2023年12月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

(単一セグメント)
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 5,298 100.0 388 100.0 7.3

事業内容

3【事業の内容】

(1)ミッション

 今日、全ての企業にとって、情報システムを活用しビジネス自体を変革させていく「DX(デジタルトランスフォーメーション)(*1)」が不可欠となっています。企業の命運を握る「DX」ですが、これまでのシステム開発のやり方や常識のままでは成功しないと当社は懸念しております。

 システム開発に携わる企業が1次、2次、3次等と多層になるような開発体制で、また、発注者である顧客や上位にいるシステム開発企業が上、受注する側のシステム開発企業が下という「外注」「下請け」意識で、顧客が本当に必要とするシステムを作成できているでしょうか。そもそも、日本では常識になっている多重下請け構造を疑ってみることが必要ではないでしょうか。

 多層に分かれたシステム開発においては一部の開発工程にしか携われないエンジニアが増え、本来「DX」の担い手であるエンジニアたちの成長が阻害され、エンジニアが使い捨てられているのではないでしょうか。開発工程の分業によってエンジニア全体の能力の底上げがないため、優秀なエンジニアに仕事が集中し疲弊してしまっている現実があり、エンジニアとしての明るい未来像を描くことができなくなっているように見受けられます。エンジニア出身の経営者がマイクロソフト、グーグル、フェイスブックといった世界的サービスを生み出したような、エンジニアが活躍する環境を日本ではまだ作れていません。

 当社はシステム開発におけるこれらの課題を「なくしていく」ことで顧客の「DX」を実現し、未来に向けて日本の産業や社会を力強くしていきたいと考えており、企業理念として「すべてを、なくしていく。」と掲げております。

 

「すべてを、なくしていく。」

・私たちは、システム開発における多重下請け構造をなくしていきます。

 多重下請け構造の弊害から生まれる巨大なシステム障害と、ユーザーの生活に寄り添っていないサービス開発をなくしていきます。そのシステム障害の修復や、サービスをつくり直すために捻出される本来必要ではなかった莫大なカネをなくしていきます。

・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。

 優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。

・「要件定義のウソ」をなくしていきます。

 時代も、使う人も常に変化していく中で、システムに完成はありません。「とりあえず要件定義に沿うために」と、中途半端で帳尻だけを合わせるようなデタラメなシステムをなくしていきます。

・外注という概念をなくしていきます。

 外注により生まれる上下関係からコミュニケーションやアイディアが滞ってしまう機会をなくしていきます。相手の言っていることが明らかに間違っているとわかりながら、それでも「はい、はい」とごまかしたまま進行していくような不健全なチームをなくしていきます。

・世界の基盤は、システムでできている。

 企業活動のすべてのシステムが、そしてシステムに携わるすべての人が、健全に懸命に誠実に活躍できるならば、企業が提供するサービスや商品や施設などを享受するすべての人の生活と未来が、確実に豊かに、幸せになっていく。

・1次請け、2次請け、3次請けという構造から、0次DXへ。

 ダイレクトに相談され、私たちと1チームになりカタチにしていく。つねに相談と提案が繰り返されながら、改善と改良が積み重なり、進化し続けていく。

・多重構造と下請け。

 その歪んだ発想を常識にしてしまっている現状を、私たちはなくしていきます。

・システム開発におけるすべての課題をなくし、あらゆる限界を超えていくことで、この国の、そしてこの国で生きていく人の確実な豊かさと、幸せをつくっていきます。

・企業と、ともに。

 

 当社は、システム開発における課題の解決やあるべき姿の実現を目指し、顧客とエンジニアが協働して進めるシステム開発のあり方を「0次システム開発」と称して顧客にサービス提供しており、「0次システム開発」によって顧客のDXを成功に導くことを「0次DX」と呼んでおります。

 

(2)事業の特徴

 当社は、顧客のDXを実現する「0次システム開発」、及びシステム開発業界のDXを実現する「WhiteBox」サービスから成る、DX関連事業を展開しております。DX関連事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 当社の事業の特徴は、以下のとおりであります。

