リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。
①自社品種苗及びいちご果実の生産・販売について
a.天候の影響について
当社の主要な事業は、自社品種等を中心としたいちご苗の生産及び生産農家への販売、各生産農家からの果実の仕入及び洋菓子メーカーへの販売であります。
果実の生産はビニールハウス内で行っておりますが、気温及び日照等、天候の影響を受けることとなります。そのため、天候不順によって果実収穫量が大きく影響されないように、生産産地を北海道から東北地方へと広げてきており、さらに、天候不順であっても収穫量が大きく減少しないような栽培技術・ノウハウを蓄積してきており、生産農家に対する栽培指導の徹底に努めております。
しかしながら、天候不順の影響は完全に回避できるものではなく、猛暑、冷夏、日照不足、台風といった気象条件の変化により収穫量が変動し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
b.生産農家との契約について
当社は、自社品種苗等を生産農家に販売し、そこから収穫される当社の規格に合った果実を買取って、全国の洋菓子メーカー等に供給しております。生産農家との間で毎年「栽培契約書」を締結しておりますが、契約書の中には、当社の選果規格に合致した果実を当社が全量買取ることを内容とした条項があります。自社品種の果実は、主にケーキのトッピング(飾り)として使われるため、選果規格は厳格なものとなっております。そのため、粒の小さいものや形の整っていないもの等は規格外となり買取りの対象から外れ、当社が必要とする規格のもののみが入荷されております。
この契約により夏秋期の自社品種の果実はすべて当社から販売されることとなるメリットがありますが、天候条件等によっては収穫果実の規格あるいは時期の偏りが生じることがあります。そのような場合には、取引先の洋菓子メーカー等にいち早く情報提供を行い、使用規格の変更を依頼するなどの対応を講じておりますが、それでも販売しきれないほどの偏りが生じた場合には、当社が在庫を抱えることとなり、果実の廃棄の発生により、当社の業績に影響を与える可能性があります。
c.自社品種苗の生産について
自社品種苗の生産は、組織培養から始めておよそ3年の期間を要するため、苗販売計画に基づいた見込み生産を行っております。苗販売計画は適時見直しを行い、修正が生じた場合には苗の生産も販売計画に合わせて調整しております。ただし、販売計画修正のタイミングによっては、生産調整が間に合わない場合もあり、過剰となった苗の廃棄が発生し、当社の業績に影響を与える可能性があります。
d.育種開発について
新たな種苗の開発は、様々な形質を持った系統を掛け合わせ、生育を繰り返していく中で、より優れた形質を持つ種苗を選抜していく手法が用いられます。掛け合わせと選抜の繰り返しの中から品種として確立され栽培収穫されるようになるまでには、5年から10年程度の長い期間を要します。当社は、2010年に高温時でも品質の安定した果実を生産することのできる「ペチカサンタ」、「ペチカプライム(品種登録名ペチカピュア)」の2品種を種苗登録いたしました。また、2017年には、食味の良い「夏瑞/なつみずき(品種登録名ペチカほのか)」、収量性が極めて高い「コア(品種登録名ペチカエバー)」を種苗登録し、現在はこれら2品種の生産を行っております。
当社は、優良形質がホモ※1であり、かつ水準以下の形質の少ない系統の選抜に成功しております。現在、これらを交配親とした新たな特性を持つ系統を多数選抜しており、今後も優秀な品種の開発を鋭意進めてまいります。
都道府県などでも四季成性いちごの品種開発を進めておりますが、今後新しいタイプの優秀な四季成性いちご品種が開発された場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
※1 遺伝子は必ず対となって存在しております。同じ遺伝子が対になっていることをホモ(AA)、異なる遺伝子の場合はヘテロ(Aa)と称します。ホモの場合は交配した場合すべての組み合わせにAが含まれ、その形質が高頻度で子孫に発現します。たとえばペチカの優秀な形質がホモになっていれば、交配で得られる子孫もその優秀な形質を高頻度で持っていることになります。
e.病虫害について
農産物は、屋外の圃場やビニールハウス内で栽培及び生産するため、ウイルス等への感染及び害虫の発生を防ぐことは極めて難しい問題であります。
当社は、自社品種での病虫害の発生を防ぐため、生産産地との連絡を密にし、栽培技術指導者が実際に苗・果実の生育状況を確認し、早期に異常を発見するように努めております。
しかしながら、完全な防除が困難であるため、不測の病虫害が大量、広域に発生した場合、見込みどおりの成果が得られず当社の業績に影響を与える可能性があります。
②特定人物(経営者)への依存について
