リスク
3【事業等のリスク】
当社の経営成績、事業運営及び財務状態その他に関する事項のうち、投資家の投資判断に影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項として、以下のようなリスクがあげられます。これらのリスクは複合、連鎖して発生し、様々なリスクを増大させる可能性があります。
当社は、これらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の適切な対応に努めてまいります。
なお、本項目に記載の事項は必ずしもすべてのリスクを網羅したものではなく、また、将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
1 顕在化の可能性が高いと想定している主なリスク
(1)外部環境に起因するリスク
① 業界競争の激化に伴う収益性低下のリスク
当社グループの主力事業である外国為替証拠金取引サービスは、インターネットを通じた個人投資家向け金融サービスとして市場の拡大を続け多くの金融機関や新規参入事業者がひしめく成熟市場となっておりました。
こうした環境下では、各社がスプレッドの引き下げやスワップポイントの引き上げ、取引ツールの機能強化など、顧客獲得を巡って激しい競争を繰り広げており、結果として、業界全体として収益性の低下傾向が続いています。特に、FXサービスにおいては顧客の取引条件に対する感度が非常に高く、わずかな差異が資金流出入に直結するため、当社が競争条件において劣後した場合、預り資産の流出や顧客数・取引量の減少といった負の連鎖が起こるリスクが存在します。
加えて、顧客獲得のための広告費やプロモーション費用も増加傾向にあり、収益性のさらなる圧迫が懸念されます。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 高取引量顧客との接点強化
優良顧客の囲い込みを目的として、預り資産や取引量の多い顧客に対してカスタマーサポートや個別対応の強化を進め、特別な関係の構築を推進しながら継続的な利用を促進しています。
■ 独自性のある機能・サービス開発
他社にはない高機能な取引ツール、データ分析機能、生成AIを活用した為替相場予測など、付加価値の高いサービスの提供により、価格以外の競争力を強化しています。
■ ブランディング及び顧客ロイヤリティ向上
情報提供コンテンツの充実や、ユーザーとの接点を増やすセミナーや勉強会の開催により、顧客満足度を高め、長期的な関係構築を図ります。
■ 多様な相場環境に対応できる体制の構築
レンジ相場のような為替相場のボラティリティの低下した期間においても収益力を強化すべく、FX事業の中でシステム・トレードやバイナリーオプションのサービスをリニューアルすることで、多様な収益源の確立に取り組んでいます。
② 法令・規制遵守に関するリスク
金融商品取引業を行う当社グループは、金融商品取引法をはじめとする関係法令や、日本証券業協会等の自主規制機関のルールに基づく厳格な規制の下で事業運営を行っています。
これらの法令や規制に違反した場合、行政処分(業務停止命令、業務改善命令など)を受けるリスクがあり、その結果、当社の社会的信用や顧客からの信頼が大きく損なわれる可能性があります。特に近年では、投資家保護を重視する観点から、規制当局による監視の目も厳しさを増しており、一度の不備でも重大な経営リスクとなる可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 内部管理体制の強化
各事業部門における業務フローの見直しと文書化を進め、リスクの早期検知・是正を可能にする内部統制の充実を図っています。
■ 法令改正に対応した即応体制の構築
金融庁等の発信する動向を継続的に把握し、制度変更があった場合は全社的な体制変更・教育を迅速に実施します。
■ 定期的な社内研修の実施
法令遵守意識の浸透を目的として、コンプライアンスに関する定期研修を実施し、全社員の知識・意識の向上を図っています。
■ 第三者機関による監査の活用
客観的な視点からの監査を受けることで、潜在的なリスクの洗い出しと対策を講じるよう努めています。
③ 金融規制強化による事業制約リスク
FX市場は個人投資家の参加が多いことから、投資家保護の観点で規制強化が継続的に行われてきました。特に、最大レバレッジの引き下げや強制ロスカット水準の引き上げなど、取引に直接影響を与える規制は、取引量の減少や顧客離れにつながる要因となっています。
今後も、為替市場における過度なボラティリティ乱高下や投資家被害の発生に応じて、追加的な規制が導入される可能性があり、当社の事業活動に制約を与えるリスクとなっています。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 顧客へのリスク説明の強化
