事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
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売上
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利益
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利益率
最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています
セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
---|---|---|---|---|---|
(単一セグメント) | 4,708 | 100.0 | 792 | 100.0 | 16.8 |
事業内容
3 【事業の内容】
当社は、「テクノロジーの力で、未来をつくる新しい体験を提供し、ひとりひとりが輝く社会へ」というパーパスのもと、顧客の企業価値向上に資するべく、ITで経営課題を解決し、業務の生産性向上・信頼性向上を図るために、IT資産管理やセキュリティ対策等に対するソリューションを提供する「ネットワークソリューション」、名刺管理、SFA/CRM、MA、新規顧客開拓等の営業支援に対するソリューションを提供する「セールスDXソリューション」、AIOCR等によるデータエントリーに対するソリューションを提供する「AIデータエントリーソリューション」の3つのソリューションにおいて、ソフトウェアの開発及び販売を行っております。
ネットワークソリューションはPCやPCネットワーク等の管理を行うIT資産管理やセキュリティ対策等の業務領域、セールスDXソリューションはSFA(※1)/CRM(※2)、MA(※3)等の営業支援の業務領域、AIデータエントリーソリューションはデータエントリー(※4)の業務領域と、3ソリューションそれぞれ業務領域は異なるものの、顧客や市場のニーズを捉え、それまでになかった機能を備えたシステムを自社で開発し提供することで、顧客の経営課題を解決し、業務の生産性・信頼性を向上させ、企業価値の向上を図ることを目指しております。
少子高齢化に伴い、生産年齢人口が減少し、労働生産性の向上、業務の効率化を図ることが必須となっている環境においては、当社製品に対する市場ニーズは拡大し、それぞれのソリューションの市場規模も拡大傾向となっております。(ソリューションごとの市場規模については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境」に記載)
製品の提供形態としては、オンプレミス(※5)型とクラウド型の両方の形態があります。世の中のクラウド化のニーズを捉えつつ、セキュリティ等の問題でオンプレミス型を希望する顧客ニーズにも応えております。
当社製品においては、一部の機能のみの導入や、パッケージとして一式を導入することも可能であり、必要な機能のみ導入し、事業成長に応じて機能を追加導入することが可能です。さらに、オンプレミス型、クラウド型の両方の提供形態があることなどから、顧客は民間企業から官公庁まで、また、事業規模も大手企業のみならず、中小企業まで幅広く導入されております。
業種を問わず必要とされる業務領域を支援していることから、幅広い業種で導入され、結果、様々な業種・事業規模に対応しております。
当社のビジネスモデルは、クラウド型やオンプレミス型における保守契約などの月額料金によるリカーリング(※6)型のビジネスモデルに移行しております。これにより、既存顧客からの安定的な収益を確保しつつ、新規売上の拡大により成長を加速させてまいります。
当社においては、直接顧客に販売する場合のみならず、代理店経由で販売する場合においても、直接顧客と接点を持ち営業及びカスタマーサクセスを実施することで、顧客のニーズを的確に捉えております。
また、当社製品においては、ほとんどが自社開発であることから、他社製品との連携等に拘束されることなく、顧客ニーズを反映した製品開発が可能であります。
さらに、営業においても直接顧客と接点をもつことで、よりニーズに即した営業提案を行うことができます。
市場のニーズを的確に捉え、自社開発の強みを活かして新機能、新製品を開発し、顧客に提案していくサイクルを高速に回すことで、好循環が生まれ、常にニーズを捉えた製品をスピーディーに顧客に提供していくことが可能となります。