代表取締役髙橋巌は、当社の創業者であり、創業以来当社の事業を推進してきております。当社では、同氏への依存度を軽減するために、2013年9月からは、当社グループ全体の経営を統括する代表取締役会長に髙橋巌が就任し、日常的な経営を執行する代表取締役社長に政場秀が就任しております。今後も同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めるべく、役職員の質的向上に注力していく所存であります。しかしながら、同氏の業務遂行が何らかの理由により困難となった場合、当社の事業展開や業績などに影響を与える可能性があります。
なお、同氏は、当連結会計年度末現在において、当社の発行済株式総数の40.04%を保有する筆頭株主であります。
③運送事業について
子会社である株式会社エス・ロジスティックスにおいて運送事業を行っております。その事業に影響を与える可能性がある事項といたしましては、環境規制をはじめ、その他法的規制などの変更・強化や、世界的な石油情勢の変動に起因する燃料費の高騰があります。また、運送業務の遂行にあたっては、安全と輸送品質の向上に努め、徹底した運行管理をいたしておりますが、万一、重大な事故が発生した場合には信用低下のみならず、補償問題や営業停止などの行政処分を受ける可能性があり、これらの事象も運送事業の遂行に影響を与える可能性があります。
④馬鈴薯事業について
種苗及びいちご果実生産と同様、天候不順や病虫害の発生により、見込み通りの成果が得られず、業績に影響を与える可能性があります。
⑤法的規制について
当社の事業及び製・商品等に対する法的規制は下表のとおりであります。
許可・承認の種類 |
有効期限 |
監督官庁 |
関連する法律 |
品種登録 |
|
農林水産省 |
種苗法 |
「ペチカピュア」(登録番号第19528号)(商品名ペチカプライム) 「ペチカエバー」(登録番号第26015号)(商品名コア) 「ペチカほのか」(登録番号第26016号)(商品名夏瑞/なつみずき) |
2035年5月 2042年6月 2042年6月 |
(注) 当社が保有する種苗法登録品種「ペチカピュア」「ペチカエバー」並びに「ペチカほのか」に有する育成者権の存続期間は、上記のとおりであります。この育成者権の存続する間は、当社以外の者がこの3品種の種苗や果実の売買等を行うことができないこととなっており、当社は独占的に利用する権利を有しております。育成者権の存続期間が終了した後は、これら3品種の苗や果実を自由に栽培、利用することが可能となるため、そのときの状況によっては、当社の経営戦略や業績に影響を与える可能性があります。
⑥経営成績の変動要因について
当社グループの主要な経営指標等の推移は、以下のとおりであります。
回次 |
第34期 |
第35期 |
第36期 |
第37期 |
第38期 |
決算年月 |
2020年6月 |
2021年6月 |
2022年6月 |
2023年6月 |
2024年6月 |
売上高(千円) |
3,230,299 |
3,039,041 |
2,604,674 |
2,489,362 |
2,519,019 |
経常利益(千円) |
26,731 |
109,438 |
149,666 |
138,790 |
38,094 |
親会社株主に帰属する当期純利益(千円) |
28,948 |
108,305 |
142,243 |
110,353 |
20,012 |
純資産額(千円) |
468,527 |
577,179 |
719,374 |
787,717 |
769,645 |
総資産額(千円) |
970,616 |
974,949 |
1,081,368 |
1,108,040 |
1,123,842 |
a.特定品目への依存について
当社グループの売上高構成は、いちご果実売上高の比重が高く、当連結会計年度の売上高に占めるいちご果実の構成比は79.1%となっております。そのため、天候による収穫量の変化、販売価格の低下、消費者の嗜好の変化等により、当社の経営戦略及び業績に影響を与える可能性があります。
売上高 (千円) |
前々連結会計年度 2022年6月期 |
前連結会計年度 2023年6月期 |
当連結会計年度 2024年6月 |
||||||
|
構成比 (%) |
前期比 (%) |
|
構成比 (%) |
前期比 (%) |
|
構成比 (%) |
前期比 (%) |
|
いちご果実・青果事業 |
2,283,266 |
87.6 |
83.4 |
2,149,645 |
86.4 |
94.1 |
2,234,644 |
88.7 |
104.0 |
(内訳)いちご果実 (うち自社品種) |
1,980,451 (329,052) |
76.0 (12.6) |
93.4 (104.0) |
1,865,645 (303,289) |
75.0 (12.2) |
94.2 (92.2) |
1,991,324 (213,185) |
79.1 (8.5) |