 

(a)アジャイル開発(*2)としての「0次システム開発」

 「0次システム開発」は、顧客とエンジニアが、提案・相談を繰り返しながら協働して開発していく、ビジネスの状況変化に対応して変更可能なアジャイル型の開発手法です。

 IT業界には、多重下請け構造という、顧客から委託された業務を1次請け企業が、2次請け企業、更にその下層の3次、4次請け企業に流していくピラミッド型構造が存在しております。多重下請け構造に基づくシステム開発では、最初に顧客と1次請け企業が決めた要件どおり開発し納品する、ビジネスの状況変化に対応できない後戻りが難しいウォーターフォール型の開発手法(*3)が採られています。

 ウォーターフォール開発においては、長期間に亘る開発の最終的な成果物の検収時に要件と合致しない箇所が発見されて、システム開発企業の負担で修正を求められることがあります。その場合、契約上の納期を満たせないことにもなりかねず、開発期間に多くのバッファを見積り、その分のエンジニア人件費が上乗せされるため、顧客に必要以上のコスト負担を求めているのが一般的です。このことが、顧客のIT投資効率を損なう要因の一つであると当社は考えております。

 

 それに対し、アジャイル型の開発手法のメリットは、以下のとおりです。

①「作っては見せ」を繰り返しながら開発を進めていくため、詳細な要件定義が必要なく、開発・改善のハイスピード化が図れる。

②「お客様の要望どおり作りましたという証拠」としてのドキュメントが不要或いは最小限になるため、システムの開発・改善に時間及びコストを集中できる。

③重要度が低い部分も含め全てテストし尽くすのではなく、必要十分なテストを都度行いながら開発を進め、不具合が発生したら即対応するスタイルのため、余計なテストコストをカットできる。

 

 ウォーターフォール開発とアジャイル開発の一般的な違いは、以下のとおりです。

 

ウォーターフォール開発

アジャイル開発

契約形態

請負契約

準委任契約

開発スタートまで

要件や成果物を全て明確にしてからスタート

要件が概ね決まったものからスタートできる

追加の要望がある場合

見積が必要

追加費用が必要

見積不要

工数内で収まれば追加費用は不要

成果物の確認

開発終盤まで確認不可

随時可能

開発体制

請け負った開発規模に必要なだけの体制を一定期間固定的に用意

最小1ヶ月単位で体制を柔軟に変更可能

 

 ビジネス状況に合わせてシステム及びそれに基づくビジネスモデルを変化し続けられる企業が勝つDXの時代により必要なのは、多重下請けによるウォーターフォール型のシステム開発ではなく、アジャイル型のシステム開発であると考えております。

 

 なお、アジャイル開発が直ちに「0次」でのシステム開発を意味するわけではなく、発注者/受注者の関係に止まって一方向の作業依頼によって1次請けのシステム開発を行っている限り、「0次システム開発」とは言えないと当社は考えております。当社においても外部の知識・ノウハウの活用及び人的リソースの確保のため、システム開発業務の一部を信頼できる外部委託先(パートナー)とともに実施することがありますが、そのような発注者/受注者の立場を超えて、顧客の社員と当社エンジニア及びパートナー が協働して業務上の課題を解決することで、顧客におけるシステム開発の「内製」を実現するのが当社の「0次システム開発」です。「内製」とは、事業会社がシステム開発会社任せにせず自ら主導的にシステム開発を推進することを指しています。当社は顧客の「DX内製」を支援するにあたり、第三者的な受託者という意識ではなく、顧客との間で相談・提案を繰り返しながら協働してシステム開発を進めることを特徴としており、それを「1次」請けを超えた「0次」と表現しております。

 

 そのため、「0次システム開発」においては、顧客と当社エンジニアとの関係だけでなく、当社エンジニアとパートナーとの関係も、多重下請け構造における発注者から受注者への一方向の作業依頼関係ではなく、お互いの提案・相談を前提とする対等なパートナー関係を志向しています。

