2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    265名(単体) 7,924名(連結)
  • 平均年齢
    42.1歳(単体)
  • 平均勤続年数
    12.4年(単体)
  • 平均年収
    7,929,000円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2025年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

物流事業

7,659

[3,114]

不動産事業

17

[2]

報告セグメント計

7,676

[3,116]

全社(共通)

248

[36]

 合計

7,924

[3,152]

 (注)1 従業員数は就業人員であり、嘱託等の臨時従業員は、[ ]内に当連結会計年度の平均人員を外数で記載しております。

2 全社(共通)として記載されている従業員数は、連結財務諸表提出会社の管理部門に所属しているものであります。

 

(2) 提出会社の状況

 

 

 

 

2025年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(千円)

265

[38]

42.1

12.4

7,929

 

セグメントの名称

従業員数(人)

不動産事業

17

[2]

全社(共通)

248

[36]

合計

265

[38]

 (注)1 従業員数は就業人員であり、嘱託等の臨時従業員は、[ ]内に当事業年度の平均人員を外数で記載しております。

2 上記の他、休職出向者(771名)が在籍しております。

3 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります(単位未満切捨て)。

4 全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

(3) 労働組合の状況

 当社(提出会社)の労働組合は、三井倉庫ホールディングス労働組合と称し、2025年3月31日現在の所属組合員数は772名であります。同組合は1946年12月に三井倉庫従業員組合として発足、2014年10月に現名称に改称しております。

 会社と同組合は、労働協約に基づき労使協議会を設置し、従業員の労働条件に関する事項、人事に関する基本的事項等について協議決定し、労使協調して円満に運営しております。

 2025年3月31日現在、同組合との間における特記事項等はありません。

 なお、同組合は、全日本倉庫運輸労働組合同盟に加入しております。

 

(4) 管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社及び連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率

(%)

(注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.3.

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

提出会社

11.5

100.0

79.2

78.8

75.7

三井倉庫㈱

6.3

93.3

71.1

70.6

68.9

三井倉庫ビジネスパートナーズ㈱

11.5

100.0

68.9

78.9

82.6

三井倉庫エクスプレス㈱

12.0

100.0

76.2

75.7

93.2

三井倉庫ロジスティクス㈱

11.3

100.0

69.8

69.3

54.2

MSロジテクサービス㈱

4.1

100.0

69.0

81.4

79.8

三井倉庫サプライチェーンソリューション㈱

13.3

33.3

73.7

70.5

77.3

ロジスティックスオペレーションサービス㈱

21.1

75.0

85.2

80.4

91.2

丸協運輸㈱(大阪)

9.1

-

58.6

69.6

55.4

丸協運輸㈱(愛媛)

5.9

0.0

82.8

84.1

92.8

 (注)1 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。管理職の定義については、課長級(部下の有無に関わらない)の社員も含めており、当社基準で算出しています。

2 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第2号における育児休業等及び育児目的休暇の取得割合を算出したものであります。

3 各会社の労働者の男女の賃金の差異が生じている事由につきましては、給与・賞与や昇格に男女差を設けてはおりませんが、管理職層等に男性が多いことにより生じたものであります。

4 丸協運輸(大阪)の男性育児休業等取得率については、配偶者の出産・育休取得者共に0のため「-」としています。

 

② 連結グループ

管理職に占める女性労働者の割合(%)

男性労働者の育児休業取得率(%)

労働者の男女の賃金の差異(%)

全労働者

正規雇用労働者

パート・有期労働者

10.4

93.9

72.6

71.8

67.5

 (注)1 連結グループには、提出会社及び中核事業会社5社(三井倉庫㈱、三井倉庫エクスプレス㈱、三井倉庫ロジスティクス㈱、三井倉庫サプライチェーンソリューション㈱、三井倉庫トランスポート㈱)を対象範囲としております。

2 各指標の算出にあたっては、対象とした会社の労働者数を合算し、① 提出会社及び連結子会社と同様の方法により算出したものであります。

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

<考え方>

 当社グループは、「物流」という重要な社会インフラを支える企業集団として新たな価値を創出することで、持続可能な社会の実現、企業価値の向上を目指しております。

 

