リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループの事業に係るリスクについて、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある主な事項は、以下のようなものがある。
これらはリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努めていく。
なお、文中における将来に関する事項は、本有価証券報告書提出日現在において、当社グループが判断したものである。
(1) 市場及び事業に関するリスク
①建設市場の変動
当社グループは社会資本の整備・維持に係る事業を主なターゲットとしており、政府建設投資の規模やその重点投資分野の変動または、政府及び地方公共団体等の発注内容や発注時期の変動等により、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、常に将来の需要動向をリサーチし、顧客のニーズ等への対応に注力することでシェアの拡大を図るとともに、必要に応じて人材・設備などの経営資源の適正配分を行うこととしている。また、得意とする「防災・減災」分野に加えて「維持補修」分野など今後有望視される市場への参入など、事業領域の拡大にも努めている。
②少子高齢化の進展等による担い手不足
少子高齢化が想定を超え進行しており、建設業界への就労人口の減少が一層深刻化していくことが予想されるなか、十分な担い手を確保できない場合には事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、中長期的な視点に立って経営・事業を支える人材を計画的に獲得するため新卒採用、中途採用を強化している。併せて、働き方改革をはじめ、多様な働き方に対応する制度などの充実を進め、「働きやすい」、「働きがいがあり・魅力のある安心して働くことができる会社」を目指し、人材の確保と社員教育の充実を図っている。(前記「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」(3)人的資本・多様性に関する取組 参照)
また各事業部門においては、ICTの開発・利用促進を通じて担い手不足への対応も同時に進めている。
③建設資材・労務費等の価格変動・調達困難
建設資材価格・労務費等の急激な高騰により、工事原価の上昇を招く可能性があるが、これを請負代金に反映することが困難な場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、購買部門が工事の受注検討や施工計画の段階から参画し、適正な調達価格で安定した調達を図ることができるよう努めている。
④取引先の信用不安
当社グループは国及び地方自治体等から発注される公共事業を主なターゲットとしているが、受注形態(元請・下請区分)により契約先の顧客は50%強が民間建設会社となる。
従って、これらの会社が信用不安に陥り、債権の回収遅延や貸倒れが発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。また、顧客のみならず協力業者や共同施工会社が信用不安に陥った場合にも、施工進捗の遅れや共同企業体メンバーからの出資債権の未回収、債務の負担から、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、取引先の与信管理については、日常的には信用情報を収集し、受注にあたっては信用調査機関からの調査書を基に社内審査を徹底するとともに、ケースに応じて債権に保証を付保する等の手段を講じ、信用リスクの回避に努めている。
⑤製品の欠陥
品質管理には万全を期しているが、工事目的及び商品について契約不適合責任などにより多額の損害賠償請求等を受けた場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、品質マネジメントシステムにより事業活動における営業、設計、購買、施工の各段階で継続的改善を図るとともに、工法別作業マニュアルに基づき、工事現場での品質管理を徹底している。また、内部監査部門が適宜監査を実施することにより契約不適合発生の防止に努めている。
(2) 金融・政治・経済に関するリスク
①資金調達及び為替変動
金融危機が発生したり、急激な市場変動により業績が悪化した場合には、資金の調達に支障が出たり、調達コストが上昇し、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、複数年度にわたるコミットメントライン契約を結ぶことなどにより、上記リスクが発生した場合でも、適正な手元流動性を確保し、財政状況の健全化を維持できるよう努めている。
また、海外取引から発生する為替変動リスクに対しては必要に応じて為替予約等によりリスクの低減に努めている。
②海外事業
当社グループは、主に東南アジア及び米国で事業を展開しているが、現地の政治・経済情勢、法規制に著しい変化が生じた場合や戦争・紛争・テロが発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、危険度が高いとされている国、地域の工事の受注については、予め、リスクの評価・分析を行い、受注を決定している。
また、受注後においては、海外危機管理マニュアルに基づき、現地での医療リスクの回避やテロ・災害時の緊急避難体制について、危機管理会社への委託や海外安否確認システムを導入するなどにより、有事に備えた体制を構築し、社員ほか現地での従事者の安全を図っている。
(3) 事故・災害・環境問題に関するリスク