 

(b)上流から下流まで一気通貫でのサービス提供

 一般的な1次請けの開発では、依然として、あくまで顧客が要件定義するのを手伝うのに止まっており、業務・システム要件に踏み込んで主体的な提案を行うことが少ないように見受けられます。当社の「0次システム開発」では、業務上の課題に対して主体的な提案を行っており、ITコンサルティングと呼ぶことも可能なサービスです。

 一方、ITコンサルティング会社は、自社内でシステム開発まで担うことは少なく、顧客との間で決めた要件に基づいてシステム開発企業を2次請けとして使用する点において、対等なパートナー関係になく、「0次システム開発」とは異なります。DXの普及に伴い、ビジネスコンサルティング会社がITコンサルティングに進出するケースが増えていますが、ビジネスコンサルティング会社はシステムに精通していない場合もあり、実際のシステム開発の段階に移行してから様々な課題に直面し、提案どおりの実現が困難になるケースも少なくないように見受けられます。

 また、多くの1次請け企業はシステム開発のベースとなる自社開発製品や他社開発ソフトウェア・サービスの販売代理を併せて行っていることから、自社取扱製品・商品の導入を優先するため中立的な提案をすることは難しいのに対し、当社は自社製品を持たず、また他社の販売代理店にはなっていないため、顧客の立場に立った提案が可能です。

 当社はITコンサルティングからシステム開発までを一気通貫でサービス提供するための優秀なエンジニアを抱え、顧客と協働して業務上の課題を解決することのできるシステム開発企業であると考えております。

 

 なお、2023年12月現在、新卒で入社した1年目のエンジニアを除く社員エンジニアの1人当たり平均月間売上高(人月単価)は116万円を超えておりますが、依然として大手ITコンサルティング会社と比べて低く、提供価値に見合う金額を頂けていないと認識しており、役割に応じた単価設定を継続的に上げていく考えでおります。

 

(c)営業力があるシステム開発企業

 IT業界の案件獲得は1次請けシステム開発企業(SIer)経由が主流です。

 国内には33,402社(出所:総務省・経済産業省「2022年 経済構造実態調査」)のシステム開発企業(ソフトウェア業、情報処理・提供サービス業)が存在していますが、エンドユーザー企業の事業部門の担当者が1社1社調べて適切なシステム開発企業を探すことは非常に手間のかかる作業であり、あまり現実的ではありません。そのため、エンドユーザー企業は既に取引のある1次請け企業にコンタクトを取り、それを受けて1次請け企業が定期的な訪問やコンタクトを受けている2次請け企業の中から顧客(エンドユーザー)の要望に対応可能な外部委託先を選定するというのが、システム開発の受発注において一般的に見受けられる流れであり、多重下請け構造を生じさせております。3次請け以降のシステム開発企業では、商流の上位にいる企業から電子メールで回ってくる提案依頼案件に自社のエンジニアをアサインし、リソースが足りなければ単価の部分を書き換えて他の企業に案件情報を流してリソースを調達するケースもあります。

 

 当社は、エンジニアの待遇・市場価値を上げることを通じて優秀な人材がエンジニアを目指す社会を実現し、そのことにより日本の国際競争力を回復・向上させるために、各業界のリーディングカンパニーに集中して営業を行っております。当社のようにエンドユーザー企業に自らアポイントを取って新規開拓営業を行い、直取引を獲得するシステム開発企業は比較的少ないものと認識しております。多くのシステム開発企業は企業規模の拡大を目指さない限り、ある程度継続的な受注が見込めることから、プッシュ型の営業は積極的に行わず、Webでの情報発信、セミナー開催、イベント出展等を通じたプル型のマーケティング活動を中心に行っているものと当社は考えております。当社は、業界改革のために企業規模の拡大を志向していることから、空き稼働が見込まれるエンジニアの稼働を埋めるためという受動的な営業ではなく、絶えず積極的な営業活動を推進しております。

