2025年7月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります

(単一セグメント)
  • 売上
  • 利益
  • 利益率

最新年度
単一セグメントの企業の場合は、連結(あるいは単体)の売上と営業利益を反映しています

セグメント名 売上
(百万円)
売上構成比率
(%)
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
(単一セグメント) 1,407 100.0 -1,589 - -112.9

事業内容

3【事業の内容】

(ミッション・ビジョン)

 当社グループは、「見えないリスクを可視化する」とのビジョンのもと、ドローン・ロボット(以下「ドローン等」という。)やデータ処理・解析技術を活用し、産業インフラの保守・点検領域における安全性・効率性・持続可能性の向上を支援する各種ソリューションを提供しております。その中でも、屋内のGPSが届かない「狭くて、暗くて、危険な」特殊環境におけるインフラ・設備点検は、当社グループの強みを最も発揮できる領域の一つです。自社開発の屋内狭小空間点検ドローン「IBIS(アイビス)」を用いて、人が立ち入ることが困難な空間からデータを取得し、3次元化クラウド「LAPIS(ラピス)」によるデータ処理やAI解析、クラウド管理などのデジタル化まで一気通貫でサービス提供をしております。

 当社グループのソリューションは、老朽化したインフラの増加、人手不足、熟練作業員の高齢化といった喫緊の社会課題に対し、人が入らずに点検できる新たな選択肢を提供するものです。当社グループのソリューションを広めることで、国内の産業基盤の強化と、当社のミッションでもある「誰もが安全な社会を作る」ことの実現につながると考えております。

 このように、当社グループでは、ドローン等を軸としたハードウェア技術と、撮影画像・映像等の加工・処理・管理といったソフトウェア技術を用い、インフラ施設・設備等へのDXソリューションを提供するインフラDX事業という単一事業を行っております。

 当該事業セグメントにおいて、ドローン等によるインフラ・プラントの調査・点検・測量に資するデータの提供や、ドローンの製造・販売を実施する「ドローン事業」と、ドローン等により取得したデータの画像処理技術等により、映像、3次元データ、異常検知に資する情報等をデジタル上に構築・提供する「デジタルツイン事業」、そして、両事業を支える事業として、当社グループの技術力やノウハウをベースにした新しいソリューションを開発する「ソリューション開発事業」を合わせた3つの事業を展開しております。

 

(当社グループの事業内容)

(1)ドローン事業

 「ドローン事業」とは、自社開発した屋内専用の産業用小型ドローン「IBIS」を中心に、その他ドローン等のデバイスを活用し、ユーザーが抱える各種課題の解決に資するソリューションの提供を行う事業であります。

 具体的には、調査・点検・測量等を目的としたドローン撮影画像の提供を行う「点検ソリューション」及び当該用途に供されるドローンの機体販売・レンタルを行う「プロダクト提供サービス」を展開しております。特に、ドローン等で撮影した画像は後述のデジタルツイン事業において、3次元化の基礎となる重要なデータとなります。

 サービスの中核を構成するIBISは、製鉄業等における実現場での綿密な実証実験のもと開発された、屋内の暗所・狭小空間、鉄粉の舞う環境や高温環境での飛行に耐えうる防塵性・耐熱性を有した、20cm四方程度の大きさの小型ドローンとなります。転落リスクを伴う高所空間、狭小で点検員が進入できない空間、高温あるいは半水没環境、又は有毒性のガスが含まれているような空間といった、危険かつ点検が困難な箇所を人に代わって調査・点検を行うことが可能となります。このような環境は国内外に数多く存在しており、IBISは「狭く、暗く、危険な」環境においても接近目視と同等の調査・点検を実現しております。

 「ドローン事業」においては、下記のサービスを展開しております。

点検ソリューション

今まで人が立ち入ることができなかった場所や人が入ると危険な空間にIBIS等が人に代わって調査・点検し、撮影した施設・設備等の動画をユーザーへ提供するサービス

プロダクト提供サービス

ドローンで事業展開したい事業者や自社保有施設でドローンを運用したい事業者などへ当社プロダクトIBIS等を販売・レンタルするサービス

(機体販売)

IBISと必要備品一式を販売するサービス。修理サービスや講習会サービスも提供

(レンタルサービス)

IBISと必要備品一式を月額レンタルするサービス。修理サービスや講習会サービスも提供

 

 点検ソリューションの主要顧客は製鉄業・鉄道業・建設業・製造業・官公庁等で、過年度より継続して利用しているエンドユーザーが占める売上高割合(継続顧客の売上高割合※1)は2025年7月期において59%(前事業年度59%)と、リカーリング性が高いという特徴があります。また、プロダクト提供サービスにおける「IBIS2」の提供セット数は2025年7月末時点で85セット(前事業年度末72セット)となっており、そのうち、機体販売は49セット(前事業年度末39セット)、レンタルサービスのレンタルセット数は36セット(前事業年度末33セット)となっております。

 

(2)デジタルツイン事業

 「デジタルツイン事業」とは、当社の関連会社であるCalTa株式会社(以下「CalTa」という。)が提供するソフトウェアTRANCITY(以下「TRANCITY」という。)や、その基幹システムを構成する当社のソフトウェアLAPIS(※2)を用いて、デジタルツインサービスを提供する事業となります。それらのソフトウェアを活用し、映像及び映像以外の周辺情報(例えば、ガス濃度、温度など、ドローン等から取得した情報等)を、デジタルツイン(※3)のプラットフォーム上に構築することで、顧客が設備の維持管理や建設現場の管理などを行う上で必要となる様々な情報の一元管理を支援しております。

 TRANCITYの顧客は、鉄道業・建設業が中心で、インフラ及び設備の維持管理のためには時系列でデータを保管することが有用となります。そのため、当社サービスを用いてデータを保管し続けることが想定されることから、他社サービスへスイッチしにくく、継続利用が見込めるサービスであります。

 