106.7 (70.3) |
青果 |
224,078 |
8.6 |
39.2 |
244,896 |
9.8 |
109.3 |
209,907 |
8.3 |
85.7 |
資材 |
78,735 |
3.0 |
167.0 |
39,103 |
1.6 |
49.7 |
33,412 |
1.3 |
85.4 |
種苗事業 |
90,347 |
3.5 |
121.5 |
93,042 |
3.7 |
103.0 |
61,012 |
2.4 |
65.6 |
馬鈴薯事業 |
134,971 |
5.2 |
100.5 |
123,099 |
4.9 |
91.2 |
77,317 |
3.1 |
62.8 |
運送事業 |
96,089 |
3.7 |
105.0 |
123,575 |
5.0 |
128.6 |
146,044 |
5.8 |
118.2 |
計 |
2,604,674 |
100.0 |
85.7 |
2,489,362 |
100.0 |
95.6 |
2,519,019 |
100.0 |
101.2 |
(注)いちご果実の( )は、自社品種果実で内書きであります。
b.特定の取引先への依存度が高いことについて
いちご果実・青果の販売先のうち、トーワ物産株式会社、株式会社シャトレーゼ、三井物産流通グループ株式会社、株式会社不二家の上位4社に対する販売金額は、当連結会計年度において48.5%を占めております。いちご果実・青果事業の販売先は当連結会計年度において307社程度となり、上記販売先4社に対する販売金額の割合を低下させるべく、販売先の拡大を積極的にはかっております。
しかしながら、これら会社との取引の継続性や安定性は保証されていないため、これら会社の販売、価格政策、商品戦略の変更など取引関係等が変化した場合には、当社の業績に影響を与える可能性があります。
相手先 |
前連結会計年度 2023年6月期 |
当連結会計年度 2024年6月期 |
||
|
割合(%) |
|
割合(%) |
|
トーワ物産株式会社(千円) |
280,351 |
11.3 |
336,444 |
13.4 |
株式会社シャトレーゼ(千円) |
281,735 |
11.3 |
327,731 |
13.0 |
三井物産流通グループ株式会社 |
276,564 |
11.1 |
284,906 |
11.3 |
株式会社不二家(千円) |
253,805 |
10.2 |
272,062 |
10.8 |
※ 2024年4月よりベンダーサービス株式会社から三井物産流通グループ株式会社に社名変更しております。
c.市場相場価格について
促成期(12月頃から5月頃まで)のいちご果実は、青果市場において相場価格が形成されます。しかし、夏秋期(6月頃から11月頃まで)の国産いちごのほとんどは市場を経由しないため、価格は洋菓子メーカー等との交渉により決めており、促成いちごとは違い市場相場価格から受ける影響は少なくなっております。
当社が仕入、販売する促成期のいちごの価格は、市場相場価格(主に東京都中央卸売市場大田市場)に基づいて決めております。例年、12月のクリスマス時期にはデコレーションケーキの飾りとしての需要の高まりから価格は高騰し、それをピークに価格は安くなります。例えば、2023年12月における東京都中央卸売市場大田市場の「とちおとめ」の市場相場価格(Lサイズ1パック当たり価格)は、クリスマス時期に1,300円になり、2024年1月には400円まで低下しております。このように促成いちごの市場相場価格は変動があるため、当社のいちご果実売上高および利益に影響を与える可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、利益配分について、将来の事業展開と経営体質強化のために必要な内部留保を確保しながら、安定配当を継続、維持しつつ業績を考慮して、積極的な配当政策を行うこととし、剰余金の配当は年1回期末配当を行うことを基本方針としております。剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。当社は、「取締役会の決議により、毎年12月31日を基準日として、中間配当を行うことができる」旨を定款に定めております。
当事業年度の配当につきましては、上記方針に基づき、1株当たり50円の配当を実施することを2024年9月25日開催の定時株主総会において決定いたしました。この結果、当事業年度の配当性向は561.3%となりました。
内部留保金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、市場ニーズに応える生産技術の強化、人材育成をはかるため、有効投資してまいりたいと考えております。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年9月25日 |
38,084 |
50 |
定時株主総会決議 |