リスク
3【事業等のリスク】
本書に記載した当社の事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、リスク要因となる可能性がある事項及びその他の投資者の判断に影響を及ぼすと考えられる事項には、以下のようなものがあります。
また、リスク要因に該当しない事項についても、投資者の判断上重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から以下に開示しております。当社はこれらのリスク発生の可能性を認識したうえで、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針であります。具体的には、当該リスクを把握し、管理する体制・枠組みとして当社内にリスク・コンプライアンス委員会を設置して対応しております。詳しくは「第4 提出会社の状況 4 コーポレート・ガバナンスの状況等(1)コーポレート・ガバナンスの概要」をご参照ください。
なお、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであり、不確実性を内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。また、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅するものではありません。
<経営環境に関するリスク>
(1) ドローンの安全性について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
2022年12月5日の改正航空法の施行により、住宅街や都市部などの「有人地帯」においても「目視外」でドローンを飛行できる「レベル4飛行」が解禁となりました。これに伴いドローンの社会実装はより一層進むことが予測されますが、合わせて飛行への信頼性や安全性も強く求められます。そのため、当社に限らず、ドローンに関する重大な墜落事故が発生した場合には、ドローンの安全性に対する社会的信用が低下することにより、顧客からの需要低下、規制の強化等により市場の成長が減速する可能性があり、その場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
一方、自社開発の屋内狭小空間に特化した産業用小型ドローン「IBIS」は、屋外にて人が居る上空を飛行することを想定した屋外用ドローンと異なり、人が入ることが困難であったり、人が入るには危険を伴う場所へ、人に代わって入ることを用途としているため、人への影響は限りなく低いと考えております。また、大きさ幅約20cm、重量約240gと小型化・軽量化をしていることから、仮に墜落した場合でも、人や設備等財産に損害を与える可能性は低いと考えております。
しかしながら、これらの前提をもってしても、万が一、当社の製造した機体が墜落すること等により人や財産等に損害を与えた場合には、製造物責任賠償やリコールによる多額の支払や費用発生及び社会的信用の失墜等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 当社事業が対象とする市場について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:重)
当社の展開する事業が属するドローン市場は年々拡大しておりますが、ドローン市場の環境整備や新たな法的規制の導入、その他何らかの要因によってドローン市場の発展が阻害される場合には、当社の事業活動が制限される可能性があります。
当社は、屋内狭小空間に特化した国産の小型ドローンを自社開発することで他社との差別化を図り当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの発生によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
インフラDX市場におけるデジタルツインの領域については、インフラ業界や建設業界のDX化推進に伴い、革新的な画像解析技術やAI等の技術発展により今までの処理技術より高品質な3次元データをより効率的に作成できる3Dスキャニング技術が出現した場合、当社の事業活動が制限される可能性があります。
当社は、他社が容易に獲得できない狭く、暗く、危険な環境の3次元化や画像解析を通じて技術の向上とノウハウの獲得を進めており、また、どのような環境でも簡易に有用な解析データを生成できるよう、新たな技術の研究開発を推進することで当該リスクの低減を図っておりますが、当該リスクの発生によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 技術革新について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:重)
当社の事業を展開しているドローン市場及びインフラDX市場は、市場が未成熟であり、日本国内及びグローバル市場においても技術革新のスピードやビジネスモデルの移り変わりが激しい環境となっています。当社では新技術及び新サービスの開発を継続的に行うとともに、エンジニアの採用や大学との連携による最新の技術やノウハウの獲得等によりこのような環境への対応を進めております。
しかしながら、これらの対応に困難が生じ、技術革新に対する当社の対応が遅れた場合には、当社の技術力低下、それに伴う製品・サービスの質の低下を招き、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 競争優位性について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社はハードウェアとソフトウェアの両技術に力を入れ、この両技術を用いた一気通貫したサービスを提供することで、他社との差別化を図っております。具体的には、IBISは長年に渡り屋内小型ドローンの研究と実証実験を繰り返し、当該研究結果や飛行データをもとに開発され、また、当該ノウハウを元に各種サービスを提供しています。同時に、IBISで撮影した狭く、暗く、危険な環境の3次元化や画像解析を行っているため、このような環境下の画像処理に関する独自のアルゴリズムの確立とノウハウを有しています。
