2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 4,736,743 100.0 - - -

事業内容

3【事業の内容】

 当社および当社の連結子会社等(連結子会社および連結変動持分事業体、2025年3月末現在1,537社)の主たる事業は、証券業を中核とする投資・金融サービス業であり、わが国をはじめ世界の主要な金融資本市場を網羅する営業拠点等を通じ、お客様に対し資金調達、資産運用の両面で幅広いサービスを提供しております。具体的な事業として、有価証券の売買等および売買等の委託の媒介、有価証券の引受けおよび売出し、有価証券の募集および売出しの取扱い、有価証券の私募の取扱い、自己資金投資業、アセット・マネジメント業、銀行業、その他の証券業および金融業等を営んでおります。なお持分法適用会社は2025年3月末現在14社であります。

 当社は特定上場会社等であります。特定上場会社等に該当することにより、インサイダー取引規制の重要事実の軽微基準については連結ベースの数値に基づいて判断することとなります。

 また、当社および当社の連結子会社等の業務運営および経営成績の報告は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 21 セグメントおよび地域別情報」に記載の事業別セグメントに基づいて行われております。事業別セグメントを構成する主要な関係会社については、以下の企業集団等の事業系統図をご参照ください。

 

・企業集団等の事業系統図

 ※1 持分法適用関連会社

  2 2025年4月1日付けでバンキング部門を新設し、4部門構成といたしました。

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)業績の概況

 以下の業績の概況は、「第1[企業の概況] 1[主要な経営指標等の推移]」および「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表]」の部とあわせてご覧ください。また、以下の内容には、一部、将来に対する予測が含まれており、その内容にはリスク、不確実性、仮定が含まれています。野村の実際の経営成績はここに記載されている将来に対する予測と大きく異なる可能性があります。

 

エグゼクティブ・サマリー

① 全体の業績について

 当期の収益合計(金融費用控除後)は、前期比21.2%増の1兆8,925億円、金融費用以外の費用計は同10.3%増の1兆4,205億円となりました。税引前当期純利益は4,720億円、当社株主に帰属する当期純利益は3,407億円となりました。自己資本利益率は10.0%となり、また、当期のEPS(注)は前期の52.69円から111.03円となっております。なお、2025年3月末を基準日とする普通配当は、1株当たり24円といたしました。また、当社は2025年12月25日に創立100周年を迎えることを記念して、2025年3月31日を基準日とする記念配当を1株当たり10円とし、年間での配当は1株につき57円といたしました。

(注)希薄化後1株当たり当社株主に帰属する当期純利益

 

② 当期における主な取組み、実績についての評価等

 当期は、グループの戦略として掲げる「パブリックに加え、プライベート領域への拡大・強化」が確実に進展し、安定収益の拡大やホールセール部門収益の多様化、コスト・コントロールなど、中長期的な取組みがさらに進展しました。

 ウェルス・マネジメント部門では、包括的な資産管理ビジネスの提供がさらに進展し、純増を伴ってストック資産が拡大したことでストック収入が増加し、税引前当期純利益は1,708億円と11年ぶりの高水準となりました。

 インベストメント・マネジメント部門では、オルタナティブ運用資産残高が過去最高を更新し、資金純流入を伴って運用資産残高が拡大しました。事業収益は前期比19%増、投資損益も増加し、部門収益・税引前当期純利益ともに2021年4月の部門設立以降で最高となりました。

 ホールセール部門はすべてのビジネスライン・地域で収益が伸長しました。グローバル・マーケッツでは、エクイティ・プロダクト、エグゼキューション、証券化商品が好調で、アジア・中東で展開するインターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)も大幅増収となりました。インベストメント・バンキングでは、高水準のコーポレートアクションが継続した日本でECMやM&Aが大幅増収となり、欧州のM&Aや全地域のソリューション・ビジネスも伸長し、収益は日本・海外ともに比較可能な2017年3月期以降で最高となりました。

 

③ 資本政策と株主還元の考え方

 当社は、適正な資本比率を確保しつつ、最適な資本配分を通じて持続可能な成長を実現したいと考えております。経営ビジョン達成に向けた布石として、コスト水準は抑制しながらも、パブリックに加え、プライベート領域のビジネスを拡大する為の成長投資も行うことで、投資と株主還元のバランスを図るとともに、当社の生産性向上と収益源の拡大を通じた株主価値の最大化を目指しています。

 配当については、半期毎の連結業績を基準として、連結配当性向を40%以上とすることを重要な指標の1つとして設定しており、また、自己株式取得による株主還元分を含めた総還元性向を50%以上とすることを、株主還元上の目処としています。各期の株主還元の総額は、バーゼル規制強化をはじめとする国内外の規制環境の動向、連結業績をあわせて総合的に勘案し、決定することとしています。
 詳細は「第4[提出会社の状況] 3[配当政策]」をご参照ください。

 

④ 事業セグメント別の概況

各部門の状況については以下のとおりです。

 

 2025年3月期のウェルス・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比12.2%増の4,515億円、金融費用以外の費用は同0.4%増の2,807億円となりました。その結果、税引前当期純利益は同39.2%増の1,708億円となりました。ウェルス・マネジメント部門では、お客様一人ひとりが目指す未来の実現に向かって、お客様のニーズに沿った包括的な資産管理サービスを充実させることで、ウェルス・マネジメントサービスの強化に取り組んでまいりました。当期は不透明感の強いマーケット環境でしたが、対面チャネルを中心に投資信託の買付が増加し、フロー収入等は増加しました。加えて、継続的に取り組んできたお客様の資産全体に対する資産管理サービスにより、預り資産の拡大にともなうストック収入も大幅に増加しました。また、ワークプレイス(職域)サービスによる接点拡大を通じて、持続的な顧客基盤の構築、部門の中長期的なサービス拡大を目指していますが、現役世代のお客様を含め、ワークプレイスサービスを提供するお客様を順調に拡大することができております。今後は、サービスを必要とする多くのお客様に、対面によるコンサルティングや、デジタルツール等を用いた非対面サービス、資産形成ニーズへの対応を含むワークプレイスサービスなど、幅広い形でウェルス・マネジメントサービスを提供してまいります。

 

 2025年3月期のインベストメント・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比24.9%増の1,925億円、金融費用以外の費用は同9.5%増の1,029億円となりました。その結果、税引前当期純利益は同48.8%増の896億円となりました。安定収益である事業収益および税引前当期純利益は、2021年4月の部門設立以降で最高となりました。インベストメント・マネジメント部門では、運用資産の拡大と高付加価値化による事業収益の成長を目指してきました。当期の資金純流入は2.6兆円と、前期に引き続き高水準となりましたが、日本株市場の下落など市場要因もあり、当期末の運用資産残高は前期末比微増の89.3兆円にとどまりました。一方、期中平均の運用資産残高でみると当期は前期比で大きく増加したことが、事業収益の拡大につながりました。また、自社のアクティブ運用や、ウェルス・マネジメント向けのプライベート資産運用ビジネスといった高付加価値分野が伸長したことも、事業収益の増加に寄与しました。特に、オルタナティブ運用資産残高は、前期末比40.2%増の2兆6,082億円となりました。また、投資家に合った投資スタイルでバランスよく投資できる「のむラップ・ファンド」は安定した資金流入が継続し、純資産総額が1兆円を突破しました。

 

 2025年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は、前期比22.1%増の1兆579億円、金融費用以外の費用は、同9.8%増の8,917億円となりました。その結果、税引前当期純利益は同208.4%増の1,663億円となりました。グローバル・マーケッツは、リスク管理を徹底しながら、マクロ環境や金融政策および米国の選挙などに絡むマーケットの不透明感を背景とした投資家のポートフォリオのリバランス取引やヘッジ取引などに対して流動性を提供しました。また、顧客アクティビティやマーケットの機会を適切に捉え、特に証券化商品、エクイティ・プロダクト、およびインターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)を中心に収益を積み上げました。インベストメント・バンキングは、地域ごとに違いはあったものの、グローバルに顧客活動が増え、ニーズが多様化する中で、サービスやソリューションの提案に尽力した結果、案件が増加しました。特に、日本ではアドバイザリーとエクイティ・ファイナンスおよびエクイティ・ソリューション、海外地域ではアドバイザリーとプライベートクレジットを含むソリューションが堅調だったことが増収につながりました。

 

主要なパフォーマンス指標の進捗

 

《経営指標》

自己資本利益率(ROE)・税引前当期純利益

 当社は、2030年度に向けた経営の定量目標としてROE8~10%+、5,000億円超の税引前当期純利益の達成を最も重視する経営指標として設定しています。

 国内でコーポレートガバナンス・コードが導入された後、日本企業においては資本コストを意識した経営の重要性が高まっております。加えて、金融業界においては、世界的な金融規制の枠組みのもとで、さらなる資本の有効活用が求められています。そのため、当社では、経営資源の最適配分という観点がより一層重要になるということに鑑み、2020年5月に開催された取締役会での決定を踏まえ「経営の基本方針」を改定するとともに、2021年3月期より、重要な経営指標として自己資本利益率(ROE)を用い、ビジネスの持続的な変革を図ることとしました。

 ROEは当社株主に帰属する当期純利益を前期末当社株主資本合計および当期末当社株主資本合計の平均で除した値と定義しています。ROEの開示は、企業価値の向上や、投資家の皆様が当社の経営状況や資本の有効活用の状況を把握するためにも有益だと考えています。

 ROEの目標水準としては、当社に求められる資本コストを意識し、2031年3月期において8~10%+の水準を掲げております。一方で、ROEは必ずしも財務の健全性を反映するものではないと考えられることから、ROE向上を企図した過度な資本効率の追求を行うことのないよう、財務健全性に十分に配慮した上での企業価値の創造を重視し、ROEの向上に努めております。なお、2025年3月期のROEは、2024年3月期の5.1%から上昇し、10.0%となりました。

 あわせて、持続的成長の実現に向けて、企業価値の向上と当社の経営状況をより具体的に理解できるよう、2030年度に向けた経営の定量目標として5,000億円超の税引前当期純利益の達成を掲げております。2025年3月期の税引前当期純利益は、4,720億円となりました。

 

普通株式等Tier1比率

 野村グループが遵守しなくてはならないグローバル金融規制は複数ありますが、なかでもバーゼル委員会および金融庁が定める自己資本規制は、当社のビジネスの在り方に、直接影響を及ぼすものです。そのため当社は、連結普通株式等Tier1比率を11%以上に維持することを掲げ、厳しいマーケットストレス等がかかった際のバッファーを含む財務健全性についても考慮しております。なお、2025年5月に公表したとおり、新たに上限を設定することとし、連結普通株式等Tier1比率のターゲットレンジとして11%~14%を掲げております。

 2025年3月31日現在の連結普通株式等Tier1比率は、2024年3月31日現在の16.29%から減少し、14.52%となりました。当社の普通株式等Tier1比率の詳細と算定方法については、「第2[事業の状況] 4[経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析] (5)流動性資金調達と資本の管理」の「連結自己資本規制」の項目をご参照ください。

 

 

《事業セグメント別の指標》

ウェルス・マネジメント部門

ウェルス・マネジメント部門の事業活動の成果を定量的に示す指標として、ストック資産、ストック資産純増、フロービジネス顧客数、ワークプレイスサービス提供数の4項目を設定し、ビジネスの持続的な推進と発展を目指しています。これらの指標の開示は、ウェルス・マネジメント部門のお客様との接点における進捗とともに持続可能な成長性を投資家の皆様が把握するに際して有益だと考えています。

 

(単位:兆円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

 

増減率

 

2025年3月期

 

増減率

ストック資産 ………………………

 

18.7

 

 

23.0

 

23.0

 

 

23.5

 

