2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績およびキャッシュフローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のようなものがあります。

なお、文中における将来に関する事項については、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

当社グループでは、こうした事業を取り巻くリスクや不確定要因等に対して、その予防や分散、リスクヘッジを実施することにより企業活動への影響について最小限にとどめるべく対応をはかっております。

 <特に重要なリスク>

(1) 受注環境の変化によるリスク

世界的な原材料および原油等エネルギーの品不足や価格高騰・円安の影響を受けて、建設業においても資材価格が高騰しています。また、米国新政権による関税政策の動向が不透明であり、今後の先行きには不確実性が残っています。資材価格高騰やその他建設コスト上昇による投資意欲減退、ひいては価格上昇による住宅取得意欲減退が生じた場合には、受注の減少要因となり当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

加えて、財政健全化等を目的として公共投資の削減がおこなわれた場合も、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(2) 建設資材価格・労務単価の上昇のリスク

建設資材価格や労務単価などが請負契約締結後に大幅に上昇し、競争激化によりそれを請負金額に反映することが困難な場合、および建設技術者・技能労働者の確保が困難な場合は利益率の低下などを招き、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを低減するため、各事業会社を中心に仕入先や発注者との協議、交渉をおこなうなどの対応を進めております。

(3) 建設技術者・技能労働者の不足リスク

建設業界において、建設技術者や技能労働者の高齢化、新規入職者の減少、離職者の増加などにより、業界全体で技術者が減少する中で、当社グループにおいても建設技術者や技能労働者を十分に確保することが困難な場合は、施工の遅れなどにより業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

建設技術者を確保するため、「トップクラスのホワイト企業への挑戦」という長期ビジョンを掲げ、魅力ある会社づくりをはかっています。あわせて、性別・国籍を問わず優秀な方の採用を推し進めています。

また、技能労働者の確保については、早い段階で協力会社に必要な職方を伝えることや新規業者の開拓をおこなうことで対応を進めております。

(4) 情報セキュリティリスク 

サイバー攻撃や、不正なアクセス等により主要なシステムが停止した場合や情報漏洩が発生した場合には、業務停止や信用失墜等により業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを低減するため、情報セキュリティに関する規程・ルール等を定期的に見直し、効果的な教育を継続的に実施することで、グループ全体のセキュリティレベルの水準の底上げをはかっております。

(5) 労働環境リスク 

労働環境の改善が不十分な場合には、過重労働やハラスメント等が発生し、社員の健康被害やエンゲージメントの低下を招く可能性があります。その結果として、行政処分や社員の離職、生産性の低下等が生じ、必要な人員の確保が困難となることで工期の遅延等が発生し、業績や財政状況に影響を与える可能性があります。

これらのリスクを低減するため、業務プロセスの見直しや、グループ全体で社内外に通報窓口の整備を進めているほか、エンゲージメント調査を定期的に実施し、調査結果を活用して労働環境の改善に努めております。

(6) 気候変動リスク  

気候変動による物理的な影響として、夏季の平均気温上昇、自然災害の激甚化により工事が遅延した場合には、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

また、脱炭素経済への移行の影響として、温室効果ガスの排出規制や、炭素税導入によるコストの増加が発生した場合、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。これらのリスクを低減するため、再生可能エネルギー関連工事や低炭素素材の開発などへの注力とともに、自社における省エネルギー化や再生可能エネルギー活用の促進をおこなっております。

 

(7) 資産の保有リスク 

当社グループでは2025年3月期において、国内および海外に販売用不動産を226億円、投資有価証券を75億円保有 しており、これらについて予想を上回る市場価格の下落や為替市場の変動等が生じた場合には業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクを低減するため、一定額の資産等を取得する際は、取締役会にてその必要性や見通しを十分に協議のうえ、取得を決定するとともに状況を適切にモニタリングすることとしております。

 <重要なリスク>

(1) 自然災害(感染症等を含む)によるリスク

地震、台風などの自然災害の発生や火災等の人災により、施工中の物件に被害が生じた場合、本社、本店、営業所等の営業拠点に被害が生じた場合、さらには大規模災害や復興に長時間を要する場合には資材価格の高騰など事業環境の変化により、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

なお、新型コロナウイルス感染症は5類に引き下げられたものの、同様のパンデミックが発生し、営業活動の自粛や資材の調達の遅れ、さらには工事現場の一時停止など、受注や施工に何らかの制限が生じた場合には当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらの主要なリスクに備えるため、事業継続計画書(BCPマニュアル)を策定しており、BCP防災訓練をおこなうことにより発災時のリスクを最小限に抑制するように努めております。