 なお、「デジタルツイン事業」においては、下記のサービスを展開しております。

データ処理・解析サービス

IBISを用いて撮影した施設・設備等の動画データ等を基に、LAPISを通じて3次元化・オルソ化(※4)等のデータ加工処理や3次元データの解析(経年変化解析や異常検知等)、BIM(※5)等のデジタル図面化を提供するサービス。また、IBISによる撮影データだけではなく、屋外用ドローンにより撮影した動画データやレーザースキャナによる3次元データを加工、解析するサービスも提供

デジタルツインプラットフォーム

CalTaの提供するTRANCITYの画像処理に関するライセンス提供

 

 

(3)ソリューション開発事業

 「ドローン事業」「デジタルツイン事業」を展開する上で源泉となる事業であり、インフラ・プラント業界や建設業界等の企業に対し、効率化・省力化・省人化のニーズに応じたドローン等の開発やデジタルツインプラットフォームの開発、ユーザー保有施設のデジタル管理ソフトウェアなど、当社グループの技術力とノウハウを基にハードウェアからソフトウェアまで幅広いソリューションを自社開発にて提供する事業となります。

当事業では、導入にあたり顧客企業からのヒアリングや情報分析を徹底して行うことで課題を深く理解し、当該理解を基に活用方針を明確にし、実証実験や試作開発、本開発、さらには事業化後の継続開発まで、長期にわたり顧客企業と協働し、課題解決に取り組んでおります。

これまでに、日本製鉄株式会社(以下「日本製鉄」という。)との高温環境対応ドローンの開発や、東京電力グループとの高放射線環境下でのドローンの活用といった特殊環境特化型ドローンの共同開発等を行っており、現在も取引を継続しております。また、後述するTRANCITYもJR東日本グループから受託したソリューション開発が発端となっています。ドローンの開発にとどまらず、ロボットやデジタルツインを主とした新たなサービスの源泉となる開発を進めております。

 

 

(関連会社の概要)

 CalTaは、JR東日本スタートアップ株式会社、JR東日本コンサルタンツ株式会社及び当社が出資し、2021年7月に設立された企業となります。東日本旅客鉄道株式会社(以下「JR東日本」という。)をはじめとした鉄道・インフラ業界は、施設・設備の老朽化と労働力減少の背景から建設工事・維持管理などの生産性向上が急務であります。その課題解決のため、IBIS等を用いた施設の撮影サービス事業、IBIS等のドローン・ロボットの技術等により取得した情報をデジタルツインで表現し、施工管理や維持管理に資する情報を提供するソフトウェアサービスTRANCITY事業、及び受託開発事業を展開しております。

 TRANCITYは、JR東日本グループが長年研究・蓄積していた施工管理や設備維持管理の現場における技術ノウハウと、当社グループの画像処理技術をベースに構築されたデジタルツインのソフトウェアサービスであり、取得した情報の時系列管理、測量、CAD(※6)化、BIM化、差分分析(※7)等を行えるサービスであります。類似サービスと比較し、より現場業務にフィットしたソフトウェアであり、鉄道業を中心に、製鉄業・通信業などにも活用が広がっております。

 当社グループは、CalTaがエンドユーザーから獲得した設備等の調査・点検業務や受託開発案件等の全部または一部の受託、TRANCITYの画像処理に係るライセンス供与や当該ソフトウェアの構築・アップデートを行っております。2025年7月末時点でのライセンスの供与数は148件(前事業年度末115件)であります。

 

・TRANCITYの特徴

 TRANCITYの特徴としては、鉄道業における現場の建設管理・維持管理に特化したUI/UX(※8)の構築、及び機能性が挙げられます。

 UI/UXについては、TRANCITYは、CalTaを通じ実質的にはJR東日本グループが監修したプロダクトであり、建設現場・維持管理現場での利用を念頭に、現場の方が直感的に操作でき、情報の連携が容易で、時系列でのデータ管理・保存を行い、位置情報との紐づけが行える機能を有しております。さらなる利便性の向上に向け、2024年10月に株式会社マップフォーの3次元データ計測システム「SEAMS」と当社グループの画像処理技術を融合したデジタルツインを導入、2025年2月にはGeoJSON(※9)対応した3次元データと地理データの統合を実現しております。

 機能性については、現場ではスマートフォンやタブレット等による利用が想定され、それらの端末で使用するために、クラウド上で、低遅延でストレスなく操作できることや、SfM技術(※10)を活用した動画・静止画情報からの3次元化が求められます。TRANCITYは、それらに対応でき、また、SfM技術を応用したBIMサービスの展開もしております。サービスの対象となる業界に特化したプロダクトを作りこむエンジニアの開発力もまた、技術的な強みの一つであります。

 

 

 

 

(競争力の源泉)

 

(1)ハードウェア、ソフトウェア及びサービスの強み

 当社グループは、ハードウェア及びソフトウェアともに自社開発によりサービス構築を行い、顧客ニーズに応じたソリューションを提供することにより、屋内狭小空間での飛行実績及び撮影画像データを積み上げてきたことで、以下のような強みを有しております。

 

屋内ドローン飛行を可能とする技術力

当社グループのドローンIBISは、「狭く・暗く・危険な」環境における画像データの取得を可能としている屋内狭小空間に特化したドローンであり、そのような環境での飛行・撮影に資する多くの技術を組み合わせることで、機体の優位性を確保できていると考えています。

具体的には、屋内という暗く、粉塵等が舞い、配管やダクト等の障害物の多い空間の飛行は、屋外に比べ様々な制約があることから技術的なハードルが高く、また、下水道や天井裏等のより狭い空間の飛行には小型化が必須であるため、カメラ・モーター・プロペラ・バッテリー等の各部品をそれぞれ独自に設計する技術も必要となりますが、IBISはそれらの技術課題を乗り越え生み出された機体であります。

屋内外の重要設備撮影情報の解析技術と他社連携

狭小空間は、暗く、粉塵等の障害物が多いため、撮影データの3次元化等の画像処理が極めて困難な空間ですが、LAPISは、独自のアルゴリズムを構築することで、当該環境下においても顧客の求める形で画像処理を行うことができます。

