2025年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

土木事業 建築事業 子会社
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
土木事業 105,107 20.7 6,940 48.6 6.6
建築事業 267,186 52.6 846 5.9 0.3
子会社 135,876 26.7 6,480 45.4 4.8

事業内容

3【事業の内容】

 当社グループは、建設事業及びその周辺関連事業を主たる事業としている。事業の内容及び当該事業に係わる位置づけは次のとおりである。

  なお、以下は主要な事業の内容により区分しており、セグメント情報におけるセグメント区分と同一ではない。

 建設事業     当社及び連結子会社である㈱ガイアート、関連会社である笹島建設㈱他が建設事業を営んでいる。

  また、連結子会社であるテクノス㈱は建設事業のほか、建設用資機材の製造販売等を行っている。

 その他の事業   連結子会社である㈱テクニカルサポートは保険事業及び事務代行事業を営んでおり、当社は事務業務の一部を委託している。

  また、連結子会社である㈱ファテックは建設技術商品の提供事業を営んでおり、当社はその一部の提供を受けている。

 

 事業の系統図は次のとおりである。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度における我が国経済は、雇用・所得環境や企業収益の改善が進むなか、個人消費は、物価上昇の影響はあるものの持ち直しの動きがみられ、設備投資もソフトウェア投資を中心に堅調に推移するなど、景気は緩やかながら回復基調を維持した。

  建設業界においては、住宅投資は横ばいとなったものの、民間企業の建設投資は企業収益や業況感の改善が続くなかで、引き続き増加した。また、公共投資も関連予算の執行により底堅く推移しており、総じて良好な受注環境が持続した。しかし、資材費や労務費の高止まりがみられ、採算面では一部に厳しさが残った。

  このような経営環境のもと、当社グループは2024年5月に策定した①建設事業の強化、②周辺事業の加速、③経営基盤の充実を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長への挑戦を続けているところである。

  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a 財政状態

・資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ46億円(1.0%)減少し、4,625億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ120億円(3.3%)減少し、3,574億円となった。コマーシャル・ペーパーの償還及び配当金の支払等により、現金預金が199億円減少している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ73億円(7.5%)増加し、1,051億円となった。関係会社等への貸付により、長期貸付金が24億円増加している。

・負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ65億円(2.3%)減少し、2,807億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ140億円(5.8%)減少し、2,293億円となった。コマーシャル・ペーパーが149億円、短期借入金が27億円減少している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ75億円(17.2%)増加し、513億円となった。長期借入金が75億円増加している。

・純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ18億円(1.0%)増加し、1,818億円となった。利益剰余金は、配当により56億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益93億円の計上により37億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ0.8ポイント向上し、39.3%となっている。

 

b 経営成績

・売上高(完成工事高)

 売上高は、増加していた期首手持ち工事の消化が進み、前連結会計年度に比べ553億円(12.5%)増加し、4,985億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

・売上総利益(完成工事総利益)

 売上総利益は、売上高の増加並びに土木事業の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善により、前連結会計年度に比べ22億円(6.2%)増加し、383億円となった。

・販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、研究開発費やDX関連費用の増加等により、前連結会計年度に比べ5億円(2.5%)増加し、240億円となった。

・営業利益

 営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ16億円(13.0%)増加し、142億円となった。

・営業外損益

 営業外収益は、受取利息及び受取配当金の増加等により、前連結会計年度に比べ7千万円増加し、14億円となった。

 営業外費用は、有利子負債の期中平均残高の増加に伴う支払利息の増加及び投資事業組合運用損の増加等により、前連結会計年度に比べ3億円増加し、13億円となった。

 

・経常利益

 これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ13億円(10.5%)増加し、144億円となった。

・特別損益

 特別利益は、投資有価証券売却益5千万円など合計6千万円を計上した。

 特別損失は、関係会社株式評価損3億円や損害賠償金2億円など合計6億円を計上した。

・法人税等

 法人税、住民税及び事業税36億円、将来減算一時差異の減少等により法人税等調整額7億円を計上した。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ10億円(12.5%)増加し、93億円となった。

 

セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

a 土木事業

受注高は、前連結会計年度比4.3%増の1,109億円であった。
売上高は、同5.0%増の1,051億円、営業利益は、同54.3%増の69億円となった。

 

b 建築事業

受注高は、前連結会計年度比0.3%減の2,683億円であった。
売上高は、同17.3%増の2,671億円、営業利益は、同60.2%減の8億円となった。

 

c 子会社

 売上高は、前連結会計年度比8.5%増の1,358億円、営業利益は、同8.0%増の64億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

② キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、82億円のプラス(前連結会計年度は169億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、119億円のマイナス(前連結会計年度は107億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、164億円のマイナス(前連結会計年度は223億円のプラス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ199億円(28.4%)減少し、501億円となった。

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

   なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第87期

 

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

195,109

106,425

301,534

100,128

(201,406)

201,270

建築工事

339,733

269,163

608,896

227,799

(381,097)

381,142

534,842

375,589

910,431

327,927

(582,503)

582,413

第88期

 

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

201,270

110,971

312,242

105,107

(207,134)

206,822

建築工事

381,142

268,392

649,535

267,186

(382,349)

382,084

582,413

379,364

961,778

372,294

(589,484)

588,907

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき外貨建工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

 

b 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第87期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

18.4

81.6

100

建築工事

12.7

87.3

100

第88期

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

28.7

71.3

100

建築工事

48.6

51.4

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

c 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第87期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

55,426

44,702

100,128

建築工事

28,159

199,639

227,799

83,586

244,341

327,927

第88期

(自 2024年4月1日

至 2025年3月31日)

土木工事

62,947

42,160

105,107

建築工事

30,725

236,460

267,186

93,672

278,621

372,294

(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。

第87期

環境省

平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事

北大阪急行電鉄株式会社

北大阪急行線の延伸事業のうち土木工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3街区)

日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社

(仮称)羽沢横浜国大駅前A地区 開発計画

学校法人 東京女子学園

(仮称)東京女子学園中学校・高等学校建替え計画

第88期

農林水産省

信濃川左岸流域農業水利事業 1号幹線用水路1号トンネル建設工事

国土交通省

一般国道452号 芦別市 鏡トンネル工事

三井不動産株式会社

(仮称)安城市大東町商業施設計画新築工事

西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合

西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業 施設建築物等新築工事

アパホーム株式会社・アパマンション株式会社

(仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事

2 第87期及び第88期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

d 次期繰越工事高(2025年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

88,301

118,520

206,822

建築工事

46,971

335,112

382,084

135,273

453,633

588,907

(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

中日本高速道路株式会社

東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事

東急不動産株式会社、京浜急行電鉄株式会社、第一生命保険株式会社

(仮称)北仲通北地区B-1地区計画新築工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-4 街区―住宅棟)

三田駅前Cブロック地区市街地再開発組合

三田駅前Cブロック地区第一種市街地再開発事業

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績の分析

 当社グループの売上高については、期首繰越工事高の増加等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。

 利益については、売上高の増加や土木事業の利益率改善があった一方で、建築事業においては低採算工事の影響等により利益率が低下し、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績を上回ったものの、期首計画値を下回る結果となった。

 自己資本比率は、有利子負債の返済による現金預金の減少等により総資産が減少したため、39.3%と前連結会計年度と比べ0.8ポイント向上した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったため、5.2%と前連結会計年度と比べ0.4ポイント向上した。

 受注高は、土木事業の官庁分野が好調で受注を伸ばしたことなどにより前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。

 

b セグメントごとの経営成績の分析

・土木事業

 受注高は、震災復旧関連や高速道路関連を中心に大型工事を複数受注したことなどにより、前連結会計年度比4.3%増の1,109億円となった。

 売上高は、期首繰越工事高の増加等により、同5.0%増の1,051億円となった。営業利益は、売上高の増加に加え、追加設計変更獲得などにより利益率が改善したため、同54.3%増の69億円となった。

・建築事業

 受注高は、受注時粗利益の確保及び施工体制を考慮し、同0.3%減の2,683億円となった。

 売上高は、期首繰越工事高の増加等により、同17.3%増の2,671億円となった。営業利益は、複数の大型工事において想定以上の物価上昇により採算が悪化した影響などにより、同60.2%減の8億円となった。

・子会社

 売上高は、株式会社ガイアートにおける期首繰越工事高及び受注高の増加や華熊営造股份有限公司における大型工事の進捗などにより、同8.5%増の1,358億円となった。営業利益は、各社において利益率の改善が進んだことなどにより、同8.0%増の64億円となった。

