2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    453名(単体) 38,247名(連結)
  • 平均年齢
    47.9歳(単体)
  • 平均勤続年数
    22.9年(単体)
  • 平均年収
    11,435,904円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

(2025年3月31日現在)

セグメントの名称

従業員数(人)

(保険持株会社)

 

 

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社

453

〔17〕

(国内損害保険事業)

 

 

三井住友海上火災保険株式会社

12,093

〔2,996〕

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

11,977

〔2,051〕

三井ダイレクト損害保険株式会社

523

〔-〕

(国内生命保険事業)

 

 

三井住友海上あいおい生命保険株式会社

2,441

〔15〕

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

407

〔2〕

(海外事業)

 

 

海外保険子会社

9,859

〔614〕

その他

494

〔58〕

合計

38,247

〔5,753〕

(注)1 従業員数は就業人員数であり、執行役員を含んでおりません。

2 臨時従業員については年間の平均雇用人員数を〔 〕で外書きしております。

3 当社は保険持株会社であり、特定の事業セグメントに区分されておりません。

4 その他欄には、国内保険会社以外のグループ会社が営むリスク関連サービス事業等の従業員数を記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

(2025年3月31日現在)

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

453

47.9

22.9

11,435,904

(注)1 当社の従業員は全て子会社からの出向者であります。

2 当社は保険持株会社であり、特定の事業セグメントに区分されておりません。

3 従業員数は就業人員数であり、執行役員、休職者及び臨時従業員を含んでおりません。

4 平均勤続年数は子会社における勤続年数を通算しております。

5 平均年齢及び平均勤続年数は小数点以下第2位を切り捨てて小数点以下第1位まで表示しております。

6 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

(3) 労働組合の状況

当社には労働組合はありません。

なお、労使関係について特に記載すべき事項はありません。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合

当社及び主要な連結子会社の管理職に占める女性労働者の割合(以下、「女性管理職比率」という。)

(2025年4月1日現在)

会社名

割合

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社

15.2%

三井住友海上火災保険株式会社

25.0%

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

23.4%

三井ダイレクト損害保険株式会社

19.1%

三井住友海上あいおい生命保険株式会社

25.3%

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

20.7%

上記6社合計

23.8%

(注)1 管理職:課長職相当以上(執行役員を含んでおりません)。

2 社外への出向者を含まず、他社からの出向者を含んでおります。

3 連結子会社のうち主要な連結子会社以外のものについては、「第7 提出会社の参考情報 2 その他の参考情報 (2) 管理職に占める女性労働者の割合」に記載しております。

 

<補足説明>

女性管理職に関するKPIを「女性管理職比率30%(2030年度末)」、「女性ライン長比率15%(2030年度末)」とし、グループ各社でタレントパイプライン整備に取り組んでおり、女性管理職の割合は着実に増加しております。

(主な取組事例)

・当社が直接出資する関連事業会社の非常勤取締役への女性登用

・副部長・副支店長ポストへの女性登用

 

[女性管理職比率の推移(上記6社合計)]                     (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

19.5%

21.6%

23.8%

 

(5) 男性労働者の育児休業取得率

当社及び主要な連結子会社の男性労働者の育児休業取得率(以下、「男性育児休業取得率」という。)

(2025年3月31日現在)

会社名

取得率

MS&ADインシュアランスグループホールディングス株式会社

60.0%

三井住友海上火災保険株式会社

84.8%

あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

100.0%

三井ダイレクト損害保険株式会社

三井住友海上あいおい生命保険株式会社

105.0%

三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

137.5%

上記6社合計

93.2%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 当社以外の取得率は、当社への出向者を含まず算出しております。

3 男性育児休業取得率は、雇用する男性労働者のうち、「育児休業を取得した者の人数」÷「配偶者が出産した者の人数」により算出しております。「-」は分母である「配偶者が出産した者の人数」がゼロとなる場合を示しています。

4 三井住友海上あいおい生命保険株式会社及び三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の取得率は、前事業年度に配偶者が出産した男性労働者が当事業年度に育児休業を取得したことなどにより、100%を超えております。

5 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

<補足説明>

男性育児休業に関するKPI「取得率100%、取得日数4週間」を目指して、社員や職場メンバーの意識向上による取得促進に取り組んでおります。

 

(主な取組事例)

・育児休業の意義と制度理解を深める研修など、全社員に対する周知取組

・育児休業取得を促す案内を、上司に対する働きかけとして実施

・育児休業中の職場メンバーへの一時金「育休職場応援手当(祝い金)」の給付

・グループ各社の好取組事例の共有・展開

 

[男性育児休業取得率の推移](上記6社合計)

2022年度

2023年度

2024年度

92.5%

89.9%

93.2%

 

(6) 労働者の男女の賃金の差異

当社及び主要な連結子会社の労働者の男女の賃金の差異(男性の賃金に対する女性の賃金の割合(以下、「男女の賃金差異」という。)

 

① 当社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

66.0%

63.7%

90.3%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 当社の従業員は全て子会社等からの出向者であります。

4 正規雇用労働者には執行役員を含んでおりません。

5 パート・有期労働者には派遣社員を含んでおりません。

 

<補足説明>

・給与基準上は男女の賃金差異はありません。

同じ社員区分・役割区分での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、社員区分が総合社員(グローバル)の役割区分別の男女の賃金差異は91.4%~107.0%となっております。

[総合社員(グローバル)の役割区分別の男女の賃金差異]

役割区分

部長職

課長職

課長代理職

主任職

差異

107.0%

91.4%

98.8%

100.5%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

81.4%

69.1%

62.3%

60.1%

 

・正規雇用労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」及び「転居転勤を前提に賃金水準を相対的に高く設定しているコース区分に占める男性の割合が高いこと」であります。

・当社グループでは、意思決定層の多様化の一環として、女性管理職の登用に取り組んでおり(※)、取組みを進めることで、男女の賃金差異の縮小についても進めてまいります。

※ グループの女性管理職比率に関するKPIを「女性管理職比率30%(2030年度末)」として取組みを進めており、女性管理職の割合は着実に増加しております。

 

[女性管理職比率の推移]

当社及び主要な連結子会社の6社合計                      (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

19.5%

21.6%

23.8%

(注)6社:「(4) 管理職に占める女性労働者の割合」に記載のグループ各社であります。

 

② 三井住友海上火災保険株式会社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

48.8%

55.7%

30.7%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 社外への出向者を含まず、他社からの出向者を含んでおります(ただし、賃金の支払いがない場合は含んでおりません)。

4 正規雇用労働者には執行役員及び理事を含んでおりません。

5 パート・有期労働者には派遣社員を除き、ic(インシュアランスコンサルタント)、理事、特別社員(産業医、高度専門職など)を含んでおります。

 

<補足説明>

・給与基準上は男女の賃金差異はありません。

同じ社員区分・役割区分での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、社員区分が総合社員(グローバル)の役割区分別の男女の賃金差異は94.1%~99.4%となっております。

[総合社員(グローバル)の役割区分別の男女の賃金差異]

役割区分

部長職

課長職

課長代理職

主任職

担当職

差異

97.9%

98.5%

94.1%

99.4%

98.7%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

83.2%

58.4%

50.4%

48.8%

 

・正規雇用労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」及び「転居転勤を前提に賃金水準を相対的に高く設定しているコース区分に占める男性の割合が高いこと」であります。

・パート・有期労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、理事、産業医、高度専門職など、相対的に賃金水準が高い有期労働者においては男性の割合が高い一方、パート・有期労働者の大半を占めるスタッフ社員(主に定型的な業務を担う社員)については女性が多いことであります。

・差異の要因解消のため、女性管理職比率の引上げ、総合社員(ワイドエリア)の転居転勤加算給の引上げ、採用における転居転勤(コース区分)別の男女人数差の縮小等の対応を行っており、差異は縮小傾向にあります。

 

[女性管理職比率の推移]                             (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

21.4%

23.7%

25.0%

 

③ あいおいニッセイ同和損害保険株式会社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

58.6%

62.0%

64.7%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 社外への出向者及び他社からの出向者を含んでおりません。

4 正規雇用労働者には執行役員を含まず、理事を含んでおります。

5 パート・有期労働者には派遣社員を含んでおりません。

 

<補足説明>

・給与基準上は男女の賃金差異はありません。

同じ社員区分・役割区分での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、社員区分が基幹社員(転居可)の役職別の男女の賃金差異は93.5%~102.1%となっております。

 

[基幹社員(転居転勤可)の役職別の男女の賃金差異]

役職

部長職

次長職

課長職

課長補佐職

主任職

担当職

差異

97.1%

99.2%

102.1%

95.3%

93.5%

96.8%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

88.1%

60.3%

55.1%

61.8%

 

・正規雇用労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」及び「転居転勤を前提に賃金水準を相対的に高く設定している社員区分に占める男性の割合が高いこと」であります。

・パート・有期労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、相対的に賃金水準・専門性の高い有期労働者においては男性の割合が高い一方、短時間労働の契約社員・コミュニケーター職については女性が多いことであります。

・差異の要因解消のため、女性管理職比率の引上げ(目標:2025年度末24%)に取り組み、また、2023年10月に従来の「全域型」「地域型」の社員区分を統合し、キャリアビジョンやライフイベント等に応じた転居転勤の可否選択の柔軟性を高める制度改定を実施し、2024年4月より運用を開始しており、差異は縮小傾向にあります。

 

[女性管理職比率の推移]                             (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

17.8%

20.0%

23.4%

 

④ 三井ダイレクト損害保険株式会社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

65.8%

61.4%

77.0%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 社外への出向者及び他社からの出向者を含んでおりません。

4 正規雇用労働者には執行役員を含まず、理事を含んでおります。

5 パート・有期労働者には派遣社員を含んでおりません。

 

<補足説明>

・給与基準上は男女の賃金差異はありません。

同じ職掌・職務区分での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、総合職掌(ゼネラル職種)の職務区分別の男女の賃金差異は96.5%~102.0%となっております。

[総合職掌(ゼネラル職種)の職務区分別の男女の賃金差異]

職務区分

マネージャー職

サブ

マネージャー職

アシスタント

マネージャー職

チーフスタッフ職

差異

100.9%

101.1%

102.0%

96.5%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

88.4%

61.4%

63.1%

65.5%

 

・正規雇用労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」及び「転居転勤を前提に賃金水準を相対的に高く設定している職種区分に占める男性の割合が高いこと」であります。

