リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主なリスクは、以下のようなものがあります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、以下の記載は将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではなく、記載された事項以外の予見できないリスクも存在します。このようなリスクが現実化した場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があります。
(1)事業環境について
① 医療ヘルスケア市場について
当社グループは医療ヘルスケア市場で事業を展開しています。現在の事業の中核となっている高齢者医療マーケットは今後も高齢者の増加に伴い拡大が見込まれています。また、当社グループは「医療という希望を創る。」というミッションの実現を目指し、医療を取り巻く「不・負」を解決する新たなサービスを創出していく所存です。
しかしながら、長期的に国内の高齢者人口は減少に転ずることが見込まれており、また当社の想定を超える医療保険制度の見直し等が発生することもありえるため、そのような事象が発生した場合には、医療ヘルスケア市場が縮小し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 他社との競合について
当社グループは、医療機関、患者及び顧客(利用者及び入居者)のニーズに合った新しいサービスの拡充に常に取り組んでいます。競合については以下のとおりです。
(医療機関セグメント)
国内における医療機関に対する経営支援サービスは病院やクリニックの売上成長及び収益改善に資する各種サービスを包括的に提供するものであり、戦略・施策の立案から実行までをワンストップで提供できるという点で現在のところ直接的な競合の存在を認識していませんが、医療機関に対する支援サービスを行う会社は複数存在します。
資本力、顧客基盤、知名度、価格競争力、営業力などの点において当社グループよりも優れた企業が、新規参入、事業領域の拡大・強化、企業買収、提携などにより、当社グループと同等又はより優れたサービスを、より低い価格で提供した場合、当社グループの競争上の優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、米国においては、足病及び下肢静脈疾患クリニックを運営する各地域で競合が存在します。既に展開している地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが新規地域への展開を検討する際に既に他社が優位性を有している場合には、当社グループによる事業運営又は展開に影響を及ぼす可能性があります。
(ホスピスセグメント、居宅訪問看護セグメント)
ホスピス事業では、株式会社アンビスホールディングス、日本ホスピスホールディングス株式会社、株式会社サンウェルズ(すべて上場会社)といった競合が存在し、地域によっては、これらの会社と競合する場合があります。
居宅訪問看護事業では、事業を展開している各地域で競合が存在します。基本的に小規模事業者が多く、現時点では経営の安定性やブランド力という点で当社グループに相対的に優位性があると考えています。
既に競合が存在する地域において競争が激化した場合のほか、当社グループが優位な地域においても、上記の競合他社が当該地域に進出あるいは当該地域での事業を強化する場合や、競合他社が企業買収・提携などを活用して地域の垣根を超えた大規模な範囲でサービスを展開する場合等においては、当社グループの優位性が失われ、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社がこれまで事業を行っていなかった地域に新規に事業を展開するに際し、当該地域で先行して事業を展開する競合他社の顧客基盤が想定以上に強力であり、あるいは競合他社が先行者としての優位性を活用してサービス内容や事業展開を強化した場合には、当社グループが当該地域において期待どおりに顧客を獲得できないなど、当社グループの事業展開に悪影響を及ぼす可能性があります。
以上のほか、各事業で他の有力企業との競争激化や、新規参入の増加、業界再編等により、当社グループが事業を行う業界の事業環境が大きく変化し、当社グループがこれに適時・適切に対応できなかった場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ インフレと人件費高騰について
当社グループは、主として労働集約型の事業を行っているため、賃金水準が急激に高騰した場合には人件費の負担増が発生します。特にホスピス事業では、事業拡大のために新規施設を開設することが重要ですが、インフレ等による建築資材の高騰や建設人材の不足等により調達コストが増加し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(2)事業運営について
① 人材の採用、育成について
当社グループが安定的に事業拡大するためには、ミッション実現のために主体的に行動できる優秀な人材を採用し、育成する必要があります。
医療機関セグメントの国内事業においては、支援先医療機関からの様々なニーズに対応可能な専門性の高いスタッフを確保・育成するため、採用時における適性の見極めを行うことに加えて、社内業務の標準化、マニュアル化を進めることにより育成体制を強化しています。加えて、支援先医療機関向けの有資格者採用支援のために、医療職種別(医者、看護師など)の採用チームを組成しています。
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては看護師、介護士及びセラピストの採用や育成が事業の根幹です。そのため、採用業務に経営資源を集中させ、積極的な採用活動を行っています。特にがん末期やALS等の難病のケアには高い専門性が求められることから、それらの専門性を持つ医療スタッフを採用することに加え、経験の浅い看護師、介護士及びセラピストであっても安心して継続して働けるように教育体制も充実させ、安定した人員の確保に努めています。
しかしながら、日本の労働人口は今後も減少することが見込まれており、医療・介護業界での慢性的な人材不足等により、採用が予定どおり進まない場合や、適切な研修等を実施することにより育成することができない場合、既存社員の社外流出等が多く発生した場合には、顧客に対するサービスの提供が困難となったり、サービスの質の低下につながるおそれがあります。加えて、当社グループが計画する新規施設の開設に支障が生じる可能性があります。また、そのような状況に対応するため人材の確保に想定以上の支出が必要となるなど、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 各種規制、許認可、指定について
当社グループは、各事業所において法規制に基づいた許認可や指定を受け業務を遂行しています(表)。特にホスピス事業及び居宅訪問看護事業では、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法等に基づく看護及び介護サービスを提供しており、これらの法律及び関連諸法令の適用を受けます。
当社グループは、各種許認可や指定を受けるために様々な要件に従う必要があり、その要件を満たすように細心の注意を払い事業を行っているほか、当社グループの内部監査部による内部監査において、これらの要件遵守について重点的に監査を実施しています。
しかしながら、当社の想定を超える法制度の改正が行われたこと等により、当社グループがこれらの法律及び関連諸法令を遵守することができなかった場合又は診療報酬若しくは介護報酬等の不正請求や、人員基準違反、運営基準違反、虚偽報告といった事由が認められ、指定が取消又は停止となった場合には、当該事業の継続が困難となり、また、事業の一時停止を受けるなど、当社グループの事業活動に重大な支障が生じるほか、これらの事案への対応に要する大きな支出や風評被害等にもつながるため、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。特に、介護保険法に基づく各種指定について指定取消を受けた場合、指定取消から5年以内における新たな指定の取得及び介護サービス事業所としての更新が出来なくなります。
また、法律の改廃や適用基準の変更等により、診療報酬・介護報酬が減少する、保険適用者が減少し利用控えが進むなどの事象が生じた場合には、当社グループの事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
加えて、医療保険制度に基づく診療報酬は2年に1度、介護保険制度に基づく介護報酬は3年に1度の頻度で制度の改定が行われており、今後、診療報酬及び介護報酬の見直しにより、大幅な改定が行われた場合には、医療機関セグメントにおいては国内の支援先医療機関の新規出店の減速や、支援先医療機関の業績悪化に伴う当社の業務受託報酬の支払遅延又は支払停止につながり、ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントにおいては直接的な売上収益の減少につながるため、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(表)当社グループの各事業所が受けている主な指定
取得 |
指定権者、届出先又は登録先 |
許認可名称 |
許認可内容 |
有効期限 |
主な許認可取消事由 |
当社グループの各事業所 |
厚生労働省 地方厚生局 |
指定訪問看護事業者 |
健康保険法の訪問看護事業 |
6年毎の更新 |
健康保険法 第95条(指定訪問看護事業者の指定の取消し) |
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定訪問看護事業者 |
介護保険法の訪問看護事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
|
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定訪問介護事業者 |
介護保険法の訪問介護事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
|
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
居宅介護・重度訪問介護事業 |
障害者総合支援法の居宅介護 |
6年毎の更新 |
障害者総合支援法 第50条(指定の取消し等) |
|
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
指定通所介護事業者 |
介護保険法の地域密着型通所介護 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第77条(指定の取消し等) |
|
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
住宅型有料老人ホーム |
老人福祉法の施設事業 |
なし |
老人福祉法 第29条14項(届出等)※事業の制限又は停止に関する定めあり |
|
都道府県、政令指定都市又は中核市 |
サービス付き高齢者向け住宅 |
高齢者住まい法の施設事業 |
5年毎の更新 |
高齢者住まい法 第26条(登録の取消し) |
|
市区町村 |
介護予防・日常生活支援総合事業 |
介護保険法の総合事業 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第115条の45の9(指定事業者の指定の取消し等) |
|
市区町村 |
居宅介護支援事業 |
介護保険法の居宅介護支援 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第84条(指定の取消し等) |
|
市区町村 |
指定地域密着型通所介護事業者 |
介護保険法の地域密着型通所介護 |
6年毎の更新 |
介護保険法 第78条の10(指定の取消し等) |
③ 情報管理について
当社グループでは事業活動を通じて顧客に関する経営情報等の機密情報を受け取り、また一部事業では多数の顧客あるいはその家族の個人情報(既往症、病歴、治療状況などの要配慮個人情報を含みます。)を取り扱っています。
当社グループの情報管理については、個人情報保護方針の策定や、社員教育の実施、担当者以外のサーバーへのアクセス制限等の社内体制の強化など、情報漏洩防止の厳重な対策を講じ、細心の注意を払っています。
しかしながら、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、社員や業務委託先による情報漏洩が発生した場合、また、漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出に伴う重大なトラブルが発生した場合、社会的信用の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
④ M&Aについて
当社グループでは、同業もしくは異業種の他社に対するM&A(子会社化や事業譲受等)や提携等を実施することにより、当社グループの事業を補完もしくは強化すること、又は新規事業の展開が可能であると考えています。
その実施にあたっては、対象企業や対象事業について各種デューディリジェンスを行う等、慎重な検討の上で意思決定をし、可能な限りリスクの低減に努めています。
しかしながら、M&A等の実施後に当社グループが事前に認識し得なかった問題が明らかになった場合や、取得した企業等や事業の経営が計画どおりに進まない場合、許認可を要する事業を事業譲渡等により譲り受け、譲受後に許認可を得られない場合、又は期待していたシナジー効果を生まずに戦略目的が達成できない場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑤ 特定人物への依存について
当社の代表取締役である濵口慶太は、創業者であると同時に創業以来当社グループの事業推進に深く関与しており、同氏は当社グループの経営戦略構築やその実行に重要な役割を果たしています。当社グループでは組織体制の強化を図り、特定の人物に過度に依存しない体制の整備を進めていますが、何らかの理由により同氏の当社グループにおける経営執行継続が困難になった場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 親会社グループとの関係について
本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。親会社グループは、国内における医師会員33万人以上(2024年4月26日時点)が利用する医療従事者専門サイト「m3.com」、米国の「MDLinx」や英国の「Doctors.net.uk」等の医療従事者のプラットフォーム、医師の人材紹介事業等を中心に様々なサービスをグローバルに展開しており、当社グループは親会社のサイトソリューションセグメントに区分されています。
したがって、エムスリー株式会社は、株主総会の特別決議を要する事項(例えば、吸収合併、事業譲渡、定款変更等を含みますが、これらに限りません。)を単独で可決することはできないものの拒否権を有するとともに、株主総会の普通決議を必要とする事項(例えば、取締役の選解任、剰余金の処分や配当等を含みますが、これらに限りません。)に関する決定権及び拒否権を有することになり、当社に重要な影響を及ぼしえます。親会社が当社グループの事業や経営方針に関して有する利益は、当社の他の株主の利益と異なる可能性があります。
また、当社は親会社と良好な関係を有していますが、何らかの理由により下記に掲げる当社と親会社グループとの間の主な関係について、関係が悪化した場合又は悪化したと受け取られた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
一方、当社の独立性の維持のため、当社取締役会における親会社の役職員を兼務する取締役は6名中で1名のみであり、また、独立社外取締役が3分の1を占める構成としています。
なお、当社と親会社グループとの間の主な関係等の詳細については、以下に記載のとおりです。
(ⅰ)親会社役職員による当社取締役の兼任
本書提出日現在、親会社であるエムスリー株式会社の執行役員である大場啓史は、当社の取締役及び監査等委員を兼任しています。当該監査等委員である取締役は、様々なコーポレート機能に関する知見により当社グループの経営力を高めるべく、当社より就任を要請し、今後も継続して要請することを予定しています。
親会社から役員を受け入れている状況を踏まえ、当社取締役会に占める親会社の役職員との兼務がある取締役は6名中で1名とし、独立社外取締役が3分の1を占める構成としてします。当社の業務執行に係る意思決定に親会社からの承認は求められません。しかしながら、そのようなガバナンスが適切に機能しない場合には、親会社の意向が当社の経営判断に強く影響し、少数株主の利益が脅かされる可能性があります。
他方、当社取締役に親会社の役職員との兼任者がいなくなり、期待していた知見が提供されず同等程度以上の会社経営に関する知見を有した取締役を招聘できない場合には、当社の事業、経営成績又は財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅱ)当社株式の流動性について
本書提出日現在、当社の親会社であるエムスリー株式会社は、当社の議決権の63.45%を所有しています。当社は今後も流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により、新規上場時よりも流動性が低下する場合には、売買が停滞する可能性があり、当社株式の需給関係に悪影響を及ぼす可能性があります。今後は当社の親会社への一部売出しの要請やストックオプションや株式を活用したインセンティブプラン、事業規模、売上収益及び利益額の成長を通じた株主層の拡大等の組み合わせにより、必要に応じて流動性の向上を図っていく方針です。
また、親会社が当社株式を市場内外で売却する場合又はその懸念が市場において認識される場合、当社株式の需給の悪化又はそのおそれにより、当社株式の市場価格に悪影響を及ぼす可能性があります。
(3)事業内容について
① 医療機関セグメントについて
(ⅰ)支援先医療機関について
支援先医療機関においては、医師又はコメディカル(医師を除く看護師、薬剤師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、管理栄養士等の医療従事者)等の不足、各種法令、許認可、指定等の不遵守、情報漏洩、不正、医療事故又は感染症の流行等の事象が発生しないよう事業を行っていると理解しています。
しかしながら、何らかの理由により支援先医療機関において上記の事象が発生した場合や、想定外の大幅な診療報酬改定が行われた場合等には、当該支援先医療機関の事業運営や業績が悪化する可能性があります。
これにより当社グループが予定していた業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があるほか、支援先医療機関において不適切な事象等が発生したことで、それらの医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼすなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅱ)支援先医療機関との業務委託契約について
当社は支援先医療機関に対する経営支援サービスの質の向上及びそのサービスメニューを拡大することで、支援先医療機関からの業務委託を継続していただけるよう日々取り組んでいます。
しかしながら、支援先医療機関との関係が悪化した場合や、支援先医療機関の経営方針の転換が生じた場合等には、業務委託契約が解除にいたる可能性があります。また、支援先医療機関の事情や判断で、業務委託契約が更新されない可能性があります。
医療機関セグメント(国内)の売上収益は主に支援先医療機関からの報酬によって構成されますが、支援先医療機関の経営状態は様々な要因により悪化する可能性があり、支援先医療機関の経営状態が悪化した場合、当社の業務受託報酬を請求あるいは回収できなくなる可能性があります。そのような事象が重なるようなことがあれば当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。なお、弁護士等の専門家との連携により、支援先医療機関との業務委託契約については医療法の剰余金配当の禁止に抵触していないと認識しています。
(ⅲ)海外での医療行為提供について
当社グループは、海外においては、当社グループが直接、医師や看護師を雇用し医療行為を提供しています。危機管理マニュアルの遵守を徹底し医療事故等が発生しないように最新の注意を払いながら医療行為の提供を行っていますが、現地の医療事情、法規制、慣習その他の理由により、万が一事故等が発生した場合には、国内を含む当社グループの事業に対する社会的信用が低下し、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅳ)ファクタリングについて
当社グループは医療機関が有する診療報酬債権を買取り、その債権の回収を行う診療報酬ファクタリングサービスを提供しています。当該債権に関しては、当社グループ規程に基づき、診療報酬額のモニタリングを行い、リスク管理を実施しています。
また、そのすべてが国民健康保険団体連合会及び社会保険診療報酬支払基金に対するものであるため、債権の回収不能リスクは低いと考えていますが、何らかの事情によりその回収が遅延又は不能になるようなことが発生した場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
② ホスピスセグメント及び居宅訪問看護セグメントについて
(ⅰ)診療報酬及び介護報酬について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、健康保険制度に基づく医療保険収入と介護保険制度に基づく介護保険収入が収入の大部分を占めます。健康保険制度は2年に1度、介護保険制度は3年に1度の頻度で改定が行われ、当社グループでは、長期的な改定の方向を見据え収入源の分散や中重度対応等の取組をしています。
しかしながら、想定外の大幅な減額改定が行われた場合には、当社グループが収受する診療報酬・介護報酬が減少するほか、当社グループのサービスの顧客数や利用頻度・利用額が減少するなどの事情が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を与える可能性があります。
(ⅱ)顧客の安全について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等に対し顧客の安全を守るための教育研修を実施し、事故の発生防止や緊急事態に対応出来るように取り組んでいます。
しかしながら、医療依存度、介護依存度の高い高齢者や障害者等にサービスを提供する場合、サービス提供中の転倒・転落等の不慮の事故など、顧客の生命、安全にかかわる事故が発生する可能性は一定程度あります。
また、当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・看護の放棄・放任、心理的虐待等が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んではいますが、上記のような不適切な事象を完全に防止できる保証はありません。
万が一これらの事象が発生し、訴訟等で過失責任が問われるような事態が生じた場合、当社はかかる事態に備えて損害賠償責任保険を付保していますが、損害賠償義務が生じた場合には当社による金銭的な負担が生じるほか、当社や当社の運営する施設等に対する社会的信用が低下し、又は風評被害等によって当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅲ)虐待等の防止について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、訪問看護師、訪問介護士、訪問セラピスト等がホスピス型住宅を含む顧客の居宅においてそのサービスを提供します。当社グループでは、サービス提供者による顧客への身体的虐待、介護・世話の放棄・放任、心理的虐待等の高齢者虐待が発生しないよう役職員を対象とした教育研修やマニュアルの整備を行うとともに、そのようなことが起きない組織風土の醸成に取り組んでいます。
しかしながら、万が一そのような事象が発生し、顧客やその家族よりそのような訴えがあった場合には、多額の損害賠償責任を負う可能性があるほか、当社グループ及びそのサービスに対する社会的評価が失墜し、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅳ)顧客の逝去について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては、行政や医療機関等との連携によって、安定的な顧客の確保に努めており、高齢者の増加とともに需要が増加している状況にあると認識しています。
しかしながら、顧客には医療依存度の高い高齢者やがん末期及び難病患者等が多く含まれることから、当社グループが想定する以上の顧客の逝去が続いた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅴ)システム障害について
ホスピス事業及び居宅訪問看護事業においては電子カルテを使用していますが、通信設備等の予期せぬトラブル等によりシステムが停止した場合や、サイバー攻撃等による不正アクセスや改ざん、データの破壊、紛失、漏洩等が不測の事情により発生した場合、また漏洩した情報が不正使用される等の機密情報の流出が生じた場合には、重大なトラブルが発生する可能性があります。
災害時対応として紙媒体で顧客情報を保管する等の対応をしていますが、想定外の規模のシステム障害やその復旧の長期化等の事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅵ)ホスピス事業における新規開設遅延について
ホスピス事業では、その事業拡大のために新規施設を計画的に開設していくことが必要になります。しかしながら、他社との競合により好立地を確保できない場合、各種規制により新規施設が開設できない場合、その他例えば土地から埋蔵物が発見される場合や、工事期間中の台風や大雪といった不可抗力な事由等、予測困難な事由が発生する場合には、開設計画の実現性が不確実となります。
以上の不確定要素をはじめ、建設人材や建材の不足等何らかの理由で大幅な開設時期遅延が生じた場合には、利益機会を逸失し当社グループの事業、経営成績又は財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(ⅶ)ホスピス事業における協働先との契約の早期終了について
ホスピス事業では、有料老人ホーム及びサービス付き高齢者向け住宅を運営する事業者との協働契約(相手方事業者は施設の運営のみを担当又は施設の運営と訪問介護を担当)を締結し、当社グループが訪問看護又は、訪問看護及び訪問介護を提供している施設があります。
相手先事業者の事業停止や倒産、協働契約の違反等何らかの事由で協働契約が早期に終了する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅷ)地域との関係について
ホスピス事業では、独自の市場調査に基づき新規開設場所を選定しています。しかしながら、結果的に事業の収益性が当初見込みに届かず撤退を検討する可能性があり、当社グループ施設撤退後の入居者の転居先確保が困難な場合は当社グループの社会的評判が低下する可能性があります。
また、医療機関や行政機関との関係性維持の観点から即時撤退を行うことが困難な場合には、収益が確保できないまま事業を継続しなければならない可能性があり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅸ)長期賃貸借契約について
ホスピス事業が運営する一部の施設について、土地又は建物もしくはその両方を当社グループ外の第三者より賃貸借契約に基づき賃借しています。
事業の特性上、長期間の賃貸借契約を締結することが多く、この場合一定期間は撤退の制約が課されるとともに、もし契約期間内に撤退する場合には中途解約による違約金等の支払が発生するため、当社グループは契約締結に際し、当社グループの事業継続に大きな影響を及ぼす契約内容とならないよう細心の注意を払っています。
しかしながら、事業の収益性が当初見込みに届かず中途解約し、撤退せざるを得ない状況が重なるような事象が発生する場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(ⅹ)居宅訪問看護事業における移動中の交通事故について
居宅訪問看護事業において、訪問看護サービスを提供する従業員は、自転車又は自動車を使用して利用者の居宅へ訪問しています。当社グループは従業員の安全を守り、ひいては安定的に利用者へサービス提供をできる状態を確保するため、従業員に対し交通事故防止のための教育研修を実施しています。
しかしながら、当社グループの従業員が悪質な交通事故等を起こした場合には、当社グループが使用者として損賠賠償の負担を余儀なくされる可能性があるほか、当社グループの社会的信用が低下するなど、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
(4)その他
① 資産の減損について
当社グループではM&A(子会社化や事業譲受等)の結果として有形固定資産、のれん及び償却期間の定めのある無形資産等の資産を有しています。当社グループは事業の収益性及び成長性を考慮して事業やセグメントを構成しており、減損リスクの高い事業については適切なモニタリングを実施しています。
しかしながら、将来的に予測不能な原因等による収益性の悪化、あるいは当社グループのモニタリング機能の不備等により、減損損失が発生した場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
② 知的財産権について
当社グループでは当社グループの持つ知的財産権を侵害されないよう細心の注意を払っていますが、他社からの侵害を把握しきれない、もしくは適切な対応ができない場合には、当社グループの事業又は経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループが各種サービスを展開するにあたっては、他社の持つ特許権、商標権等の知的財産権を侵害しないよう細心の注意を払っていますが、万が一、他社の知的財産権を侵害した場合には、多額の損害賠償責任を負い、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
③ 非支配株主について
当社グループの海外子会社の一部には非支配株主が存在します。当該非支配株主とは事業拡大に向け良好な関係を保っており、当該子会社等の意思決定に影響を及ぼすことは現時点で想定していませんが、万が一、当該非支配株主との関係が悪化した場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
④ 海外展開について
当社グループは、海外子会社を通じて現地での事業展開をしていますが、現地での関連法令・税制・政策の制定、改正又は廃止、政治的、経済的環境の変化、電力・輸送・通信等のインフラの停止・遅延、人件費の上昇、為替変動、地政学的な緊張の高まり又は伝染病の蔓延や自然災害発生等のカントリーリスクを内在しています。
当社は社員が現地に常駐することで、現地の政府当局や弁護士事務所などからの情報連携を強化し、早期に情報収集をすることでリスクの低減に努めていますが、かかるリスクが顕在化し、現地での事業活動に悪影響が生じる場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。
⑤ コンプライアンスについて
当社グループでは、コンプライアンスの遵守を重要課題と位置づけ、健康保険法、介護保険法、障害者総合支援法、老人福祉法、高齢者住まい法、労働基準法、消防法等をはじめとする法令及び諸規程を遵守し、企業人、社会人として良識のある行動をするよう従業員の意識向上を図っています。しかしながら、万が一、コンプライアンス遵守に抵触する事象が発生した場合には、法令による処罰や提訴、社会的信用力の低下につながり、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑥ 訴訟等について
当社グループは、法令遵守を重視したサービスを提供しており、現時点において当社グループの事業、経営成績又は財政状態に影響を及ぼす訴訟が提起されている事実はありませんが、顧客やその家族等からの信頼が失われる事象の発生等により、当社グループが訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。これらの法的手続に関連して多額の費用を支出し、また、事業活動に支障をきたす恐れがあり、万が一、当社グループに不利な司法判断等がなされた場合には、当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