このように当社サービスはハードとソフトを掛け合わせ、相互補完するように構築していること、また、両者とも高い技術力と多岐に渡るノウハウに裏付けられたものであるため、参入障壁は高いと考えております。しかしながら、インフラDX市場やドローン市場は将来を期待される市場であるため、関連市場の拡大に伴い、新たな競合他社の出現、競合他社による新たな付加価値サービスの提供等がなされた場合には、価格競争の激化や他社サービスへの乗り換え等が発生すること等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 国家プロジェクトに係る補助金・助成金収入について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:重)
当社では、産学官連携で様々なプロジェクトに参画し、最先端の技術開発に取り組むとともに、国からの補助金や助成金を受領することで、研究開発費の一部を賄っております。また、当該補助金等の受領は、一定の期間を区切って管轄機関による監査が行われ、当該期間の金額が確定した後の入金となりますが、研究開発活動を行うための資金は研究開発を実施する都度発生するため、補助金等の受領に対して先行して支出することとなります。当社ではキャッシュ・フロー管理の徹底と安定した財務基盤確保のために各金融機関と密な連携を行っておりますが、今後、当社の事業に関連する国家プロジェクトそのものの規模が縮小する場合や補助金等の受領前の期間において研究開発資金が不足する場合には、必要な研究開発活動が進められず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社が参画している国家プロジェクトについて大きなウエイトを占めるものは、所轄行政官庁より予算枠、存続期間が定められたものであり、制度そのものの存続性についての懸念は限定的であると考えられます。
(6) 通信インフラ環境やネットワーク環境について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:軽)
当社が展開するデジタルツイン事業は、サーバー等のインフラ環境やネットワーク環境に依存しております。当社は、安定的なサービス提供のため、データセンターの利用、サーバーの冗長化/負荷分散及び監視強化、障害が発生した際に早急に復旧するための体制整備等を進めております。
しかしながら、自然災害や事故、サイバー攻撃、その他何らかの事由によって当該環境に障害が発生し、サービスを停止せざるを得ない状況となった場合は、機会損失、顧客への損害の発生、サービスに対する信頼性の低下等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 海外に事業を展開していること(政治や規制など)(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:軽)
当社は、日本国内のほか、韓国を中心に海外でも事業を展開しております。当社においては、機体製造やデータサービス全般を国内にて対応しているため、各国の情勢の変化等の影響は限定的ではありますが、万が一、政治的・経済的要因により、予期できない投資規制、移転価格税制を含む税制や法的規制の変更等が行われた場合、当社の経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(8) 自然災害等について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:中)
地震、台風、津波等の自然災害や火災、停電、未知の感染症の拡大等(以下「自然災害等」という。)が発生した場合、当社の事業所等が深刻な損害を受ける可能性があります。
このような自然災害等に備え、従業員安否確認手段の整備、防災品の確保等に努めておりますが、想定を超える自然災害等が発生する場合は、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
また、自然災害等によりドローン等の製造物が破損したり、サーバーの停止等により画像解析が行えなくなるなど、一時的にサービスの提供が困難となった場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 風評被害について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:軽)
当社の事業運営に関し、悪意を持った第三者が、意図的に噂や憶測、悪評やあいまいな情報を流す、又は何らかの事件や事故等の発生に伴う風評により、当社に対する誤解、誤認、誇大解釈等が生じた場合は、顧客マインドにマイナスの影響を与え、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当社は、企業倫理規程の周知やコンプライアンス研修の実施により役職員のコンプライアンス意識の醸成を図り健全な企業経営を推進してまいります。また、悪意のある風評等には毅然とした姿勢で対応する方針であります。
<経営戦略に関するリスク>
(10) JR東日本グループとの関係性について(発生可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社の関連会社であるCalTaは、JR東日本グループと設立したジョイントベンチャーであります。
