2023年10月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性がある事項には、以下のようなものがあります。また、必ずしもそのようなリスク要因に該当しない事項につきましても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項につきましては、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社グループは、これらのリスク発生の可能性を十分に認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針ではありますが、当社株式に関する投資判断は、本項及び本書中の本項以外の記載事項を慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性のあるすべてのリスクを網羅するものではありません。

 

(1) 事業環境等に関するリスク 

① 業界動向について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:大)

当社グループが事業を展開するeスポーツ市場は、コロナ禍においてもオンラインによるイベント開催の定着により堅調に成長してまいりました。今後は、オンラインとオフラインそれぞれの強みを活かしたハイブリッドな開催形式が広がり、イベント事業領域については引き続き伸長していくものと考えております。また、2023年はオリンピックeスポーツウィークの開催や第19回アジア競技大会でメダル競技として実施されるなど、オリンピックでの採用も検討されており、世界的にみてeスポーツの社会的価値が向上しております。

このような背景をもとに今後も継続して市場は成長していくと考えておりますが、現状eスポーツ市場の収益の多くはスポンサー料や広告費が占めているため、不況により事業会社の業績が悪化するなどした場合には、eスポーツ市場において市場成長が阻害されることとなり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、eスポーツの波及市場をとらえ、eスポーツを拡張した他分野領域での新規ビジネスを継続的に模索しており、クライアントワークのイベント企画運営に過度に頼らない収益源の多角化を行ってまいります。

 

② 競合他社について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中) 

現在、国内でeスポーツ事業を展開する競合企業は複数存在しており、また、今後の市場規模拡大に伴い新規参入が相次ぐと考えております。当社グループは、ゲームメーカー・eスポーツ選手・視聴者の三者の目線に立ったサービスを提供することで、ステークホルダーやeスポーツを愛するコミュニティとの信頼関係を構築し、当社グループ及び当社グループが運営するeスポーツ大会のファンの拡大に努めます。

しかしながら、ユーザー嗜好と乖離したeスポーツ大会を行った場合及び当社グループのeスポーツコンテンツが競合他社と比較して優位性を保てなくなった場合は、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 海外の動向について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社グループの事業活動は、現状、国内における事業活動が中心でありますが、eスポーツは世界的な市場があり、eスポーツの国際大会や海外のユーザーに向けた日本のゲームメーカーのタイトルを利用したeスポーツコンテンツの提供は増加していくことが予想され、当社グループも積極的に取り組んでいく予定であります。

しかしながら、海外のeスポーツ市場の動向や法規制、国際情勢や各国との国際関係等による影響により、当社グループが期待するほどの収入を確保できない可能性があり、その場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 法規制について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループが事業展開するeスポーツ業界は「不当景品類及び不当表示防止法」や「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」、「刑法(賭博罪)」による規制があるとともに、ユーザーの個人情報に関しては「個人情報の保護に関する法律」の適用を受けます。また、eスポーツ大会の制作等を外注している場合があり、それらの取引の一部は「下請代金支払遅延等防止法」の適用対象となります。

当社グループは、上記各種法的規制等について誠実な対応をしていると考えておりますが、不測の事態等により、万が一当該規制等に抵触しているとして契約等の効力が否定された場合、当社グループが何らかの行政処分等を受けた場合、また、今後これらの法令等が強化・改正され、もしくは新たな法令等が定められ、当社グループの事業が制約を受ける場合には、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。

当社グループはこれら法令を遵守するため、総務部が中心となり、各部署と連携して法令に抵触しない実務運用を整備する他、関連法令等の改廃動向についても常に情報収集を行うとともに、適宜顧問弁護士と連携する体制を整備しております。

 