1. 事業活動を通じて、人権、安全衛生、ダイバーシティ、環境負荷低減等の社会課題解決に取り組みます。

2. 社会から信頼される企業グループとしてあり続けるために透明性の高い経営を行います。

3. すべてのステークホルダーとの対話を通じ、健全な関係の維持、発展に努め信頼関係を構築します。

 

(1)ガバナンス

 サステナビリティに関する推進体制としては、取締役会の監督のもと、サステナビリティ委員会を中心として、経営会議、コンプライアンス委員会の3つの会議体が設置されており、各関係組織が執行を担うことによって、実効性の高いガバナンス体制を構築しています。

 

 サステナビリティ委員会は、サステナビリティに関する戦略・方針の検討やリスクマネジメント、各取り組みの実行管理を担っており、委員会のもとには、グループ横断的な3つの常設部会(人事部会、安全部会、環境部会)を設置しています。当社グループは中長期的に優先して取り組むマテリアリティを特定しており、上記の各部会はそれぞれ「人的資本経営の推進」、「安全・高品質な物流事業の追求」、「気候変動対応・資源循環の推進」に関するKPI推進のため、戦略立案及び目標達成に向けた施策の検討・進捗管理等を行っています。加えて、サステナビリティ委員会の議論・決定内容をグループ全体に共有するサステナビリティ連絡会、サステナビリティにおけるリスク及び機会分析により新たに対応が必要なテーマの検討を行う新規検討会を設置しています。

 経営会議は、「持続可能で強靭な物流インフラの提供」、「社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出」、「DXの推進」にかかるKPIを営業施策やDX推進施策等に落とし込み、議論を行っております。

 コンプライアンス委員会は、「人権の尊重」に関連するKPIを推進しています。

 取締役会は各会議体からの報告を受け、監督の観点から意見や助言を行うことで、サステナビリティ推進体制を管理しています。

 

 

 なお、当社は国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(United Nations Global Compact)」に署名しており、人権・労働・環境・腐敗防止の4分野から成る「国連グローバル・コンパクト10原則」に連結子会社を含むグループ全体で賛同し、グループCEO自らのコミットメントのもと、その実現に向けた努力を継続してまいります。

 

(2)戦略

 当社グループはグループ理念に基づき、企業と社会のサステナビリティを両輪で追及する経営を中長期的に実践していくため、マテリアリティを特定しています。「企業価値・社会価値の創造」、「価値創造の基盤維持・強化」という大きく2つの枠組みで計8項目のテーマをマテリアリティとして整理しており、経営の基盤を強化し(6つのマテリアリティ)、価値を創造する(2つのマテリアリティ)ことで、当社グループ、そしてお客様や社会の持続的成長に繋げてまいります。なお、マテリアリティについては中期経営計画2022と連動し、経営との一体化を図りながら取り組みを推進しています。

[マテリアリティの特定プロセス]

 不確実かつ複雑化する時代においても、中長期的な経営を実践していくため、2024年にマテリアリティを改定しています。外部有識者の意見を踏まえ、バックキャスト・フォアキャスト双方の観点を取り入れたうえで、2050年にありたい未来像を描き、その想定した未来を実現するため2035年に向けて取り組むべき重要な課題として再特定しました。特定プロセス及び短・中・長期それぞれの時間軸を考慮して抽出したリスクと機会は下記のとおりです。

項目

リスク

機会

2

0

3

5

サプライチェーンにおけるQCD+サステナビリティ

従来型の保管・輸送に留まることによる競争力低下

• 専門ノウハウに基づく提案力と現場力の競争力向上
• 社会課題解決やお客様のイノベーション創出につながる、高付加価値な物流サービスのニーズ拡大
• 物流を起点とし、DX等を活用した創造的事業の共創、展開の可能性

