リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項について説明いたします。なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループ(当社及び連結子会社)が判断したものであります。
(1) リスク管理体制
当社グループは3線モデルに基づく全社的リスク管理体制を整えております。体制強化の一環として、2024年4月に新たにChief Risk Officer(CRO)を任命し、グループ全体のリスク管理を統括する部門(GRC本部)を設置いたしました。また、2024年10月には、これまで「リスクマネジメント・ワーキンググループ」(サステナビリティ推進委員会傘下)として運営されていたリスク管理に関する会議体を、より重要な役割を担う委員会に格上げしております。新たに設置されたリスク管理に関する委員会は、執行側と監督側の2つのレベルで構成されております。執行側の委員会は「リスク管理推進委員会」としてリスクの検討や対策実施・モニタリングに責任を持ち、さらに監督側に「リスク管理委員会」を設置し、十分なけん制機能を確保しております。
①リスク管理委員会
取締役会メンバー全員で構成されるリスク管理委員会は、当社グループのリスクに特化して討議する場です。この委員会は、リスク管理推進委員会に対するけん制機能(指導・助言の役割)を果たすほか、当社グループの経営に関連する重大なリスクについて討議する場、さらにリスクやリスク管理に関する最新の動向や情報を共有する場として設置されており、原則として年2回開催するほか、必要に応じて臨時に開催いたします。
②リスク管理推進委員会
当社グループの経営に関連する重大なリスクについて討議し、その管理方針を決定する場として、さらにリスク対策の活動状況をモニタリングする目的で、第一線、第二線の役員をメンバーとするリスク管理推進委員会を設置しており、原則として年2回開催するほか、必要に応じて臨時に開催いたします。また、リスク管理委員会と同様に、当社グループに関わる重要なリスクの共有や外部環境の最新動向・情報を共有する場でもあります。
③第一線(事業会社)
当社グループの事業会社には、事業本部・事業部制を採用している子会社と、していない子会社があります。いずれの場合もコーポレート機能部門が策定したリスク対応計画を踏まえ対策を講じた上で業務を遂行しております。リスク管理の責任は、各子会社の社長、もしくは事業本部・事業部制を採用している子会社においては、それらの事業本部長・事業部長が担っております。通常、子会社の管理部署(事業戦略・経理・法務・総務)の業務は第一線業務のサポートを行うこともあり、体制図において1.5線と記載しております。
④第二線(TOPPANホールディングスのコーポレート機能部門)
コーポレート機能部門は、経営企画、財務、法務、人事労政などの管理部門を指します。平時のリスク管理においては、毎年、各事業会社に「リスクアセスメント」の実施を指示し、その進捗状況をモニタリングしております。また、コーポレート機能部門は、当社グループに関連する主要なリスク項目を示した「事業等のリスク」を毎年選定し、対応計画の策定及び進捗管理を行っております。選定されたリスク項目は、取締役会に報告され承認を得ます。
危機管理に関しては、事業会社からインシデント報告を受けた場合、第二線の責任部門が対応指示を出すか、直接対応いたします。インシデントの内容が重要であると判断された場合には、危機管理委員会が招集されます。
⑤第三線(経営監査室)
経営監査室は内部監査を行う部署であり、第一線、第二線が適正に機能しているかを分析評価しております。具体的には、法令・会社諸規則の遵守状況や不正防止の仕組みに問題がないかなどの業務監査と、経営目標との整合性やリスクコントロールが必要十分であるか否かについて、プロセスを重視して検証・評価する経営監査を実施しております。その結果を代表取締役社長、取締役会、監査役会に対して報告しております。
(2) 危機管理体制
当社グループは、リスクが顕在化した場合に備え、対応体制及び手続きを定めております。グループ内での連絡体制を整備するとともに、リスク項目ごとに第二線の責任部門を設定し、当該部門が中心となって対応する体制を確立しております。万一、リスクが顕在化した場合には、影響を最小限に抑えるため、リスクが顕在化した事業会社と第二線の責任部門が連携し、事態の対処及び再発防止策の検討を行います。重大な事案については関連部門を招集し、さらに詳細な討議を行った後、その結果は取締役会に報告されます。緊急対応を要する場合には、社長または副社長を責任者とし、第二線の責任部門の担当役員、監査役、弁護士などの社外有識者を加えた緊急対策本部を設置し、速やかな事態の収束を図ります。
また、第二線の各部門担当者で構成される「危機管理ミーティング」を設置しており、定期的に会議を開催し、情報の共有及び連携の強化を図っております。
(3) 平時のリスク管理手続き
①「事業等のリスク」項目選定プロセス
「事業等のリスク」(旧 重大リスク)の選定プロセスについては、これまでと同様に、外部環境の変化や新たに高まったリスクを踏まえ、毎年、当社グループに影響する主要なリスク項目を各責任部門と協議し選定しております。見直し後の「事業等のリスク」については、取締役会に報告され、承認を得ております。
なお、各責任部門との協議に当たっては、新興リスクや外部環境の影響を評価・分析するとともに、「リスクカテゴリー」(当社グループに関係するリスク項目を網羅的に一覧化したリスク管理を目的とする内部資料)の各項目において、前年度との比較でリスクが大きく高まっている項目がないかを評価・分析いたします。これらのプロセスを経て、前年度の「事業等のリスク」で選定した項目を見直し、今年度の「事業等のリスク」の項目を決定いたします。
