2024年3月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

土木事業 建築事業 子会社
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
土木事業 100,128 22.1 4,498 35.6 4.5
建築事業 227,799 50.3 2,123 16.8 0.9
子会社 125,207 27.6 5,998 47.5 4.8

事業内容

3【事業の内容】

 当社グループは、建設事業及びその周辺関連事業を主たる事業としている。事業の内容及び当該事業に係わる位置づけは次のとおりである。

  なお、以下は主要な事業の内容により区分しており、セグメント情報におけるセグメント区分と同一ではない。

 建設事業     当社及び連結子会社である㈱ガイアート、関連会社である笹島建設㈱他が建設事業を営んでいる。

  また、連結子会社であるテクノス㈱は建設事業のほか、建設用資機材の製造販売等を行っている。

 その他の事業   連結子会社である㈱テクニカルサポートは保険事業及び事務代行事業を営んでおり、当社は事務業務の一部を委託している。

  また、連結子会社である㈱ファテックは建設技術商品の提供事業を営んでおり、当社はその一部の提供を受けている。

 

 事業の系統図は次のとおりである。

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりである。

① 財政状態及び経営成績の状況

  当連結会計年度における我が国経済は、世界的な金融引締めの動きにより不透明感が残ったが、経済活動が正常化に向かい、雇用・所得環境も改善する中で、設備投資や個人消費にも持ち直しの動きがみられるなど、景気は緩やかに回復が進んだ。

  建設業界においては、建設コストの上昇の影響を受け住宅投資は弱含んでおり、民間企業の建設投資にも伸び悩みがみられたものの、公共投資は関連予算の執行により堅調に推移し、総じて受注環境は底堅く推移した。しかし、資材費や労務費の上昇もあり、採算面では一部に厳しさが残った。

  このような経営環境のもと、当社グループは2021年5月に策定した①建設請負事業の深化、②建設周辺事業の進化、③新たな事業領域の開拓、④経営基盤の強化を基本方針とする『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』にグループ一丸となって取り組み、持続的成長への挑戦を続けてきた。なお、2021年11月に、株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るため中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定しており、当該方針に基づき、最終年度となる当連結会計年度も約20億円の自己株式の取得を実施した。これにより、当連結会計年度における総還元性向は91.6%となる見通しである。

  この結果、当社グループの当連結会計年度における財政状態及び経営成績は以下のとおりとなった。

a 財政状態

・資産

 総資産は、前連結会計年度末に比べ905億円(24.0%)増加し、4,672億円となった。

 流動資産は、前連結会計年度末に比べ711億円(23.9%)増加し、3,694億円となった。手持ちの大型工事における受取手形・完成工事未収入金等の増加に加え、コマーシャル・ペーパーの発行等により、現金預金が290億円増加している。

 固定資産は、前連結会計年度末に比べ193億円(24.7%)増加し、977億円となった。保有株式の時価上昇や米国における不動産開発事業への投資等により、投資有価証券が144億円増加している。

・負債

 負債は、前連結会計年度末に比べ804億円(38.9%)増加し、2,872億円となった。

 流動負債は、前連結会計年度末に比べ725億円(42.4%)増加し、2,434億円となった。支払手形・工事未払金等の仕入債務が171億円、コマーシャル・ペーパーが149億円増加している。

 固定負債は、前連結会計年度末に比べ78億円(22.0%)増加し、437億円となった。長期借入金が81億円増加している。

・純資産

 純資産は、前連結会計年度末に比べ101億円(6.0%)増加し、1,800億円となった。その他有価証券評価差額金が89億円増加し、また、利益剰余金は、剰余金の配当により56億円減少したものの、親会社株主に帰属する当期純利益83億円の計上により26億円増加している。なお、自己資本比率は、前連結会計年度末に比べ6.6ポイント低下し、38.5%となった。

 

b 経営成績

・売上高(完成工事高)

 売上高は、手持ち工事の順調な消化により、前連結会計年度に比べ396億円(9.8%)増加し、4,431億円となった。

 なお、当社グループの事業内容は、建設事業とその他の事業に大別されるが、その他の事業に重要性がないため、連結損益計算書上は区分していない。

・売上総利益(完成工事総利益)