顧客のコア業務追求に伴う物流派生業務範囲の拡大

消費者ニーズや社会課題に対応した新たな価値・事業創出

現在の社会課題・要請

安全・レジリエントな物流事業の追求

対応できないことによる顧客や従業員の離反

中短

率先した取り組みや実績による顧客からの信頼向上、自社の事業継続性向上

長中短

気候変動対策の推進

対応できないことによる競争劣位・評価低下

長中短

• 自社も含めたサプライチェーンのレジリエンス向上
• 環境配慮に対応した物流サービス提供力向上

長中短

人的資本経営の推進

従業員の採用への影響、モチベーション低下

長中

優秀な人材確保、強い組織力によるサービス品質の向上

長中

人権の尊重

法令や顧客要請への対応が不十分なことによるレピュテーション低下・損害発生・対応コスト増加

中短

自社も含めたサプライチェーンのレジリエンス向上

中短

サプライチェーン上のサステナビリティ推進への貢献

対応できないことによる競争劣位・評価低下

中短

サステナビリティ推進サービスのニーズ拡大

長中短

情報・サイバーセキュリティの強化

顧客対応の遅れやセキュリティ事故による
信用、競争力喪失

中短

新サービス開発や生産性向上による
競合他社に対する差別化

中短

ガバナンス

不十分な対応によるレピュテーション低下・損害発生・対応コスト増加、企業価値の毀損

中短

• 顧客やステークホルダーからの信頼維持・向上
• グループ経営の推進による企業価値向上

中短

※2035年の動向について”短期”は現状の経営に織り込んでいるため除外

※時間軸 短期:3〜5年程度、中期:10年程度、長期:30年超

 

[マテリアリティの取り組みに関する事業活動]

 価値創造の基盤を強化し、企業価値・社会価値の創造に資する事業活動として、当社グループ独自のサービス「SustainaLink」を展開しております。本サービスはお客様のサプライチェーンを取り巻くリスクを「環境」、「労働力」、「自然災害」の3つの視点から分析し、「知る」、「可視化する」、「改善する」の3ステップでサプライチェーンの最適化を支援するものです。持株会社に専門部署を設け、事業会社と連携を図りながらグループ一体で推進しています。

 

(3)リスク管理

 当社グループの事業活動におけるリスクの認識とその管理については「リスク管理規程」に定め、リスクの種類ごとに体制を整備し、リスク管理を実施しています。サステナビリティに関するリスクについては、サステナビリティ委員会主導のもと、リスクへの対応と最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。なお、当社グループの横断的なリスク評価および対応の推進については、持株会社に設置したリスク管理部が行うものとしています。

 

(4)指標及び目標

 マテリアリティに対し主要な取り組みを評価するための経営指標として、以下の通りマテリアリティKPIと目標を設定しています。

マテリアリティ

推進体制

KPI

対象範囲

社企

会業

価価

値値

の・

持続可能で強靭な

物流インフラの提供

経営会議

• 中期経営計画2022営業収益・営業利益目標

•国内外

 連結対象会社

社会課題解決につながる共創を通じたサービス・事業の創出

経営会議

• 中期経営計画2022営業収益・営業利益目標

• 新規サービス・事業の創出と拡大に向けた取り組み推進

•国内外

 連結対象会社

価値創造の基盤維持・強化

成長基盤

人的資本経営の推進

サステナビリティ

委員会

(人事部会)

• 人材ポートフォリオの可視化
• 1人あたり平均研修時間 20時間/年
• 1人あたり平均研修費用 7万円/年
• 女性管理職比率 15%
• 男性育児休業取得率 100%

• グループ各社間交流の取り組み推進
• 理念浸透度スコア 71以上
• エンゲージメントスコア 71以上
• 有給休暇取得率 70%
※いずれも達成期限は2031年3月期

• MSH※1

• 中核事業会社5社※2

DXの推進

経営会議

• DX対応システム数
• RPA、ロボティクス導入拠点数
• 現場起点のDXプロジェクト数
• DX人材教育受講者数

 

• MSH※1

• 中核事業会社5社※2

安全・高品質な

物流事業の追求

サステナビリティ

委員会

(安全部会)

• 労働災害発生度数率 前年度水準改善
• 品質事故PPM改善への取り組み推進

 

• MSH※1

• 中核事業会社5社※2

社会基盤

気候変動対応・

資源循環の推進

サステナビリティ

委員会

(環境部会)

• CO2排出量:Scope1+2(2014年3月期比)
 2026年3月期 29%削減
 2031年3月期 50%削減
 2051年3月期 ネットゼロ

• CO2排出量:Scope3
 自社及びお客様のサプライチェーン全体での
 排出量削減への取り組み推進
• 廃棄物再資源化率
 前年度比1ポイント改善

• MSH※1

• 中核事業会社5社※2

•丸協運輸

(大阪・愛媛)

