2026年6月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 1,058 100.0 -927 - -87.7

3【事業の内容】

昨今では、世界的にカーボンニュートラルやサーキュラーエコノミーの実現に向けた取り組みが進むとともに、経済安全保障の観点から、重要鉱物をはじめとする資源の安定確保及び循環利用の重要性が高まっています。

当社は、顧客課題の特定から研究開発、実証、エンジニアリング、事業化・社会実装までを一貫して担う機能を基盤として、環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指す技術プロバイダーです。当社は、この独自技術を産業プロセスとして社会実装する一貫機能そのものを競争力の源泉と位置付け、現在、①マイクロ波技術プラットフォームを活用する「マイクロ波ソリューション事業」と、②DualPoreSystem(DPS技術)を活用して低濃度の貴金属を回収する「DualPoreソリューション事業」の2つの事業を展開しています。DualPoreソリューション事業は、マイクロ波ソリューション事業で培った当該機能を、マイクロ波以外の技術領域へ展開する最初の事業であります。

なお、当社の計算書類及び本有価証券報告書の「第5 経理の状況」において使用している「マイクロ波化学関連事業」及び「低濃度貴金属回収事業」は、本項における「マイクロ波ソリューション事業」及び「DualPoreソリューション事業」にそれぞれ対応するものであります。

また、当事業年度より、DualPoreソリューション事業を開始したことに伴い、セグメント区分を変更しております。「マイクロ波ソリューション事業」を報告セグメントとし、DualPoreソリューション事業については、報告セグメントに含まれない「その他事業」に区分しております。詳細は、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項(セグメント情報等)」に記載のとおりであります。

両事業は、独自技術を顧客の製造工程に適用し、実証・導入を通じて得られた知見を蓄積・標準化することで、ソリューションを横展開していく事業化の考え方を共通の基盤としています。一方、その収益構造は異なります。マイクロ波ソリューション事業は、製造プロセスの省エネルギー化、高効率化、コンパクト化等を実現するとともに、重要鉱物に関連する金属製錬・鉱山プロセスへと適用領域を拡げるプロジェクト型の事業であります。これに対しDualPoreソリューション事業は、顧客の既存の排液ラインにDPSカートリッジを設置し、回収した低濃度貴金属の価値を顧客と分け合う形で継続的に収益を得るストック型の事業であり、顧客製造ラインへの導入数の積み上げが収益基盤の拡大につながる構造にあります。

 

(1) マイクロ波プロセスの原理、優位性及び歴史

 伝統的なモノづくりの方法においては、エネルギー伝達手段として、伝熱プロセスが用いられています。ガス、熱媒、蒸気といった熱エネルギーを、空間のある場所から対象物質に移動させることによって、反応を起こそうとするプロセスです。このプロセスにおいては、エネルギー伝達が外部から間接的なものとなり全体を加熱するためにエネルギーロスが生じることから、対象物質の反応に必要である以上のエネルギーが必要となります。また、大規模生産をしようとすると、対象物質へのエネルギー伝達が不均一になってしまうため、収率低下、品質劣化という問題が生じます。

 一方、マイクロ波プロセスにおいては、エネルギー伝達の方法が全く異なります。

 マイクロ波とは,波長約1mm~1m(300MHz~300GHz)の電界と磁界が直交した電磁波です。

 マイクロ波は、特定の物質に内部から直接かつ選択的にエネルギーを伝達できるという特徴を有しており、これにより媒体を介してのエネルギー伝達が不要となるため、必要最小限のエネルギーしか要しません。また、目的とする物質のみが共鳴する周波数のマイクロ波を照射することで、均一にエネルギー伝達することができるため、ムダ・ムラを排除し高収率・高品質を達成します。

 このような特徴を有するマイクロ波の化学への適用は、1980年代の電子レンジの改造ラボ装置からスタートしました。そして、現在に至るまで、有機合成を始めとした各種の化学反応において、反応時間短縮、高収率、素材の性能向上などの圧倒的な効果がラボスケールで報告されてきました。しかしながら、2000年に入っても化学プロセスとして大型産業化された例は無く、「化学反応においては、マイクロ波を制御することが困難であり、産業利用することは不可能である」という見解が化学業界の常識となっていました。

