2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態及び経営成績に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 これらの、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 当社グループは、監査等委員会を設置し、女性を含む社外取締役を3分の1以上とすることで、多様かつ独立した立場から経営の意思決定と執行を監視する体制を強化するとともに、代表取締役社長を委員長とする内部統制委員会において当社グループのリスク情報の集約、分析、周知等を行うほか、コンプライアンス委員会及び情報セキュリティ委員会を定期的に開催して、事業を取り巻く様々なリスクに対して適切な管理を行える体制を確立し、リスクの顕現化の未然防止を図っております。これらのガバナンス体制強化を基盤として、中長期的な企業価値最大化を目指しております。

 

(1) 経済環境の変化によるリスク

① 市場動向と競合について

 当社グループの主力事業分野には大きな市場占有率を持つ全国的な企業が存在せず、地域別に中小・中堅企業が多数存在し競合しております。同業者はそれぞれの得意分野・地域を持ち、価格、サービスを競っております。また、一般廃棄物や他の産業廃棄物の扱いを基盤とする業者、金属リサイクル業者あるいは特定廃棄物のリサイクル工場、焼却処理施設、最終処分場を核として当社グループの事業分野へ進出してくる業者との競合関係もあります。

 今後は、法的規制等を背景とした環境対応や廃棄物リサイクルへのニーズの高まりにより、より高度な廃棄物処理と再資源化が求められていることから、大規模な設備投資が出来る体力、ノウハウ、あるいは廃棄物の排出者からリサイクル品の利用先まで巻き込んだ総合的な廃棄物処理及び資源リサイクル事業スキームを構築することが重要になってくるものと予測しております。当社グループは、この社会的ニーズや他産業からの新規参入や業界再編成といった事業環境の変化に対し、一層の組織強化、合理化を進めると同時に、新たな技術開発を推進することで他社との差別化、競争力強化を図ってまいります。

 

② 建設廃棄物への依存について

 当社グループの廃棄物処理・再資源化事業で扱う廃棄物は、建設現場から排出される建設系の産業廃棄物が多く、取引先は総合建設業(ゼネコン)・ハウスメーカーに偏重しております。そのため、景気変動や不動産市況等により、建設業界や住宅建設業界の工事量に変動がある場合、あるいは需要減少等の要因によって同業者との価格競争に巻き込まれた場合には、当社グループが差別化戦略として取り組んでいる廃棄物の適正処理による環境負荷を低減する再資源化事業が評価されず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 原材料などの調達

 当社グループの資源リサイクル事業の原材料である鉄スクラップ、非鉄金属や産業廃棄物は、建築物などの解体工事や製造工場のライン機械などのリプレース、一般消費者による製品の購入・消費動向などの影響により、発生量が大幅に減少する可能性があります。当社グループは、原材料などに関して、その調達先を拡大し、複線化をすることで安定的な集荷を確保しつつ、再資源化率を高める取り組みを行うことなどで収益への影響を最小限に抑える対応をとりますが、原材料などの仕入の減少によって、売買数量及び価格や製品製造に影響を及ぼし、その結果、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 原材料、製・商品の相場変動リスク

 当社グループの資源リサイクル事業における原材料、製・商品である鉄スクラップや非鉄金属の価格は、鉄鉱石や銅鉱石といった資源価格や金属製品価格等の影響を受けます。当社グループの原材料、製品及び商品の仕入価格と販売価格は、基本的には相場に連動いたします。当社グループは相場変動に応じて仕入価格の変更を行い収益への影響を最小限に抑える対応をとりますが、相場の急激な変化の影響を受けて契約内容によっては利益の減少や損失が発生する場合があります。また、同様に原材料、製品及び商品在庫価値についても相場の影響を受ける可能性、相場の低迷の長期化により利ざやが縮小して当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

(2) 事業に対する法的規制・訴訟等に関するリスク

① 法的規制等について

 当社グループの事業活動の前提となる事項に係る主な法的規制は、次に記載のとおりであります。当社グループがこれらの規制に抵触することになった場合には、事業の停止命令や許可の取消し等の行政処分を受ける可能性があります。当社グループは、法的規制の改正などをむしろビジネスチャンスとして、積極的に廃棄物の処理及び再資源化事業に投資を行っておりますが、今後の法的規制の動向によっては当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(主要な法的規制)

・廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃掃法)

・特定家庭用機器再商品化法(家電リサイクル法)

・使用済自動車の再資源化等に関する法律(自動車リサイクル法)

・使用済小型電子機器等の再資源化の促進に関する法律(小型家電リサイクル法)

・古物営業法

・貨物自動車運送事業法

・道路交通法

・フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律(フロン排出抑制法)

・計量法

・都市計画法

・建築基準法

・その他環境保全やリサイクルに関する諸法令

 

② 事業の停止命令や許認可の取り消し・更新

 「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」には事業の許可の停止要件及び許可の取消し要件が定められています。不法投棄、委託契約やマニフェスト運用等の違反行為、処理基準(収集運搬・中間処理・最終処分など)の違反行為、申請者の欠格要件等に関しては行政処分が下される恐れがあります。当社グループは、現在において当該要件や基準に抵触するような事由は発生しておりませんが、万が一、当該要件や基準に抵触するようなことがあれば、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 当社グループの主要業務である産業廃棄物処理業は、各都道府県知事又は政令市長の許可が必要であり、事業継続には許可の更新が必要となります。当社グループのこれらに関する申請が基準等に適合していると認められない場合は、申請が不許可処分とされ、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 環境に関する規制強化や問題の発生

 当社グループは大気、水質、土壌などのほか、様々な環境関連法令への対応のため、産業廃棄物などの処理過程で生じる騒音、振動、粉塵、排水に対して、適切な設備を各工場に設置し、環境汚染を防止しています。しかしながら、不測の事態によりこれらが流出等した場合に、賠償責任が発生する可能性があります。また、将来、環境に関する規制がより一層厳しくなった場合には、設備の改修、入替、増設などのために多額の支出が生じ、これにより当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 事業活動に関わるリスク

① 廃棄物の最終処分場について

a. 最終処分場の環境管理について

 当社グループでの最終処分場におきましては、法令や行政指導に則って受入搬入時の検査、施設点検、周縁部の定期的な水質検査等を実施し、環境への影響を監視しております。現状においては、周辺環境へ悪影響を与えるような事由は発生しておりませんが、万一、大規模な自然災害等や不測の事故等により環境汚染等が発生すれば、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

b. 新規最終処分場の開発について

 最終処分場は埋立処分容量に一定の限界があるため、その利用については、当社グループでは事業計画に沿った利用計画を作成し、現在埋立中の最終処分場を安定的に稼働させる一方で、新たな最終処分場の開発計画を推進しております。これら新規開発計画について、予測できない何らかの事由で開発を中止せざるを得なくなった場合は、投資が回収できなくなる可能性があります。また、開発計画が予定どおり進まない場合には、コストの高い他社の最終処分場を利用することになり、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

② 爆発・火災事故のリスク

 資源リサイクル事業における主要な機械設備であるシュレッダーは、爆発や火災のリスクが比較的高い設備であり、爆破抑制装置や消火設備等の安全対策を実施しておりますが、不測の事態により大規模な爆発や火災が発生した場合には機械設備が長期間稼働不能となる可能性や賠償問題が生じる可能性があります。これらの結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 固定資産の減損リスク

 当社グループは、工場、機械設備等多くの有形固定資産を保有しております。事業環境等の変化により当該資産から得られる将来キャッシュ・フローが著しく減少した場合、減損損失を計上し、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 再生可能エネルギー事業における発電事業の安定稼働について

 当社グループの再生可能エネルギー事業におきましては、現状、東日本を中心に6ヶ所のバイオマス発電所を運営し、脱炭素社会への貢献を図っております。これら発電所は、地元森林組合等と長期的な集荷体制を構築し、近隣の生木等貯木場での含水率管理、木質チップ化施設での品質管理、発電所における日々のメンテナンス、定期修繕を計画的に行うことで安定稼働に努めております。しかしながら、国内における燃料材の確保や予期せぬ大規模な自然災害、操業に影響するような設備不具合等が発生し、発電所が長期間稼働不能となった場合には、稼働日数の減少に伴って、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ 情報セキュリティのリスク