また、医療機関セグメント(国内)においては、当社グループが直接医療を提供しないものの、支援先医療機関で同様の事象が生じた場合には、支援先医療機関からの訴訟、係争、またこれらに起因する損害賠償請求の当事者となる可能性があります。また支援先医療機関に対して経営支援を行っている当社及び当社の事業に対する評価や社会的信頼に悪影響を及ぼし、結果として当社グループの経営成績又は財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
⑦ 大規模な災害等について
当社グループは、不測の事態に備え事業継続計画(BCP)の策定等を行っており、非常用物品の備蓄、各種研修、訓練等を行っていますが、大規模な地震、台風、津波、洪水、大雨等の災害又は感染症の拡大等により、事業所建物や看護師、介護士、セラピストを含む当社グループの従業員及び顧客が損害を被った場合、あるいは、当社の事業所の運営やサービス提供に制約が生じた場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑧ 新株予約権の行使について
当社グループでは、役職員等に対するインセンティブを目的として、当社の新株予約権を付与しています。また、今後も新株予約権を発行、付与する可能性があります。2024年3月31日現在、発行済株式総数29,990,400株に対して、新株予約権の行使により今後増加する可能性のある株式数は727,500株です。現在付与している新株予約権及び今後付与される新株予約権が行使された場合、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があります。
⑨ 有利子負債について
当社グループは、運転資金については自己資金で対応し、設備投資やM&A資金は株式上場時の調達資金に加え、借入などにより外部調達することを基本方針としています。そのため、外部調達の金利水準が変動した場合や計画どおりの資金調達ができなかった場合には、当社グループの事業、経営成績、財政状態又はキャッシュ・フローの状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑩ 配当政策について
当社グループは、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を目指しており、そのためには、将来の成長を見据えたホスピス施設への先行投資や設備投資、新規事業や海外への先行投資等を積極的に行うことが重要であると認識しており、現時点では事業の拡大と効率化のために投資し、企業価値の増大を優先すべきだと考えています。
しかしながら、今後は財政状態及び経営成績を勘案しながら、配当を実施していく方針です。ただし、当社グループの業績が計画どおりに進展しない等、当社グループの業績が悪化した場合には、継続的に配当を行えない可能性があります。
⑪ 資金使途について
株式上場時における調達資金の使途については、主にホスピスの建設資金に充当する予定です。しかしながら、変化する経営環境に柔軟に対応するため、現時点での計画外の使途にも充当される可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用した場合においても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。この場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
⑫ 新たな感染症について
今後、新型コロナウイルス感染症又はこれと同様に生命に重要な影響を与える新たな感染症が発生した場合には、当社グループの提供するサービスへの需要の減少を招く事態となり得るとともに、感染状況によっては、行政からのサービス休止・縮小要請、従業員や顧客への感染による事業所の一時的な閉鎖等により、当社グループの事業又は業績、財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
また、新たな感染症による医療機関セグメントの支援先医療機関の売上高減少等により、予定していた業務受託報酬を請求あるいは回収できない場合には、当社グループの事業、経営成績又は財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、中長期的かつ持続的な企業価値の向上を目指しており、そのためには、将来の成長を見据えたホスピス型住宅等の不動産を含む新規拠点開設への投資や、米国における小規模足病クリニックの追加買収を含むM&A等を積極的に行うことが重要であると認識しています。現時点では内部留保の充実を図り、事業の拡大と効率化のために投資し、企業価値の増大を優先すべきだと考えています。
当事業年度においては、上記の理由から配当を実施せず、内部留保の確保を優先しました。内部留保資金については、ホスピスセグメントの新規拠点展開にかかる投資や、米国における小規模足病クリニックの追加買収及び人員の拡充・育成を含む管理体制基盤強化のための投資に活用する方針です。
将来的には、各期の経営成績及び財政状態を勘案しながら株主に対する利益還元を検討していく方針ですが、現時点において配当の実施時期等については未定です。
剰余金の配当を行う場合、期末配当の年1回の剰余金の配当を行うことを基本としており、配当の決定機関は取締役会です。なお、当社は、取締役会の決議によって、中間配当をすることができる旨を定款に定めています。