 売上総利益は、売上高の増加並びに土木事業及び子会社の売上総利益率(完成工事総利益率)の改善により、前連結会計年度に比べ28億円(8.6%)増加し、360億円となった。

・販売費及び一般管理費

 販売費及び一般管理費は、処遇改善、人員の増加や新規システム導入に伴う費用の増加等により、前連結会計年度に比べ17億円(7.8%)増加し、234億円となった。

・営業利益

 営業利益は、売上総利益の増加により、前連結会計年度に比べ11億円(10.2%)増加し、126億円となった。

・営業外損益

 営業外収益は、受取利息の増加等により、前連結会計年度に比べ2千万円増加し、13億円となった。

 営業外費用は、有利子負債の増加に伴う支払利息の増加等により、前連結会計年度に比べ3億円増加し、9億円となった。

・経常利益

 これにより、経常利益は、前連結会計年度に比べ8億円(6.6%)増加し、130億円となった。

・特別損益

 特別利益は、受取損害賠償金6千万円など合計7千万円を計上した。

 特別損失は、損害賠償金3億円や子会社創立周年記念関連費用7千万円など合計5億円を計上した。

・法人税等

 法人税、住民税及び事業税48億円、将来減算一時差異の増加等により法人税等調整額6億円のマイナスを計上した。

・親会社株主に帰属する当期純利益

 以上により、親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度に比べ3億円(4.3%)増加し、83億円となった。

 

セグメントごとの経営成績(セグメント間取引消去前)は次のとおりである。

a 土木事業

受注高は、前連結会計年度比5.1%増の1,064億円であった。
売上高は、同11.3%増の1,001億円、営業利益は、同150.5%増の44億円となった。

 

b 建築事業

受注高は、前連結会計年度比8.8%増の2,691億円であった。
売上高は、同8.8%増の2,277億円、営業利益は、同66.0%減の21億円となった。

 

c 子会社

 売上高は、前連結会計年度比9.5%増の1,252億円、営業利益は、同76.3%増の59億円となった。
 なお、当該セグメントにおいては、受注生産形態をとっていない子会社もあるため受注実績を示すことはできない。

 

② キャッシュ・フローの状況

  営業活動によるキャッシュ・フローは、169億円のプラス(前連結会計年度は188億円のマイナス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、107億円のマイナス(前連結会計年度は84億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、223億円のプラス(前連結会計年度は4億円のプラス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ290億円(71.0%)増加し、700億円となった。

③ 生産、受注及び販売の実績

  当社グループが営んでいる事業の大部分を占める建設事業では「生産」を定義することが困難であり、子会社が営んでいる事業には「受注」生産形態をとっていない事業もあるため、グループとしての生産実績及び受注実績を示すことはできない。また、建設事業では請負形態を取っているため「販売」という定義は実態にそぐわない。このため、生産、受注及び販売の実績については、可能な限り「① 財政状態及び経営成績の状況」において報告セグメントの種類に関連付けて記載している。

   なお、参考のため、提出会社個別の事業の状況は次のとおりである。

a 受注工事高、完成工事高及び次期繰越工事高

期別

区分

前期繰越

工事高

(百万円)

当期受注

工事高

(百万円)

(百万円)

当期完成

工事高

(百万円)

次期繰越

工事高

(百万円)

第86期

 

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

183,772

101,273

285,046

89,936

(195,109)

195,109

建築工事

301,684

247,373

549,058

209,381

(339,677)

339,733

485,457

348,647

834,104

299,317

(534,786)

534,842

第87期

 

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

195,109

106,425

301,534

100,128

(201,406)

201,270

建築工事

339,733

269,163

608,896

227,799

(381,097)

381,142

534,842

375,589

910,431

327,927

(582,503)

582,413

(注) 1 前期以前に受注した工事で、契約の変更により請負金額の増減がある場合は、当期受注工事高にその増減額を含む。

2 次期繰越工事高の下段表示額は、当事業年度末の外国為替相場に基づき海外工事の繰越工事高を修正したものであり、上段( )内は修正前である。

 

b 受注工事高の受注方法別比率

 工事の受注方法は、特命と競争に大別される。

期別

区分

特命(%)

競争(%)

計(%)

第86期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

18.2

81.8

100

建築工事

28.4

71.6

100

第87期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

18.4

81.6

100

建築工事

12.7

87.3

100

(注) 百分比は請負金額比である。

 

c 完成工事高

期別

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

第86期

(自 2022年4月1日

至 2023年3月31日)

土木工事

41,502

48,434

89,936

建築工事

19,010

190,370

209,381

60,512

238,805

299,317

第87期

(自 2023年4月1日

至 2024年3月31日)

土木工事

55,426

44,702

100,128

建築工事

28,159

199,639

227,799

83,586

244,341

327,927

(注) 1 完成工事のうち主なものは次のとおりである。

第86期

西日本高速道路株式会社

新名神高速道路 原萩谷トンネル西工事

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構

北陸新幹線芦原温泉駅高架橋他

株式会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス ・ 日下部洋子 ・ 株式会社サン・エトワール ・ 星野浩一 他

(仮称)渋谷区道玄坂二丁目開発計画 新築工事

医療法人徳洲会

湘南鎌倉総合病院外傷・救命救急センター先端医療センター増築工事

日本電産株式会社

(現 ニデック株式会社)

日本電産株式会社 向日町プロジェクトC棟建築工事(仮称)

第87期

環境省

平成29年度中間貯蔵(大熊3工区)土壌貯蔵施設等工事

北大阪急行電鉄株式会社

北大阪急行線の延伸事業のうち土木工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-3街区)

日鉄興和不動産株式会社、三菱地所レジデンス株式会社

(仮称)羽沢横浜国大駅前A地区 開発計画

学校法人 東京女子学園

(仮称)東京女子学園中学校・高等学校建替え計画

2 第86期及び第87期ともに、完成工事高総額に対する割合が100分の10以上の相手先はない。

d 次期繰越工事高(2024年3月31日現在)

区分

官公庁

(百万円)

民間

(百万円)

合計

(百万円)

土木工事

87,759

113,511

201,270

建築工事

55,925

325,217

381,142

143,684

438,729

582,413

(注) 次期繰越工事のうち主なものは次のとおりである。

東日本高速道路株式会社

東京外かく環状道路 本線トンネル(南行)大泉南工事

中日本高速道路株式会社

東名高速道路(特定更新等)酒匂川橋他2橋床版取替工事

三井不動産レジデンシャル株式会社・野村不動産株式会社・三菱地所レジデンス株式会社・伊藤忠都市開発株式会社・東方地所株式会社・株式会社富士見地所・袖ヶ浦興業株式会社

(仮称)幕張新都心若葉住宅地区計画(B-4街区)

西新宿五丁目中央南地区市街地再開発組合

西新宿五丁目中央南地区第一種市街地再開発事業施設建築物等新築工事

アパホーム株式会社・アパマンション株式会社

(仮称)アパホテル&リゾート〈大阪難波駅タワー〉新築工事

 

(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

 経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりである。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において判断したものである。

① 財政状態及び経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a 経営成績の分析

 当社グループの売上高については、期首繰越工事高の増加や追加設計変更の獲得等により前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。

 利益については、売上高の増加や土木事業並びに子会社の利益率改善があった一方で、建築事業は建設コスト上昇等により利益率が低下し、営業利益・経常利益・親会社株主に帰属する当期純利益は、前連結会計年度実績を上回ったものの、期首計画値を下回る結果となった。

 自己資本比率は、工事大型化の影響により、資金需要に対する有利子負債、仕入債務及び前受金等が増加したため、38.5%と前連結会計年度と比べ6.6ポイント低下した。ROEは、親会社株主に帰属する当期純利益が前連結会計年度を上回ったものの、保有する上場株式の時価上昇により自己資本が増加したため、前連結会計年度と同水準の4.8%となった。

 受注高は、建築事業の民間分野が好調で受注を伸ばしたことなどにより前連結会計年度実績、期首計画値をともに上回った。

 

b セグメントごとの経営成績の分析

・土木事業

 受注高は、民間分野における大型風力発電案件や海外における大型ODA案件の受注などにより、前連結会計年度比5.1%増の1,064億円となった。

 売上高は、期首繰越工事高の増加や東京外環道など中断工事の再開、追加設計変更の獲得などにより、同11.3%増の1,001億円となった。営業利益は、売上高の増加に加え、追加設計変更獲得などにより利益率が改善したため、同150.5%増の44億円となった。

・建築事業

 受注高は、住宅分野における複数の大型再開発案件や店舗分野における大型商業施設案件の受注などにより、同8.8%増の2,691億円となった。

 売上高は、期首繰越工事高及び受注高の増加により、同8.8%増の2,277億円となった。営業利益は、複数の大型工事において想定以上の物価上昇により採算が悪化した影響などにより、同66.0%減の21億円となった。

・子会社

 売上高は、ケーアンドイー株式会社における期首繰越工事高及び受注高の増加や華熊営造股份有限公司における大型工事の進捗などにより、同9.5%増の1,252億円となった。営業利益は、各社において利益率の改善が進んだことなどにより、同76.3%増の59億円となった。

 

c 中期経営計画の達成状況

 『熊谷組グループ 中期経営計画(2021~2023年度)~持続的成長への弛まぬ挑戦~』で掲げた指標の計画値及び経営戦略に対する達成状況は次のとおりである。

指標

2023年度(計画値)

2023年度(実績値)

差異

連結売上高   (百万円)

470,000

443,193

△26,806

連結経常利益  (百万円)

33,000

13,040

△19,959

ROE      (%)

12.0

4.8

△7.2

配当性向     (%)

30.0

67.6

37.6

 

 事業戦略①:建設請負事業の深化

■国内土木事業

 「インフラ大更新分野」では、コッター床版工法による施工実績が12橋と着実に増加しており、現在「酒匂川橋床版取替工事」で2橋が施工中となる。大規模更新・修繕事業は事業箇所の追加が発表され、橋梁リニューアル工事では、設計コンサルタント、鋼橋の設計施工会社等との連携強化により関係性を深めると共に、設計人員を増員して体制を強化している。また、グループ各社と連携しコッター床版工法を核とした周辺技術のパッケージ化を計画している。2024年2月にはコッター式継手の販売数が累計10,000組を超え、今後もコッター床版共同事業体(当社、株式会社ガイアート、オリエンタル白石株式会社、ジオスター株式会社)による他社への継手販売を強化し収益の拡大を図る。

 「防災・減災、国土強靭化分野」では、平成28年熊本地震後の防災対策工事への導入効果が高く評価された「無人化施工技術」を高めるため、継続して研究開発を進めているほか、AI、自動化技術やVR技術を取り入れ、Society5.0に対応した取り組みを進めており、安全性や生産性の向上に寄与した技術の実現を目指す。2022年3月にローカル5Gを技術研究所に導入し、その高速性と低遅延性を活かして建機と操作室間の映像伝送の高度化を進めている。また、元施工ダム数の優位性を活かすべく、「国土強靭化」「インフラ長寿命化(ダム再生)」案件受注のためのリニューアル工事に関する技術開発に注力している。

■国内建築事業

 「中大規模木造建築分野」では、2021年3月、「環境と健康をともにかなえる建築」をコンセプトとして、住友林業株式会社と立ち上げた中大規模木造建築ブランド「with TREE」で、中大規模建築の木造化・木質化を推進している。住友林業との協業案件として木造ハイブリッド事務所となる「KAGAプロジェクト新築工事」及び「H1O芝公園」の2案件が当連結会計年度で完成。「H1O芝公園」はウッドデザイン賞を受賞している。また、「愛媛県庁舎第二別館」や「八千代みどりが丘小学校」など両社の強みを活かした協業案件を受注した。2023年5月の非住宅木造フェアでは2022年度に引き続き住友林業と共同で、国立大学法人東京大学稲山教授と共同開発した「木質耐震垂れ壁工法」や住友林業と共同開発した「KS木質座屈拘束ブレース」(ウッドデザイン賞を受賞)を展示し、2023年度における中大規模木造建築の採用をアピールした。脱炭素社会の実現に向けた木材資材の活用や木造建築物の普及に対する社会的期待は年々高まっており協業で積み上げてきた知見や提案力及び木造建築に関する住友林業のブランド力を活かしさらなる受注拡大を目指す。

 「市街地再開発分野」では、すでに着工している「いわき駅前並木通り地区」と「西新宿五丁目中央南地区」の2地区に加え、「三田駅前Cブロック地区」も特定業務代行者として選定され、解体工事に着手している。2022年度に建設系事業協力者として参画した「赤羽一丁目第一地区」については、再開発組合が設立され、参加組合員とともに事業を推進している。

■海外建設事業

 「アジア地域の都市インフラ整備分野」では、日本国政府が推進している「質の高いインフラシステム海外展開」の施策に沿って、当社の強みとする技術(推進工法、シールド工法、トンネル工法)を発揮できる「鉄道分野」「上下水道分野」を主なターゲットとして、東アジア、東南アジアを中心に受注活動を進め、2023年7月に約15年ぶりとなる大型土木工事ジャカルタ下水道整備事業を受注し、10月に着工した。

 「台湾における圧倒的な地位の確立」では、台湾現地法人である華熊営造股份有限公司は、「TAIPEI 101」「陶朱隠園」などのランドマーク的な大型物件の施工によって高めたブランド力により、数多くの大型案件を受注し飛躍的に業績を伸ばしてきた。2023年6月には台北で新たなランドマークとなる「台北雙子星大楼(台北ツインタワーC1.D1)新築工事」を受注した。

 

 事業戦略②:建設周辺事業の進化

■再生可能エネルギー事業

 「住友林業との協業を含む木質バイオマス発電事業」では、福島県飯舘村において木質バイオマス発電事業を進めており、2024年7月に運転を開始する予定。

 「風力・太陽光発電事業」では、当社で最初の売電事業となる静岡県浜松市での太陽光発電事業、2021年2月に参入したベトナムの太陽光発電事業「CatHiep メガソーラー事業」がそれぞれ順調に稼働して当社の収益に貢献しているほか、今後も拡大が期待されるベトナムでの太陽光発電や風力発電等、再生可能エネルギー事業を積極的に推進していく。

 

■不動産開発事業

 「都市再生・まちづくり事業」では、飯田橋駅東口再開発事業について、東京都は2020年9月に「飯田橋駅周辺基盤再整備構想」を策定し、新宿区も2022年1月に都市計画を決定。2023年度は「飯田橋駅周辺基盤整備方針」が策定され再開発の機運が高まっている。事業協力者として参画している「下宮比町地区」では「下宮比町地区市街地再開発準備組合」が設立され「揚場町地区」では協議会設立を目指した準備活動を進めており権利者への個別説明を始めている。

 「住友林業との協業を含む不動産開発事業」では、住友林業との協業にて、2020年1月に事業参画したインドネシア・ジャカルタの高層コンドミニアム及び商業複合施設開発事業に取り組んでいる。2022年2月に住友林業と同社100%子会社の米クレセント社が運用を開始した米国不動産私募ファンドに参画し、成長著しい米国の都市圏でLEED等の環境認証を取得するESG配慮型の賃貸集合住宅4件(総戸数約1,000戸、資産規模約700億円、運用期間5年)を開発している。また、米テキサス州ダラス近郊にて木造7階建てのESG配慮型オフィス開発に参画している。当社と住友林業、NTT都市開発株式会社は、現地大手不動産開発会社Kim Oanh Groupとの協業により、ベトナム・ビンズン省トゥアンアン市でのタウンシップ開発に参画が決定した。本プロジェクトは、約41haの敷地での低層分譲住宅約1,200戸、高層分譲住宅約5,500戸の大規模タウンシップ開発であり、総事業費は約1,400億円、2034年までに全区画完成を予定している。住友林業、当社、NTT都市開発の日本企業3社とKim Oanh Groupが共同で開発し、近隣の工業団地に勤める管理職層だけでなく、ホーチミン市への通勤者等の実需層の住宅需要を取り込んでいく。これら住友林業との協業を通じて、海外事業での中長期的な収益拡大を目指す。また、将来において再開発区域となることが見込まれる国内の優良な収益物件を購入したほか、台湾で不動産開発を担当する現地法人(華熊建設股份有限公司)が現地デベロッパーとの連携による老朽化住宅の建替えの提案活動等を行っている。

■インフラ運営事業

 「PPP・コンセッション事業」では、2021年10月に「福井市新学校給食センター整備運営事業」、「周南地区衛生施設組合新斎場整備運営事業」、2022年10月に「八王子駅南口集いの拠点整備・運営事業」、2024年2月に「新岡山学校給食センター(仮称)整備運営事業」をそれぞれ当社が所属する企業グループが落札した。引き続き、国内では当社が得意とする給食センターや庁舎、体育館などのPFI事業に参画することを目指していく。また、香港におけるインフラPPPであるMOM事業(有料道路の管理・運営・保守事業)については、2023年8月より香港で4件目となる香港西部海底トンネルのMOM事業を開始した。

受託済みの案件(イースタン・ハーバー・クロッシング、テーツケントンネル、セントラルワンチャイバイパス)も併せた管理効率を考慮した受注活動を継続し、利益を確保していく。

■技術商品販売事業

 「バイオマス燃料開発・販売事業」では、清本鐵工株式会社とともに、高品質なバイオマス燃料「ブラックバークペレット」を共同開発した。廃棄物であるバーク材(木の皮)を原料として、林業の活性化、石炭火力発電の混焼材としてカーボンニュートラルへの貢献を目指す。2023年5月にブラックバークペレットの製造・販売事業会社「ローカルエナジーシステム株式会社」を設立した。現在愛媛県に生産設備を建設中であり、国産地域材を原料とする環境にやさしい地産地消のエネルギー循環システムの構築を目指している。

 

 事業戦略③:新たな事業領域の開拓

 2021年12月、「新事業創出プロジェクト」を立ち上げ、事業化に向け複数の案件を選定し、そのうち「藻類を核としたスマート一次産業」(藻類培養×アクアポニックス事業)に関する設備投資・実証実験を開始した。当社開発の独自株を用いた「微細藻類培養」と、陸上養殖・水耕栽培を掛け合わせた完全循環型システム「アクアポニックス」を組み合わせ、持続可能な環境保全型ハイブリッド農業の実現を目指している。佐賀市にアクアポニックスラボを新設し、実証実験を開始。本ラボは事業化に向けた実証実験等を行う研究施設となり、当社と佐賀市、国立大学法人佐賀大学、一般財団法人さが藻類バイオマス協議会、地元企業、自治会など、産学官連携による実用化や産業化を目指している。

 

 経営基盤の強化

■デジタル化

 基幹システムの刷新により業務プロセスの統合化・効率化・自動化を進め、社内各部門及び取引先が精度の高いデータをタイムリーに共有できる仕組みを構築している。また、2021年度よりDX推進の専任部署として「DX推進部」を設置した。全社役職員がITリテラシーを向上できる教育カリキュラムの策定及び実施、ビジネス変革を主導・牽引するDX人財の社内確保、ベンダーとの協業による外部のDX人財の活用に取り組んでいる。2024年度からは新たなDX戦略を策定し、活動を進めている。なお、2022年5月に経済産業省が定めるDX認定制度に基づき、「DX認定事業者」に認定されている。

 

 

 

■技術開発

 豊かな社会を実現する建設技術の深化及び人財の育成、建設技術の高度化を実現するDXとロボット技術の推進、持続可能な社会の実現に貢献する環境配慮型技術の発展を研究・技術開発方針として、技術開発により、「持続可能な社会の実現」「カーボンニュートラルの実現」「社会とともに持続的に発展する企業」を目指していく。

 

d 当社グループの経営成績に重要な影響を与える要因については、「第2 事業の状況」の「3 事業等のリスク」に記載のとおりである。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a キャッシュ・フローの状況の分析

 営業活動によるキャッシュ・フローは、大型工事における未成工事受入金やJV構成員に対する債務や仮受消費税など預り金の増加等により、169億円のプラス(前連結会計年度は188億円のマイナス)となった。
 投資活動によるキャッシュ・フローは、関係会社への貸付金の増加や設備投資等により、107億円のマイナス(前連結会計年度は84億円のマイナス)となった。
 財務活動によるキャッシュ・フローは、配当金の支払いや自己株式の取得等があった一方、コマーシャル・ペーパーの発行やシンジケートローンを含む借入金の増加等により、223億円のプラス(前連結会計年度は4億円のプラス)となった。
 為替換算による増加を含め、現金及び現金同等物の当連結会計年度末残高は前連結会計年度末に比べ290億円(71.0%)増加し、700億円となった。

 

b 資本の財源及び資金の流動性

・資本政策の基本方針

 当社グループは、事業運営上必要な流動性と資金の源泉を安定的に確保し、財務健全性を保つことを基本方針としている。当連結会計年度末において現金預金は700億円保有しており、自己資本比率も38.5%と一定水準を保っていることから、現状では財務健全性に大きな懸念はない。

 短期運転資金は、自己資金、金融機関からの短期借入及びコマーシャル・ペーパーの発行を基本としており、設備投資に係る資金や長期運転資金は、自己資金及び金融機関からの長期借入を基本としている。当連結会計年度末における流動比率は151.8%、固定長期適合率は43.7%と高い安全性を保っている。

・資金需要

 当社グループの運転資金需要のうち主なものは、建設事業に係る外注費や資機材費等の工事費、人件費を中心とした販売費及び一般管理費の営業費用である。大型工事における支出先行及び人員数の増加により営業費用に対する資金需要は増加傾向にある。また、中期経営計画に掲げている基本方針に基づき、周辺事業における確固たる収益源創出のための400億円規模の投資のほか、90億円規模の設備投資を計画している。

 なお、当連結会計年度末における有利子負債の残高は523億円となっている。

 

 

 

・株主還元

 株主還元の拡充並びに資本効率の向上を図るために2021年11月11日開催の取締役会において、前中期経営計画期間(2021~2023年度)に総額100億円規模の自己株式を取得する方針を決定した。当連結会計年度においては、約20億円の自己株式を取得し614,800株を消却した。前中期経営計画期間における累計では、約100億円の自己株式を取得し3,520,100株を消却した。

 2024年5月に策定した「中期経営計画(2024~2026年度)」では、適正かつ安定的に利益還元していくことを基本方針とし、連結配当性向40%目途を財務目標に掲げている。また、事業環境の変化や各事業戦略・投資の進捗に応じて、自己株式の取得を含め機動的に追加還元を検討する方針である。

 

 

・資金調達

 当社グループは、資金調達の手段として金融機関からの借入及びコマーシャル・ペーパーの発行等を活用している。資金調達のより一層の安定化並びに効率化を図るため、シンジケートローン契約を締結しており、そのうち長期のターム・ローンの当連結会計年度末の契約総額は269億円、コミットメントラインの当連結会計年度末の契約総額は300億円(借入実行残高0円)である。また、コマーシャル・ペーパーを発行しており、当連結会計年度末の発行残高は149億円である。

 安定的な資金調達手段を確保しており、突発的な資金需要の発生にも十分対処可能な状況である。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

  当社グループの連結財務諸表は、我が国において一般に公正妥当と認められている会計基準に基づき作成されている。連結財務諸表の作成にあたっては、当連結会計年度における資産、負債並びに収益、費用の金額に影響する見積り、判断及び仮定が必要となり、これらは継続した評価、過去の実績、経済等の事象、状況及びその他の要因に基づき算定を行っているが、本質的に不確実性を内包しており、実際の結果とは異なる場合がある。

  当社グループの重要な会計方針のうち見積り、判断及び仮定による算定が含まれる主な項目は、貸倒引当金、完成工事補償引当金、工事損失引当金、偶発損失引当金、賞与引当金、株式給付引当金、退職給付費用、一定の期間にわたり収益を認識する方法(いわゆる旧工事進行基準)による収益認識、繰延税金資産の回収可能性等があり、当該見積り、判断及び仮定と実際の結果に重要な差異が生じた場合は、当社グループの連結財務諸表に影響を及ぼす可能性がある。

  連結財務諸表の作成にあたって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等(1)連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりである。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1  報告セグメントの概要

 当社の報告セグメントは、当社の構成単位のうち、分離された財務情報が入手可能であり、取締役会等が経営資源の配分の決定及び業績を評価するために定期的に検討を行う対象となっているものである。

 当社は、本社に工事種別毎の事業本部を置き、各事業本部は包括的な戦略を立案し、国内外において事業活動を展開している。また、当社はグループ会社の包括的な戦略の立案について、指導・支援を実施している。したがって、当社は、事業本部及び連結子会社を基礎としたセグメントから構成されており、「土木事業」、「建築事業」及び「子会社」の3つを報告セグメントとしている。

 「土木事業」は、治山・治水、鉄道、道路等の土木一式工事の調査、企画、設計、施工、監理、その他総合的エンジニアリング等を行っている。「建築事業」は、集合住宅、事務所・庁舎、工場・発電所等の建築一式工事の調査、企画、設計、施工、監理、その他総合的エンジニアリング等を行っている。「子会社」は、建設事業、建設用資機材の製造販売、建設技術商品の提供等を行っている。

 

2  報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額の算定方法

 報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「注記事項(連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項)」における記載と概ね同一である。

 報告セグメントの利益は、営業利益ベースの数値であり、また、セグメント間の内部収益及び振替高は、市場実勢価格又は第三者間取引価格に基づいている。なお、資産は事業セグメントに配分していないが、減価償却費は配分している。

 

3  報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産、負債その他の項目の金額に関する情報及び収益の分解情報

   前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1,2

連結財務諸表計上額(注)3

 

土木事業

建築事業

子会社

売上高

 

 

 

 

 

 

顧客との契約から生じる収益

89,936

209,160

102,733

401,831

401,831

その他の収益

216

1,455

1,671

1,671

外部顧客への売上高

89,936

209,376

104,189

403,502

403,502

セグメント間の内部売

上高又は振替高

4

10,152

10,157

△10,157

89,936

209,381

114,342

413,660

△10,157

403,502

セグメント利益

1,795

6,249

3,401

11,447

36

11,483

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

270

628

934

1,834

△4

1,830

(注) 1 セグメント利益の調整額は、セグメント間取引の消去である。

2 減価償却費の調整額は、未実現利益の消去である。

3 セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。

4 その他の収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づく賃貸料収入である。

 

 

   当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

報告セグメント

調整額

(注)1,2

連結財務諸表計上額(注)3

 

土木事業

建築事業

子会社

売上高

 

 

 

 

 

 

顧客との契約から生じる収益

100,128

227,481

113,904

441,514

441,514

その他の収益

315

1,362

1,678

1,678

外部顧客への売上高

100,128

227,797

115,267

443,193

443,193

セグメント間の内部売

上高又は振替高

1

9,940

9,942

△9,942

100,128

227,799

125,207

453,135

△9,942

443,193

セグメント利益

4,498

2,123

5,998

12,620

29

12,649

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

366

786

862

2,015

△4

2,011

(注) 1 セグメント利益の調整額は、セグメント間取引の消去である。

2 減価償却費の調整額は、未実現利益の消去である。

3 セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っている。

4 その他の収益は、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号 2007年3月30日)に基づく賃貸料収入である。

 

【関連情報】

 前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)及び当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

1  製品及びサービスごとの情報

 単一の製品・サービスの区分の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略している。

 

2  地域ごとの情報

 本邦の外部顧客への売上高が連結損益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略している。

 

3  主要な顧客ごとの情報

 外部顧客への売上高のうち、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める相手先がないため、記載していない。

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

土木事業

建築事業

子会社

合計

減損損失

0

0

 

当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 

 

 

 

(単位:百万円)

 

土木事業

建築事業

子会社

合計

減損損失

1

1

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)及び当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 該当事項なし。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 前連結会計年度(自  2022年4月1日  至  2023年3月31日)及び当連結会計年度(自  2023年4月1日  至  2024年3月31日)

 該当事項なし。