 

(2) 技術プラットフォームの構築

 当社は、2007年の創業以来、上述のような常識に挑み、ついにマイクロ波プロセスを用いて年産3,000トン規模での商業生産を実現しました。当社は、その過程で「デザイン力の獲得と強化」及び「要素技術群の開発と蓄積」の2点に着目し、技術プラットフォームを築いてきました。

①デザイン力の獲得と強化

■ 反応系のデザイン

各々の物質において、マイクロ波を吸収できる能力(マイクロ波吸収能)は異なり、周波数依存性と温度依存性を示します。最適な反応を得るためには、ターゲット物質に合わせてマイクロ波の周波数を選定する、すなわち「反応系のデザイン」が重要となります。しかし、様々な状態におけるマイクロ波吸収能を測定できる手法は確立されておらず、加えて、膨大なデータ及びノウハウの蓄積が必要となるため、マイクロ波が汎用的なモノづくりプロセスとして採用されるための大きな障壁となっていました。当社はマイクロ波吸収能の測定方法を独自開発・確立し、データベース化を進め、それに基づいた反応系デザインのパターン認識とノウハウ蓄積を進めることで体系化しました。

 

■ 反応器のデザイン

 マイクロ波プロセスにおいては、反応器という閉鎖空間の中でマイクロ波を照射しますが、研究段階では小さな反応器でマイクロ波の優位性検証を行います。一方で、マイクロ波を産業利用するためには、研究段階の小さな反応器を数千から1万倍程度の大きさにスケールアップする必要がありますが、マイクロ波プロセスの反応器デザインにおいては、従来の熱伝導を利用したプロセスにおけるそれとは全く異なった技術が必要となります。

 マイクロ波反応器デザインでは、波の特性(吸収、透過・反射)を加味し、マイクロ波の分布(電磁界分布)を制御することが重要となります。しかしながら、反応系デザインに基づいた電磁界分布をデザインする必要があること、加えて、電磁界分布をシミュレーションするためには、各々の物質のマイクロ波吸収能が解析上必要となることにより、スケールアップが困難とされてきました。当社はシミュレーション技術の開発を進め、加熱対象物温度分布等のシミュレーション結果を、実際の反応器内部において高い精度で再現させるために、電磁場解析、熱流体解析を連成させました。また、スーパーコンピューターを導入することにより反応器の大型化、及びマイクロ波分布と流動している加熱対象物とが相互に作用し合う複雑系にも対応可能になりました。さらに、反応器製作後に、その実証データとシミュレーションの齟齬を認識、フィードバックを繰り返すことで精度を上げ、スケールアップの最適解を導くことができました。

 

②要素技術群の開発と蓄積

要素技術群とは、マイクロ波環境下で化学プロセスを実施するために保有している複数の要素技術で、スケールアップ過程で開発を行ってきたものです。これは、4つのカテゴリに分類され(下表)、さらに20の各技術に細分化されます。

 

 

③技術プラットフォームの確立

 当社は、マイクロ波プロセスを産業化する過程で「①デザイン力」と「②要素技術群」を構築・強化し、これらで構成される技術プラットフォームを確立しました。そして、この技術プラットフォームを用いることで、金属・化学・エネルギー産業における多様な課題に対して最適なソリューションを提供しています。

 具体的には、顧客から得た課題に対して、蓄積してきた課題解決データベースから類似系を抽出することにより、顧客から得た課題を解決するための要素技術を複数選定し、初期的な概念検証であるラボ開発フェーズ、または実機導入を見据えた実証開発フェーズにおいて、デザインを行います。

 

 なお、当社が、上述のような技術プラットフォームを確立し、マイクロ波プロセスの産業化に成功した背景として、以下のような点が挙げられます。

1) チーム

 問題解決のために、多様な分野の知識を融合したことが挙げられます。具体的には、反応系デザインに関しては、化学、物理、電気、電磁気の知見を有するサイエンティスト、反応器デザインに関しては、化学工学・機械工学の知見を有するエンジニア、シミュレーションのための専門家、加えて、生産技術確立のための、製造技術者といった様々なバックグラウンドを持つ人材が当社には集結しています。