2.3

 

(単位:十億円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

 

増減率

 

2025年3月期

 

増減率

ストック資産純増 …………………

 

580.5

 

 

702.0

 

 20.9

 

 

1,374.0

 

95.7

                       ※後述の定義変更にともない、2024年3月期以前を遡及修正

(単位:千件)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

 

増減率

 

2025年3月期

 

増減率

フロービジネス顧客数 ……………

 

1,446

 

 

1,692

 

17.0

 

 

1,644

 

△2.9

ワークプレイスサービス提供数 ………………

 

3,489

 

 

3,627

 

4.0

 

 

3,883

 

7.0

 

ストック資産は、投資信託や投資一任、保険、レベルフィーなど、お預り資産に対し運用管理費用等の手数料を頂戴する資産の総額に関連ローンを加算して算出しています。当該ローン金額は2025年3月末の連結財務諸表の貸付金として報告されているうちの約9,927億円です。2025年3月末時点のストック資産残高は23.5兆円であり、ストック資産拡大の取組みおよび市場要因により、2024年3月末時点の23.0兆円より0.5兆円、2.3%増加しています。

 

ストック資産純増は、ストック資産の買付・流入金額から売却・流出金額を差引した金額であり、時価変動を除いたストック資産の拡大を測るための指標です。なお、ストックビジネスの進捗を正確に把握できるよう、当期より、投信分配金による純減を含まないよう定義を遡及的に修正しております。資産管理ビジネスの浸透により2025年3月期のストック資産純増年度累計は13,740億円と2024年3月期の7,020億円を95.7%上回っています。

 

フロービジネス顧客数は、事業年度内にフロービジネス(フロー収入が発生するビジネス)を提供した顧客数の累計であり、フロー収入の拡大を実現するために重要な顧客基盤の拡大を測るための指標です。先行き不透明感の高まりを背景に、期末に向けて積み上がりが鈍化した結果、2025年3月末時点のフロービジネス顧客数は164.4万件と2024年3月末の169.2万件を2.9%下回っています。

 

ワークプレイスサービス提供数は、持株会会員数、持株会由来口座数(現会員除く)、企業型DC加入者など、職域に関連するサービスの提供数を合算した数字であり、職域ビジネスを通じた顧客基盤の拡大を測るための指標です。2025年3月末時点のワークプレイスサービス提供数は388.3万件です。2024年3月末の362.7万件より25.5万件、7.0%増加しており、持株会会員数の増加を中心に、持続的な成長に繋がる顧客基盤の拡大を実現しています

 

 

インベストメント・マネジメント部門

インベストメント・マネジメント部門の事業活動の成果を定量的に示す指標として、運用資産残高および資金純流入を設定しております。運用資産残高は、インベストメント・マネジメント部門における運用ビジネスの収益源であり、運用ビジネスの進捗状況を把握する上で有効であると考えております。また、運用プロダクトがどの程度投資家の皆様に受け入れられたか把握する上で、重要な指標になります。資金純流入は、運用資産残高の増減から市場要因等を除いた運用ビジネスの進捗動向を把握する上で有効であると考えております。運用資産の拡大、それによる部門収益拡大目標の達成における施策の効果を確認する上で、重要な指標になります。

 

 

 

 

(単位:十億円)

 

2023年3月31日

 

2024年3月31日

 

増減率

 

2025年3月31日

 

増減率

資金純流入 …………………………

 

△760

 

 

3,760

 

 

 

 

2,648

 

△29.5

 

(単位:兆円)

 

2023年3月31日

 

2024年3月31日

 

増減率

 

2025年3月31日

 

増減率

運用資産残高 ………………………

 

67.3

 

 

89.0

 

32.2

 

 

89.3

 

0.4

 

資金純流入は、資金流入額から資金流出額を差し引いた額となります。なお当該資金流出額は、分配金による流出額を含まない額となります。2025年3月期の資金純流入は2.6兆円となりました。投資信託ビジネスでは、マネー・リザーブ・ファンド等のマネーファンドからの資金流出がありましたが、ETF、オルタナティブ投資、バランス型投信等への資金流入がありました。投資顧問・海外ビジネス他では、国内機関投資家から外国株式、国内債券等への資金流入がありました。

 

運用資産残高は、野村アセットマネジメント、ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント、ウエルス・スクエアの運用資産の単純合計(グロス)から重複資産を控除したものに加えて、インベストメント・マネジメント部門傘下の運用会社の運用資産に対する第三者による投資額を含むものとなります。2025年3月末の運用資産残高は、日本株市場の下落など市場要因があったものの、資金純流入により前期末比微増の89.3兆円となりました。

 

 

ホールセール部門

ホールセール部門では経費率と収益/調整リスク・アセットを主要なパフォーマンス指標として採用しています。これらKPIの開示は投資家に対してコストおよびリソース運用の効率性を示すうえで有効であり、マネジメントはビジネスにおけるコスト削減と収益力の評価に活用しています。

 

 

2023年3月期

 

2024年3月期

 

増減

 

2025年3月期

 

増減

経費率 ………………………………

 

96

 

94

△2

 

 

84

△10

収益/調整リスクアセット ………

 

6.5

 

6.8

0.3

 

 

7.6

0.8

 

経費率は、対象期間の金融費用以外の費用を同期間の収益合計(金融費用控除後、年換算)で除して算出しており、部門運営の効率性を確認するために使用しています。2025年3月期は、前期比で金融費用以外の費用が10%増加した一方、収益合計が22%増加したため、前期に比べて改善しました。収益は、グローバル・マーケッツとインベストメント・バンキング双方において増加しました。グローバル・マーケッツではエクイティ・プロダクト、エグゼキューション、証券化商品、インターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)が大きく伸長し、インベストメント・バンキングではECM(エクイティ・キャピタル・マーケット)、アドバイザリー、およびソリューション・ビジネスで大きく伸長したことにより増加しました。費用の増加は、主に業績にともなう変動費の増加と業績関連費用の増加によるものです。2024年3月期は、収益が全体の費用を上回るペースで増加したため、前期に比べて改善しました。インベストメント・バンキングが主要ビジネスにおいて成長したことに加え、スプレッド・プロダクトとエクイティ・プロダクトを中心とするグローバル・マーケッツの業績が改善した一方、主に業績にともなう変動費の増加とインフレによる固定費の増加により、費用が増加しましたが、前期と比べて比率が改善しました。

 

収益/調整リスク・アセットは、対象期間の収益合計(金融費用控除後、年換算)を部門が使用する同期間の調整リスク・アセット(各会計期間の日次平均)で除して算出しており、使用リソースに対する収益率をそれぞれ確認するために使用しています。調整リスク・アセットは、(1)バーゼルⅢ規制のリスク・アセットと、(2)バーゼルⅢ規制の資本調整項目を当社が内部で設定する最低資本比率で除したリスク・アセット相当額の合計です。各部門の活動に起因する控除額は内部の資本比率(12.5%)で除したうえで各部門のリソース使用額にチャージしたものを、調整リスク・アセットとしています。当社の収益/調整リスク・アセットは、計算手法等の違いにより他社の提示している同様の指標とは定義が異なる可能性があります。当社の信用リスク・アセットおよびオペレーショナル・リスク相当額は金融庁の承認を経て基礎的内部格付手法および標準的手法によりそれぞれ算出しています。市場リスク相当額については、内部モデル方式により算出しています。ホールセール部門のリスク・アセット(RWA)の調整RWAへの換算は、社内の最低自己資本比率目標を反映して調整しています。また、収益/調整リスク・アセットは、RWAに適用される調整が当社の事業部門に帰属するRWAの適切な金額を(規制上の資本として計算されるRWAとは対照的に)把握することを目的としたものであり、当社内部でのリスク許容度を反映した推定値であるという点で、その有用性が制限される可能性があり、当該調整は実際のリソースの用途については正確に反映していない可能性もあります。2025年3月期の収益/調整リスク・アセットの増加は、調整リスク・アセットの増加以上の収益の増加によるもので、グローバル・マーケッツではエクイティ・プロダクト、エグゼキューション、証券化商品、インターナショナル・ウェルス・マネジメント(海外富裕層ビジネス)が大きく伸長し、インベストメント・バンキングではECM(エクイティ・キャピタル・マーケット)、アドバイザリー、およびソリューション・ビジネスが大幅に伸長したことにより増加しました。2024年3月期の収益/調整リスク・アセットの増加は、調整リスク・アセットの増加以上の収益の増加によるもので、主にグローバル・マーケッツのスプレッド・プロダクトとエクイティ・プロダクト、インベストメント・バンキングの主要ビジネスの業績が改善したことにより増加しました。

 

バンキング部門

2025年4月1日付けで、バンキング部門を新設しました。新しい事業セグメントとしてのバンキング部門の指標については、2026年3月期から開示します。

経営成績

 

損益概況

 野村の主要な連結損益計算書情報は以下のとおりであります。

 

2023年3月期

(百万円)

2024年3月期

(百万円)

2025年3月期

(百万円)

金融収益以外の収益:

 

 

増減率

 

増減率

委託・投信募集手数料

279,857

364,095

30.1%

407,011

11.8%

投資銀行業務手数料

113,208

173,265

53.1%

212,234

22.5%

アセットマネジメント業務手数料

271,684

310,154

14.2%

378,196

21.9%

トレーディング損益

563,269

491,611

△12.7%

580,099

18.0%

プライベートエクイティ・デット

投資関連損益

14,504

11,877

△18.1%

7,634

△35.7%

投資持分証券関連損益

△1,426

9,612

444

△95.4%

その他

130,940

175,824

34.3%

223,264

27.0%

金融収益以外の収益合計

1,372,036

1,536,438

12.0%

1,808,882

17.7%

純金融収益

△36,459

25,562

83,603

227.1%

収益合計

(金融費用控除後)

1,335,577

1,562,000

17.0%

1,892,485

21.2%

金融費用以外の費用

1,186,103

1,288,150

8.6%

1,420,521

10.3%

税引前当期純利益

149,474

273,850

83.2%

471,964

72.3%

法人所得税等

57,798

96,630

67.2%

124,709

29.1%

当期純利益

91,676

177,220

93.3%

347,255

95.9%

差引:非支配持分に帰属する当期純利益(△損失)

△1,110

11,357

6,519

△42.6%

当社株主に帰属する当期純利益

92,786

165,863

78.8%

340,736

105.4%

自己資本利益率(ROE)

3.1%

5.1%

 

10.0%

 

 

 2025年3月期の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。この増加は、主にウェルス・マネジメント部門およびインベストメント・マネジメント部門においてアセットマネジメント業務手数料が増加したことおよびホールセール部門においてトレーディング損益が増加したことによります。委託・投信募集手数料は、投資信託募集買付にかかる手数料が増加しました。投資銀行業務手数料は引受・売出手数料およびM&Aアドバイザリーフィーの増加が収益増加に寄与しました。アセットマネジメント業務手数料は期中平均の運用資産の増加にともない、増加しました。トレーディング損益は、フィクスト・インカムビジネスおよびエクイティビジネスが増収となりました。またトレーディング損益には、デリバティブ負債に対して認識する自社クレジットの変化による収益23億円が含まれております。この収益は主にクレジット・スプレッドが拡大したことによるものであります。投資持分証券関連損益は、株価の上昇が限定的で減収となりました。また投資持分証券関連損益には、野村が営業目的で保有する株式等の評価損益と売買損益が含まれます。これらの投資は、取引促進の目的で長期保有する関連会社以外の投資持分証券です。その他は、為替損益が増加しております。

 

 

 