既存顧客においては、契約の継続性を向上させるため製品の導入支援や運用支援を行い、利用率や運用状況を改善し、顧客満足度の向上を図っております。
各ソリューションの主な製品、提供形態、主な収益源は以下のとおりとなります。
[ネットワークソリューション]
当ソリューションでは、企業のPC及びPCネットワーク等のIT資産管理、セキュリティ対策の面から統合的に管理するソフトウェアを「AssetView」シリーズとして開発・販売しており、IT資産管理を取り巻く様々な課題を統合的に解決するためのログ分析レポート等のソリューションサービス、運用支援サービスを「AssetView」と合わせて提供しております。
ライフサイクルの異なるPCや複合機等の様々な機器の管理や、入退社、人事異動にあわせた機器の導入や移動、OS(※7)やソフトウェアのライセンス・アップデート、それらにかかわる契約やリース、利用者情報など、組織全体のIT資産を常に最新の状態に保って管理していく必要があります。また、セキュリティ対策に関しては、ウイルスやマルウェア(※8)等の外部からの脅威に対する対策や、USBデバイスやスマートフォン、PC紛失等による情報漏洩の阻止、万が一の際に、証跡を追跡するためのログ管理等が必要となります。当社のネットワークソリューションは、これらの多様な課題に対して包括的なソリューションを提供しております。「AssetView」は、IT資産管理、ソフトウェアライセンス管理、Windows Updateやアプリケーション配布、PC操作ログ管理、USB等のデバイス制御、ウイルス対策といった多彩な機能を統合的に管理します。独自の管理画面により、ひとつの画面で操作・管理することができ、顧客は自身の使用スタイルに合わせて画面や表示機能を制御できます。個々の機能を別々のソフトウェアで管理する場合や、異なるソフトウェアの連携を行う場合、操作画面も異なり、管理する為のサーバーも、それぞれの製品のために複数保有する必要がありますが、「AssetView」は、統一された操作画面によって業務の効率化が図れ、管理サーバーも統合されるため、サーバーの維持・運用工数を削減できます。また、複雑な事前設定を行う必要がなく、導入後すぐに利用できるWebコンソール版(※9)の製品も有しています。複数のシステムで管理されているデータベースも統合されるため、効率的にデータを収集することができます。
また、「AssetView」は、必要な機能だけを選択して購入可能とするため、機能毎に個別の実行ファイルを保有する方式で開発を行っており、顧客は必要な機能だけをオーダーメイド感覚で購入して対策に取組む事ができ、管理状況や計画に応じて段階的に機能を追加することが出来ます。また、業務内容に応じて必要な機能をパッケージ化した製品の提供や、オンプレミス型とクラウド型の両方を提供していますので、顧客は、要望に応じて様々な購入の方法が可能です。多機能なパッケージ製品の場合、利用しない機能まで含まれてしまい価格も高くなる傾向があります。
「AssetView」は、IT資産管理やセキュリティ対策を行うソフトウェアであり、様々な業界の民間企業や官公庁で導入されています。また、組織の規模も従業員が1,000人を超える大手企業から中小企業まで幅広い顧客層に提供しております。そのため、特定顧客や特定業界の経済状況に当社の業績が影響される可能性は低いと考えております。
加えて、当社カスタマーサクセスによる技術サポート、オンボーディング(※10)導入サポートや運用サポートによって、顧客の課題解決と安定的な運用を支援しております。その結果、高い継続性を実現しており、2025年3月期におけるクラウド型のチャーンレート(※11)は0.31%(月次平均)となっております。
[セールスDXソリューション]
当ソリューションでは、「営業を強くし、売上を上げる」をコンセプトに、法人営業の生産性向上・業務効率化を図り、企業の売上拡大を支援する「ホットプロファイル」及び「ホットアプローチ」の開発・販売・運用支援サービスを行っております。
「法人営業になくてはならない製品」を目指し、顧客からの要望のみならず、当社営業部門が顧客の立場として実際に利用することで利用者目線に立った製品開発を行っております。また、顧客の利用用途に応じたプランを用意することで様々な顧客ニーズに対応しております。リカーリング型のビジネスモデルを採用しており、プラン毎に一定の利用量を含む月額利用料を設けております。