また、当該画像処理技術は屋内外等の環境を問わず利用が可能となっており、当社の得意とする狭小空間においては、IBISと当社サービスを用いますが、それ以外の空間においては、他社ドローン等と当社サービスとの連携を積極的に進めております。屋内狭小空間のデータは、画像処理時のノイズ情報である粉塵が舞う空間が多く、また、暗所であることも多く十分な照度を確保できないことから、そのような環境に特化したドローンでなければ情報を得ることは容易ではありません。そのため、屋内外の撮影情報を網羅的に取得できることが、競合他社と比べた当社グループの強みであると考えております。

屋内狭小空間における飛行・画像撮影実績

長年、屋内における小型かつ非GPS環境(※11)下での事業展開を行っているため、屋内におけるドローンの利活用実績を多く有しており、ユーザーとしては、製鉄会社・鉄道会社などの固定資産の多い重厚長大型産業に属する企業が中心です。他の機体では撮影できないプラントやインフラでの豊富な利活用実績を通じて、ハードウェアとソフトウェアの技術開発を進められていること、及び他社が有していない屋内における重要設備のドローン撮影画像データの蓄積及び撮影ノウハウが強みとなっております。

 

 上記に加えて、JR東日本グループや日本製鉄とは、長年にわたり取引関係を築いていることも、当社グループの強みの一つと捉えています。JR東日本グループ及び、他の鉄道事業者に対しては、CalTaを通じて各種サービスの提供をしており、日本製鉄とも設立初期より共同研究等を行い深い関係が構築できております。これらの会社が当社サービス利用先となっていることに加え、JR東日本グループや日本製鉄等が蓄積してきた設備データやノウハウを基にサービス開発を行えていることも強みの一つと捉えております。

 

(2)当社グループの技術的な強み

 当社グループは、ドローン等を開発するハードウェア技術、及びドローン等のデバイスで取得した映像情報等のデータ処理や解析、デジタルツインプラットフォームといったデジタル管理システムの開発等のソフトウェア技術を合わせ持ち、それらを一気通貫で実行できる開発体制を有しております。そのため、営業やプロダクトマネージャーが得たユーザーニーズを、各技術スペシャリストの検討のもと、正確に開発項目・要件・仕様に落とし込むことで、ユーザーニーズにフィットした製品・サービスを開発することが可能であります。

 特に当社グループがターゲットとするユーザーは、インフラやプラント、建設業界等に属する事業者であり、当該ユーザーが従事する環境は「狭く・暗く・危険」であることも多いため、そのような環境に耐えうる仕様の製品・サービスを開発する必要があります。

 

①ハードウェア技術

 

 当社グループは、前述のとおり、ハードウェアからソフトウェアまで一気通貫した開発体制を構築していることから、ユーザーに対してユーザビリティの高い製品・サービスを提供できております。特に、当社グループが技術的に強みを有する開発領域は、製品をユーザー各々の環境で使用可能とするために最適化された「機体制御技術」「機体設計技術」であります。

 

・「機体制御技術」

 当社グループが相対するユーザーニーズで最も多いのは、人による点検が困難な屋内狭小空間でのドローン等による調査・点検等であります。屋内狭小空間での飛行は、施設や設備の破損リスクがあるため、飛行安定性を担保するための「飛行制御アルゴリズム」が重要となります。
 また、人手不足に対するニーズも多く、当該ニーズに対しては、人の手を介さずにドローン等が自律的に飛行する自律型ドローンによる点検等であり、そこでは「自律化技術」が重要となります。

 

■飛行制御アルゴリズム

 IBISが利用される環境は、閉鎖環境ゆえ、周囲が壁等で囲まれており、かつ壁や天井までの距離が非常に短い空間となっております。例えば、直径50cm(IBISは縦横20cm四方程度の大きさであり、その2倍程のサイズ)の配管内で利用されることもありますが、閉鎖環境での飛行は、機体自身が吹き下ろす風が壁や床などに反射し、常に風による外乱ノイズに晒されるため、当該外乱ノイズへのフィードバック制御(※12)が重要となります。

 IBISの飛行制御に非線形ロバスト制御(※13)を採用しており、一般的に用いられるPID制御(※14)と比較した際、耐風性に優れ、閉鎖環境で安定的に飛行できる優れた性能を有しております。

 

■自律化技術

 当社グループは、これまで様々な自律飛行技術を基に現場での適用検証を実施しました。特に、自律飛行を実現するために、LiDAR SLAMやVisual SLAM、モーションキャプチャ等の技術により、非GPS環境である屋内空間での自律型ドローンの開発・検証を行いました。他には、オプティカルフローセンシング(※15)やUWB(※16)等のGPSに依存しない位置推定技術の開発・検証を行いました。

これらの技術により、ドローンが屋内空間を自律飛行することが可能となりますが、当社グループはプラントやオフィス等を巡回点検するドローンや、巡回業務を繰り返すための自動充電装置、複数のドローンを遠隔監視・安全運航監視する仕組み、巡回点検データを一括管理する管制システムなどを独自で開発しております。これまでに、上述の自律化技術を組み込んだドローンにより、建設施工現場における施工進捗の遠隔管理や、水力発電所における水漏れや異常発熱、メーター監視など発電設備の巡回監視、などに取り組んでおります。さらに、ドローンが取得したデータにAI解析技術を活用してメーター自動読み取り機能や水漏れ検知する機能など、自動的に異常を検知するシステムも合わせて開発を行っております。当事業年度は、施工中の建築物内において、Visual SLAM技術を活用した自動巡回の実証実験を実施いたしました。本実証実験は、これまで人手による撮影および進捗・品質管理に依存してきた業務プロセスの自動化を目的とした技術開発の一環として行ったものとなります。

 

 