・パート・有期労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、賃金水準が高い専門人財の有期労働者において男性の割合が高い一方、相対的に賃金水準が低い事務職における女性が多いことであります。

・差異の要因解消のため、女性管理職比率の引上げに取り組み、勤務エリアを限定する職種の社員が、キャリアビジョンやライフイベント等に応じてゼネラル職種に転換できる機会を設けており、差異は縮小傾向にあります。

 

[女性管理職比率の推移]                             (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

17.9%

19.3%

19.1%

 

⑤ 三井住友海上あいおい生命保険株式会社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

63.4%

63.5%

43.4%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 社外への出向者及び他社からの出向者を含んでおりません。

4 正規雇用労働者には執行役員、理事、上席部長を含まず、キャリアLC社員を含んでおります。

5 パート・有期労働者には派遣社員を含まず、理事、上席部長、LC社員を含んでおります。

 

<補足説明>

・給与基準上は男女の賃金差異はありません。

同じ社員区分・役割区分での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、社員区分が転居転勤可を選択している総合社員の役割区分別の男女の賃金差異は80.7%~103.9%となっております。

[転居転勤可を選択している総合社員の役割区分別の男女の賃金差異]

役割区分

課長職

(次長職を含む)

課長代理職

副長職

担当職

差異

101.3%

96.9%

80.7%

103.9%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

77.4%

53.3%

66.2%

62.8%

 

・正規雇用労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」及び「転居転勤可を選択する場合の賃金水準を相対的に高く設定しており、転居転勤可を選択する割合は男性が高いこと」であります。

・パート・有期労働者の男女の賃金に差異がある主な要因は、理事、上席部長など、相対的に賃金水準が高い有期労働者においては男性の割合が高い一方、主に定型的な業務を担う社員であるアソシエイト社員については女性が多いことであります。

・差異の要因解消のため、女性管理職比率の引上げや、キャリアビジョンやライフイベント等に応じて転居転勤可否を柔軟に選択できる人事制度を導入しており、差異は縮小傾向にあります。

 

[女性管理職比率の推移]                             (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

21.4%

23.2%

25.3%

 

 

⑥ 三井住友海上プライマリー生命保険株式会社

全労働者

うち正規雇用労働者

うちパート・有期労働者

72.9%

73.0%

39.4%

(注)1 対象期間:2024年4月1日~2025年3月31日

2 賃金には通勤手当を含んでおりません。

3 社外への出向者及び他社からの出向者を含んでおりません(ただし、賃金の支払いがある他社からの出向者は含んでおります)。

4 正規雇用労働者には執行役員を含んでおりません。

5 パート・有期労働者には派遣社員を含まず、顧問を含んでおります。

 

<補足説明>

・給与規程上は男女の賃金差異はありません。

同じ資格等級での男女の賃金差異はなく、在籍年数などによる差異が若干生じております。

例えば、正規雇用労働者のうち、資格等級別の男女の賃金差異は84.7%~110.6%となっております。

[資格等級別の男女の賃金差異]

役割区分

上席部長職

部長職

次長職

課長職

課長代理職

主任職

担当職

差異

110.6%

97.8%

95.0%

98.4%

89.2%

84.7%

95.0%

 

・また、年代別では、20代の差異が小さくなっております。

[正規雇用労働者の年代別の男女の賃金差異]

年代

20代

30代

40代

50代

差異

82.8%

75.3%

75.9%

74.8%

 

・労働者全体の男女の賃金に差異がある主な要因は、「管理職に占める女性の割合が低いこと」であります。

・差異の要因解消のため、女性管理職比率の引上げ(目標:2030年度末30%以上)に取り組んでおり、差異は縮小傾向にあります。

 

[女性管理職比率の推移]                             (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

17.7%

21.5%

20.7%

 

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループは、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (1) 会社の経営の基本方針」に掲げる経営理念実現に向けて「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」を定め、取組みを進めております。

 

当社グループの経営理念は平易でわかりやすく社会的存在意義を示していること、また、すでにグループ内に浸透していることから、当社グループではパーパスを経営理念と同一であると定めております。

MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方

 

MS&ADインシュアランス グループは、経営理念の実現に向け「価値創造ストーリー」を紡ぐ企業活動を通じて、社会との共通価値を創造し、「レジリエントでサステナブルな社会」を目指します。

信頼と期待に応える最高の品質を追求し、ステークホルダーとともに、地球環境と社会の持続可能性を守りながら、誰もが安定した生活と活発な事業活動にチャレンジできる社会に貢献し続けます。

<以下略>

 

なお、本項に記載した将来に関する事項は本有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

 

① 価値創造ストーリー

当社グループは、保険事業という公共性の高い事業を中心に、社会課題を解決し社会への価値を提供するとともに、我々自身も売上や利益といった価値を享受するというビジネスモデル「価値創造ストーリー」を掲げております。

当社グループは、「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」に基づき、保険・金融サービス事業者として、事故や災害をはじめ様々なリスクを引き受け、万一の際の補償を提供します。また、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」、この取組みにより、企業活動を通じた社会との共通価値の創造を実現してまいります。

 

 

② めざす姿「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」

中期経営計画(2022-2025)では、価値創造ストーリーを実践し、社会課題の解決へ貢献し社会とともに成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざす姿としました。

経営理念の実現に向けて、社員一人ひとりが様々な社会課題に向き合い、当社のビジネスモデルを通じた商品・サービスを提供することで、お客さまが安心して生活や事業活動を行うことのできる社会を支えてまいります。

 

③ 重点課題の設定

当社が取り組む主な社会課題については、世界共通の目標や国際的なガイドラインやフレームワーク等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出したうえで、ステークホルダーにとっての影響と、当社グループにとっての影響を評価し、双方にとって重要度の高いものを重点課題と設定しております。

重点課題の分析は、中期経営計画を策定するタイミングで見直すことを基本としておりますが、社会情勢の変化等に応じて、適宜見直すこととしております。

 

[STEP1] 社会課題についての分析

社会で解決が求められている課題を的確に把握するために、世界共通の目標であるSDGs(持続可能な開発目標)や、ISO26000、GRI Standard、SASBなどの国際的なガイドラインやフレームワーク、政府や国内外諸団体が公表する報告書等を踏まえ、解決が望まれる社会課題を洗い出し、21項目を選定しました。

 

 

[STEP2] サステナビリティの重点課題の設定

選定した社会課題について、「当社が社会に与える影響(ステークホルダーにとっての重要度)」、「社会から当社が受ける影響(当社にとっての重要度)」の2つの観点で分析しました。ステークホルダーと当社の双方にとって重要度の高い社会課題として絞り込んだ14項目を整理して、3つの重点課題「地球環境との共生(Planetary Health)」、「安心・安全な社会(Resilience)」、「多様な人々の幸福(Well-being)」及び基盤取組(品質、人財、ERM)を定めました。

 

 

[STEP3] 重点課題における主な取組み

気候変動への対応や防災・減災、人権尊重の推進等、特定した3つの重点課題に基づき、リスクと機会を踏まえたCSV(Creating Shared Value)取組を推進しております。

 

 

[STEP4] 経営への報告

中期経営計画(2022-2025)では、「Value(価値の創造)」、「Transformation(事業の変革)」、「Synergy(グループシナジーの発揮)」を基本戦略とし、「サステナビリティ」は基本戦略を支える基盤の一つと位置付けております。「サステナビリティ」については、重点課題ごとにKPIを設定しており、取組状況及びKPIの進捗を定期的に経営に報告しております(重点課題ごとのKPIは「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標・目標」参照)。

 

(1) ガバナンス

当社グループは、サステナビリティ関連の課題に対して取締役会、グループ経営会議、及び課題別委員会によるガバナンス体制を敷いております。

取締役会の役割をはじめとするコーポレート・ガバナンス全般に関する事項は、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等」を参照ください。

 

① 取締役会

グループの経営方針、経営戦略、資本政策等、グループ経営戦略上の重要なサステナビリティ関連の事項及び会社経営上の重要な事項の論議・決定・各施策の進捗状況のモニタリングを行うとともに、取締役、執行役員の職務の執行を監督しております。

取締役会は、執行役員を選任するとともに、その遂行すべき職務権限を明確にすることにより、取締役会による「経営意思決定、監督機能」と執行役員による「業務執行機能」の分離を図っております。執行役員は、取締役会より委ねられた業務領域の責任者として業務執行を行い、その業務執行状況について取締役会に報告します。

 

 

② 課題別委員会

業務執行に係る会社経営上の重要事項に関する論議及び関係部門の意見の相互調整を図ることを目的として7つの課題別委員会を設置しております。サステナビリティ関連の課題や取組みは、主として、課題別委員会のサステナビリティ委員会及びERM委員会での論議を経て、取締役会とグループ経営会議の双方に報告し、決定します。

サステナビリティ委員会は、サステナビリティ戦略を推進する役割を担うグループCSuO(Group Chief Sustainability Officer)が運営責任者となり、サステナビリティ課題の取組み・方針計画・戦略等の論議及び各施策の進捗状況のモニタリングを行っております。2024年度は4回開催しました。主な論議テーマは、仕事とのつながりの強化、情報開示の動向と課題・対応状況、「サステナビリティの考え方」の改定、取引先に係る温室効果ガス排出量の削減状況、サーキュラーエコノミー取組の現状と今後の対応、自然資本に関する取組状況、グループ人権尊重取組の現状と今後の取組等で、外部の有識者も委員会に参加しております。

ERM委員会は、グループCFOとグループCROが運営責任者となり、ERMに関する重要事項の協議・調整等を行うとともに、サステナビリティ関連を含むリスク管理の状況等について、モニタリング等を行っております。2024年度は7回開催し、2025年2月に開催したERM委員会では、経営が管理すべき重要なリスク(グループ重要リスク)として、「気候変動」にも引き続き留意してリスクを管理していくこと等を論議し、取締役会にてグループ重要リスクを決定しております。また、ERM委員会では気候変動を含む自然災害リスク管理の高度化や、中長期的に当社グループ経営に影響を与える可能性があり経営が認識しておくべきリスク事象(グループエマージングリスク)の1つとして自然資本の毀損(資源の枯渇、生態系の劣化・危機、環境に甚大な損害を与える人為的な汚染や事故)に関して引き続きモニタリングしていくこと等についても論議しており、論議内容は取締役会に報告しております。

