人的資本
OpenWork(社員クチコミ)-
社員数15名(単体) 172,822名(連結)
-
平均年齢50.8歳(単体)
-
平均勤続年数24.7年(単体)
-
平均年収12,262,553円(単体)
従業員の状況
5【従業員の状況】
(1)連結会社の状況
|
2025年3月31日現在 |
セグメントの名称 |
従業員数(人) |
エクスプレス事業 |
156,175 |
コントラクト・ロジスティクス事業 |
7,348 |
グローバル事業 |
2,599 |
モビリティ事業 |
2,046 |
その他 |
4,639 |
全社 |
15 |
合計 |
172,822 |
(注)1.エクスプレス事業の従業員数には、ヤマト運輸株式会社の本社部門の従業員が含まれております。
2.全社の従業員数は、当社の従業員であります。
(2)提出会社の状況
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2025年3月31日現在 |
従業員数(人) |
平均年齢(歳) |
平均勤続年数(年) |
平均年間給与(円) |
15 |
50.8 |
24.7 |
12,262,553 |
(注)平均年間給与(税込)には基準外手当および賞与を含んでおります。
(3)労働組合の状況
ヤマトグループには、ヤマト運輸労働組合等が組織されております。なお、労使関係について、特に記載すべき事項はありません。
(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異
ヤマトグループでは、多様な社員が活躍することができるよう、働き方に関する好事例の水平展開を積極的に進めております。勤務時間や勤務地等、限定された就労条件で勤務するパート・有期労働者を含め、職場における多様性、公平性及び包摂性を推進していきます。
当事業年度 |
|||||
提出会社及び 連結子会社 |
管理職に占める 女性労働者の割合(%) (注)1 |
男性労働者の 育児休業取得率(%) (注)2 |
労働者の男女の賃金の差異(%) (注)1、3 |
||
全労働者 |
うち正規雇用 労働者 |
うちパート・ 有期労働者 |
|||
ヤマト運輸㈱ |
6.0 |
33.7 |
57.2 |
74.9 |
96.1 |
沖縄ヤマト運輸㈱ |
13.3 |
26.3 |
62.9 |
76.5 |
86.0 |
ヤマトボックスチャーター㈱ |
4.2 |
45.5 |
63.3 |
77.1 |
100.3 |
ヤマトマルチチャーター㈱ |
4.8 |
0.0 |
53.8 |
90.1 |
99.0 |
㈱ナカノ商会 |
10.1 |
77.8 |
53.7 |
79.3 |
73.6 |
湖南工業㈱ |
4.8 |
- |
71.8 |
74.4 |
110.0 |
ヤマトオートワークス㈱ |
7.3 |
58.8 |
63.0 |
72.0 |
85.6 |
ヤマトシステム開発㈱ |
5.6 |
70.0 |
67.1 |
75.5 |
77.0 |
ヤマトコンタクトサービス㈱ |
28.9 |
100.0 |
64.1 |
72.1 |
97.6 |
ヤマトクレジットファイナンス㈱ |
6.1 |
- |
- |
- |
- |
(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(2015年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。
2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(1991年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(1991年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。
3.「労働者の男女の賃金の差異」について、人事・賃金制度上において性別による差異はありません。
男女の賃金の差異は、主に女性労働者においては勤務時間が短いパートタイムが多いことおよび職種ごとの在籍者数の差異等によるものです。
サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)
