リスク
3 【事業等のリスク】
本書に記載した当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資家の投資判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社グループでは、リスクマネジメント・コンプライアンス委員会を設置し、定期的に各リスクの発生可能性と経営に対する影響度を勘案し、リスク低減のための施策を通じて、リスクの発生の回避とともに、発生した場合の対応に努めております。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において、当社グループが判断したものであり、将来において発生する可能性のある当社株式への投資に関するリスク全てを網羅するものではありません。
(1) 情報漏洩(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
コーチングにおいては、コーチとクライアント企業との信頼関係が対話の価値を高める土台となります。当社のサービスは無形かつ人間の思考という目に見えないものに作用するものです。したがって、クライアント企業からの信頼獲得は当社グループの企業価値創造の源泉となります。当社グループは、事業の特性上、クライアント企業の機密情報に触れる機会が多く、また、多数の個人情報を取得しており、それらが外部に漏洩した場合、当社事業の根幹に重大な影響を与えます。したがって、その取扱いには細心の注意を払っており、従業員に対する情報セキュリティ教育を継続的に行う等、情報管理の重要性を継続して啓発するとともに、「情報システム基本規程」を定め、情報システムの安全性の確保にも努めております。また、情報セキュリティに係るIT投資を継続的に実施しております。しかしながら、今後、ランサムウェア等によるサイバー攻撃が常態化するなど、より強力な不正アクセス等の外部からの攻撃やシステムトラブルの発生、当社グループ従業員の故意又は過失による情報の漏洩、喪失、不正利用等が発生した場合、補償費用の発生や損害賠償請求訴訟の提起等に伴う費用の増加のみならず、取引先からの契約打ち切り、新規受注獲得が困難になるなど、レピュテーションや当社のブランド価値が棄損することとなり、当社グループの事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) クライアント企業の重要情報を使用した従業員によるインサイダー取引
(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社グループは、コーチングセッションやリサーチの過程において、クライアント企業の未公表の重要な事実に接する可能性があります。そのため自社の重要情報の取り扱いと同様に、クライアント企業の重要情報についてもインサイダー取引防止規程を定め、従業員に対する関連教育を継続的に行う等、インサイダー取引防止に努めております。しかしながら今後、当社グループ従業員によるインサイダー取引が発生した場合、当社グループの事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 経営陣等特定の人材への依存(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:大)
当社の代表取締役である鈴木義幸をはじめとする当社経営陣は、当社グループの経営の執行だけでなく、クライアント企業に対しエグゼクティブ・コーチングを行っており、コーチングに関するノウハウや、各界のエグゼクティブ層との強い人脈と関連業界動向に関する情報収集等に関して豊富な知識と経験を有しております。当社では特定の人材に過度に依存しないように、経営体制の整備、権限移譲及び次世代を担う人材の育成強化を進めておりますが、何らかの理由により現在の経営陣が業務執行できなくなった場合、一時的な受注高・売上高の減少や営業力の低下が生じ、当社の事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 世界的な経済危機等の発生(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社の事業モデルは、景気動向や特定の財の価格変動の影響を受けづらく、通常の景気循環においては、好不況に関わらず、組織変革のニーズは高く、当社のサービスの需要は一定程度見込まれると考えております。しかしながら現在、国際情勢の不透明感は増しており、パンデミック、紛争の発生、世界的なインフレーション・スタグフレーション、金融危機、原材料や特定の戦略物資の枯渇・価格の高騰、地政学リスクの高まり等、世界的な経済危機等の発生可能性は高まっているものと認識しております。当社は主に、日本企業との取引が多いため、クライアント企業がこうした経済危機の影響を強く受けた場合、当社グループのサービスの受注動向に落ち込みが生じ、当社の業績・財務状況に大きな影響を与える可能性があります。なお、2020年2月より世界的に流行した新型コロナウイルス感染症の影響による急激な外部環境の変化に伴い、当社サービスの需要も一時的に減退し、業績の悪化が見られました。具体的には、コーチ・エィ アカデミアについては、在宅ワーク化に伴う自己学習需要の増加から売上高は増加したものの、EC、DCDについては企業の予算縮小等の影響により売上高は一時的に減少いたしました。しかしながら、オンラインでのサービス提供の強化、対面と同等の品質を担保する取り組みを強化することで、地理的な制約の影響を受けず、コーチングをクライアント企業に提供できる体制を構築し、業績影響への低減を図っております。