 

(d)エンジニアの就業環境

 当社は、「すべてを、なくしていく。」という企業理念を掲げており、エンジニアについても以下の事項を掲げております。

・システムエンジニアの使い捨てという発想をなくしていきます。

・優秀なシステムエンジニアが育たないという環境をなくしていきます。

・先進国では優れたシステムエンジニアが経営者になっていく。そんな環境が日本では少ないという事実をなくしていきます。

・優秀な人たちがシステムエンジニアという仕事を選ぼうとしていない状況をなくしていきます。

 

 そのため、当社はエンジニアの就業環境の整備を以下のとおり進めており、就業環境の整備により優秀なシステムエンジニアが多く採用できるよう、且つ長く就業できるよう努めております。

・平均年収704万円(2023年12月期、2023年新卒を除く)(*4)

・実績・行動・努力を漏らさず反映できるよう、細かく評価項目を設定した評価制度。

・マネジメント職以外にもスペシャリスト、またその知見を活かしエンジニア以外の道も広く用意。

・全工程+クライアントとのコミュニケーションを担当しても、1日当たりの平均残業時間は1時間未満(社内業務含む)。

 

(e)システム開発企業向けのオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」

 「WhiteBox」は、システム開発企業又はフリーランスが利用申込を行い、当社がそれを会員として受付処理することにより利用できるサービスです。企業所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能は無料で利用することができますが、1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアに関する情報を共有するなどの機能を利用する場合には、月額基本料金が発生します。当社は、自ら本サービスを利用するとともに、全てのシステム開発企業が利用できるオープンなプラットフォームサービスとして提供することを通じて、システム開発における多重下請け構造をなくすという当社理念に共感するシステム開発企業を増やし、業界改革を推進することを目指しております。「WhiteBox」は、受発注の成立までのやり取りを依然として電話やメール等の旧来の方法に依っていることが多い、システム開発業界のDXを実現するサービスです。

 

 事業系統図を図示すると、以下のとおりであります。

 

[事業系統図]

 

 

(3)サービスライン

 当社は、顧客から「0次システム開発」というコンセプトでシステム開発を受注し、更にシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」を自社サービスとして提供しております。

 

a 0次システム開発

 当社は、顧客の社員と当社エンジニア及びパートナーが協働し、システム開発を通じて業務上の課題を解決する「0次システム開発」を提供しており、専ら顧客(エンドユーザー)との直取引案件を手掛けております。

 

 「0次システム開発」では、要件が固まっていなくてもスタートできるというアジャイル開発の特徴を生かし、アプリケーションのプロトタイプ構築、システム統合、スマホアプリ開発・運用、システム基盤(インフラ)のクラウドへの移行等の分野でも利用されております。

 

 当社はアジャイル開発の中でも代表的な手法であるスクラム開発(*5)に精通したエンジニアの育成に努めており、そうしたエンジニアが顧客の社員と協働してプロジェクトを管理・推進する案件を多く手掛けております。

 

 また当社では、段階的に投資額を増やしていくことが可能なクラウドインフラサービスであるAmazon Web Services(以下「AWS」という)(*6)に注力しており、本書提出日現在、AWS認定資格の取得数が100を超え、「AWS 100 APN Certification Distinction(*7)」に認定されております。

 

b システム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」

 システム開発業務を発注又は受注する企業やフリーランスに対して、所属エンジニア又はフリーランス自身の開発経歴(スキルシート)の登録管理等、基本的な機能を無料で提供するとともに、1次請け企業がパートナーを募集する目的でシステム開発案件を掲載・提案したり、パートナーが1次請け企業とエンジニアの情報を共有するなどの機能を利用する場合に定額の月額基本料金が発生するサービスを、以下のプラン別に提供しております。

 