主要な製品は以下の通りです。
1.営業支援ツール「ホットプロファイル」
「ホットプロファイル」は法人営業の営業活動を支える3つの領域「名刺管理」「SFA/CRM」「MA」を統合し、各プロセスを分断することなく実行できる営業プラットフォームです。社内に点在する営業活動に関する情報を一元管理し、業種等の企業属性情報を自動付与することで営業施策に活用しやすい顧客データベースへ変換します。日々の営業活動や受注までのプロセスマネジメントも同じプラットフォーム上で行うことができます。
「ホットプロファイル」は顧客に関する情報が1つのシステムでまとまるため、人脈・訪問履歴・案件履歴・メール履歴・Webアクセス履歴など顧客に関する情報を、1画面で時系列に沿って確認することが可能となります。「名刺管理」「SFA/CRM」「MA」と用途に応じて営業支援システムを別々に導入した場合、顧客に関する情報が各システムに点在し、顧客に関する情報が分断され、複数のシステムを見に行く手間が発生するなどの課題を解決することが可能となります。
法人営業のビジネスの始まりである「名刺交換」や「Webサイトからのお問い合わせ」など様々な入口から獲得した顧客情報を、当社独自のロジックで正規化・名寄せし、さらに「ホットプロファイル」が持つ企業データベースから業種、従業員数、ニュース情報等の企業情報を自動付与することで、活用できる顧客データベースを自動作成することが可能となります。また、「ホットプロファイル」に顧客情報を登録するだけで、業種等でターゲティングした営業リストの作成や顧客の最新ニュースの把握など、精度の高い営業活動を手間なく行うことが可能となります。
また、「ホットプロファイル」に登録した顧客企業のニュース情報を自動で受け取ることができるため、人事異動など企業の動きがあった際に迅速に営業できるようになります。加えて、IPアドレスやCookieを利用して、自社のWebサイトを閲覧した企業や顧客を把握できるため、これまで気づけなかった顧客の興味・関心度を把握し、適切なタイミングで営業活動を行うことが可能となります。
2.新規顧客開拓ツール「ホットアプローチ」
「ホットアプローチ」は、様々な公開情報から当社が独自AIで成形した480万社以上(2025年3月31日時点)の企業データベースから利用者がアプローチしたい企業リストを作成し、企業がWebサイト上で公開しているお問合せ窓口フォームへ、自動で一斉にメッセージを送る法人営業の新規顧客開拓に特化した営業支援ツールです。テレワークが定着する中、これまで行っていた飛込み営業や闇雲な電話営業では「思うように新規開拓が進まない」といった課題を持つ企業に対し、新規開拓活動を効率的に行うサービスを提供しています。
企業データベースには、業種や規模等の企業属性だけでなく、より具体的な事業内容(例:3Dプリンターを製造している企業など)や企業動向の情報を含んでいるため、顧客がアプローチしたいターゲットを絞り込み、営業リストを作成することが可能となります。
また、企業がWebサイト上でお問い合わせ窓口として公開しているフォームURLやメールアドレスの情報があり、送信メッセージをテンプレートとして登録する事で、各企業のお問い合わせ窓口フォームへ一斉にメッセージを送ることが可能となります。接点の無い企業であっても短時間で多くの顧客接点を設けることが可能となり、効率的な法人営業の新規顧客開拓活動が可能となります。加えて、送信メッセージに、自社のWebサイトへ誘導を促すURLを含めることにより、実際にWebサイトを訪れた企業がわかるため、自社に興味がありそうな企業から優先的に電話営業を実施するなど、効率的な営業活動を実施する事が可能となります。
この2つの製品は「ホットプロファイル」のプラットフォーム上で提供でき、組み合わせて利用することにより、法人営業の営業プロセス(「見込み客の獲得・商談創出」⇒「提案・クロージング」⇒「受注後の顧客維持・売上拡大」)を網羅した営業支援を行うことが可能となります。さらに、「ホットアプローチ」の企業データベースと「ホットプロファイル」に蓄積した顧客の営業情報を組み合わせ、商談情報から受注率の高い企業の傾向を分析し、類似のターゲットとなり得る企業をレコメンドするなど、顧客データを最大限活用した営業のDX(※12)化を促進します。
[AIデータエントリーソリューション]
