2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    1,383名(単体) 9,041名(連結)
  • 平均年齢
    41.7歳(単体)
  • 平均勤続年数
    16.7年(単体)
  • 平均年収
    7,095,341円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

合成樹脂成形品事業

7,886

(2,891)

ベッド及び家具事業

999

(274)

全社(共通)

156

(-)

合計

9,041

(3,165)

 (注)1.従業員数は就業人員(当社グループからグループ外への出向者を除き、グループ外から当社グループへの出向者を含むほか、常用パートを含んでおります。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材派遣会社からの派遣社員、アルバイトを含み、常用パートは除いております。)は( )内に年間の平均人数を外数で記載しております。

なお、上記のほか関連会社等へ出向している従業員が15名おります。

2.全社(共通)として、記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

3.従業員数が前期末と比べて1,252名減少しておりますが、その主な理由は、連結子会社であったNifco Germany GmbH、およびその子会社Nifco KTW America Corporationの譲渡によるものであります。

(2) 提出会社の状況

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年令(才)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

1,383

(347)

41.7

16.7

7,095,341

 

セグメントの名称

従業員数(人)

合成樹脂成形品事業

1,227

(347)

ベッド及び家具事業

(-)

全社(共通)

156

(-)

合計

1,383

(347)

 (注)1.従業員数は就業人員(当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含むほか、常用パートを含んでおります。)であり、臨時雇用者数(パートタイマー、人材派遣会社からの派遣社員、アルバイトを含み、常用パートは除いております。)は( )内に年間の平均人数を外数で記載しております。

なお、上記のほか関連会社等へ出向している従業員が15名おります。

2.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

3.全社(共通)として、記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

(3) 労働組合の状況

 労働組合は結成されておりません。

 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

①提出会社

当事業年度

補足説明

管理職に占める女性労働者の割合(%)

 (注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

 (注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)3.

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

5.8

54.8

58.5

61.4

53.3

(注)4.

 

(注)1.管理職に占める女性労働者の割合(%)は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

     但し、管理職の定義は、弊社基準の算出として管理職級の専門職を含んでおります。また、2024年4月に導入した新人事制度により、管理職への登用準備が完了している準管理職層を除く実績値へ変更しております。

2.男性労働者の育児休業取得率(%)は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.労働者の男女賃金格差は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。(厚労省基準)

  管理職比率などに差異があることで1名あたり賃金に男女差がありますが、制度(人事体系、報酬、評価、人材育成)において性別による処遇差はありません。

4.年収格差の基準は厚労省基準とし、支援社員無期フルタイムは正規雇用に含んでおります。

 

<男女の賃金差異についての補足説明>

  株式会社ニフコにおける男女の賃金差異(全労働者の58.5%、正規雇用労働者の61.4%)については、正規雇用労働者には支援社員無期フルタイムが、有期・パートには嘱託再雇用者(割合として男性が多い)が含まれており、これが影響しているため、以下に正規社員の一般職(非管理職)の男女基本給月額の差異について記載します。当社は等級Gradeごとに賃金水準を設定しており、同一等級の基本給は下表の通り男女ほぼ同等であります。

 

一般職

女性平均基本給/
男性平均基本給

G05

100.1%

G04

96.4%

G03

100.0%

G02

100.9%

G01

96.4%

※一般社員には5つの等級(G01~G05)があります。

 

②連結子会社

当事業年度

補足説明

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率

(%)

(注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)3.

全労働者

うち正規雇用労働者

うち

パート・有期労働者

㈱ニフコ山形

0.0

67.0

44.0

81.7

60.4

(注)4.

㈱ニフコ熊本

0.0

86.7

42.9

76.9

55.9

(注)4.

シモンズ㈱

7.5

0.0

81.8

82.1

36.2

(注)4.

(注)1.管理職に占める女性労働者の割合(%)は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2.男性労働者の育児休業取得率(%)は、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

3.労働者の男女賃金格差は、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。(厚労省基準)

4.年収格差の基準は厚労省基準とし、支援社員無期フルタイムは正規雇用に含んでおります。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

(1)サステナビリティに関する考え方

 当社グループは、「小さな気づきと技術をつなぎ、心地よい生活と持続可能な社会を創造する」というパーパスを掲げる会社です。社会課題や顧客の困りごとをチャンスと捉え、「提案力」「グローバル展開力」「品質対応力」を強みとして、独創的かつ付加価値の高い製品を創り出します。環境や社会の変化を見越したステークホルダーへの価値提供は、社会課題や顧客の困りごとの緩和・解決につながり、そのサイクルを回すことで、長期ビジョン「"アイデア"を"カタチ"にする会社」を実現します。更に、社会課題をチャンスと捉え、新事業創出とビジネス創出を通じて社会に貢献することを目標としています。当社のサステナビリティ経営は、事業戦略を起点としつつ、財務戦略及びESG戦略が相互に影響し合う構造で推進されています。これら三位一体の戦略は、リスクと機会の適切な管理を行う委員会を通じて統合的に運営されています。

 なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

①サステナビリティに関するガバナンス

  2024年度の当社グループのサステナビリティに関する取組は、主にリスクについてはリスクマネジメント委員会が管理を行いました。気候変動についてはESG推進室と対応を主管する組織が連携し、人的資本については管理本部ダイバーシティ推進プロジェクト室と管理本部人事部が管理を行いました。これらの取組状況は、対応を主管する組織の執行役員から取締役会に報告され、取締役会において、サステナビリティに関する進捗や成果を共有し、モニタリング・監督を行いました。取締役会で討議された内容は、直接あるいは経営会議を通じて対応を主管する組織に伝達され、それぞれの経営計画・事業運営に反映されました。2024年度のサステナビリティ委員会の開催状況については、「第4 提出会社の状況 4.コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要 ② 企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由 イ.会社の機関の基本説明」をご参照ください。

