する「DX(Erhoeht-X)」「国内SX・海外生活系」「新事業」分野において、関連する自社特許の保有状況を精査するとともに、中期経営計画に沿った特許ポートフォリオの拡充を進めております。
また、各グループ事業会社・本部の知的財産戦略部が事業計画に沿った独自の知的財産戦略を立案し実行できる体制が重要と考え、その体制のために
・仮説に基づいた事業計画から技術開発の方向性を決定する知的財産分析(ポジショニングの把握等)
・事業優位を獲得する技術開発に連動した知的財産ポートフォリオ、競合が保有する障害知的財産のクリアランスに必要な知的財産戦略の立案・実行
の施策を実行しております。
知的財産戦略策定の際には独自の「知的財産戦略シート」を戦略部門・技術部門・知的財産部門が合同で作成し、市場環境や技術動向、知的財産状況から当該事業の自社の強みを洗い出し、出願・権利化の攻めどころを見出す活動を行っております。
③リスク管理
知的財産に関しては、「特許権や著作権等の知的財産権の侵害」が、当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「重大リスク」にかかるリスク管理は、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。当リスクについては知的財産本部が主管部門として、技術戦略室・事業開発部門・法務部門等の関係部門と連携し、対応を行っております。これらのリスクへの対応状況については、定期的に、リスク担当役員から取締役会が報告を受け、管理を行っております。
(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (18)特許権や著作権等の知的財産権の侵害」参照)
(5) 人権
当社グループは、事業の土台となる基本精神は「人間尊重」であると考え、行動の規範である「TOPPANグループ行動指針」で、人格と個性の尊重、差別行為やハラスメント行為の禁止、児童労働・強制労働の禁止、ダイバーシティ&インクルージョンの推進など、基本的人権を尊重することを定めております。また、2006年から国連「グローバル・コンパクト」に参加し、人権と労働に関わる6つの原則を支持しております。
2021年に事業活動全般において基本的人権を尊重し「社会的価値創造企業」としてさらに進化していくため、「TOPPANグループ人権方針」を策定し、人権に対しての取り組みを強化しております。
①ガバナンス
「TOPPANグループ人権方針」において、当社グループの人権尊重の取り組みについては、取締役会が監督し、人事労政本部の担当責任者が実施の責任を担うことを表明しております。
取締役会は、サステナ委員会に人権尊重の取り組みを担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおける人的資本WG(人権テーマも担当、人事労政本部が主管、担当役員が監督)が取り組みを主導し、人事労政本部、法務本部、製造統括本部等の部門が連携して、当社グループ全体で人権尊重の取り組みを推進しております。
取締役会は、年に一度、人権尊重に係る重要案件・課題について、サステナ委員会で検討・審議された活動内容について経営会議を通じて報告を受けており、取り組みの目標設定及び進捗を議論・モニタリング・監督しております。人権課題に関する事象(労働災害・火災、ハラスメントの発生等)が発生した場合は、社内関係部門による対応策を含め、取締役会が報告を受け、対応について議論を行っております。
②リスク管理
人権リスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたっては人的資本WG(人権課題を担当)とリスクマネジメントWGが密接に連携しております。
人的資本WGは、人権リスクについての識別・評価、その影響評価を踏まえた対応計画の策定・推進を担当しております。人権リスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、人権リスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。
(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (4)人権リスク」参照)
③施策
1)人権デューデリジェンスプロセス
当社グループは、「ビジネスと人権に関わる指導原則」を支持するとともに、人権デューデリジェンスの重要性を認識しております。リスク評価に当たっては、「国際人権章典」、国際労働機関(ILO)の「労働における基本的原則及び権利に関するILO宣言」、賃金や労働時間等労働者の人権に関する条約等の人権に関わる国際規範を支持し、その観点での人権デューデリジェンス体制を構築しております。
当社グループは、人権リスクの発生が、レピュテーションリスクや法務リスク、財務リスク等の経営に関するリスクにも繋がる可能性があることを認識し、当社だけでなく国内外のグループ会社やサプライチェーンの人権リスク評価を実施し、軽減・是正に向けた取り組みを行い、人権デューデリジェンスプロセスのPDCAサイクルを回しております。
a 人権リスクの特定
人権デューデリジェンスプロセスの第一歩として、人権リスクの特定を実施しております。当社事業の特性や同業者の動向、国際的な人権基準をもとに、「人権リスク重要度評価」を行い、人権課題を整理・評価いたしました。その結果、当社の人権リスクを「強制労働・人身取引」「差別」「非人道的な扱い」「プライバシーに対する権利」「グループ全体の人権ガバナンス」と特定しております。2023年度も昨年度に引き続き、特定した5つの人権リスクを中心に、TOPPANグループのステークホルダーへの調査・ヒアリングを実施いたしました。グループ会社に対しては、国内72社、海外100社へ書面での人権リスク調査・分析に加え、国内8社・海外1社に対して現地ヒアリング調査を実施し、実態の把握と改善活動に努めております。今後も継続的に国内外グループ会社に対し、現地調査を含めた人権リスク調査を実施し、人権リスクの特定に向けた取り組みを推進いたします。