 2024年3月期の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。この増加は、主にウェルス・マネジメント部門において委託・投信募集手数料が増加したことによります。委託・投信募集手数料は、株式買付や投資信託募集買付にかかる手数料が増加しました。投資銀行業務手数料は引受・売出手数料の増加が収益増加に寄与しました。アセットマネジメント業務手数料は運用資産の増加にともない、増加しました。トレーディング損益は、主に米国顧客との取引に起因する損失の回収の剥落により減収となりました。またトレーディング損益には、デリバティブ負債に対して認識する自社クレジットの変化による損失額138億円が含まれております。この損失は主にクレジット・スプレッドが縮小したことによるものであります。投資持分証券関連損益は、株価の上昇により増収となりました。また投資持分証券関連損益には、野村が営業目的で保有する株式等の評価損益と売買損益が含まれます。これらの投資は、取引促進の目的で長期保有する関連会社以外の投資持分証券です。その他は、為替損益が増加しております。

 

 純金融収益は、トレーディング資産およびレポ・リバースレポ取引を含む総資産・負債の水準と構成、ならびに、金利の期間構造とボラティリティに左右されます。純金融収益は、トレーディング業務と不可分な1つの要素であり、野村は、特にグローバル・マーケッツについて、純金融収益と金融収益以外の収益との合計額で、ビジネス全体の収益性を評価しております。2025年3月期においては、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ社からの配当を含む金融収益は前期比12%増加、また、金融費用も前期比10%増加し、その結果、2025年3月期の純金融収益は2024年3月期から増加しました。2024年3月期においては、アメリカン・センチュリー・インベストメンツ社からの配当を含む金融収益は前期比135%増加、また、金融費用も前期比126%増加し、その結果、2024年3月期の純金融収益は2023年3月期から増加しました。

 

 2025年3月期の金融費用以外の費用は、人件費の増加により前年度比で増加しました。

 

 2024年3月期の金融費用以外の費用は、人件費の増加により前年度比で増加しました。

 

 野村は、日本においてさまざまな税金を課されており、グループ通算制度を適用しております。このグループ通算制度は、国税だけを対象としています。国内の法定実効税率は、2023年3月期、2024年3月期、2025年3月期において、31%となっております。なお、2025年度税制改正により、繰延税金資産および繰延税金負債を計算する法定実効税率は、2025年4月1日に開始する事業年度以降に解消すると見込まれる一時差異等について31%から31.5%に増加しております。海外子会社は現地で課税を受けており、通常国内より低い税率が適用されています。そのため野村の各期の実効税率は、各地域での損益状況や、各地域で適用される特有の税務上の取扱いにも影響を受けています。

 

 2025年3月期の実効税率は26.4%となりました。この実効税率26.4%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、評価性引当金の増減により5.3%実効税率が引き下げられたことがあげられます。

 

 2024年3月期の実効税率は35.3%となりました。この実効税率35.3%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、益金に算入されない収益項目の影響により2.5%実効税率が引き下げられた一方で、損金に算入されない費用項目の

増加により6.0%実効税率が引き上げられたことがあげられます。

 

 2023年3月期の実効税率は38.7%となりました。この実効税率38.7%と法定実効税率31%の差異の重要な要因は、益金に算入されない収益項目の影響により4.7%実効税率が引き下げられた一方で、評価性引当金の増減により

11.3%実効税率が引き上げられたことがあげられます。

 

 

 

事業セグメント別経営成績

 

 野村の業務運営および経営成績の報告は、ウェルス・マネジメント部門、インベストメント・マネジメント部門、ホールセール部門の区分で行われており、この部門体制に基づき、事業別セグメント情報を開示しております。2024年4月1日付けで、ビジネスの実態に合わせて「営業部門」を「ウェルス・マネジメント部門」に改称いたしました。

 

 経済的ヘッジ取引に関連する損益、一部の営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社利益(損失)の持分額、本社勘定、その他財務調整項目等は、事業セグメント別情報においては、“その他”として表示されています。2025年4月1日付けで、バンキング部門を新設しました。2023年3月期、2024年3月期および2025年3月期の財務情報等の記載は既存の3部門(ウェルス・マネジメント部門、インベストメント・マネジメント部門、ホールセール部門)に基づいており、2025年4月1日以降にかかる戦略および目標を含む記載は新たな4部門に基づいております。

 

営業目的で保有する投資持分証券評価損益の一部は、セグメント情報には含まれておりません。なお、事業セグメント別経営成績については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 21 セグメントおよび地域別情報」にも記載がございます。また、そこでは、連結財務諸表数値と事業セグメント別数値の調整計算についても説明がありますのでご参照ください。

 

ウェルス・マネジメント部門

 

ウェルス・マネジメント部門の経営成績

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

増減率(%)

 

2025年3月期

増減率(%)

金融収益以外の収益

297,496

 

395,900

33.1

 

440,553

11.3

純金融収益

2,695

 

6,461

139.7

 

10,934

69.2

収益合計(金融費用控除後)

300,191

 

402,361

34.0

 

451,487

12.2

金融費用以外の費用

266,695

 

279,682

4.9

 

280,736

0.4

税引前当期純利益

33,496

 

122,679

266.2

 

170,751

39.2

 

 2025年3月期のウェルス・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)は、主に投資信託残高報酬の増加により、全体として増加しました。

 

 2024年3月期のウェルス・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)は、主に委託・投信手数料の増加により、全体として増加しました。

 

 2025年3月期の金融費用以外の費用は、2024年3月期に比べ横ばいでした。

 

 2024年3月期の金融費用以外の費用は、収益増加にともなう賞与の増加により、増加しました。

 

 

 下の表は、2024年3月期、2025年3月期の商品別の金融収益以外の収益構成の内訳を示しています。

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2024年3月期

 

2025年3月期

増減率(%)

委託・投信募集手数料

173,461

 

183,598

5.8

 株式委託手数料

80,239

 

72,249

△10.0

 投資信託募集手数料

54,857

 

65,852

20.0

 その他手数料

38,365

 

45,497

18.6

トレーディング損益

55,919

 

52,483

△6.1

投資銀行業務手数料

23,066

 

27,323

18.5

投資信託残高報酬

124,446

 

156,732

25.9

その他

19,008

 

20,417

7.4

金融収益以外の収益

395,900

 

440,553

11.3

 

 2025年3月期の委託・投信募集手数料は、投資信託募集手数料の増加により増加しました。2025年3月期の投資信託残高報酬は、ストック収入の増加により増加しました。

 

 

ウェルス・マネジメント部門顧客資産残高

 下の表は、2024年3月末、2025年3月末のウェルス・マネジメント部門顧客資産残高と、その内訳を示しています。ウェルス・マネジメント部門顧客資産にはウェルス・マネジメント部門の顧客の預かり資産および変額年金保険商品に関連する資産が含まれています。

 

(単位:兆円)

 

2024年3月31日

期首顧客資産残高

 

資金流入額

 

資金流出額

 

時価評価損益

 

期末顧客資産残高

株式

78.0

 

31.1

 

△27.0

 

20.4

 

102.5

債券

18.5

 

13.6

 

△18.4

 

6.4

 

20.1

株式型投資信託

10.2

 

3.8

 

△3.6

 

2.9

 

13.3

債券型投資信託

6.8

 

0.8

 

△0.3

 

0.0

 

7.3

外国投資信託

1.2

 

0.5

 

△0.1

 

0.2

 

1.8

その他

7.5

 

1.8

 

△0.8

 

0.1

 

8.6

合計

122.2

 

51.6

 

△50.2

 

30.0

 

153.6

 

 

(単位:兆円)

 

2025年3月31日

期首顧客資産残高

 

資金流入額

 

資金流出額

 

時価評価損益

 

期末顧客資産残高

株式

102.5

 

41.1

 

△38.4

 

△13.0

 

92.2

債券

20.1

 

20.5

 

△23.7

 

3.8

 

20.7

株式型投資信託

13.3

 

5.4

 

△5.0

 

△0.4

 

13.3

債券型投資信託

7.3

 

0.7

 

△0.5

 

△0.8

 

6.7

外国投資信託

1.8

 

0.7

 

△0.2

 

△0.3

 

2.0

その他

8.6

 

2.5

 

△1.1

 

△1.1

 

8.9

合計

153.6

 

70.9

 

△68.9

 

△11.8

 

143.8

 

 2025年3月末のウェルス・マネジメント部門顧客資産残高は、2024年3月末に比べ減少しました。2025年3月末の株式関連資産残高は、株価の下落により時価評価益が減少し、92.2兆円となりました。また、2025年3月末の投資信託残高は、2024年3月末の22.4兆円から0.4兆円減少し、22.0兆円となりました。

 

 2024年3月末のウェルス・マネジメント部門顧客資産残高は、2023年3月末に比べ増加しました。2024年3月末の株式関連資産残高は、資金が流入し24.5兆円増加し、102.5兆円となりました。また、2024年3月末の投資信託残高は、2023年3月末の18.2兆円から4.2兆円増加し、22.4兆円となりました。

 

インベストメント・マネジメント部門

 

インベストメント・マネジメント部門の経営成績

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

増減率(%)

 

2025年3月期

増減率(%)

金融収益以外の収益

120,096

 

149,575

24.5

 

181,010

21.0

純金融収益

8,463

 

4,568

△46.0

 

11,463

150.9

収益合計(金融費用控除後)

128,559

 

154,143

19.9

 

192,473

24.9

金融費用以外の費用

85,064

 

93,945

10.4

 

102,882

9.5

税引前当期純利益

43,495

 

60,198

38.4

 

89,591

48.8

 

 2025年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、主にアメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益の増加およびアセットマネジメント・ビジネスにおける手数料の増加により増加しました。

 

 2024年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、主にアメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益の増加およびアセットマネジメント・ビジネスにおける手数料の増加により増加しました。

 

 2025年3月期の金融費用以外の費用は、主に賞与による人件費の増加により増加しました。

 

 2024年3月期の金融費用以外の費用は、主に賞与による人件費の増加により増加しました。

 

 インベストメント・マネジメント部門の収益合計(金融費用控除後)の内訳は以下のとおりです。

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

増減率(%)

 

2025年3月期

増減率(%)

事業収益(1)

120,664

 

137,249

13.7

 

163,688

19.3

投資損益(2)

7,895

 

16,894

114.0

 

28,785

70.4

収益合計(金融費用控除後)

128,559

 

154,143

19.9

 

192,473

24.9

 

(1) 投資損益を除く部門収益であり、主にアセット・マネジメント事業からの収益(アメリカン・センチュリー・インベストメンツ関連損益を除く)、野村バブコックアンドブラウン株式会社の航空機リース関連事業収益およびプライベート・エクイティ等の投資事業における管理報酬により構成

(2) 部門収益のうち投資に起因するものであり、主にアメリカン・センチュリー・インベストメンツ社への投資、プライベート・エクイティ等の投資事業における投資にかかる損益(公正価値の変動、資金調達コストおよび配当金を含む)により構成

 

 下の表は、2024年3月末、2025年3月末のインベストメント・マネジメント部門の運用会社別の運用資産残高を示しています。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

 

期首運用

資産残高

 

資金流入額

 

資金流出額

 

時価評価

損益

 

期末運用

資産残高

野村アセットマネジメント

69,092

 

31,019

 

△28,614

 

19,514

 

91,011

ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント他

3,868

 

1,799

 

△1,098

 

1,019

 

5,588

単純合計

72,960

 

32,818

 

△29,712

 

20,533

 

96,599

グループ運用会社間の重複資産

△5,688

 

△2,061

 

1,680

 

△1,529

 

△7,598

合計

67,272

 

30,757

 

△28,032

 

19,004

 

89,001

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(単位:十億円)

 

2025年3月31日

 

 

 

期首運用

資産残高

 

期首調整

(注)

 

資金流入額

 

資金流出額

 

時価評価

損益

 

