リスク
3 【事業等のリスク】
以下において、当社グループの事業展開その他に関してリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めてまいりますが、本株式に関する投資判断は、以下の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
(1)事業環境に関わるリスク
①医療行政の動向について
公的医療保険制度における診療報酬は、医師の診療行為、医薬品、特定の医療材料等についてそれぞれ定められており、定期的に改定がなされております。診療報酬改定により特定の医療材料公定価格(償還価格)が引き下げられた場合、当社の販売価格の引き下げに直結するため、当社グループの収益性が著しく低下する可能性があります。これら医療行政の動向によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、医療行政の動向に関する最新情報の把握に努めるとともに、適宜その分析を行い、経営戦略、事業計画に反映させるとともに、顧客の医業経営により一層寄与する提案営業活動の強化に努めております。
②M&A等について
当社グループは、多様化する医療業界に対応するため、当社グループ以外の企業との業務提携、合併および買収等(以下、「M&A等」)を企画・実施することがあります。このM&A等の実施後に、相手企業との経営方針のすり合わせや業務部門における各種システムおよび制度の統合等に想定以上の負担が生じた場合、予想どおりの相乗効果が得られない可能性があります。また、業績が想定どおり達成されず、将来の営業利益が予想を下回る可能性が発生した場合、のれんの減損の必要性が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、グループの企業価値向上に資する M&A等を実施すべく、事前に対象となる企業の経営状況を確認するほか、財務・法務面でのリスクの有無等、当該企業の実態や価値を十分見極めた上で実施を決定いたします。また、 M&A等の実施後は、グループ間での連携を図り、シナジーを高めることにより、更なる業容拡大に努めております。
③投資有価証券の評価損について
当社グループは、主に取引先との関係維持や営業活動の円滑な推進等のため、当該企業の株式を保有するほか、事業の展開上必要と思われる企業への出資を行っており、今後もその可能性があります。そのような有価証券への投資においては、株価の著しい下落あるいは投資先企業の著しい業績低迷等が生じた場合、投資有価証券評価損が発生し、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、将来予想される投資有価証券価額を念頭に、投資先企業の業績を適宜精査し投資するとともに、保有投資有価証券の保有可否について十分に検討・審議しております。
(2)事業運営に関わるリスク(オペレーション)
①医療機器販売業における直送取引について
当社グループの主たる事業である医療機器販売業においては、医療機器の卸売を行っております。当連結会計年度の医療機器販売業の売上高61,219百万円のうち、同業他社等に対する備品売上の割合はおよそ6.1%であります。それらの取引のうち、特に、仕入先から医療機関へ商品が直送される取引については、商品の発送等を当社が直接行わないため、売上に関する事実確認が相対的に難しい取引であることもあり、仕入先が発行した納品書等の外部証憑との突合、売上計上の妥当性を検討するため、目的物の実在性確認の手続きを明確化し、当該リスクの低減に努めております。
②医療機器製造・販売業における自社開発製品について
医療機器製造・販売業においては、株式会社イーピーメディックが自社開発した整形外科用インプラント(体内埋没型骨材料)、およびマイクロソニック株式会社が自社開発した超音波を用いた検査デバイスの製造販売事業を行っておりますが、販路の拡大が予定通り進捗しない場合や、製品の欠陥により製造物責任を負う状況が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、法令・規則を遵守し、医療機関の期待に応える製品とサービスを提供できるよう、当社グループではISO13485(医療機器の品質マネジメントシステム)の認証を取得し、常に品質の向上を図っております。さらに、製品の不良等により、万が一重大な損害を発生させた場合に備え、生産物賠償責任保険に加入し、リスクの低減を図っております。
③訴訟等の可能性について
当社グループが行う業務において、商品の品質、設置・調整の不備等があった場合、医療事故に繋がる可能性があります。また、販売に際しての仕様説明や納入後の取扱い説明の内容、仕入先の倒産等によるアフターサービス継続条件の変更など、取扱商品に関する様々な事項について取引先と見解の相違が発生する可能性があります。さらに、医療事故等が発生した場合、訴訟等に至ることが考えられ、その内容によっては当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、ISO9001(品質マネジメントシステム)およびISO13485(医療機器の品質マネジメントシステム)の認証を取得するなど、商品やサービスの品質管理体制を整備し、安定した品質を提供できるよう努めております。