2【サステナビリティに関する考え方及び取組】
ヤマトグループのサステナビリティに関する考え方及び取組みは、次のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在においてヤマトグループが判断したものであります。
(1)サステナブル経営の推進
気候変動や労働力人口の減少、人権・格差など、社会全体で取り組まなければならない喫緊の課題に直面している中、各企業もこのような社会的な課題に応えていく必要性が高まっています。ヤマトグループは、このような状況を踏まえ、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現を目指し、サステナブル経営を推進しています。
①ガバナンス
当社は、サステナビリティに関する重要事項について、経営会議および取締役会で審議・決議を実施しています。また、サステナブル経営を推進するため、代表取締役社長を委員長、ヤマト運輸株式会社の執行役員等および主要グループ会社社長を構成員とする、ヤマトグループ環境委員会および、ヤマトグループ社会領域推進委員会を年1回開催し、サステナビリティに関する課題についての審議や決議を実施しています。そして、環境の分野では3つの部会(エネルギー・気候・大気、資源・廃棄物、マネジメント・協働)、社会の分野では3つの部会(人権・ダイバーシティ、サプライチェーンマネジメント、地域コミュニティ)をそれぞれ年3回開催し、施策の検討や進捗確認を実施しています。
(サステナビリティ推進体制)
(ヤマトグループ環境委員会および社会領域推進委員会の役割)
ヤマトグループ 環境委員会 |
① ヤマトグループの環境に関わる取組みの意思決定機関として、環境マネジメントシステムの運用を確認するとともに、取組みの方向性を明確にし、検討、審議、決議を行う ② 会議メンバーより報告を受け、トップマネジメントである環境統括責任者(ヤマトホールディングス代表取締役社長)が活動実績の評価および見直し(トップマネジメントレビュー)を行い、今後の施策などについて決定する |
ヤマトグループ 社会領域推進委員会 |
① ヤマトグループの社会に関わる取組みの意思決定機関として、社会領域の重要課題に対する取組みの方向性を明確にし、推進施策の検討、審議、決議を行う ② ヤマトグループ社会部会およびヤマトグループ各社の報告を受け、トップマネジメントであるヤマトホールディングス代表取締役社長が活動実績の評価および見直しを行い、今後の施策などについて決定する |
②戦略
当社は、中長期的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に向けて、中長期の経営のグランドデザイン「YAMATO NEXT100」において、環境・社会に関するビジョンを掲げるとともに、重要かつ優先的に取り組むマテリアリティを特定しました。そして、「ヤマトグループ環境方針」「ヤマトグループ人権方針」「ダイバーシティ基本方針」「ヤマトグループ責任ある調達方針」の下、マテリアリティへの取組みを推進しています。
2025年3月期より当社は、「持続可能な未来の実現に貢献する価値創造企業」を2030年の目指す姿として定め、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」において、持続的な企業価値向上を実現するための基盤として、サステナブル経営の強化に取り組んでいます。
環境の領域については、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」および「2030年温室効果ガス(GHG)排出量48%削減(2021年3月期比)」の実現に向け、「EV23,500台の導入」「太陽光発電設備810基の導入」「再生可能エネルギー由来電力の使用率向上」などの施策を推進するとともに、サプライチェーン(Scope3)における実質排出量の把握や削減目標の設定などに取り組んでいます。
社会の領域については、人命の尊重を最優先とし、社員やパートナーの安全・健康に対する取組みを強化するとともに、多様な社員が活躍できる職場環境に向けた整備を進めています。そして、社会の諸課題に向き合い、ビジネスパートナーとの定期的な協議の実施や、課題の早期発見と解消のための体制・プロセス・仕組みの整備など、適切な関係に基づくサステナブル・サプライチェーンの構築を推進しています。