・「機体設計技術」

 当社ドローン等が利用される環境は狭小空間や閉鎖空間が多いため、ドローン等の小型化、軽量化が求められます。一方で、人の代替として利用されるためには、ドローン等に搭載する要素部品は高機能、高品質であることが必要となります。そのため、当社グループでは、強度を高く保ちつつ小型で軽量な「機構・筐体」の開発や、粉塵が舞う過酷な環境で故障しないための「モーター」、暗所でも鮮明な撮影データを取得するための「カメラ」といった要素部品の開発にも注力しております。

 

■機構・筐体

 IBISが利用される環境は、例えば天井裏やボイラー内、配管内などの狭小空間となります。しかしながら、天井裏のような複雑に入り組んだ空間を飛行する際、コンシューマー向けドローンに搭載されている衝突回避機能は、周囲にある配線・配管等の物体に対して常にセンサが反応してしまうため、操縦の障害となり機能しないことから、当社では、機体に衝突回避機能を持たせるのではなく、壁や天井、障害物等に衝突しても安定して飛行を継続できるよう、独自の機体構造を設計しております。

 また、万が一墜落が起こった際に、再離陸・再飛行を可能とする強度を保ちながら、人や設備への損傷が限りなく少なくなるよう、小型で軽量な機体設計を実現しております。

 なお、プロペラを自社開発するにあたり、プロペラの周囲で発生する気流の解析と試作開発を自社で行うことで機体の密接な解析・検証を行い、IBISに適した高効率なプロペラの開発を実現しております。

 

■要素部品

カメラ

 IBISを利用して点検等を行う環境は、その多くが、照明や日光が届かず暗い空間であります。そのような空間において、より明るく鮮明な映像を撮影するため、当社では、ソニー株式会社製のSTARVISセンサ(※17)を搭載した高感度カメラを開発しております。

 さらに、当社開発の高感度カメラは、暗い環境で明るく鮮明に撮影できるだけでなく、画像処理に適した調整が施されており、SfMによる3次元点群(※18)の作成や、ひび割れ腐食等の検出性能向上に寄与しています。

 

モーター

 一般に、多くのドローンに用いられているブラシレスモーター(※19)は、小型かつ高出力を実現するため、動作中は積極的に外部からの空気を取り入れコイルの冷却を行うことから、モーターに冷却用の穴や隙間を有する構造が採用されております。

 しかしながら、IBISが利用される発電プラントの設備内部、製鉄所の設備内部、天井裏等の環境は、多くの鉄粉や粉塵が舞う過酷な環境であります。一般的な仕様のモーターでは、鉄粉や粉塵が冷却用の穴や隙間から内部に入り込むため、破損の可能性や動作不良のリスクが高くなります。IBISは、当社とニデック株式会社で共同開発した専用の防塵モーターを採用することにより、そのような過酷な環境においても故障リスクが僅少なため、安定運用が可能な仕様となっております。

 また、自社開発の専用プロペラの特性に合わせてモーター開発を行っており、プロペラの空力特性(※20)を最大限に発揮することが可能であり、小型であるにもかかわらず、高出力・高効率を実現しております。

 

 

②ソフトウェア技術

当社グループは、人の進入が困難な天井裏やボイラー内、配管内などの狭小空間や閉鎖空間といった、従来は調査・点検が困難であった多くの環境に係るデータを取得してきております。そして、取得したそれらのデータを基に、3次元化を核とした高度なデータ解析技術を開発することで、インフラやプラント、建設業界等の分野で求められる「狭く、暗く、危険な」作業環境の「見える化」を実現し、ユーザーの課題解決に取り組んでおります。

 

・狭小空間、閉鎖空間における画像処理・解析技術

IBISにより、暗く、障害物や粉塵が多い環境のデータを数多く取得、解析することで、そのような環境の画像処理に特化した独自のアルゴリズムを開発し、一般的な画像処理技術と比較し、より鮮明な3次元データを生成する技術を構築しております。また、3次元データを生成するだけでなく、IBISに搭載したサーモカメラやガス検知センサによって取得した温度情報、ガス情報を3次元データと統合することで、視覚情報だけでは検知することが難しい水漏れやガス漏れなどの異常検知を可能としております。

・3次元解析クラウド「LAPIS」

 当社は、独自の画像処理・解析技術を活用して、映像データから3次元データを自動生成するクラウド「LAPIS」を開発しました。ユーザーは映像データを「LAPIS」へアップロードするだけで、手間をかけることなく簡単に3次元データを生成することが可能となります。さらに、蓄積した解析に関する独自のノウハウを基に、例えば、過去と現在の3次元データの差分を検知することで異常箇所を特定する機能や、粉状の在庫の体積を計算する機能などの拡張開発に取り組んでおります。

 

・図面がないインフラや設備等のBIMデータ生成技術

 竣工から長い時間が経過したインフラや設備等は、図面が残っていないもしくは図面が更新されていないことにより、設備トラブルの原因把握が困難であったり、補修工事が非効率などという課題を抱えていることが多くあります。また、建設済みの設備は天井裏など人が入れない環境も多くあり、建設後の図面作成は容易ではありません。

 当社は、IBISとその他データ取得機器を併用して3次元データを生成し、さらにBIMなどの図面データを生成する技術を有しており、狭小空間、閉鎖空間に特化した独自の画像処理技術とBIMデータ生成技術を組み合わせ、人が入れない環境を含む設備全体を図面化することで、上述の課題解決に取り組んでおります。

 

 

(3)コア技術に関する知財確保

 当社は、企業競争力・事業競争力の確保を企図し、競合他社が市場参入してきた際の防御策として、ドローンを構成する要素の中で、筐体設計に係る耐久性向上技術や、モーターの放熱に係る安全性向上技術に関して、下記の知財を確保しております。

 

(耐久性向上技術:特許第6554731号 フレーム組立体)

 当社の強みである機体等の「小型化」及び「軽量化」を実現するための、ドローンの筐体について特許を取得しております。本特許は、トップフレームとボトムフレームを設け、振動源であるモーターを支えるための剛性と軽量を両立させるための機構であります。また、トップフレームとボトムフレームをサイドフレームで繋ぐことで、衝突時や墜落時の耐衝撃性に強い構造を実現し、なおかつ軽量であるため、墜落時に空気抵抗によって落下速度を減速させる効果も有しております。