 

③ 役員報酬

中期経営計画(2022-2025)では、「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」の実現に向け、収益性、健全性等財務指標のみならず、サステナビリティ関連項目についても非財務指標に係るKPIを設定し、定期的にモニタリングを行っております。

非財務指標に係るKPIは、3つの重点課題それぞれにおいて設定しています。主なKPIとして、温室効果ガス排出量削減率、社会のレジリエンス向上に資する商品の引受件数増加率、健康関連の社会課題解決につながる商品の保有契約件数などがあり、社外取締役を除く取締役の業績連動報酬に反映させております。業績連動報酬は、取締役会長・取締役副会長・取締役社長の報酬全体の50%、その他の役位の場合は約30~40%を占めております。

 

④ 取締役会の実効性確保

取締役会の内部委員会である人事委員会では、グループの成長戦略の実現に向けて多様な視点から論議を行うため、経営戦略等の重要な事項の判断及び職務執行の監督の観点より、取締役会の実効性確保に必要なスキル(知識、経験、能力)を審議・決定しております。スキルについては、①一般に求められるベースとなるスキル(企業経営、人事・人財育成、法務・コンプライアンス・内部監査、リスク管理、財務・会計)、②当社グループのコア事業が保険事業であり、グローバルな事業展開をしていることを踏まえたスキル(保険事業、国際性)、③現在の当社の事業環境を踏まえた、事業変革及び市場が重視している課題への対応に必要なスキル(IT・デジタル、サステナビリティ)に区分しております。

 

(2) 戦略

当社グループの中期経営計画(2022-2025)では、補償・保障前後における商品・サービスのシームレスな提供や、リスクコンサルティングによるソリューションの提供など、リスクソリューションのプラットフォーマーとして気候変動をはじめとした社会課題の解決に貢献し、社会と共に成長する「レジリエントでサステナブルな社会を支える企業グループ」をめざしております。

また、「地球環境との共生(Planetary Health)」、「安心・安全な社会(Resilience)」、「多様な人々の幸福(Well-being)」の3つをサステナビリティの重点課題として定めております。

社会で解決が求められている様々な課題は、当社グループの事業活動へのリスクとなる一方で、これらの課題解決につながる商品・サービスの提供は、社会との共通価値を創造する新たな事業機会になることから、社会との共通価値を創造するCSV取組を進めております。

 

① 気候と自然との統合的な戦略

将来の気候変動や生物多様性の損失に関するリスクの変動は、保険業界に多大な影響を与えます。例えば、気候変動が進行すると、温暖化による熱波、干ばつ、森林火災などの災害が頻繁に発生し、その規模も増加する可能性があります。更に、降水パターンにも影響を与えることで豪雨や洪水のリスクが高まるほか、氷河の融解や海水の熱膨張による海面上昇も起きると沿岸地域の浸水リスクが増加します。

日本国内においても、年平均気温の上昇や猛暑日・豪雨の増加などが予想されており、上述のリスクの顕在化や、サプライチェーンの分断による企業活動への影響が見込まれております。

気候変動の深刻化に伴い生物多様性の喪失が危惧されております。生物多様性が失われると、自然が提供する土壌の安定といった生態系サービスが減少することにより、洪水・土砂災害リスクが増加したり、水質浄化の生態系サービスが減少したりすることで、水資源の枯渇や水質悪化が進行するといった、農業・工業をはじめ多くの企業活動への影響が見込まれます。

こうした自然災害の頻度と規模が増加することで、保険金の支払いが増加するなど、保険会社の収益性に影響する可能性があります。

このような状況に対応するため、当社グループでは、地球温暖化とそれに伴う自然災害の増加を受け、気候変動への適応と自然資本の保全・回復に統合的に取り組んでいくことが重要と考えております。

国際的な目標であるパリ協定や国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)の「昆明・モントリオール生物多様性枠組」では、2050年までのネットゼロ達成と2030年までに生物多様性の損失を食い止め、反転させ、自然を回復軌道に乗せる「ネイチャーポジティブ」の方向性が示されており、当社は自然資本の毀損がもたらすリスクを適切に評価し、開示するためのTNFD開示提言にも対応してまいります。

私たちのミッションである「安心と安全を提供し、活力ある社会の発展と地球の健やかな未来を支える」ため、ネットゼロとネイチャーポジティブの同時実現をめざし、社会やビジネスモデルの変革を推進してまいります。

 

a.気候・自然関連のリスクと機会

(a)気候・自然関連のリスク

イ.物理的リスク

当社グループでは、台風や豪雨による風水災のほか、森林火災や雹災など、気候変動に関連する自然災害リスクの増大が既に保険引受において財務的影響を及ぼしております。また、気候だけでなく水資源の枯渇など自然資本関連の様々なリスクによる影響が、社会や事業活動において中長期的に高まっていくと想定されます。

注 時間軸については、短期:2025年(中期経営計画期間末)、中期:2030年(中間目標のターゲットイヤー)、長期:2050年を想定しております。

 

 

 

ロ.移行リスク

当社グループでは、ネットゼロやネイチャーポジティブな社会への移行にあたり、社会の様々な分野での急激な変化による企業活動のリスク(移行リスク)は保険引受や資産運用の収益低下につながる可能性があると考えております。ただ、保険引受では、一部商品を除き、移行リスクを直接補償している保険商品はほとんどないため、影響は限定的と考えております。技術革新や法規制の導入は、保険提供の新たな機会にもなりますが、こうしたニーズに対応できない場合はリスクにもなる可能性があります。

※1 会社役員賠償責任保険の略称。会社役員が役員として行った行為(含む不作為)に起因して損害賠償請求がなされたことにより、会社役員が負う損害賠償金や争訟費用等を補償

※2 賠償事故が発生した場合のブランドイメージの回復に必要な措置等にかかった費用を補償

 

ハ.シナリオ分析

(イ)保険引受における物理的リスクの分析

物理的リスクのシナリオ分析として、地球温暖化に伴う台風の変化が保険金支払に与える影響について分析しました。

当社は、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が立ち上げたプロジェクトにおいて、保険引受に与える影響が大きい台風やハリケーンの分析を行うグループに参画し、将来、地球温暖化が進展した際に、台風やハリケーンがもたらすリスク量等への影響について検討しました。

4℃シナリオ(RCP8.5)における2050年において、台風の保険金支払は、「勢力」の変化によって約+5%~約+50%、また、「発生頻度」の変化によって約▲30%~約+28%、各々変化する可能性があるという結果になりました。

台風による高潮の変化では、2℃シナリオ(RCP4.5)、4℃シナリオ(RCP8.5)における2030年及び2050年の分析結果は、いずれの場合でも、保険金支払は数%程度増加する可能性があるという結果となりました。

2021年度には、上記の分析とは別に、気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク(NGFS)で検討されているシナリオの前提等を参考として、日本銀行・金融庁と連携して、シナリオ分析のエクササイズを実施し、気候変動影響によって勢力が強まった自然災害による保険金支払について分析を行いました。また、上記に加えて、当社グループでは、学術機関と連携した研究プロジェクト等により知見の向上に努めるとともに、気候変動による台風の勢力変化を反映した分析手法を構築するなど、シナリオ分析の精度向上に取り組んでおります。

 

(ロ)投融資における物理的リスクの分析

当社グループでは気候変動による投融資先の重要拠点の水災被害増加は、運用収益悪化につながる可能性があると考えております。そのため、主要な投資先の資産の物理的リスクの分析を行い、資産運用における気候変動リスクを確認しております。また、投融資先の事業拠点と自然関連の要注意地域との関係性についても分析を行いました。

当社グループではお客さまとの取引を通じて気候変動リスクと強い関係性を有しており、投融資(株式・社債・企業融資)ポートフォリオを対象に、気候変動シナリオ下での物理的リスクを定量的に評価しました。気候変動に起因して洪水、風災等の物理的リスクが増大すると、投融資先の売上や資産に影響を与える可能性があります。そこで、当社グループ投融資ポートフォリオ上位500社を選定し、気候変動による洪水・風災リスクの影響について、株式・社債・企業融資ごとに、売上損害・資産損害の双方を分析しました。

分析の結果、最もリスクが増大する株式の4℃超シナリオにおいて、2050年時点で売上損害、資産損害の影響がそれぞれ5.2%程度(洪水、風災の合計)増大する可能性があることがわかりました。ただし投融資先の売上対比では、投融資ポートフォリオ全体としての影響は限定的と考えられます。

 

(ハ)自社事業拠点における物理的リスクの分析(洪水)

当社グループの自社事業拠点における気候変動シナリオ下での物理的リスクを定量的に評価しました。当社グループが保有する国内の主要70拠点の不動産を対象に、気候変動シナリオ下での洪水被害を把握し、気候変動による洪水の浸水被害の増大を分析しました。

年1%の確率で発生する洪水について、SSP1-2.6シナリオでは2050年に浸水深が高くなる傾向がありますが、これは気候変動シナリオの分析における不確実性などが原因と考えられます。新たに浸水する可能性がある拠点はありませんでした。

SSP5-8.5シナリオでは、2020年に浸水する可能性があった拠点で、2050年に浸水深が増加する傾向が多く見られます。また、2080年時点では、新たに1拠点が浸水する可能性があることが確認されました。

0.1%の確率で発生する洪水について、SSP1-2.6シナリオでは、2080年に新たに浸水する可能性がある拠点が1つ増えると予測されております。

SSP5-8.5シナリオでは、2050年には既存の拠点で2m以上の浸水が見られる拠点が増加し、新たに浸水する拠点が1つ増えると予測されております。更に、2080年には新たに浸水する拠点がもう1つ増加する可能性があります。

 

(ニ)投融資における移行リスクの分析(カーボンコスト)

温室効果ガス排出量に応じた費用を負担する「カーボンプライシング」(炭素の価格付け)は、温室効果ガス排出量の削減を促す政策として世界で導入が検討されており、企業にとってはカーボンコストの負担が増加するリスクがあります。

当社では温室効果ガス排出量の削減を目的として、再生可能エネルギー契約や省エネルギー設備への投資を行っております。これらの追加コストの支払い及び更新投資の意思決定を行う際に、内部炭素価格を活用して判断しております。

内部炭素価格の設定は、契約切替に伴う追加コストや炭素価格のベンチマークを勘案し、10,000円/t-CO2としております。

移行リスクのシナリオ分析として、将来のカーボンコストによる負担増加が当社グループの投資ポートフォリオに与える影響について分析しております。

分析にあたっては、炭素排出量をはじめとする環境データや気候変動のリスクを分析するツールを使用し、投資先企業が将来負担するカーボンコストに対して、現時点でどの程度支払う能力(カーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)(※))があるのかを算出しました。なお、EBIT at Riskが極端に大きくなった投資先のものは外れ値として集計から除外しています。

※ 企業のカーボンコストの将来負担増加分(Unpriced Cost of Carbon:UCC)を企業の利益(Earnings Before Interest and Taxes:EBIT)で割ったもので、シナリオごとの投資ポートフォリオに与える財務的な影響を示しています。

 

また、TCFDが2℃以下を含む気温上昇シナリオに基づく分析を推奨していることを踏まえ、当社グループでは、次の3つのシナリオに基づいて分析しました。

 

高位シナリオ:2100年までに気温上昇を2未満に抑えるという国際目標(パリ協定)と整合する十分な政策手段が講じられるシナリオ

中位シナリオ:気温上昇を2に抑えるための政策が長期的には講じられるものの、短期的には政策実施が遅れることを想定したシナリオ

低位シナリオ:各国が自主的に定めた目標を実施するものの、気温上昇が3程度となるシナリオ

 

なお、分析対象は、当社グループの2023年3月末の投資ポートフォリオのうち、上場企業の国内外株式(時価ベースで約99%をカバー)と国内外社債(簿価ベースで約95%をカバー)としております。また、企業の利益については、財務パフォーマンスの変動を緩和するため直近3ヵ年平均値を用いており、温室効果ガス排出量については、投資先企業が直接排出したスコープ1と、電力などの使用によって間接排出したスコープ2を対象としております。

分析結果は下表のとおりであり、より大きい政策手段が講じられる高位シナリオや中位シナリオでは、カーボンコストの負担が大きくなり、移行リスクが大きくなります。当社グループの2023年3月末の投資ポートフォリオでは、2050年にカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)が、株式では低位シナリオで約8%、中位・高位シナリオで約31%、社債では低位シナリオで約14%、中位・高位シナリオで約48%程度となる可能性があるとの分析結果となりました。

 

[MS&ADグループカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)]

<株式(2023年3月末時点)>

 

低位シナリオ

中位シナリオ

高位シナリオ

2030年

4.5%

13.2%

18.2%

2040年

7.2%

22.1%

27.5%

2050年

8.4%

31.1%

31.1%

 

<社債(2023年3月末時点)>

 

低位シナリオ

中位シナリオ

高位シナリオ

2030年

7.8%

21.5%

29.1%

2040年

12.0%

34.9%

42.9%

2050年

13.9%

48.4%

48.4%

 

この分析は、投資先企業における現在の温室効果ガス排出量をもとに実施したものであります。投資先企業が脱炭素の取組みを進めていけば、その投資先企業が負担するカーボンコストは低下し、将来のカーボンアーニングアットリスク(EBIT at Risk)も低減が見込まれます。

 

シナリオ分析に関する詳細の内容は、当社の「グリーンレジリエンスレポート2024」を参照ください。

https://www.ms-ad-hd.com/ja/csr/main/05/teaserItems1/01/link/greenresiliencereport2024.pdf

 

 

ニ.リスク評価に対する不確実性の存在

(イ)気候予測モデルの不確実性

複数の気候予測モデルを比較・評価し、その結果を統合することで気候変動に関する科学的理解を深めることを目的とする国際的なプロジェクトのCMIP(Coupled Model Intercomparison Project)は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の評価報告書においても、気候予測やシナリオ分析のためのデータ提供を行っておりますが、その気候予測モデルには以下のような不確実性を内包しております。

a.モデルの構造的不確実性

各モデルは異なるパラメータを使用しているため、モデル間で結果が異なることがあります。特に温暖化に伴う雲の温室効果や日傘効果がモデルごとに異なり、これが気候変動予測の不確実性の最大の要因(※)となっています。

b.外部強制力の不確実性

太陽放射、火山活動、人為的な温室効果ガスの排出など、外部強制力の将来の変動に関する不確実性も存在します。

c.内部変動の不確実性

気候システムには自然の内部変動(エルニーニョ現象等)が存在し、これがモデルの予測に影響を与えることがあります。

d.データの不確実性

モデルの検証や初期条件の設定に使用される観測データの精度に不確実性が存在します。日本の短時間強雨発生回数の変化に関する気象庁のレポートにおいても、極端な大雨の発生頻度が少ないことや、アメダスの観測時間が比較的短いことから、これらの長期変化傾向を確実に捉えるためには今後のデータの蓄積が必要であることが示唆されています。

e.スケールの不確実性

モデルはグリッドベースで計算を行うため、空間解像度に限界があります。これにより、地域的な気候変動の詳細な予測には限界が生じます。

※ Zelinka et al., Causes of Higher Climate Sensitivity in CMIP6 Models,

 

このように、IPCCの評価報告書に提供される気候モデルにおいても複数の不確実性が存在し、最も温暖化が進行するシナリオ(RCP8.5/SSP5-8.5)における分析結果においてもなお、その影響が上振れする可能性があることを認識しております。

 

(ロ)洪水対策後の被害額に関する不確実性

当社グループが有するポートフォリオに対して、特に影響が大きい自然災害は洪水でありますが、適応策(洪水に対する防止対策)を実施した後においても、気候変動や社会経済の発展状況によっては洪水被害が現在の被害額よりも増加してしまうという「適応の限界」が生じる可能性があります。これは洪水を防御するための構造物を建設する間に発生する洪水被害などが大きいためであり、できるだけ早期に適応策の実施を意思決定することと、そのための資金確保が重要なことが明らかになっております。

当社グループはこれらの点を考慮し、自然災害発生時の被害を回避するために要した費用を補償する「災害時車両緊急避難特約」などを開発しております。

 

(ハ)土砂災害における被害額に関する不確実性

多様な生態系によって、私たちは洪水緩和や土壌・堆積物保持といった生態系サービスを享受しております。しかし、将来的に生物多様性が失われることで、こうしたサービスが得られずに被害を受けるリスクがあります。

例えば、森林には降雨時における表層崩壊の発生を抑制するという土砂災害防止機能があります。この機能は、森林の成熟あるいは劣化に伴って向上又は低減します。また、成熟した森林は若い森林と比較して、より規模の大きい豪雨に対しても土砂災害防止機能を発揮できますが、一方で、土砂災害が発生した場合の流木量は成熟した森林の方が大きくなることがあります。

日本は国土の67%が森林であり、そのうちの約4割は成熟した状態にある人工林であることに加え、前述のように、気候変動による豪雨の増加が予想されることから、今後は土砂災害における損害額の増加が見込まれるものの、そのリスク量の大きさは想定できていない可能性があります。

当社グループはこれらの点を考慮した森林整備なども含めた流域治水が重要であると考えており、熊本県で土砂災害の防災・減災に貢献する球磨川流域における「緑の流域治水プロジェクト」や“熊本のウォーターポジティブ実現のための取組み”などの「グリーンレジリエンス(※)」の取組みを進めております。

※ 当社グループは、自然の恵みを生かし、生物多様性を守りながら、脱炭素化を進め、自然災害の被害を和らげ、その魅力で地域も活性化する好循環を生み出す考え方を2015年から「グリーンレジリエンス」と称し、自然環境の保全・回復活動や、自治体・大学との共同活動に取り組んできました。

 

(b)気候・自然関連の機会

当社グループは、特定した気候・自然関連の物理的リスク、移行リスクを踏まえ、リスクそのものの発生を抑制するとともに、リスクを引き起こす要因となる社会課題の解決に力を注いでおります。

 

(c)気候・自然関連のリスクと機会によるビジネスモデル、バリュー・チェーン(保険引受先・投融資先)への影響

当社グループのビジネスモデルは、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組 ①価値創造ストーリー」のとおり、保険・金融サービスにより「リスクを見つけ伝える」「リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする」「経済的な負担を小さくする」という活動を通じて、社会課題へのソリューションを提供することであります。

気候変動による自然災害の頻発化・激甚化、生態系の喪失による気候変動への適応・緩和能力の低下は、支払保険金の増加につながり、当社グループの収益に大きな影響を与えます。

また、当社のバリュー・チェーンを形成する保険引受先と投融資先にも、上記(a)の「イ.物理的リスク」「ロ.移行リスク」のとおり、影響を与えます。

一方、気候変動への対応には、保険引受先・投融資先をはじめ社会全体において大幅な投資が見込まれております。上記(b)のとおり、外部環境に応じた当社グループの機会が考えられます。例えば、再生可能エネルギーへの移行や省エネルギー技術の採用による設備投資、防災・減災を目的としたグリーンインフラへの投資等が考えられ、このような成長マーケットへのリスクソリューション提供は当社グループの機会となっております。

 

 

b.気候・自然関連のリスクと機会を踏まえた取組み

(a)リスクを見つけ伝える

イ.「リスクを見つけ伝える」取組み ~サステナビリティを考慮した事業活動~

当社グループは、「サステナビリティの考え方」に基づき、サステナビリティを考慮した事業活動を実践し、ステークホルダーとともに社会課題の解決をめざしております。保険引受・投融資においては、環境・社会に負の影響を与えるリスクを評価・分析し、取引先とともにリスク低減に取り組んでおります。リスクの評価にあたっては、国際協力銀行(JBIC)の「環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン」や国際金融公社(IFC)の「パフォーマンススタンダード」等を参考に、気候・自然関連の物理的リスク及び移行リスクに加え、脱炭素化に向け、急速に普及が進む再生可能エネルギー事業や未開拓の場所への大規模な開発を伴う新規の農林水産事業における自然や地域社会への影響、先住民の権利に関するリスク等を評価・分析しております。発見されたリスクに対する予防・低減、課題の解決に貢献する商品やリスク・コンサルティングサービスの提供を通じ、ネットゼロ、ネイチャーポジティブを支援しております。

 