(環境・社会ビジョン)
環境ビジョン |
「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」 「つなぐ、未来を届ける、グリーン物流」へヤマトグループはさらに進化します。人や資源、情報を高度につなぎ、輸送をより効率化させ、環境や生活、経済によりよい物流を実現します。温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ*1に挑戦し、持続可能な資源の利用・消費モデルを創造し、強く、スマートな社会を支えます。 *1 国内連結会社および株式会社スワンの自社排出(Scope1とScope2) |
社会ビジョン |
「共創による、フェアで、“誰一人取り残さない*2”社会の実現への貢献」 ヤマトグループは社会的インフラを担う企業として、フェアで効率的な事業プロセスを通じて、あらゆる人々にものや価値を届けることで、社会における様々な格差や障害を解消・低減し、社員やお客様など様々な人々の生活の質(QOL)向上に貢献します。 リアルの強みとデジタルイノベーションの推進、そして多様なパートナーとの共創により、社会課題の解決を目指し、“誰一人取り残さない”社会の実現にリーディングカンパニーとして貢献していきます。 *2 誰一人取り残さない:SDGsが掲げる基本理念 |
(マテリアリティ)
③リスク管理
当社は、サステナブル経営を推進していく上での課題やリスクについて、ヤマトグループ環境委員会およびヤマトグループ社会領域推進委員会で審議・決議を実施しています。また、重要事項については、適宜、経営会議や取締役会で審議・決議を実施しています。
気候変動に関するリスク管理については、「(3)気候変動への対応」に記載しています。
④指標及び目標
当社は、2027年3月期を最終年度として策定した中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」において、マテリアリティへの到達目標を定めています。2027年3月期の具体的な目標および2024年3月期の実績については、「統合レポート2024」に記載しています。
(統合レポート2024_サステナブル経営)
https://www.yamato-hd.co.jp/investors/library/annualreport/pdf/j_ir2024_06_04.pdf
なお、2025年3月期の実績は、2026年3月期に公表する「統合レポート2025」に記載予定です。
(2)経営戦略を支える人事戦略の推進
ヤマトグループは、経営理念に掲げる「豊かな社会の実現への貢献」を通じた持続的な企業価値向上を実現する基盤として、「ヤマトグループ 人材マネジメント方針」に基づき、経営戦略と連動した人事戦略を推進しています。
(ヤマトグループ 人材マネジメント方針)
ヤマトグループは、 未来への価値創出に挑戦し、豊かな社会の実現に貢献する企業であり続けるために成長します 公正な評価とフィードバックを通じて社員の貢献や成長を称え、社員一人ひとりが働きがいを実感できる職場風土を目指します 顧客起点の思考と当事者意識を持って誠実に行動し、たゆまぬ挑戦や努力を続ける社員に対して、仕事を通じた成長の機会を提供します |
①戦略
ヤマトグループは、事業構造改革と連動した人材の最適配置を優先課題として、組織・要員の適正化と評価・報酬制度の見直しに取り組みます。また、付加価値を創出する人材の育成に向けて、自主・自律的なキャリア形成を促進する人材マネジメント体系の整備・運用を推進します。そして、多様な社員の働きやすさと働きがいの向上に向けて、多様化する社員のライフプランに適合する福利厚生制度の構築や社員の健康管理・健康増進施策を推進するとともに、ダイバーシティの推進や人権デューデリジェンスの実施、女性活躍の推進に継続的に取り組みます。これらを通じて、社員一人ひとりの活躍と貢献を最大化し、より高い付加価値の創出を目指していきます。
ⅰ.付加価値創出に向けた最適な人材ポートフォリオの構築
中期経営計画「サステナビリティ・トランスフォーメーション2030 ~1st Stage~」で取り組む「宅急便ネットワークの強靭化と事業ポートフォリオの変革」と連動し、適正な組織編成と適所適材な人材配置を推進しています。
