リスク
3【事業等のリスク】
当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。
また、必ずしもリスク要因には該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に記載しておりますが、当社に関するすべてのリスクを網羅するものではありません。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
(1) 技術の応用領域の拡大について
当社は、従来困難とされてきたマイクロ波プロセスの大型化に成功し、大規模マイクロ波化学工場である「M3K」の立ち上げに成功した後、食品添加物、医薬品、炭素素材、石油化学プロセス、電子材料、金属製錬/鉱山プロセスなど多様な分野へと応用領域を拡大してまいりました。このように、マイクロ波プロセスは、基礎化成品、機能性化成品、燃料、鉱石など様々な領域に応用可能であると考えておりますが、新しい技術領域であり不確実性が高いため、当社技術の市場への浸透が計画通りに進まない場合、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 新規参入・技術革新について
当社は、独自に構築したプラットフォーム技術を事業基盤としており、マイクロ波化学分野においては強固な競争優位性を確保しているものと考えております。しかしながら、当社を上回る研究開発能力を備えた新規参入企業が出現すること、または当社の特許技術に抵触しない技術をもって当社を上回る技術が開発されることも考えられます。
当社としては、数多くの領域でマイクロ波プロセスによるプラント建設を進めマイクロ波化学に関する知見を蓄積することで、この競争優位性をより強固なものにできると考えておりますが、新規参入企業の出現や当社を上回る技術の開発により、当社の競争優位性が低下する結果、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
さらに、マイクロ波に対する代替技術を持った事業者の新規参入や、技術革新によりニーズが減退し、業界環境そのものが著しく変化する可能性があります。顧客ニーズの変化を先読みして、競合技術を継続的に観測し、この結果を当社の技術開発に活かしていくことで対処したいと考えております。
(3) 知的財産について
当社の事業に関連した特許権等の知的財産権について、第三者との間で訴訟やクレームといった問題が発生したという事実はなく、現時点においては、当社の事業に関し他者が保有する特許権等への侵害により、事業に重大な支障を及ぼす可能性は低いものと認識しております。また、技術調査等を継続して行って侵害事件を回避するよう努めております。ただし、当社のような研究開発型の企業にとって、このような知的財産権侵害問題の発生を完全に回避することは困難です。今後、当社が第三者との間の法的紛争に巻き込まれた場合、弁護士や弁理士と協議の上、その内容によって個別具体的に対応策を検討していく方針ですが、当該第三者の主張の適否にかかわらず、解決に時間及び多額の費用を要する可能性があり、また、当社の技術に関しては、細心の注意を払って管理しておりますが、第三者が当社の技術を侵害した場合であっても、解決に時間及び多額の費用を要する可能性があります。その場合には当社の事業戦略及び経営成績に重大な影響を及ぼす可能性があります。
現状、要素技術群において、反応系デザインが中心の共通の要素技術である、基礎物性評価、シミュレーション、制御は秘匿化し、反応器デザインが中心の個別の要素技術である基盤機構は特許化、公知化する戦略をとっており、このようにして積み重ねた知財は当社の強みとなっております。
(4) 多額の研究開発費の発生について
当社の第17期事業年度の研究開発費の総額は504,083千円です。マイクロ波プロセスは、基礎化成品、機能性化成品、燃料、鉱石など様々な領域への応用が可能であると考えられます。当社はマイクロ波化学産業を興し同産業におけるリーディングカンパニーとなることを目指し、グリーン、ケミカルリサイクル、鉱山プロセスを重点領域として複数の次世代パイプラインの研究開発を進めています。これら研究開発が当初計画よりも遅延する場合、または当初期待していた結果が得られない場合、研究開発費用が当初計画よりも増大し、経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 収益計上が変動する傾向について
当社の事業収益は、共同開発契約に伴う開発一時金の収受によるものが中心であるため、その計上時期や金額によっては事業収益、当期純利益(損失)は不安定に推移する可能性があります。
(6) パイプラインの進捗について
当社は共同開発契約を締結するにあたり、研究開発目的ではなく、事業化の達成が目的であることを確認しております。事業化までのロードマップを事前合意し、マイルストン毎に契約を締結しておりますが、開発が難航した場合や、顧客における経営方針の変更、業績悪化等に伴う予算削減等がなされた際には、開発の継続が困難となる場合があります。また、事業化段階であるフェーズ4においては、ライセンス収入等の継続収益が発生することを想定しておりますが、本書提出日現在において、継続収益の計上実績はありません。今後、開発の進捗によりフェーズ4に到達するパイプラインが増加し、継続収益が発生することを見込んでおりますが、顧客の事業状況によってはパイプラインの事業化が困難となる場合があります。
以上のように、当社の想定どおりにパイプラインが進捗しない場合において、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 特定の取引先に売上が集中する可能性について
当社は多数の企業と共同開発を実施しておりますが、売上単価が大きいフェーズ2以降の案件について、現時点では特定の取引先からの売上が一定の割合を占めています。今後、フェーズ1の案件がフェーズ2へとステージアップすることで、このような状況は解消されると考えておりますが、開発の進捗に偏りが生じた際には、本状況が発生する可能性があります。
(8) 業績の不確実性について
① 過年度の業績推移について
当社がソリューション提供型のビジネスを開始したのは第11期であり、第13期及び第16期以外においては、当期純損失を計上しております。
今後、さらなる事業拡大を推進してまいりますが、過年度の経営成績が今後の当社の経営成績等を判断する材料としては、不十分である可能性があります。
今後、未だ経験していない事業上のトラブルが発生する可能性は否定できず、当社の業績に影響を及ぼすと考えられる様々な外部環境の変化について予想することは、現状においては困難であると思われます。
② 研究開発投資について