当ソリューションでは、AI OCR(※13)技術をベースとしたデータ入力業務効率化のソリューションを提供しています。
多くの企業や公共団体では、業務に用いられる帳票のうち、データ化されていない様々な帳票が残っており、その帳票を処理するための入力業務に多くの時間と労力を費やしていると考えております。労働人口の減少に伴い、単純作業であるデータ入力業務においては、人手不足を解消し、かつ、ミスを削減するために、当社のOCR製品のようなシステムやサービスを利用する企業等が増えております。
OCRはAI技術の躍進とともに文字認識精度が高まり、対応可能なデータ入力業務の領域が拡大しております。これらにより、OCR事業は大きく成長する市場であると考えられます。当社においても継続してOCR技術の向上を図っております。
主力製品である「AnyForm OCR」、「WOZE」及び「DX OCR」の概要は以下のとおりです。
1.「AnyForm OCR」
「AnyForm OCR」は、自社開発のAI OCRエンジンを搭載した、オンプレミス型製品です。顧客のサーバーまたはパソコンに「AnyForm OCR」を導入し、受注伝票等の帳票のOCR処理をすることが可能であり、製造業、卸売業、小売業、運輸業などの幅広い業種で導入されております。
「AnyForm OCR」の概要は以下の通りです。
・オンプレミス型製品であり、OCR処理する画像やOCR結果のデータがインターネットなどを介さないため、情報漏洩するリスクが少ない。
・特許技術である「WOCR(特許第5464474号)」(2つ以上のOCRエンジンの組み合わせることで修正必要箇所を識別する技術)に基づく、2つのOCRエンジン(活字OCRとAI OCR)を搭載することで、OCRソフトの課題であった誤認識を発見し、修正することが可能。
・OCR項目の設定やOCR結果を確認する画面の設計が顧客自身で対応できるため、顧客側の運用に合わせた利用が可能。
・AnyForm OCR内に商品情報や取引先情報などのマスターデータを保有することができるため、帳票結果からそれらを参照し、マスターデータ内の情報を出力することができる。
2.「WOZE」
オンプレミス型のOCRソフト「AnyForm OCR」は、自社で自由に帳票設計をしたい、あるいは自社によるOCR結果の確認を行い、即時にデータが必要な顧客のニーズを満たしております。一方で、それらの作業に時間を費やしたくないと考える顧客もおり、当社ではそれらの要望に応えるために、「WOZE」を開発し、2021年7月に提供を開始しました。「WOZE」の開発によりDX化が遅れているデータエントリー市場へ参入可能となりました。
「WOZE」の概要は以下の通りです。
・クラウド型製品であるため、顧客によるハードウェアの準備や、製品のインストール作業などの環境構築が必要なく簡単に利用可能。
・当社が帳票設計を行うため、顧客での帳票設計が不要となり、導入時に顧客の作業負担が軽減される。
・特許技術である「WOCR(特許第5464474号)」に基づく、2つのAI OCRエンジンを搭載することで、OCRソフトの一番の課題であった誤認識を発見し易くなり、高精度な文字認識が可能。
・OCR結果の確認作業は、当社の在宅ワーカーが行うため、顧客の人手による目検が必要なくなり作業負担が軽減される。
・在宅ワーカーには、高度なセキュリティ機能により分離された項目のみを暗号化し渡すため、情報漏洩リスクを回避でき高いセキュリティが保たれる。
・顧客が、帳票画像のアップロードを行ってからデータを受け取るまでの時間は概ね30分であります。
3.「DX OCR」
帳票設計や複雑な設定を必要とせず、紙帳票のデジタル化を迅速かつ高精度に実現するクラウド型AI-OCRサービスです。従来のOCRでは対応が難しかった手書き文字や非定型帳票にも対応し、企業のデータ入力業務のDXを強力に支援するため、2024年10月に提供を開始しました。
「DX OCR」の概要は以下の通りです。
・クラウド型製品であるため、顧客によるハードウェアの準備や、製品のインストール作業などの環境構築が必
要なく簡単に利用可能。
・学習済みのAIが帳票を自動で判別・処理するため、顧客による帳票設計やテンプレート作成が不要。
・活字だけでなく、手書き文字、斜め文字、非定型帳票にも対応し、高い識字率を実現。
・注文書、請求書、納品書、申込書など、幅広い帳票に対応可能。
・Any Form OCR同様に、商品情報や取引先情報などのマスターデータを保有することができるため、帳票結果