2025年3月期は、適正配置人数の設定および職務評価に基づくポジションの可視化を進め、中核事業会社であるヤマト運輸本社組織の管理者のミッションに対する必要ポジション数を整理しました。また、社内公募の実施を通じて、オープンポジションとその充足状況を可視化しました。
2026年3月期は、職務に基づく要員管理の対象をヤマト運輸本社組織から主管支店に拡大し、職務やオープンポジションに基づく管理体制を幅広く整備します。また、管理者(業務役職者)および専門職層の人事制度を改定し、「事業」を軸とした経営体制の強化に対応し、事業構造改革を進める人材が、より活躍できる制度を構築します。
デジタル領域においては、人材の能力発揮を促すためのスキルの棚卸を定期的に行い、習得レベルに応じた実効性の高いスキル強化研修・教育を推進していきます。
経営戦略と連動する最適な人材ポートフォリオの構築に向けては、適所適材の考え方に基づく人的資本への投資が必要であり、「人的生産性」を主要な指標として設定するなど、投資と効果の実現を中長期でモニタリングするための体制を整備し、取組みを推進していきます。
ⅱ.多様な社員の働きやすさと働きがいの向上
持続的な成長を実現する基盤を構築するため、人権と多様性を尊重する企業風土の醸成と、社員が生き生きと活躍できる労働環境を整備する施策を推進しています。そして、仕事を通じた社員自身の成長実感ならびに、会社の成長・発展への貢献実感を高める施策を通じて、社員の働きやすさや働きがいの向上、さらにはエンゲージメントの向上につなげていきます。
ヤマトグループは、「外国人労働者が職場において取り残されない環境整備」、「多様な人材が活躍できる環境整備と女性活躍の支援」を優先課題に位置付け、人権リスクを把握・確認して対応策を中長期の計画に組み入れ取組みを推進しています。2026年3月期は人権デューデリジェンスの取組みとして、「差別・ハラスメントを発生させない社員教育」や「多言語化の拡大による言葉や文化の違いに起因する障壁の払拭」を推進します。
また、女性管理職の登用に向けた施策として、管理職を目指す女性社員への支援プログラムを推進し、プログラム参加者の育成プランの作成や、育成プランに基づいた経験付与の機会提供に取り組んでいます。また、参加者に加えその上司に対しても「無意識の思い込みや偏見(アンコンシャス・バイアス)の払拭」をテーマとした研修を実施し、意欲ある女性社員の活躍を後押ししています。さらに、早期の経験付与の観点より、定期採用社員を対象とした中期育成施策を展開しキャリア形成を支援しつつ、意欲ある女性社員については、適性が高い管理職ポジションへのステップアップも含めた自律的なキャリア形成を支援しています。
障がい者雇用においては、雇用推進担当者を全国に配置し、担当者会議を毎月開催することで、雇用推進に向けた課題や好事例の共有を行い、採用活動・定着支援を推進しています。また、当社が出資している株式会社ミライロと共同開発した「ユニバーサルマナー検定」による教育を順次展開しており、「自分とは違う誰か」の視点に立ち行動する人材を育てることで、多様な人材が活躍できる環境整備を進めています。
働きがいの向上に向けては、経営者と社員が意見を交わすことで職場改善につなげる取組みを推進しています。ヤマト運輸株式会社において、職場における課題について意見を交わし、相互理解を深めるため、全国の各拠点で「職場ディスカッション」を開催しており、2025年3月期は経営者が営業所長、ロジセンター長など業務役職者や乗務・事務・作業担当の社員とそれぞれ対話する取組みを実施しています。また、職場でのハラスメントを防止するため、全社員を対象とした教育を実施し、働きやすい職場環境作りを推進しています。
②指標及び目標
(2027年3月期に向けた指標及び目標)
[マテリアリティ 労働]
指標:人的生産性*1
目標:労働生産性の向上
*1 (連結営業収益-連結下払経費)÷連結人件費
指標:社員意識調査*2
目標:エンゲージメントの向上
*2 対象範囲:国内連結会社および株式会社スワン
[マテリアリティ 人権・ダイバーシティ]
指標及び2027年3月期目標 |
2025年3月期実績 |
女性管理職比率 10%*1 |
6.6% |
障がい者雇用率 3.1%*2*3 |
3.3% |
全社員対象の |
90% |