⑤ 自然災害及び新型コロナウイルス等の感染症に関わるリスク(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社グループでは、自然災害、事故等に備え、重要データをクラウド化するなどトラブルの事前防止または回避に努めておりますが、当社グループの所在地近辺において、大地震等の自然災害が発生した場合、当社グループの設備の損壊や電力供給の制限等の事業継続に支障をきたす事象が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、新型コロナウイルスをはじめ重大感染症が発生・蔓延した場合、eスポーツという特性を活かしオフラインイベントからオンラインイベントにシフトする等のリスク低減に努めているものの、大規模にユーザーを集めて行うリアルイベントの開催数が減少し、当社グループの事業及び業績に直接的及び間接的に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑥ 当社株式の流動性について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)

当社の株主構成は親会社である株式会社カヤックにより、議決権の過半数を所有されている会社となっており、株式会社東京証券取引所の定める流通株式比率は2023年10月末時点において35.8%に留まっております。今後は、親会社からの売出し協力、当社グループの事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達、役員・事業会社様への一部売出しの要請、新株予約権の行使による流通株式数の増加分を勘案し、これらの組み合わせにより、流動性の向上を図っていく方針ではありますが、何らかの事情により上場時よりも流動性が低下する場合には、当社株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当社株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑦ 親会社との資本関係について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社の親会社である株式会社カヤックは、本書提出日現在において東京証券取引所に上場しており、2023年10月末時点において当社発行済株式総数の52.8%(1,439,000株)を保有しております。同社グループは、2023年10月末時点で、連結子会社16社によって構成され、コンテンツ事業を運営しております。当社グループは、同社の承認を必要とする取引や業務は存在せず、事業における制約もなく、独立した意思決定による独自の経営を行っており、各取締役への取締役報酬の分配の適正性、取締役及び監査役の選任の妥当性については、独立した取締役会で決議されております。

しかしながら、同社は議決権比率の観点から、定款の変更、取締役及び監査役の選解任、合併等の組織再編行為、重要な資産・事業の譲渡及び剰余金の処分等、株主の承認が必要となる事項に関しては、同社による議決権行使が当社グループの意思決定に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、同社の利益と当社グループの他の株主の利益が一致しないことの可能性を低減させるため、親会社と関係性のない独立社外取締役を追加し、その比率を高めることでコーポレート・ガバナンスをさらに強化していく方針です。

 

⑧ 親会社グループにおける当社グループの位置付けについて(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループは、親会社グループにおいて、コンテンツ事業の中のeスポーツユニットに区分されておりますが、同社グループ内において、当社グループの主な事業内容と同事業を展開しているグループ企業はなく、グループ内における競合は生じておりません。今後においても競合等が想定される事象はないものと当社グループは認識しております。しかしながら、将来において同社グループの事業戦略や当社グループの位置付け等に著しい変更が生じた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、日常的に楽しめるeスポーツコンテンツを提供するとともにeスポーツ選手等のeスポーツに関わる人々の環境を整えることで、eスポーツの文化・価値を創造することが使命であると考えており、そのためには企業として信用力や知名度の向上、業容のさらなる拡大とそれらに伴う資金調達手段の多様化を迅速に進める必要があると判断し、上場会社を親会社とする形での上場を選択しております。

上記リスクに関しては、今後も継続して、より良質なeスポーツコンテンツとeスポーツ環境を届ける体制を進化させていくことで軽減に努めてまいります。

 

⑨ 親会社グループとの取引関係について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:小)

当社グループの親会社グループとの取引内容について、当社の親会社である株式会社カヤックとの間で、大会出場者の利便性や大会運営の効率化と品質担保の観点から、クライアント等との協議のもと、同社のトーナメントプラットフォーム「Tonamel」を利用する場合があります。また、頻度は高くありませんが、同社のクライアントに対してeスポーツイベントの提供も行っております。取引条件については、独立第三者取引と同様の一般的な内容にて実施しております。