からそれらを参照し、マスターデータ内の情報を出力することができる。
・OCR処理した後に読取結果から任意に選択した項目をファイル名として指定したフォルダに保存が可能で電帳
法支援業務にも貢献。
これらの製品・サービスラインナップにより、幅広い業種、企業規模及び幅広い帳票種類のニーズに対応いたします。
[事業系統図]
(注) クラウドサービス事業者:クラウドコンピューティングサービス(Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure)の提供事業者
情報入力委託先 :「ホットプロファイル」における名刺入力業務の委託先
データサプライヤー :「ホットプロファイル」「ホットアプローチ」における企業情報や人事情報等の提供事業者
※用語解説
本項「事業の内容」において使用する用語の定義については、次のとおりです。
業績
4 【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
当社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況は以下のとおりであります。
① 財政状態の状況
(資産)
流動資産は、前事業年度末に比べ464,604千円増加し、3,885,001千円となりました。主な要因は、現金及び預金の増加525,660千円であります。
固定資産は、前事業年度末に比べ100,520千円増加し、2,251,087千円となりました。主な要因は、新製品の開発等に伴うソフトウェアの増加413,443千円、ソフトウェア仮勘定の減少293,590千円であります。
この結果、総資産は、前事業年度に比べ565,125千円増加、6,136,089千円となりました。
(負債)
流動負債は、前事業年度末に比べ84,487千円減少し、2,259,606千円となりました。主な要因は、中間納付額増加及び当期純利益の減少に伴う未払法人税等の減少176,039千円、契約負債の増加85,911千円であります。
固定負債は、前事業年度末に比べ84,209千円増加し、1,150,348千円となりました。主な要因は、長期契約負債の増加79,280千円であります。
この結果、負債合計は、前事業年度末に比べ278千円減少、3,409,955千円となりました。
(純資産)
当事業年度末における純資産は、前事業年度末に比べ565,402千円増加し、2,726,134千円となりました。主な要因は、上場時の増資による資本金の増加47,380千円及び資本準備金の増加47,380千円、繰越利益剰余金の増加493,398千円であります。
② 経営成績の状況
当事業年度におけるわが国の経済は、雇用・所得環境の改善を背景に緩やかな回復基調が続きましたが、物価上昇、米国の政策動向、中東地域をめぐる情勢等の影響により、依然として先行きが不透明な状況が続いております。
一方、デジタルトランスフォーメーション(DX)という概念が浸透し、中堅中小企業においてもDX化が進んできております。そのような状況の中、労働人口の減少に伴い、ITによる業務の効率化、自動化による生産性向上のニーズは一層高まっております。また、テレワークの拡大により働き方も大きく変わり、商談も対面からオンラインへ移行するなど新しいビジネス形態へと移り変わり、セキュリティ対策などの信頼性向上のニーズも高まっております。
これらの環境変化などを背景に、当社の各ソリューションが属する市場は今後も以下の通り、成長することが見込まれております。
(単位:億円)
(注)CRM(営業系)、メール配信プラットフォームマーケティング、マーケティングオートメーションの合計で
算定しております。
このような市場環境の中、「テクノロジーの力で、未来をつくる新しい体験を提供し、ひとりひとりが輝く社会へ」というパーパスのもと、顧客の企業価値向上に資するべく、ITで経営課題を解決し、業務の生産性向上・信頼性向上を図るために、IT資産管理やセキュリティ対策等に対するソリューションを提供する「ネットワークソリューション」、名刺管理、SFA/CRM、MA、新規顧客開拓等の営業支援に対するソリューションを提供する「セールスDXソリューション」、AIOCR等によるデータエントリーに対するソリューションを提供する「AIデータエントリーソリューション」の3つのソリューションにおいて、ソフトウェアの開発及び販売を行っております。