  上述のとおり、執行側の取組と取締役会の監督が機能していたことも踏まえ、2025年度からは、これまで取締役会の諮問機関として設置されていたサステナビリティ委員会を執行側へと移行しました。移行後は、同委員会がサステナビリティ全般に関する機会について議論し、重要課題の統制を行い、取組状況を管理し、その結果を経営会議に提言します。リスクについては、リスクマネジメント委員会が、総合的なリスク評価を行い、各主管組織の取組状況等を経営会議に報告提言します。経営会議で議論されたサステナビリティ全般の機会とリスクは、サステナビリティ委員会及びリスクマネジメント委員会を通して、当社の各事業部門及びグループ各社の経営計画に反映されます。

  2025年度のサステナビリティ委員会の構成員は、社内取締役、常勤監査等委員、本部長、事業部長、カンパニー長、人事部長、法務室長、情報システム部長です。サステナビリティ委員会の委員長は、ESG推進室長が務めます。

 

 コーポレート・ガバナンスの2025年度新体制図

 

 

②リスク及び機会の管理

  当社グループのリスクについては、リスクマネジメント委員会でリスクの低減に向けた管理を行っています。リスク項目についてはリスクマネジメント基本規程で組むべきリスク類型が定義されており、それらのリスクは、対応を主管する組織にて分析、発生頻度と影響額の点数付けや対応策の立案等がなされます。それらの分析をもとにリスクマネジメント委員会で総合的なリスク評価を行い、対応策の決定と管理を行います。2025年度よりリスク管理の進捗は、リスクマネジメント委員会から経営会議に報告され、リスク対策の実行・運営は、リスクマネジメント委員会の指示のもと、主管する各組織にて行われます。

  当社グループのサステナビリティに関する機会については、2025年度よりサステナビリティ委員会が統制を行います。気候変動、人的資本、その他サステナビリティ全般の機会を特定し、目標設定と対策の管理を行います。機会管理の進捗はサステナビリティ委員会から経営会議に報告され、機会の対策の実行・運営は、サステナビリティ委員会の指示のもと、主管する各組織にて行われます。

 

③各重要課題の戦略及び目標と取組状況

[マテリアリティの特定]

  当社グループは、サステナビリティ経営の基盤を強化すべく2020年にマテリアリティ(重要課題)を特定しました。マテリアリティの特定にあたり、はじめにバリューチェーン分析を行い、当社グループの事業が社会や環境にどのような影響を及ぼしているかを整理、把握しました。その分析結果に基づき、重要なテーマの洗い出し、環境・社会へのインパクト評価、財務に影響するリスクと機会の分析などを行いました。その後、対応を主管する組織で見直しを重ね、ESG推進室にてとりまとめを行い、取締役会にて承認され、下記のマテリアリティが決定しました。これは、中期経営計画の実行と、長期ビジョン及びパーパスの実現、そして持続可能な成長と社会的価値の創造を両立させていくことを目的としたものです。

  2025年度からは体制を見直し、これらのマテリアリティの、主にリスクについては、リスクマネジメント委員会を通して、機会についてはサステナビリティ委員会を通して、対応を主管する各組織に落とし込まれ、両委員会がその進捗モニタリング行います。各マテリアリティの取組内容は、両委員会より定期的に経営会議に報告されます。同会議にて改善や新たな取組が決定され、両委員会を通して、再び各組織及びグループ各社へ指示が出されます。こうしたサイクルを実施し、マテリアリティを随時見直しつつ、リスクと機会に適切に対応し、中長期の目標を実現してまいります。

2024年度 ニフコマテリアリティ

 

[サステナビリティ経営の強化]

・コーポレート・ガバナンスコードを意識した経営の取組

  持続的な経営を追求する「サステナビリティ経営の強化」を実現するための戦略の一つは「コーポレート・ガバナンスコード(以下「CGコード」)を意識した経営」の取組です。サステナビリティ経営を実行するガバナンス体制に不備がある場合、常に変化する会社及びグループを取り巻く顕在化したリスクへの対応の遅れにつながります。こうしたリスクを極小化するためにも、年に2回、CGコードを意識した経営についての見直しを行い、取締役会に報告し、コーポレート・ガバナンスコード報告書を更新しております。当社は、提出日現在において、CGコードの全ての原則を実施しております。

・取締役会実効性の向上

  当社は、取締役会実効性の向上のため、年に1回、取締役会の実効性に関する評価を実施しております。2024年度は、2025年2月までの取締役会実効性に関するアンケートを実施し、分析・評価を行いました。その結果、全体として、8割を超える回答者から、当社のガバナンス体制が前年に対して拡充した、との評価を得ました。特に、当社取締役会の強みとして、適正な規模・構成及び多様性が確保されていること、自由闊達な議論がなされていることが挙げられました。一方で、長期的目線での経営戦略や成長戦略・サステナビリティに関する討議の深化、決議事項に対するフォローアップ、株式市場との関係強化、リスクマネジメント体制の強化について意見が寄せられ、今後の課題と認識しております。この結果をもとに、取締役会で実効性向上のための討議会を実施し、今後の対応を決定いたしました。

・次世代取締役層の育成

  2024年度は取締役会の諮問委員会である指名・報酬・ガバナンス委員会が8回開催されました。当委員会では、取締役・執行役員の指名・報酬に関わる討議だけでなく、取締役層のサクセッションプラン策定や、次世代経営者の選抜・育成も重要課題と認識しており、それらに活発に取り組みました。従業員の人材育成については、「(3)人的資本に関する取組」を御参照ください。