b 人権リスクの防止・軽減
特定された人権リスク項目については、グループ各社にフィードバック並びに改善策の例示を行い、人権リスク軽減に向けた取り組みを進めております。また、当社グループにおける人権リスク調査の全体周知やベストプラクティスの共有により、人権尊重の取り組みに対する意識の醸成・浸透を図っております。
人権尊重の基本的な考え方の理解に加え、上記調査で特定された個別課題(ハラスメント、ダイバーシティ&インクルージョン、労働安全衛生等)に対する理解を深める全従業員を対象とした研修を毎年実施し、人権尊重の取り組みの具体的対応についても周知徹底をしてまいります。2023年度は、人権リスク調査結果を含む人権に関する教育をグループ会社含め36社の従業員計22,945名に対して実施し、グループにおける人権への取り組みの内容理解を図るとともに、啓蒙活動を行いました。
2)労働者の人権
労働における人権については、当社と労働組合が、労使関係の安定と労働条件の維持改善、企業の平和を確保するために労働協約を締結し、労使の基本的な考え方、組合活動や労使交渉のルール、賃金・労働時間等の労働条件を定めております。労働組合は、当社連結子会社8社の組合員で組織されており、労働協約の債務的部分(組合活動や労使交渉のルール)は、8社共通の内容で締結しております。当該8社以外の連結子会社につきましても、適切な労使関係を構築し、労働者の人権保護に努めております。
適正な賃金の支払いについては、当社グループでは、各国の最低賃金を定めた法令に従い、現地の生活物価を踏まえ、従業員に適正な給与を支払うことを遵守しております。加えて、金銭的報酬はもちろん、法令で定める福利厚生を提供することに加え、働きがいの向上や自己実現・キャリア開発に対する会社の支援・サポート等の非金銭的報酬についても配慮しております。
(6) サプライチェーン
当社グループは、企業が社会的責任を果たし、持続可能な社会の実現に貢献するためには、サプライチェーン全体でCSR調達に取り組むことが重要であると考え、サプライヤーや協力会社の皆さまと共に「CSR調達ガイドライン」に沿った活動を進めてまいりました。近年、企業の人権課題、労働安全衛生、環境等の取り組みについて、社会的な関心や要求が高まり、サプライチェーンマネジメントとして、より具体的かつ幅広い対応が求められていると認識し、2022年1月に「トッパングループCSR調達ガイドライン」(2007年制定、2014年に第2版に改訂)の内容を改訂し、その名称を「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」に変更いたしました。サプライチェーン全体に本ガイドラインを周知し、運用、監査、是正するサイクルを回し、サプライヤーや協力会社の皆さまと協力して持続可能な調達活動をさらに推進してまいります。
①ガバナンス
取締役会は、サステナ委員会にサステナブル調達の取り組みを担当させ、その下部組織であるコーポレートESGプロジェクトにおけるSCM(サプライチェーンマネジメント)WG(経営企画本部が主管、担当役員が監督)がグループ全体で進める体制を構築しております。取り組みはホールディングス事業部門管理部門が中心となり、当社グループ全体の関係部門と連携して行っております。
取締役会は、サステナブル調達に係る重要案件・課題について、サステナ委員会で検討・審議された活動内容について、経営会議を通じて報告を受けており、取り組みの目標設定及び進捗を議論・モニタリング・監督しております。サステナブル調達課題に関する事象が発生した場合は、社内関係部門による対応策を含め、取締役会が報告を受け、対応について議論・決議を行っております。
②リスク管理
調達に関するリスクは当社グループの「重大リスク」の1つに特定され、「(1)サステナビリティ共通 ③リスク管理」に記載のとおり総合的なリスク管理に組み込まれております。サステナ委員会への報告にあたってはSCM WGとリスクマネジメントWGが密接に連携しております。
SCM WGは、調達に関するリスクについての識別・評価、その影響評価を踏まえた対応計画の策定・推進を担当しております。調達に関するリスクの評価・対応策の内容はそれぞれ、サステナ委員会に報告・検討された上で、取締役会が報告を受け、調達に関するリスクの管理及び管理プロセスの監督を行っております。
(「第2 事業の状況 3 事業等のリスク (16)サプライチェーンに関するリスク」参照)
③施策
「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」をサプライチェーン全体に周知し、その運用及び監査、是正するサイクルを回すことで、サプライヤーや協力会社の皆さまと協働し、サステナブル調達の取り組みを加速し、サプライチェーンの質的向上を図ってまいります。
2022年度からは、サプライヤーや協力会社の皆さまに対してサステナビリティに関わる国別リスク・業種別リスク・アンケート調査等によるリスク調査を行い、分析を踏まえ、リスクの軽減・是正に向けた取り組みを協働で行うデューデリジェンスプロセスのPDCAサイクルをスタートさせております。2023年度は、サプライヤーや協力会社の皆さまにフィードバックを行うとともに、4社に対して現地訪問の上で、取り組み向上に向けた確認を実施いたしました。その他、「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」説明会の実施、サステナブル調達基準の自己評価アンケート、「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」の協力同意締結、事業継続に関わる取り組み状況の確認等を実施しております。