*1 対象範囲:国内連結会社および株式会社スワン
*2 対象範囲:国内連結会社および株式会社スワン(障害者雇用状況報告対象外の会社については除く。)
*3 「障害者の雇用の促進等に関する法律」(1960年法律第123号)改正に伴う、2025年4月の除外率引き下げ後(道路貨物運送業は20%から10%、貨物運送取扱業は15%から5%)の目標値
(3)気候変動への対応
ヤマトグループは、気候変動問題が社会と企業に与えるリスクと機会を洗い出し、影響を評価し、対応策を立案していくことが、事業の持続可能性に不可欠であると認識し、「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」提言に基づいて、ヤマト運輸株式会社を対象としてシナリオ分析を行い、物理的リスクの財務影響評価を追加的に行うなど、見直しを継続しています。気候変動問題の事業インパクトを明確化し、影響の大きな事項を中心に対応策に取り組むことで、事業の持続性を向上させるとともに、ステークホルダーとの対話を重ねることにより、企業価値向上につなげていきます。
①ガバナンス
ヤマトグループは、気候変動を含む環境課題に対し、ヤマトグループ環境委員会を意思決定機関とした環境マネジメント体制に基づき、審議・決議を実施しており、取締役会は執行状況を監督しています。
具体的には、代表取締役社長が環境委員会の委員長を務め、環境マネジメントの統括責任を担っています。そして、環境委員会で審議された気候変動を含む環境課題に関する基本方針などの重要事項については、上位にある経営会議や取締役会で審議・決議を実施します。
また、環境分野を担当する執行役員やヤマト運輸株式会社の執行役員等、グループ会社の社長は環境責任者として、必要な経営資源を整えるなど、環境マネジメントの確実な実施と維持、管理に責任を持ちます。
さらに、原則としてすべての部長や現場組織の責任者は「環境管理者」として、気候変動を含む環境に関するリスクと機会の管理に責任を持ちます。
②戦略
STEP1 |
リスク重要度の評価 |
[重要度の評価基準]
1年間に発生する収益・費用における財務影響の評価基準を基に重要度を3段階(大・中・小)で設定しています。
大=100億円以上、中=10億円以上~100億円未満、小=10億円未満
[発現時期]
短期(~2026年)、中期(2027年~2030年)、長期(2031年~)
STEP2 |
シナリオ群の定義 |
2024年3月期に実施したシナリオ分析では、ヤマト運輸株式会社を対象とし、国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)や国際エネルギー機関(IEA)の情報*1などをもとに下記2つのシナリオを想定しました。
ⅰ.1.5℃シナリオ*2 |
:規制強化や燃料・電力の価格上昇に加えて炭素排出低減に対応するコストが必要になる一方で、サステナブルが製品の競争力につながる社会 |
ⅱ.4℃シナリオ |
:従来型の経営が継続されるが、各所での自然災害等に対応するためのコストが必要となる社会 |
*1 |
IPCC…RCP8.5 |
|
IEA …Net Zero Emissions by 2050 Scenario、Sustainable Development Scenario、Stated Policies Scenarioなど |
*2 |
1.5℃でシナリオがない項目は2℃シナリオを参照 |
STEP3 |
事業インパクト評価 |
抽出したリスクの中でも炭素税導入や異常気象・災害が収益・費用について大きな影響を与える可能性があることを認識し、以下の分析・事業インパクト評価を実施しました。
●評価を実施した項目
ⅰ.炭素税導入による財務影響
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害による財務影響
●詳細
ⅰ.炭素税導入による財務影響評価
炭素税が本格導入された際の精算に関わる2030年、2050年の事業インパクトを算出しました。2030年は炭素税価格を140ドル/t、2050年は250ドル/tと想定し費用増加影響を試算した結果、2030年には157億円、2050年には281億円と算出しました。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用増加の財務影響評価