2) インフラ

 当社が有するラボは、マイクロ波に特化した大規模な研究設備を備えており、プロセス検討の初期的な研究開発を担っています。特に反応系デザインに重要な周波数のバリエーションは豊富で、一般的な産業部門やラボ機で用いられる周波数は2.45GHzの1種類がほとんどのところを、当社は主に5種類の周波数を使い分けます。また、大阪事業所の「実証棟」は、実機導入のためのパイロット実証施設として機能しています。このように、当社は、研究・開発→実証→事業化すべてのフェーズにおいてソリューションの提供が可能なインフラを有しています。

3) データベース・ノウハウ・実証経験

 当社は10年以上にわたり、様々な化学企業と多種多様な化学品に関する共同開発を重ねているため、データベース・ノウハウ・実証経験において、膨大な蓄積を有しております。

 

(3) 事業モデル

 マイクロ波ソリューション事業では、顧客課題に応じて、研究開発からエンジニアリング・製造支援までをワンストップでソリューションとして提供しています。技術プラットフォームを幅広い産業領域の製造プロセスに応用することを目指しています。

 マイクロ波ソリューション事業は、顧客の課題解決を目指して研究開発を行う研究開発会社としての側面と、マイクロ波プロセスを設計して反応器を納入するエンジニアリング会社的な側面を併せ持っております。研究開発及びエンジニアリングのソリューションは4つのフェーズで提供していますが、各フェーズの具体的な実施内容は以下の通りであります。

 開発段階のフェーズ1ないし2では、共同開発費や実証機の設計費という形で収益を計上します。顧客が事業化するフェーズ3ないし4では、プロジェクトマネジメントフィーや設計費を計上した上で、顧客がマイクロ波プロセスを導入することによって生み出すことができたコスト削減や付加価値向上などの価値の一部、及び当社が所有するバックグランドIPの使用料としてライセンス収入を、一時金やロイヤリティという形で計上します。

 中長期的には事業化したパイプラインから得るロイヤリティをはじめとした継続的な収益が当社の利益に貢献することを想定しています。

 

 事業の成功率を高めるためには、当社内でフェーズ0と位置づけている初期段階における開発課題の特定、事業仮説や期待値の設定が重要であり、事業開発チームによる徹底的なヒアリングを実施します。ヒアリング内容をデータベース化し成功パターンを認識し、必要に応じて簡単な試験をすることで、効率の良い案件獲得に繋げていきます。さらに、その前段階となる顧客からの引き合い数を増やすことに注力することで、事業性の高い案件の受注を目指します。

 

フェーズ1

ラボ開発

概念検証(POC/Proof of Concept)。顧客の課題に合わせたソリューションの検証。マイクロ波を用いた反応系のデザイン。

フェーズ2

実証開発

実機を想定してベンチ機・パイロット機を用いた実証開発。反応器のデザイン。実機導入に向けた経済性の検証。

フェーズ3

実機導入(装置販売)

実機を設計・製作し納入。

フェーズ4

製造支援

多くの顧客がマイクロ波設備の使用経験がないため、生産技術部員を派遣して設備の立ち上げから製造やメンテナンスを支援。

 

 

 

 

(4) 技術及び事業の標準化

 当社の事業は、顧客課題にソリューションを提供すると、これが当社の技術プラットフォームの強化とこれを支える要素技術群の充実につながり、この強化された技術プラットフォームが顧客課題のソリューション力向上に貢献するという、好循環を実現可能な事業モデルです。これは、ソリューションの提供を通して獲得した装置・プロセスを中心とした知財・ノウハウを当社がある程度自由に展開できる自律拡張的な仕組みとしているからですが、顧客から見ても過去に積み重ねたバックグランドIP・ノウハウを含む技術プラットフォームを低コストで活用でき、メリットを享受することができます。

 

 