名称

対象法人

提供機能

月額基本料金

パートナープラン

案件を探したい法人向け

所属エンジニアのスキルシート管理に加え、公開案件への応募ができる。

無料

パートナープランPRO

案件とパートナーの両方を探したい法人向け

パートナープランに加え、自社管理案件のパートナー向け掲載ができる。

10,000円

(税抜)

SIerプラン

パートナーを探したい法人向け

公開スキルシートの検索、パートナーへの直接提案を含む全ての機能を使用できる。

25,000円

(税抜)

 

「WhiteBox」の特徴は、エンジニア情報の登録を促す工夫として、エンジニアの経験スキル・分野や特徴を記録するスキルシートを管理できるクラウドサービスを無償提供している点にあります。システム開発企業にとってエンジニアのスキルシートをファイルで更新管理するのは手間がかかります。「WhiteBox」の機能を使えば、スキルシートの管理がしやすく、また、どのようなスキル・経験を持ったエンジニアが在籍しているかという情報を提供することによって、1次請け企業から案件情報や開発の打診を直接受け取ることが可能です。

案件を複数抱え、有望なパートナーを探しているシステム開発企業は、「WhiteBox」を通じて、登録されているパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートを検索し、候補企業に対して直接提案依頼を出すことが可能になります。また、案件情報を「WhiteBox」で公開し、パートナー候補企業から提案を募ることもできます。

 

 システム開発業界では、契約の終了が間近になってから所属エンジニアの空き稼働を作らないために慌てて営業活動が開始され、その結果、契約が短期間で終了しやすい、引き合いの少ないエンジニアの経験・スキルをベースにした提案営業が一般的に広く行われています。「WhiteBox」においては、SIerプランの会員である1次請け企業はパートナー候補企業所属エンジニアのスキルシートを閲覧可能であることから、顧客のニーズが顕在化していない時点で優秀なエンジニアを抱えるパートナー候補企業との商談を重ね、候補企業と共同で顧客に対して案件を創出するための提案を仕掛ける「未来マッチング」を行うことができます。

 当社は、2019年2月から、当社内での利用を目的に、当社社員、及びフリーランスではなく企業に所属するエンジニアを対象としてスキルシートデータベース(DB)作りを始めました。その後、DBをオープンなプラットフォームとしてサービス化することで、システム開発提案能力と事業拡大意欲を有する企業が、受動的でないシステム開発提案を行えるようになり、当社が企業理念として掲げている業界の下請け体質の改革に繋がると同時に、当社にとってのパートナー企業開拓力に寄与するものと考え、2020年4月に「WhiteBox」の実証実験を開始し、2021年1月に正式サービスへ移行しました。2023年12月末現在、2,091社が会員登録しており、3万人超のエンジニアのスキルシートが登録されております。

 

 

 

<用語解説>

注書き

用語

用語の定義

*1

DX

デジタルトランスフォーメーションの略称。企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

*2

アジャイル開発

システムやソフトウェア開発におけるプロジェクト開発手法の一つで、大きな単位でシステムを区切ることなく、小単位で実装とテストを繰り返して開発を進めていきます。従来の開発手法に比べて開発期間が短縮されるため、アジャイル(素早い)と呼ばれています。

*3

ウォーターフォール開発

システム開発で用いられる開発手法の一種。システム開発には多くの工程(プロセス)が存在し、この工程を「上から順番に行う」のが、ウォーターフォール開発です。

*4

平均704万円

当社の従業員数に基づき比較する場合、厚生労働省「2021年賃金構造基本統計調査」において、企業規模100~999人におけるソフトウエア作成者(テクニカルスペシャリスト、プログラマー、CGプログラマー、社内システムエンジニア、クリエータ(情報通信産業に関するもの)の職種)の平均年収は、5,137千円でした(平均年収は「きまって支給する現金給与額」×12ヶ月+「年間賞与その他特別給与額」で算出しております。)