現在、JR東日本グループと当社の関係は良好であり、鉄道業界を始めとしたインフラ業界のDX化に向けた各種サービスを展開し、更なる業務拡大に向けて連携を強化しておりますが、何らかの要因による合弁関係の悪化等が生じた場合、CalTaの運営及び当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、関連会社であるCalTaに対するモニタリングは、当社の関係会社管理規程に則り適時適切に行っており、また、CalTaとの取引にあたっては、関連当事者取引管理規程に則り、適切に実施しております。さらに、CalTaへ役員等を派遣し、経営内容を迅速かつ的確に把握する体制を構築しております。
(11)特定の販売先への依存について(発生可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社におけるCalTaに対する売上高は高い水準にあります。
CalTaは当社の関連会社であり、複数年にわたり安定的な取引を行っており、拡大傾向にあります。
当社とCalTaとは、現時点においては緊密かつ良好な関係にあり、今後もこれまでの取引関係を維持・発展させていく方針でありますが、特定の取引先の今後の経営方針等が当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
当該リスクを低減させるため、各事業の拡大や新規顧客の開拓など上記主要顧客以外の顧客との間の取引比率増加や提供サービスの多様化等を推進し、収益基盤の安定化と上記主要顧客への依存度の低減に努めております。
(12)資金使途について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社が上場時の公募増資により調達した資金は、サーバー等設備の購入費用、韓国進出に係る新規拠点の設立費用、ドローンによる調査・点検の更なる省人化のための自律型ドローンの開発やIBISの次世代機開発のための研究開発費用、売上規模拡大に応じた営業人員等増強のための費用、認知度及びブランド力の向上を目的とした広告宣伝費用、及び借入金の返済に充当する計画であります。
しかしながら、経営環境等の変化に対応するため、調達資金を計画以外の使途に充当する可能性があります。また、当初の計画どおりに資金が使用された場合でも、想定どおりの成果をあげられない可能性があり、その場合当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。当該リスクを踏まえ、当社を取り巻く外部環境や経営環境の変化については適時その動向を注視するとともに、公募増資による資金調達の使途に変更が生じた場合には、適時適切に開示を行います。
<組織に関するリスク>
(13)内部管理体制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は少人数であり、現段階の事業規模にあわせた内部管理体制をとっております。今後、事業規模の拡大に伴い、内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しており、業務の適正及び財務報告の信頼性を確保するため、これらに係る内部統制が有効に機能する体制を整備、運用しております。しかしながら、事業の急速な拡大等により、十分な内部管理体制の整備、運用が追いつかないという状況が生じる場合には、適切な事業運営が困難となり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(14)有能な人材の確保・育成について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:長期、影響度:中)
当社の事業においては、ドローンや3次元化技術など、ハードウェア及びソフトウェアの各業務分野において専門性を有する人材が必要であり、今後とも業容拡大に応じて継続した人材の確保が必要であると考えております。
当社においては、通常の採用手法に加え優秀な人材を採用するためにリファラル採用を積極的に取り入れることで安定的な人材の確保に努めておりますが、今後、各業務分野における人材獲得競争の激化や市場ニーズの変化等により、優秀な人材の獲得が困難となる場合又は在職する人材の社外流出が生じた場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(15)特定の人物に対する依存について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:中)
当社の創業者は、当社代表取締役の閔弘圭であります。閔弘圭は、ロボット開発を専門として、ロボットの機械工学に精通しております。さらに、当社設立以来、経営方針や経営戦略の決定等の事業運営においては、重要な役割を果たしております。当社としては、経営幹部の拡充や採用・育成、及び権限委譲による業務分掌の推進などにより、特定の役職員に依存しない組織的な経営体制の構築に努めております。
しかしながら、専門的な知識、技術及び経験を有する閔弘圭に、何らかの理由によって不測の事態が生じた場合には、当社の事業展開及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
<事業運営に関するリスク>
(16)製品の品質について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)
当社では、小型ドローン等の開発・製造及び3次元化等画像解析サービスを行っており、このような製品やサービスを適切に管理するため、品質マネジメントシステム(QMS)の国際規格である「JIS Q 9001(ISO9001)」の認証を2022年9月に取得しました。当該規格に基づき、品質管理規程等のルールを定期的な社内研修の実施等により周知徹底し、また、定期に開催する品質保証委員会によるフィードバックを通じて改善を図る等、品質の保持、向上に努めております。さらに、これらの品質マネジメントに対する取組み全体を、社内に設置したリスク・コンプライアンス委員会においてモニタリングすることで、不具合等の発生防止に最大限の注意を払っております。
しかしながら、万が一、製品の欠陥が発生した場合には、その欠陥内容によっては多額のコスト発生や信用の失墜を招き、当社の経営成績及び財務状況に影響を及ぼす可能性があります。
(17)部品・部材等の調達及び価格、在庫について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:軽)
当社は、生産活動や研究開発活動に必要な部品・部材等の多くを外部の取引先から調達しており、いくつかの部材については特定の取引先から調達を行っておりますが、取引先からの供給が中断した場合や製品需要の急増などによる供給不足が発生した場合には諸活動が制限され、当社の経営成績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社は、調達にあたっては、信頼できる仕入先、外注先を選定し、品質確認等の受入検品を慎重に実施しておりますが、万が一、欠陥のある部品・部材等が納入され、当社製品の信頼性及び評判に悪影響を及ぼした場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、在庫については、製品計画、売上規模にあわせ最適量を維持してまいりますが、当初想定よりも需要が異なることで発生する、在庫不足による機会損失や逸失利益若しくは在庫過多による在庫管理費用や評価損等の追加費用が発生する可能性があります。さらに、既存製品の次世代品がローンチする際に、前世代品の在庫調整が適切に行われない場合には、棚卸評価損等の追加費用が発生する可能性があります。
(18)情報セキュリティについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:重)
当社においては、顧客の有している設備内部画像等の機密情報が含まれているデータを取り扱っております。当社は、このような機密性の高い情報を適切に管理するため、情報セキュリティマネジメントシステム(ISMS)の国際規格「ISO/IEC27001:2013」の認証を2022年9月に取得し、情報セキュリティ等の社内規程に基づいた情報管理に関する社内ルールの周知徹底を図る等、セキュリティ対策には万全の措置を講じております。
しかしながら、万が一これらの情報が漏洩した場合、当社の信用やブランド価値が毀損し、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
<規制等に関するリスク>
(19)法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:重)
当社の事業を規制する主な法規制は、以下のとおりであります。
① 航空法
航空法については、ドローンを同法の対象空域で飛行させる場合には、同法に基づく許可・承認を得ております。一方、当社の主要サービスに利用しているIBISは原則として屋内にて利用していることから同法の対象外であります。万が一、機体がコントロールを失い屋外へ飛び出してしまった場合には、法的には、速やかに引き返すか、緊急停止が求められていますが、IBISは緊急停止機能を有しているため、緊急時には当該対応を行う想定です。
しかしながら、航空法が改正され、当社のサービスに影響のある法改正が行われた場合には、事業活動が制限され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、顧問弁護士との定期的な連携やドローンにかかる関連諸団体への加入を通じて法改正等の情報収集と、必要に応じて法令の解釈等について随時相談を行っております。
② 電波法
電波法については、ドローン操縦時における5.7GHz帯画像伝送に関して、同法に基づき業務用の無線局(携帯局)の免許を取得しております。
当社は、すべての当社事業で使用している機体に関して当該免許を取得して業務を運営しており、同法を厳格に順守しております。
しかしながら、万が一、何らかの理由により、電波法違反と認定された場合には、事業活動が制限され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 製造物責任法
製造物責任法については、当社はドローン等の製品を製造しているため、当社製品の欠陥等が生じたことによって身体又は損害を被ったことを被害者が証明した場合、損害賠償請求される可能性があります。当該リスク軽減に向け、品質マネジメントシステムの認証取得や製造物責任賠償保険への加入を進めてまいりました。
当社の製品は当該法律の基準に適合しており、製造にあたっては厳格な品質管理体制を整備・運用しておりますが、万が一製造・検品の工程に重大な欠陥があった場合や予見できない不具合等が生じた場合、また、製造した製品が将来の法改正等によって当該基準に不適合となった場合は、事業活動が制限され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 外国為替及び外国貿易法
外国為替及び外国貿易法については、当社が販売する製品及び部品の一部は、規制の対象となる可能性があります。そのため、当社が海外に向けてドローンを輸出、又は関連する技術の提供をする場合は、同法を遵守して適切な輸出管理に努めております。また、法令遵守を徹底するために、顧問弁護士等社外の専門家も含めたチェック体制を構築しております。しかしながら、関連各国により予期せぬ規制の改廃や政策変更が行われた場合、事業活動が制限され、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(20)海外における許認可について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:軽)