当社グループは、親会社グループと取引を行う場合は、第三者との取引以上に、慎重に条件の妥当性を検証して取引を行っております。当社グループでは、関連当事者取引を行う際には、取締役会決議を必要としております。また、管理部門における取引開始時の確認や、監査役監査や内部監査における事後確認を行うことで、同社との取引における健全性及び適正性確保の仕組みを整備しております。なお、同社及び同社グループとの取引については、事業上の必要性及び他社との取引条件等を比較しその妥当性の検証を行なった上で取引を行う方針であります。本書提出日時点において親会社との取引方針や取引条件に変化は生じておりませんが、今後の取引条件に変更が生じた場合には、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(2) 事業運営に関するリスク

① 新規事業・サービスについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:大)

当社グループは、今後も事業規模の拡大と収益源の多様化を実現するために、積極的に新規事業・サービスに取り組んでいく方針であります。新規事業・サービスについては企画段階・開発段階にてモニタリング等を実施するとともに、新規事業・収益事業等の事業ポートフォリオのバランスを図ることでリスクの低減を行っておりますが、不確定要素が多く存在する可能性があり、新規事業・サービスの展開が予想通りに進まない場合、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、新規事業への取り組みに付随したシステム投資・広告宣伝費等の追加的な支出が発生し、利益率が低下する可能性があります。

 

② ゲームメーカーとの関係について (顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:大)

当社グループが提供するeスポーツコンテンツは各ゲームメーカーが提供するゲームコンテンツを基に制作しております。ゲームコンテンツを利用する場合は必ず許諾を取り、各ゲームメーカーのビジョンや価値観及びゲームコンテンツ自体のストーリーや世界観等を大切にしながら、eスポーツコンテンツを制作しておりますが、各ゲームメーカーとの関係が悪化した場合や各ゲームメーカーのeスポーツに対する方針の変更によりeスポーツ利用を中止した場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループとしては、「ゲーム及びコミュニティの徹底的な理解」という当社グループの特徴を活かしながら、引き続きゲームメーカーとの信頼関係を強固にし、各社の方針を最新情報にキャッチアップできるようにしてまいります。

また、クライアントワークやパートナーソリューションにおける許諾関連の対応実績を活かして、ゲームメーカーの著作物に対して徹底的な法令遵守を今後も丁寧に行ってまいります。

 

③ 表現の健全性について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループでは、動画をはじめとしたコンテンツの内容が公序良俗や著作権侵害とならないようガイドラインを示すとともに、教育・研修を実施することで表現の健全性の確保に努めております。また、第三者からの指摘等により契約クリエイターが不適切な動画を公開していることを認識した場合には速やかに対処するよう努めております。しかしながら、当社グループの対応が不十分であった場合、当社グループのサービスの信頼性やブランドが毀損しサービスの提供が困難になり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 訴訟について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループは、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。また、個人情報保護マネジメントシステム(PMS)の運用やクレーム等への組織的な対応を図ることができる社内体制の整備を行っております。

しかしながら、当社グループが保有する個人情報の管理不徹底等の人為的ミスの発生、第三者からの不正アクセスによる情報流出またはシステム障害及び当社グループの提供したサービスの不備等に起因して、訴訟を受ける可能性があります。その訴訟の内容及び結果、損害賠償の金額によっては当社グループの事業及び業績並びに企業としての社会的信用に影響を及ぼす可能性があります。

 

⑤ M&A(企業買収等)による事業拡大について(顕在化の可能性:小、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループは、事業拡大を加速する有効な手段のひとつとして、M&Aを有効に活用していく方針です。M&Aにあたっては、対象企業の財務内容や契約関係等についての詳細な事前審査を行い、十分にリスクを吟味した上で決定しておりますが、買収後に偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査で把握できなかった問題が生じた場合、事業の展開等が計画どおりに進まない場合、のれんの減損処理を行う必要が生じる等、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、企業買収等により、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、その事業固有のリスク要因が加わります。

 

⑥ 新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:小)