(5) 人的資本の確保及び定着(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループにおいては、事業の特性上、コーチングスキルを習得し、クライアント企業との良好な関係性を構築できる人材の採用・育成が人事戦略の根幹となります。加えて当社のパーパスに共感するメンバーを惹きつける組織及び企業文化を備えていることが業績向上に直結します。人材不足が加速していく日本において、当社グループがかかる人材にとって魅力のある職場であり続けられなかった場合、人材採用が計画通りに進捗しない、競合他社への流出や独立等により、収益の確保が一時的に難しくなる可能性があります。また、人材育成や次世代経営陣の養成等が不十分な場合、競争力の低下を招くことになり、当社の事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 売上高構成(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの提供するシステミック・コーチング™は、大企業の組織改革などで採用される事例が増加しています。大企業での採用が決定すると、当社のコーチがチームとなってコーチングセッションやアセスメント等を実施します。また当社は、売上高に占める上位クライアント企業比率が高い傾向があります。上位クライアント企業の組織変革が終了する、経営陣の世代交代に伴い当社サービスを継続しない等の理由により、当社との取引が縮小ないしは終了する可能性を見越したうえで営業戦略を展開しておりますが、受注金額規模が大きい上位クライアント企業のリピートが取りやめになった場合やコーチングセッションに遅延が生じる場合、当社グループの事業・業績に影響を与える場合があります。なお、当社の受注高は、クライアント企業の予算編成時期に集中する傾向があります。
(7) 海外での事業展開(発生可能性:中、発生時期:短期、影響度:中)
当社グループは現在、アジア地域及び米国を中心に海外に事業展開をしております。過去には、現地企業のトップ又は現地企業の親会社である日本企業のトップとの強固なリレーションが築けなかったことを主な要因として、当社海外拠点の業績が計画通りに立ち上がらず、債務超過、拠点閉鎖に至ったことがあります。今後も、積極的な海外展開を進めて行く方針でありますが、計画通りに業績が立ち上がらない場合のほか、海外事業を推進する人材の確保ができない、為替の急激且つ大幅な変動、事業展開先の国における政治体制の混乱、経済情勢の悪化、商慣習の相違によるトラブル、法規制等の商取引に関するルールの変更等が発生した場合、売上高や利益の減少を招く等、当社グループの事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 競合及び新規参入ないしは新発想のサービスの出現
(発生可能性:中、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社のシステミック・コーチング™は当社独自の哲学を持ったユニークなプロダクトとなっております。他のコーチングサービス提供事業者や企業研修支援事業者、ビジネスコンサルテーション事業者等の近接するサービスはありますが、現時点においては、大企業向けにコーチングサービスを提供できる企業は限定的です。将来の競争環境については、エグゼクティブ・コーチング領域で低価格戦略を打ち出すプレーヤーの出現や代替するテクノロジーが開発される可能性がありますが、当社が提供するシステミック・コーチング™のように、組織全体の変革を目的としたサービスを提供する競合の出現可能性は低く、業績への影響も比較的軽微と認識しています。しかしながら、現在では想定できない新発想の組織開発が可能なサービスが開発・販売され、普及が進んだ場合、当社グループの事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 災害(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:中)