以下は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に示される「中期的な経営戦略及び対処すべき課題」に内在するリスク項目(「事業等のリスク」との相関)を示した図となります。
なお、リスクの概要及びリスク対応策については、後述の「(4)事業等のリスク」の該当項目をご参照ください。
②第一線と第二線のリスク管理手続き
これまで主に以下の手続きを期中に行い、第一線及び第二線が連携して、当社グループに関連する事業等のリスクに適切に対応してきました。また、活動は取締役会に報告してまいりました。
・第一線を対象としたリスクアセスメントの実施(毎年)
・「事業等のリスク」の項目ごとに、第二線内で責任部門を決定。各責任部門は、それぞれのリスク項目に対する管理方針や体制構築を計画、実行(毎年)
上記に加え、2025年度より以下の取り組みによって平時のリスク管理をさらに強化してまいります。
1) 第一線によるリスクアセスメントに対し、第二線による分析、モニタリング、指導・助言のPDCAサイクル手続きをより明確化
2) 第二線による「事業等のリスク」の各項目に対する計画と実績の管理(第二線によるリスクアセスメント)に対し、リスク管理を統括するGRC本部によるけん制機能(PDCA手続き)の導入
3) グループ全体で優先的に取り組むべきリスクに関する課題を明確化した上で、その対応状況の継続的モニタリング(詳細は「③リスク管理推進委員会/リスク管理委員会での討議」参照)
4) 監督側及び執行側の双方のリスク管理委員会に対するリスク動向や(上記1)及び2)を含む)管理状況の報告
③リスク管理推進委員会/リスク管理委員会での討議
2025年度より、グループ全体で優先的に取り組むべきリスクに関する課題(討議テーマ)を明確にし、それらに内在するリスクや対策を、リスク管理推進委員会を中心に討議・モニタリングいたします。討議テーマごとに、リスク管理推進委員会メンバーの中からリスクオーナーを指名いたします。リスクオーナーは、当該テーマに内在するリスクの分析や評価、それに基づくリスク低減や解決に向けた対策の検討を主導し、その進捗状況を次回以降の委員会で報告する責任を負います。一方、リスク管理委員会は、リスク管理推進委員会で討議された内容の報告を受け、それに対して適切なけん制機能を果たします。
討議テーマは、以下の2つのアプローチ(トップダウンアプローチとボトムアップアプローチ)を組み合わせた計4つの方法でGRC本部(リスク管理統括部門)が情報を収集・分析を行い、第二線との協議を経て決定いたします。
1) トップダウンアプローチ
・取締役、執行役員へのインタビュー
・各事業会社の重要施策に内在するリスクとリスク対策を分析
2) ボトムアップアプローチ
・第一線を対象としたリスクアセスメントの分析結果
・第二線を対象としたリスクアセスメントの分析結果
(4) 事業等のリスク
2025年度の「事業等のリスク」として19項目を選定しております。1点を除き、前年度から大きな変更はありません。その変更点について説明いたします。前年度の「(19) 海外に関するリスク(規制法違反、地政学リスク、訴訟、労働争議、国際税務等、前項目に含まれない事項)」は、より具体的に「戦争や紛争、国家間対立をはじめとする地政学リスク」に変更されました。
この変更の背景には、当社グループのグローバル化、特にアフリカ諸国を中心に進展しているグローバルサウスへの事業展開があります。この展開により、各国の情勢(戦争や紛争、国家間対立)が当社グループの経営に与える影響が高まると考えております。
①気候変動及び生物多様性の損失に関するリスク
(リスクの概要)
年々深刻さを増す気候変動の影響は大きく、環境規制の強化・低炭素な事業活動や代替素材利用への要請といった「移行リスク」と、洪水などの激甚災害による事業所罹災・サプライチェーン寸断による調達停滞といった「物理的リスク」があり、それぞれに適切に対応できなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、生物多様性においては、豊かな自然の保全と社会経済活動が両立する自然共生社会を目指すことが事業活動の中で求められております。自然資本である「水」の枯渇は原材料入手や事業所での生産活動、地域社会に影響を及ぼす可能性があり、サプライチェーン全体や地域社会との協働で進めていく必要があります。
(主なリスク対応策)
気候変動リスク対応について当社グループでは、サステナビリティ推進委員会が対応策の取りまとめを行っております。「移行リスク」については、SBT認証を受けた温室効果ガス削減目標を設定し、ICP制度活用による省エネ活動や再生可能エネルギーの導入でPDCAを回しております。「物理的リスク」については、BCP対策として罹災に対する備え、被害の軽減策(防風、防水)、製造と調達のバックアップ体制構築による供給体制の維持継続を行っており、長期的な視点でリスクを分析し、対策を進めております。
また、生物多様性リスク対応については、事業活動の推進において、用紙原料の調達における合法性確認や社内外自然共生地域の保全への貢献、事業所の節水活動を行い、サプライチェーン全体で取り組む調達への配慮とともに自然資本の保全を進めております。
②環境汚染に関するリスク(有害汚染物質の漏洩、廃棄物の不法投棄等)
(リスクの概要)
当社グループの製造工程及び研究開発におきましては、特定の有害物質を使用するため、環境への放出や廃棄物を管理する必要があり、適用される規制を守るために厳重な注意を払っております。しかし、このような物質に起因する偶発的な汚染や放出及びその結果としての影響を完全に予測することは困難であり、万一、発生した場合には、近隣など外部への影響及び当社グループの従業員を含め事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