当社は、海外にてドローンを利用するための製品規格に関する認証等様々な許認可を取得しており、かかる許認可に基づく基準を遵守する取り組みを行っております。そのため、将来において、法令の変更等により、更なる認証取得等の追加費用が生ずる可能性があります。また、将来の事業領域の拡大の際に新たな許認可取得の必要性が生ずる場合には、当該許認可取得のための対策費用が生ずる可能性があります。さらに、何らかの原因で許認可の更新が適切に行われない場合、当社の事業運営に支障をきたす可能性があります。当社では、許認可取得について外部の専門機関に委託する等、これら法令を遵守する体制を整備するとともに、規制当局の動向及び既存の法規制の改正動向等を踏まえ、適切に対応していく予定でありますが、当該リスクの発生によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(21)知的財産権について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:短期、影響度:中)
当社で開発・設計しているドローン等やソフトウェア、アプリケーション・プログラムは、当社が独自に開発・設計したものであり、当社の独自技術について特許出願等を行い、知的財産権の獲得に努めております。また、第三者の知的財産権についても、顧問弁護士や顧問弁理士に相談しながら権利侵害がないように特許権等の調査を行い、適切に管理できるよう進めております。
これまで第三者より知的財産権の侵害に関する指摘等を受けた事実はなく、今後も上述の体制を強化し、管理を行っていく方針であります。しかしながら、第三者の知的財産権の完全な把握はその性質上困難であるため、当社が認識せずに他社の特許を侵害してしまう可能性があります。その結果、損害賠償請求や知的財産権の使用に係る対価の支払い等により、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
<会計税務に関するリスク>
(22)固定資産の減損について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は、「固定資産の減損に係る会計基準」を適用しており、回収可能性が見込めなくなった固定資産については減損処理を実施する方針であります。
当社は、主にドローン事業で使用しているドローン機体やエクステンダー、サーバーを固定資産に計上しておりますが、当該資産から得られるキャッシュ・フローの状況等が悪化し、それらの回収可能性が著しく低下した場合には減損処理が必要となり、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(23)税務上の繰越欠損金について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:中)
当社は、事業拡大のための積極的な研究開発投資等を行ってきたことから、創業以来当期純損失を計上しており、当事業年度末日現在において1,984,370千円の繰越欠損金が存在しております。繰越欠損金は、一般的に将来の課税所得から控除することが可能であるため、繰越欠損金を利用することにより将来の税額を減額することができます。
しかしながら、繰越欠損金の利用額と利用期間には、税務上、一定の制限が設けられております。そのため、計画どおりに課税所得が発生しない場合、繰越欠損金の一部が利用できないこととなるため、通常の税率に基づく法人税等が課税されることになり、当期純利益やキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
<株主に関するリスク>
(24)配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:軽)
当社は、創業以来配当を実施しておりません。株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして位置づけておりますが、現状では、持続的成長と事業拡大に向けた積極的な投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。将来的には、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案した上で、株主に対して利益還元策を実施していく方針ではありますが、現時点において配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。
(25)ベンチャーキャピタル等の組成する投資事業組合について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:中)
2024年7月31日現在において、当社発行済株式総数18,836,700株のうち、計8,017,400株はベンチャーキャピタル等が組成した投資事業組合(以下「VC等」という。)が所有しており、VC等が保有する当社株式の発行済株式総数に対する割合は、42.6%という水準となっております。一般にVC等による未公開企業の株式所有目的は、株式公開後に売却しキャピタルゲインを得ることであることから、今後もVC等による所有株式の売却が予想されます。当該株式売却により、当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
<その他のリスクについて>
(26)業績の季節変動に係るリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:短期、影響度:軽)
当社は、売上高の一部について大企業向けにドローンの販売や受託開発サービスの提供を行っているため、多くの大企業等の決算月である3月に売上高が集中する傾向にあり、四半期会計期間毎の業績について、第3四半期会計期間の比重が高くなる傾向にあります。