・コンプライアンスの徹底

  もう一つの戦略として「コンプライアンスの徹底」に取組んでおります。コンプライアンス違反による不祥事を起因とした会社の企業価値損失や、売上げの低下と対応コストの発生、社会的評価の毀損など、これらのリスクを防ぐために、定期的なコンプライアンスの研修を実施しており、2024年度は、当社及び国内子会社で実施いたしました。今後は、海外子会社においても同様の研修を実施いたします。

 

  「サステナビリティ経営の強化」を実現し、当社グループの取組を明確に示すことは、企業価値の向上に寄与し、取引先との強固な協力体制構築につながります。そのためにも、適切にリスクと機会に対応できるガバナンス体制を持続し、コンプライアンス遵守を徹底して、サステナビリティ経営を強化してまいります。

 

[情報セキュリティの確保]

  「情報セキュリティの確保」を実現するための戦略は「情報セキュリティ対策の維持・向上」への取組です。サイバー攻撃やマルウェアの感染による情報セキュリティシステムの機能不全等が発生した場合、業務停止等、顧客への供給停止、取引先からの信頼喪失、損害賠償の発生につながります。このようなリスクを防ぐために、当社及び国内子会社では、発生時の行動計画の実行性確認を目的として、共通セキュリティシステムの再構築や、標的型メール攻撃訓練、セキュリティインシデント訓練を実施しました。また、従業員に対して情報セキュリティ教育を実施し、社員へのセキュリティ意識を高める対応も行っております。海外子会社についても、各社セキュリティシステムの構築と、従業員への情報セキュリティ教育を実施しております。情報セキュリティシステムの整備と訓練及び従業員に対する啓蒙活動を継続することで、行動計画に即した迅速な対応と円滑な顧客応対を可能とします。今後もこれらの取組を通して、外部からの攻撃や内部の脆弱性に対して強い防御を保持し、堅牢な情報セキュリティを確保してまいります。

 

[製品の安全性と品質の確保]

  当社グループにおいて「製品の安全性と品質の確保」は重要な課題であり実現しなければならない戦略です。不良品の発生は顧客の信用失墜・失注はもとより、ブランドイメージを低下させ、また、製品の禁止物質含有を見落とした場合は、製品の回収交換に留まらず、損害賠償などのリスクにつながります。これらのリスクに万全を期して対応する策として、専門性を有した人材の育成に加え、SOC管理システムを導入し、開発プロセス及び変更管理での検証を徹底し製品の安全性を確保しております。担当を主管する各組織において実施される、より詳細な対応策の数々はこれらにとどまりません。2024年度は、中国の拠点を先駆けとして、このSOC管理システムを水平展開しました。今後順次、他の地域も展開を行います。近い将来に拡大するリサイクル材の活用に対しては、これらの体制を活用し、開発プロセスから十分な検証を実施していきます。また、万が一のリスクに備え製品毎のリコール保険を見直し、より充実させました。

  信頼性が高く、優れた製品を提供することは、「環境」「安全」「快適」の普遍的な商品戦略を目指す当社にとって、顧客との長期的な取引関係と競合他社との差別化に必須な要件です。今後も企業価値向上のために徹底して製品の安全性と高い品質を確保してまいります。

 

[廃棄物ゼロ(サーキュラーエコノミー)への取り組み推進]

  当社は、限りある資源を有効に活用し、廃棄物の発生を最小限に抑えることが、持続可能な社会の実現に不可欠であると認識しています。この認識に基づき、当社はマテリアリティの一つとして「廃棄物ゼロ(サーキュラーエコノミー)への取り組み推進」を掲げ、原材料価格の変動リスクや廃棄物処理コストの上昇、規制強化などのリスクに対応するとともに、環境価値を提供する企業としての責任を果たすことで、企業価値の向上を図ってまいります。主な取組として、製造および品質工程の改善によって廃棄物の低減、廃棄物分別強化による有価物への転用を行っています。但し、サーキュラーエコノミーに関しては、再生材を利活用する上での認証の課題を抱えており、現時点で明確な指標は開示しておりません。その他、2024年度は、J-FAR※の公募事業である「XtoCarプロジェクト」に採択され、2025年度から製造などを行う産業(動脈産業)と廃棄物のリサイクルや適正処理を行う産業(静脈産業)が連携し、非自動車由来の廃プラスチックを自動車部品に再生する新しいリサイクルシステムを構築する活動の取組を開始しました。将来的には再生材を利用した自動車向け製品の量産化を目指し、2025年度には自動車に適用できる廃プラスチックの種類を指標に置き、調査分析を通じて1種類以上選定することを目標にしています。

 ※J-FAR 公益財団法人 自動車リサイクル高度化財団

 

回次

第69期

第70期

第71期

第72期

決算年月

2021年3月

2022年3月

2023年3月

2024年3月

総排出量         (t)

1,434.4

1,265.4

1,478.3

1,295.5

有価物重量        (t)

349.7

487.9

942.5

1,020.6

総廃棄物量  合計   (t)

1,784.1

1,753.3

2,420.8

2,316.1

※2024年度の実績は2025年度の秋頃に当社ホームページ「サステナビリティ」にて公開予定

https://www.nifco.com/csr/environment/index.html

 

  この他、マテリアリティの重要な部分を占める気候変動と人的資本に関する取組を、それらの戦略に沿って(2)以降に記載します。

 