ロ.気候・自然関連リスク・機会の分析、評価と情報開示の支援

MS&ADインターリスク総研株式会社では、気候・自然関連の物理的リスクと移行リスクを評価・分析し、情報開示を支援するサービスを提供しております。特に気候変動の物理的リスクの定量的な評価は、先進的な知見をもつ社外の組織と連携し注力してまいりました。2020年に米国のスタートアップと連携しAIを活用した気候変動影響評価をもとに、将来の多様な自然災害リスクを全世界対象に90m四方の精度で定量評価するサービスを開始しております。また2018年に開始したプロジェクトでは、全世界の高精度な浸水深分布の推定を実現し、その成果をコンサルティングに活用しております。また、2023年度から全世界の洪水リスク評価が可能なSaaS型プラットフォーム「洪水リスクファインダー」の提供を行っております。

自然関連のリスクについては、直接の事業活動だけでなく、原材料調達などを含むバリュー・チェーン全体を対象とする必要があります。事業が接点を持つ各地域の自然・生態系の状態や、事業のあり方によって異なることから、分析・評価には、地域単位の科学的な評価・分析を行うことが重要であり、当社グループは、2022年に自然資本ビッグデータを有する企業と提携するなど、画期的な技術をもつ企業との実証を重ねながら、全般的な支援に加え、都市不動産向けや淡水資源にフォーカスしたTNFD開示支援など、自然との接点が特に強い業種に焦点を当てた支援を提供しております。

 

ハ.ネイチャーポジティブへの移行を後押しするコレクティブアクション

地域の課題解決に向け、自然への依存の内容・度合いや、土地利用の変化による自然へのインパクトを踏まえ、ネイチャーポジティブに向けた明確な目標を共有することが重要であり、効果的な対策を立案し、様々なステークホルダーによる協働(コレクティブアクション)を進める必要があります。MS&ADグリーンアースプロジェクトでは、全国3ヵ所での自然環境の保全・再生活動を通じて、研究機関と連携し、地域の事業者、NPOなどを巻き込み、ネイチャーポジティブに向けたコレクティブアクションを推進しております。ネイチャーポジティブの実現と自然を活用した防災・減災、水資源の涵養などの課題解決を進め、安心・安全で活力ある地域モデルの構築をめざしております。

 

(b)リスクの発現を防ぐ・影響を小さくする

イ.保険引受・投融資を通じた取組み

<保険引受先・投融資先に係る温室効果ガス排出量削減目標と対話>

当社グループは、保険引受先及び投融資先に係る温室効果ガス排出量の削減について、2030年までの中間目標を設定しております。削減率目標とその進捗については「第2 事業の状況 2 サステナビリティに関する考え方及び取組 (4) 指標・目標」を参照ください。

 

目標達成に向け、2023年度より、温室効果ガス排出量削減をはじめとするサステナビリティの課題に関する保険引受先との対話活動を開始しました。従来も、CSV取組として、サステナビリティの重点課題の解決に向けた保険引受先への商品・サービスの提案活動を行っておりますが、2023年度からは、サステナビリティ課題に完全にフォーカスした対話活動を新たに開始しております。対話を通じ、保険引受先のサステナビリティ課題を把握し、課題解決に向けたソリューション提案を進めております。取組みの推進にあたり、代理店・ブローカーともサステナビリティ課題の解決に向けたソリューション提案に関する対話を開始しております。

 

ロ.投融資を通じた脱炭素社会の支援

投融資先企業の温室効果ガス排出量削減に向けて、気候変動に対応した対話取組の推進、太陽光・風力・バイオマスといった再生エネルギーの発電所建設に係るプロジェクトファイナンスやファンドへの投融資を行っております。また、三井住友海上火災保険株式会社、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社、三井住友海上あいおい生命保険株式会社、三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の4社が合同で気候変動を中心とするインパクトファンドへの投資の実行とともにノウハウ構築も進めております。

気候変動に対応した対話に関しては、投資先企業の気候変動対応の組織体制、温室効果ガス排出量削減目標に向けた取組み、技術革新計画や課題の把握等に取り組んでおります。

 

ハ.当社グループの温室効果ガス排出量削減取組

当社グループは、2010年度に温室効果ガス排出量削減の中長期目標を設定し、事業活動に伴って排出される温室効果ガス排出量の削減に取り組んでまいりました。2020年度には当初の温室効果ガス排出量削減目標(2009年度基準比30%削減)を達成し、2021年5月、パリ協定に沿った新たな目標を設定しました。新たな目標では、温室効果ガス排出量を2050年度ネットゼロとし、2030年度の中間目標と再生可能エネルギー導入率目標も設定しました。

自社のオフィスビルへの最新鋭の省エネルギー設備の導入や太陽光発電設備の設置、社有車の低燃費車両への入替等により、エネルギー使用量の削減と再生可能エネルギーの導入を進めております。また、リモートワークや在宅勤務、オンライン会議の積極的な活用など、ビジネススタイルの変革は、社員のWell-beingの実現とともに、社員の移動やオフィススペースを削減することで、ガソリンや電力の使用量の削減につながり、通勤や出張に係るエネルギーの削減、いわゆるスコープ3の温室効果ガス排出量削減につながります。保険契約のお申込み、保険金のご請求手続、各種お知らせ等のWeb化といったビジネスプロセス改革も、紙の使用量の削減などの自然への負荷軽減と同時にスコープ3削減として取り組んでおります。

 

ニ.気候・自然関連のイニシアティブ・アライアンスへの参加

ネットゼロ、ネイチャーポジティブに向けた取組みは、科学的知見に基づき、社会全体の移行を進めることが不可欠であり、研究の推進と、ビジネスにおける基準やルールづくり、推進体制の構築が鍵をにぎります。当社グループは、学術機関との共同研究に積極的に参加するとともに、気候・自然関連のイニシアティブやアライアンスへの参加、また自らが連携の仕組みを主体的に構築するなど、様々なステークホルダーとともに社会の移行に積極的に取り組み、「レジリエントでサステナブルな社会」をめざしております。こうした移行プロセスにおけるステークホルダーとの接点強化やペインポイントの発見を、新たなマーケットの開拓や保険・サービスの開発につなげ、あるべき社会の創造と当社の持続可能な成長のシナジー創出に取り組みます。

グループ会社がそれぞれに様々な研究機関と共同研究を行っておりますが、特に気候や自然に関連して次の研究プロジェクトに参画しております。

 

 

研究機関との主な共同研究

LaRC-Flood®プロジェクト(東京大学、芝浦工業大学)

2018年、IPCCにも成果が紹介されるなどの実績を持つ芝浦工業大学の平林教授、東京大学生産技術研究所の山崎准教授と気候変動による洪水リスクへの影響評価の研究及び研究成果の社会への還元をめざしたプロジェクトを始動し、「気候変動による洪水頻度変化予測マップ」を公開。2021年度からNEDOとのマッチング助成事業の採択を受け、「将来洪水ハザードマップ」の開発、提供やSaaS型「洪水リスクファインダー」の開発に至っている。

地域気象データと先端学術による戦略的社会共創拠点 [ClimCOREプロジェクト](東京大学)

過去から現在までの日本域の大気状態を高解像度で再現する「日本域気象 再解析データ」を整備し、大気状態の全体像を長期にわたり均質に4次元的に再現するとともに、こうした気象・気候ビッグデータの利活用とその体制構築も研究するプロジェクト。当社グループは、本プロジェクトへの参画を通じ、台風のリスク評価に関する共同研究を行っている。

※2020年(国研)科学技術振興機構(JST)による「共創の場形成支援プログラム」(COI-NEXT)の助成対象

「流域治水を核とした復興を起点とする持続社会」地域共創拠点[緑の流域治水プロジェクト](熊本県立大学)

球磨川流域を襲った令和2年7月豪雨を踏まえ、熊本県は、河川の整備だけでなく、自然環境との共生を図りながら、流域全体の総合力で安全・安心を実現していく「緑の流域治水」を提唱。この考え方を核に、安全・安心に住み続けられ豊かな環境と若者が残り集う持続可能な地域の実現に向け、治水技術や環境再生、避難体制の強化につながる地域DX等の研究を進める。2021年にJSTのCOI-NEXTの助成を受ける。当社グループは、「MS&ADグリーンアースプロジェクト」として湿地の保全に参画するとともに、流域治水を促す保険・金融商品や防災に資するDX等の研究を進めている。

※2021年(国研)JSTによるCOI-NEXTの助成対象

ネイチャーポジティブ発展社会実現拠点(東北大学)

自然の劣化を回復基調に転じる「ネイチャーポジティブ」の理念に基づき、アカデミア、金融・ビジネスセクター、自治体、市民等が連携し、①自然の価値を見える化し、持続的に高める、②ネイチャーポジティブに向けてお金が流れる仕組みを作る、③ネイチャーポジティブ発展社会を支える人を育てる取組みを進める。当社グループは、生物多様性の評価手法や認証の開発に取り組み、ネイチャーポジティブに向けてお金が流れる仕組みづくりとその実装をめざす。

※2024年(国研)JSTによるCOI-NEXTの助成対象

 

(c)経済的な負担を小さくする

イ.気候変動の適応に貢献する商品・サービスの開発・提供

住宅や事業所向けの火災保険に付帯される「水災補償」は、洪水などによる建物や家財、設備等の損害を補償します。迅速な損害補償は、被災者の生活再建を支援する上で極めて重要であります。「天候デリバティブ」は、異常気象や天候不順による売上の減少やコストの増加といった企業の損失を回避・軽減し、収益の安定化を図ります。オーストラリアでは、オンラインでリアルタイムに保険見積りを実施できる「農家向け天候インデックス保険プラットフォーム」をインシュアテックの技術を活用して提供し、迅速かつ簡便に補償を得ることが可能になると考えております。また、保険市場が十分に発達していない国々では一定規模の自然災害が発生した場合、復旧や復興は困難を極め、更なる貧困や政情不安につながる可能性があり、世界銀行等の国際機関と連携し、公的自然災害補償制度への参画を通じて、こうした国々へ復興資金の迅速な提供に貢献しております。

 

ロ.自然災害の補償・保障前後への取組拡大

当社グループでは、頻発する自然災害に対して、「リアルタイム被害予測ウェブサイト・アプリcmap」や「防災減災システム『防災ダッシュボード』」等のサービスを通じて、地域の防災減災活動を支援しております。国内初の降雹の予測情報を通知するアラートサービスは、降雹発生確率が高まっているエリアのサービス利用者に対し、プッシュ型のアラートを配信することで、雹災による被害の回避・軽減に貢献しております。

