2025年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

当社グループでは、このようなリスクに対する適切な管理態勢を構築し、リスク発生の回避及びリスクが顕在化した際の影響の極小化に努めております。

なお、文中における将来情報に関する事項は、有価証券報告書提出日(2025年6月23日)現在において当社グループが判断したものであり、以下の記載は当社株式への投資に関連する全てのリスクを網羅するものではありません。

 

① 信用リスクが業績に与える影響について

当社グループの事業は、取引先に対する与信期間が中長期(リース取引の平均期間は5年程度)にわたることから、与信期間中に取引先の倒産等が発生し、リース料等の回収が困難となるリスクがあります。

当社グループは、信用リスクの損失を極小化するため、個々の取引先の信用状況を審査・モニタリングするとともに、ポートフォリオにおける信用リスクの状況を定量的に評価・モニタリングし、資産の健全性を維持、改善するよう努めております。また、日本公認会計士協会の「リース業における金融商品会計基準適用に関する当面の会計上及び監査上の取扱い」(業種別監査委員会報告第19号)に基づき、銀行等金融機関に準じた資産の自己査定を実施しており、決算において、「一般債権」は過年度の貸倒実績に基づく予想損失額を、「貸倒懸念債権及び破産更生債権等」は取引先個別の回収不能見込額を算定して貸倒引当金等を計上しております。さらに、「ビジネス・リスク・レビュー委員会」を設置して大口与信先の状況等についてモニタリングを行い、経営陣に定期的に報告しております。

しかしながら、今後の景気動向によっては、取引先の信用状況の悪化により新たな不良債権が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

② 金利・為替・株価等の変動及び資金調達が業績に与える影響について

当社グループは、顧客にリースや割賦販売を行う物件や当社が保有する事業資産の購入資金を主に金融機関や市場からの調達により賄っております。また、航空機等の外貨建て資産を保有している他、社債等の市場性のある債券投資やファンドを通じた投資等を行っております。

当社グループでは、金融市場情勢に対し注意を払うことはもとより、資産運用と資金調達のギャップを常時把握し、金利・為替・株価等の変動リスク等(=市場リスク)の管理、新規調達等の方針を協議・検討する「ALM委員会」を開催し、これらリスクの適切なコントロールに努めております。また、当社は、健全な財務体質を背景に、複数の格付機関から優良とされる格付けを取得しています。

 

格付機関名

発行体格付

CP格付

株式会社日本格付研究所

AA-

J-1+

株式会社格付投資情報センター

A+

a-1

 

しかしながら、今後の金利・為替・株価や金融市場の動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、今後当社の格付けが引き下げられた場合、コマーシャル・ペーパー等による有利な調達が制限されるほか、通常より高い金利での資金調達を余儀なくされるなど、必要な資金の適切な確保が困難となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 諸制度の変更が業績に与える影響について

当社グループは、現行の法律・税務・会計等の制度や基準をもとに事業展開しております。当社グループにおいては、これらの諸制度及び基準の変更に備え、様々な情報収集及び検討を行っておりますが、将来、これらの諸制度及び基準が大幅に変更された場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。なお、会計制度については、2024年9月に企業会計基準委員会が、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を新たに公表しております。

 

④ 戦略的提携・企業買収等に伴うリスクについて

当社グループは、事業の更なる拡大・成長を目的としてベンチャー企業や国内外の新規事業への出資又は戦略的提携や企業買収等を行うことにより、ビジネス領域の拡充を図っております。

戦略的提携や企業買収等に際しては、対象となる企業のビジネス、財務内容、法務等について綿密なデューデリジェンスを行い、事前にリスクを把握するとともに、収益性や投資回収の可能性について十分な検討を行い、リスク回避に努めています。

しかしながら、デューデリジェンスの段階では確認されなかった問題が事後的に発覚した場合や、外部環境の変化等により提携・買収後の事業が想定どおり進捗しない場合には、当初に期待した業績への寄与やシナジー等を得られず、当社グループが行った投資額を十分に回収できないリスクがあり、のれんの減損等により当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。なお、買収を通じて取得した企業ののれんは、当連結会計年度末において46,304百万円となっております。

 

⑤ 気候変動リスクについて

気候変動により自然災害が激甚化し、物理的リスクが顕在化した場合や、脱炭素社会への移行に向けた炭素税の導入といった法規制の強化等がなされた場合、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループは、「CSV推進委員会」を設置し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に基づき、気候関連のリスクと機会を適切に特定して、気候変動が当社グループの財務面に与える影響の分析及び情報開示を実施しております。さらに、2030年度までに事業活動に伴う温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」の目標を設定して気候変動リスクの低減に努めております。

詳細については、「第2 事業の状況 2.サステナビリティに関する考え方及び取組」をご参照ください。

 

⑥ 災害等によるリスクについて

当社グループは、地震・噴火などの自然災害や事故、新型コロナウイルス等の感染症の流行など緊急時に備えて、人命・安全の確保及び事業の継続に向けたBCP(事業継続計画)基本原則を定めておりますが、被害の状況によっては、当社グループの事業活動が制限され、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ サイバーセキュリティリスク・情報セキュリティリスクについて

当社グループは、各事業においてITシステムを活用して多数の顧客情報を取扱っているほか、様々な経営情報等の内部情報を保有しており、サイバー攻撃等により、ITシステムが長期間にわたり正常に作動しなくなった場合、当社グループの業務が著しく停滞し、業績等への悪影響が生じる可能性があります。

また、不正アクセス等により、個人情報や法人の秘密情報等が外部に漏洩した場合には、当社グループの社会的信用に影響を与え、また損害賠償等を行う必要が生じることにより、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、「システム戦略委員会」を設置して、ファイアウォールなどのいわゆる入口対策・出口対策に加えてエンドポイントの監視等、多層防御の考え方で対策を図るとともに、役職員等に対して教育・研修の徹底を進めております。

 

⑧ DX(デジタル・トランスフォーメーション)推進に関連するリスクについて

DX戦略を牽引するデジタル人材の不足等によりDXへの対応の遅れが生じた場合やデジタル技術の適用が著しく遅延した場合、当社グループの競争力が相対的に低下することで経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。

テクノロジーの進歩により、社会のデジタルシフトが加速する中、当社グループでは、事業を通じての様々な社会課題の解決と経済価値の同時実現を目指すため、デジタル技術を活用したビジネススタイルへの変革、新たなソリューションの創出に取り組んでいます。こうした活動を全社的に推進していくため「DX戦略推進委員会」を設置し、DX戦略推進に必要な組織・体制の整備等を図っております。

 

⑨ 設備投資動向の変動等が業績に与える影響について

当社グループが取扱うリース取引や割賦販売は、顧客が設備投資を行う際の資金調達手段の一つという役割を担っており、民間設備投資額とリース設備投資額とは概ね正の相関関係があります。

当社グループは、営業基盤の拡充、顧客の多様かつ潜在的なニーズを捉えた様々なソリューション提案の実施等に努め、付加価値の創出に注力しておりますが、今後企業の設備投資動向によっては、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑩ 事業戦略に関連するリスクについて

当社グループは、中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」に沿って事業領域の拡大や収益力強化に取り組んでおりますが、グループ経営上で重要度が高い事業分野(アセットビジネス、モビリティ物流ビジネス、エネルギー・環境ビジネス、BPOサービス等)において想定されるリスクとして以下のようなものがあります。

 

a.不動産

当社グループは、不動産賃貸や不動産への投融資を行っております。取組みにあたっては、取引先の信用力や将来収支、資産価値を慎重に見極めておりますが、取引先の業績悪化や不動産の稼働率低下に伴うキャッシュ・フローの減少及び不動産市況の悪化により資産価値が下落するリスクがあります。景気悪化や事業環境の変化により、保有資産の価値が大幅に変動した場合には、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

b.航空機

当社グループは、国内外において航空機リース事業を展開しております。個別案件の取組みにあたっては、航空会社の信用力や物件の将来価値を見極めて検討を実施し、さらに航空業界の動向や航空機の機体価値の変動状況について定期的にモニタリングしております。

しかしながら、航空会社の業績が悪化した場合や経済環境の変動等により航空機の資産価値が著しく下落した場合には、機体の売却損や減損損失の計上等により、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

c.モビリティ・ロジスティクス

当社グループは、乗用車、トラック等のリース事業及び物流関連ビジネスを展開しております。取組みにあたっては、取引先の信用力や物件の将来価値を見極め、また、パートナー企業と事業提携を行う場合には、パートナー企業の信用状況や企業ビジョンを見極めておりますが、中古車市場の変動により資産価値が著しく下落するリスクや、パートナー企業の信用力や経営方針の違いにより、期待どおりに事業を展開できないリスク等があり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

d.エネルギー・環境

当社グループは、国内外で再生可能エネルギー事業、系統蓄電池事業及び再生可能エネルギーファンド等への投融資を行っており、今後も事業拡大を後押しする経営環境が継続するものと見込んでおります。

大規模な太陽光発電所や風力発電所の運営においては、天候不順等の影響で発電量が減少するリスクがあります。また、市場取引が主な収入源となる系統蓄電池事業では、日本卸電力取引所の取引価格が変動することで、収益性が計画を下回るリスク等も存在します。これらのリスクに対応するため、当社グループでは事業計画を慎重に検証し、事業開始後も運用状況や市場動向を継続的にモニタリングする体制を構築しております。

しかしながら、異常気象によって年間発電量が想定より著しく減少した場合や、不測の事態で電力供給が困難となった場合や需給バランス等の影響により取引価格が著しく変動した場合には、評価上の損失計上あるいは追加拠出が必要となり、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

e.BPOサービス・ICTソリューション

当社グループは、顧客の一部業務処理を受託するBPOサービスやICTソリューションを提供しております。IT化による人的ミスの削減、業務マニュアルの作成及び人材の育成等により、十分なサービスを提供する体制を整えておりますが、納期の遅れや業務品質の低下等が発生した場合、事業活動に影響が生じる可能性があります。

 

f.海外

当社グループは、グループ全体の持続的な成長を実現するため、海外での事業展開や投融資を進めております。現在、北米やアジアを中心に、リース・ファイナンス事業に加え、航空機のオペレーティング・リース事業や再生可能エネルギー発電事業等を展開しています。

個別案件に取り組む際には、地政学的要因を含むカントリーリスクを考慮し、資産価値や事業性を慎重に見極めております。

しかしながら、為替リスクのほか、進出先の国や地域における法令・規制の変更、政治・経済・社会情勢の変化に伴う予期せぬ事態が発生するリスクがあり、これらのリスクが顕在化した場合、当社の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑪ 業務運営全般・コンプライアンスに関するリスクについて

業務運営全般に関するリスクとして、不適切な事務処理が行われることによる事務リスク、コンピュータシステムのダウンもしくは誤作動等のシステムリスク、必要な人材の育成・確保が困難となる等の人的リスク等があり、これらのリスクが顕在化した場合、円滑な業務運営が損なわれることにより、事業活動に影響が生じる可能性があります。当社グループでは、リスク管理規程等に基づき、リスクの特性や重要性に応じた管理を実施し、これらのリスクのコントロールに努めております。

また、コンプライアンスに関するリスクについては、当社グループのコンプライアンス基本方針を定めるとともに、コンプライアンス運営体制強化と実効性確保を目的に「コンプライアンス委員会」を設置し、年度毎にコンプライアンス・プログラムを策定して内部管理体制の強化に取り組んでおります。さらに、グループ全体で法令遵守や人権尊重の意識を高めるため、継続的に研修を実施しております。

 しかしながら、国内外の各種関連法令や社会規範・社内ルール等が遵守されなかった場合や当社グループの事業活動において人権侵害に該当する事象が生じた場合、業務の制限や停止、取引先等からの損害賠償の請求、社会的信用の喪失等により、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

配当政策

3【配当政策】

当社グループは、業績及び目標とする経営指標等を勘案し、確固たる経営基盤、財務体質の強化を図るべく、株主資本の充実に努めるとともに、長期的かつ安定的な配当の継続により、株主への利益還元に努めることを基本方針としております。

内部留保資金につきましては、優良営業資産取得の為の資金に充当するなど、今後の経営基盤の強化に活用してまいります。

当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。

以上の方針に基づき、第56期(2025年3月期)の配当は、中間配当225円に期末配当230円を加えた、1株当たり年間配当455円を予定しております。

 

 当社は、会社法第454条第5項の規定に基づき、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として、中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2024年11月8日

6,802

225

取締役会決議

2025年6月24日

6,954

230

定時株主総会決議

(予定)