さらに、技術プラットフォームを「標準化」し、特定の顧客ではなく、業界・市場に共通した「課題」に対するソリューションを提供することで、技術を横展開しスケールする事業を実現します。

具体的な例としては、①ケミカルリサイクル事業、②鉱山プロセス事業があります。

 

① ケミカルリサイクル事業

サーキュラーエコノミー構築の為に、廃棄プラスチックを分解し、再度、化学品の原料として利用できるようにする事業であり、マイクロ波熱分解技術を標準化して、家電や車などに使われているプラスチックからレジ袋まで多様な廃棄プラスチックに対応することで、事業の横展開を目指しています。当社では2021年3月期からマイクロ波技術を用いたケミカルリサイクルへの取り組みを開始し、これまで計20社以上×30件以上のプロジェクトを通じて要素技術を蓄積してきました。今後も大阪事業所に実証設備を導入して、多様なプロジェクトを通じて得られた技術の標準化を進めるとともに、パートナー企業との共同開発案件の早期の事業化・社会実装を目指します。

 

② 鉱山プロセス事業

金属製錬/鉱山プロセスにおける、煆焼・焼成・還元などの、従来工程で化石燃料を燃焼し大量の二酸化炭素を排出する工程を、電気で発生するマイクロ波プロセスに置き換えることをビジョンとする事業で、標準化装置を自己投資して開発し、各共同開発案件に汎用的に活用することで、プロジェクトの投資コストを抑え、開発スピード・確度を上げることを目指しています。

標準化装置の開発事例として、2024年3月、大阪事業所(大阪市住之江区)において、マイクロ波を利用した金属製錬および鉱山プロセスでの鉱石の高温焼成・反応に対応可能な標準ベンチ装置を完成させました。当社独自で開発したため今後あらゆるプロジェクトへ展開することができ、実際に当該装置を用いて、マンガンノジュール鉱石の煆焼や鉄鉱石の還元などに成功しており、重要鉱物分野におけるマイクロ波プロセスの社会実装を進めています。

 

[マイクロ波ソリューション事業:事業系統図]

 

 

 

(5) DualPoreソリューション事業

① DualPoreSystem(DPS技術)の原理、優位性及び事業化の経緯

 DualPoreSystem(DPS技術)は、シリカを原料とした粒子に、ナノスケールの細孔とマイクロスケールの貫通孔からなる「デュアル構造」を形成し、さらに表面修飾を施すことで、高吸着性と高通液性を両立する分離・回収技術です。細孔は物質を吸着・回収する機能を、貫通孔は流体や物質が粒子内部まで速やかに到達する通路としての機能を担い、表面に対象となる貴金属と結合するリガンドを付与することで、特定の貴金属を選択的に吸着します。

 この特性により、DPS技術は、通常の回収工程の後段等に残存する0.1ppm程度からの極低濃度の貴金属についても、簡易かつ高速に吸着・回収することが可能です。また、低圧条件でも高性能を発揮し、高い通液性により大量処理に対応できることから、高価な高圧ポンプや大掛かりな設備を必要とせず、既存ラインへの追加設置が可能です。

 DPS技術は、2017年に設立された京都大学発スタートアップの株式会社ディーピーエスにおいて事業化が進められてきました。当社は、2025年9月に同社からDualPoreソリューション事業を譲り受け、DualPoreソリューション事業として展開しています。

 

② 顧客製造工程への導入に向けた体制・取り組み

 当社は、事業譲受により、株式会社ディーピーエスが培ってきたDualPoreの合成・表面修飾、カートリッジを用いた分離・回収に関する要素技術・ノウハウを承継しました。これらに、当社がマイクロ波ソリューション事業で培ってきた事業開発・研究開発・エンジニアリングの機能を組み合わせ、DPS技術を顧客製造工程へ導入・実装するための体制の構築・強化を進めています。

 具体的には、対象とする貴金属に応じた吸着特性の設計、DPSカートリッジ及び周辺システムの設計、顧客の排液特性に応じた導入・運用設計を一体的に行います。

 