 

(安全性向上技術:特許第6589100号 フレーム組立体)

 IBISが飛行する環境には、製鉄所等の炉やボイラーの内部といった、非常に高温な環境が多くあります。一方、ドローン等に付属するモーターは、駆動することにより発熱し、一般には空気中に放熱されますが、当該高温環境においては、自然放熱では冷却が追いつかず、モーターの発熱に起因した故障が頻発いたします。本特許は、モーターの発熱時に、ボトムプレートに内包する金属板を通すことにより、放熱面積を増やし、冷却性を高めるものとなります。また、プロペラによって吹き下ろされる風によりボトムプレートの冷却が行われ、放熱のみならず冷却も同時に実現することを可能としております。

 

(基幹技術:特許第7679125号 無人飛行体)

 隣接する回転翼の間に「遮蔽部」を設置することで、ドローンに発生する左右間の気流を遮断して前後方向の気流による旋回トルクの有効活用が実現でき、従来のドローンよりもエネルギー効率の良い旋回飛行が可能となります。また、これによりドローンの飛行時間の延長や機動性の向上が期待できます。

 

(応用技術:特許第7645000号 飛行体)

 ドローンが揚力発生部を備えた本体と、本体から分離できる特殊な「離脱可能部」とを有することで、撮影や点検などの観察機能だけでなく、空中で何かを設置したり、飛行安定性を保ちながら作業を行う機能を有することを実現しています。すなわち、ドローンを「撮影するための道具」から「作業する道具」へと進化させることを可能にしています。

 

 そのほかにも、今後は更なる応用技術やAI関連技術の領域においても研究開発を推し進め、知財の確保等を進めてまいります。

 

(4)大手との取引

・JR東日本グループ

 JR東日本のグループ会社が出資し、当社の関連会社でもあるCalTaを通じ、当社は、JR東日本グループ関連の案件を多数受注しております。CalTaへの売上高は、2023年7月期は74百万円、2024年7月期は178百万円、2025年7月期は305百万円であり、2026年7月期以降も継続的な成長を見込んでおります。

 CalTaの運営に係り重要となる契約は、同社の株主であるJR東日本コンサルタンツ株式会社・JR東日本スタートアップ株式会社・当社間の合弁契約と、同社と当社間のTRANCITYに係るライセンス契約の2つとなります。

 なお、合弁契約においては、CalTaの重要な意思決定に係る協議・決定ルールを定めており、当該契約の定めに従い、当社は社外取締役として代表取締役の閔弘圭、社外監査役として取締役の市川純也を派遣しております。

 

・日本製鉄グループ

 当社は、機体の開発に着手した2016年より、日本製鉄のフィールドを借り、耐環境性、ユーザビリティの高いドローンの開発を進めてきており、同社とは継続的な取引関係にあります。

 当社は、日本製鉄のグループ会社や、製鉄所における協力会社・商社等を通じ、日本製鉄関連の案件を多数受注しております。2025年7月期においては、引き続き日本製鉄の保有するプラントの保守やメンテナンス等を展開する事業者へのIBISの販売に注力しているため、当該事業者へのプロダクト提供サービスの売上が中心となっております。

 

・東京電力グループ

 当社は、東京電力ホールディングス株式会社の福島第一廃炉カンパニー等をエンドユーザーとした受託開発プロジェクトを過年度より継続して実施しております。

 福島第一廃炉カンパニーとは、廃炉内の状況を把握し、今後実施が見込まれる廃炉処理を安全・適切に進めることを最終目的としており、社会的意義の非常に高い事業であると考えております。

 

(5)産学官連携による研究開発推進及び事業化推進

 当社グループが身を置くドローン市場やデジタルツイン市場は、ドローンやそのシステムを構成するハードウェア・ソフトウェアの各関連領域において、めまぐるしい関連技術の発展とサービス創出がなされている状況であります。

 このような状況において、「誰もが安全な社会を作る」という大きなミッションに向けて、当社グループが各分野でのリーディングカンパニーとしての地位を獲得するには、最先端の技術を取り入れ、継続的に研究開発を行っていくことが不可欠と考えております。

 そのために当社は、省庁、自治体、大学、その他外部の研究機関や民間企業と積極的に産学官連携を行い、研究開発推進並びに事業化推進をしております。

 

 当社が当事業年度に取り組んできた主な産学官連携プロジェクトは以下のとおりであります。

国家プロジェクト案件名

管轄・

主導先

内容

進捗

「災害時に生き埋めになった生存者を迅速に捜索するセンシング技術やロボティクス技術の開発」

経済産業省

及び警察庁

災害現場にて生き埋めになった生存者を捜索するドローン技術の開発プロジェクト

警察庁が提供する実験設備にて実証実験が成功しプロジェクト終了。今後は警察庁と活用可能性について協議を推進中

「建設施工・災害情報収集における高度化(省力化・自動化・脱炭素化)の技術開発・実証」

国土交通省

建設現場の業務効率化を目的としたドローンを用いたDXソリューション開発プロジェクト

補助金の最大交付額4.7億円

ドローン遠隔運行システムと3次元化システムの連携完了

建設現場に自動充電ポート付きドローンを1年間常設し、現場補助者なしの目視外飛行(レベル3)による週次の遠隔自動測量を継続運用

データ利活用までの一貫ソリューションを構築中

「鉄道施設の維持管理の効率化・省力化に資する技術開発・実証」

国土交通省

鉄道環境に対応したドローンを用いた鉄道点検ソリューションの構築を目指すプロジェクト

補助金の最大交付額52億円

原理試作機の開発及び各システムとの連携試験は完了

現在はフェーズ移行判定の準備段階にあり、承認後に移行する計画

令和7年度応用研究(下水道)