*5

スクラム開発

チームメンバーにタスクを振り分け、それぞれがそのタスクを達成することでプロダクトの完成を目指す開発手法。それぞれの作業が、他の人の作業を支えている形になるのでチームワークやコミュニケーションが重要になります。

*6

Amazon Web Services(AWS)

Amazon Web Services, Inc.により提供されているクラウドコンピューティングサービス。コンピューティング、ストレージ、データベース等のインフラストラクチャテクノロジーから機械学習、AI(*8)、データレイク(*9)と分析、IoT(*10)等の最新のテクノロジーに至るまで、多くのサービスを提供しています。

*7

AWS 100 APN Certification Distinction

AWSパートナーネットワークパートナー企業のAWS認定資格取得数が、一定数に達するごとにAWSより認定されるものであり、AWS認定資格の取得数が100を超えた場合、AWSより「AWS 100 APN Certification Distinction」に認定されます。

*8

AI

人工知能(Artificial Intelligence)の略称。コンピューターの性能が大きく向上したことにより、機械であるコンピューターが「学ぶ」ことができるようになりました。それが現在のAIの中心技術、機械学習です。

*9

データレイク

規模に係らず、全ての構造化データと非構造化データを保存できる一元化されたリポジトリ(アプリケーション開発の際に、システムを構成するデータやプログラムの情報が納められたデータベース)。データをそのままの形で保存できるため、データを構造化しておく必要がありません。また、ダッシュボードや可視化、ビッグデータ処理、リアルタイム分析、機械学習等、様々なタイプの分析を実行し、的確な意思決定に役立てることができます。

*10

IoT

モノのインターネット(Internet of Things)の略称。従来インターネットに接続されていなかった様々なモノ(センサー機器、駆動装置(アクチュエーター)、住宅・建物、車、家電製品、電子機器等)が、ネットワークを通じてサーバーやクラウドサービスに接続され、相互に情報交換をする仕組みです。

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。

 なお、当社はDX関連事業の単一セグメントであるため、セグメント毎の記載はしておりません。

 

① 経営成績の状況

 当事業年度におけるわが国経済は、当社の主要顧客である大企業の業況判断において製造業・非製造業ともに改善が見られました。大企業製造業ではエネルギー価格のピーク時からの下落や円安等が、大企業非製造業ではコロナ禍での経済活動に対する制約の解消等が、業況感の改善に寄与しました。大企業製造業では海外景気の先行きへの不安から、大企業非製造業では物価上昇に伴う需要の減少やコストの増加、人手不足の深刻化等による悪影響への懸念から、先行きについては慎重な見方となっております。

 そのような状況において、当社の主要事業領域であるデジタルトランスフォーメーション(DX)に関連するIT投資需要は依然として旺盛であります。当社の定義する「DX」とは、ITを活用して業務の効率化(コスト低減)や付加価値の増加(収益アップ)を実現し、それを通じて事業の競争力を向上することであり、各企業とも存続のために不可欠な取り組みとなっております。DX関連投資を牽引役として、情報サービス業界では今後も売上増加が見込まれている一方、人材不足の深刻化が懸念されております。

 このような経営環境のもと、顧客のIT投資効率の最大化を実現するため、当社は各業界大手企業のシステム開発のDX内製支援「0次DX」を推進してまいりました。当社の定義する「内製」とは、事業会社がシステム会社任せにせず自ら主導的にシステム開発を推進することを指しています。当社は顧客の「DX内製」を支援するにあたり、第三者的な受託者という意識ではなく、顧客との間で相談・提案を繰り返しながら協働してシステム開発を進めることを特徴としており、それを「1次」請けを超えた「0次」と表現しております。

 当事業年度においては、「0次DX」実現のために顧客と協働してシステム開発を進める「0次システム開発」において、前事業年度に引き続き既存顧客の深耕と新規顧客の開拓を進めました。エンジニアが提供する価値に見合った価格改定や、より市場価値の高い社員の中途採用を進めたことにより、新卒入社者を除くエンジニア社員の平均月単価を、前事業年度末時点の109万円から当事業年度末時点で116万円へアップいたしました。社員エンジニア数は、順調な中途採用と新卒の採用拡大により、前事業年度末時点の182名から当事業年度末時点で219名へ増加いたしました。