人権の尊重

コンプライアンス

委員会

• 当社グループにおける人権DD実施率 100%

• 教育研修実施率の向上

 

•国内外

 連結対象会社

事業基盤

ガバナンスの高度化

-

-

 

-

 

 

 

 

 

 

 

※1 MSH:三井倉庫ホールディングス(株)

※2 中核事業会社5社:三井倉庫(株)、三井倉庫エクスプレス(株)、三井倉庫ロジスティクス(株)、三井倉庫サプライチェーンソリューション(株)、三井倉庫トランスポート(株)

 

 なお、各KPIの経年実績につきましては、当社コーポレートサイトのサステナビリティページや、統合報告書、サステナビリティデータブック等にて公開しております。

 

<個別テーマ>

(1) 気候変動対応

 当社グループは気候変動を重要な経営課題の一つと認識し、当社グループ自身の温室効果ガス(GHG)排出量削減への取り組みと同時に、お客様をはじめとするバリューチェーン全体での脱炭素化へ貢献することが、グループの企業価値向上につながるという考えのもと、「気候変動対応・資源循環の推進」をマテリアリティのひとつとして特定しております。

 また、当社は2021年9月にTCFD提言への賛同を表明し、従来の取り組みに加え、気候関連リスクや機会の特定、各体制を含めた情報開示の強化・拡充に取り組んでおります。

 

①ガバナンス

 サステナビリティ委員会では、取締役会の監督のもと気候変動に関連するリスク・機会の特定や分析・評価を主導し、気候変動が当社グループの事業ヘ与える影響の把握や、その対応策に関する議論を行っております。その他気候変動・環境に関連する取り組みや詳細な議論については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である環境部会において具体的な取り組みや管理指標の検討、実行管理を行い、責任者である管掌役員がサステナビリティ委員会に進捗状況の報告、提言を行う体制となっております。

 

②戦略

 当社グループの事業に気候変動が与える影響について、複数の気候シナリオ(「1.5℃シナリオ」、「4℃シナリオ」)を用い、シナリオ分析を実施しております。バリューチェーン上で発生する気候変動の影響に関する想定をふまえ、リスク・機会の特定や分析・評価、対応策の検討をすることで、短期・中長期的な事業戦略に反映し、施策の推進をより効果的なものにしてまいります。

 

気候関連のリスク・機会と財務影響

●:リスク 〇機会

移行リスク・機会

財務影響

発現時期

対応策

1.5℃

4℃

政策・

法規制

CO2排出量削減に関する税等規制
・ カーボンプライシングの導入・強化による費用負担増加
  - 輸送・物流施設の燃料・電気使用等(委託先含む)

小-中

-

中期

・ 輸送の効率化

・ 車両のZEV化

・ 省エネ設備、施策の推進

・ 使用電力を抑えるオペレーションの推進

・ 再生可能エネルギーの導入促進

・ 委託先企業の選定

冷媒規制
・ 代替フロン等冷媒規制の強化による設備投資額増加
  - 物流施設の冷凍設備対応

中期

その他規制
省エネ規制等の導入・強化による費用負担増加
  - EV導入やガソリン車両販売禁止等、車両に関する規制
  - 建築物への断熱等省エネ基準
  - 再エネ調達・導入比率目標に関する規制 等

-

-

長期

市場・評判

委託先運送会社のエネルギー転換
・ 低炭素燃料や脱炭素燃料への転換等の進展による運送委託費用増加
  - SAF等の環境負荷の少ない燃料の導入

短中期


顧客動向(条件)
・ 環境配慮対応の拡大
  - CO2排出量把握・削減等が契約・発注条件

短期

・ 既存顧客・潜在顧客の気候変動に係るニーズを捉え、SustainaLinkをはじめとした社会課題起点の物流ソリューションサービスの開発・推進


顧客動向(取り扱い商品)
・ 顧客取り扱い商品の特性変化
  - 生産量・産地、部品構成等の変化
  - 新たなサステナブル商材の登場

中長期

 