(2)気候変動に関する取組

  当社グループは、マテリアリティの一つに「気候変動への対応」を掲げており、その副次的な課題として「事業全体におけるCO2排出量の削減」と「CO2排出量削減に貢献する製品の研究開発、製造、販売」を掲げております。そのため、国際的に推奨されるガイダンスによるシナリオ分析を行い、その結果、当社グループの気候変動に関するリスクと機会への中長期戦略として、カーボンニュートラルの実現に向けた取組を推進していくことが重要であると認識し、Scope1(自社における直接排出)及びScope2(自社が購入・使用した電力、熱、蒸気などのエネルギー起源の間接排出)のCO2排出量を指標とし、2050年にカーボンニュートラル実現を目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」をしています。

 

①気候変動に関するガバナンス

 気候変動に関するガバナンスは、ESG推進室が事務局となって主管する組織と連携し、シナリオ分析、リスクと機会の抽出、カーボンニュートラルの実現に向けた取組についての協議を行っています。そしてESG推進室が事務局となり、エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律・地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき、半期に1回、法令に対応する組織として環境推進委員会を開催し、計画に基づく進捗を管理しています。2024年度は、これらのCO2削減を含む環境関連活動について、ESG推進室より取締役会に報告しています。

 2025年度からは、サステナビリティ委員会にて気候変動に関するリスクと機会を議論し、取組状況を管理して、その結果を経営会議に提言します。経営会議で議論された気候変動に関する議案は、サステナビリティ委員会を通して、当社の各事業部門及びグループ各社の経営計画に反映されます。

 

②カーボンニュートラルの実現に向けた戦略

 国際的に推奨されるガイダンスによるシナリオ分析の手法で導かれる2021年から2040年までの環境の変化予測に対して、当社は、気候変動に起因する事業リスク及び機会の分析評価を行いました。その結果、当社グループの気候変動に関するリスクへの中長期戦略として、カーボンニュートラルの実現に向けた取組を推進していくことが重要課題であると認識しており、Scope1及びScope2のCO2排出量を指標とし、2050年にカーボンニュートラル実現を目指す「2050年カーボンニュートラル宣言」をしています。シナリオ分析の概要は次のとおりです。

 

 

 

 シナリオ分析の概要

対象範囲

グループ連結対象企業(ベッド及び家具事業を除く)

時間軸

現在~2040年

シナリオ構築

1.地球の平均気温の上昇を産業革命以前の水準から1.5℃以内に抑えるシナリオ(1.5 ℃シナリオ)

参照情報

・IEA※1 WEO2021 NZE、SDSシナリオ

・IPCC※2 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より

SSP1-1.9,2.6

・その他

2.地球の平均気温が産業革命以前の水準から4℃程度上昇するシナリオ(4℃シナリオ)

参照情報

・IEA WEO2021 STEPSシナリオ

・IPCC 第6次評価報告書 第1作業部会報告書より

SSP2-4.5、SSP3-7.9、SSP5-8.5

・A-PLAT S8 気候 RCP8.5

・その他

 

※1 IEA

International Energy Agency(国際エネルギー機関)。第1次石油危機後の1974年11月に、石油を中心としたエネルギーの安全保障を目的としOECD(経済協力開発機構)の枠内に設立された機関。現在は持続可能なエネルギー供給を目指し、気候変動の分析や省エネルギー政策、クリーンエネルギーの推進政策等に貢献。

※2 IPCC

Intergovernmental Panel on Climate Change(気候変動に関する政府間パネル)。各国政府の気候変動に関する政策に科学的な基礎を与えることを目的として、1988年8月にWMO(世界気象機関)とUNEP(国連環境計画)により設立された政府間組織。気候変動に関する最新の科学的知見をまとめた報告書を作成。

 

[気候変動に関連して想定される事業環境の変化]

a 1.5℃シナリオ(気候変動への緩和)において想定される事業環境の変化

 1.5℃シナリオでは、自然環境は2040年ごろに平均気温が現在より1℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の2倍程度になると言われています。その激甚化する風水害に対して政府の投資が増え、CO2排出量削減に向けたより厳しい基準が企業に迫られるようになる可能性があると言われています。世界的に気候変動への対応が進むことにより、自動車は化石燃料を用いる内燃機関が減少し、電気エネルギーを使う自動車へのシフトが進むとともに、これまでの自動車メーカー以外の新規参入企業の存在感が増していく可能性があります。そうなった場合、顧客からは、化石資源を用いる内燃機関用の商品の発注が減り、電気エネルギーを使う自動車に必要な部品の発注が増えるとともに、環境負荷低減を前提に設計、製造された製品を求められることが多くなると考えられます。また、自動車のエンドユーザーの環境意識の高まりから、車の自己所有からシェアリングへのシフトが起こり、世界の自動車生産台数が減少する可能性があります。

 調達、製造においては、炭素税の導入により原材料の調達価格が上がり、また顧客からの要請により再生プラスチック、バイオマスプラスチックなどの原材料への転換が増えていく可能性があります。風水害の激甚化によるサプライチェーン、製造施設などの被災の可能性が高くなり、その場合は、イレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が起こる可能性があります。

 

b 4℃シナリオ(気候変動への適応)において想定される事業環境の変化

 4℃シナリオでは、自然環境は2040年ごろに平均気温が現在より2℃程度上昇し、台風や低気圧の風雨は強まり、洪水の発生頻度は現在の4倍程度になると言われています。激甚化する風水害に対して政府の対策は強化される可能性があると言われています。気温上昇により、熱中症搬送者数は現在の2倍程度に増加するとともに、これまで少なかった蚊媒介の感染症なども増えていく可能性があります。

 化石資源の価格及びエネルギー料金は上昇していく可能性があります。また、風水害の激甚化によるサプライチェーン、製造施設などの被災頻度が高くなり、その場合は、イレギュラーな対応や操業停止を余儀なくされる事態が増加する可能性があります。