期末運用

資産残高

野村アセットマネジメント

91,011

 

△2,837

 

34,509

 

△33,369

 

△1,264

 

88,050

ノムラ・コーポレート・リサーチ・アンド・アセット・マネジメント他

5,588

 

0

 

1,091

 

△1,382

 

249

 

5,546

単純合計

96,599

 

△2,837

 

35,600

 

△34,751

 

△1,015

 

93,596

グループ運用会社間の重複資産

△7,598

 

2,837

 

△952

 

1,552

 

△97

 

△4,258

合計

89,001

 

0

 

34,648

 

△33,199

 

△1,112

 

89,338

 

  (注)2024年4月1日付の米州の組織再編成にともない、野村アセットマネジメントの単純合計およびグループ運用

  会社間の重複資産から同額の運用資産残高が減少しております。

 

 2025年3月期の運用資産残高は、2024年3月末に比べ横ばいでした。

 

 2024年3月期の運用資産残高は、株価の上昇による時価要因に加え、幅広い商品への資金流入により増加しました。

 

 下の表は、2023年、2024年、2025年それぞれの3月末時点の、野村アセットマネジメントの日本の公募投資信託市場におけるシェア(純資産残高ベース)を示しています。

 

 

2023年3月31日

 

2024年3月31日

 

2025年3月31日

公募投資信託合計

27%

 

26%

 

25%

株式型投資信託

25%

 

25%

 

24%

公社債型投資信託

44%

 

44%

 

44%

(出所)一般社団法人投資信託協会の統計データを基に作成

 2025年3月末における野村アセットマネジメントの運用資産残高に占める国内投資信託残高は、62.1兆円と、対前期比0.8兆円、1%減少しました。その内訳は、1.6兆円の資金流入と2.4兆円の運用減によるものです。市場要因による運用減の中、主に「東証銀行業株価指数連動型上場投信」といった上場投資信託や「のむラップ・ファンド」で残高が増加しました。

 2024年3月末における野村アセットマネジメントの運用資産残高に占める国内投資信託残高は、62.9兆円と、対前期比15.0兆円、31%増加しました。その内訳は、1.5兆円の資金流入と13.4兆円の運用増によるものです。主に「TOPIX連動型上場投信」、「日経225連動型上場投信」といった上場投資信託で残高が増加しました。

 

 

ホールセール部門

 

ホールセール部門の経営成績

 ホールセール部門の経営成績はグローバル・マーケッツとインベストメント・バンキングにより構成されています。また、グローバル・マーケッツはフィクスト・インカムとエクイティにより構成されています。

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

増減率(%)

 

2025年3月期

増減率(%)

金融収益以外の収益

809,681

 

875,664

8.1

 

1,015,803

16.0

純金融収益

△37,301

 

△9,517

 

42,135

収益合計(金融費用控除後)

772,380

 

866,147

12.1

 

1,057,938

22.1

金融費用以外の費用

743,011

 

812,236

9.3

 

891,656

9.8

税引前当期純利益

29,369

 

53,911

83.6

 

166,282

208.4

 

 2025年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。グローバル・マーケッツにおけるフィクスト・インカムは、スプレッド・プロダクトにより増収となりました。グローバル・マーケッツにおけるエクイティは、エクイティ・プロダクトおよびエグゼキューションにより増収となりました。またインベストメント・バンキングは、日本ビジネスおよび海外ビジネスともに増収となりました。

 

 2024年3月期のホールセール部門の収益合計(金融費用控除後)は増加しました。グローバル・マーケッツにおけるフィクスト・インカムは、スプレッド・プロダクトにより増収となりました。グローバル・マーケッツにおけるエクイティは、すべての地域でエクイティ・プロダクトが増収、またエグゼキューションは市場出来高の増加を背景に日本が好調で、増収となりました。またインベストメント・バンキングは、日本ビジネスを中心に増収となりました。

 

 2025年3月期の金融費用以外の費用は、円安による海外拠点の円建て費用の増加および人件費の増加等により、前期から増加しました。

 

 2024年3月期の金融費用以外の費用は、円安による海外拠点の円建て費用の増加および人件費の増加、そして株価の上昇にともなう繰延報酬の増加等により、前期から増加しました。

 

 次の表は、ホールセール部門における収益合計(金融費用控除後)における、グローバル・マーケッツおよびインベストメント・バンキングの内訳表であります。

 

 

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2023年3月期

 

2024年3月期

増減率(%)

 

2025年3月期

増減率(%)

ホールセール部門 収益合計

(金融費用控除後):

 

 

 

 

 

 

 

グローバル・マーケッツ

656,298

 

707,113

7.7

 

874,622

23.7

インベストメント・バンキング

116,082

 

159,034

37.0

 

183,316

15.3

収益合計(金融費用控除後)

772,380

 

866,147

12.1

 

1,057,938

22.1

 

 

グローバル・マーケッツ

 野村は長年にわたって主に国内外の機関投資家を対象として、債券・株式や為替およびそれらのデリバティブ商品のセールスとトレーディングをグローバルに展開してきました。近年では、より多様化・複雑化するお客様からのご要望にお応えするため、トレーディング能力と商品組成能力の強化に取り組み、国内外の機関投資家のみならず、ウェルス・マネジメント部門およびインベストメント・マネジメント部門にさまざまな高付加価値商品を提供すると同時に、インベストメント・バンキングとも協働し、付加価値の高いソリューションを提供しています。また、国内外の機関投資家に加えて、国内の富裕層・諸法人や地域金融機関、国内外の政府機関や金融機関・事業法人などと強固な関係を構築し、ビジネスを拡大しております。これにより、お客様がどのような商品を求めているかを把握し、そのニーズに合わせた商品を国内外のプロダクトラインにおいて迅速に開発・提供することが可能となっております。

 

 2025年3月期のグローバル・マーケッツの収益合計(金融費用控除後)のうち、フィクスト・インカムの2025年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、2024年3月期の4,203億円から4,992億円となりました。スプレッド・プロダクトを中心に好調で前期比で増収となりました。エクイティの2025年3月期の収益合計(金融費用控除後)は2024年3月期の2,868億円から3,754億円となりました。エクイティ・プロダクトおよびエグゼキューションが好調で増収となりました。

 

 2024年3月期のグローバル・マーケッツの収益合計(金融費用控除後)のうち、フィクスト・インカムの2024年3月期の収益合計(金融費用控除後)は、2023年3月期の4,024億円から4,203億円となりました。スプレッド・プロダクトを中心に好調で前期比で増収となりました。エクイティの2024年3月期の収益合計(金融費用控除後)は2023年3月期の2,539億円から2,868億円となりました。すべての地域のエクイティ・プロダクトが好調で増収となりました。

 

インベストメント・バンキング

 野村は、引受け、アドバイザリー等、多様なインベストメント・バンキング・サービスを提供しています。アジア、欧州、米国といった世界の主要な金融市場で、債券、株式、その他の引受業務を行っており、日本国内、クロスボーダーおよび海外のM&A/財務コンサルティング業務を継続的に強化してきました。また、グローバルでのオーダーメイド型サービス提供による、顧客との強固で長期的な関係を構築することを追求しております。

 

 2025年3月期のインベストメント・バンキングの収益合計(金融費用控除後)は、引受・売出手数料およびM&Aアドバイザリーフィーの増加により前期比で増収となりました。

 

 2024年3月期のインベストメント・バンキングの収益合計(金融費用控除後)は、引受・売出手数料の増加により前期比で増収となりました。

 

その他の経営成績

 

 その他の経営成績には、経済的ヘッジ取引に関連する損益、一部の営業目的で保有する投資持分証券の実現損益、関連会社損益の持分額、本社勘定、その他の財務調整が含まれております。詳細につきましては、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 21 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。

 

 その他の経営成績における税引前当期純利益は、2023年3月期、2024年3月期、それぞれ734億円、474億円、2025年3月期は、469億円と2024年3月期に比べ横ばいでした。

 

 2025年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する利益14億円、デリバティブ資産に対するカウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益8億円がその他の業績に含まれております。

 

 2024年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する損失121億円、デリバティブ資産に対するカウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益72億円がその他の業績に含まれております。

 

 2023年3月期に生じたデリバティブ負債に対する自社クレジットの変化に起因する損失54億円、デリバティブ資産に対するカウンターパーティ・クレジット・スプレッドの変化に起因する利益47億円がその他の業績に含まれております。

 

地域別経営成績

 

 地域別の収益合計(金融費用控除後)、税引前当期純利益(損失)については「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 21 セグメントおよび地域別情報」をご参照ください。

 

キャッシュ・フロー

 

 「(5)流動性資金調達と資本の管理」をご参照ください。

 

(2)トレーディング業務の概要

トレーディング目的資産負債

 トレーディング目的資産および負債の内訳については「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 2 公正価値測定 および 3 デリバティブ商品およびヘッジ活動」をご参照ください。

 

トレーディングのリスク管理

 野村はトレーディング業務における市場リスクの測定方法として、バリュー・アット・リスク(VaR)を採用しております。

① VaRの前提

・信頼水準:95%

・保有期間:1日

・商品の価格変動等を考慮

 野村は、開示に使用する保有期間1日のVaRの信頼水準は95%を使用しております。2025年3月期の保有期間1日のVaRデータは以下のとおりです。

 

② VaRの実績

 

2024年3月31日

(億円)

2025年3月31日

(億円)

株式関連

33

20

金利関連

26

21

為替関連

21

15

小計

80

56

分散効果

△25

△18

バリュー・アット・リスク(VaR)

55

38

 

 

2025年3月期

最大値(億円)

最小値(億円)

平均値(億円)

バリュー・アット・リスク(VaR)

69

35

52

 

(3)重要な会計方針および見積もり

 

 重要な会計方針は当社の連結財務諸表の作成に最も重要な影響を与える会計方針であり、適用にあたって経営者による会計上の見積もりに関する最も困難かつ主観的で複雑な判断を必要とするものを指します。見積もりはその性質上、経営者の判断を必要とする仮定やその時点で利用可能な情報の範囲に依拠しています。将来の実績はこれらの見積もりと乖離する可能性があり、結果として連結財務諸表に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

 下表は、重要な会計方針やこれらの会計方針の適用に含まれる重要な会計上の見積もり、見積もりの要素、経営者による仮定と判断、当連結会計年度における見積もりおよび仮定の変更の影響について当期特に重要なものを要約したものです。適用された重要な会計方針および重要な会計上の見積もりの詳細については「第5[経理の状況]1[連結財務諸表等](1)[連結財務諸表][連結財務諸表注記]1 会計処理の原則および会計方針の要旨」および下表に含まれる各連結財務諸表注記をご参照ください。

 

 

重要な会計方針

重要な会計上の

見積もり

経営者による重要な主観的仮定または判断

当連結会計年度における見積もりおよび仮定の変更の影響

 

金融商品の公正価値評価

 

連結財務諸表

注記 2

 

公正価値測定

 

金融商品の公正価値の見積もり

 

野村が保有する金融商品は主に公正価値で評価されております。これらの金融商品の公正価値は観察可能な市場価格のみならず、評価手法の選択や仮定といった判断をともなう要素の影響を受けます。

 

この判断は、特定の金融商品にかかる未実現損益または累積的その他の包括利益の金額および計上時期に影響を与えます。

 

適切な評価手法の選択

·活発な市場において観察可能な市場価格によって公正価値評価される金融商品については、野村は一般的に、当該金融商品の公正価値を決定するため、レベル1のインプットとして当該価格を使用します。

 