募集テーマ「下水道におけるデータやデジタル技術の活用に資する技術」

国土交通省

デジタルツインと小型ドローンによる下水道管点検のDXソリューションの開発プロジェクト

最大委託予定額26百万円

下水道関連事業者や自治体とのコミュニケーションを実施し、開発を開始

令和5年度補正「グローバルサウス未来志向型共創等事業費補助金」(我が国企業によるインフラ海外展開促進調査:三次公募)

経済産業省

マレーシア等の新興国に対して、狭小空間点検ドローンとデジタルツイン技術を組み合わせたインフラ・プラント設備点検のDXソリューションを展開することを目的とする

補助金の最大交付額41百万円

マレーシアを中心としたドローン事業者と連携し、マレーシア現地にて当社サービスの展開を推進中

※国家プロジェクトにおいては、各プロジェクトにおいて発生した研究開発費用について、管轄機関の監査を受けており、認められた金額のみを補助金又は助成金として収受しております。なお、補助金又は助成金に関して、新規技術の研究開発に係るものについては、営業外収益として計上しております。また、既存の当社技術を用いて、委託された研究や実証実験を行うことが主目的となるものについては、売上高として計上しております。

 

大学連携

目的

概要

国立大学法人千葉大学

研究開発推進

屋内飛行に向けた制御開発と流体解析を加味した機体設計の検討を推進中

 

 

自治体連携

目的

概要

東京都

事業化推進

「UPGRADE with TOKYO」スタートアップと東京都で都政課題の解決に向けた協働取組み先として選出され、ドローンと3次元モデルを用いた工事出来形確認手法構築のための取組みを実施

事業化推進

「現場対話型スタートアップ協働プロジェクト」における新事業分野開拓者に認定され、東京都の機関において随意契約による導入が可能に

北九州市

事業化推進

令和6年度「企業変革・スタートアップ・グロースサポート事業」に採択され、港湾桟橋環境における点検手法を開発

 

・用語解説

 本項「3 事業の内容」において使用しております用語の定義について以下に記しております。

No.

用語

用語の定義

※1

継続顧客の売上高割合

点検ソリューション(関連するデータ処理・解析サービス含む)において、2期連続で受注のあったエンドユーザーの売上高を、点検ソリューション全体の売上高で除して算定

※2

LAPIS

当社独自で開発した、屋内点検用小型ドローン「IBIS」で撮影した動画データを管理し、その動画から画像処理された3次元化データも一元管理することができるクラウドサービスを指す

※3

デジタルツイン

IoTセンサなどを用いて物理空間から取得した情報を基に、デジタル空間に物理空間のコピーを再現する技術

※4

オルソ化

ドローン、ラジコンヘリ、航空機、人工衛星等から中心投影として撮影された空中写真画像を補正し、正射投影された空中写真画像を作成する作業を指す

※5

BIM

「Building Information Modeling」の略称であり、コンピュータ上に作成した3次元の建物のデジタルモデルに、管理情報などの属性データを追加した構築物のデータベースを、建物の設計、施工から維持管理までのあらゆる工程で情報活用を行うためのソリューションを指す

※6

CAD

「Computer Aided Design」の略称であり、コンピュータを用いて設計をすること、又はコンピュータによる設計支援ツールのことを指す

※7

差分分析

量的調査などで用いられる統計的手法のことであり、施策の効果の因果関係を統計的に推理していく分析手法を指す

※8

UI/UX

「ユーザーインターフェースとユーザーエクスペリエンス」の略であり、それぞれ、ウェブサイトやアプリなどのデザインや操作性に関わる部分、そしてそのデザインや操作性がユーザーに与える全体的な印象や感情を指す

※9

GeoJSON

地理空間データ(地図上の点・線・面など)をJSON形式で表現するための標準的なフォーマットであり、主にウェブ地図アプリケーションやGIS(地理情報システム)で広く使われている

※10

SfM技術

「Structure from Motion」の略称であり、3次元構造を2次元のカメラ画像や動画から推定する技術

※11

非GPS環境

屋内や、構造物の近く、橋梁下において、GPS、GNSSデータが遮断され位置情報を把握することが困難な環境

※12

フィードバック制御

実際の状況をリアルタイムに取得し、それに基づいて制御入力を決定する制御技術

※13

非線形ロバスト制御

制御理論、制御技術の一つであり、一般的にPID制御よりも高度な数学が用いられ、制御対象をより正確に制御することが可能な制御技術

※14

PID制御

比例(P)制御、積分(I)制御、微分(D)制御の組み合わせによって、設定された目標値にフィードバック(検出値)を一致させる制御機能を指す。速度、圧力、流量、温度などの制御に使用される技術

※15

オプティカルフローセンシング

動画像において、各点の動きをベクトルとして求める技術を指す

※16

UWB

Ultra Wide Bandの略称であり、超広帯域を意味する無線通信技術のことであり、高精度な位置測位を可能とすることが特徴

※17

STARVISセンサ

可視光線領域に留まらず、沢山の光を集めることができる夜間の撮影にも適した高感度な裏面照射型画素技術を指す

※18

3次元点群

3次元レーザースキャナーなどで物体や地形を計測したデータ(スキャナーからの相対的なX,Y,Z情報やカメラの画像データから得た色の情報)をコンピュータ上で扱う際、物体や地形を「点」の集合体で表現したもの

※19

ブラシレスモーター

整流子やブラシなどの機械的な接触部を取り除いたモーターを指す

※20

空力特性

ドローンが飛行中やプロペラで吹き下ろす空気の流れから受ける様々な影響(機体にかかる力やモーメント、そしてそれらの力やモーメントに起因する機体の安定性や操縦性等の飛行性能)のこと

 

 

(事業系統図)

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1)経営成績等の状況の概要

 当社グループは、当連結会計年度より連結財務諸表を作成しているため、前連結会計年度との比較・分析は行っておりません。

 当連結会計年度における当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フロー(以下、「経営成績等」という。)の状況の概要は次のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

 

① 財政状態の状況

(資産)

 当連結会計年度末における総資産の残高は1,700,752千円となりました。主な内訳は、現金及び預金が751,988千円、受取手形及び売掛金が323,009千円、原材料及び貯蔵品が108,977千円、有形固定資産が129,397千円、未収消費税等が107,766千円、関係会社株式が73,018千円となっております。

 

(負債)

 当連結会計年度末における負債の残高は768,149千円となりました。主な内訳は、長期借入金(1年内返済予定を含む)が292,690千円、短期借入金が200,000千円、未払費用が122,185千円、契約負債が66,093千円となっております。

 

(純資産)

 当連結会計年度末における純資産の残高は932,603千円となりました。主な内訳は、資本剰余金852,063千円となっております。

 この結果、自己資本比率は53.6%となりました。

 

② 経営成績の状況

 当社グループがソリューションを提供している産業インフラの保守・点検領域では、施設・設備の老朽化の進行、技能者の高齢化・人手不足、現場安全の高度化、データ利活用・トレーサビリティの要求が同時進行しております。特に、屋内の狭小・閉鎖・危険環境など、従来の人手中心では困難な箇所に対して、人が入らずにデータを取得することや、3次元化・AI解析などのデータ処理、クラウドでの一元管理といったデジタル化のニーズが年々高まっております。

 民間領域においては、製造・エネルギー・鉄道・建設等のアセットを中心に、安全確保、品質の標準化、稼働率向上(停止時間短縮)、保全計画の高度化が導入判断の主因となっており、デジタルツイン/点検DXの導入は、リスク低減と経済合理性(コスト・工期・再現性)の両立手段として位置づけられております。

 公共領域では、制度面の整備が進展しております。具体的には、2020年3月のBIM/CIM活用ガイドラインに基づく原則適用の拡大、2023年6月14日のデジタル社会形成基本法等の改正による点検のデジタル化推進、2024年4月1日からの労働時間規制強化(働き方改革関連法)による省人化・省力化ニーズの顕在化などが挙げられます。加えて、2020年9月の内閣府による関係省庁申合せにより、発電施設・ダム・鉄道施設等の生活関連施設においてセキュリティが担保されたドローンの調達方針が確認され、同趣旨の要請は民間調達にも波及する傾向にあります。

 海外においては、重要インフラ領域を中心に、安全保障・データ主権・サプライチェーン多様化を意識した調達・運用要件の厳格化が進んでおります。これにより、信頼性やデータガバナンスに配慮した機体・ソフトウェア・運用体制への選好が強まり、インフラ点検のデジタル化は国際的にも拡大基調であります。

 こうした産業構造・制度動向を背景に、ドローン市場は2030年に1兆195億円(出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2025」)、DX市場は2030年に2.9兆円(出典:株式会社富士キメラ総研「2025 デジタルトランスフォーメーション市場の将来展望」(製造業市場))への拡大が見込まれております。

 このような環境のもと、当社グループはインフラ業界のDX推進に向けて、屋内狭小空間におけるドローン点検の社会実装や、従来のアナログ手法による設備点検・調査のデジタル化に取り組んでいます。特に、2025年1月に発生した埼玉県八潮市の道路陥没事故をきっかけに下水道分野での対策が進められ、国土交通省の資料でも下水道領域におけるドローン活用のロードマップが示されました。これを受け、当社グループは、下水道領域におけるドローン利活用の拡大を目指し、活動を推進しました。

 具体的には、北九州市、神戸市、千葉市、秋田市などの自治体と連携し、同様の事故防止を目指した下水管等インフラの調査を実施しました。また、下水道分野でのドローン利用の標準化に向けて、自治体や下水道事業者と協議を重ね、連携体制の強化に努めました。

 また、海外に関する活動としては、2024年11月1日付で韓国に当社の100%子会社であるLiberaware Korea Co., Ltd.を設立しており、屋内ドローン点検市場確立に向けたユースケース創出と認知拡大を進めております。

 その他、屋内狭小空間における自律型ドローンをはじめとした次世代IBISや次世代ソフトウェア等のプロダクト開発に係る研究開発活動も順調に進捗いたしました。

 以上の活動の結果、当連結会計年度の経営成績は、売上高1,406,949千円、営業損失1,588,703千円、経常利益46,978千円、親会社株主に帰属する当期純利益46,081千円となりました。

 

 なお、当社グループはインフラDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の記載を省略しております。当社グループの主なサービス別に区分した売上高の状況は次のとおりであります。

 

                              (単位:千円)

事業別名称

当連結会計年度

(自 2024年8月1日

  至 2025年7月31日)

 

ドローン事業

点検ソリューション

285,532

 

プロダクト提供サービス

521,867

 

小計

807,399

 

デジタルツイン

事業

データ処理・解析サービス

153,013

 

デジタルツインプラットフォーム

70,455

 

小計

223,468

 

ソリューション開発事業

376,081

 

合計

1,406,949

 

 

(ドローン事業)

・点検ソリューション

 点検ソリューションは、既存顧客の継続的な利用と新規顧客拡大を要因として、実績285,532千円となりました。

・プロダクト提供サービス

 プロダクト提供サービスは、機体販売売上高実績383,255千円及びレンタル会員の継続的な利用により、合計で実績521,867千円となりました。

 

(デジタルツイン事業)

・データ処理・解析サービス

 データ処理・解析サービスは、点検ソリューションの成長と共に点検ソリューションに紐づくデータ処理・解析の需要が多くあったこと、屋外ドローンをはじめとしたIBIS以外で取得した画像のデータ処理やBIMサービス等の需要増により、実績153,013千円となりました。

・デジタルツインプラットフォーム

 デジタルツインプラットフォームは、既存顧客の継続利用と新規顧客拡大によるライセンス数の増加により、実績70,455千円となりました。

 

(ソリューション開発事業)

 ソリューション開発事業は、エンドユーザーが主にJR東日本グループとなるデジタルツイン関連の開発案件や、福島第一原子力発電所の継続的な原子炉調査案件等の受注により、実績376,081千円となりました。

 