 

c 中期経営計画の達成状況

 『熊谷組グループ 中期経営計画(2024~2026年度)~持続的成長への新たな挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。

指標

2026年度(計画値)

2024年度(実績値)

差異

連結売上高   (百万円)

500,000

498,581

△1,418

連結経常利益  (百万円)

30,000

14,411

△15,588

ROE      (%)

10.0

5.2

△4.8

自己資本比率   (%)

45.0

39.3

△5.7

配当性向     (%)

40.0

59.7

19.7

 

 基本方針1:建設事業の強化

■国内土木事業

・インフラ大更新分野

 全国のダム、橋梁、道路、トンネル、水道などの社会基盤を整備する技術開発及び施工実績を着実に伸ばしている。

・再生可能エネルギー分野

 再生可能エネルギー分野の取組みとして、水力・陸上風力については活発な需要に対応して着実に実績を積み上げている。洋上風力については、SEPの大規模投資を実施し受注に向け準備を整えている。

・防災・減災、国土強靭化分野

 地震や豪雨で被害を受けた能登半島の逢坂トンネル、国道249号線、塚田川、輪島市農地復旧等の迅速な対応を実施している。また、逢坂トンネルは無人化施工で取り組み、安全・安心な施工を実現している。

・資源循環分野

 能登半島における門前クリーンパークの復旧工事を施工し、また、新たに三重県や鹿児島県にて産業廃棄物処分場の施工を始めている。

■国内建築事業

・環境配慮型建築分野

 建築物の施工・運用各段階での環境負荷を最小限に抑えることを目的としている。グリーン鋼材などの低炭素建材の使用、再生可能エネルギーの利用、廃棄物の削減、引渡後のエネルギー効率の向上などに取り組んでいる。

・各種プラント分野

 生活基盤インフラである焼却場・火葬場等のプラントに加えて、輸出基準に適合した食肉処理施設の増設も見込まれている。現在、各施設で施工を行っており、今後これらの実績やノウハウを活かしていく。

・中大規模木造建築分野

 当社の技術である「環境配慮型λ-WOODⅡ® 1.5時間・CLT 1,2時間 耐火床」を採用した木造と鉄骨造のハイブリッド構造のオフィスビル(「KiGi AKIHABARA」東京都千代田区)を受注した。

・市街地再開発分野

 都心や地方都市などで再開発事業が増加傾向にあり、新規案件の事業参画を目指して積極的に取組みを進めている。

・データセンター分野

 この分野はAI普及による成長が顕著で、東電不動産株式会社発注の柏崎レジリエンスセンター新築工事を受注し、施工を進めている。

■海外建設事業

・東南アジア地域におけるインフラ整備分野

 インドネシア共和国のジャカルタ下水道整備工事の進捗率は約30%である。土木事業本部より2名の若手技術者を迎え、交通渋滞が激しいなかでの道路占有や、埋設物の移設が必要な状況でありながらも、当工事は順調に進行している。

・ベトナムにおける商業施設分野

 土地の所有権に関する政府機関との承認手続き後、2025年2月末に起工式を迎えることができた。

・台湾における建築事業分野

 建築事業本部より若手の技術者を迎え、台北駅前の超高層ビルや事務所ビル、住宅など、多くの大型案件が予定通り順調に進捗している。

 

 基本方針2:周辺事業の加速

■不動産開発事業

・地域創生プロジェクト

 福井県のかつやま恐竜の森(長尾山総合公園)再整備・管理運営事業(Park-PFI事業)は2025年4月よりホテル棟新築工事が着工した。2027年秋のホテル開業を目指している。

・飯田橋プロジェクト

 下宮比町地区では、都市計画決定に向けて施設建築物の検討をしている。また、権利者へ再開発事業における税務などの勉強会や個別相談ヒアリングをするなど、具体的に事業を進めている。揚場町地区では、事業計画の説明会を始める。

■再生可能エネルギー事業

・保有SEP船を活用した洋上風力発電事業

 一般海域における洋上風力発電の建設工事は、2027年頃から本格化する。当社を含むゼネコンとマリコンのコンソーシアム6社は建設工事で不可欠なSEPを共同保有し、洋上風力市場へ工事参入する。本SEPは洋上風力発電機の大型化を見据え改造中である。また、着床式、浮体式両フィールドでの洋上風力発電施設建設への活用が期待される。