第3四半期会計期間に比重が高くなる背景としては、当社の顧客企業の予算消化サイクルと連動していること、及びソリューション開発案件の完了時期が2月及び3月となるものが多く、かかる季節変動により、当社の経営成績の四半期毎の比較は当社の経営成績の推移を判断するための参考にはならない可能性があります。
なお、2023年7月期及び2024年7月期に係る当社売上高の四半期会計期間毎の推移は以下のとおりとなります。
|
2023年7月期 第1四半期 |
2023年7月期 第2四半期 |
2023年7月期 第3四半期 |
2023年7月期 第4四半期 |
売上高(千円) |
46,845 |
93,079 |
170,981 |
68,698 |
(注)上記の売上高は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づくESネクスト有限責任監査法人の四半期レビューを受けたものではありません。
|
2024年7月期 第1四半期 |
2024年7月期 第2四半期 |
2024年7月期 第3四半期 |
2024年7月期 第4四半期 |
売上高(千円) |
73,472 |
191,770 |
344,279 |
205,785 |
(注)上記の第1四半期及び第2四半期の会計期間に係る売上高は、金融商品取引法第193条の2第1項の規定に基づくESネクスト有限責任監査法人の四半期レビューを受けたものではありません。
(27)過年度における継続的な損失計上について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は、過年度において、継続的な事業成長を図るため、新製品又は新技術の開発に係る研究開発費や積極的な人材採用等への投資、顧客基盤拡大のための広告宣伝活動を実施してきたことから、「第1 企業の概況 1主要な経営指標等の推移」に記載のとおり、継続的な売上高拡大が図られたものの、創業以来営業赤字を継続して計上しております。
今後も更なる事業成長のために継続して研究開発活動や広告宣伝活動等を促進していく方針でありますが、市場の拡大と共に、各サービスにおける案件の積上げによる売上高の伸長によって、粗利率の改善を図ってまいります。この点において、今後、複数年にわたり「中小企業イノベーション創出推進事業」に係る多額の研究開発費が計上されるため、その間は営業赤字となる見込みではありますが、当該研究開発費については補助金にて補填されることから、中期経営計画期間内では経常利益ベースでの黒字化を図っていく予定であります。なお、「(5)国家プロジェクトに係る補助金・助成金収入について」に記載の通り、国家プロジェクトに係る研究開発費は先行して支出され、その後補助金を受領することから、国家プロジェクトに係る研究開発費と補助金収入を除くと経常黒字であっても、研究開発費が先行支出した期と補助金を受領する期が異なる場合には経常赤字となる可能性があります。
上記の点を踏まえても、当社が属する市場は新しい市場であることから、想定どおりに顧客開拓が進まない場合や当社事業に対する需要が想定どおりに集まらない場合、また、研究開発活動の効果が十分に得られない場合やコスト上昇等想定外の費用が生じた場合等には、計画どおりのタイミングで利益を上げることができず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(28)事業歴が浅いことについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:中期、影響度:中)
当社は、2016年8月に設立されており、設立後の経過期間は8年程度と社歴の浅い会社であります。そのため、当社はIR・広報活動等を通じて積極的に経営状況を開示していく方針でありますが、当社の過年度の経営成績は期間比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の業績のみでは今後の業績を判断する情報としては不十分な可能性があります。また、当社が提供しているサービスは、屋内狭小空間を主としたドローン事業と、狭小空間や暗所などで撮影された画像の3次元化など難易度の高いサービスであり、市場が未成熟で成長過程にあることから、今後も積極的な成長投資等により一定期間業績が安定しない可能性があります。
(29)訴訟について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:長期、影響度:中)
当社は、本書提出日現在において、訴訟を提起されている事実はありません。
しかしながら、販売した機体の不具合や当社が提供するサービスの不備、顧客情報の漏洩等が発生した場合又は取引先との関係に何かしらの問題が生じた場合等、これらに起因した損害賠償の請求、訴訟を提起される可能性があります。その場合、損害賠償の金額、訴訟内容及び結果によっては、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、事業展開の状況、業績や財政状態等を総合的に勘案しながら、継続的かつ安定的な配当を行うことを基本方針としております。しかしながら、当社は成長過程にあるため、将来の事業展開と財務体質強化のため必要な内部留保の確保を優先し、創業以来配当を実施しておりません。
当面の間は、将来にわたる企業価値向上のために内部留保の充実及び業容拡大のための先行的な投資を優先していきますが、将来的には、経営成績及び財務状態を勘案しながら株主への利益の配当を目指していく方針であります。ただし、配当実施の可能性及びその実施時期等につきましては、現時点において未定であります。
なお、剰余金の配当を行う場合、年1回の期末配当を行うことを基本方針としており、配当の決定機関は、株主総会であります。また、当社は、「取締役会の決議により、毎年1月31日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定めております。