 パートナー企業の拡大に資するシステム開発企業向けオープンプラットフォームサービス「WhiteBox」においては、会員の獲得及び有償化を推進し、総会員数は前事業年度末時点の1,330社から当事業年度末時点で2,091社へ増加いたしました。

 これらの結果、当事業年度の経営成績は、売上高5,298,404千円(前期比7.3%増)、営業利益388,134千円(同28.5%増)、経常利益385,057千円(同15.8%増)、当期純利益275,454千円(同3.5%減)となりました。

 

② 財政状態の状況

(資産)

  当事業年度末における流動資産合計は1,719,358千円となり、前事業年度末に比べ114,376千円増加いたしました。これは主に、売上高の増加により現金及び預金が88,274千円、売掛金が21,065千円増加したことによるものです。

  固定資産合計は118,496千円となり、前事業年度末に比べ12,641千円減少いたしました。これは主に、役員退職慰労引当金の支給等により繰延税金資産が9,768千円減少したこと等によるものです。

 

(負債)

  当事業年度末における流動負債合計は950,201千円となり、前事業年度末に比べ7,684千円増加いたしました。これは主に、従業員の増加に伴い賞与引当金が8,321千円増加したことによるものです。

 固定負債合計は173,768千円となり、前事業年度末に比べ181,404千円減少いたしました。これは、長期借入金の返済により長期借入金が181,404千円減少したことによるものです。

 

(純資産)

  当事業年度末における純資産は713,885千円であり、前事業年度末に比べ275,454千円増加いたしました。これは、当期純利益の計上により利益剰余金が275,454千円増加したことによるものです。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当事業年度末における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)の残高は1,155,771千円となり、前事業年度末と比べ88,274千円増加しております。当事業年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの変動要因は次のとおりです。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果、得られた資金は292,204千円(前事業年度は92,320千円の収入)となりました。主な内訳は、税引前当期純利益385,057千円(前事業年度は314,094千円)を計上した一方で、売上債権の増加21,065千円(前事業年度は111,104千円増加)、仕入債務の減少25,371千円(前事業年度は94,744千円減少)、役員退職慰労引当金の減少40,000千円(前事業年度は40,000千円増加)等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果、使用した資金は7,327千円(前事業年度は30,992千円の収入)となりました。主な内訳は、有形固定資産の取得による支出7,071千円(前事業年度は14,336千円の支出)によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果、使用した資金は196,602千円(前事業年度は228,164千円の支出)となりました。これは、長期借入金返済による支出196,602千円(前事業年度は228,164千円の支出)によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当社が提供するサービスの性格上、生産実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

b.受注実績

 当社が提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当事業年度の販売実績は、次のとおりであります。

セグメントの名称

当事業年度

(自2023年1月1日

至2023年12月31日)

前年同期比(%)

DX関連事業(千円)

5,298,404

107.3

(注)1.当社は、DX関連事業の単一セグメントであるため、セグメントごとの記載はしておりません。

2.主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前事業年度

(自2022年1月1日

至2022年12月31日)

当事業年度

(自2023年1月1日

至2023年12月31日)

販売高(千円)

割合(%)

販売高(千円)

割合(%)

株式会社セブン&アイ・ネットメディア

572,488

11.6

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

 経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

  なお、次の文中の将来に関する事項は、提出日現在において当社が判断したものであります。

 

①重要な会計方針及び見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社の財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されています。財務諸表の作成に際し、資産・負債及び収益・費用の決算数値に影響を与える見積り項目について、過去の実績や状況を勘案して合理的に判断していますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる場合があります。

 この財務諸表作成のための基本となる重要な事項につきましては、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計方針」及び「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1)財務諸表 注記事項 重要な会計上の見積り」に記載のとおりです。