その結果、当事業年度における業績は、売上高4,707,880千円(前期比109.9%)、営業利益791,514千円(前期比118.1%)、経常利益828,838千円(前期比106.4%)、当期純利益618,078千円(前期比95.3%)となりました。
(売上高)
当社はソリューション提供事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載は行っておりませんが、各ソリューションにおける状況は以下のとおりです。
[ネットワークソリューション]
ネットワークソリューションでは、企業のPC及びPCネットワーク等のIT資産管理、セキュリティ対策、情報漏洩対策などの面から統合的に管理するソフトウェアを「AssetView」シリーズとして開発・販売しております。IT資産管理を取り巻く様々な課題を統合的に解決するためのソリューションサービスや運用支援サービスを「AssetView」と合わせて提供しております。
テレワークが多様な働き方の一つの形として定着しつつあり、社外にパソコン等のIT資産が存在する状態が定常化しています。これら社外のIT資産の管理の為に、IT資産管理ツールをクラウド環境で導入したいというニーズが増加しており、クラウドサービスの売上が大きく増加しております。クラウドサービスの新ブランドである「AssetView Cloud +」は、新プランの「情報漏洩対策」をリリースし、また、ヒトを軸とした対策が取れるように機能強化をはかりました。また、SaaS管理機能の強化や、長期ログ保存を可能にするアーカイブの整備等を実施しました。これによりクラウドサービスによる新規顧客の獲得を加速させるとともに、既存顧客のクラウドサービスへの移行も進んでおります。
当ソリューションの売上に占めるクラウドサービスの割合は、前期から増加し37.7%となりました。また、オンプレミス環境で導入頂いている既存顧客の保守契約も堅調に推移いたしました。
クラウドサービスのARRとチャーンレートの推移は以下の通りであり、チャーンレートは低い水準で推移しております。
(注)1.ARR :Annual Recurring Revenueの略。年間経常収益を指す。各四半期末時点のMRR(Monthly
Recurring Revenue=月次経常収益)に12を乗じた数値
2.チャーンレート:解約率を意味し、既存契約の月次経常収益のうち解約に伴い減少した月次経常収益
の割合の直近12カ月平均
当該割合は「当月に失った月次経常収益÷前月末の月次経常収益×100(%)で算定」
その結果、当ソリューションの売上は2,867,473千円(前期比107.9%)となりました。
[セールスDXソリューション]
セールスDXソリューションでは、「営業を強くし、売上を上げる」をコンセプトに、法人営業の生産性向上・業務効率化を図り、企業の売上拡大を支援する「ホットプロファイル」及び「ホットアプローチ」の開発・販売・運用支援サービスを行っております。
「法人営業になくてはならない製品」を目指し、「名刺管理」「SFA/CRM」※「MA」※の機能を一気通貫で兼ね備えていることが大きな強みであり、これに加え、「新規顧客開拓」機能も有しております。
営業の活動状況を可視化し、売上・生産性向上を可能とするSFAの利用など、営業のDX化のニーズが中堅・中小企業においても拡大している中、非対面営業へのシフトが進む金融機関などへの導入も好調で、新規売上が堅調に推移致しました。また、他社製品とのAPI連携による協業を加速させました。
企業同士の対面コミュニケーションの機会が増加し、名刺交換の機会が増加することによる名刺データ化の需要の拡大やプラン変更などによるアップセルも堅調に推移いたしました。さらに、既存顧客の契約更新も順調に推移いたしました。
OEM製品を除くARRとチャーンレートの推移は以下の通りであります。
(注)1.ARR :Annual Recurring Revenueの略。年間経常収益を指す。各四半期末時点のMRR(Monthly
Recurring Revenue=月次経常収益)に12を乗じた数値(OEM製品を除く)
2.チャーンレート:解約率を意味し、既存契約の月次経常収益のうち解約に伴い減少した月次経常収益
の割合の直近12カ月平均
当該割合は「当月に失った月次経常収益÷前月末の月次経常収益×100(%)で算定」(OEM製品を除く)