 

 以上のシナリオ分析より当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があると推測される市場リスク、市場/技術リスク、急性リスク、市場/製品/サービスの機会を抽出しました。カーボンニュートラルの実現の戦略として、これらのリスク及び機会に対応する取組が、主管する各組織において、通常業務の中で様々な形で実施されています。それらのうち、重要なものを以下の「④リスク及び機会に対する取組及び指標と目標」に記載しています。

 

③気候変動に関するリスク及び機会の管理

 ESG推進室が事務局となって主管する組織と連携し、1.5℃シナリオ及び4℃シナリオ下における環境の変化から、発生する可能性のある事業リスクと機会を抽出し、推測される財務への影響度について検討を行いました。その結果、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があると推測される市場リスク、市場/技術リスク、急性リスクを抽出しました。一方、その他の組織においても、当社グループの損失危機を管理するリスクマネジメント委員会の指示のもと、気候変動に関するリスクの発生頻度と影響額の点数付けや対応策立案等について分析・検討を行っています。リスクマネジメント委員会では、主管組織より報告された気候変動に関するリスクについて、総合的に評価し、管理しています。

 また、気候変動の機会についても同時に、シナリオ分析を経て、ESG推進室が事務局となって主管する組織と連携し市場/製品/サービスの機会を抽出し、対応を主管する組織において取組を行っています。2025年度より、サステナビリティに関する機会は、サステナビリティ委員会にて特定され、取組状況を管理して、その結果を経営会議に提言します。経営会議で議論されたサステナビリティに関する機会は、サステナビリティ委員会を通して、当社の各事業部門及びグループ各社の経営計画に反映されます。

 

④気候変動のリスク及び機会に対する取組及び指標と目標

a 気候変動に関するリスク及び機会の重要な取組と指標及び目標

 国際的に推奨されるガイダンスによるシナリオ分析の手法で導かれる2021年から2040年までの環境の変化予測に対して、財務面及び非財務面の両面から影響度の大きい気候変動のリスク項目を絞りこみ、検討を行いました。市場リスクでは、電気自動車の普及が進み、従来のエンジン周りの部品や給油口周りの部品など、ガソリン車特有の構造に関する機能部品が徐々に少なくなる可能性や、異業種からの自動車業界への参入が増え、異業種に納入していたメガサプライヤーなどが新たに競争相手となることが、中長期的に予想されます。市場/

技術リスクでは、CO2排出量を抑えた代替製品の出現により既存及び新興の自動車メーカーでの当社グループの商圏が減少する可能性があります。急性リスクでは、暴風雨、雪、凍結等の気候の激甚化によりサプライチェーンの断絶が起こる可能性が高まり、それによって引き起こされる材料調達不足による顧客への供給リスク回避のために、高価な材料購入及び輸送費負担が増加する可能性があります。一方、市場/製品/サービスの機会として、CO2排出量削減を目的とした、より軽量な車や、非ICE車、再生可能エネルギー使用の機会などが急拡大することにより、モーター、バッテリー、電池(全固体電池含む)、ブレーキ周りなど、特有の機能部品の需要が拡大する可能性があると考えます。これらのリスク及び機会の主な取組は、対応を主管する各組織において、通常業務の中に様々な形で対応が取られています。2024年に発表した開発製品としては、生産時のCO2発生量は他の材料のブラッシュクリップよりも少なく、使用後は水と二酸化炭素に分解され、自然に還る生分解性プラスチック製ブラッシュクリップ等があります。これらの移行リスク及び物理的リスク、そして気候変動に伴う機会に関する全ての指標は、社内において定め、すでに実行中ですが、事業戦略における重要性を鑑み、現在は非公開としています。今後、公開も視野に入れ慎重に検討していきます。

 その他、2024年度に重要な取組として行われたものは、市場規制や顧客からの再生原材料の使用要求に対し、適時適切な対応ができないことによる売上の減少及び調達コストが上昇する可能性があるという市場リスクに対する、非化石資源材料、リサイクルプラスチック材、天然資源(バイオマス)を利用した材料の活用推進と、再生材(含むバイオマスプラスチック)を採用した製品の仕様を満たす製品形状と工法の開発です。これらの重要な取組は、「廃棄物ゼロ(サーキュラーエコノミー)への取り組み推進」というマテリアリティにもつながっています。2024年度は、「XtoCarプロジェクト」と称し、製造などを行う産業(動脈産業)と廃棄物のリサイクルや適正処理を行う産業(静脈産業)が連携し、非自動車由来の廃プラスチックを自動車部品に再生する新しいリサイクルシステムを構築する活動に取組を開始しました。将来的には再生材を利用した自動車向け製品の量産化を目指し、2025年度には自動車に適用できる廃プラスチックの種類を指標に置き、調査分析を通じて1種類以上選定することを目標にしています。

 

b 「2050年カーボンニュートラル宣言」を実現するための指標及び目標

 当社は、気候変動に対する中長期戦略として「2050年カーボンニュートラル宣言」をしています。CO2排出量削減に関する大枠の指標としまして、Scope1とScope2を対象に、2030年に当社及び国内グループ会社において2020年比で33%削減、2050年にカーボンニュートラルを目指して取組を進めています。名古屋工場においては、オンサイトPPA及びオフサイトの自己託送を25年度に開始予定としており、これにより再生可能エネルギーの比率を年々上昇させ、早期にカーボンニュートラル達成モデル工場となることを目指しています。その他、詳細の指標及び目標については、2027年度の次期中期経営計画に反映を予定しています。

 また、集計済みとなっている最新の当社及び国内グループ会社のCO排出量は以下のとおりです。集計方法は、世界的な標準算出方法となっているGHGプロトコルを採用しています。継続的な省エネ活動を推進しておりましたが、2023年度において生産量の増加に伴うエネルギー量の増加が省エネ等による削減量を上回ったため、Scope1及びScope2は微増いたしました。しかしながら前述のとおり、名古屋工場をはじめとして再生可能エネルギー比率を最大限上昇させていく対応を目指していきます。また、Scope3は算出根拠を発注金額としており、為替変動、資材及び輸送費の高騰により、結果増加となりました。なお、2024年度の数値については、2025年度の秋頃に当社ホームページ「サステナビリティ」にて公開予定です。

https://www.nifco.com/csr/environment/index.html

 

Scope1、Scope2推移グラフ(提出会社)

 

 

 

 

Scope3推移グラフ(提出会社)

 

 

 現在、Scope1及びScope2については、当社及び国内グループ会社のみのCO2排出量開示となっていますが、これらの情報把握及び開示は、CO2排出に関する規制強化や炭素税の導入により事業コストの上昇や、脱炭素化に向けた顧客及び取引先からの期待の高まりに対し、当社及び国内グループ会社内で影響の大きい分野や工程を特定して事前に対策を講じることや、再生可能エネルギーの導入や効率的な設備投資、新技術開発の必要性を具体化することで、競争優位性を維持するための行動指針の立案につながります。これにより、持続可能な成長の基盤を強化、そして国内という限定的な範囲であっても、積極的なデータ開示は環境配慮を重視する顧客や投資家の信頼を得る手段となり、ビジネス機会を広げるきっかけとなるため、将来的には連結会社全体への展開に資するものと考えています。

 なお、現時点で海外拠点からのデータについては、収集がエクセルベースであり、データ精度の観点から現状では正式開示に至っておりませんが、2025年度よりScope1及びScope2の参考値としての開示を予定しております。今後はグローバルでのデータ精度向上と第三者保証に耐えうる水準の管理体制の整備を視野に入れ、システム導入等を検討してまいります。

 また、Scope3(サプライチェーン全体における温室効果ガス排出量)の算定については、サプライチェーン全体におけるデータの保有状況や管理方法にばらつきがあるため、現時点では統一的に把握・算定することが困難となっています。そのため、当社及び国内グループ会社のみのCO2排出量開示としています。今後は、重要関係会社との連携強化を行い、Scope3に関するデータの整備及び開示を段階的に検討していきます。

 

 気候変動のリスク及び機会の影響の可能性は様々ですが、当社は企業価値を最大化すべく、これらのガバナンス及びリスク機会管理によって、今後も取組を適切に実施してまいります。

 

(3)人的資本に関する取組

①人的資本に関する戦略

 人的資本につきましては、ニフコグループのパーパス及び中長期計画を実現するための重要な経営資源と考えており、当社中期経営計画 "NIFCO GLOCAL STRATEGY"の長期ビジョンに基づき、「"アイデア"を"カタチ"にする」人材の創出を当社及びグループ会社の人材戦略の目標としております。

 「"アイデア"を"カタチ"にする」人材を創出するためには、「多様な人材が持つ能力を最大限に開発し発揮させる、エンゲージメントの高い職場」が必要となりますので、当社グループの企業理念を浸透させた組織・人材の土台の上に、「人材育成」「多様性」「従業員エンゲージメント」の3つを重要な柱とし、それぞれにおいて活動計画を策定し実行しております。

 

 まず、当社人材の土台となるのは、当社の企業理念 Purpose / Mission / Values となります。当社の企業理念体系の起点は、各従業員が個々に持つ「My Purpose(マイパーパス)」すなわち、個々人の価値観、人生観と会社の「Purpose(存在意義)」の重なりです。これを定めることにより、従業員個人と会社のつながり(パーパス・ファスニング)を意識し、自身の人生観や価値観を活かすキャリアを自律的に見つけ、エンゲージメントを高めながら主体的・自律的に学び成長することができると考え、各従業員がマイパーパスを策定するワークショップを2024年度より全社で展開しております。

 

ニフコグループ 企業理念体系

 

 

 

 

 「人材育成」は、当社グループの持続的成長を支える最も重要な課題(マテリアリティ)の一つであり、競争力の源泉と捉えています。当社において、グローバルスケールで活躍できる人材の要件/行動指針は、当社のValuesに基づき、「チャレンジ、イノベーション、コミュニケーション、コラボレーション」のキーワードとともに、各等級の等級定義や行動指針として明文化されています。こうした人材の育成を目的に、階層別型、自己研鑽型、選抜育成型、全社型の4つのカテゴリーに構成された従業員研修体系を制定・運用しております。また、従業員の自律的なキャリア形成を促すため、資格取得奨励制度や外部のeラーニング受講費用の補助金制度などにより、自己啓発にも取り組みやすい制度を整えています。社内での研修だけでなく、海外トレーニー制度や他社留学や複業留学など越境体験の機会も提供しています。更に、次世代経営者育成においては、定期的に策定する管理職部長層サクセッションプランとの整合を踏まえ対象者を選抜し、育成を進めております。

 

 「多様性」は、多様な人材の適所配置により、属性や価値観が異なる個々人から生まれる小さな気づきを生かし、ニフコの強みであるイノベーションや新製品・新技術の開発につなげ創造的なコラボレーションを実現することは、ニフコのグローバル競争力を一層高めるための重要な経営戦略のひとつと考え、人材の多様性の確保・推進に取り組んでいます。具体的には、「心理的安全性の高い職場作り」を目的とした各種研修の実施、ダイバーシティ推進の専門部隊によるあらゆる属性の社員が働きやすい職場環境を構築するための様々な施策の企画・実行、更に、自己申告や社内公募を通した社内異動により、各組織に多様な経験・スキルを持つ人材の適所配置に取り組んでいます。一方で、ニフコグループ企業行動憲章並びにニフコグループ人権方針に基づいた全社人権研修を行い、多様な人材の活躍を阻害する人権リスクの低減にも努めています。