④保有固定資産の減損損失について
当社グループは、事業活動上、土地・建物をはじめとする事業用固定資産を保有しておりますが、事業収益・キャッシュフローの悪化や地価の下落に伴う減損損失が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、減損会計を適用し、当該資産から得られる将来キャッシュフローによって資産の帳簿価額を回収できるかどうかを検証し、減損処理が必要な資産については適切に処理を行っております。
⑤情報セキュリティについて
情報システムは、当社グループにとって事業活動のあらゆる側面で重要な役割を担っております。一方、サイバー攻撃、不正アクセス、災害等によるシステム障害や情報漏洩が発生するリスクが高まっています。これら想定外の事態が発生した場合、当社グループの経営成績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、セキュリティシステムやバックアップシステム体制の強化、従業員に対する情報リテラシー教育等を行うことによって、リスク回避に努めております。
⑥取引先の信用リスク
当社グループでは、取引先に対し、売上債権等による信用供与を行っておりますが、重要な取引先の倒産、信用不安等により売掛債権が回収不能となった場合、当社グループの業績及び財政状態に大きな影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、取引先に対する与信管理体制の強化に努めるとともに、必要に応じ売掛債権の保全等の措置を講じております。
⑦人材確保について
当社グループが持続的に成長するためには、人材確保が最も重要な経営課題の一つと認識しております。日本国内で事業を展開する当社グループでは、日本における労働人口の減少や転職市場の活況など、人材確保が優位に展開できず、人的資本に大きな影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、人事戦略本部を設置し採用活動を積極的に展開し、在籍社員の定着率を高めるために健康経営やタレントマネジメント導入による個別のキャリアアップを図るといった対応を行っております。
(3)事業運営に関わるリスク(コンプライアンス)
①法的規制等について
医療機器は、患者の生命および健康に影響を及ぼす可能性があるため、品質の適正な保持、医療現場における正しい方法での使用が求められることから、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「医薬品医療機器等法」)において、製造から販売に至る各流通過程での遵守事項が定められております。
当社グループでは、高度管理医療機器(注1)を含むあらゆる医療機器を取り扱うため、同法に基づく高度管理医療機器等販売業・貸与業許可を取得しておりますが、販売責任者の資格要件、品質管理の実施要件、トレーサビリティ(販売履歴の記録)(注2)の実施等、同法が求める各種要件を充足できなくなった場合、当該許可を取り消される可能性があります。
この他、事業所によって、主に以下の許可を取得しておりますが、各法が定める要件を充足できなくなった場合、当該事業所は当該許可を取り消される可能性があります。
また、医療機器製造・販売業においては、医療機器製造販売業許可を取得しておりますが、品質および安全管理体制等の要件を充足できなくなった場合、当該許可を取り消される可能性があります。
当社グループでは、管理部門と対象事業所が密に連携を図り、適切に許認可の取得・維持を行っております。また、全従業員に対し定期的に教育研修を実施し、関連法令の遵守に努めております。
当社グループが有する主な許可の内容
(注1) 副作用、機能障害を生じた場合、人の生命及び健康に重大な影響を与える恐れがある医療機器は高度管理医療機器として定められております。
(注2) 商品の販売及び賃貸に関する譲受の履歴管理をトレーサビリティと称しております。医薬品医療機器等法施行規則では、高度管理医療機器等の販売等を行った場合、その品名、数量、製造番号、年月日、販売先名を記録し、3年間(特定保守管理医療機器は15年間)保存することが義務付けられております。また、高度管理医療機器等以外のトレーサビリティについては努力義務とされております。
②医療機器業公正競争規約について