·このような観察可能な価格が入手できない金融商品については、レベル2もしくは3のインプットにより公正価値が測定されます。異なる評価手法および仮定が適用された場合、公正価値の測定結果は異なりうるため、適切な評価手法の選択と評価手法に適用される仮定の検証に重要な判断が含まれます。評価手法を選択する際には、これらの金融商品が取引される特定の状況や市場、信頼性のあるインプットの利用可能性、関連する観察可能なインプットの使用の最大化、観察不能なインプットの使用の最小化などのさまざまな要因が考慮されます。

 

 

レベル3インプットの重要性

·市場で観察不能なインプットが用いられる、公正価値レベル3の金融商品の公正価値評価は、より多くの判断を必要とします。

 

·これらの金融商品の公正価値は、流動性、経済環境および特定の金融商品に影響を与えるリスクに対する認識を含む、市場参加者が価格を決定する際に使用する仮定についての経営者の判断に基づいて決定されます。

 

 

当社の評価手法および公正価値の階層における金融商品の分類に関する方針については、連結財務諸表注記2 「公正価値測定」を参照してください。

 

当連結会計年度において公正価値レベル3の金融商品(デリバティブ負債相殺後資産)の公正価値は前連結会計年度の1,041十億円から1,330十億円に増加しました。毎期経常的に公正価値評価される資産の合計に対するレベル3に分類された資産の比率は、2025年3月31日現在で6%(2024年3月31日現在で6%)となりました。

 

レベル3インプットに関する定性的、定量的な情報およびそれらが公正価値測定に与える影響についての詳細については連結財務諸表注記2 「公正価値測定」を参照してください。

 

 

一定の金融商品および取引先に対するエクスポージャー

 市場環境は、野村が一定のエクスポージャーを有するさまざまな金融商品に影響を与え続けています。また、野村は通常の業務においても、特別目的事業体などの取引先に対し、一定のエクスポージャーを有しております。

 

レバレッジド・ファイナンス

 野村は、顧客にレバレッジド・バイアウト、レバレッジド・バイインにかかる貸付金を提供しています。通常このような資金提供はコミットメントを通じて行われることが多く、野村は実行済および未実行コミットメントの双方においてエクスポージャーを有しております。次の表は、2025年3月31日現在において未実行コミットメントがあるレバレッジ・ファイナンスのエクスポージャーを実行済および未実行分に分けて、対象企業の地域別に表しております。

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

実行済残高

 

未実行

コミットメント残高

 

合計

欧州

27,512

 

134,266

 

161,778

米州

17,687

 

210,526

 

228,213

アジア・オセアニア

450

 

28,665

 

29,115

合計

45,649

 

373,457

 

419,106

 

特別目的事業体

 野村が行う特別目的事業体との関与は、これらの事業体を組成すること、またマーケットの状況に応じて、これらの事業体が発行する負債証券および受益権を引受け、売出し、販売することが含まれております。また野村は通常の証券化およびエクイティデリバティブ業務の中で、これらの事業体に対する金融資産の譲渡、これらの事業体が発行したリパッケージ金融商品の引受け、売出し、販売を行っております。さらに野村は、マーケット・メーク業務、投資業務、組成業務に関連し、特別目的事業体にかかる変動持分の保有、購入、販売を行っております。特別目的事業体とのそのほかの関与には、債務保証やデリバティブ契約などが含まれます。

 

 変動持分事業体への関与に関するより詳しい説明は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 7 証券化および変動持分事業体」をご参照ください。

 

新しい会計基準の公表

 「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 1 会計処理の原則および会計方針の要旨:会計方針の変更および新しい会計基準の公表」をご参照ください。

 

(4)繰延税金資産の状況

 

① 繰延税金資産・負債の主な発生原因

 2025年3月31日現在、連結貸借対照表上、その他の資産-その他として記載されている繰延税金資産、およびその他の負債として記載されている繰延税金負債の内訳は、以下のとおりであります。

 

(単位:百万円)

 

2025年3月31日

繰延税金資産

 

減価償却、その他の償却、および固定資産の評価

38,105

子会社・関連会社株式投資

310

金融商品の評価差額

123,754

未払退職・年金費用

6,571

未払費用および引当金

86,813

繰越欠損金

462,392

リース負債

45,937

その他

19,994

繰延税金資産小計

783,876

控除:評価性引当金

△571,017

繰延税金資産合計

212,859

繰延税金負債

 

子会社・関連会社株式投資

120,341

金融商品の評価差額

107,997

海外子会社の未分配所得

3,014

固定資産の評価

22,930

使用権資産

41,413

その他

5,760

繰延税金負債合計

301,455

繰延税金資産(負債)の純額

△88,596

 

② 繰延税金資産の算入根拠

 繰延税金資産は、米国会計基準に基づき、将来において実現すると予想される範囲内で認識しており、将来において実現が見込まれない場合には評価性引当金を計上しております。なお、将来の課税所得の見積期間は納税単位ごとに個別に判断し、適正な期間見積もっております。

 

③ 過去5年間の課税所得および見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額

 当社は、2022年4月1日より日本にて連結納税制度からグループ通算制度へ移行し、野村證券株式会社を含む主要子会社は当制度に含まれております。上記①に記載されている繰延税金資産のうち、日本の通算グループにおける繰延税金資産(負債)の純額は△97,245百万円となっており、野村の連結財務諸表における繰延税金資産(負債)の純額の大部分を占めております。

 

 以下の過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)では、2021年度以前についてはグループ通算制度への移行前の連結納税グループの合算数値を記載し、2022年度以降については通算グループの合算値を記載しております。

 

過去5年間の課税所得(繰越欠損金使用前の各年度の実績値)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

2019年度

2020年度

2021年度

2022年度

2023年度

日本の通算グループ(連結納税グループ)合算値

134,721

214,001

233,508

86,143

239,034

 

(注) 法人確定申告書上の繰越欠損金控除前の課税所得であり、その後の変動は反映しておりません。

 

 見積もりの前提とした税引前当期純利益、調整前課税所得の見込額

 

 日本の通算グループについては、5年を課税所得見積もり期間とし、見込み税引前当期純利益合計および見込み調整前課税所得合計はそれぞれ、645,908百万円、780,038百万円となっております。

 

(5)流動性資金調達と資本の管理

資金調達と流動性管理

 

概況

 

 野村では、資金流動性リスクを野村グループの信用力の低下または市場環境の悪化により必要な資金の確保が困難になる、または通常より著しく高い金利での資金調達を余儀なくされることにより損失を被るリスクと定義しております。このリスクは、市場において有担保あるいは無担保調達が不可能になる、野村の信用格付が低下する、予定外の資金需要の変化に対応できない、迅速かつ最小の損失での資産の流動化ができない、あるいは、グループ会社間の自由な資金移動が妨げられる規制資本上の制約に関する変化等、市場全体の事情や野村固有の事情により発生します。資金流動性リスク管理については、経営会議が定める流動性リスク・アペタイトに基づくことを基本方針としております。野村の資金流動性管理は、市場全体が流動性ストレス下にある場合において、またそれに加えて野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合においても、それぞれ1年間、および30日間にわたり、無担保による資金調達が困難な場合においても、保有資産を維持しつつ業務を継続することができる十分な資金流動性を常に確保することを主な目的としております。また、金融庁の定める流動性カバレッジ比率(以下「LCR」)および安定調達比率(「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき、最終指定親会社が当該最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める最終指定親会社およびその子法人等の経営の健全性のうち流動性にかかる健全性の状況を表示する基準」)(以下「NSFR」)の充足が求められております。

 

 野村は、主な流動性維持の目的を達成可能とする、さまざまな資金流動性リスク管理フレームワークを定めております。このフレームワークには、(1)余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持、(2)流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用、(3)資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散、(4)野村グループ各社に対する与信枠の管理、(5)流動性ストレステストの実行、(6)コンティンジェンシー・ファンディング・プランに関することが含まれております。

 

 経営会議は、野村の資金流動性に関する重要事項についての決定権を有しており、財務統括責任者(以下「CFO」)は、経営会議の決定に基づき、野村の資金流動性管理に関する業務を執行する権限と責任を有しております。

 

① 余剰資金の集中管理と流動性ポートフォリオの維持

 野村は、野村グループ内で資金流動性を有効に活用することを可能とするため、野村グループ各社の余剰資金の集中管理を行っております。資金の使用に関しても、野村では、無担保で提供される資金を一元的に管理しており、内部で上限を設けております。この上限は、CFOによって決定され、経営会議において各部門へ配分が行われます。ファイナンス部門において、資金流動性の管理を行う組織であるグローバル・トレジャリーは、使用状況についてモニタリングを行い、経営会議へ報告しております。

 

 また、グループ会社間の資金移動を円滑なものにするため、規制対象ブローカーあるいは銀行における資金調達は限定的にしか行っておりません。野村は、無担保による資金調達の当社あるいは主要規制外発行体への集中を積極的に行っております。このことにより、野村は調達コストを最小化し、投資家からの認知度を高め、さまざまなグループ会社間の資金供給のフレキシビリティを高めております。

 

 潜在的な資金流動性必要額を考慮し、十分な資金流動性を確保するために、野村は、現金ならびに売却や担保提供することで流動性資金を供給することができる流動性の高い担保未提供資産等で構成される流動性ポートフォリオを維持しており、グローバル・トレジャリーにて他の資産と区別して管理をしております。流動性ポートフォリオの金額は、2025年3月31日現在、10兆1,567億円となっており、ストレスシナリオを考慮した資金流動性必要額を満たしております。

 

 以下の表は2024年3月31日、2025年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオの内訳をアセットタイプ別に表示したものです。年間平均は月末の残高を用いて算出されております。

 

 

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

年間平均

2024年3月31日

2025年3月31日

年間平均

2025年3月31日

現預金(1)

3,741.8

3,629.9

4,395.5

4,196.3

国債

4,029.4

4,348.6

4,765.2

5,475.4

その他(2)

423.4

439.5

501.3

485.0

流動性ポートフォリオ

8,194.6

8,418.0

9,662.0

10,156.7

(1)現預金には、現金、現金同等物および必要に応じて即時利用可能な中央銀行、市中銀行への預金を含みます。

(2)その他にはMMF、米国政府機関債などのアセットタイプが含まれています。

 

 以下の表は2024年3月31日、2025年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオの内訳を通貨別に表示したものです。年間平均は月末の残高を用いて算出されております。

 

 

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

年間平均

2024年3月31日

2025年3月31日

年間平均

2025年3月31日

1,964.8

1,702.3

2,522.7

2,868.2

米ドル

4,341.1

4,601.7

4,912.4

4,840.2

ユーロ

933.2

1,023.5

1,101.3

1,234.6

英国ポンド

549.4

659.8

667.1

662.5

その他(1)

406.1

430.7

458.4

551.2

流動性ポートフォリオ

8,194.6

8,418.0

9,662.0

10,156.7

(1)その他には豪ドル、カナダドル、スイスフランなどの通貨が含まれています。

 

 野村は流動性ポートフォリオの要件をグローバル基準、および各主要オペレーティングエンティティによって評価しています。野村は、主に当社および野村證券株式会社、他の主要なブローカー・ディーラー、銀行子会社およびその他の関連会社で流動性ポートフォリオを管理しています。流動性ポートフォリオの保有量とエンティティを決定する際に、野村グループ内で自由に流動性を移す能力に影響を及ぼすかもしれない法規制、税制を考慮しています。規制の制限の詳細については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 18 法的規制」を参照してください。

 

 以下の表は2024年3月31日、2025年3月31日現在の野村の流動性ポートフォリオをエンティティ別に表示したものです。

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

当社および野村證券株式会社(1)

1,495.2

2,439.4

他の主要なブローカー・ディーラー

3,592.5

4,219.8

銀行子会社(2)

1,319.9

1,784.4

その他の関連会社

2,010.4

1,713.1

流動性ポートフォリオ

8,418.0

10,156.7

(1)野村證券株式会社は日本のブローカー・ディーラーであり、日本銀行に口座を維持し、日本銀行のロンバード貸付制度を直接利用することにより、同日資金調達が可能です。当社における余剰流動性資金は必要な時に即時解約可能な短期社内貸付により、野村證券株式会社に貸し出しております。

(2)ノムラ・バンク・インターナショナル PLC(以下「NBI」)、ノムラ・シンガポールLIMITEDおよびノムラ・バンク・ルクセンブルク S.A.