台風の激甚化や線状降水帯による豪雨など異常気象による収益の減少や施設・設備の修理費用*3について事業インパクトを試算した結果、2030年には19億円、2050年には38億円と算出しました。
*3 |
過去に発生した災害を参考に試算 |
ⅲ.洪水による収益の減少や施設・設備の被害の財務影響評価
ハザードマップやAQUEDUCT*4などを使用した洪水の浸水深予測に基づき、国土交通省「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」にて示されている浸水深別被害率を使用して営業停止による損失額ならびに施設・設備の資産損害額について事業インパクトを試算しました。
その結果、4℃シナリオ(RCP8.5)における100年に1度の確率で発生する洪水(浸水深)による営業停止損失額と資産損害額の年間影響は、2030年には4億円、2050年には4.3億円と算出しました。
[分析に用いた要件]
・5つの気候モデル*5の平均値を採用
・空間解像度1kmで当該拠点を含む周辺も含めた3km四方の平均値を採用
・ハザードマップ上で浸水の可能性がある拠点を含む49拠点を調査
*4 |
世界資源研究所(WRI)が開発したリスク評価ツールAQUEDUCT(アキダクト) |
*5 |
GFDL-ESM2M(米国海洋大気庁)、HadGEM2-ES(英国気候研究機関)、 IPSL-CM5A-LR(仏国気候研究機関)、MIROC-ESM-CHEM(東京大学など)、 NorESM1-M(ノルウェー気候研究機関) |
STEP4 |
対応策の方向性 |
ⅰ.炭素税導入
ヤマトグループは、温室効果ガス(GHG)排出量削減に向け2050年自社排出実質ゼロの高い目標を掲げて取り組んでいます。
イ.2030年の目標値を2021年3月期比48%削減と掲げ、実現に向けて主な施策として2030年までに低炭素車両(主にEV)23,500台の導入や太陽光発電設備810基の設置などを計画しています。これにより、取り組まなかった場合と比較して、2030年には74億円の削減効果があると試算しています。
ロ.2050年に向けて、カートリッジ式EVを含む低炭素車両の導入や、ヤマトグループの拠点に設置した太陽光発電設備および地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の使用率を高めるなど、他の施策も強化することで自社排出実質ゼロを達成した場合、炭素税の財務影響は解消すると想定しています。
ハ.低炭素化に向けた設備投資が積極的に行われることを目指し、インターナルカーボンプライシングの導入を検討しています。
ⅱ.異常気象・災害による収益の減少や施設・設備の修理費用の増加
ヤマトグループでは、ハザードマップを活用した出店やBCPマニュアルの定期的な更新に加え、社内やパートナーへの気候変動に適応する情報の発信を検討しています。今後、レジリエンスを高める再生可能エネルギーやカートリッジ式EVの利用モデルの実証を行っていきます。
さらに発生場所や発生規模の想定を高めるなど、前提条件を加えながら事業インパクトを再評価することで、対応策の検討を継続します。
ⅲ.消費者・顧客の環境意識の高まりを機会に捉えた取組み
ヤマトグループは、「2050年温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ(自社排出)」に向けて、EVの導入やヤマトグループの拠点や地域の発電事業者の再生可能エネルギー由来電力の調達など、温室効果ガス(GHG)排出量削減を推進するとともに、お客様が保有する在庫や生産活動の最適化に向けて、より環境負荷の少ないサプライチェーンを構築するため、国際規格ISO 14083:2023に準拠したGHG排出量可視化ツールの開発など、法人顧客への新たな提供価値の創出に取り組んでいます。2025年3月期には、「宅急便」「宅急便コンパクト」「EAZY」(宅配便3商品)を対象とした「カーボンニュートラリティ宣言」を実施しました。本宣言は、2023年3月期に続き、2024年3月期(2023年4月~2024年3月)において、国際規格ISO 14068-1:2023に準拠したカーボンニュートラリティを達成したことを示すとともに、今後も事業活動に伴う温室効果ガス(GHG)自社排出量の削減に向けて継続的に取り組むことにより、2050年までの宅配便3商品のカーボンニュートラリティ実現をコミットメントしたものです。なお、本宣言は第三者機関であるBSIグループジャパン株式会社の検証を受けています。ヤマトグループは、このような気候変動に配慮した輸送サービスの提供を通じて、個人および法人顧客のさらなる利用促進につなげていきます。