規制内容や変更の背景を丁寧に説明し、顧客が適切な判断のもとで取引を行えるよう、情報提供体制を強化しています。
■ 投資対象の多様化
FXの中で商品ラインナップを拡充することで、顧客が投資リスクを分散できる態勢を整備する一方、トレイダーズ証券における収益減少のリスクを分散するよう努めます。
④ 為替相場の変動等、経済環境の変化に伴うリスク
為替相場の急激な変動は、顧客にとっては損失要因となる場合があり、それに伴う預り資産の減少、取引控え、場合によっては口座解約に発展することがあります。当社としても、取引量の減少やスプレッド収入の低下、スワップ収益の変動等により、収益に対する影響は無視できません。
また、ボラティリティの高まりは、システム処理能力やオペレーション体制にも負荷を与えるため、リスク管理体制の強化が求められます。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ リスク耐性を高める運用支援機能の整備
証拠金維持率のアラートや自動ロスカット機能の高度化により、顧客資産の保全を支援します。
■ サーバー増強・バックアップ体制の強化
想定外のアクセス集中や相場変動にも耐え得るシステム基盤の強化を進めています。
⑤ 地政学的リスク(海外拠点依存に関する業務リスク)
当社グループでは、コスト競争力と技術力を活かす目的で、主に中国及びベトナムの現地法人において、取引システム等の開発・保守業務を行っています。これらの拠点は、当社のIT基盤を支える重要な役割を担っていますが、今後、両国の政治的・社会的情勢の変化、自然災害、パンデミック、あるいはサイバーセキュリティ上の脅威により、現地拠点での業務が停止又は制限されるリスクが存在します。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 国内開発体制の再強化
技術者の採用・育成を強化し、重要機能については国内での開発を優先する体制構築を進めています。
■ 業務の分散化
中国・ベトナム・日本の三拠点体制を構築し、一つの拠点が停止しても全業務が停止しないよう、業務の分散を図ります。
■ BCP(事業継続計画)の見直しと定期訓練
有事における代替業務手順や迅速な復旧体制の整備を進め、訓練を通じた対応力の向上を図ります。
(2)当社グループの事業戦略、経営基盤に関するリスク
① 新商品及びシステム開発に伴うリスク
当社グループでは、多様化する顧客ニーズに応えるため、トレイダーズ証券が新商品の導入や既存商品の改善を行い、FleGrowthがこれに対応する形でシステムの機能強化や新規開発を実施しています。しかしながら、開発された商品やサービスが顧客ニーズに合致しない場合や、技術革新のスピードが速く、製品の陳腐化が急速に進む場合には、トレイダーズ証券及びFleGrowthの業績に悪影響を及ぼすリスクがあります。
特に、開発した商品が市場に受け入れられない、又は競合他社の製品と比較して明確に劣ると評価される場合には、これらのリスクが顕在化する可能性があります。加えて、急速な技術進化が求められるシステム開発領域では、こうした状況がしばしば発生し得ることも念頭に置く必要があります。
また、FleGrowthのシステム開発・コンサルティング事業においては、開発したシステムの一部をソフトウエアとして固定資産に計上する場合がありますが、使用中止により除却損が発生し、業績を悪化させる可能性も想定されます。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 市場ニーズの徹底的な検証
新商品・新システムの開発にあたっては、顧客ニーズ及び市場動向を十分に調査・検証した上で、事業性を見極めた計画的な開発を推進しています。
■ 開発コストの厳格な管理
開発初期段階からコスト管理を徹底し、費用対効果の観点から開発可否を慎重に判断しています。
■ 迅速な開発体制の構築
競争力を確保するため、開発プロセスの効率化を図り、短期間で市場投入できる体制を整えています。
② ストレステスト結果が経営の健全性に影響を与えるリスク
トレイダーズ証券は、金融商品取引業等に関する内閣府令に基づき、金融先物取引業協会の規則に従ってストレステストを実施しています。このストレステストは、将来発生しうる異常事態における「最大想定損失額」(A)と「固定されていない自己資本の額」(B)を比較し、BがAを上回ることを求めるものです。
自己資本の減少や、未カバーリスク・未収金リスク・カバー取引先の破綻リスクの増大などにより、最大想定損失額が増加した場合、経営の健全性を確保するために何らかの対応措置を講じる必要が生じるリスクがあります。