また、実証実験中の「内水氾濫予測システム」は、都市部で頻発する内水氾濫を予測し、住民の避難や浸水対策に役立て、被害の軽減をめざします。

さらに、被災された方々の生活再建を早期に支援すべく、補償後サービスとして、罹災証明書の迅速な発行や交付事務の効率化を支援しております。

こうした様々なサービスや地域の防災減災活動を実装するため、代理店等と連携した「防災パートナー」制度を運営しております。当社グループが核となり、地域特性に応じた防災活動を行う代理店等と連携し、自治体や災害支援組織との協力体制を構築し、地域の防災力の向上とともに、お客さまとの接点強化による事業機会の創出につなげます。

 

ハ.保険商品を通じた、ネットゼロ、ネイチャーポジティブ移行への支援

当社グループでは、再生可能エネルギー事業に伴うリスクの補償など、ネットゼロ、ネイチャーポジティブへの移行に向けた企業の事業を支援する保険を提供しております。

自然災害でJ-クレジットを創出する予定だった機器が被災した場合、その販売収益の減少を補償する保険を提供しております。また、脱炭素を支援するため、追加費用を補償する特約も開発しております。従来の保険は、元の状態に復旧する費用までしか保険金をお支払いできませんでしたが、「Build Back Better(※)」の考えを踏まえ、ネットゼロ社会への移行を後押ししております。「カーボンニュートラルサポート特約」は、被災建物の復旧時にCO2排出量削減設備の導入費用を補償し、「電気自動車(EV)等買替費用特約」は、ガソリン車が事故により大きな損害を被り、EV等へ買い替える場合に発生する費用を補償します。

ネイチャーポジティブへの移行において、資源利用の削減は重要な要素であり、循環経済(サーキュラーエコノミー)の推進が不可欠と考えております。「衣料品循環費用補償(燃やさない保険)」は、アパレル業界の大量廃棄の社会課題を受け、衣料品メーカーや販売店が損害を受けた際、リサイクルに係る費用を補償し、衣料品の循環利用を支援します。また、自動車の修理においてはお客さまとともにリサイクル部品の活用に取り組んでおり、循環経済の実現に貢献しております。

自然資本や生物多様性の保全・回復に資する商品・サービスとして、「海洋汚染対応追加費用補償特約」では、従来、補償の対象外であった船舶運航者の社会的責任を補完するため、自然環境への損害に対する保全・回復活動等の費用を補償しており、「再造林等費用補償特約(フォレストキーパー)」では、罹災した森林の保全と再生に向けた再造林費用を補償しております。また、熊本県阿蘇地方の草原維持に欠かせない「野焼き」による延焼リスクを補償する保険制度も提供しております。一部では、延焼リスクの手当が得られず、中断を余儀なくされていましたが、当社グループの「野焼き保険」提供により、阿蘇の自然や歴史に密接に結びついた伝統は維持され、農畜産物を育み、豊富な水資源の保全などに貢献しております。

※ 災害発生後の復興段階において、元の状態に戻すだけでなく、より強靱な対策を講じてまちづくりを実現するという、防災分野で提唱されている概念。

 

② 重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」

a.リスクと機会

当社グループは、イノベーションの進展や産業構造の変化などに伴う新しいリスクの発現、感染症の拡大、自然災害や大規模地震、地域産業の衰退などの社会課題を重点課題「安心・安全な社会(Resilience)」と位置づけております。これらは取引先の事業活動におけるリスクにもなり、当社グループにおいても保険金支払の増加や保険料収入の減少につながります。

一方、増加するサイバーリスクや、新たに発現しているAI、宇宙開発、拡張・仮想現実などでのリスクへの対処は、当社グループ事業における機会でもあると考えております。

 

b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み

(a)社会の変革に伴い発現する新たなリスクへの対応

・2024年7月、EVが公道で電池切れを起こした際の「電欠現場駆け付け充電サービス」のトライアルを開始しました。将来的なEVのさらなる普及を見据え、ロードサービスの拡充を通じてEVユーザーの不安解消へつなげるとともに、脱炭素社会の実現に貢献してまいります。

・2024年11月、CCS(※)事業の圧入・貯留事業者向けに、海底下へのCO2の圧入・貯留に係るリスクを包括して補償する「CCS事業者専用保険」の販売を開始しました。本商品の提供を通じて、CCSの事業化を後押しし、カーボンニュートラル社会の実現に貢献してまいります。

※ Carbon dioxide Capture and Storage の略。工場や発電所から排出されるCO2を回収して貯留場所に輸送し、地下帯水層等の大気への影響のない場所に貯留することで、工業プロセスにおけるCO2の削減を実現する技術。

・2025年4月、近年増加している太陽光発電所のケーブル盗難被害の軽減を実現するため、太陽光発電事業者向けに、侵入者を検知するセンサーの設置と警備会社への自動通報・現場駆け付けをパッケージ化したケーブル盗難防止サービスの提供を開始しました。

 

(b)データ分析やAIを活用した防災・減災

・2024年6月、個人のお客さま向けに降雹の危険をお知らせする「雹(ひょう)災緊急アラート」の提供を開始しました。個人向けの自動車保険や火災保険で登録されている契約者住所において降雹リスクが高まった際、事前アラートや防災につながるアドバイスをSMSで配信し、被害の回避行動を促します。

・2024年8月、自然災害発生時に住宅修理や保険金の請求手続代行を勧誘し、不当に高額な手数料を請求する業者等からお客さまを保護するため、トラブル懸念業者の介入可能性が高い保険金請求事案を、AIを活用して早期に検知できるシステムを開発し、運用を開始しました。

・2024年12月、佐川急便株式会社と共同で、物資拠点を有する自治体や企業向けの防災支援サービスを開発しました。本サービスによって物資拠点のリスクを可視化・分析し、災害対応力の向上を支援することで、物資拠点の安全性と事業継続力の強化に貢献いたします。

・2025年3月、事故に遭われたお客さまの負担軽減と迅速な事故解決を実現するため、専用ドライブレコーダーに、事故発生時の音響で事故を検知するAIを開発し機能を追加しました。

 

(c)レジリエントで包摂的な地域社会づくり(地方創生)

・当社グループは、自治体や研究者、地域のNPOと協働し、自然環境を再生して保全する「MS&ADグリーンアースプロジェクト」に取り組んでおり、社員と家族が参加しております。

・自治体と連携して水災時に罹災証明書の発行手続を支援する「被災者生活再建支援サポート」サービスを提供しております。

 

③ 重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」

a.リスクと機会

当社グループは、高齢化・少子化の進展、人権侵害・多様性の排除、貧困・格差拡大といった社会課題を重点課題「多様な人々の幸福(Well-being)」と位置づけており、これらは、人口減少や少子高齢化の進展による国内保険市場の中長期的な成長鈍化や企業価値の毀損等、当社グループの事業活動にとってもリスクとなります。

一方、自治体や地域企業、金融機関等と連携した地方創生取組は当社事業における機会になると考えております。また、人権デュー・ディリジェンスの推進・支援や、女性、高齢者、障がい者、LGBTQのお客さまの保険・金融アクセス向上など、課題解決に向けた取組みは、当社グループ事業の中期的な成長実現につながる機会と考えております。

 

b.リスクと機会を踏まえた当社グループの取組み

(a)お客さまのWell-being

・企業の健康経営の支援や健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスや、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスを提供しております。

・病気の予防・早期発見から健康に関するご相談、重症化・再発予防など、お客さまの健康をトータルでサポートすることを目指すヘルスケアサービス「MSAケア」を提供しております。

・社員の知識、理解向上のために認知症サポーター養成講座の受講をグループ共同で推進しております。

 

(b)人権尊重の推進

・当社グループは、国連「ビジネスと人権に関する指導原則」に依拠した、人権尊重のマネジメントシステムである人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築し、幅広いステークホルダーとの対話をとおして得られた意見を反映しております。

・2024年12月に、グループ人権基本方針の下にカスタマーハラスメントに関する規定・マニュアルを整備し、当社グループの国内規定体系を統一しました。これに基づき、社員の人権を守るため毅然とした姿勢で取り組んで行くことを公表するとともに、社員への理解浸透を促す研修を実施しております。

・2024年度は、当社グループのバリュー・チェーンとステークホルダーから人権リスクの発生する接点を整理し直し、2021年度の評価の結果、特定した3つの重点課題の枠組みはそのままに、具体的かつ的確な対応ができるよう、「公平・公正なお客さま対応」、「代理店・委託先、保険引受先・投融資先における人権対応の考慮」、「社員の心身の健康への配慮と安心安全な職場環境の実現」に名称変更しました。

・海外拠点では、国・地域によって抱える課題が異なるため、2022年6月に実施した海外拠点向けアンケート結果をもとに、各国の人権リスク対応状況を確認したうえで、予防・改善策やモニタリング方法を定めて人権尊重取組を推進しております。

・従来から対策を進めている人権リスクに加えて、LGBTQのお客さまへの対応、テクノロジー・AIに関する人権侵害への対応、外部委託先・代理店の人権課題に対する認識度の引上げ・人権尊重取組推進の支援に取り組み、継続的に防止・軽減に努めております。

・人権課題の救済については、自社社員を対象とした内部通報制度の継続整備に加え、2023年7月からは、外部委託先向けの第三者プラットフォームを活用した救済窓口を開設しました。2024年11月からは利用対象を全保険代理店に拡大しております。

 

(c)社員のWell-being

グループの最大の財産は人財であり、グループ社員一人ひとりの能力・スキル・意欲が最大限発揮できるよう、基本戦略の実現に必要なスキルを明確化して、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジ精神を後押しする企業文化といった職場環境の整備を進めております。

 

(3) リスク管理

当社グループは、サステナビリティに関連するものを含め、当社グループを取り巻くリスクについて、リスク管理態勢を整備し、リスク管理を経営の最重要課題として取り組んでおります。当社グループのリスク管理については、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」を参照ください。

上記に加え、「MS&ADインシュアランス グループのサステナビリティの考え方」で「サステナビリティを考慮した事業活動」として、保険引受・投融資における環境・社会リスクへの対応を定め、当該リスクを評価・管理する体制を構築し、高度化に努めております。

 

① 事業別の対応ガイドライン

セクター

区分

ガイドライン

石炭

取引禁止

石炭火力発電所、主に一般炭を産出する炭鉱の開発と運営に関する新規の保険引受や投融資を行わない(※1)