 

② 流動性ポートフォリオ以外の担保未提供資産の活用

 流動性ポートフォリオに加えて、主にトレーディング資産で構成される有担保資金調達の際の追加担保として使用可能な担保未提供資産を2025年3月31日現在、2兆4,322億円所有しております。グローバル・トレジャリーは、その他担保未提供資産のモニタリングを行っており、流動性ストレス下においては、当該資産を現金化し、野村グループの流動性供給のために利用することができます。なお、流動性ポートフォリオとその他担保未提供資産の合計は、12兆5,889億円となりました。これは、野村の1年以内に満期の到来する無担保債務の合計に対して、262.1%に相当します。

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

その他担保未提供資産

3,175.6

2,432.2

流動性ポートフォリオ

8,418.0

10,156.7

合計

11,593.6

12,588.9

 

③ 資産構成等に見合った資金調達ならびに調達手段の多様化および調達期間の分散

 野村は、保有資産を継続して維持していくうえで必要となる長期性資金を確保するために、長期無担保債務の額、および株主資本を十分な水準に維持するように努めております。また、無担保調達資金の借換えリスクを低減させるために、資金調達を行う市場やプロダクト、投資家、通貨および返済期限の分散にも努めております。

 

 野村は、さまざまな種類の債券を発行することによって、資金調達手段の分散を図っております。これらには、仕組ローンや仕組債が含まれ、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしたリターンが付いております。野村は、資金調達方法の多様性が増すように仕組ローンや仕組債を発行しております。これらについて、野村は、通常、デリバティブや原資産に対する支払い義務をヘッジすることにより、無担保調達債務と同様の効果を得ております。なお、日本円以外の長期債務比率は、2024年3月31日現在59.4%から2025年3月31日現在62.4%に増加しております。

 

a.短期無担保債務

 野村の短期無担保債務は、短期銀行借入(長期銀行借入のうち、満期まで1年未満のものを含む)、その他の短期借入、コマーシャル・ペーパー、銀行業務受入預金、譲渡性預金、および償還まで1年以内の社債で構成されております。銀行業務受入預金および譲渡性預金は、銀行子会社の預金および譲渡性預金を表しております。短期無担保債務には、長期無担保債務のうち残存期間が1年以内となったものを含んでおります。

 

 以下の表は、2024年3月31日、2025年3月31日現在の野村の短期無担保債務明細を表示したものです。

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

 

短期無担保債務

3,961.4

4,802.3

 

 短期銀行借入

177.5

369.2

 

 その他の短期借入

356.0

304.4

 

 コマーシャル・ペーパー

224.8

113.8

 

 銀行業務受入預金

1,880.9

2,371.4

 

 譲渡性預金

232.4

262.8

 

 償還まで1年以内の社債

1,089.8

1,380.7

 

b.長期無担保債務

 野村は、常に十分な長期性資金を確保し、適切なコストでの調達および適切な長期債務償還プロファイル維持を満たすために、満期や通貨の分散を行い定期的に長期性資金の調達を行っております。

 

 野村の長期無担保債務には、米国発行登録および登録ミディアム・ターム・ノートプログラム、ユーロ・ミディアム・ターム・ノートプログラム、国内発行登録およびさまざまな発行プログラムより発行される普通社債や劣後社債が含まれております。

 

 日本のグローバルな金融サービスグループとして、野村は、世界中のさまざまな市場と資金調達センターへのアクセスを持っております。主として当社、野村證券株式会社、ノムラ・ヨーロッパ・ファイナンスN.V.、NBI、ノムラ・インターナショナル・ファンディング Pte. Ltd.、および野村グローバル・ファイナンス株式会社が外部からの借入、債券発行その他資金調達を行っております。使用通貨や保有資産の流動性に合わせた資金調達や、必要に応じた為替スワップの使用により、調達構造の最適化を図っております。

 

 野村は、市場や投資家のタイプごとに、効率的かつ十分に多様化された資金調達を行うために、さまざまなプロダクトや通貨による調達をしております。野村の無担保債務の大部分は、発行コストの上昇や債務償還満期を早める財務制限条項(格付、キャッシュ・フロー、決算あるいは財務レシオ)は、付されておりません。

 

 以下の表は、2024年3月31日、2025年3月31日現在の野村の長期無担保債務明細を表示したものです。

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

 

長期無担保債務

10,254.9

10,807.4

 

 長期銀行業務受入預金

243.0

471.4

 

 長期銀行借入

3,408.4

3,272.8

 

 その他の長期借入

292.3

306.0

 

 社債(1)

6,311.2

6,757.2

(1)編纂書810「連結」に定義される変動持分事業体の要件を満たす“連結変動持分事業体(VIE)が発行する社債”と編纂書860「譲渡とサービシング」(以下「編纂書860」)により、会計上担保付金融取引として取り扱われる譲渡取消にともなう担保付借入を含んでおりません。

 

c.償還プロファイル

 プレーン・バニラ物(プレーン・バニラ債および長期借入金)の調達に関しては、平均残存年数が3年以上となるように努めており、2025年3月31日現在の平均残存年数(残存期間1年超のものの平均)は、4.1年となっております。また、仕組ローンや仕組債については、その大部分が、金利・為替・株式・コモディティやこれらのインデックスにリンクしており、これらの償還確率は、内部数理モデルによって継続的に評価され、グローバル・トレジャリーによりモニターされております。予定された満期日以前に償還される可能性のあるものについては、野村の内部ストレスオプション評価モデルにより、評価されております。このモデルは、ストレス市場環境下で、いつその債券が償還される可能性があるかを評価します。下図は、このモデルにおいて評価された野村の長期債券と長期借入の満期の分散状況を示したものです。

 

 上記のモデルに基づき評価された仕組ローンや仕組債の平均残存期間(残存期間1年超のものの平均)は、2025年3月31日現在で、9.0年となっており、プレーン・バニラ物を合わせた長期債務全体の平均残存期間(残存期間1年超のものの平均)は、2025年3月31日現在で、6.6年となっております。

 

 

d.有担保資金調達

 野村は、トレーディング業務のための資金調達活動は、担保付借入、レポ契約、日本の現先レポ取引によって、通常行っております。これらの有担保資金調達は、無担保資金調達に比べコストが低く、格付の影響を受けにくいものと考えております。有担保資金調達は、担保資産の質や市場環境の影響を受けます。流動性の高い資産を担保として用いる場合は短期の契約で資金調達を行う一方で、流動性の低い資産を担保として用いる場合は、契約期間の長期化に努めております。野村は、有担保資金調達にともなう資金流動性リスクを低減させるために、カウンターパーティのグローバルな分散、担保の種類の多様化にも努めております。また、流動性の低い資産を用いた短期有担保資金調達の借り換えが難しくなる場合のリスクに備えて、流動性ポートフォリオを保有しております。詳細は、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表注記] 5 担保付取引」をご参照ください。

 

④ 野村グループ各社に対する与信枠の管理

 野村は、資金調達の安定性を確保するために、金融機関から野村グループに対する与信枠の維持、拡大に努めております。また、資金流動性リスク管理の一環として、野村は、借入の契約満期日が一時期に集中しないように分散させております。

 

 

⑤ 流動性ストレステストの実行

 野村は、先に述べた流動性管理方針に沿うよう、一定のストレスシナリオ下でのキャッシュ流出をシミュレートする内部モデルに基づいて流動性ポートフォリオをモニターしております。

 

 資金流動性必要額は、さまざまなストレスシナリオ下において、異なるレベルで、さまざまな時間軸に沿って見積もられております。そこでは、親会社や子会社レベルでの格下げといった野村固有および市場全体のイベント下で発生する資金流動性必要額を見積もっております。野村では、このリスク分析を「マキシマム・キュームレーティブ・アウトフロー(以下「MCO」)」と呼んでおります。

 

 MCOフレームワークは、主たる資金流動性リスクを考慮したうえで構築し、以下の2つのシナリオに基づいて、将来のキャッシュ・フローをモデル化しております。

 

・ストレスシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にある場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく1年間適切な流動性を維持すること。

・アキュートシナリオ:市場全体が流動性ストレス下にあることに加え、野村の信用リスクに過度なストレスを想定した場合において、無担保による資金調達、資産の売却をすることなく30日間適切な流動性を維持すること。

 

 野村は、これらの各モデルで用いられている時間軸の中で、資産の流動化を行ったり、ビジネス・モデルを修正することはできないと想定しております。したがって、MCOフレームワークは、ストレス状況下においても、野村が適切と考える流動性リスク・アペタイトを満たすために必要な資金流動性額を定義するものです。

 

 2025年3月末時点において、野村の流動性ポートフォリオは、上述のシナリオ下で想定された資金流出予想額を上回っておりました。

 

 野村は、規制環境や市場の変化に基づいた資金流動性リスクの前提条件を継続的に評価し、調整をしております。ストレスの影響をシミュレートするために用いるモデルでは、以下のような事象を考慮、想定しております。

 

・資産の売却ができない状況

・追加の無担保調達を行うことができない状況

・既存の借入金の返済期日や発行済み社債の償還期日(1年以内)

・発行済み社債の買い取りの可能性

・流動性の低い資産を担保とする資金調達ラインの喪失

・通常の事業環境下での運転資金需要の変化

・ストレス時における受入銀行預金および担保の流出

・既存のレポ調達時の担保掛目の拡大

・決済銀行からの担保・預託金追加要求

・コミットメント提供先のドローダウン

・損失にともなう資金の喪失

・野村の信用格付が2ノッチ格下げされた場合のデリバティブ取引にかかる契約上の追加担保要請、および清算・決済機関からの潜在的な追加担保要請

・グループ会社間の資金や証券の移動を制限する法規制を考慮した資金流出

 

 

⑥ コンティンジェンシー・ファンディング・プラン

 野村は、詳細にわたるコンティンジェンシー・ファンディング・プラン(以下「CFP」)を定め、包括的リスク管理の枠組みに組み込むとともに、定量的なコントロールを強化しております。この中で、リクイディティ・イベントの範囲の分析と特定方法を記載しております。そのうえで、野村固有のあるいは市場全体の影響の可能性を見積もることや、リスクを低下させるために即座にとられるべき対応を特定しております。CFPは、キーとなる内部および外部の連絡先やどの情報を知らせるかを示すプロセスの詳細をリスト化しております。また、野村が規制上、法的、あるいは税務上の制限によって、グループ会社レベルにおける資金へのアクセスができなくなったことを想定し、グループ会社レベルで、個別の資金需要に応えうるように作られております。なお、野村は、定期的にさまざまな市場や野村固有のイベントに対して本CFPの有効性をテストしております。野村は、日本銀行等中央銀行が行うさまざまな証券に対して実施する資金供給オペレーションへのアクセスも持っております。これらのオペレーションは、通常のビジネスでも利用しておりますが、市場の悪化による不測のリスクを軽減させる重要な手段のひとつです。

 

流動性規制

 2008年にバーゼル委員会は、流動性フレームワークの基盤となる「健全な流動性リスク管理およびその監督のための諸原則」を公表しました。続いて、バーゼル委員会は資金流動性にかかる2つの最低基準を策定し、流動性管理の枠組みをさらに強化しました。これらの基準は、それぞれ独立しているものの相互補完的な2つの目的を達成するために策定されております。