このリスクは、トレイダーズ証券の業績が悪化して自己資本が減少した場合、あるいは市場環境等の変化により最大想定損失額が増加した場合などに顕在化する可能性があります。
具体的には、FX取引事業において自己資本が不足する状況に陥った場合、「最大想定損失額」が「固定されていない自己資本の額」を上回らないよう、利益を犠牲にしてでも取引ポジションの調整やカバー先の分散を行う必要があり、結果として利益の減少や負の連鎖につながるおそれがあります。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 未カバーポジションの適切な管理
為替リスクに対するポジションの過不足を常時監視し、過度なリスクを回避する管理体制を構築しています。
■ カバー先の分散管理
信用リスクの集中を避けるため、カバー取引先を適切に分散し、リスク低減に努めています。
■ 自己資本の充実と強化
内部留保の積み増しを継続的に行い、自己資本の強化によるストレス耐性の向上を図っています。
(3)事業活動、顧客取引に関するリスク
① オンライン取引のシステム障害に伴うリスク
トレイダーズ証券では、主力商品であるFX証拠金取引において、顧客からの注文をインターネット経由で受け付け、社内のコンピュータ処理システム及び第三者機関との接続を通じて取引を執行しています。
当社グループでは、サーバーの増強や基幹システムの外部データセンターへの移設、システム改善、人材育成、障害時業務フローの整備などを通じて、システムの安定運用及び保守に努めています。しかしながら、サイバー攻撃による不正アクセスやシステム障害、誤作動などにより、システムが機能不全に陥った場合には、以下のような影響を被る可能性があります。
▶ 顧客からの注文を受け付けられず、取引の執行が不可能となる
▶ カバー先に対する取引を適時に実行できず、多額のトレーディング損失が発生する
▶ 顧客の信頼を損ない、損害賠償請求に発展する可能性がある
これらの事態は、日常的に発生し得るものであり、特に重大なシステム障害が発生した場合には、顧客対応に多大な支障をきたすおそれがあります。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 障害対応マニュアルの整備と即応体制の構築
システム障害発生時に備え、障害内容や影響に応じた代替手段の確保と、迅速な対応が可能な体制を構築しています。
■ 24時間体制のシステム監視
FleGrowthの海外子会社がシステムを24時間体制で監視し、異常を検知した際には直ちにアラートを発報、関係部門が迅速に対応できる体制を整えています。
■ 人材育成の強化
異常発生時に適切に対応可能なスキルを備えた人材の育成を、グループ全体で継続的に推進しています。
② 資金繰りリスク(トレイダーズ証券)
トレイダーズ証券では、顧客やカウンターパーティーとの売買代金や証拠金の受け渡し、信託銀行への顧客資産の分別信託金の預託など、多額の資金移動を日々行っており、厳格な資金繰り管理を実施しています。
ただし、海外のカウンターパーティーとの資金決済は一営業日遅延することがあり、その間、顧客への支払いなどについてトレイダーズ証券が立て替えるケースがあります。加えて、為替相場が大きく変動し、多額の立替資金が必要となる場合には、資金繰りが一時的に逼迫するリスクがあります。
このような事態は、過去の実績から見ても年に数回程度の頻度で発生する可能性があると想定されます。
特に、FX相場の急激な変動などによって、想定を超える立替資金が必要となった場合には、資金繰りへの圧迫が一時的に深刻化する可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 借入枠及びコミットメントラインの確保
緊急時に備え、金融機関からの借入枠やコミットメントラインの設定を積極的に進めています。
■ カウンターパーティーの多様化
緊急時に対応可能な国内カウンターパーティーの数を増やし、資金移動の柔軟性を高める体制を整えています。
③ 市場リスク
トレイダーズ証券では、顧客とのFX証拠金取引に関して、カウンターパーティーとのカバー取引を適宜実施することで、為替相場の変動による市場リスクの低減を図っています。
しかしながら、相場が急変した際には、カバー取引が即時に行えず、多額の損失を被るリスクが存在します。これらのリスクは日常的に発生しうるものであり、特に急激な相場変動時には、カバー先からのレート配信が一時的に停止されることで、トレイダーズ証券が多額の未カバー損失ポジションを抱え、損失が拡大する可能性が想定されます。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ カバー先の多様化とリスク分散
国内外複数のカウンターパーティーとカバー取引を実施することで、特定の取引先への依存を避け、リスクを分散しています。