 

 「従業員エンゲージメント」は、人材の定着率を高め、生産性・付加価値を最大化する中で重要な要素と考えます。まず、上述のパーパス・ファスニングにより、従業員個人と会社のつながりを固めた上で、各人が活き活きと働くことができる職場環境を構築するため、人事制度や働き方の見直しを随時行っております。人事制度は、2024年度に「ニフコ流JOB型人事制度」を導入(当社)、市場競争力を強化するための等級・評価・報酬制度の見直しを行いました。また、働き方については、時間管理から解放され自由度を高めたフレックスタイム制度・休暇制度の拡充や、働く場所を自分で選べるようにテレワーク制度の導入など、働き方と休暇制度の充実を図ることで、高いエンゲージメントを保ちながら、事業の持続的な発展に貢献できる職場作りを推進しております。また、この従業員エンゲージメント向上のための各種施策は、隔年で実施するグローバル従業員エンゲージメントサーベイにおいて、その効果を定期的に確認しております。

 

②人的資本に関するガバナンス

 多様性に関する取組は専門部隊(管理本部ダイバーシティ推進プロジェクト室)が、人材育成・エンゲージメントなどその他の人的資本に関する取組は管理本部人事部が、それぞれ主管組織として行動計画の策定・実行しており、各領域の機会認識から行動計画を定め運営しております。人的資本に関する重要事項は、社長以下全執行役員と事業部長が出席し定期的に開催される「人材会議」に報告され、討議されております。また、人的資本におけるリスクについては、取締役監査等委員及び全本部長から構成さるリスクマネジメント委員会にて、全社リスク管理の一環として管理され、それを補完する仕組みとして、内部通報制度を設け、従業員及び社外関係者から社内(取締役監査等委員)及び社外(顧問弁護士)の窓口で直接通報を受けております。これらの人的資本に関する執行側の取組は、定期的に取締役会に報告され討議されております。

 なお、取締役層のサクセッションプランと次世代育成については、取締役会の諮問委員会である指名・報酬・ガバナンス委員会が管掌しており、委員会として次世代経営者の選抜・育成に積極的に関与する体制となっております。

 

③人的資本に関するリスク及び機会の管理

 人的資本におけるリスクについては、全社リスクを一元管理するリスクマネジメント委員会が統制、総合評価しているリスク一覧のうち、人材に関するリスクについて、発生原因、想定される事象、影響度・発生頻度の点数付け、中・長期的な対応策の立案と緊急事態発生時の行動計画を管理本部がまとめ、当委員会に報告します。リスクマネジメント委員会及び当委員会を管轄する経営会議にて討議された各施策に関する対応策や改善策は、管理本部担当組織の行動計画に反映され、それらを基に運用しております。一方、人的資本における機会は、管理本部の担当組織が毎年期初に特定・見直しを行い、それに基づき年間の行動計画を策定、実行しています。

 2025年度からは、この内容をサステナビリティ委員会に報告し、当委員会にて全社の機会を管理いたします。

 

④人的資本に関する各取組と指標及び目標

a 人権侵害リスク低減に向けた取組

 多様な人材を活かすためには、まず人権侵害リスクのない職場作りが重要です。ニフコグループは、関係法令及び国際ルールを遵守するとともにその精神を尊重し、社会的良識を持って行動するため、2021年に「ニフコグループ人権方針」を策定しております。この人権尊重の取組を更に進め、当社内にある人権侵害リスクの排除を目指し、2024年度は国内全社で人権研修及びアンケート調査を実施、社内に存在する人権リスクを可視化いたしました。今後、可視化されたリスクの低減に向けた対策の策定・実行を進めるとともに、同様の活動をグローバルに展開し、全ての従業員が活き活きと働ける職場の実現を進めます。

 

b 人材育成に向けた取組

 多様な人材が持つ能力を最大限に開発し、「"アイデア"を"カタチ"にする」人材を創出することが最重要課題であることを踏まえ、「チャレンジ、イノベーション、コミュニケーション、コラボレーション」のキーワードにより明示された人材要件・行動指針を満たすグローバル人材を育成するため、当社においては、階層別型、自己研鑽型、選抜育成型、全社型の4つのカテゴリーに構成された従業員研修体系図を毎年期初に制定し、年間を通して研修体系図に則り各研修を実行・運営しております。海外・社外での就業体験が視野を広げ視座を引き上げる、という考えのもと、海外トレーニー制度や、他社留学・複業留学などの越境体験の機会も提供しています。海外トレーニー制度では、毎年日本から海外へ、海外から日本へトレーニーの送り出し・受け入れを実施しています。また、次世代経営者育成は、管理職のサクセッションプランを踏まえて選抜された部長層・課長層・準管理職層のメンバーに対し、視野を広め視座を高めることを目的として、社外のリソースを使って育成を進めております。人材育成の指標の一つとして、人材育成投資額を管理しております。また、同様の人材育成プログラムは、各子会社・拠点においても、個社のニーズに基づき策定・運営されており、その状況については、グローバルHR会議等の場で共有されております。

 

2024年度研修体系図

 