・陸上風力発電

 2024年度はEPCとして中泊風力、新岩屋ウィンドパーク、二枚田風力、土木工事として勇知風力等の工事を実施した。

・小水力発電

 燃料調達が不要で安定的に供給できる小水力発電事業に取り組む。地元関係者の協力を得て複数個所の発電所を建設・運営することで、規模の拡大と効率的な運用を目指す。

・バイオマス発電

 2024年9月、福島県の間伐材やバーク(樹皮)等を燃料とする飯舘みらい発電所(7.5MW)が営業運転を開始した。

■技術商品事業

・脱炭素バイオマス燃料の製造・販売事業

 2023年より脱炭素バイオマス燃料「ブラックバークペレット(BBP)」の製造・販売事業に着手している。2025年2月には、BBP製造拠点となる「西条ペレット工場」が着工し、2026年10月より製造、販売を予定している。

・コッター式継手の販売事業

 当社以外のゼネコン各社にコッター式継手を販売することで順調に売上げを伸ばし、今後は年間10,000組を超える安定した販売が見込まれている。さらに、品質管理アプリやプレキャスト壁高欄等の関連技術の外販も開始した。

■新事業創出・その他事業

・環境保全型ハイブリッド農業

 2024年度実証実験においては独自藻類株による微細藻類の大量培養並びに完全閉鎖循環型アクアポニックス(陸上養殖+水耕栽培)の安定稼働を実現した。藻類培養×アクアポニックスの掛け合わせによる模倣不可能な付加価値を創出し、藻類を核としたスマート一次産業の実現を目指す。今後の事業化に向けた検証のため、当該ラボラトリーで天然地下水を利用して養殖したトラウトサーモン「SAGAアクポニサーモン」を試験販売した。同プロジェクトは社会に大きなインパクトと価値をもたらすことが評価され、2024年8月に経済誌「Forbes JAPAN」が発表した、「Xtrepreneur AWARD 2024」において「GX/カーボンニュートラル」部門を受賞した。

・再エネ電源供給&EMSパッケージ事業

 再エネ電源の自社開発については継続的に取り組み中である。また、再エネ由来の電源供給とPPA・蓄電池等の活用による電力事業の検討を開始し、2025年2月に太陽光発電オンサイトPPA事業が稼働した。

・国内PPP/PFI事業

 実績については竣工1件(周南地区衛生施設組合新斎場)、着工2件(八王子駅南口集いの拠点、かつやま恐竜の森)となった。これまで建設受注を主目的として実績を積み上げてきたが、今後は供給開始後も含めた事業全体の管理運営や資金調達について当社が主体となる取組みを強化する。

・道路トンネルMOM事業

 現在、香港において4件の道路トンネルのMOM(Management,Operation and Maintenance)事業を行っており、今後さらに東南アジアにおけるインフラ維持管理業務の拡大を目指していく。

 

 基本方針3:経営基盤の充実

■DX

・DX人財マネジメント

 当社は、全社員を対象としたeラーニングによるITリテラシー教育を行っており、2024年度の受講率は91%である。2024度からDX高度人財育成に特化した教育プログラムを導入し、「自部署における業務改善・効率化を構想し、新たなデジタルツールを積極的に活用・周知できる人財」すなわちDXサポーター人財の育成教育(IT/DX基礎教育プログラム)を開始した。毎年各本部・支店毎で一定数のDXサポーター人財を選出し、基礎と業務に活かせる実践という2か年のカリキュラムを受講してもらうことで、DXサポーター人財を増やしていく計画である。

・施工管理の効率化

 当社は、2023年度より全従業員を対象に、Azure基盤のOpenAI生成AIモデルを活用した「Kumagai Chat AI」を提供してきた。2024年12月には、ファイル読込、データ分析の回答機能を含めた大幅なバージョンアップを実施した。また、筑波大学の協力を得て生成AIに関するワークショップを実施し、当社参加メンバーは実際の業務に直結するようなユースケースを立案した。これを社内で公開し、業務の効率化を図っている。こうした施策により、社員に対し情報収集・調査の迅速化と高度化、アイデア創出と高品質な文章生成、プログラミング作業、そしてデータ分析といった多岐にわたる業務においてサポートをしている。