 

 第1の基準の目的は、金融機関の流動性リスク態様の短期的強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関が流動性の高い資産を十分に保有し、30日間継続する強いストレスシナリオに耐える力を持っていることを確保することにあります。バーゼル委員会は、この目的を達成するためにLCRを策定しました。

 

 第2の基準の目的は、長期的な強靭性を高めることにあり、その手段として、金融機関に対し、常により安定的な資金調達源を確保したうえで、業務を行うことを促すための追加的なインセンティブを設けました。NSFRは、対象期間を1年とし、資産・負債が持続可能な満期構造を保つよう策定されました。

 

 これら2つの基準を構成するパラメータは、主として、国際的に統一された既定の数値です。しかしながら、各国固有の状況を反映させるため、一部のパラメータには各国裁量の要素が含まれております。

 

 LCRについては、本邦においてバーゼル委員会の国際合意文書に必要な修正を加えた金融庁告示が公布され、2015年3月末から最低基準として段階導入されております。当第4四半期におけるLCRの平均値は234.1%となっており、上記金融庁告示の定める要件についても満たしております。また、NSFRについては金融庁より流動性比率規制に関する告示の改正が2021年3月31日付で公布され、2021年9月末から導入されております。2025年3月末におけるNSFRは告示の定める要件を満たしております。

 

キャッシュ・フロー

 野村のキャッシュ・フローは、主に顧客ビジネスフローやトレーディングからなる営業活動およびそれと密接な繋がりのある財務活動によりもたらされます。金融機関はビジネスを展開していくことにより営業活動および投資活動において現金支出となる傾向にあり、野村のキャッシュ・フローは以下に記載しておりますとおり、2024年3月期は投資活動において現金支出となった一方、営業活動および財務活動において現金収入となりました。2025年3月期は営業活動および投資活動において現金支出となった一方、財務活動において現金収入となりました。下の表は、野村の2024年3月期および2025年3月期の連結キャッシュ・フロー計算書の抜粋です。

 

 

(単位:十億円)

 

 

2024年3月期

2025年3月期

 

営業活動から得た(△営業活動に使用された)現金(純額)

132.6

△678.6

 

  当期純利益

177.2

347.3

 

 トレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資

△386.5

△3,026.3

 

 トレーディング負債

△411.8

574.2

 

 売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券(純額)

290.8

1,108.8

 

 借入有価証券担保金および貸付有価証券担保金(純額)

△324.1

526.2

 

 その他(純額)

787.0

△208.8

 

投資活動に使用された現金(純額)

△887.9

△848.6

 

 定期預金の預入による支出(純額)

△83.0

△107.0

 

 貸付金の増加(純額)

△791.7

△538.9

 

 その他トレーディング目的以外の負債証券の減少(△増加)(純額)

23.3

△47.8

 

 その他(純額)

△36.5

△154.9

 

財務活動から得た現金(純額)

1,012.9

1,679.7

 

  長期借入の実行による収入(純額)

962.9

1,020.9

 

  短期借入の実行による収入(△返済による支出)(純額)

98.0

△26.7

 

  受入銀行預金の増加による収入(純額)

107.5

785.4

 

 その他(純額)

△155.5

△99.9

 

現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物に対する為替相場変動の影響額

220.6

△26.0

 

現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の増加額

478.2

126.4

 

現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の期首残高

3,820.9

4,299.0

 

現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物の期末残高

4,299.0

4,425.4

 

 詳細につきましては、「第5 [経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] ⑤ 連結キャッシュ・フロー計算書」をご参照ください。

 

 2025年3月期を通じて、野村の現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物は1,264億円増加し4兆4,254億円となりました。長期借入の実行による収入(純額)の増加により1兆209億円の現金収入があり、財務活動から得た現金(純額)は1兆6,797億円となりました。貸付金の増加(純額)により5,389億円の現金支出があり、投資活動に使用された現金(純額)は8,486億円となりました。トレーディングにおいては、主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の増加による現金支出の結果、2兆4,521億円の現金支出となりました。一方、売戻条件付買入有価証券および買戻条件付売却有価証券や借入有価証券担保金および貸付有価証券担保金のようなレポ取引、有価証券貸借取引から1兆6,350億円の現金収入があり、この結果、営業活動に使用された現金(純額)は6,786億円となりました。

 

 2024年3月期を通じて、野村の現金、現金同等物、制限付き現金および制限付き現金同等物は4,782億円増加し4兆2,990億円となりました。長期借入の実行による収入(純額)の増加により9,629億円の現金収入があり、財務活動から得た現金(純額)は1兆129億円となりました。貸付金の増加(純額)により7,917億円の現金支出があり、投資活動に使用された現金(純額)は8,879億円となりました。トレーディングにおいては、主にトレーディング資産およびプライベートエクイティ・デット投資の増加による現金支出の結果、7,983億円の現金支出となりました。一方、支払債務の増加により7,098億円の現金収入があり、この結果、営業活動から得た現金(純額)は1,326億円となりました。

 

貸借対照表および財務レバレッジ

 2025年3月31日現在の資産合計は、2024年3月31日現在の55兆1,472億円に対し、トレーディング資産の増加等により、1兆6,550億円増加し、56兆8,022億円となりました。また、2025年3月31日現在の負債は、2024年3月31日現在の51兆6,987億円に対し、長期借入の増加等により、1兆5,225億円増加し、53兆2,212億円となりました。2025年3月31日現在の当社株主資本は、2024年3月31日現在の3兆3,502億円に対し、利益剰余金の増加にともない、1,207億円増加の3兆4,709億円となりました。

 

 野村は、マーケットの極端な変動によってもたらされ得る大きな損失にも耐えられる規模の資本を維持することに努めております。野村の適正資本の維持にかかる基本方針は経営会議が決定し、その実践の責任を負います。適正資本の維持にかかる基本方針には、適正な総資産規模の水準やそれを維持するために必要な資本規模の決定などが含まれます。当社は、当社のビジネス・モデルに起因する経済的なリスクに耐え得る必要十分な資本を維持しているかにつき、定期的な確認を行っておりますが、こうした観点とは別に、銀行業や証券業を営む子会社は規制当局から要請される最低資本金額を満たす必要もあります。

 

 レバレッジ・レシオは、野村と同様に他の金融機関でも一般的に用いられており、野村のレバレッジ・レシオおよび調整後レバレッジ・レシオを他の金融機関と比較できるように、ベンチマークとする目的で、自主的に開示しております。調整後レバレッジ・レシオは、野村がレバレッジにかかる有用な補助的指標であると考える米国会計原則に基づかない指標です。

 

 以下の表は、当社株主資本、総資産、調整後総資産と財務レバレッジの状況を示しています。

 

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

当社株主資本

3,350.2

3,470.9

総資産

55,147.2

56,802.2

調整後総資産(1)

34,152.4

38,138.6

レバレッジ・レシオ(2)

16.5

16.4

調整後レバレッジ・レシオ(3)

10.2

11.0

(1)調整後総資産は米国会計原則に基づかない指標であり、総資産の額から売戻条件付買入有価証券および借入有価証券担保金の額を控除したものとなり、以下のように計算されます。

(2)レバレッジ・レシオは、総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。

(3)調整後レバレッジ・レシオは、調整後総資産の額を当社株主資本の額で除して得られる比率です。

 

 

(単位:十億円)

 

2024年3月31日

2025年3月31日

総資産

55,147.2

56,802.2

控除:

 

 

売戻条件付買入有価証券

15,621.1

14,004.8

借入有価証券担保金

5,373.7

4,658.8

調整後総資産

34,152.4

38,138.6

 

 総資産は、主にトレーディング資産が増加したことにより、3.0%増加しました。当社株主資本は、主に利益剰余金が増加したことにより、3.6%増加しました。この結果、野村の財務レバレッジは、2024年3月31日現在16.5倍、2025年3月31日現在16.4倍となりました。

 

 調整後総資産が増加した理由は、トレーディング資産の増加によるものです。この結果、調整後レバレッジ・レシオは、2024年3月31日現在10.2倍、2025年3月31日現在11.0倍となりました。

 

連結自己資本規制

 金融庁は2005年6月に「金融コングロマリット監督指針」を策定し、連結自己資本規制に関する規定を設けました。この「金融コングロマリット監督指針」に基づき、2005年4月から、当社は、連結自己資本規制比率のモニタリングを開始しました。

 

 2011年4月から、当社は、親会社に対する連結自己資本規制の適用を受ける最終指定親会社の指定を受け、「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十号、以下「川上連結告示」といいます。)により、バーゼルⅡに基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。また、2011年12月末からは、マーケット・リスク相当額の計測方法を大幅に改定したバーゼル2.5に基づく連結自己資本規制比率の計測を開始しました。さらに、2017年12月に発表された「バーゼルⅢの最終規則文書」、および2019年1月に公表された「マーケット・リスクの最終所要自己資本」に基づくリスク・アセットの計測対象の大幅な追加を主として改正された川上連結告示の内容に基づいた連結自己資本規制比率の計測(以下「バーゼルⅢ最終化」といいます。)を2025年3月より行っております。

 

 当社は、川上連結告示第2条の算式に従い、普通株式等Tier1資本の額、Tier1資本(普通株式等Tier1資本およびその他Tier1資本)の額、総自己資本(Tier1資本およびTier2資本)の額、信用リスク・アセットの額、マーケット・リスク相当額およびオペレーショナル・リスク相当額をもとに連結自己資本規制比率を計測しております。2025年3月31日現在の野村の連結普通株式等Tier1比率は14.52%、連結Tier1比率は16.27%、連結総自己資本規制比率は16.28%となり、川上連結告示等の定める要件をそれぞれ満たしました。なお、2025年3月31日現在、川上連結告示等の定める要件は適用される最低連結資本バッファーを含み、連結普通株式等Tier1比率について7.71%、連結Tier1比率について9.21%、連結総自己資本規制比率について11.21%となっております。

 また、当社は2021年3月より「金融商品取引法第五十七条の十七第一項の規定に基づき最終指定親会社が最終指定親会社及びその子法人等の経営の健全性を判断するための基準として定める総損失吸収力及び資本再構築力に係る健全性の状況を表示する基準」(以下「TLAC告示」といいます。)に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、リスク・アセットベース外部TLAC比率を計測しております。2025年3月31日現在の野村のリスク・アセットベース外部TLAC比率は28.16%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。

 

 2024年3月31日および2025年3月31日現在の連結自己資本規制比率およびリスク・アセットベース外部TLAC比率について、以下に示しております。

 

 

 

(単位:億円)

 

2024年3月31日

 

2025年3月31日

自己資本

 

 

 

普通株式等Tier1資本の額

30,913

 

31,225

Tier1資本の額

34,678

 

34,995

総自己資本の額

34,683

 

35,001

 

 

 

 

リスク・アセット

 

 

 

信用リスク・アセットの額

97,647

 

115,612

マーケット・リスク相当額を8%で除して得た値

63,819

 

62,392

オペレーショナル・リスク相当額を8%で除して得た値

28,289

 

36,962

リスク・アセット合計

189,755

 

214,966

 

 

 

 

連結自己資本比率

 

 

 

連結普通株式等Tier1比率

16.29%

 

14.52%

連結Tier1比率

18.27%

 

16.27%

連結総自己資本規制比率

18.27%

 

16.28%

連結レバレッジ比率

5.24%

 

5.16%

外部TLAC比率

 

 

 

リスク・アセットベース外部TLAC比率

33.06%

 

28.16%

総エクスポージャーベース外部TLAC比率

10.42%

 

9.93%

 