(2) コンプライアンスに関するリスク

当社グループが属する建設業界は、建設業法、建築基準法、宅地建物取引業法、国土利用計画法、都市計画法、独占禁止法、さらには環境・労務関連の法令など様々な法的規制を受けており、万が一違法な行為があった場合には、当社グループの業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

当社グループでは、コンプライアンスに関するリスクに対応するため、グループ憲章、経営理念、企業理念のもと、社員の考え方や意識の方向性を明確にするものとして「行動指針」を定め、コンプライアンスの重要性を浸透させるとともに、研修やeラーニングの活用等を通じ役員・社員への啓蒙活動に努めております。

(3) ガバナンスリスク

グループ会社を含め、取締役会・監査役会が監督機関として有効に機能せず、経営者の独断専行や不適切な行為を防止できない場合や、結果として重大な不正行為が発生し、社会から大きな批判を受ける可能性があります。これらのリスクを低減するため、取締役会の評価を毎年おこない、修正を続けることで、取締役会の実効性を確保しています。グループ会社に対しては当社から、当社においては社外取締役を選任することで取締役会における経営者の独断専行を防止し、またグループ会社の重要事項については当社取締役会の決議により決定しております。

また、リスクを適切に認識できておらず、顕在化した場合、会社に重大な影響を及ぼす可能性があるため、リスクを適切に評価する体制の整備や、社員への教育などを進めております。

(4) 事業戦略に関するリスク 

当社グループを持続的に成長させるために決定した事業ポートフォリオ戦略がうまく機能せず、新規事業の市場見通しの見誤りによる事業展開の失敗や、M&Aが想定通りの効果を生み出さず、結果として見込んだシナジー効果を発揮できない場合、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

当該リスクに対しては、新規事業への取組やM&Aの実行に際しては、多角的な視点からのリスク評価および効果測定を実施することでリスクの最小化に努めております。

また、海外事業は為替や米国不動産市況などを常に確認し、適宜取締役会に業況報告をおこなうこと等でリスクの最小化に努めております。

(5) 施工物等の不具合や重大な事故(労働災害・公衆災害)によるリスク

設計施工などで重大な瑕疵や施工不良があった場合や、人身・施工物などに重大な事故(労働災害・公衆災害)が生じた場合には、その改修や損害賠償および信用失墜により、業績や財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

これらのリスクに備えるため、グループ各社において安全衛生に関する教育を定期的におこない、また事故防止に万全を期すべく様々な部門による品質や労働安全衛生パトロールの実施など、問題の早期発見と改善に努めております。

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は、株主の皆様への利益還元を経営の最重要政策のひとつと位置づけ、永続的な発展に向けた経営基盤の強化拡充と、着実な株主還元の最適なバランスをはかる規律ある資本政策を遂行します。安定配当を維持し株主還元を拡充するとともに、内部留保の充実による経営基盤の強化をはかることを基本方針としております。

また、新たに策定した中期経営計画(2026年3月期~2028年3月期)の対象年度においては、配当性向40%程度、かつ累進配当を基本方針とし、年間の1株当たり配当金額の下限を90円に設定し、業績に連動した利益還元をおこなうこととしています。

当社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、株主総会の決議によらず取締役会の決議によって定める旨を定款に定めております。

また、当社は毎年9月30日を基準日とした中間配当および3月31日を基準日とした期末配当の年2回、剰余金の配当をおこなうことを基本方針とし、その他取締役会の決議により基準日を定めて剰余金の配当をおこなうことができる旨を定款に定めております。

当事業年度(2025年3月期)の配当金は、親会社株主に帰属する当期純利益が6,452百万円と期初の予想を下回りましたが、「安定配当を継続し、株主還元を拡充するとともに自己資本の一層の強化を目指す」方針を堅持し、1株当たり年間配当金を期初予想どおりの82円(配当性向44.2%)といたしました。

翌事業年度(2026年3月期)の配当金につきましては、1株当たり90円(配当性向40.2%)を予定しております。内部留保資金につきましては、当社グループ全体において経営体質の一層の強化、充実ならびに今後の事業展開に役立てる等、中長期的な視点で有効に活用してまいります。

なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年11月13日

取締役会決議

1,427

41.0

2025年5月14日

取締役会決議

1,427

41.0