■ 市場監視体制の強化
相場の急変に即応するための監視体制を強化し、取引執行リスクの低減を図っています。
④ カバー取引先(カウンターパーティー)のリスク
トレイダーズ証券は、顧客とのFX証拠金取引において、複数の金融機関等のカウンターパーティーを相手方としてカバー取引を行い、証拠金及び決済資金を差し入れています。しかしながら、世界的な景気後退や金融危機等の外部要因により、カウンターパーティーが破綻するリスクが存在します。
このリスクは、過去の事例に鑑みると、10年に1回から数回の頻度で発生する可能性があるものと認識しています。
具体的には、カウンターパーティーの破綻により、差し入れた証拠金や決済資金が回収不能となりトレイダーズ証券に損失が発生するといった影響を想定しています
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 財務状況の継続的なモニタリング
トレイダーズ証券のリスク管理委員会(月次開催)において、カウンターパーティーの財務状況を検証し、安全性を定期的に確認しています。
■ 緊急時対応体制の構築
景況が急変した際には、トレイダーズ証券の役員間で即時に協議を行い、各カウンターパーティーの健全性を再評価し、迅速に対応できる体制を整備しています。
⑤ 顧客立替金が発生するリスク及び同債権が貸倒れとなるリスク
トレイダーズ証券は、個人顧客とのFX証拠金取引において、約定代金の4~100%を必要証拠金として預託を受け、建玉維持に際しては一定の証拠金維持率を求めています。また、FleGrowthが開発した自動ロスカットシステムを採用し、急激な相場変動時でも顧客に過大な損失が発生しないよう努めています。
しかしながら、FX市場終了から開始までの間(例:週明け)に極端な相場変動が発生した場合、始値が前営業日終値と大きく乖離し、顧客が損失を即時に支払えない事態が生じる可能性があります。
このリスクは、値飛び(配信レートの大幅な乖離)を伴う激しい相場変動時に顕在化する可能性があると認識しています。
具体的には、以下のような影響が想定されます。
▶ 顧客の損失が証拠金を超過し、トレイダーズ証券が一時的に立替金を負担
▶ 立替金の回収が困難となり、トレイダーズ証券が貸倒れ損失を被る
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 事前のリスク情報提供
相場急変の可能性が高まった場合には、顧客に対し建玉決済や証拠金の追加預託を促すなど、投資リスクに関する情報を積極的に提供しています。
■ 立替金回収体制の整備
万が一立替金が発生した場合でも、迅速な対応により顧客からの回収を図る体制を整えています。
■ システムの継続的改善
FleGrowthにおいて、自動ロスカットシステムの更なる高度化を図り、損失拡大の抑止とシステムリスクの低減に努めています。
⑥ サステナビリティ課題への取り組みに関するリスク
企業の持続的な成長には、ESG(環境・社会・ガバナンス)の観点を経営に取り入れることが求められており、気候変動や人権問題等の社会的課題への対応が不十分な企業は、株主や顧客、取引先といったステークホルダーからの信頼を失うリスクが高まっています。
このリスクは、企業活動のあらゆる場面において、日常的に顕在化し得るものであると認識しています。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ サステナビリティへの取り組みが不十分と見なされ、顧客が取引を停止
▶ 投資家が当社への投資を控え、経営成績や財務状況の悪化を招く
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 環境配慮活動の推進
社内のペーパーレス化や電力消費の削減に取り組むほか、環境保護に資する金融商品・サービスの開発・提供を進めています。
■ 社会的責任の実行
若年層、学生、女性等を対象とした金融リテラシー向上施策として、為替ディーラーの講師派遣を行っています。
■ ガバナンス体制の強化
中長期的な企業価値の向上を目指し、実効性あるコーポレート・ガバナンスの構築・強化に継続的に取り組んでいます。
(4)オペレーショナルリスク、その他のリスク
① オペレーショナルリスク
当社グループでは、業務遂行過程において、オペレーショナルエラーなどが発生した場合、顧客又は取引先からの損害賠償請求や監督官庁による行政処分を受けるといった影響を被る可能性があります。
こうしたリスクは、新たな事務処理手続の導入、法令や規則の変更、従業員の退職や人員異動などの局面で顕在化しやすくなります。
具体的には、当社グループの役職員による不適切な事務処理や、内部統制の不備により、適切なサービス提供が困難となる事態を想定しています。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 人材の確保と育成