③ 事業モデル

 DualPoreソリューション事業では、顧客の既存排液ライン、主として従来の回収装置の後段にコンパクトなDPSカートリッジを追加設置し、排液中に残存する低濃度貴金属を吸着・回収します。

 顧客の初期投資を最小限にするため、当社がDPSカートリッジを貸与し、顧客と共同で貴金属回収を実施した上で、回収した貴金属の価値を顧客とシェアするサブスクリプションモデルを採用しています。これにより、顧客にとっては従来回収が困難であった資源から新たな価値を創出でき、当社にとっては回収量に連動した継続的な収益の獲得が可能となります。2026年6月末時点で5ラインに導入済みであり、国内及び海外市場で事業を展開しています。

 

[DualPoreソリューション事業:事業系統図]

 

(6) 用語

 本書で使用する用語の解説は次のとおりであります。

用語

用語の解説

伝熱

熱エネルギーが空間のある場所から別の場所に、物質によって移動する現象

バックグランドIP

もともと自社が所有する知的財産

反応器

化学反応を起こさせる装置。リアクター、反応炉とも言う

カーボンニュートラル

二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの「排出量」から、植林、森林管理などによる「吸収量」を差し引いて、合計を実質的にゼロにすること(環境省「脱炭素ポータル」より)

再生可能エネルギー

石油、石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーとは異なり、太陽光、風力、地熱、バイオマス等、エネルギー源として永続的に利用することができるもの

ベンチ機

パイロット機設計に先立ち、必要な設計データ収集のために試験的に組み立てる、ラボで行う研究とパイロット機を用いた試験の中間の位置づけの試験で使われるプラント

パイロット機

実機設計に先立ち、必要な設計データ収集のために試験的に組み立てる、ほぼ実機と同様の機能を持った試験段階と実用の段階との中間の位置づけとなるプラント

電磁場解析

反応器内に照射されたマイクロ波がどのような状態で反応器内及び加熱対象物内に分布するのか、また効率よくマイクロ波を照射するために反応器のどの部分から照射すれば良いかなどを決めるために、専用のコンピューターシミュレーターを用いて解析すること

熱流体解析

反応器内に存在する気体、液体、固体(粉体)などが、その中でどのような動き(流れ)をしているのか、それに伴い熱がどの様に伝播するのかを専用のコンピューターシミュレーターを用いて解析すること

連成解析

2つ以上の物理現象が相互に及ぼす影響を考慮した解析をすること

パイプライン

フェーズ1(ラボ開発)、フェーズ2(実証開発)、フェーズ3(実機導入)、フェーズ4(製造支援)のいずれかにある開発プロジェクト

DualPoreSystem(DPS技術)

シリカ粒子に細孔・貫通孔の二重構造を形成し、高吸着性と高通液性を両立する貴金属吸着回収技術

 

 

 

業績状況

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

① 財政状態の状況

(資産)

 当事業年度末の資産合計は1,399,210千円となり、前事業年度末に比べ725,328千円減少しました。

 これは主に、売掛金が461,056千円、有形固定資産が129,062千円、現金及び預金が105,905千円それぞれ減少したことによるものであります。

 

(負債)

 当事業年度末の負債合計は1,246,306千円となり、前事業年度末に比べ185,774千円増加しました。

 これは主に、契約負債が69,752千円、買掛金が62,687千円、それぞれ減少したのに対し、長期借入金が327,500千円、1年内返済予定の長期借入金が109,440千円それぞれ増加したことによるものであります。

 

(純資産)

 当事業年度末の純資産は152,904千円となり、前事業年度末に比べ911,102千円減少しました。

 これは、資本金及び資本準備金が10,775千円、新株予約権が32,225千円それぞれ増加したのに対し、利益剰余金が964,878千円減少したことによるものであります。

 

② 経営成績の状況

 決算期変更に伴い、当社の当事業年度は15か月の変則決算となっております。このため、前事業年度との比較は行っておりません。

 

 製造業の中でも化学産業は、原料や素材を担う産業として経済の発展を支えてきました。しかしながら、多くの製品や製法にイノベーションが起こる中、同産業は長きにわたってその登場からほとんど姿を変えておらず、現在も未だ重厚長大のエネルギー大量消費型のプロセスが多く残っています。