当社グループの主なサービスはコーチによる「対話」であるため、災害発生時に損害を受ける固定資産は極めて限定的ですが、当社グループの従業員が勤務する事業所や、当社グループの事業を支えるITインフラが被害を受けた場合、また当社グループに勤務する者が多数被災するなどの人的損傷が発生した場合、業務遂行が遅延する、もしくは不可能になる可能性があります。また、当社グループのクライアント企業の中には、メーカー等大規模災害により被害を受ける可能性の高い事業者も多数含まれますので、大規模な地震や台風、津波等の自然災害が発生した場合、受注の減少を招き、当社の事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 知的財産権(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループが提供しているシステミック・コーチング™は、当社が独自で開発した組織変革を起こすプロダクトであり、エグゼクティブ・コーチング等の1対1のコーチングセッションを重要な要素とするものでありますが、コーチングセッション自体は、特許権等によって保護される技術ではありません。また、当社グループはコンプライアンスを重視しておりますが、万が一、第三者の知的財産権を侵害するような事態となった場合、当該第三者に対して損害賠償金等の支払いを余儀なくされ、更に、訴訟等に発展することにより、当社グループの評判が悪化し、事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(11) 訴訟等(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社グループは現在、訴訟やその他の係争は抱えておりません。紛争の未然防止に努めておりますが、取引先とのトラブル等が発生し、訴訟等に発展した場合、損害賠償金の支払いを余儀なくされたり、当社に非がない場合でも応訴に多額の費用を要する等、当社の事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(12) 法規制(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
現在のところ、日本においてコーチング事業そのものを規制する法令は存在しておりませんが、当社の個別の企業活動においては、民法、会社法、消費者契約法、個人情報保護法等の法令が適用されます。当社がこれらの法令に違反した場合、当社は、民事上の損害賠償責任を負担し、刑事罰又は行政上の制裁の対象となる可能性があります。また、これらの法令に改正があった場合、あるいは、日本又は当社が事業を展開する海外において、コーチング事業そのものに影響を及ぼす法令が制定された場合、当社グループはかかる法令を遵守するために追加的な費用を負担する等、当社の事業・業績に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 大株主との関係について(発生可能性:低、発生時期:特定時期なし、影響度:小)
当社の取締役である伊藤守及び同人の資産管理会社である株式会社伊藤ホールディングスの保有株式は、2023年12月末日現在で議決権の53.9%となっており、引き続き安定株主として一定割合を保有する予定ですが、議決権行使に当たっては、株主共同の利益を追求するとともに、少数株主の利益にも配慮する方針を有しております。しかしながら、将来的に何らかの事情により当社株式が売却された場合には、当社株式の市場価格及び流通状況等に影響を及ぼす可能性があります。
伊藤守は、取締役に就任しておりますが、代表権や業務執行権限を有しておらず、株主共同の利益の観点から取締役の業務執行状況を監督し、創業者として商品開発等について助言を行う役割を担うこととしております。
また、伊藤守は株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンの株式の100%を実質的に保有しており、同社は当社の関連当事者に該当します。当社は出版事業を営む株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンに対してコーチングサービスを提供するとともに、コーチング関連書籍の出版及び購入取引を行っておりますが、取引に際しては関連当事者取引管理規程に従って、取締役会において、取引の必要性と取引条件の妥当性を審議し、事前承認を得ることとしております。
なお、株式会社ディスカヴァー・トゥエンティワンと当社グループとの間に競合関係はなく、当社グループの業務遂行において、同社の事前承認又は事前報告を必要とする事項もありません。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主への利益還元を経営の重要な施策の一つとして位置付けており、必要な内部留保を確保しつつ、安定的な利益還元を継続的に行うことを基本方針としております。内部留保資金については、将来における企業成長と経営環境の変化に対応するための資源として利用していく予定であります。
当社は、基準日を12月31日とする年1回の期末配当を基本方針とし、中間配当も実施することができる旨定款に定めております。また、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項について、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる旨を定款で定めております。
当事業年度の剰余金の配当については、中期での投資計画、景気動向、 キャッシュ・フローの状況などを総合的に勘案した結果、1株当たり20.00円とし、2024年3月28日の定時株主総会で決議されました。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。