優秀な人材の採用と適切な人員配置を行い、業務遂行能力の維持・向上に努めています。
■ 教育体制の充実
外部研修や社内セミナーの実施により、従業員の知識・スキル向上を図り、オペレーショナルリスクの低減に取り組んでいます。
② システムの瑕疵によるリスク
当社子会社であるFleGrowthでは、金融商品取引に関するシステムの開発・保守運用を行い、外部金融機関等に提供しています。万一、提供システムに重大な品質事故や不具合が発生した場合、提供先からの賠償請求を受けるリスクがあります。
このようなリスクは、日常的に発生し得るものであり、常に注意が必要です。
具体的には、納品済みシステムに重大なバグが存在し、提供先においてシステム停止などの損害が発生し、FleGrowthが賠償責任を負うといった影響を想定しています。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 品質管理体制の徹底
開発プロセス全体において、要件定義から設計・開発まで各工程の管理を厳格に実施しています。
■ 受入テスト(UAT)の実施
納品前に提供先と共同で受入テストを実施し、リリース前の不具合を未然に防止するよう努めています。
③ 情報セキュリティに関するリスク
当社グループは、ランサムウェア等のサイバーテロによるシステム停止や、サイバー攻撃・内部不正による個人情報や機密情報の漏洩等により、損害賠償請求や行政処分を受けるリスクがあります。
これらのリスクは、特定の時期に限らず常に存在し、日常的に顕在化し得るものと認識しています。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ FX取引に関するシステムやサーバーの暗号化による長期間の業務停止
▶ サイバーテロによる多額の身代金の支払い要求
▶ 情報漏洩に伴う損害賠償や対応コストの発生
▶ 社会的信用低下に伴う顧客資産・取引量の減少による収益悪化
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ セキュリティ体制の強化
トレイダーズ証券サイバーセキュリティ対策部及びFleGrowthを中心に情報セキュリティ管理体制を整備し、サイバー攻撃の予防に努めています。
■ 社内教育と訓練
標的型メールへの注意喚起、法令遵守研修の実施、内部管理体制の整備により、役職員による不正の未然防止を図っています。
■ テレワーク環境の整備
暗号化通信の導入、社内環境への接続制限等により、安全な勤務環境を構築しています。
■ 委託先の適正管理
外部委託先管理規程に基づき、定期的なチェックを行い、重大リスクを早期に把握・対応できる体制を整えています。
④ 顧客口座の不正利用に関するリスク
当社グループが提供するオンライン取引サービスでは、インターネットを通じて顧客が自らの証券口座にアクセスし、取引や出金等を行う仕組みを採用していますが、近年では、フィッシング詐欺やマルウェア等を通じて顧客の認証情報が第三者に不正取得される事案が増加しており、業界全体で口座乗っ取り被害が深刻化しています。
当社においても、こうした手口による不正ログインや不正出金等が発生した場合、顧客資産の毀損に対する補償対応や信頼喪失により、経済的損失や企業価値の毀損といった影響を受けるリスクがあります。とりわけ、顧客側の情報管理に依存する部分もあるため、当社単独の対策では完全に排除することが困難な側面がある点も、重大な経営上の懸念事項です。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 高度な認証技術の導入
二要素認証を用いたログイン・出金認証機能の導入により、不正アクセスの防止に取り組んでいます。
■ 不正検知・遮断システムの強化
脅威インテリジェンスと脅威ハンティングを組み合わせたプロセスにより、不正検知・対応を強化しており、将来的にはAI導入による高度化を検討しております。
■ 顧客への注意喚起および啓発活動の継続
定期的なセキュリティ警告や、偽サイト・詐欺メールへの対処方法を含む情報発信を行い、顧客のリスク意識向上と自己防衛力の強化を図っています。
■ 被害発生時の迅速対応体制の整備
不正利用が発生した場合には、関係当局への報告および被害拡大防止を含む初動対応を速やかに実施する体制を整えています。
⑤ データ管理の不備によるリスク
当社グループでは、顧客情報や業務データを電子媒体・紙媒体で記録・保存していますが、これらが適切に管理されなかった場合、漏洩や消失等のリスクが生じます。