 

 

 

 

 

 

物理リスク

財務影響

発現時期

対応策

1.5℃

4℃

急性

風水害激甚化(直接影響)
・ 激甚災害の頻発化・大規模化による保有資産への損害発生、保険料・修繕費用増加

中期

・風水害激甚化等の気候変動影響をリスクマネジメント項目に組み込み

・BCP、BCM対応の継続実施

・安全な労働環境の実現

評判(間接影響)
・ 風水害の影響把握やBCP対応が不十分であることによる信頼喪失

短中期

慢性

海面上昇
・ 浸水被害の増加による保有資産への損害発生、保険料・修繕費用増加

長期

気温上昇
・ 熱中症罹患リスクの上昇
  - 従業員の健康被害増加
  - 就業可能時間の減少
・ 平均気温上昇による空調費用増加

中期

[凡例]

大・中・小: 財務影響試算の結果をもとに定量及び定性評価

-    : 潜在リスクはあるが、現在の情報では2030年時点で顕在化可能性が高くないもの

短期   : 3年程度

中期   : 2030年

長期   : 2050年以降

 

[1.5℃シナリオ]

2050年カーボンニュートラル実現のための政策・規制が強化され、炭素税等が導入される。また、消費者が脱炭素の動きを企業に対してより求めるようになり、B to B企業においてもCO2排出量削減等の気候変動への対応がより一層迫られる。

[4℃シナリオ]

炭素税等の導入はされず、自然災害が激甚化することで、より防災・BCPの対応が重視される。消費者の動向は現状と大きく変化せず、企業における気候変動対応についても現状の水準にとどまる。

 

 それぞれのシナリオにおいてバリューチェーン上で発生する気候変動の影響を「消費者」、「顧客」、「当社グループ」、当社グループのサプライヤーである「委託先企業」のそれぞれについて検討し、リスク・機会の発現時期と定量・定性的な影響の試算を実施いたしました。

 今回行った定量的な試算において、当社グループにとって最も影響が大きいのは1.5℃シナリオにおけるカーボンプライシング(炭素税の導入)ですが、総じて、気候変動による当社グループへの財務影響は小さく、当社グループは気候変動に対しレジリエントであると考えます。

 なお、カーボンプライシング(炭素税の導入)の影響が顕在化することへの対応策としては、自社での排出量削減施策に加え、顧客や委託先企業と協働した排出量削減施策が有効であるため、今後はこれらの施策を推進してまいります。また、定量分析項目だけでなく、定性分析項目についても情報のアップデート・モニタリングを実施し、事業への影響を確認してまいります。

 

③リスク管理

 気候変動に関連するリスクや機会については、サステナビリティ委員会の主導のもと、リスクへの対応とその最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。KPIの管理やデータの分析については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である環境部会で実施しております。

 

④指標と目標

 マテリアリティである「気候変動対応・資源循環の推進」を実現するために、当社グループでは気候変動を含む環境分野のKPIを定め、進捗を管理しています。温室効果ガス(GHG)排出量に関する指標と目標については、下記のとおりです。

対象

時期

目標

Scope 1 + 2

2026年3月期

CO2排出量 29%削減(2014年3月期比)

2031年3月期

CO2排出量 50%削減(2014年3月期比)

2051年3月期

ネットゼロ

Scope 3

-

自社及びお客様のサプライチェーン全体でのCO2排出量削減への取り組み推進

 

 なお、温室効果ガス(GHG)排出量データに関する経年の実績や、他の環境に関連するKPIにつきましては、当社コーポレートサイトのサステナビリティページや、統合報告書、サステナビリティデータブック等にて公開しております。また、2025年3月期の実績につきましては2025年9月頃の公開を予定しております。

 

(2) 人的資本

<考え方>

 当社グループは、自らも進化しながら成長し、心豊かで持続可能な社会の実現を支える存在でありたいと考え ています。そのための原動力となるのが人材であり、価値創造の源泉です。グループの多様な従業員が、それぞれ自らの強みと役割を認識し、組織や企業の成長を支えています。従業員一人ひとりが、誇りと責任を持って生き生きと働き続けられる環境づくり、企業風土を醸成し、会社とともに成長し続ける環境を構築していきます。