①事故及び災害
一般的に建設現場は、特定の期間に多様な会社の人材や機械が混在しながら作業するという特性から、他の産業に比べて事故及び災害の発生率が高いというリスクがあり、重大な事故及び災害が発生した場合には、工事の中断、発注官公庁からの指名停止等の行政処分に加えて社会的な評価の低下にも及び、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、安全品質環境本部が中心となり、安全週間等の運動、各拠点の安全大会、本社幹部パトロール等、定期的な安全衛生環境パトロールの実施をはじめ、若手の段階から安全衛生教育・啓蒙活動を継続的に実施し、事故及び災害の発生防止に努めている。
②自然災害
大規模な自然災害の発生により施工中の工事目的物が被災し、その修復や作業中断による工期の延長等により相応の費用が発生した場合や、社会インフラや会社施設に甚大な被害が及び長期にわたり事業が中断した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、後者に対しては事業継続計画を策定し、国からの災害時の基礎的事業継続力評価の認定を受けるとともに、非常時に事業の早期復旧を可能とする体制を整備し、定期的な訓練、備蓄や諸施設の耐震化、社内情報の外部データセンターへの保管などを行い、有事への備えを進めている。
③気候変動
脱炭素社会への移行に向けて、工事施工時に排出される温室効果ガス排出量の規制や炭素税が導入された場合、事業活動の抑制によるコスト増加等の業績への影響や、気候変動の物理的影響として、平均気温の上昇、気象災害の頻発、激甚化が継続した場合、事業活動に影響を及ぼす可能性がある。
このため、施工段階における排出量を2050年までに実質ゼロにすることを目指し、省燃費運転の励行や燃費効率の高い建機・省エネ機器の採用及び、資機材の運搬距離の短縮・運搬方法の改善、施工工法の変更等に取り組んでいる。
またオフィス活動においても、自社保有施設を中心に使用電力について再生可能エネルギーを利用した電力へと移行する取組みを進めている。
なお、当社は、2023年2月に気候関連財務情報開示タスクフォース(以下TCFD)への賛同を表明し、気候変動課題への対応についてTCFDの提言に則った開示を行っている。
(前記「2.サステナビリティに関する考え方及び取組」(2)気候変動に関する取組参照)
④感染症等
感染症(パンデミック)が発生し事業活動に制限を受ける事態となった場合には、受注の減少、工事進捗の遅れ、コスト上昇などにより業績に影響を及ぼす可能性がある。
当社グループでは、新型コロナウイルス感染症に対しては、工事現場を除くオフィス勤務者については、在宅勤務の推進等により社員の安全を確保しつつ事業を継続する体制としている。
また、工事現場においては、協力会社を含めた社員の安全を確保しつつ施工を継続する体制としているが、施工中の現場内で感染症が発生した場合には現場が長期にわたり中断するなどの影響を受けることから、感染症対策の徹底を図った施工体制としている。
(4) 法的規制等に関するリスク
当社グループの事業は、建設業法、労働安全衛生法等多数の法的規制を受けているが、これらの法律の改廃、法的規制の新設、適用基準の変更等がなされた場合、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、関係部署による法改正等の動向をモニタリングし、事前に法改正等に向けた対応方針の策定と当社グループとサプライチェーンへの具体策の展開に向けた体制を整備している。
また、法令等の改廃に伴う各種要領やマニュアルの整備と定期的な見直しを行い、説明会等を通じ当社グループ及び協力会社への浸透を図っている。万一これらの法令等に違反する事態が発生した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある。
このため、法令遵守と企業倫理の追求を経営の最重要課題と位置づけ、コンプライアンス体制の充実を図るとともに、関係法令の遵守を目的とした研修会を継続的に実施し、コンプライアンスマニュアルを作成、配布するなどにより教育、啓蒙活動を拡充している。また、外部窓口を有した実効性のある企業倫理ヘルプラインを設置し、法令遵守と企業倫理に関する通報、相談を適切に受付けることにより、法令等違反行為の早期発見と是正を図ることができる体制を整備している。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元と経営基盤の強化を重要な経営課題と位置付け、安定した株主還元を継続することを基本方針としている。
株主還元については、この基本方針を踏まえ、前中期経営計画(2021~2023年度)での資本政策の基本方針では、キャッシュの配分については、成長投資と株主還元を両立させることとし、利益還元として連結配当性向40%程度の目標を定めている。
当事業年度(第78期)の株主還元については、上記の方針および目標のもと、一株当たり60円の剰余金の配当としている。
なお、これにより連結配当性向は45.5%となる。
また、次期以降の株主還元については、新中期経営計画(2024~2026年度)の目標のとおり、前中期経営計画に引き続き株主に対する利益還元と経営基盤の強化を重要な経営課題と位置付け、安定的に株主還元を継続する観点から、配当金によるものとし、「配当性向40%程度」および「1株当たり配当金60円以上」を目標として剰余金の配当に努めることとしている。
(注)基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は以下のとおりである。