 当社は、「何を作るか」ではなく「どのように作るか」に着目し、製造プロセスを化石資源由来の「熱と圧力」から電気由来の「マイクロ波」に置き換えることで、「省エネルギー」・「高効率」・「コンパクト」な環境対応型プロセスのグローバルスタンダード化を目指す技術プロバイダーです。

 当社は、「デザイン力」及び「要素技術群」からなる技術プラットフォームを駆使して、顧客課題に応じて、ラボ開発、実証開発といった研究開発フェーズから、実機製作、製造支援といった事業フェーズまでをワンストップでソリューションとして提供しております。現在では、炭素素材、ケミカルリサイクル、金属製錬/鉱山プロセス、電子材料、医薬品などの幅広い分野において研究開発のパイプライン拡充及び積極的な事業開発活動を行っております。

 

 近年、地球規模の課題である気候変動問題の解決に向けて、「カーボンニュートラル」を目指す動きが世界的に加速しております。わが国でも2020年10月、臨時国会で「2050年カーボンニュートラル」が宣言されたことを受け、経済産業省により2兆円のグリーンイノベーション基金が造成されるなど、二酸化炭素排出の削減を経営課題として取り組む企業等に対して、研究開発・実証から社会実装までを継続して支援を行う機運が高まっております。

 マイクロ波プロセスは、従来の「外部から」「間接的」「全体」にエネルギーを伝達するプロセスに対して、「内部から」「直接的」「ターゲットした物質」に効率的にエネルギーを伝達することが可能であり、エネルギー削減を実現することができます。さらに、2000年代以降、安価、かつ発電量が増えてきた自然エネルギー由来の電気と組み合わせた「電化」のプロセスとして大幅な二酸化炭素削減が可能であるため、カーボンニュートラル実現に向けた有望なキーテクノロジーとして注目されております。

 

 実際に当社では複数の化学企業と協業しながら、従来の製造プロセスを当社技術プラットフォームによって革新していく共同開発プロジェクトを進めております。具体的に当事業年度に推進した主要な開発プロジェクトとして下記が挙げられます。

(1) 横浜市鶴見区に研究拠点「横浜ラボ」を開設し、2025年7月1日よりマイクロ波発振器の内製化を目指すプロジェクトの本格稼働を開始。

(2) 三菱ケミカル株式会社と共同開発した技術で再生されたアクリル樹脂リサイクル材がHondaの新型軽乗用EVに採用。

(3) 三井物産株式会社と共同で開発を進めるマイクロ波を用いた低炭素リチウム鉱石製錬技術におけるパイロット機が完成し、実証試験を開始。

(4) TREホールディングス株式会社の連結子会社である株式会社タケエイと共同で、環境省の補助事業に「マイクロ波を利用した太陽光パネルガラス付着有機物除去によるガラスカレット水平リサイクルの実証事業」を申請し、採択。同実証事業を開始。

(5) 早稲田大学発の医療機器スタートアップCoreTissue BioEngineering株式会社と、膝前十字靱帯再建手術向けの『組織再生型靱帯』の実用化に向け、マイクロ波を用いた脱細胞化技術を適用した量産装置の開発を開始。

(6) コーベックス株式会社と、マイクロ波を用いた真空溶剤蒸留回収装置の開発及び試作機(プロト機)の製作を開始。

(7) 東京大学が取り組む「海底鉱物資源の製錬方法の開発」に参画。マイクロ波技術を活用した金属製錬および鉱山プロセスへのマイクロ波技術プラットフォームを用い、マンガンノジュール鉱石の煆焼試験を担い、自社保有のベンチ装置でベンチスケール(数十kg規模)での煆焼試験を完了。

(8) 当社が保有する回転炉床炉型の金属製錬/鉱山プロセス標準ベンチ装置を用いて実証試験を実施した結果、鉄鉱石約15kgの還元に成功し、実用化に向けて重要なマイルストーンであるベンチスケールでの実証を完了。