 当社グループが利用している通信ネットワーク、データベース、パソコンやタブレット等の情報端末等には最新のセキュリティ対策を施し、「情報セキュリティ基本方針」等を制定し、グループ社員を対象としたセキュリティ研修等による意識徹底を図っておりますが、外部から想定を超えるコンピュータウイルス感染、重要データの抜取り、改ざん等の不測の事態が発生する可能性があります。

  これらの重大なセキュリティ事故が発生した場合、情報流出等による賠償責任、対策のための多大な支出、当社グループに対する信頼性の低下等が発生する可能性があります。この結果、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 人材確保・育成のリスク

 当社グループの将来の事業拡大のためには、優秀な人材の確保と育成に大きく依存することになります。しかしながら今後少子化による若年層の労働人口が減少することから人材確保における競争は高まってまいります。また採用した人材が中途で退職する可能性もあります。今後当社グループの労働条件や環境など職場の魅力を高める努力を行い、教育研修を含めて人材育成の環境を整備してまいりますが、人材の獲得・確保・育成に問題が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 有利子負債

 当社グループの総資産は有形・無形固定資産の占める割合が高く(65.4%)、これら設備投資等の必要資金は自己資金のほか社債及び借入金により調達しており、社債、借入金の当連結会計年度末の総額は、52,600百万円(対総資産比率37.0%)となっております。また当社グループが掲げる成長戦略によって資金需要は今後さらに増すものと予測されます。

 有利子負債のうち固定金利の借入金については、一定期間において金利変動の影響を受けないこととなりますが、今後、金利が上昇した場合には、資金調達コストの増加により当社グループの経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは常に多様な資金調達手段を検討しておりますが、全国的な景気後退によって融資が収縮されるなど金融市況が悪化した場合は、当社グループの資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 感染症・気候変動・自然災害・停電・事故などに関するリスク

① 感染症拡大の影響について

 今後も新たな感染症の発生等により、これまでのような対面営業活動への制約、行政庁への諸手続きの長期化等が想定される場合には当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

② 気候変動に関するリスク

 近年、気候変動や地球温暖化の原因とされる温室効果ガスの削減を目的とした取組が世界的に進められております。わが国においても、気候変動に起因すると見られる局所的な暴風雨などの異常気象によって、深刻な水害や土砂災害などが増加する傾向にあります。これらの災害により、当社グループの設備、車両などの事業活動におけるインフラストラクチャーが甚大な被害を受ける可能性があります。

 一方で、環境企業を標榜する当社グループは、これらの気候変動による事業リスクを重要視し、TCFDの提言に則った当社グループ事業におけるリスクと機会の分析を行い、統合報告書等における適切な情報開示を引き続き図ってまいります。

 

③ 大規模自然災害等への対応について

 当社グループは、主要な営業基盤、中間処理工場、最終処分場が関東圏に集中しており、異常気象等によるゲリラ豪雨、落雷、降雪等や、大規模地震等の自然災害に見舞われて被害を受けた場合には、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、企業価値の継続的向上を図るとともに、株主の皆様への利益還元を最重要視すべき経営課題の一つと認識しております。

 このような観点から、配当政策につきましては、今後の事業展開及び株主還元を勘案のうえ、安定的な配当を実施していく方針としております。また、総還元性向35%~40%を目指す方針としております。

 また、当社は、中間配当と期末配当の年2回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。

 以上の方針を踏まえ、2024年3月期の中間配当につきましては1株当たり20円、期末配当につきましては1株当たり20円といたしました。

 当社は、会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によってできる旨を定款に定めております。また、当社は、会社法第454条第5項の規定に基づき、取締役会の決議によって中間配当を行うことができる旨を定款で定めております。

 内部留保資金の使途につきましては、財務体質強化と将来の事業展開に投資してまいります。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2023年11月14日

1,043

20.00

取締役会決議

2024年 6月25日

1,043

20.00

定時株主総会決議