 

②経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

(売上高)

 当事業年度において、売上高は5,298,404千円(前期比7.3%増)となりました。既存顧客の売上高の前事業年度比での増加に加え、新規顧客の開拓が進んだことにより増収となりました。また、エンジニアのレベルに応じた価格改定の推進や単価の高いプロジェクトマネージャーの採用を引き続き推進したこと等により、新卒入社者を除くエンジニア社員の当事業年度末における平均月単価は116万円を超え、前事業年度末より6.7%上昇しました。当事業年度末におけるエンジニア社員数は新卒採用・中途採用とも拡大して219名となり、前事業年度末より20.3%増加しました。売上拡大において必要な外部協力企業(業務委託先)の開拓に資するプラットフォームサービスであるWhiteBoxの総会員数は、広告宣伝投資の効果等により当事業年度末で2,091社となり、前事業年度末より57.2%増加しました。これらの結果、売上高が順調に拡大しております。

 

(売上原価、売上総利益)

 当事業年度の売上原価は3,750,945千円(前期比4.9%増)となりました。これは、売上高の拡大に伴う給与手当及び業務委託費等の人件費を中心とした開発関連費用の増加によるものです。この結果、売上総利益は1,547,459千円(同13.5%増)となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業利益)

 当事業年度において、販売費及び一般管理費は1,159,324千円(前期比9.2%増)となりました。社員の採用に伴い、給与手当、賞与及び法定福利費が前期比78,919千円、採用募集費が同63,695千円増加しました。また、業務改善・業務効率化及び上場準備を進めるにあたって社外の支援を受けるための業務委託費が同27,520千円増加しました。これらの結果、営業利益は388,134千円(同28.5%増)となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当事業年度の営業外収益は主に助成金収入の発生により、1,837千円(前期比94.7%減)となりました。営業外費用は主に支払利息の計上により、4,914千円(同15.1%増)となりました。これらの結果、経常利益は385,057千円(同15.8%増)となりました。

 

(法人税等合計、当期純利益)

 当事業年度の法人税、住民税及び事業税は99,834千円計上しております。また、税効果会計の適用により法人税等調整額を9,768千円計上しております。これらの結果、当期純利益は275,454千円(前期比3.5%減)となりました。

 

③キャッシュ・フローの分析

 キャッシュ・フローの分析については、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

④資本の財源及び資金の流動性

 当社の運転資金需要のうち主なものは、受注拡大のための人件費及び業務委託費や、人員獲得のための採用募集費であります。

 当社は、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保するため、必要な資金は自己資金、金融機関からの借入により資金調達を行っております。設備投資をする場合等、必要に応じてエクイティファイナンスも検討する方針であります。

 なお、当事業年度末における有利子負債の残高は505,172千円となっております。また、当事業年度末における現金及び現金同等物の残高は1,155,771千円となっております。

 

⑤経営成績に重要な影響を与える要因について

 「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。

 

⑥経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等の分析

 経営方針、経営戦略又は経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (4)経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標」に記載のとおり、全社においては売上高及び営業利益、0次システム開発においては社員エンジニアの人数及び社員エンジニア1人当たり売上高、WhiteBoxにおいては総会員数を経営指標として重視しております。

 当該指標は次のとおり推移しております。なお、社員エンジニア1人当たり売上高については、当該年に入社した新卒エンジニアを除いて計算しております。

 

前事業年度

(自2022年1月1日

  至2022年12月31日)

当事業年度

(自2023年1月1日

  至2023年12月31日)

売上高(通期)

4,939,952千円

5,298,404千円

営業利益(通期)

302,037千円

388,134千円

社員エンジニアの人数(期末)

182人

219人

社員エンジニア1人当たり売上高(期末)

1,095千円

1,168千円

WhiteBox総会員数(期末)

1,330社

2,091社

 

⑦経営者の問題意識と今後の方針について

 「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。