また、事業活動に伴い発生する廃棄物の処理は、廃棄物処理事業者に委託しておりますが、万一、これらの委託事業者が不法投棄や不適切な処理を行っていた場合には、排出事業者として当社グループの社名等が公表されるほか、印刷物の得意先商品名がSNS等で拡散され、得意先の社会的信用を毀損する可能性があるなど、当社グループの事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
環境汚染に関するリスク対応として、偶発的な汚染や放出の原因となる有害物質の貯蔵タンクの管理、保全を実施しております。日常での設備点検のほか、自社で設定した管理ガイドラインに基づき、使用年数に応じて劣化診断や計画的な更新を行っております。また、薬液類の補充時など取り扱い時における漏洩流出リスクを想定し、あらかじめ緊急事態対応手順を整備し、定期訓練を行うことで手順の有効性も確認しております。
また、廃棄物リスク対応では、処理委託事業者による不法投棄や不適切処理対策として、廃棄処理確認の徹底、評価シートによる処理委託事業者の適正処理の評価や現地視察などを行っております。
有害廃棄物については、海外拠点を含めて排出量削減、適正処理、再資源化に取り組んでおります。
③地震や風水害等の自然災害及びパンデミックに関するリスク
(リスクの概要)
当社グループでは、地震、台風等の自然災害の発生や感染症拡大の影響により、事業所の設備や従業員等が大きな被害を受け、その一部または全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループでは災害が発生した際に、従業員の安全を確保し、事業活動への影響を最小限に留めるために、事業継続計画(BCP)を策定しております。そして、全社体制と対応手順を「災害対策基本計画」にまとめ、毎年見直しを行っております。事業継続マネジメント(BCM)活動を進めるにあたっては、当社法務本部内に設置されたBCP推進チームが中心となり、当社各本部及び全国の事業(本)部に配置したBCP推進担当者と活動を行っております。また、BCPにおけるサプライチェーンの重要性を鑑み、その強化を目的として、外部講師による取引先向けの勉強会を年に1回開催しております。なお、セキュア系事業においては、お客さまからの信頼に応えるために、ISO22301の認証を取得しており、継続的に体制の維持・強化に取り組んでおります。
④人権に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループでは「人間尊重」の精神を基本に事業活動を行っており、人権を事業活動やサステナビリティの取り組みを推進するにあたり、最も重要なテーマであると捉えております。
しかしながら、セクシュアルハラスメントやパワーハラスメントをはじめとする人権問題が発生した場合には、職場環境の悪化に留まらず、労災補償やブランド価値の毀損などが発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループでは、「人権方針」を2021年10月に制定するとともに、自社の行動規範である「行動指針」で、人格と個性の尊重、差別行為やハラスメント行為の禁止、児童労働・強制労働の禁止など、基本的人権を尊重することを定めております。従業員に対しては定期的にこれらの重要な当社グループ方針等を遵守するように教育プログラムを実行しております。また、「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」においても人権を重視する姿勢を明示し、サプライチェーン全体で人権に関する取り組みを推進しております。さらに、国内外グループ会社・サプライヤー等の当社グループを取り巻くステークホルダーへの調査・ヒアリングを通じて人権リスクの軽減・是正に向けた取り組みを行っております。また、取り組み内容については適切に情報開示を行い、一連の人権デューデリジェンスを実行しております。
推進体制としては、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」の下部に設置されている「コーポレートESGプロジェクト」における「人的資本ワーキンググループ」が人権尊重の取り組みを主管し、グループ全体への浸透を進め、あらゆる人権リスクに対する対応基盤の構築を目指してまいります。
また、ハラスメントに対しては、TOPPANグループ行動指針にハラスメント行為の禁止を定め、研修などを通じて徹底しております。また、総務部門を通じた各職場への啓発活動、各職場の行動指針推進リーダーを中心とした日常業務レベルでの浸透・徹底、各職場の管理職への教育、アンケートによる実態把握などを行っております。各種ハラスメントに関する相談体制を整備しており、内部通報制度「TOPPANグループ・ヘルプライン」にも通報することができるようにすることで、早期に発見し適切に対処する機能を果たしております。
さらに、労使で「ハラスメント防止協定」を締結しており、労使でハラスメントの問題を認識し、その行為の防止に当たるとともに、各事業所に労務相談の窓口を設け、ハラスメント相談員の資格を持った担当者が対応に当たるなど、労務トラブルの未然防止に努めております。
⑤グループ統制に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループは、国内外に多くのグループ会社を持つことから、グループ統制が重要であると認識しております。そのため、財務報告に係る内部統制を含め、「内部統制システム構築の基本方針」に基づき、内部統制システムを整備・運用しておりますが、グループ会社が行った経営上の意思決定に際し、結果的に法令違反や巨額の損失が発生した場合には、当社グループの社会的信用を失墜し、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、グループ会社の事業運営の独立性と自立性を尊重しつつ、グループ会社の取締役の職務執行の適正を確保するため、「関係会社管理規程」において、管理項目ごとに報告等の手続き方法を定め、報告を受けることとしております。