また、環境課題を解決するビジネスモデルの創出を通じて、経済価値を生み出す取組みを推進します。2025年3月期は、ラストマイル領域で培った商用EV導入・活用の知見を活かした「EVライフサイクルサービス」の提供開始、また、お客様の脱炭素化に向けて再生可能エネルギー由来電力などを提供するヤマトエナジーマネジメント株式会社の設立、物流効率化に向けた共同輸配送のオープンプラットフォームを提供するSustainable Shared Transport株式会社の事業開始など、新たな事業を立ち上げました。これらの取組みを通じて、ヤマトグループの利益成長と社会・物流業界全体のサステナビリティへの貢献に取り組んでいきます。
③リスク管理
ヤマトグループ全体の気候変動に関わる対応の推進統括のための専任部署を当社に設けています。また、各グループ会社にも環境責任者(代表取締役社長)や環境推進代表(推進担当者)を配置し、グループを挙げて気候変動への対応を推進しています。
代表取締役社長を委員長、ヤマト運輸株式会社の執行役員等および主要グループ会社社長を構成員とする、ヤマトグループ環境委員会を毎年1回開催し、気候変動を含む環境に関する課題やリスクについての審議・決議を実施しています。また、重要事項については適宜、経営会議や取締役会で審議・決議を実施しています。
④指標及び目標
ⅰ.戦略・リスク管理プロセスに則して気候関連リスク・機会評価に用いる指標
ヤマトグループでは気候変動への対応を管理する指標として、移行リスクに関しては、[IEA]World Energy Outlookにて公表される「炭素税価格」などのエネルギー関連指標を参照しています。また、物理的リスクに関しては、国土交通省や文部科学省、気象庁が公表している気候変動を踏まえた資料などから、洪水の発生頻度などを参考とし傾向の変化を把握しています。
ⅱ.温室効果ガス(GHG)排出量
(単位:tCO2e) |
|
2021年3月期 |
2024年3月期 |
2025年3月期 |
Scope1 |
668,554 |
656,732 |
649,522 |
Scope2 |
252,307 |
166,350 |
129,513 |
Scope1 & 2合計(自社排出) |
920,861 |
823,082 |
779,034 |
Scope3 |
1,750,716 |
2,218,292 |
2,417,091 |
Scope1 & 2 & 3合計 |
2,671,577 |
3,041,374 |
3,196,126 |
・Scope1とScope2の範囲:国内連結会社および株式会社スワン
・Scope3の範囲:カテゴリー1,2,3,4,5,6,7,11,12
ⅲ.気候関連リスク・機会の管理に用いる目標及び実績
[GHG排出削減量目標*1]
短期:2026年までに2021年3月期比25%削減
中期:2030年までに2021年3月期比48%削減
長期:2050年までに排出実質ゼロ
[GHG排出量実績*1]
2025年3月期 779,034tCO2e(2021年3月期比15%削減)
*1 国内連結会社および株式会社スワンの自社排出(Scope1とScope2)
[再生可能エネルギー由来電力使用率目標]
短期:2026年までに全体の70%使用
[再生可能エネルギー由来電力使用率実績]
2025年3月期 58%使用
なお、④指標及び目標で記載した、GHG排出量および再生可能エネルギー由来電力使用率の2025年3月期実績は、有価証券報告書提出日現在における暫定値です。確定値は、2026年3月期に公表する「統合レポート2025」に記載予定です。
上記目標の達成に向けた施策を実施することと並行して、SBT1.5℃認証の取得に向けた具体的な準備を進めています。
なお、「2[サステナビリティに関する考え方及び取組]」について、当社および連結子会社の状況と非連結子会社等を含むヤマトグループの状況に大きな差異はないものと判断し、開示しています。