(9) カナダのリチウム資源開発企業であるPMET Resources Inc.と三井物産株式会社との間で、PMETが開発する鉱山から採掘される、リチウムの原料となるスポジュミン鉱石への当社独自の「マイクロ波煆焼技術」の適用、および将来的な商業化に向けた共同検討に関する覚書(MOU)を締結。

 

 このように、既存の開発案件を着実に進めつつ、新領域の開発案件獲得にも取り組んだ結果、当事業年度は、新規案件獲得数は通期計画22件に対して25件、契約済みの案件総数は通期計画62件に対して61件となりました。

 以上の結果、当事業年度におけるセグメント別の経営成績は、マイクロ波ソリューション事業の売上高1,050,470千円、セグメント利益は358,613千円となりました。また、当事業年度より開始したその他事業の売上高は7,289千円、セグメント損失は3,770千円となりました。なお、セグメント利益又は損失は、売上総利益を基礎とした数値であります。

 以上の結果、当事業年度における経営成績は、売上高1,057,759千円、営業損失927,404千円、経常損失948,749千円、当期純損失964,878千円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

決算期変更に伴い、当社の当事業年度は15か月の変則決算となっております。このため、前事業年度との比較は行っておりません。

当事業年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)は、前事業年度末に比べ105,905千円減少し401,190千円となりました。

当事業年度におけるキャッシュ・フローの概況は以下のとおりです。

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

営業活動によるキャッシュ・フローは、459,635千円の支出となりました。これは主に、減価償却費131,434千円、固定資産圧縮損32,664千円、株式報酬費用30,871千円を計上したのに対し、税引前当期純損失955,605千円、契約負債の減少額69,752千円、仕入債務の減少額62,687千円を計上したことによるものであります。

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動によるキャッシュ・フローは、87,015千円の支出となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出57,942千円、無形固定資産の取得による支出15,544千円を計上したことによるものであります。

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動によるキャッシュ・フローは、440,745千円の収入となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出63,060千円、リース債務の返済による支出19,099千円を計上したのに対し、長期借入れによる収入500,000千円、株式の発行による収入21,550千円を計上したことによるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当事業年度より開始したその他事業において生産活動を行っておりますが、その金額的重要性が乏しいため、生産実績の記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当事業年度のマイクロ波ソリューション事業の受注実績は、次のとおりであります。なお、DualPoreソリューション事業については、回収した貴金属の価値に応じて収益を得る事業モデルであり、受注高として把握することになじまないことに加え、カートリッジの貸与等に係る収入についても金額的重要性が乏しいため、受注実績の記載を省略しております。

 

当事業年度

(自 2025年4月1日

至 2026年6月30日)

前年同期比(%)

マイクロ波ソリューション事業

フェーズ1(千円)

100,736

-

フェーズ2(千円)

556,036

-

フェーズ3(千円)

10,000

-

フェーズ4(千円)

98,176

-

その他(千円)

150

-

合計(千円)

765,098

-

 (注)当事業年度は決算期変更に伴う15か月の変則決算であり、前事業年度とは対象期間が異なるため、前年同期比は記載しておりません。

 

c.販売実績

 当事業年度のセグメント別販売実績は、次のとおりであります。なお、当社はマイクロ波ソリューション事業について売上高の主な内訳別に記載しております。

 

当事業年度

(自 2025年4月1日

至 2026年6月30日)

前年同期比(%)

マイクロ波ソリューション事業

フェーズ1(千円)

100,436

-

フェーズ2(千円)

887,667

-

フェーズ3(千円)

10,000

-

フェーズ4(千円)

52,216

-

その他(千円)

150

-

小計(千円)

1,050,470

-

その他事業(千円)

7,289

-

合計(千円)

1,057,759

-

 (注)1.当事業年度は決算期変更に伴う15か月の変則決算であり、前事業年度とは対象期間が異なるため、前年同期比は記載しておりません。

    2.その他事業はDualPoreソリューション事業であります。

    3.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

当事業年度

(自 2025年4月1日

至 2026年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

㈱MiRESSO

187,000

11.6

-

-

大日本印刷㈱

178,000

11.1

-

-

㈱レゾナック

-

-

350,950

33.2

三井物産㈱

-

-

105,909

10.0

4.最近2事業年度の主な相手先別の販売実績のうち、当該販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満の相手先につきましては、記載を省略しております。