その結果、当ソリューションの売上は1,360,623千円(前期比112.7%)となりました。
※SFA:セールスフォースオートメーションの略で、営業支援システムであり、営業業務の見える化、効率化を図る仕組み、システムのことを意味します。
※CRM:カスタマーリレーションシップマネージメントの略で、顧客情報や行動履歴、顧客との関係性を管理し、顧客との良好な関係を構築・促進することを意味します。
※MA:マーケティングオートメーションの略で、マーケティング業務を自動化、効率化する仕組み、システムのことを意味します。
[AIデータエントリーソリューション]
AIデータエントリーソリューションでは、AIOCR※技術をベースとしたデータ入力業務効率化のソリューションを提供しています。
多くの企業や公共団体では、業務に用いられる帳票のうち、データ化されていない様々な帳票が残っており、その帳票を処理するための入力業務に多くの時間と労力を費やしております。労働人口の減少に伴い、バックオフィス業務のDX化を図り単純作業であるデータ入力業務における人手不足を解消し、入力ミスも削減するために、当社のOCR製品のようなシステムやサービスを利用する企業等が増えております。
OCRはAI技術の躍進とともに文字認識精度が高まり、対応可能なデータ入力業務の領域が拡大しております。これらにより、AIデータエントリーソリューションの領域は大きく成長する市場であると考えられます。当社においても継続してOCR技術の向上を図っております。
当社では、ダブルAI OCRと当社の在宅ワーカーによるOCR結果の確認作業を組み合わせることで、顧客の作業を限りなくゼロに近づけたクラウドサービスである「WOZE」を提供しており、「WOZE」の処理枚数の増加により売上は堅調に推移しております。また、2024年10月、帳票設計が不要なクラウドサービスである「DX OCR」をリリースすることで、対応できる業務がさらに広がり、事業領域が拡大しております。
その結果、当ソリューションの売上は479,783千円(前期比115.2%)となりました。
※OCR:オプティカルキャラクターリーダーの略で、手書きや印刷された文字をスキャナやデジタルカメラによって読みとり、コンピュータが利用できるデジタルの文字コードに変換する技術を意味します。
③ キャッシュ・フローの状況
当事業年度末における現金及び現金同等物は、前事業年度末に比べ525,659千円増加し、3,165,984千円となりました。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
営業活動の結果獲得した資金は923,334千円(前期は1,064,473千円の資金の収入)となりました。主な要因は、税引前当期純利益887,202千円(前期比25,162千円減少)、減価償却費469,702千円(前期比219,607千円増加)、法人税等の支払478,520千円(前期比529,011千円増加)であります。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果支出した資金は366,648千円(前期は404,047千円の資金の支出)となりました。主な要因は、投資有価証券の償還による収入217,664千円(前期比28,330千円増加)、無形固定資産の取得による支出560,733千円(前期比11,331千円減少)であります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果支出した資金は37,381千円(前期は76,808千円の資金の支出)となりました。主な要因は、株式の発行による収入93,696千円(前期はなし)、配当金の支払額による支出124,680千円(前期比49,872千円増加)であります。
④ 生産、受注及び販売の状況
当社はソリューション提供事業の単一セグメントであり、セグメント別の記載は行っておりませんので、ソリューション別に記載を行っております。
a.生産実績
当社で行う事業は、提供するサービスの性格上、生産に該当するものがないため記載を省略しております。
b.受注実績
当事業年度における受注実績は次のとおりであります。
c.販売実績
当事業年度における販売実績は次のとおりであります。
(注) 主な相手先別の販売実績及び総販売実績に対する割合