当社は、マイクロ波プロセスの基盤技術確立、応用領域拡大のため、設備機器の導入、研究員及びエンジニアの増員等、研究開発にかかる先行投資を積極的に実行しております。
今後も、研究開発にかかる先行投資を継続するとともに、事業開発を強化することで、共同開発契約やライセンス契約の締結による収益の計上に努めてまいりますが、研究開発の効果が十分に得られない場合や、事業開発が計画通りに進まない場合には、当社の業績及び財務状況等に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 人材及び組織について
①少数の事業推進者への依存について
代表取締役社長CEOである吉野巌は、経営戦略の策定、事業開発の推進において重要な役割を果たしております。また、代表取締役CSOである塚原保徳は、創業以前はマイクロ波化学分野の研究者として活動しており、同分野における豊富な知見を活かして、創業当初から当社研究開発の中心的存在であり、現在もその推進に重要な役割を担っております。
当社では、これらの取締役に過度に依存しない経営体制を築くために、研究開発、事業開発の遂行にあたって、幹部人材の採用や、各種会議体の設置によって意思決定やノウハウ蓄積を組織的に行うなど、経営組織の強化を進めております。しかしながら、仮に経営業務に関して、これら取締役への依存度が高い状態で推移し、かつ、これら取締役の事業への関与が何らかの理由により困難となった場合には、当社の事業戦略や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
②少人数組織であることについて
当社は、当事業年度末現在、従業員59名(臨時雇用者含む)と小規模であり、内部管理体制も相応の規模となっております。当社においては、業務上必要な人員の増強及び内部体制の充実を図っていく方針でありますが、必要な人材を獲得できない場合、人材流出が生じた場合及び代替要員の不在等の問題が生じた場合には、当社の事業戦略及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報管理について
当社のプラットフォーム技術及びパイプラインの開発並びにその他事業遂行等に関する重要な機密情報が流出するリスクを低減するために当社は、役職員、顧問、取引先等との間で、守秘義務等を定めた契約を締結するなど、厳重な情報管理に努めています。しかしながら、役職員、顧問、取引先等によりこれが遵守されなかった場合等には、重要な機密情報が漏洩する可能性があり、このような場合には当社の事業や財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 法令規制等について
当社は、法令の遵守を基本として事業を進めておりますが、製造物責任、消防法、電波法、廃棄物処理責任、環境・個人情報保護関連、税制関連等において、さまざまな法的規制を受けており、今後更にその規制が強化されることも考えられます。そのような場合、事業活動に対する制約の拡大やコストの増加も予想され、当社企業の事業活動に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 固定資産の減損について
当社は、マイクロ波プロセスの技術プラットフォームを構築すべく、有形固定資産及び無形固定資産等の固定資産を取得・保有しております。これらの資産の取得にあたっては事前に必要性や収益性を十分に検証した上で決定しておりますが、研究開発の効果が十分に得られないこと、事業開発が計画通りに進まないこと、または経営環境や事業の状況の著しい変化等により、収益性が低下し、十分なキャッシュ・フローを創出できないと判断される場合は、対象資産に対する減損損失の計上により、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 業績の季節的変動について
当社の主要顧客である化学企業においては、新年度直前の3月までに研究開発予算の獲得が行われるため、当社との共同開発は第1四半期または第2四半期に開始することが多くなります。その結果、当社の収益が計上される共同開発の完了時期が下半期に偏重する傾向にあります。また、大型案件の完了時期による影響があります。これに対して販売費及び一般管理費は、その大部分が固定費であることから、利益の割合も下期に偏重する傾向にあり、投資家の判断に影響を及ぼす可能性があります。
第17期事業年度(自 2023年4月1日 至 2024年3月31日)の各四半期会計期間の売上高
(単位:千円)
第1四半期 |
第2四半期 |
第3四半期 |
第4四半期 |
合計 |
102,655 |
136,107 |
1,032,114 |
592,443 |
1,863,320 |
(14) 検収時期の変動について
共同開発契約においては、開発テーマに関する報告書・サンプル、機器等の成果物を納品し対価を得ており、顧客による成果物の検収が完了した時点で収益を認識しております。
このような契約において、顧客と合意の下、開発状況に応じた開発期間の延長等を行うことにより、顧客による成果物の検収が当初予定よりも遅れた場合、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)自然災害、事故、テロ、戦争などについて
当社は大阪府吹田市において研究開発、大阪市住之江区において実証開発を実施しておりますが、地震、台風等の自然災害の影響を受ける可能性があります。同様に火災等の事故災害、テロ、戦争等が発生した場合、開発拠点の設備等に大きな被害を受け、開発が遅延、または中止を余儀なくされる可能性があります。また、損害を被った設備等の修復のために多額の費用が発生し、結果として、当社の事業戦略及び経営成績に悪影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、現時点では研究開発に先行投資する段階にあるため、当事業年度において配当可能な財務状況にありません。また、財務体質の強化及び事業拡大のために当面は内部留保の充実に努めて、経営体質の強化及び研究開発を目的とする設備投資等、将来の事業展開に備える方針であります。これらのことから、創業以来配当は実施しておらず、現時点において今後の配当実施の可能性及びその実施時期は未定です。しかしながら、株主の皆様への利益還元を重要な経営課題の一つと認識しており、今後の経営成績及び財務状況を勘案しつつ配当を検討する所存です。
剰余金の配当を行う場合は年1回の期末での配当を基本方針としており、配当の決定機関は株主総会となっております。
また、当社は毎年9月30日を基準日として、取締役会の決議によって、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。