当社グループは、取締役及び従業員に対し、長期的な企業価値向上に対するインセンティブとしてストック・オプションを付与しているほか、今後も優秀な人材確保のためストック・オプションを発行する可能性があります。これらの新株予約権が権利行使された場合、当社株式が新たに発行され、既存の株主が有する株式の価値及び議決権割合が希薄化する可能性があります。2023年12月末現在でこれらの新株予約権による潜在株式数90,335株であり、発行済株式総数2,734,431株の3.3%に相当しております。

 

⑦ 配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:小)

当社グループは、設立以来配当を実施した実績はありませんが、株主に対する利益還元を重要な経営課題として認識しております。現在当社グループは成長過程にあると認識しており、内部留保の充実を図り、収益力強化や事業基盤整備のための投資に充当することにより、なお一層の事業拡大を目指すことが、将来において安定的かつ継続的な利益還元に繋がるものと考えております。将来的には各期の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案したうえで株主に対して利益還元を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。

 

(3) 組織体制に関するリスク

① 代表取締役への依存について

当社グループは、代表取締役に、当社グループの経営方針や事業戦略の決定等の経営の重要な部分を依存しております。当社グループでは過度に依存しないよう、経営幹部役職員の拡充、育成及び権限委譲による分業体制の構築などにより、経営組織の強化に取り組んでおりますが、何らかの理由により代表取締役による業務執行が困難となった場合、当社グループの業務に重大な支障を与える可能性があります。

 

② 人材の採用と育成について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)

当社グループがユーザーに支持されるeスポーツコンテンツを提供していくためには、優秀な人材を確保することが極めて重要な要素であると考えており、外部からの人材獲得及び社内の人材育成に加え、人材流出を防止するための環境整備を重要課題として取り組んでおります。

しかしながら、人材獲得競争が激しいことから、必要な人材を必要な時期に十分に確保できない場合や当社グループの有能な人材が流出してしまった場合には、今後の事業展開に制約を受けることとなり、その結果、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 

③ 内部管理体制について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループは、企業価値の持続的な増大を図るにはコーポレート・ガバナンスが有効に機能することが不可欠であるとの認識のもと、業務の適正性及び財務報告の信頼性の確保、さらに健全な倫理観に基づく法令遵守の徹底が必要と認識しており、内部管理体制の充実に努めております。内部管理体制の詳細につきましては、「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等 (1) コーポレート・ガバナンスの概要 ②企業統治の体制の概要及び当該体制を採用する理由」をご参照ください。

しかしながら、事業の急速な拡大により、十分な内部管理体制の構築が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な業務運営が困難となり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

④ 情報管理体制について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)

当社グループは、ユーザーのメールアドレスその他重要な情報を取り扱っているため、情報セキュリティ方針を策定し、役職員に対して情報セキュリティに関する教育研修を実施し、プライバシーマークの認証を取得するなど、情報管理体制の強化に取り組んでおります。

しかしながら、何らかの理由で重要な情報が外部に漏洩した場合には、当事者への賠償と当社グループに対する社会的信頼の失墜、さらなる情報管理体制構築のための支出等により、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

配当政策

3 【配当政策】

当社は、利益配分につきましては、株主利益の最大化という基本原則のもと、配当と内部留保への最適な配分を行うことを経営方針としております。設立以来配当を実施しておりませんが、これは当社が現在成長期にあるとの認識により、事業拡充と財務基盤強化に向けた内部留保に努めたことによります。

今後につきましては、業績推移、キャッシュ・フローの状況、投資計画、内部留保水準を見据えながら、利益の配当と内部留保への配分を慎重に判断していく所存であります。内部留保資金の使途は、既存事業の拡充、新規事業の展開、社内インフラ整備への有効投資を考えております。

剰余金の配当を行う場合には、期末配当の年1回を基本的な方針としておりますが、当社は会社法第454条第5項の規定による中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。これら剰余金の配当の決定機関は、中間配当については取締役会、期末配当については株主総会であります。