また、当社グループは、コンプライアンス基本規程として「TOPPANグループ行動指針」を定め、この周知徹底を図ることで従業員の職務執行の適法性を確保しております。そのために、当社法務本部コンプライアンス部を中心に、グループ会社の法務部門等と連携し、グループ全体の法令遵守と企業倫理の確立を図るとともに、国内では行動指針推進リーダー制度を導入し、各職場での浸透活動を展開しております。海外においては、ガバナンス上必要な規程類や手続きを明確にした「オペレーティングガイドライン」を発行しております。このガイドラインは毎年見直しを行い、遵守状況の確認も実施しております。
さらに、当社の内部監査部門が、定期的に当社及びグループ会社における業務執行状況を監査し、その結果を代表取締役、取締役会、監査役会及びグループ会社の取締役等に直接報告しております。
⑥不祥事(重大な不正、不適切な行為等)、コンプライアンス違反(談合、贈賄、その他法的規制違反)に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループは、国内外で多くの拠点を持ち、多種多様な業界にわたる多くの得意先と取引をしていることから、関連する法令や規制は多岐にわたっております。事業活動を行うにあたり、会社法、金融商品取引法、税法、独占禁止法、下請法、贈賄関連諸法などの法規制に従うほか、免許・届出・許認可等が必要とされるものもあります。万一、従業員による重大な不正や不適切な行為等の不祥事があった場合、あるいはコンプライアンス違反があった場合には、法令による処罰、損害賠償の請求だけでなく、社会的信用の失墜、得意先や取引先の離反などにより、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、従業員一人ひとりの遵法精神と企業倫理に基づく行動のあり方を示した「TOPPANグループ行動指針」を制定し、この行動指針の徹底こそがコンプライアンスの実践であると考えております。そこで、国内では行動指針推進リーダー制度を導入し、各職場の行動指針推進リーダーを中心として、日常業務レベルでの行動指針の浸透・徹底を図っております。海外においては、「オペレーティングガイドライン」を通じて、不祥事やコンプライアンス違反を防止するための具体的な手続きを海外子会社と共有しております。また、海外従業員のコンプライアンス意識向上を図るため、「ガバナンスニュースレター」を毎月配信し、不祥事やコンプライアンス違反のリスク低減に努めております。
また、談合・カルテル、下請法違反、贈賄などを防止するため、研修や監査を実施するなど、従業員のコンプライアンス意識向上のための施策を実施しております。
当社グループは、法令違反の早期発見と迅速かつ適切な対応を行うため、グループ共通の内部通報制度である「TOPPANグループ・ヘルプライン」を設置しております。
⑦ビジネス環境や他社との競争等、市場環境の変化に関するリスク
(リスクの概要)
当社を取り巻く市場環境は、為替変動や地政学リスク、社会のグローバル化や情報技術の革新、ネットワーク化の進展のほか、地球環境保全などサステナブル意識の高まりなどにより大きく変化しております。これらの市場環境変化に対する施策が不十分である場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
既存印刷事業の需要が減少する中、グローバルで市場成長が見込める事業への転換やErhoeht-X®の成長、新事業(フロンティア)の創出を進めるとともに、低収益事業に対する構造改革を強化していくことにより、事業ポートフォリオの変革を推進しております。具体的には、海外パッケージ事業において、グローバルでの競争優位確立に向けた供給体制の構築を進めております。グローバルセキュア事業においては、政府系ソリューションを中心に事業拡大に必要なプラットフォーム構築を進めております。半導体関連事業においては、需要増に応じた生産体制の構築を進めるとともに、次世代製品の事業化に向けた開発を推進しております。新事業(フロンティア)においては、競争優位を持つテクノロジー・ビジネスモデルを核に、ヘルスケア、センサ関連などの領域で、事業化を推進してまいります。
⑧市場性のある有価証券の価格変動に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループは、市場性のある有価証券を保有しております。従って、株式市場及び金利相場等の変動によっては、有価証券の時価に影響を与え、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社は、政策保有株式について資産効率向上を目的とし縮減する方針をとっており、中期経営計画においてその縮減目標を定めております。保有については、事業運営面と投資資産としての価値の両面から総合的に分析し、その保有の合理性について定期的に検証を行うとともに、保有先の財務状況等を把握することでリスクの低減に努めております。
また、その状況については取締役会に報告するとともに、保有意義の薄れた銘柄については売却の判断を行っております。
⑨外国為替相場の変動に関するリスク
(リスクの概要)
国内印刷市場の成熟化が進んでいる中、海外市場での事業が拡大しておりますが、海外現地法人において現地通貨で取引されている収支の各項目は、連結財務諸表を作成する際に円に換算されるため、結果として換算する時点での為替相場の変動に影響される可能性があります。