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。

① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたっては、当事業年度末日における資産及び負債、会計年度における収益及び費用について会計上の見積りを必要としております。この見積りに関しては、過去の実績及び適切な仮定に基づいて合理的に計算しておりますが、実際の結果と相違する場合があります。

 なお、会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものはありません。

 

② 当事業年度の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 当事業年度における財政状態及び経営成績の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況 ② 経営成績の状況」に記載のとおりであります。

 

③ キャッシュ・フロー、資本の財源及び資金の流動性

 当社は、基盤技術の強化をはかるべく、積極的に研究開発活動を実施してまいりましたが、今後も継続して実施する方針であり、必要な資金は、自己資金、金融機関からの借入金、新株発行による調達資金により充当することとしております。

 当社の資金の流動性については、「(1)経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④ 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標の分析

 経営方針、経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、マイクロ波ソリューション事業における1)新規契約獲得数、2)契約総数、及び3)フェーズ別売上高を主な経営指標として重視しており、各指標の進捗度は以下のとおりです。

 なお、当事業年度は決算期変更に伴い、2025年4月1日から2026年6月30日までの15か月間となっております。このため、2024年3月期及び2025年3月期との比較にあたっては、対象期間が異なる点にご留意ください。

 

新規契約獲得数及び契約総数

 

2024年3月期

2025年3月期

2026年6月期

新規契約獲得数

27件

24件

25件

契約総数

64件

71件

61件

 

フェーズ別売上高

 

2024年3月期

2025年3月期

2026年6月期

フェーズ1

565,112千円

258,480千円

100,436千円

フェーズ2

1,274,108千円

1,330,223千円

887,667千円

フェーズ3

-

15,000千円

10,000千円

フェーズ4

-

656千円

52,216千円

その他

24,100千円

4,043千円

150千円

合計

1,863,320千円

1,608,403千円

1,050,470千円

 

 また、DualPoreソリューション事業については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等」に記載のとおり、事業の進捗を把握するため、DPSカートリッジ導入ライン数、貴金属回収量及び売上高等を継続的にモニタリングしております。一方、同事業は本格的な商用展開を開始して間もない段階にあることから、現時点ではこれらの指標について定量的な目標値を設定しておりません。

 当事業年度においては、国内及び海外における顧客への導入を進め、2026年6月末時点で5ラインにDPSカートリッジを導入しており、当事業年度の売上高は7,289千円となりました。今後も、顧客への導入数の拡大、新たな回収対象領域への展開及び回収対象元素の拡大を進めるとともに、事業の進捗状況を継続的にモニタリングしてまいります。

 

⑤ 継続企業の前提に関する重要事象等について

 「3 事業等のリスク (17) 継続企業の前提に関する重要事象等」に記載のとおり、当社には継続企業の前提に重要な疑義を生じさせるような事象又は状況が存在しております。

 当社は、当該事象又は状況を解消又は改善するため、顧客基盤及び収益源の多様化を経営上の重要課題と位置づけ、マイクロ波ソリューション事業における重要鉱物に関連する金属製錬・鉱山プロセス等への展開や、DualPoreソリューション事業をはじめとする新たな技術ソリューションの獲得・提供を進めております。また、資金面では、当事業年度に総額5億円の長期借入を実行するとともに、総額5億円のコミットメントライン契約を更新し、事業推進に必要な流動性を確保しております。

 継続企業の前提に関する重要な不確実性の有無を判断するための事業計画及び資金計画における重要な仮定は、受注時期及び事業開発の進捗を踏まえた売上高の見通し並びに金融機関からの資金調達及び借入枠の利用可能性であります。

 経営者は、事業計画及び資金計画に加え、上述の対応策を総合的に検討した結果、当該事象又は状況は解消又は改善される見込みであり、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。