2023年12月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると認識している事項には、以下のようなものがあります。

 また、当社グループとして、必ずしも事業遂行上のリスクとは考えていない事項につきましても、投資者の投資判断上あるいは当社グループの事業を理解いただく上で重要であると考えられる事項については、投資者に対する情報開示の観点から開示をしております。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末において、当社グループが判断したものであります。

(1)当社グループを取り巻く事業環境について

 当社グループの行っているドキュメンテーション事業、エンジニアリング事業及び技術システム事業は、自動車産業、情報機器産業、産業機械・工作機械産業に属する企業を主要取引先としており、技術系資料等の作成、設計支援、各種産業設備・試験装置等の製作および技術系システムの開発等の業務を受託しております。

 顧客企業のニーズの多様化・高度化に伴って、顧客企業が製品を開発していく工程において、アウトソーシングの重要度は増しております。その反面、企業間競争のグローバル化の進展に伴い、コスト削減、品質、納期などの顧客企業側の要請も厳しくなっております。とりわけ、情報家電をはじめ自動車産業、産業設備・工作機械産業においては、業界内における競争環境は厳しく、かつ技術革新の早い分野でもあるため、製品のライフサイクルも短期化する傾向があります。

 したがいまして同業他社との価格競争等の進展によって当社グループの競争力が低下した場合、あるいは顧客企業の製品の開発ニーズに対処し得るための支援体制が十分に整備できなかった場合、当社グループの期間損益等に影響を及ぼす可能性があります。

 また、景気動向その他の理由により、顧客企業における事業等の撤退、製品の開発・発売計画の中止、延期等が行われた場合、当社グループの期間損益等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)特定の取引先への取引依存度について

 主要取引先への売上依存度のうち、上位3社への売上依存度は、前連結会計年度が36.2%、当連結会計年度が42.2%でありました。

 当社グループでは、ドキュメンテーション事業、エンジニアリング事業、技術システム事業それぞれの特性ならびにシナジーを活かして、既存取引先との関係を維持しつつ、新規取引先の獲得にも注力していくことを継続的に行い、特定の取引先への依存度をより低減させていく方針であります。

 

(3)法的規制について

 当社グループが行っている各事業は、顧客企業の製品開発等の支援を行うにあたり、顧客企業との間で「業務請負契約」あるいは「派遣契約」を締結いたします。当社グループでは、従業員あるいは派遣対象者を顧客企業に派遣・常駐させるなどして、顧客企業における製品開発業務へのサポート体制を敷いております。「業務請負契約」とするか「派遣契約」とするかは顧客企業側のニーズ等によって決まることとなります。

① 業務請負契約

 業務請負では、当社グループに属するそれぞれの会社(以下、「当社等」という。)と顧客企業との間の業務請負契約に基づき、請負った業務を遂行することとなります。派遣契約との違いは、労働者の業務遂行に係る指揮命令が雇用主(当社等)に帰属している点にあり、請負った業務成果に対して契約相手先より対価が支払われることとなります。

 労働者派遣法に基づき派遣労働者を受け入れる企業では、使用者責任や労働安全上の義務を果たすための対策を講じる必要がありますが、こうした責任・義務を回避するため、契約形態を業務請負契約として、実質的には派遣対象者を派遣先企業の指揮命令下に置く、偽装請負の問題が社会的にも取り上げられています。

 偽装請負は職業安定法や労働基準法に抵触するものであり、当社等が顧客企業と業務請負契約を締結する場合、当社等の従業員が顧客企業構内にて業務を行う必要が生じたとしても、必ず管理責任者を設置し、従業員への指揮命令を当該管理責任者が行うこととする体制にしております。また管理責任者からは定期的な業務報告を受けることとしており、当該問題に発展しないための対策を講じております。

  しかしながら、顧客企業が行政当局より偽装請負の問題を指摘され、業務停止等の処分を受けることとなった場合、特定の取引先への取引依存度の高い当社グループにとって、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

② 派遣契約

 当連結会計年度において、派遣業務を行ったのは、当社、株式会社MCOR及び株式会社PMCの3社であります。
 2015年9月30日に施行された「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」により、特定労働者派遣事業(届出制)と一般労働者派遣事業(許可制)の区分が廃止される等の改正がなされました。
 また、労働者派遣法および関係諸法令は、情勢の変化に伴って継続的に見直しが行われております。その結果、当社グループの事業にとって不利な改正であった場合には、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)瑕疵担保責任、製造物責任について