また、為替相場の変動は、当社グループが現地で販売する製品の価格、現地生産品の製造・調達コスト、国内における販売価格にも影響を与えることが想定されます。そのような場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループでは、為替相場の変動について、リスク管理のガイドラインを制定し、グループ全体で為替リスクの軽減に努めております。事業の中で発生する為替変動リスクは取引の中で極力吸収することに努めるとともに、為替予約等のヘッジ手段も適宜活用しながら為替変動リスクを最小化することに努めております。
⑩提携や企業買収等、事業戦略やグループ戦略に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループは、事業戦略やグループ戦略の実現に向け、他社との戦略的提携、合弁事業、投資を実施しており、将来におきましても、他の企業を買収する可能性があります。このような活動は、新技術の獲得、新製品の発売、新規市場参入のためには重要です。しかし、様々な要因により、提携関係を継続できない場合や、当初期待した効果を得られない場合など、事業戦略やグループ戦略を実現できない場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、各投資の実行に際しては、少額出資検討会、投資・契約検討会、経営会議等の承認プロセスを経て投資判断を行っており、出資等の実行後も定期的にモニタリングを実施しております。また、特に出資先がスタートアップ企業や海外の企業等の場合は、必要に応じて外部の調査機関も活用し、十分なデューデリジェンスを行った上で投資を実行しております。しかしながら、当初想定どおりの効果(回収)が得られないと判断された投資案件は、改善プランを策定し、改めてリスク等の精査に基づく挽回策を実施しておりますが、その上でなお成果が得られないと判断した場合は、事業戦略やグループ戦略の見直しを検討するとともに、株式売却や清算等もやむなく実施してまいります。こうしたケースは知見やノウハウを蓄積するための重要な機会であり、内容の精査・原因分析を通じて次の投資検討案件へのリスク低減と成功確率を高める活動へ繋げてまいります。
⑪研究開発投資の損失等、製品の研究開発上のリスク(市場変化、投資先・アライアンス先の業績悪化、事業化・上市タイミング遅れ等)
(リスクの概要)
当社グループの研究開発活動につきましては、「第2 事業の状況 6 研究開発活動」に記載のとおりであります。当社グループは、各事業分野の新商品開発をはじめ、コストダウン、品質ロスミス削減へ向けての研究開発、さらに産官学との連携を図りながら中長期の収益の柱となる新規事業の創出のための研究開発にも投資をしております。しかしながら、予測を超えた市場の変化、投資先・アライアンス先の業績悪化、事業化や上市のタイミングの遅れなどにより、研究開発投資が十分な成果をもたらさなかった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループの研究開発活動の管理を担う技術戦略室を設置しております。技術戦略室では、グループの研究開発による新事業創出の確度向上を目的とし、事業化の蓋然性に応じた追加投資の優先性や要否判断による経営リソースの有効活用、グループ保有の情報やアセットの活用強化・促進を実施しております。さらに、追加投資対象の研究開発テーマに対し、定期的な進捗確認により抽出した課題をもとに、開発リソースの最適化を図っております。
⑫事業の発展を支える人材確保等に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループが将来にわたり事業を発展させていくためには、既存製品における高品質化と、高度な新技術導入による新製品・新サービスの開発が重要であると認識しております。そのためには、高度な技術力・企画提案力を有した優れた人材が不可欠です。当社グループは計画的な人材の採用と育成に向けた教育に注力しておりますが、優秀な人材を確保または育成できなかった場合には、当社グループが将来にわたって成長し続けていくことができない可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループでは、効果的な採用広報により、当社グループに関心を持つ人材の母集団形成を図るとともに、就業型インターンシップの導入、ジョブマッチング採用、コース別採用、リファラル採用など、新卒採用と経験者採用の両面において様々な採用チャネルを構築し、幅広い領域の人材を採用しております。また、社内の人材開発プログラムを常に更新し、基礎的能力から実践的スキルまで一貫して習得する場を提供し、事業を牽引する人材を育成しているほか、人事処遇や働き方の改革により従業員のエンゲージメント向上に努めております。さらに、成長事業への円滑な人材シフトやローテーションを実現させるタレントマネジメントシステムの導入を計画・推進しており、人材面からの事業基盤強化を進めております。
⑬財務に関するリスク(資金調達、不良棚卸資産の発生、不良債権の発生等)
(リスクの概要)
当社グループは、事業の拡大や急速な技術革新に対応するために、事業投資や設備投資を必要としております。これらの投資に向ける資金調達につきましては、事業計画に基づき外部から調達する場合もありますが、金利情勢の大幅な変化等により適正な条件で必要十分な追加資金を調達することができない可能性があります。
また、環境変化による需要の減少等で市場価格が大きく下落した場合や経年劣化した場合は、棚卸資産の評価損が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループは、多種多様な業界の得意先と取引をしておりますが、各業界の業況悪化を通じた得意先の経営不振等により、多額の債権の回収が困難となった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、事業計画に基づく資金調達を円滑に遂行するため、資金調達手段と調達期間を適切に分散しております。また、有事の際においても事業継続に必要な資金調達を可能とするため、格付けの維持にも資する健全な財務体質の維持・強化に努めております。さらに、金融市場の動向に関する最新の情報と事業環境の分析に基づき、資金計画の見直しを適時に行っております。