 信用リスク・アセットは、金融庁の承認を得て2011年3月末から基礎的内部格付手法に基づいて算出しております。また、バーゼルⅢ最終化にともない、マーケット・リスク相当額はトレーディング勘定の抜本的改定に基づく新たな内部モデル方式と標準的方式を、オペレーショナル・リスク相当額はビジネス規模と損失実績を勘案した新たな標準的手法をそれぞれ採用しております。2024年3月末においては最終化適用前であり、マーケット・リスク相当額は内部モデル方式、オペレーショナル・リスク相当額は粗利益配分手法により算出しております。

 

 また、当社は川上連結告示で定められた要件の遵守状況を示す他に、バーゼルⅢが適用される他の金融機関との比較を容易にするため、連結自己資本規制比率を開示しております。当社の経営者はこれらに関する報告を定期的に受けております。

 

連結レバレッジ規制

 金融庁は2019年3月に「金融庁長官が定める場合において、最終指定親会社が経営の健全性の状況を記載した書面に記載すべき事項を定める件」(平成二十二年金融庁告示第百三十二号、以下「開示告示」といいます。)を改正するとともに「最終指定親会社及びその子法人等の保有する資産等に照らし当該最終指定親会社及びその子法人等の自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準の補完的指標として定めるレバレッジに係る健全性を判断するための基準」(平成三十一年金融庁告示第十三号、以下「連結レバレッジ比率告示」といいます。)を公表し、連結レバレッジ比率に関する計測ならびに開示にかかる要件、および連結レバレッジ比率3%の最低基準を定めました。

 2020年6月に金融庁は、新型コロナウイルス感染症の影響拡大が懸念される中、日本銀行による金融政策と銀行等への健全性規制との調和を図るため、例外的なマクロ経済環境を勘案して金融庁長官が別に定める比率を適用する場合には連結レバレッジ比率を算定するにあたって日銀預け金を除外すること等を趣旨とした連結レバレッジ比率告示の一部改正を行いました。その後、2022年7月に公表された改正後の方針において、日銀預け金を除外する時限的措置を存置し、2024年4月1日以降、連結レバレッジ比率の最低基準を3.15%に引き上げるものとしています。

 当社は開示告示等に基づき、2015年3月末から連結レバレッジ比率の計測および開示を開始しました。さらに2019年3月末からは、開示告示、連結レバレッジ比率告示および最低比率基準を下回った場合の早期是正措置を定めたその他の告示等の内容に基づいた連結レバレッジ比率の計測を行っております。なお、2025年3月31日現在の野村の連結レバレッジ比率は、5.16%となりました。

 また、当社は2021年3月よりTLAC告示に基づく計測を開始しました。TLAC告示第2条の算式に従い、総エクスポージャーベース外部TLAC比率を計測しております。2025年3月31日現在の野村の総エクスポージャーベース外部TLAC比率は、9.93%となり、TLAC告示の定める要件を満たしました。

 

 今後も、川上連結告示を始めとする各業態の自己資本規制、流動性規制、レバレッジ規制等の諸規制はバーゼル委員会、証券監督者国際機構または金融安定理事会等の一連の規制強化の動きに沿って改定される可能性があります。

格付会社による信用格付

 野村は、無担保資金調達やその他の資金調達活動、ならびにトレーディングやその他のビジネスを行うために、格付会社による長期および短期の信用格付を利用しております。当社および野村證券株式会社には、S&P Global Ratings、Moody's Investors Service、Fitch Ratings、格付投資情報センターおよび日本格付研究所より長期および短期の信用格付が付与されています。

 

 2024年5月23日に、格付投資情報センターは、当社の長期発行体格付「A」および野村證券株式会社の長期発行体格付「A+」の格付アウトルックを「安定的」から「ポジティブ」に変更しました。
 

 2025年3月31日現在の当社および野村證券株式会社の格付会社による格付は以下のとおりです。

野村ホールディングス株式会社

短期債務

長期債務

S&P Global Ratings

A-2

BBB+

Moody's Investors Service

Baa1

Fitch Ratings

F1

A-

格付投資情報センター

a-1

A

日本格付研究所

AA-

 

野村證券株式会社

短期債務

長期債務

S&P Global Ratings

A-2

A-

Moody's Investors Service

P-2

A3

Fitch Ratings

F1

A-

格付投資情報センター

a-1

A+

日本格付研究所

AA-

 

(6)オフ・バランス・シート取引

非連結事業体との取引

 野村は通常の業務において、将来の財政状態や業績に影響を与える可能性があるさまざまなオフ・バランス・シート取引を非連結事業体と行っております。

 

 野村が行う非連結事業体とのオフ・バランス・シート取引には、以下のものが含まれます。

 

・債務保証契約上の義務

・譲渡した資産に対する留保持分または偶発的な持分、もしくは、譲渡した資産に関し信用リスク、流動性リスク、市場リスクを補完するような類似の取引

・デリバティブとして会計処理される契約による一切の義務(偶発債務を含む)

・非連結事業体が資金調達リスク、流動性リスク、市場リスク、信用リスクの補完を野村に対し提供している場合、またはリース、ヘッジ、研究開発契約を野村と結んでいる場合、野村が保有しかつ野村にとって重要な非連結事業体の変動持分から発生する一切の義務(偶発債務を含む)

 

 非連結事業体は、会社、パートナーシップ、ファンド、信託、その他法的事業体の形態をとり、限定された特定の目的を履行するために、発起人によって設立されます。野村は、これらの事業体を設立または発起したり、第三者によって設立または発起された事業体と取引を行います。

 

 野村の非連結事業体との関与は、マーケットの状況に応じて、これらの事業体が発行する負債証券および受益権を組成し、引受け、売出し、販売することが含まれております。また野村は通常の証券化およびエクイティデリバティブ業務の中で、これらの事業体に対する金融資産の譲渡、これらの事業体が発行したリパッケージ金融商品の引受け、売出し、販売を行っております。さらに野村は、マーケット・メーク業務、投資業務、組成業務に関連し、特別目的事業体にかかる変動持分の保有、購入、販売を行っております。非連結事業体とのそのほかの関与には、債務保証やデリバティブ契約などが含まれます。これらの事業体との重要な関与は、たとえ期末日における損失の可能性が低くても、取引すべてに基づいて評価されています。

 

 変動持分事業体との取引については、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 7 証券化および変動持分事業体」をご参照ください。

 

(7)契約上の義務の開示

 野村の業務の一部として、将来支払いが必要となるかもしれないさまざまな契約上の義務および偶発的コミットメントを有しております。これらの取引は以下のものを含んでおります。

 

スタンドバイ信用状およびその他の債務保証

 野村は、通常の銀行もしくは金融業務の一環として、スタンドバイ信用状およびその他の債務保証の方法で取引相手とさまざまな債務保証を行っており、こうした債務保証には一般に固定満期日が設定されております。

 

長期借入および約定金利の支払

 野村の業務に関連して、野村の資金調達政策に従い、日本円建ておよび日本円建て以外の長期借入、それにかかわる変動および固定金利の支払いを行っております。

 

オペレーティング・リース・コミットメント

 野村は、国内外でオフィス、特定の従業員用住宅、器具備品および情報・通信関連資産を通常業務の範囲内で主にオペレーティング・リースにより貸借しております。また、野村は、不動産および器具備品をオペレーティング・リースにより転貸借しております。

 

ファイナンス・リース・コミットメント

 野村は、国内外で特定の器具備品および施設をファイナンス・リース契約により賃借しております。

 

購入義務

 物品およびサービスを購入する義務には、建物設備等の工事、広告宣伝、コンピュータ・IT関連の維持管理などに関する契約が該当します。

 

貸出コミットメント

 野村は、銀行もしくは金融業務の一環として、貸出コミットメントを行っており、こうした契約義務には一般に固定満期日が設定されております。

 投資銀行業務に関連して、野村は顧客により発行されうる有価証券を引き受けることを保証する契約を結んでおります。

 中央清算機関の会員として、野村は他の会員が債務不履行に陥った際に、国債および政府系機関債を裏付けとしたリバース・レポの取引相手になり、流動性資金の提供を行う確約をしております。

 

投資コミットメント

 野村は、パートナーシップ等に投資するコミットメントおよび当該投資に関連してパートナーシップ等に資金提供するコミットメントを行っております。

 

 「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 9 リース」に野村のオペレーティング・リース、ファイナンス・リースにかかわる追加的情報を、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 11 借入」に野村の短期借入および長期借入にかかわる追加的情報を、「第5[経理の状況] 1[連結財務諸表等] (1)[連結財務諸表] [連結財務諸表注記] 20 コミットメント、偶発事象および債務保証」にこれらにかかわる追加的情報を記載しております。

 

 こうした貸出コミットメントにかかる契約金額は、契約がすべて実行され、取引相手先が債務不履行の状態となり、既存担保が無価値になったと仮定した場合に想定される、野村の信用関連損失の最大値を表しております。締結された契約が実行されることなく契約義務が満期を迎える場合もあるため、こうした信用関連コミットメントの契約金額は将来の現金所要額を必ずしも表しているわけではありません。こうした契約義務にかかる信用リスクは、顧客の信用力および受入担保の価値によって異なったものになります。野村は、各顧客の信用力を個別に評価しております。信用供与に際して必要と考えられる場合に野村が取引相手から受け入れる担保の金額は、取引相手の信用力評価に基づいております。

 

 下記の表は2025年3月31日現在での満期年限別の契約上の義務および偶発的コミットメントを表示しております。

 

(単位:百万円)

契約総額

満期年限

1年以内

1~3年

3~5年

5年超

スタンドバイ信用状およびその他の債務保証

4,939,056

4,889,013

39,594

10,426

23

長期借入(1)

12,911,549

1,382,812

2,923,825

3,151,656

5,453,256

約定金利の支払(2)

2,116,866

336,387

526,850

349,317

904,312

オペレーティング・リース・コミットメント(3)

183,706

47,738

69,715

35,513

30,740

購入義務(4)

91,877

14,323

73,128

4,207

219

貸出コミットメント(5)

3,238,123

2,295,325

449,094

303,339

190,365

投資コミットメント

25,677

4,563

3,813

580

16,721

合計

23,506,854

8,970,161

4,086,019

3,855,038

6,595,636

(1)長期借入で開示されている金額は、編纂書860にしたがって金融資産の譲渡を売却取引ではなく金融取引として会計処理されている金融負債を含んでおりません。これらは野村の資金調達を目的とした借入ではなく、したがって野村が現金を返済する実際の契約上の義務を表しておりません。

(2)約定金利の支払金額は、長期借入金に関連し、その償還期日および2025年3月31日現在適用される金利に基づいて見積もられる将来の支払金利の総額であります。

(3)割引前の年限別将来支払リース料を示しております。また、ファイナンス・リースの契約額は重要な金額ではありませんでした。

(4)購入義務の金額は、重要な条件がすべて特定されている法的な強制力のある契約に基づく、契約上の義務となる最低金額が記載されています。購入義務の金額には、既に貸借対照表に負債または支払債務として計上されているものは除かれています。また、日本橋地区の再開発不動産の一部を組合から購入する義務が含まれております。

(5)中央清算機関への流動性資金の提供を行う確約を含んでおります。

 

 上記に記載されている契約上の義務および偶発的コミットメントには、通常の場合短期の義務の性格を有する短期借入、受入銀行預金、その他の支払債務、担保付契約および担保付調達(例えば、売戻条件付買入取引および買戻条件付売却取引)およびトレーディング負債などを含んでおりません。

 

 上記の金額に加えて、野村は担保付契約および担保付調達に関連する金額を含む売戻契約および買戻契約を結ぶ義務を負っております。これらのコミットメントは2025年3月31日現在、売戻契約に対して1,880十億円および買戻契約に対して1,305十億円となっております。