③ キャッシュ・フローの状況

 当連結会計年度末における現金及び現金同等物(以下「資金」という。)の残高は、751,988千円となりました。

 当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

 営業活動の結果使用した資金は363,332千円となりました。これは主に、税金等調整前当期純利益46,978千円、売上債権の増加額181,307千円、未収消費税等の増加額107,783千円等によるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

 投資活動の結果使用した資金は61,354千円となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出47,838千円、敷金及び保証金の差入による支出19,515千円等によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

 財務活動の結果得られた資金は122,317千円となりました。これは主に、短期借入金の純増加額200,000千円、長期借入金の返済による支出77,520千円等によるものであります。

 

④ 生産、受注及び販売の実績

a.生産実績

 当連結会計年度の生産実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはインフラDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の生産実績の記載は省略しております。

セグメント名称

当連結会計年度

(自 2024年8月1日

  至 2025年7月31日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

インフラDX事業

88,114

(注)金額は製品製造原価によっております。

 

b.受注実績

 当社グループが提供するサービスの性格上、受注実績の記載になじまないため、記載を省略しております。

 

c.販売実績

 当連結会計年度の販売実績は、次のとおりであります。なお、当社グループはインフラDX事業の単一セグメントであるため、セグメント別の販売実績の記載は省略しております。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2024年8月1日

  至 2025年7月31日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

インフラDX事業

1,406,949

(注)当連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

 

相手先

当連結会計年度

(自 2024年8月1日

至 2025年7月31日)

金額(千円)

割合(%)

CalTa株式会社

305,975

21.7

東京電力ホールディングス株式会社

159,520

11.3

 

(2)経営者の視点による経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであります。

① 経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容

a.財政状態の分析

財政状態の分析については、「(1)経営成績等の状況の概要 ①財政状態の状況」に記載のとおりであります。

 

b.経営成績の分析

主な当該内容については、「(1)経営成績等の状況の概要 ②経営成績の状況」に記載のとおりであります。

(売上高)

 当連結会計年度の売上高は、1,406,949千円となりました。これは主に、既存顧客の継続利用や新規顧客拡大等によるものであります。

 

(売上原価、売上総利益)

 当連結会計年度の売上原価は、736,959千円となりました。これは主に、売上高が増加したことによるものでありますが、高付加価値の機体販売が増加したこと、及び点検ソリューションやデータ処理・解析サービスの案件に係る人件費やサーバー償却費等の固定費に比して、当該サービスの案件数が増加したことにより、売上総利益率が改善しております。この結果、売上総利益は669,989千円となりました。

 

(販売費及び一般管理費、営業損失)

 当連結会計年度の販売費及び一般管理費は、2,258,692千円となりました。これは主に、事業拡大に伴う人員増加により人件費を353,839千円、SBIR研究開発費を1,514,385千円計上したこと等によるものであります。この結果、営業損失は1,588,703千円となりました。

 

(営業外収益、営業外費用、経常利益)

 当連結会計年度の営業外収益は、1,647,529千円となりました。これは主に、補助金収入を1,603,384千円計上したことによるものであります。営業外費用は、11,848千円となりました。この結果、経常利益は46,978千円となりました。

 

(特別利益、特別損失、税金等調整前当期純利益)

 当連結会計年度において、特別利益及び特別損失は発生しておりません。この結果、税金等調整前当期純利益は46,978千円となりました。

 

(法人税等、親会社株主に帰属する当期純利益)

 法人税等は897千円を計上した結果、親会社株主に帰属する当期純利益は46,081千円となりました。

 

② キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

 キャッシュ・フローの状況につきましては、「(1)経営成績等の状況の概要 ③キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。当社の主な資金需要は、ドローン等開発のための研究開発費や販売費及び一般管理費等の事業費用であり、これら事業上必要な資金は手許資金で賄う方針でありますが、事業収益から得られる資金だけでなく、エクイティファイナンスや金融機関から必要な資金の獲得により調達しております。また、資金の流動性については、資金効率を考慮しながら、現金及び現金同等物で確保するよう図っております。現預金保有残高については、2025年7月期末における現金及び現金同等物が751,988千円であり、十分な流動性を確保しております。

 

③ 重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

 当社グループの連結財務諸表は、わが国において一般に公正妥当と認められる会計基準に基づき作成されております。

 

④ 経営方針・経営戦略、経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等

 経営上の目標の達成状況を判断するための客観的な指標等については、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載のとおりですが、当社においては、コアクライアントと当社の取引量を拡大することが、売上規模の拡大に寄与することから、コアクライアント数及びコアクライアント売上高を特に重視しております。

 当該指標について、当連結会計年度のコアクライアント数は3グループとなっております。また、コアクライアントとの深耕により当連結会計年度におけるコアクライアント売上高は503,115千円となっております。

 

                           (単位:千円)

 

 

当連結会計年度

(自 2024年8月1日

至 2025年7月31日)

 

コアクライアント売上高

503,115

 

(注)コアクライアント売上高は、コアクライアント及びコアクライアントが構成している企業グループに対する売上高を当社が集計したものであります。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

 当社グループは、インフラDX事業の単一セグメントであるため、記載を省略しております。

 

【関連情報】

当連結会計年度(自 2024年8月1日 至 2025年7月31日)

1.製品及びサービスごとの情報

  連結財務諸表等「注記事項(収益認識関係)1.顧客との契約から生じる収益を分解した情報」に同様の情報が開示されているため、記載を省略しております。

 

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

 本邦の外部顧客への売上高が連結損益及び包括利益計算書の売上高の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

(2)有形固定資産

 本邦に所在している有形固定資産の金額が連結貸借対照表の有形固定資産の金額の90%を超えるため、記載を省略しております。

 

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

CalTa株式会社

305,975

インフラDX事業

東京電力ホールディングス株式会社

159,520

インフラDX事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

 当連結会計年度(自 2024年8月1日 至 2025年7月31日)

  該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

 当連結会計年度(自 2024年8月1日 至 2025年7月31日)

  該当事項はありません。

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

 当連結会計年度(自 2024年8月1日 至 2025年7月31日)

  該当事項はありません。