また、営業部門、製造部門、管理部門が連携し、販売促進による回転効率の向上及び棚卸資産の品質と管理状況の定期的なチェックによる品質の保持を徹底することで、不良棚卸資産発生と長期在庫化のリスク回避に努めております。
また、当社グループは、与信管理規程に基づき、取引先ごとに与信限度額を設定するとともに、定期的な与信の見直しを行っております。加えて、回収遅延や信用不安が発生した場合には、迅速に債権保全策を講じ、貸倒リスクの回避に努めております。
⑭情報セキュリティに関するリスク
(リスクの概要)
当社グループでは、事業の一環として得意先から預託された機密情報や個人情報の収集・保管・運用を行っております。特に、BPO事業につきましては、政府・地方自治体や企業等のアウトソーシング需要の取り込みにより、取り扱う情報量が増加しております。また、当社グループが推進するDXにおきましては、データの収集・分析を通じた製品・サービスの提供をビジネスモデルとして実施しており、個人情報を含む情報の利活用を進めております。
DXを推進し、得意先の重要情報を取り扱う当社グループにとって、サイバー攻撃及び当社グループ社員もしくは業務の委託会社等の不正行為等による情報の不適切な取り扱いや情報漏洩の発生は、特に重大なリスクであると認識しております。標的型メールランサムウェア攻撃をはじめとして、最近ではテレワークやオンライン会議の脆弱性をついたサイバー攻撃が急増し、攻撃手法も高度化・巧妙化しております。万一、サイバー攻撃や不正行為等により情報漏洩やデータの破壊・改ざん、システム停止、サービス停止などの被害が生じた場合には、当社グループの社会的評価が悪影響を受け、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
機密情報や個人情報を含む重要な情報については、厳重な情報セキュリティ管理体制により管理しております。具体的には、当社グループにおいては、「TOPPANグループ情報セキュリティ基本方針」のもと、国内外の法規制及び情報セキュリティに関する規格をもとにした規程を定め、法改正等に合わせた規程類の改定整備や、当社グループ各社のセキュリティ対策状況、成熟度の評価・改善指導を適宜行っております。また、従業員等に対しての定期教育による当該規程類の周知や、内部監査及び委託先監査による遵守状況の確認、改善指導も行っております。
外部からのサイバー攻撃等による情報漏洩やシステム停止に対する対策としては、端末の振る舞い検知や不正接続端末の遮断、ネットワーク監視、クラウド基盤統制等の技術的な対策の実施に加え、標的型攻撃メールや各種インシデントへの対応、開発部門や製造部門等の特定部門での対応力強化のための教育など、全従業員対象及び各職種・各階層に合わせた教育を実施し、教育、訓練・演習、診断のサイクルを回しながら定着を図っております。
また、重要情報を取り扱うエリアを限定しかつ業務監視を行うなど漏洩対策を実装し、適宜強化・最適化を行っております。さらに当社グループのサービスの脆弱性の監視やサイバー脅威情報を収集・評価・分析し対策に反映させる運用体制を整備するとともに、インシデント対応のためのCSIRT機能(Computer Security Incident Response Team)である「TOPPAN-CERT」(当社グループ全体を対象)及び「TOPPAN Edge CSIRT」(TOPPANエッジグループを対象)を、グローバルで対応できるよう体制を拡充し、関係機関等と連携してサイバーリスク低減に取り組んでまいります。
⑮製品、デジタルサービスの品質に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループでは、全ての製品及びデジタルサービスの製造・提供活動において、品質管理を最重要課題の1つとして位置づけ、品質事故やクレームの未然防止に努めております。しかしながら、万一、品質事故が発生した場合には、業績に影響を及ぼすリスクが生じる可能性があります。製品においては安全性が損なわれた当該製品が市場に流出した場合、得意先との連携のもと自主回収を行う必要が生じる可能性があります。この場合、多額の回収費用や賠償費用が発生するほか、社会的信用の喪失により、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。デジタルサービスにおいてはITシステムの不具合、機器故障、人的ミスなどにより、サービスを利用する得意先の事業活動や生産ラインが突発的に停止する可能性があります。この場合も同様に、多額の賠償費用が発生するほか、社会的信用の喪失により、当社グループの事業活動や業績に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループでは、「製品の安全管理についての基本方針」「サービス品質基本方針」に基づき、各事業において国際規格に準拠した品質マネジメントシステムを構築し、品質管理の徹底と継続的改善を推進しております。製品においては万一、重大な品質事故が発生した場合、当社の製造統括本部品質保証センターが中心となり、原因追究と対策の指導を全社的に展開し、再発の防止に努めております。また、安全衛生面で特に高い品質保証が求められる食品関連事業・ヘルスケア関連事業においては、当社が制定する品質保証ガイドライン及び品質監査チェックシートに基づく事前監査を実施し、製造許可の認定制度を採用して、品質事故の未然防止に努めております。デジタルサービスにおいては当社のサービス品質統括室が中心となり、サービス品質規程を定め、サービスのライフサイクル全体を通じて、品質やリスクの管理を徹底するとともに継続的な改善活動を全社的に推進してまいります。