取引禁止

石炭を主業とする企業のエネルギー採掘プロジェクトに関する新規の保険引受を行わない(※2)

石油・ガス

取引禁止

オイルサンド採掘及び北極圏における石油・ガス採掘プロジェクトに関する新規の保険引受や投融資を行わない(※3)

慎重に取引を判断

石油火力発電と油田、オイルサンドの採掘、ガス田の新規建設プロジェクト

非人道的

兵器製造

取引禁止

クラスター弾、生物・化学兵器や無差別殺傷につながる対人地雷製造企業の保険引受や投融資を行わない

農林水産

慎重に取引を判断

未開拓の場所への大規模な開発を伴う新規農林水産事業

水力発電

慎重に取引を判断

水力発電所の新規建設事業

太陽光発電

慎重に取引を判断

国内の太陽光発電所の新規建設事業

陸上風力発電

慎重に取引を判断

国内の陸上風力発電所の新規建設事業

バイオマス発電

慎重に取引を判断

国内のバイオマス発電所の新規建設事業

自然保護区域

慎重に取引を判断

ユネスコ世界条約で保護対象となる自然・文化遺産及びラムサール条約で保護対象となる湿地を破壊するおそれのある事業

人権

慎重に取引を判断

先住民族・地域住民の人権を侵害するおそれのある事業

※1 パリ協定の合意事項達成を目的に、脱炭素化等の技術・手法を取り入れている既設の石炭火力発電所及び主に一般炭を産出する炭鉱の開発と運営に関する案件については、慎重に検討の上、対応を行う場合がある

※2 収入の25%以上を石炭火力発電、主に一般炭を産出する鉱山から得ている企業、または25%以上のエネルギーを石炭で発電している企業

※3 パリ協定の合意事項達成を目的に、温室効果ガス排出量削減計画を策定している企業やプロジェクトを除く

 

② 環境・社会リスクの管理プロセス

a.保険引受

・審査プロセス

グループ方針に沿った取引であることを確認し、該当する案件のみ保険引受を行っております。確認の結果、サステナビリティに関するリスク(ESGリスク)が高いと判断された案件については、エスカレーションプロセスを設け、グループサステナビリティ委員会に報告しております。

 

 

b.投融資

(a)ESG投融資取組

ESG要素の投融資判断への組込み(Integration)、建設的な対話(Engagement)、サステナビリティに貢献する投融資案件(Positive Impact)の取組みを柱として実践しております。

※ アクティブ投資、パッシブ運用、運用の外部委託先にも適用

 

(b)投融資プロセスへのESG要素の体系的な組込み

当社グループが自社運用として行う株式、社債、融資、プライベート・アセット等のアセットクラスにおいて、従来の財務分析・非財務分析等のほかに、グループのサステナビリティを考慮した事業活動への対応、グループESG課題の外部評価機関を活用したリスク評価・分析を投融資判断に体系的に組み込んでおります。

また、社債や株式の運用を委託する運用会社に対して、原則年次で質問票を送付し、ESG取組を確認しております。

 

(4) 指標・目標

当社グループは、3つの重点課題ごとにリスクと機会に関する指標・目標を次のとおり定めております。

 

① 地球環境との共生(Planetary Health)

当社グループは、当社グループやサプライチェーンを通じて排出する温室効果ガスの削減に向けて、次のa.及びb.を指標・目標として取り組んでおります。

a.温室効果ガス排出量削減率

指標

2030年度目標

2050年度

目標

実績

スコープ1・2(※1)

基準年度(2019年)比▲50%

ネット
ゼロ

2023年度

▲35.3%

スコープ3

(※2)

カテゴリ
1・3・5・6・7・13

基準年度(2019年)比▲50%

2023年度

▲24.8%

保険引受先・

投融資先

基準年度(2019年)比▲37%

(国内主要取引先(※3))

お客さまとともに温室効果ガス排出量削減に向けた取組みを進めるため、対話を深め、削減に向けた課題の把握と、課題解決に向けたソリューションの提案を実施

2022年度
▲18.3%

※1 スコープ1は社有車のガソリン等、当社グループが直接排出するもの、スコープ2は電力などの使用により間接排出するもの。

※2 当社グループの事業活動に伴って間接的に排出するもののうち、スコープ2以外のもの。カテゴリ1は購入した製品・サービス(対象:紙・郵送)、カテゴリ3はスコープ1、2以外の燃料及びエネルギー活動、カテゴリ5は事業から出る廃棄物、カテゴリ6は従業員の出張、カテゴリ7は従業員の通勤、カテゴリ13はリース資産。

※3 収入保険料を基に選定した国内主要取引先(約3,300社)。

 

(a)事業活動における温室効果ガス排出量

項目

対象範囲

単位

2023年度実績

温室効果ガス総排出量

スコープ1・2・3

グループ連結

t-CO2

187,177

温室効果ガス排出量

(スコープ1)

グループ国内+その他

12,439

グループ連結

15,589

温室効果ガス排出量

(スコープ2)

グループ国内+その他

38,965

グループ連結

41,634

温室効果ガス排出量

(スコープ1+2計)

グループ国内+その他

51,404

グループ連結

57,222

温室効果ガス排出量

(スコープ3)(※1)

グループ連結(※2)

129,955

※1 カテゴリ1・2・3・5・6・7・13

※2 カテゴリ1・7については「グループ国内+その他」を対象範囲としました。

 

(b)スコープ3 カテゴリ別温室効果ガス排出量

項目

対象範囲

単位

2023年度実績

カテゴリ1:購入した製品・サービス(※)

グループ国内+その他

t-CO2

39,607

カテゴリ2:資本財

グループ連結

48,766

カテゴリ3:スコープ1,2に含まれない燃料及びエネルギー関連活動

グループ連結

11,760

カテゴリ5:事業活動において生じる廃棄物

グループ連結

1,498

カテゴリ6:従業員の出張

グループ連結

15,232

カテゴリ7:従業員の通勤

グループ国内+その他

7,733

カテゴリ13:下流におけるリース資産

グループ連結

5,360

カテゴリ15:投融資

下記(d)を参照

※ 対象:紙・郵送

 

(c)国内主要取引先の温室効果ガス排出量(※1)

項目

対象範囲

単位

2022年度実績

保険引受

三井住友海上、あいおいニッセイ同和損保の国内主要取引先(※2)

千t-CO2

1,153

投融資

3,125

※1 当社の保険引受(インシュアランスアソシエイテッドエミッション)及び投融資に係るもの(ファイナンスドエミッション)。

PCAFの金融機関向け温室効果ガス計測スタンダード(Part A及びPart C)に基づき算出(2023年3月末時点)。保険引受の計測対象種目は、自動車保険、火災保険、新種保険(除く工事保険)、貨物保険、船舶保険、航空保険の法人契約とし、国内主要取引先の温室効果ガス(スコープ1+2)を算出。投融資の計測対象資産は、国内上場の株式、社債、企業融資とし、国内主要取引先のうち投融資のある対象の温室効果ガス(スコープ1+2)を算出。取引先の排出量は、情報ベンダーデータ及びPCAFデータベースから引用した収益額あたりの排出係数を利用。

※2 収入保険料を基に選定した国内主要取引先(約3,300社)。

 

(d)投融資先の温室効果ガス排出量(ファイナンスドエミッション)

項目

対象範囲(※1)

単位

2022年度(※2)

株式

上場企業の国内外株式(時価ベースの約99%)

千t-CO2

2,111

社債

国内外社債(簿価ベースの約97%)

1,944

企業融資

国内外企業融資(簿価ベースの約95%)

225

※1 当社グループの2023年3月末の投融資ポートフォリオを対象としています。

※2 2023年3月末日時点の保有残高を用いて2023年度に算出しています。

 

温室効果ガスの排出量(スコープ1、スコープ2、スコープ3)は、地球温暖化対策の推進に関する法律に基づき算定しております。

 

b.再生可能エネルギー導入率

指標・目標

進捗状況

・2030年度:60%

・2050年度:100%

・2023年度:23.0%

 

当社グループは、脱炭素社会・環境汚染対策につながる循環型経済への移行に向けて、次のc.を指標・目標として、技術革新と社会実装を支える商品・サービスの提供を行っております。

c.社会の脱炭素化、循環型経済に資する商品

指標・目標

進捗状況

・保険料増収率:平均18%

・2023年度:24.5%

 

② 安心・安全な社会(Resilience)

当社グループは、イノベーションの進展や産業構造の変化に伴う、サイバーリスクなど新たなリスクに対応するため、次のa.を指標・目標として、商品・サービスの提供を行っております。

a.社会のレジリエンス向上に資する商品

指標・目標

進捗状況

・引受件数増加率:年平均20%

・2024年度:25.0%

 

当社グループは、次のb.を指標・目標として、自治体や商工団体等、地域を取り巻くステークホルダーと連携した社会課題解決の推進や、持続可能なインフラへの移行、地域産業の活性化、多様なモビリティサービスの実現等による地方創生の推進に取り組んでおります。

b.地域企業の課題解決支援数

指標・目標

進捗状況

・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:

 2025年度 年1万件

・2024年度:11,091件

 

③ 多様な人々の幸福(Well-being)

当社グループは、次のa.及びb.を指標・目標として、企業の健康経営の支援、健康増進、未病・重症化予防に資する商品・サービスの提供、人生100年時代における資産寿命の延伸を支援する商品・サービスの提供を行っております。

a.健康関連の社会課題解決につながる商品

指標・目標

進捗状況

・保有契約件数:260万件(2025年度末)

・2024年度:225万件

 

b.長寿に備える資産形成型商品

指標・目標

進捗状況

・保有契約件数:10万件(2025年度末)

・2024年度:12万件

 

 

当社グループは、次のc.を指標・目標として、企業の人権関連対応の支援を行っております。

c.企業の人権関連対応の支援数

指標・目標

進捗状況

・コンサルティングサービス、研修・セミナー等:

 2025年度 年1,000件

・2024年度:1,111件

 

当社グループは、次のd.を指標・目標として、グループ一体感の醸成と社員がいきいきと活躍できる企業文化をめざし、社員が参加できるグループ横断活動に取り組んでおります。

d.社員意識調査

指標・目標

進捗状況

・CSVを実感している:前年同水準以上

・2024年度:4.5 pt(2023年度:4.5 pt)