人材育成の指標

2023年度 実績

提出会社

2024年度 実績

提出会社

グローバル

人材育成投資額

109百万円

134百万円

今後グローバルでの指標管理に取組んでまいります。

 当社グループの人材育成の目標は、人材育成投資額だけではなく、様々なニーズに合わせて判断しているため、記載しておりません。

 

c 人材の多様性の確保に向けた取組

 マテリアリティの副次課題として、多様な属性や価値観を持つ人材を確保し、あらゆる属性の社員が働きやすい職場環境を構築するため、当社では、ダイバーシティ推進の専門部隊が、「心理的安全性の高い職場作り」を目的とした、各種ダイバーシティ&インクルージョン研修を実施しているほか、毎年様々な施策を企画・実行しています。2024年度は、全管理職を対象としたアンコンシャスバイアス研修を実施したほか、外部から専門家を招き、「仕事と介護の両立セミナー」を実施しました。多様な人材を適所配置し活躍の機会を推進することで、多様な視点や経験を持つ人材による新しいアイデアの創出や創造的なコラボレーションにつながります。

 当社人材の多様性を示す指標としては、女性・外国籍・中途入社の在籍比率を管理しております。2025年3月末時点では、下表のとおりです。

 

多様性の状況

2025/3/31時点

提出会社

グローバル

人数

割合

人数

割合

女性

取締役

2

25.0%

管理職

14

5.8%

233

21.8%

正社員

222

16.4%

3,809

41.8%

外国籍

取締役

0

0.0%

管理職

11

4.6%

正社員

56

4.1%

中途入社

取締役(社内)

0

0.0%

管理職

77

32.0%

正社員

519

38.3%

 

 上表の状況を踏まえ、当社における多様性の確保・推進が、当社の持続的成長においては最重要と認識しており、「管理職に占める女性労働者の割合」「男性労働者の育児休業取得率」「労働者の男女の賃金の差異」の3点を、当社の継続的に監視すべき指標と定めております。これらの指標における2024年度実績と将来目標、今後の取組は、下表のとおりとなっております。なお、「第1 企業の概況 5.従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」において国内連結子会社における多様性に関する指標及び定義を記載しています。

 

多様性の指標

提出会社

2024年度 実績

取組・目標

管理職に占める

女性労働者の割合

5.8%(14名)

※専門職も含む

各組織における高ポテンシャル人材を特定し、育成計画の策定とフォローアップを定期的に実施しております。また、2024年度は、管理職を対象とした「アンコンシャスバイアス研修」を実施し、管理職層の意識改革も進めました。2030年度10%達成を目標とし、これらの取組を今後も継続して行います。

男性労働者の

育児休業取得率

54.8%

2023年度に育休経験者・管理職による座談会を実施し2030年度90%達成を目標とし、引き続き職場の労働環境を整備してまいります。

労働者の

男女賃金差異

58.5%

各等級の報酬テーブルに、男女による差はありません。詳細は、「第1 企業の概況 5.従業員の状況 (4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異」をご参照ください。引き続き、女性管理職比率の改善、全社残業削減など、差異縮小につながる活動に注力いたします。

 

d 社内環境整備に向けた取組

 多様な人材が持てる能力を最大限に発揮できる職場環境作りを目指し、当社では、人事制度や働き方の見直しを随時行っております。人事制度については、2024年度に「ニフコ流JOB型人事制度」を導入(当社)、各管理職ポジションの役割を明確にし、年齢・経験に拘わらず、役割をこなせる人材を登用し役割に応じて処遇する制度に改訂すると同時に、市場競争力を強化し優秀な人材の流出を抑制し外部からの登用を推進するため、報酬制度・水準の見直しを行いました。グローバルにおいても、各国・地域において、十分な市場競争力を維持するための報酬改訂を定期的に実施しております。働き方については、継続して総労働時間の削減に向けた取組を行い、時間管理から解放され自由度を高めたフレックスタイム制度や働く場所を自分で選べるテレワーク制度をライン作業者等を除く社員に導入するなど、柔軟な働き方と休暇制度の拡充をグローバルに進め、高いエンゲージメントを保ちながら、事業の持続的な発展に貢献できる職場作りを推進しております。これらの社内環境整備については、各子会社・拠点も個社のニーズに基づき取組んでおり、グローバルHR会議等で相互把握・共有しております。

 

社内環境整備の指標

提出会社

2024年度 実績

「ニフコ流JOB型人事制度」導入

導入完了

総労働時間の削減に向けた取組

年間所定労働時間:1,898.75時間 (目標1,900時間以内)

残業時間:平均 24.78時間/月 (目標30時間以内 支援社員除く)

※グローバル共通の指標は、有効性のあるものが特定できていないため、設定しておりません。

 

e 従業員エンゲージメント向上への取組

 従業員のエンゲージメントは、人材の定着率を高め、当社の生産性・付加価値を最大化する中で重要な要素と考えます。当社グループでは、2020年より隔年でグローバルの従業員エンゲージメントサーベイを実施し、各組織における強み・弱みを定量的・客観的に把握した上で、従業員のエンゲージメントを高めるための施策を各組織で策定・実行し、管理しています。

 

従業員エンゲージメントの指標

「持続可能なエンゲージメント」スコア(好意的な回答率)

2022年度 実績

2024年度 実績

取組・目標

提出会社

65%

68%

各組織で、エンゲージメント向上に向けた施策を策定・実行しています。2026年度目標70%に向けて、引き続き活動を継続します。

グローバル

81%

84%

国内外の各子会社で、エンゲージメント向上に向けた施策を策定・実行しています。 2026年度目標86%に向けて、引き続き活動を継続します。

※「持続可能なエンゲージメント」は、WTWタワーズワトソン社のフレームワークで、当社の経営目標に対する支持、従業員としての誇り、仕事に対する意欲・やりがい・活力に関する複数の質問に対する回答で測られます。