⑯サプライチェーンに関するリスク(原材料の供給問題、不適正な発注、取引先の不正行為等)
(リスクの概要)
事業に使用する用紙・インキ・ガラスといった原材料やエネルギーを外部の取引先から調達しております。また、様々な業種のパートナー企業との協業や業務委託により製品・サービスを提供しております。
事業活動を維持するためには、原材料やエネルギーを適正量・適正価格で安定的に確保することが重要になります。しかし、地政学的事象や取引先の被災・倒産・事故、当社を含むサプライチェーン上で人権問題・環境規制や法令の違反などにより、供給の中断・供給量の大幅な減少や納期の遅延、取引停止などが発生することで、十分に調達量を確保できず、製品・サービスの提供が遅れる可能性があります。また、原材料やエネルギー価格の高騰などにより収益に影響する可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、サステナブル調達の取り組みを進めており、社会要請や国際規格などを鑑み、安定した持続可能な調達(サステナブル調達)を行うためのガイドライン「TOPPANグループ サステナブル調達ガイドライン」を策定しております。サプライヤーや協力会社の皆さまと密接に連携し、このガイドラインの浸透を図るとともに、大規模災害発生時などの事業継続の取り組みや人権・労働・環境・腐敗防止への取り組み状況等を定期的に確認し、サステナブル調達を推進しております。
また、エネルギー調達については、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入に向けた取り組みを強化するとともに、複数のエネルギー供給元を確保するなどリスク分散をしております。
さらに、サプライヤーや協力会社の皆さまとの取引の透明性・公平性を高め、より深い信頼関係を築くため、対話による課題把握や相談窓口「サプライヤーホットライン」の当社コーポレートWEBサイト上への設置、「パートナーシップ構築宣言」の社内外周知、「取引関連法規」の社内教育・監査による調査と是正活動などにより、信頼関係の構築と安定した調達の実現に努めております。
⑰労働安全衛生に関するリスク(火災、労災、労働法規違反、労務トラブル等)
(リスクの概要)
当社グループでは、従業員を会社の貴重な財産、すなわち「人財」と捉え、「企業は人なり」という理念のもと、従業員が「やる気」「元気」「本気」の3つの「気」を持つことで、従業員がそれぞれの力を十分に発揮することが大切であると考えております。それを実現するために、従業員の労働については、国の政策や法制度の動向を踏まえ、労働組合と協議しながら、様々な施策を展開しております。
また、「安全は全てに優先する」を第一義とする「安全衛生・防火基本方針」を制定し、労使一体となり、安全衛生・防火活動に取り組んでおります。
いずれの場合も、労働法規違反により当局から行政処分などを受けた場合や、労務・安全衛生・防火の管理において不備があった場合は、当社グループの社会的評価に悪影響を与える可能性があります。
また、火災や労働災害が発生した場合、従業員や事業所の設備等が大きな被害を受け、その一部または全部の操業が中断し、生産及び出荷が遅延する可能性があり、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社グループの事業活動、業績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社及び当社グループ内の4製造会社・4工場は、2025年3月に労働安全衛生マネジメントシステムの国際規格であるISO45001の認証を取得いたしました。当社グループでは、日本国内の事業所に安全師範や安全推進担当者を配置し、安全意識の浸透を図るべく、リスクアセスメントなどの安全勉強会等を開催しております。また、安全に対する意識と危険に対する感受性の向上を目指すため、「挟まれ・巻き込まれ」や「発火・爆発」などを実際に体感することができる「安全道場」を国内外の主要製造拠点に開場しており、RST資格保持者による職長教育を中心とした階層別教育も行っております。今後は、本認証の取得範囲をグループ8製造会社・45工場に拡大し、安全衛生管理の継続的な向上に努めてまいります。
また、従業員の健康増進の観点から、健康保険組合と連携し、ヘルスアップ推進委員を中心に各拠点でヘルスアップ活動を推進しているほか、従業員の働きがいの向上に向け、「フレックス勤務制度」や「リモートワーク制度」による働き方改革を進め、従業員が自律的かつ効率的に業務を行える環境を整備しております。一方で、グループ全体での労働時間や年次休暇の取得状況を把握できる体制・システムを構築し、生産性向上による労働時間の短縮を目指すとともに、法令順守の体制を構築しております。
⑱特許権や著作権等の知的財産権を侵害するリスクまたは侵害されるリスク
(リスクの概要)
当社グループは、知的財産・無形資産を事業競争力の源泉となる重要な経営資産と位置づけ、マーケット志向と研究開発活動を一層密着させた知財戦略をもとにグローバルな視点での積極的な知財活動を展開しております。
しかしながら、当社グループの技術等が、見解の相違等により他者の知的財産権を侵害しているとされる可能性や訴訟に巻き込まれる可能性があります。また、他者が当社グループの知的財産を不正使用することを防止できない可能性や、侵害を防ぐための対応が成功しない可能性があります。さらに、当社グループは、お客さまに印刷物や商品パッケージのデザインを提案する業務において、著作物を日常的に取り扱っております。そのため、当社グループが取り扱う著作物の権利について、事前かつ十分に処理状況を確認できなかった等の理由により、他者の著作権を侵害しているとされる可能性や訴訟に巻き込まれる可能性があります。