 

<求める人材像>

 「未来を描き、動き動かし続ける人」

 私たちが考える「未来」とは、お客様の未来であり、当社グループの未来であり、私たちが生きている世界の未来までをイメージしています。「動き動かし続ける人」という言葉には、自ら主体的に動くことはもちろんのこと、他を巻き込んで動かし続けるという強い想いを込めています。仲間を動かし、お客様を動かし、物流を動かし、社会を動かす。そして、お客様の期待を超え、お客様の心までを動かす存在でありたいと考えています。

 

 

①ガバナンス

 人事領域における課題やリスク対応について、サステナビリティ委員会主導のもと、人的リスクが当社グループの事業ヘ与える影響の把握や、その対応策に関する議論を行っております。その他人的資本に関連する取り組みや、詳細な議論についてはサステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である人事部会において具体的な取り組みや管理指標の検討、実行管理を行い、責任者である人事管掌役員がサステナビリティ委員会に進捗状況の報告、提言を行う体制となっております。

 

②戦略

 当社グループのマテリアリティの1つに「人的資本経営の推進」を挙げたことに伴い、主な取り組みとして4つのテーマを設定しました。

 1つ目は「グループ総合力を高める人材ポートフォリオマネジメントの強化」です。経営戦略の実現に向けて中長期的にどのような人材が必要なのかを定義し、現状とのギャップを見極め、具体的かつ有効な人材施策につなげていくことが不可欠だと考えています。2026年3月期は人材情報を可視化、一元化するために提出会社において、タレントマネジメントシステムを導入し、将来的には中核事業会社5社を含めたグループ共通の人材データ基盤を構築する計画です。

 2つ目は「個の進化」です。従業員一人ひとりが成長し、進化することが当社グループの持続的成長につながるという考えのもと、人材の育成及び成長支援を積極的に行っています。施策の1つとして全従業員向けに自律的な学習を促すオンライン学習プラットフォームを2026年3月期より提出会社および中核事業会社5社にて導入いたします。

 また、次世代の経営幹部育成を目的として、「三井倉庫カレッジ」を立ち上げるなど管理職層向けの研修や階層別、専門スキル別のさまざまな施策を実行しています。

 3つ目が「共創力の強化」です。共創力の強化は、年齢や性別、キャリアに関わらず、強みを活かし、異な

る意見や考えをぶつけ合うことで新しい価値を創出し、社会やお客様に貢献する強い組織を創りあげることが

目的です。ただし、多様な価値観をもつ人材が活躍するためには共通の目的、指針が必要であり、これこそが当社グループの理念 であると考えています。これまでグループ全体で理念研修を行い、職場の従業員が将来の三井倉庫グループのあり方を考えながら理念について話し合う場を設けて参りましたが、研修だけで浸透するものではありませんので継続的に施策を行っています。以前より推進しているダイバーシティ&インクルージョンの取り組みにつきましては、2025年3月期より女性の育成を企図したメンター制度(役員が女性管理職をメンターとして支援)を実施しており、2026年3月期はスポンサーシップ制度(上長が管理職候補の女性社員を支援)の実施等、引き続き、女性活躍を積極的に進めていきます。

 4つ目が「進化と共創の環境づくり」です。進化と共創を推進するためには、これらを支える強固な基盤が

必要です。その基盤を把握するためのツールが従業員エンゲージメントサーベイだと考えています。当社グループは従業員エンゲージメントサーベイを定期的に実施することで、従業員の会社の方針への理解や業務に対する熱意、会社への愛着度等を確認し、施策へと活かしています。さらに、経営幹部と従業員が直接対話する場としてタウンホールミーティングも2025年3月期より実施しており、従業員の率直な意見を会社施策に反映させることで従業員エンゲージメントの改善に寄与すると考えています。

 また、これら全ての施策は、従業員が心身ともに健康であって初めて効果が発揮されるものと考え、積極的に健康経営の推進に注力しており、2024年3月期は提出会社として健康経営優良法人の認定を受け、2025年3月期も継続することができました。

 