当社グループは、医療機器の取引の公正で自由な競争秩序の確立を目的に設立された業界団体である「医療機器業公正取引協議会」に加盟しております。同協議会では、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づき、業界の自主規制ルールである「医療機器業公正競争規約」を定めており、医療機関等に対する景品類の提供は同規約により厳しく制限されております。これに違反する行為が行われた場合、同協議会より罰則を受けるほか、信用低下等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループでは、同規約を遵守した営業活動を行うべく、同協議会の認定を受けた規約インストラクターを配置し、従業員への啓発教育に努めております。また、適宜、同規約に関する情報提供を行うとともに、問合せ内容等について情報共有し、必要に応じて改善を図るなどの取り組みを行っております。
③個人情報保護法について
当社グループが取り扱う個人情報は、主に個人販売先ならびに従業員の個人情報でありますが、患者情報を取り扱う医療機関と取引を行っていることから、患者情報の取り扱いを受託する企業として、取引先に確認書等を提出するなど、個人情報保護法に則した適切な対応を行うよう努めております。
しかしながら、同法に違反する事案が発生した場合、損害賠償請求訴訟や取引先との取引停止等が発生することが考えられ、その内容によっては、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、プライバシーガバナンス指針を定め、個人情報や機密情報を取り扱う必要がある業務を特定したうえで、取り扱い担当者の限定、情報の取り扱い方法の制限、使用機器による制限等を厳格に行っております。
④特定の物流拠点への集中について
当社グループでは、中核子会社において佐賀県鳥栖市、長崎県諫早市および福岡県福岡市に物流拠点を設置し、回転率の高い医療用一般消耗品を一元管理するとともに、仕入業務の大部分をこれらの3拠点に集約しております。万一、災害によりこれらの物流拠点のいずれかの機能が停止した場合、物流・仕入管理システムの復旧や事業所への機能移転等が完了するまでの間、販売活動に支障をきたし、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、中核子会社のMAL事業部において物流機能の一元管理を行うことで、上記3拠点が物流機能を相互補完できる体制を整え、地震や火災等の災害発生時のリスク分散・軽減を図っております。
(4)自然環境、災害等に関わるリスク
①感染症等について
当社グループでは、新たな感染症等が流行し、従業員に感染者が確認された場合、当該従業員が所属する事業所あるいは物流拠点が一時的に稼働停止を余儀なくされるなど、医療機関等への商品供給体制に影響を及ぼす可能性があります。また、感染拡大の状況によっては、仕入先メーカーからの商品調達が遅延するなど、医療機関の需要にタイムリーにお応えすることが難しい状況となることも想定されます。
上記リスクに対して、当社グループでは、グループ企業間での情報共有や対策の検討等を行っております。従業員に対しては、出勤前の検温や手指消毒、マスク着用等の励行を指示するなど、感染症等の拡大防止に努めております。
②自然災害について
当社グループでは、大規模な地震や水害等の自然災害が発生した場合、取引先への医療機器や医療用一般消耗品の供給体制に影響を及ぼす可能性があります。また、保有する建物や備品、インフラ等に被害が生じたり、従業員の雇用や採用といった人的資本に影響が生じ、事業活動が困難になる可能性があります。
上記リスクに対しては、事業継続計画(BCP)を策定し、事業運営が滞ることがないよう対策に努めております。
③環境関連規制の影響について
当社グループを取り巻く環境においても、環境関連の規制が年々強化される傾向にあり、規制の内容によっては当社グループ事業の運営活動の制約、販売する医療機器、医療用一般消耗品の制限がある等、当社グループの経営成績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。
上記リスクに対しては、当社グループにて「ESG基本方針」を制定し、地球環境の保護や環境負荷の低減により、サステナブルな社会の実現に向け、カーボンニュートラル等の取り組み等を行っております。
配当政策
3 【配当政策】
当社の利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定かつ継続的な配当を実施することを基本方針とし、業績等を勘案して利益還元を図ってまいります。配当水準として基本的に連結配当性向30%を基準としております。
当期の配当につきましては、上記基本方針を踏まえ、期末配当として1株当たり70円を実施いたしました。当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としており、期末配当の決議機関は、株主総会であります。
次期(2025年5月期)の配当につきましては、上記基本方針および業績を勘案しながら検討する予定ですが、現時点におきましては、期末配当として1株当たり61円を計画しております。
内部留保金につきましては、今後の環境の変化に対応し企業価値を高めるため、業務品質の向上と独自性の高い事業展開に有効投資してまいります。
なお、当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。