 

d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、工事未払金などの仕入債務や法人税等の支払いを上回る水準で売上債権の回収が進んだことなどにより、82億円のプラス(前連結会計年度は169億円のプラス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、設備投資や米国及びベトナムにおける不動産事業への投資等により、119億円のマイナス(前連結会計年度は107億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、コマーシャル・ペーパーの償還等により、164億円のマイナス(前連結会計年度は223億円のプラス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ199億円(28.4%)減少し、501億円となった。

 

b 資本の財源及び資金の流動性

・資本政策の基本方針

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は501億円保有しており、自己資本比率も39.3%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。

 短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は155.8%、固定長期適合率は45.1%と高い安全性を保っている。

・資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は421億円となっている。

 

 

 

・株主還元

 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。

 

 

・資金調達

 当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は289億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は200億円(借入実行残高30億円)である。

 安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。

 また、成長投資等の資金需要への対応にあたり、今後は財務規律を維持しつつ、資金調達手段の多様化を進めることなどにより調達コストの削減に努めていく。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1  報告セグメントの概要

 当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち、分離された財務情報が入手可能であり、取締役会等が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために定期的に検討を行う対象となっているものである。

 当社は、本社に工事種別毎の事業本部を置き、各事業本部は包括的な戦略を立案し、国内外において事業活動を展開している。また、当社はグループ会社の包括的な戦略の立案について、指導・支援を実施している。したがって、当社は、事業本部及び連結子会社を基礎としたセグメントから構成されており、「土木事業」、「建築事業」及び「子会社」の3つを報告セグメントとしている。

 「土木事業」は、治山・治水、鉄道、道路等の土木一式工事の調査、企画、設計、施工、監理、その他総合的エンジニアリング等を行っている。「建築事業」は、集合住宅、事務所・庁舎、工場・発電所等の建築一式工事の調査、企画、設計、施工、監理、その他総合的エンジニアリング等を行っている。「子会社」は、建設事業、建設用資機材の製造販売、建設技術商品の提供等を行っている。

 

2  報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法

 報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」における記載と概ね同一である。

 報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値であり、また、セグメント間の内部収益及び振替高は、市場実勢価格又は第三者間取引価格に基づいている。なお、資産は事業セグメントに配分していないが、減価償却費は配分している。

 

3  報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報及び収益の分解情報

   前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1,2

連結財務諸表計上額(注)3

 

土木事業

建築事業

子会社

売上高

 

 

 

 

 

 

顧客との契約から生じる収益

100,128

227,481

113,904

441,514

441,514

その他の収益

315

1,362

1,678

1,678

外部顧客への売上高

100,128

227,797

115,267

443,193

443,193

セグメント間の内部売

上高又は振替高

1

9,940

9,942

△9,942

100,128

227,799

125,207

453,135

△9,942

443,193

セグメント利益

4,498

2,123

5,998

12,620

29

12,649

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

366

786

862

2,015

△4

2,011

(注) 1 セグメント利益の調整額は、セグメント間取引の消去である。

2 減価償却費の調整額は、未実現利益の消去である。

3 セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。

4 その他の収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づく賃貸料収入である。

 

 

   当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1,2

連結財務諸表計上額(注)3

 

土木事業

建築事業

子会社

売上高

 

 

 

 

 

 

顧客との契約から生じる収益

105,107

266,773

125,007

496,888

496,888

その他の収益

412

1,281

1,693

1,693

外部顧客への売上高

105,107

267,185

126,288

498,581

498,581

セグメント間の内部売

上高又は振替高

0

9,587

9,588

△9,588

105,107

267,186

135,876

508,170

△9,588

498,581

セグメント利益

6,940

846

6,480

14,267

32

14,299

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

322

859

854

2,036

△3

2,033

(注) 1 セグメント利益の調整額は、セグメント間取引の消去である。

2 減価償却費の調整額は、未実現利益の消去である。

3 セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。

4 その他の収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づく賃貸料収入である。

 

【関連情報】

 前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)及び当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

1  製品及びサービスごとの情報

 単一の製品・サービスの区分の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略している。

 

2  地域ごとの情報

 本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略している。

 

3  主要な顧客ごとの情報

 外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載していない。

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

土木事業

建築事業

子会社

合計

減損損失

1

1

 

当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

土木事業

建築事業

子会社

合計

減損損失

0

0

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)及び当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

 該当事項なし。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 前連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)及び当連結会計年度(自  2024年4月1日  至  2025年3月31日)

 該当事項なし。