③リスク管理

 人的資本に関連するリスクや機会については、サステナビリティ委員会主導のもと、リスクへの対応と最小化を目指し、リスク・機会の特定や分析・評価、グループ内での情報共有や、関係部署への対応指示、取締役会への報告が行われます。KPIの管理やデータの分析については、サステナビリティ委員会のグループ横断的な下部組織である「人事部会」で実施しております。

 

④指標と目標

主要テーマ

KPI※1

24年3月期

実績

25年3月期

実績

目標

達成時期

(1)グループ総合力を高める人材ポートフォリオマネジメントの強化

人材ポートフォリオの

可視化

可視化

2031年3月期

(2)個の進化

1人平均研修時間

10.9時間

13.9時間

20時間

2031年3月期

1人平均研修費用

4.4万円

6.0万円 ※2

7万円

2031年3月期

(3)共創力の強化

女性管理職比率

10.1%

10.4% ※3

15%

2031年3月期

男性育児休業取得率

78.0%

93.9%

100%

2031年3月期

グループ各社間交流の

取り組み推進

取り組み

推進

2031年3月期

理念浸透度スコア

68

69  ※4

71以上

2031年3月期

(4)進化と共創の環境づくり

従業員エンゲージメントスコア

66

68 ※4

71以上

2031年3月期

有給休暇取得率

66.8%

70.2%

70%

2031年3月期

 

※1 提出会社及び中核事業会社5社(三井倉庫㈱、三井倉庫エクスプレス㈱、三井倉庫ロジスティクス㈱、三井倉庫サプライチェーンソリューション㈱、三井倉庫トランスポート㈱)を対象範囲としております。

※2 2025年3月期の年間の外部委託研修費から算出しております。

※3 2025年3月31日時点によるものであります。

※4 2025年3月に調査・集計を行ったものによるものです。エンゲージメント測定ツールを利用し、中央値(スコア56)をベースにスコアの改善を目指しております。

 

(3)人権

<考え方>

 当社グループは、社会におけるすべての人々の尊厳が守られ、権利が尊重されることが、すべての事業活動の基盤となる重要な要素と位置づけています。取り組みにあたっては、「国際人権章典」をはじめとする人権に関する国際規約を支持・尊重し、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」に準拠した「三井倉庫グループ人権方針」を策定し、それに基づき推進しております。

 

<推進体制>

 当社グループは、取締役会の監督のもと、リスク管理部が主管部署となり、人権デュー・ディリジェンスをはじめとして人権尊重に関する具体的な取り組みや管理指標の検討および進捗管理を行っています。取締役会はこうした人権尊重に関する取り組みについてコンプライアンス委員会を通じて報告を受け、監督を行っています。

 

<具体的な取り組み>

①人権課題の特定

 当社グループの事業活動によりステークホルダーの人権に及ぼす影響度を評価し、外部専門家と協議の上、重要な人権課題として「強制労働・児童労働の禁止」「あらゆる差別の禁止」「ハラスメントの禁止」「安全な労働環境の提供」「適正な労働時間管理」及び「外国人労働者の権利保障」を特定しております。

②人権デュー・ディリジェンスの実施

 特定した人権課題を中心にリスクアセスメントを進めています。リスクアセスメントにあたっては2023年3月期以降毎年国内・海外の連結子会社を対象に人権デュー・ディリジェンスを行っており、人権に関する対応に重大な課題を抱えている会社や現時点で直ちにステークホルダーの救済が必要となる事実がないかを確認しております。また、2025年からは当社グループ内に限らず、サプライチェーン上の企業に対しても人権問題を含むESGに関するデュー・ディリジェンスを開始致しました。

③是正・救済・相談窓口(グリーバンス・システム)

 人権にかかわる是正・救済については、外部の第三者機関に窓口を設置しております。現在は当社グループ従業員のみが対象となっておりますが、お客様・お取引き先企業を含むサプライチェーンにおけるすべての皆様にまで対象範囲を拡大予定です。人権に対する負の影響を引き起こしたこと、負の影響を助長したこと、その他負の影響に関与したことが明らかになった場合には、適切な手段を用いてその是正、救済に取り組んで参ります。

④教育・研修

 人権課題の発生を未然に回避・予防し、その影響を緩和させることを目的に、人権に関する教育・研修をリスク管理部が主導するコンプライアンス研修等を通じて行っております。