・MVV(※)を意識している:前年同水準以上

※ ミッション(経営理念)、ビジョン(経営ビジョン)、バリュー(行動指針)

・2024年度:4.7 pt(2023年度:4.6 pt)

 

(5) 人財育成方針

① 基本的な方針

・当社グループには、国内外の連結会社に約4万人の社員がおり、グループの最大の財産は人財と考えております。人財はグループの企業価値向上の原動力であり、人財育成に積極的に投資します。

・当社グループがめざす人財像は、「自律的に行動し、変革にチャレンジし、新たな価値を創造する人財」であります。このような人財を継続的に輩出するよう、人財育成に取り組みます。

・当社グループの強みである多様性を活かして組織を牽引することができる、多様なリーダーの育成に取り組みます。経営をリードする人財、女性リーダーなどの育成を、グループ共同で進めます。

 

② 中期経営計画(2022-2025)を踏まえた方針

・経営戦略を実現するのは人財であり、戦略実現のために必要なスキルを明確化し、リスキリングやアップスキルなどへの人財投資により社員の自律的な成長機会を拡充するとともに、外部人財を含めた専門人財の確保・活躍を推進し、最適な人財ポートフォリオを構築します。

・特に、CSV×DXのグローバルな展開や、事業・リスクポートフォリオの変革などを担う「デジタル人財」「海外人財」については、KPIを設定し、人財育成の進捗を確認しながら、重点的に育成に注力します。

・併せて、社員のコンプライアンス知識・意識の向上・徹底に取り組みます。

 

a.デジタル人財の育成

すべての社員がベーシックなデジタルスキルを身につけることに加えて、大学等との連携育成プログラムなどを活用し、ビジネスサイド、データ分析サイドの両面からデジタル人財の育成を進めます。

(a)ビジネスサイド :DXを活用してビジネスを創造・拡大することのできる人財

デジタルスキルに関するオンライン教育ツールの拡充や、グループ各社のデジタル人財認定制度、大学等(※)との連携講座などを活用して体系的に進めることで、多くの社員がスキルを身につけ、向上するよう取り組みます。

 

(b)データ分析サイド:高度なデータ分析等、ビジネスを実現するための高いスキル・専門性を有し発揮できる人財

大学等(※)との連携講座や、データサイエンスに関する高度なスキルの認定制度を活用して育成に取り組みます。また、ジョブ型の社員区分を設け、外部専門人財の確保・活躍に適した環境を整備・活用します。

 

〔KPI〕 2025年度7,000人  (上記(a)と(b)合計)

デジタル人財の推移(グループ国内保険会社5社合計)            (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

3,601人

5,814人

8,490人

 

(※)MS&ADデジタルアカデミー(INIAD:東洋大学情報連携学部)

累計参加人数1,081人(2018年度~2024年度)

MS&ADデジタルカレッジfrom京都(KUAS:京都先端科学大学)

累計参加人数643人(2020年度~2024年度)

 

b.海外人財の育成

海外事業を担う人財を、ポストに対して質・人数ともに十分に確保することを必要としております。現状、必要な人数は確保できており、世代交代を進めながら持続的に人財を育成・確保するためのプログラムに取り組んでおります。

 

〔KPI〕 2025年度1,200人

海外人財の推移(※)                           (各年度4月1日時点)

2023年度

2024年度

2025年度

1,182人

1,189人

1,243人

 

(※)三井住友海上火災保険株式会社・あいおいニッセイ同和損害保険株式会社・三井住友海上あいおい生命保険株式会社・三井住友海上プライマリー生命保険株式会社の4社合計

 

具体的には、海外事業に必要な「経営人財」や「専門人財(経理・財務、IT、リスク管理等)」について、短期の海外拠点体験、原則1年以上の海外派遣研修、海外拠点経営を担う人材の育成研修などを多面的に実施しております。

<育成プログラム例>

・海外拠点体験:1週間程度の海外雇用社員との協働プログラムを通じてグローバルビジネスを疑似体験することで、海外人財に求められるスキル・要素の習得をめざす取組み。

・海外派遣研修:公募による海外派遣研修制度。派遣期間は原則1年以上で、海外事業展開を支える人財を中長期的視点で育成する取組み。

・海外拠点経営を担う人財の育成:経営人財(グローバルリーダー)や専門人財(グローバルエキスパート)を養成するための指名型研修。

 

(6) 社内環境整備方針

① 基本的な方針

・経営戦略を実行するのは、社員一人ひとりであります。社員の能力・スキル・意欲を最大限発揮できる職場環境を整備することで、エンゲージメントを高め、経営戦略の実効性を高めます。

・中期経営計画(2022-2025)の基本戦略「Transformation」にある「新たなビジネスの創造等、事業の構造を変革し、事業環境の変化に適応する」などの実現にあたっては、多様な人財の意見やアイデアを引き出し、活かすことが重要であります。多様性の発揮に向けた取組みを推進し、意思決定層の多様性を確保し、当社グループの特長である多様性のメリットを最大化します。

 

② 中期経営計画(2022-2025)を踏まえた方針

・人財戦略の特に重要な要素にKPIを設定して取組みを進め、社員がいきいきと活躍し、グループの多様性を企業価値向上に結びつける環境を整えます。

 

a.魅力ある職場環境の整備

社員のエンゲージメントを向上させるためには、自律的なキャリア形成機会、柔軟で効率的・効果的な働き方、チャレンジを後押しする企業文化といった職場環境の整備が重要であり、それぞれ次のような取組みを進めます。

(a)自律的なキャリア形成機会の提供

自らが希望するポスト・部門に異動し、活躍のステージを広げるための公募制度(ポストチャレンジ)の活用を拡大し、グループ会社間での人事異動、人財育成、キャリア形成取組を活性化します。また、社員が既存組織の枠を越えて会社施策に参画する仕組みなど、自律的なキャリア形成機会の提供を拡充します。

ポストチャレンジ応募実績:2024年度 970人

(b)多様で柔軟な働き方の推進

・在宅勤務と出社を効率的に組み合わせ、リモートワークを活用した業務運営を進めます。また、ジョブ型雇用の活用や、副業・兼業の緩和により、スキル向上・活用の機会を拡大します。

・キャリアビジョンやライフイベント等に応じた転居転勤の可否選択を柔軟に認めていきます。

(c)新たなチャレンジを後押しするマネジメント

チャレンジを奨励し、社員の意欲を引き出し活かす意識改革・風土醸成につながるマネジメントを展開します。

 

これらの取組みとともに、心理的安全性が確保された職場環境の浸透、企業風土の醸成を進めていきます。

 

b.多様性の発揮に向けた取組み

(a)意思決定層の多様化

イ.女性の役員や管理職への登用に向けたパイプライン整備の取組みを強化しております。また、2030年度末までのKPIとして、女性管理職比率を30%に設定するとともに、組織の長となる「女性ライン長」の比率をその半数に定め、意思決定者の多様化を促進します。

〔KPI〕 女性管理職比率  30% (2030年度末)   2025年4月時点23.8%

女性ライン長比率15% (2030年度末)   2025年4月時点21.3%

                  (当社及びグループ国内保険会社5社合計)

グループ各社におけるパイプライン整備の取組例は次のとおりであります。

・当社が直接出資する関連事業会社の非常勤取締役への女性登用

2025年4月新任8人、2019年度以降累計40人

・副部長・副支店長ポストへの女性の配置

2025年4月時点32人

 

ロ.外部人財の登用について、管理職に占める外部人財の比率向上を進めるなど、多様な経験を意思決定に活かす取組みを進めます。

〔KPI〕 管理職に占める経験者採用比率:現行水準以上

 2025年4月時点24.5%、2024年4月時点23.0% (グループ国内保険会社5社合計)

 

(b)男性労働者育児休業

男性労働者育児休業の取得促進は、企業の社会的責任・社会への貢献であるとともに、男性が育児や育児休業への理解を深める機会であります。多様な価値観を受け容れる職場環境整備の一環として、KPIを設定して取組みを進めます。

〔KPI〕 2025年度男性労働者育児休業:取得率100%、取得日数4週間をめざす

 2024年度 取得率93.2%、取得日数13.1日 (グループ国内保険会社5社合計)

 

(c)意見やアイデアを積極的に引き出し活かすマネジメントノウハウの展開

当社グループの特長である多様性を活かすためには、様々な人財の知識・経験・価値観を引き出し、組織の意思決定に活かすインクルーシブな組織運営が不可欠であります。そのためのマネジメントノウハウである「インクルーシブ・リーダーシップ」の実践・浸透に取り組みます。

 

(d)グループ社員の交流・意見交換機会の提供

多様な人財が集まり、知識・経験の共有や、新たな気づきや価値観を創出する契機とするため、グループ各社の社員がグループ横断で参加する交流・意見交換会などを実施し、多様性とインクルーシブな体験の機会を提供します。

 

c.社員のWell-being

社員が自律的にいきいきと働き、その能力を最大限発揮するためには、社員の「心身の健康」「働きがい」「働きやすさ」の維持・向上が不可欠であります。労働時間や休暇等の時間管理の徹底、メンタル不調への対策強化・復帰支援などにより、社員の心身の健康を保持・増進するとともに、働きがいや働きやすさの向上につながる各種施策に取り組み、社員のWell-beingを推進します。

〔KPI〕 ・年次有給休暇取得日数:前年同水準以上 2024年度16.9日、2023年度16.5日

休暇取得を促進し、社員の心身の健康保持に取り組みます。

・運動習慣者比率:現行水準以上 2024年度29.0%、2023年度27.8%

「1回30分以上の軽く汗をかく運動を週2日以上、1年以上実施」の運動習慣のある社員の比率をKPIに設定し、健康保持・増進への意識を高めております。

                        (当社及びグループ国内保険会社5社合計)

 

上記のような環境整備を進め、以下の設問に対する回答スコアを社員のエンゲージメントを測る指標として、KPIを「前年同水準以上」と設定し、進捗を確認しております。

〔KPI〕 社員意識調査

・設問「私は、今の仕事に誇りと働きがいを持っている」

:スコア 2024年度4.4、2023年度4.4

・設問「私の職場は、年齢・経験・国籍・性別・障がいの有無等で差別することなく、多様な人財の多様な価値観や意見が受け容れられ、人権を尊重し、いきいきと活躍できる環境にある」

:スコア 2024年度4.7、2023年度4.7

 (6段階スコア、当社及びグループ国内保険会社5社合計)