 業務請負契約に基づく受注は、受託した業務の遂行と完成を約し、その成果に対して対価が支払われる契約形態となっているため、成果物に対する瑕疵担保責任や製造物責任等の責任問題が当社グループに及んだ場合、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
 

(5)三菱自動車工業株式会社とのサービスレベル契約について

 当社連結子会社の株式会社MCORは、三菱自動車工業株式会社の製品の開発に関わるシステム開発・運用管理に関する業務の受託に関して、三菱自動車工業株式会社との間で「ITアウトソーシングサービス契約」を締結しております。

 本契約では年間の基本的業務発注量が取決められており、2024年3月31日までは、当該業務発注量に対して82.5%を下限とする業務の発注が同社より保証されております。契約期間を過ぎてからは、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループの三菱自動車工業株式会社への売上依存度は、前連結会計年度では27.6%、当連結会計年度では33.0%でありました。

 

(6)のれんの償却に伴う連結業績への影響

 当社は2011年12月期に株式会社PMCの株式を取得と企業買収を行っております。

 この株式の取得によって「のれん」が発生しております。当社は今後も事業拡大を目的とした企業買収に取り組み、企業価値の向上を図っていくこととしております。こうした企業買収には多額の資金需要が発生する可能性があるほか、企業買収に伴って発生した「のれん」の償却により業績に影響を与える可能性もあります。

 また、これらの買収が必ずしも当社グループの見込どおりに短期間で連結の収益に貢献するとは限らず、連結収益への貢献に時間を要してしまう可能性もあります。

 更に、「のれん償却額」はその全額が税務上の損金として算入ができないため、税効果会計適用後における法人税等の負担率は高くなります。したがいまして、「のれん償却額」あるいは税効果会計適用後の法人税等の負担額を吸収し得るだけの収益が伴わなかった場合、業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(7)人材の確保・育成について

 当社グループが行っている、ドキュメンテーション事業、エンジニアリング事業及び技術システム事業においては、事業を拡大するにあたって人材の確保、育成が不可欠であります。当社グループでは、成長戦略の実現に必要な人材の確保や育成を積極的に行っていく方針ですが、適格な人材の確保、社内教育等が計画どおりに進まない場合は、当社グループの事業運営等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)情報管理について

 当社グループの従業員や派遣社員は、顧客企業内において、あるいは顧客企業からの依頼において、製品の情報に触れる業務に携わるケースがあります。当社グループでは、情報管理について教育・指導などを通じて管理の強化に努めておりますが、予期せぬ事態によって、顧客や当社グループに関わる機密情報が外部に漏洩した場合、当社グループの信用力が失墜することによって、当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

(9)自然災害等について

 地震等の自然災害や予期せぬ事故等の発生により、当社グループあるいは顧客企業の重要な設備が損壊する等の被害があった場合、また、新型コロナウイルス変異株や、新型コロナウイルス以外の感染症の流行等により、当社グループあるいは顧客企業での操業の縮小、停止等が起きた場合には、当社グループの業績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)会計制度・税制等について

 会計制度または税制の予期せぬ新たな導入や変更等が行われた場合、当社グループの業績や財政状態が影響を受ける可能性があります。

 また税務申告において税務当局との見解の相違が生じた場合にも、当社グループの業績や財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)物価の上昇について

 燃料価格の大幅な上昇等から物価水準が上昇しております。これにより原材料費や光熱費をはじめとする諸経費、あるいは人件費が上昇し、それらをタイムリーに取引価格への転嫁ができなかった場合、当社グループの収益性を圧迫する可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

 配当については、経営環境の急激な変化に対応し、安定的な経営基盤の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、株主への利益還元として長期的な安定配当を維持することを方針としております。配当の回数については、定時株主総会にて1回もしくは中間配当を含めた2回を基本方針としており、配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。なお、当社は会社法第454条第5項に基づき、中間配当制度を採用しております。

 内部留保資金については、今後の経営環境の変化に対応するため、さらなる事業展開を図り今まで以上に競争力を高めるために有効投資をすることで、企業価値を高めてまいりたいと考えております。

 今後の配当につきましては、経営環境、将来の成長、収益の状況等を総合的に勘案し、実施してまいります。

 上記方針に基づき、当事業年度は1株当たり66円の配当を実施することを決定しました。うち中間配当は32円であり、連結配当性向は45.1%となります。

当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たりの配当額(円)

2023年8月10日

取締役会

218,241

32

2024年3月25日

定時株主総会

231,878

34