このようなリスクは、バックアップの不備、媒体の故障、委託先での管理ミス等により、日常的に発生し得るものです。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ 情報漏洩に伴う損害賠償やデータ復旧費用の発生
▶ 社会的信用低下に起因する顧客・取引量・預り資産の減少
▶ FleGrowthへの損害賠償請求や取引先離脱による売上減少
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ システム管理体制の強化
トレイダーズ証券及びFleGrowthに専門部署を設置し、重要データを国内で安全に管理できる体制を整備しています。
■ 委託先の監督強化
外部委託先管理規程に基づき、委託先の適正性を定期的に確認し、早期にリスクを察知・対応できるよう努めています。
2 顕在化の可能性が低いと想定している主なリスク
(1)外部環境によるリスク
災害の発生によるリスク
当社グループでは、地震・津波・風水害などの大規模自然災害や事務所の火災等の発生により、従業員や保有資産の被災、必要人員の確保困難、通信障害や電力供給不足などが生じ、業務運営の継続や業績に重大な影響を及ぼす可能性があると認識しています。
このようなリスクは、過去の事例からみると、おおむね10年に1回から数回程度の頻度で発生し得るものと考えられます。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ FX取引事業において、業務継続が困難となり、長期間にわたり収益が喪失する
▶ システム開発・システムコンサルティング事業において、FXシステム等の保守・運用業務の停止、システム開発の中断による納品遅延
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ BCP(事業継続計画)の整備と訓練
トレイダーズ証券において緊急時対応を想定したBCPを策定し、代替事務所を遠隔地に確保しています。また、定期的に社内訓練を実施し、緊急時の課題抽出と備えを強化しています。
■ 拠点分散とテレワークの活用
システム開発・保守業務においては、テレワーク体制を整備するとともに、業務拠点を国内外に分散させ、リスク軽減を図っています。具体的には、宮城県仙台市にニアショア拠点を設立し、実効性のあるリスク分散策を推進しています。
(2)当社グループの事業戦略、経営基盤に関するリスク
自己資本規制比率が低下するリスク
トレイダーズ証券は、第一種金融商品取引業者として、金融商品取引法に基づき、自己資本規制比率(固定化されていない自己資本をリスク相当額で除した比率)を120%以上に維持することが求められています。業績の低迷等によりこの比率が低下した場合、金融当局からの業務改善命令、業務停止命令、あるいは登録取消などの行政処分を受けるリスクがあります。
このリスクは、業績の悪化に伴って自己資本が大きく減少した場合、又はリスク相当額が増加した場合に顕在化する可能性があります。具体的には、FX取引事業において業績の低迷が続き、金融当局から早期是正措置等を受けた結果、信用失墜が生じ、当社グループ全体の業績悪化につながる可能性を想定しています。
なお、2025年3月31日現在のトレイダーズ証券の自己資本規制比率は、702.6%となっております。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ リスク管理体制の徹底
トレイダーズ証券において、適切なリスク評価・管理を継続的に実施しています。
■ 収益基盤の強化
顧客の預り資産及び取引量の拡大を図り、トレーディング損益の増加を通じて自己資本の持続的な積み上げに努めています。
(3)事業活動、顧客取引に関するリスク
発注先の信用リスク
FleGrowthでは、システム開発及びシステム運用・保守において、発注先と契約を締結し、前受金又は納品時・サービス提供時に対価を受領していますが、発注先が信用不安や破綻に陥った場合、売掛金の回収不能やシステム開発の中止等により損失が発生するリスクがあります。
このようなリスクは、日常的に顕在化する可能性があると認識しています。
具体的には、システム開発・コンサルティング事業において、納品後に発注先の信用悪化により売掛金が回収できず、FleGrowthが損失を被る事態を想定しています。
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 信用調査の徹底
契約締結前に、発注先の財務状況や信用力を十分に審査し、信用リスクを適切に評価・判断するようFleGrowthにおいて体制を整備しています。
(4)オペレーショナルリスク、その他のリスク
① 役職員の不正行為によるリスク
当社グループでは、役職員による不正又は予測困難な不正行為により、ブランドイメージの毀損や信用失墜を招く可能性があります。
このようなリスクは、特定の時期に限らず、突発的に発生する可能性があるものと認識しています。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ 不正行為の発覚による風評リスクの増大
▶ 行政処分(課徴金・過怠金・業務改善命令等)の対象となる可能性
▶ 社内外の信頼性低下により事業遂行が困難となる
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 法令遵守意識の徹底
役職員向けにコンプライアンス研修を実施し、法令順守意識の定着を図っています。
■ 内部管理体制の強化
適切な統制環境を整備し、不正が発生しにくい内部統制体制を構築しています。
■ 内部通報制度の整備
社内担当部署及び外部弁護士と接続されたホットラインを通じ、匿名・安全に通報可能な環境を整備し、不正行為の早期発見・未然防止を図っています。
② 外部業者への業務委託に伴うリスク
当社グループは、システム開発・コンサルティング事業における一部業務を外部業者に委託していますが、委託先によるサービス品質の低下や不正行為により、当社グループの事業運営に支障を来すリスクがあります。
このリスクも予測が難しく、いつでも顕在化し得るものと考えられます。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ 委託業者による個人情報・機密情報の漏洩や改ざん
▶ 委託業者の経営悪化による成果物の品質劣化・納品遅延
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 外部委託先の適正性確認
外部委託先管理規程を整備し、定期的に委託業者の信用状況や管理体制を確認しています。
■ リスクの早期把握と是正対応
委託業者の変更や業務代替策を含む対応体制を整備し、早期にリスクを把握し適切に対応できるよう努めています。
③ 犯罪による収益の移転防止に関するリスク
トレイダーズ証券は、「犯罪による収益の移転防止に関する法律」に基づき、顧客の本人確認、取引記録の保存、疑わしい取引の届出などの措置を講じています。しかしながら、業務の一部が法令に準拠していない場合には、行政処分や信用失墜といった影響が生じる可能性があります。
このリスクは、口座開設や取引時など、継続的に存在するものと考えられます。
具体的には、以下のような影響を想定しています。
▶ 犯罪組織による口座利用が発覚した場合、業務改善命令等の行政処分を受ける
▶ 信用失墜により顧客預り資産が減少し、取引量が減退、結果として収益が悪化し、企業価値の毀損につながる
このようなリスクに対して、当社グループでは以下の対応を進めています。
■ 社内教育の実施
犯罪収益移転防止に関する法令遵守の意識向上を図るため、社内セミナーを継続的に実施しています。
■ 厳格な本人確認と記録保存
同法に基づく本人特定事項の確認を徹底し、取引記録の保存や疑わしい取引の届出を確実に行う体制を整えています。
配当政策
3【配当政策】
当社は、グループ目標達成に向けて将来の事業展開を総合的に勘案し、経営基盤強化のために必要な内部留保にも留意しながら、連結純資産配当率(DOE)4%を目安に年2回の安定的な配当を継続して行うことを基本方針としております。
これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。また、会社法第454条第5項の規定により、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
当期の配当につきましては、同基本方針を基に当期の好調な通期連結業績の見通しを踏まえ、前期実績の24円00銭から1株当たり8円増配し32円00銭(年間増配率33%)とする予定であります。中間配当として1株につき12円00銭をお支払いしておりますので、2025年6月25日開催予定の第26回定時株主総会で期末配当を20円00銭とすることを決議する予定であります。
2026年3月期の中間配当につきましては、1株当たり16円を計画しております。2026年3月期の期末配当につきましては、現在のところ未定となっております。
当社は、配当の成長率と透明性、そして安定化に注力し、株主の皆様からのご支援に応えてまいりたいと考えております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりです。
決議年月日 |
配当金の総額 (百万円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年10月16日 |
329 |
12.00 |
取締役会決議 |
||
2025年6月25日 |
545 |
20.00 |
定時株主総会決議(予定) |