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社の経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものです。
① 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
当社の財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。この財務諸表の作成にあたって、経営者による会計方針の選択・適用、資産・負債及び収益・費用の報告金額ならびに開示に影響を与える見積りを必要としております。これらの見積りについては過去の実績や現状等を勘案し、合理的に判断しておりますが、実際の結果は見積り特有の不確実性があるため、これらの見積りと異なる可能性があります。
当社の財務諸表を作成するにあたって用いた会計上の見積り及び仮定のうち、重要なものは、「第5 経理の状況 1 財務諸表等 (1) 財務諸表 注記事項 (重要な会計上の見積り)」に記載しております。
② 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容
a.経営成績の状況の分析
(売上高)
売上高の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ② 経営成績の状況」に記載のとおりです。
(売上原価、売上総利益)
売上原価は2,644,780千円(前期比115.8%)となりました。これは主に事業拡大に伴う人件費の増加及びソフトウェアの減価償却費の増加によるものであります。この結果、売上総利益は2,063,100千円(前期比103.2%)となりました。
(販売費及び一般管理費、営業利益)
販売費及び一般管理費は1,271,586千円(前期比95.7%)となりました。これは主に役員退職慰労金制度の廃止に伴う役員退職慰労引当金繰入額の減少、採用の時期ズレに伴う採用費の減少によるものであります。この結果、営業利益は791,514千円(前年比118.1%)となりました。
(営業外収益、営業外費用、経常利益)
営業外収益は45,180千円(前期比39.7%)となりました。これは主に為替予約残高減少による為替差益の減少によるものであります。営業外費用は7,855千円(前期比156.5%)となりました。これは主に上場関連費用の増加によるものであります。この結果、経常利益は828,838千円(前期比106.4%)となりました。
(特別損益、当期純利益)
投資有価証券償還益の計上により特別利益は58,363千円(前期比43.7%)となった結果、税引前当期純利益は887,202千円(前期比97.2%)となりました。また、法人税等を計上した結果、当期純利益は618,078千円(前期比95.3%)となりました。
b.財政状態の分析
財政状態の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ① 財政状態の状況」に記載のとおりです。
③ キャッシュ・フローの状況の分析
キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容につきましては、「第2 事業の状況 4 経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析 (1) 経営成績等の状況の概要 ③ キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりです。
④ 資本の財源及び資金の流動性についての分析
当社の資金需要として主なものは、事業の拡大に伴う人件費及び外注費、顧客獲得や認知度向上のための広告宣伝費等です。財政状態等や資金使途を勘案しながら、必要な資金は自己資金及びエクイティファイナンス等で資金調達していくことを基本方針としております。なお、これらの資金調達方法の優先順位等は、資金需要の額や用途に合わせて柔軟に検討を行う予定です。また、流動性確保のため、250,000千円の当座貸越契約を締結しております。
⑤ 経営成績に重要な影響を与える要因
当社の事業に重要な影響を与える要因の詳細につきましては、「第2 事業の状況 3 事業等のリスク」に記載のとおりです。
⑥ 経営者の問題意識と今後の方針
経営者の問題意識と今後の方針につきましては、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりです。