2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

当社グループの事業運営に影響を与える可能性のあるリスクを統合的に把握し、リスクの顕在化を未然に防止するとともに、顕在化した場合の損失を極小化することを目的に、「リスク管理委員会」を中心としたリスクマネジメント体制を構築しています。

有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項につき、重大な影響を及ぼす可能性のある主なリスクには、以下のようなものがあります。リスク項目及びカテゴリーの記載にあたっては、影響度及び顕在化の可能性から判断し、優先順位が高いものから、その具体的な内容と対策を記載しています。

なお、記載内容には、将来の予想に関する事項も含まれておりますが、当該事項は当連結会計年度末現在において判断したものであります。

 

(1) 設備工事事業共通(建築設備事業、機械システム事業、環境システム事業)

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

人財確保に関するリスク

人財・労務

大幅な採用計画の未達や離職率の増加があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

・新卒社員の初任給ならびに従業員の給与水準引き上げ

・認知度向上

・働き甲斐のある職場環境構築による従業員エンゲージメントの向上

 

 

協力会社の技術者が減少し、施工に必要な人数の確保ができない場合、業績に影響を及ぼす可能性がある

・協力会社との信頼関係強化

・三機テクノセンターを活用した協力会社教育

・新規協力会社の探索

・施工の自動化、省力化

労働関連法令に関するリスク

人財・労務

建設業における労働時間上限規制適用開始に伴い、延べ労働時間が低下することで、対応可能工事量が低減し、業績に影響を及ぼす可能性がある

BIMなどのICTの活用

による設計及び施工の効率

資機材の調達・納期及び労務費に関するリスク

経済・市場

・為替変動やエネルギー価格の上昇等により、資機材価格及び労務費が急激に高騰しそれを請負金額に反映させることが困難な場合には業績に影響を及ぼす可能性がある

・資機材納入遅延により全体工期が遅れ、客先業務に支障を来し、信用・信頼を失うことにより、業績に影響を及ぼす可能性がある

・受注前:物価上昇に対する請負金額の見直しを契約に取り入れる交渉

・受注後:早期発注と原価圧縮の工夫

・納期情報を常に更新し、水平展開を図る

施工中の事故及び災害に関するリスク

技術・競争

工事施工中の事故や災害の発生に伴い、業績に影響を及ぼす可能性がある

・工事の安全衛生管理の徹底

・品質リスクアセスメントを活用したトラブル未然防止

・不測の事態に備えて工事賠償責任保険に加入

不採算工事に関するリスク

技術・競争

工事途中での設計変更や、工程遅れなどによる設備工程の圧迫や作業員の増員、手直し工事等による想定外の追加原価により不採算工事が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

定期的に工事進捗管理を行うことによるリスクの早期把握及び対策の徹底

米国関税政策に関するリスク

経済・市場

米国政府による関税政策の変更により、顧客の設備投資動向の変化や資機材価格が上昇した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある

・顧客の設備投資動向及び資機材価格のモニタリング強化

・資機材の多様な供給源確保

技術開発に関するリスク

技術・競争

主に脱炭素化のための省エネに関する最新技術の導入需要が高まっているため、新技術の開発・導入や体制の構築遅れ等が発生し、既存の技術が陳腐化した場合は、業績に影響を及ぼす可能性がある

・省エネに関する積極的な技術開発投資の実施

・技術開発要員の増強や開発体制の連携強化

 

海外事業に関するリスク

法令

現地法令・規制及び当局による監督・規制の内容の認識不足により、行政指導や罰金の対象になる可能性がある

・現地スタッフへの教育推進

・現地情報の的確な収集分析

・「海外危機管理マニュアル」の検証/更新の検討

 

地政学・海外

戦争・テロの発生やその国の政情悪化、経済状況の変動、予期しない法律・規制の変更等があった場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

 

 

 

(2) 建築設備事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

計画案件の過多及び物件の大型化に伴う要員計画に関するリスク

人財・労務

・半導体や自動車、データセンター関連の計画が続出、大都市圏の再開発が増加。施工要員の配置や、協力会社の確保が困難になり事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・物件の大型化に伴い、工期が長期化し、物価上昇、施工対象地域での要員確保や投資計画の変更による要員計画への影響が高まり、業績に影響を及ぼす可能性がある

・施工管理計画のフロントローディングによる施工の合理化

・施工要員と協力会社工事量を踏まえた事業活動

・大型物件と特殊物件に対応するためエンジニアリング推進本部及び設計本部を設置し、全社横断的な体制を構築

・工期及び物価上昇リスクを含めた契約内容の検討

 

 

(3) 機械システム事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

競争力低下に関するリスク

技術・競争

同業他社との競争が激しく、価格競争に陥る等により業績に影響を及ぼす可能性がある

・大和プロダクトセンターの生産工程を見直し、合理化

・新製品の投入

 

 

(4) 環境システム事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

市場環境変化に関するリスク

技術・競争

地方自治体の財政悪化を背景として、価格競争が激化する可能性がある

・LCE事業の展開(※)

・価格優位性のある商品を核とした受注

長期事業に伴う価格変動に関するリスク

経済・市場

DBO案件は、長期にわたる運営維持管理を伴うため、著しい物価上昇等予期しない事象が発生した場合には、業績に影響を及ぼす可能性がある

物価スライド条項等を契約に取り入れる交渉及び事業運営のモニタリング徹底

 

※ライフサイクルエンジニアリング(Life Cycle Engineering)事業の略称。新築、保守・メンテナンス、リニューアル、建替えといった建築物のライフサイクル全体を通じてサービスを提供する当社グループの事業コンセプト

 

(5) 不動産事業

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

保有物件及び景気動向等外部環境に関するリスク

経済・市場

建物や設備の老朽化・陳腐化による、テナント入居率の低下や景気動向等に伴う賃貸料相場の急激な下落が発生した場合、業績に影響を及ぼす可能性がある

・テナントの入居状況のモニタリング

・テナントニーズの早期把握

・テナント与信に係わるモニタリング精度の向上

・環境や災害対応他、テナントニーズに対応した設備導入等、物件の付加価値向上のための投資

 

 

 

(6) 当社グループ共通リスク

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

法令違反に関するリスク

法令

建設業法、独占禁止法、労働基準法等の法令違反に対する行政処分等により事業活動に制限を受ける可能性がある

・行動規範、行動指針の浸透

・企業倫理研修の継続実施

過重労働に関するリスク

人財・労務

長時間労働等により、従業員の健康被害が発生した場合、人的資本が毀損されることで、事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・適正な人員配置の実施

・業務効率化の推進

・緻密な労務管理の実施

人権に関するリスク

人財・労務

当社グループ及びサプライチェーンにおける人権侵害が起きた場合に、取引停止や株価の下落、罰金の支払、訴訟の提起が発生し、業績に影響を及ぼす可能性がある

人権方針に基づく人権デューデリジェンスの実施および教育

データセキュリティに関するリスク

IT

サイバー攻撃等により個人情報、顧客名簿、施工図面(顧客機密情報)等の流出により損害を被る可能性がある

・不正アクセス対策の強化

・情報セキュリティに関するeラーニングの実施

・不審メールなどへの啓蒙教育

・協力会社への情報セキュリティ対策状況確認の継続実施

訴訟等に関するリスク

法令

事業活動において契約不適合責任、製造物責任、特許、契約上の債権債務等に関する訴訟提起及びその他の法的な請求をされる可能性がある

・契約締結前の法務部門によるチェックの徹底

・品質リスクの抽出とプロセスごとの品質管理の徹底

・トラブル関係情報の早期把握及び対策の徹底

株式相場の変動に関するリスク

財務

・保有する株式の時価が下落し、資産が減少するとともに損失が発生する可能性がある

・株価の下落により退職給付年金資産・信託資産が減少し、積立不足が発生する可能性がある

・2028年3月末までに政策保有株式を連結純資産の20%未満とすることを目標に、2024年3月末時点から上場株式の銘柄数、金額ともに50%以上削減

・退職給付年金資産・信託資産の運用状況のモニタリング及び体制の強化

戦争・テロ・自然災害に関するリスク

地政学・海外

戦争・テロ・地震や台風等の大規模な自然災害が発生した場合には、事業の継続が困難となり、業績に影響を及ぼす可能性がある

BCP体制の強化及びBCPを計画的に見直し有効に機能させる「事業継続マネジメントシステム(BCMS)」の継続運用

気候変動に関するリスク

経済・市場

気候変動リスクの内容及びその対策については、「2. サステナビリティに関する考え方及び取組 (2)重要なサステナビリティ項目 ①気候変動関連」に記載のとおりであります

 

顧客の信用に関するリスク

財務

顧客の倒産等によって債権が回収不能となり、損失が発生し、業績に影響を及ぼす可能性がある

・顧客の与信・回収状況に係わるモニタリング精度の向上

・与信リスクの高い特定の顧客に対する綿密な債権管理

金利の変動に関するリスク

財務

・金利変動等により退職給付年金資産・信託資産が減少し、積立不足が発生する可能性がある

・金利上昇により、資金調達コストが増加する可能性がある

・年金資産・信託資産の運用状況のモニタリング及び体制の強化

・退職給付債務増加の抑制

・割引率及び期待運用収益率の定期的な見直し

・代金回収の早期化促進による借入金増大抑制

感染症流行に関するリスク

人財・労務

感染症の大規模流行に伴い、当社グループ及び協力会社従業員等関係者に多数の罹患者が発生した場合や、移動・外出他、種々の制限が継続した場合、事業遂行に影響を及ぼす可能性がある

・感染症拡大に対応できる社内体制の整備

・平常時からテレワーク等の行動制限対応を習熟

・感染防止対策に必要となる衛生用品の常時備蓄

 

 

 

リスク項目

カテゴリー

内容

対策

業績の季節変動に関するリスク

財務

年度末にかけて工事の完成が集中することや工事進捗が急進する傾向にあるため、それに伴い、資金需要が大きく変動する可能性がある

・資金繰り予想精度の向上

・業績の進捗管理の徹底

システム障害に関するリスク

IT

コンピュータウイルス感染、不正アクセス等により、社内システムが停止し、業務が継続できない可能性がある

セキュリティ対策ソフト(EDRソフト)を導入し、専門業者による常時監視を実施

デジタル競争に関するリスク

IT

生成AIを始めとした、デジタル技術の導入遅れが原因で、業務プロセスの最適化が遂行されないことにより、競争力が失われ、業績に影響を及ぼす可能性がある

・生成AIサービスの導入及び利用方法の教育を実施

・経済産業省「DX認定事業者」に認定

・デジタル改革推進部を設置

・デジタル人財の育成、強化を目的とし、独自の「三機ITパスポート」の受検を実施

AI利用に関するリスク

IT

生成AIの不適切な利用により、情報漏洩、著作権侵害、不正なデータ収集等が行われ、ステークホルダーからの信頼を損ない、業績に影響を及ぼす可能性がある

「情報セキュリティ対策ガイドライン」に生成AI利用時の注意点を追加し、全社員にeラーニングによる教育を実施

 

 

配当政策

3 【配当政策】

当社では、株主に対する利益の還元を経営上重要な施策の一つとして位置づけております。

2022年度を初年度とした中期経営計画“Century 2025”Phase3において、配当については配当性向50%以上、1株当たり年間配当金70円以上の安定的・継続的な配当を実施することを、自己株式取得についてはPhase3期間中に500万株程度を実施していくことを基本方針としております。

当第101期(2025年3月期)の剰余金の配当につきましては、中間配当として1株につき普通配当55円を実施しており、期末配当金は1株につき110円(年間配当計165円)を実施することを2025年6月26日開催予定の定時株主総会にて決議する予定です。その結果、配当性向は51%となります。

また、当第101期(2025年3月期)は141万株の自己株式取得を実施しております。

 

なお、当初計画より1年前倒しして中期経営計画2027を策定し、次期事業年度から実施してまいりますが、配当方針についても、安定的かつ持続的な配分を維持することを目的として、純資産配当率(DOE)5%以上とすることといたしました。今後も従来の高い配当還元は維持しつつ、中期経営計画2027に基づく新たな施策を実施し、超長期ビジョンで掲げた「選ばれ続ける三機へ!」の実現に向けて邁進してまいります。

 

当社の剰余金の配当は、中間配当と期末配当の年2回を基本的な方針としており、これらの剰余金の配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。

内部留保資金につきましては、競争力の強化をはかるとともに、更なる事業発展の基礎を構築するため、新事業と新技術の開発等に有効投資してまいります。

また、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額
(百万円)

1株当たり配当額
(円)

2024年11月11日

取締役会決議

2,918

55.00

2025年6月26日

定時株主総会決議予定

5,694

110.00