(主なリスク対応策)
当社グループは、他者の知的財産権を尊重し、事業を行う際には侵害回避や予防策など適切な措置を講じます。特に、他者の知的財産権を継続的に調査・経過観察することにより、他者の知的財産権を侵害するリスクを未然に防止してまいります。当社グループは、各国における知的財産権に関する法律や規制を遵守するとともに、第三者による知的財産権への侵害行為には、適切かつ正当な権利行使を行ってまいります。
また、知的財産に関する階層別の社内教育を定期的に実施して、他者の知的財産権の尊重とその重要性について社内に周知徹底しております。さらに、著作権教育についても社内をはじめ、委託先である外部デザイナーに向けて定期的に実施し、事前かつ適切な著作権処理を徹底することにより、他者の著作権を侵害するリスクを未然に防止しております。
⑲戦争や紛争、国家間対立をはじめとした地政学に関するリスク
(リスクの概要)
当社グループは、グローバルに事業活動を行っており、今後とも海外市場への事業拡大を重点戦略の1つとして展開いたします。事業展開する国や地域における政治及び経済面における不安定さは、当社グループの事業活動及び業績に影響を及ぼす可能性があります。しかし、戦争や紛争及び国家間対立をはじめとした地政学リスクは年々高まり先行き不透明感が増しております。加えて、そのような状況から派生した輸出入規制の強化、資金決済への制限など、当社グループのビジネスにも影響が及んでおります。紛争の長期化や激化、新たな戦闘や抗争による事業停止や撤退など、さらなる影響を受ける可能性があります。
(主なリスク対応策)
情勢の変化を見ながら当社グループへの影響分析、評価を行い、特に重要な海外地域については綿密なBCP策定をするなどの対策を講じております。それに加えて事業を営む国、進出する国のカントリーリスク評価を行い、関連情報を断続的にモニタリングし、リスク変化に対してより柔軟に対処できる組織体制を整えております。このカントリーリスク評価の手続きでは、当社グループのリスクアペタイト基準が定められており、リスクの大きさに沿って、検討・対応すべき内容や事業進退の判断が、客観的なデータや情報をもとにできる仕組みとなっております。
また、万一、不測の事態が発生した場合には、日本政府(外務省)やアメリカ政府(国務省)などが発表する海外安全情報(渡航情報)や現地からの報告をもとに、全従業員の健康・安全確保の対策を直ちに講じ、場合によっては現地からの退避を速やかに実施してまいります。また同時に、サプライチェーンへの影響を極小化するよう、グループ全体で最適な事業環境を保てる施策を講じるとともに、内容の改善・見直しを継続してまいります。
(5) 新興リスク
当社グループは、「事業等のリスク」として認識しているリスクに加え、現時点ではその発生可能性や影響度が高くないものの、将来的に当社グループの事業に重大な影響を及ぼす可能性のある新興リスク(Emerging Risks)についても、その動向を継続的に注視し、認識に努めております。現在認識している主な新興リスクは以下のとおりであります。
①米国における政策及び経済情勢の変化による影響
米国における政治・経済動向、特に第二次トランプ政権下で懸念される自国主義的政策は、関税・通商問題や為替・金利変動など、既に「事業等のリスク」に一部関連するものも含みますが、当社グループの海外、特に米国に関連する事業活動に新たな影響を与える可能性があります。例えば、特定の米国企業との取引や協業における条件変化、現地の労働環境やインフレ率の上昇によるサービス・資材調達コストへの影響などが考えられます。当社グループでは、これらの不確実な要素が事業に与える潜在的な影響について、引き続きその動向を注視し、リスク顕在化の可能性を評価してまいります。
②AI技術の発展と社会実装に伴う影響
急速なAI技術の発展と社会実装は、当社グループの事業に大きな影響を与える可能性があります。主なリスクとしては、AIの使用に関連する人権・プライバシー侵害、差別・偏見、知的財産侵害といった倫理的・法的課題や、既存事業の前提を覆すようなビジネスモデルの変化、競争環境の激化などが挙げられます。これらのリスクに対し、当社グループでは、AIの適切な活用に向けた「TOPPANグループAI倫理方針」を制定しており、役職員への周知・教育を進めております。また、AIによるビジネス機会の創出と並行して、既存事業への影響(代替リスクや効率化の可能性などを含む)について、各事業部門と連携しながら研究・分析を進め、将来的なリスクへの対応を検討しております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主各位への機動的な利益還元ができるよう、剰余金の配当等の決定を取締役会の決議によって行うこととしております。また、毎年3月31日を基準日として期末配当を、毎年9月30日を基準日として中間配当を、この他基準日を定めて剰余金の配当を行うことができる旨を定款に定めております。
株主還元方針につきましては、各期の連結業績、配当性向、手元資金の状況、内部留保、今後の投資計画等を総合的に勘案した上で、安定的な配当に加え機動的な自己株式の取得により、連結総還元性向30%以上を目安に利益還元を行ってまいります。
この方針のもと、第179期の期末配当につきましては、2025年5月29日の取締役会において1株につき普通配当32円と決議いたしました。これにより中間配当(1株当たり24円)と合わせて、第179期の1株当たり配当金は56円となりました。その結果、自己株式の取得も考慮した当期の連結総還元性向は133.6%となりました。
なお、当社は2025年5月14日に、2025年5月15日から2026年5月14日を取得期間とした最大300億円の自己株式の取得を公表いたしました。
第179期の剰余金の配当は以下のとおりであります。