2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

 本項においては当社グループの事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる事項を記載しております。ただし、これらは当社グループに関するすべてのリスクを網羅したものではなく、記載された事項以外の予見しがたいリスクも存在します。

 なお、本項の記載内容のうち、将来に関する事項を記載している場合には、当該事項は本書提出日現在において判断したものであります。

 

(1)財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動

 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の異常な変動はありません。

 ただし、経済情勢の変化等によるシステム投資動向、競合状況、大型プロジェクト案件の存否、個別プロジェクトやサービス案件の進捗状況・採算性等により、経営成績が変動する可能性があります。また、一時点で収益が認識される機器の販売等の個別案件の売上収益の計上時期により、四半期・半期ごとの経営成績が変動することがあります。

 

(2)特定の取引先・製品・技術等への依存

 現時点で、該当する事項はありません。

 当社グループは、製造業、流通業、運輸業、通信業、金融業及び官公庁等幅広い顧客からご支持をいただいております。その中で日本製鉄㈱とは安定的な取引を継続しており、当社グループ最大の取引先である同社に対する当連結会計年度の販売実績は65,303百万円(割合19.3%)となっております。また、当社グループは、顧客のIT戦略立案等のコンサルティングから、企画、構築、運用・保守というシステムライフサイクルを通じたソリューションメニューを提供し、特定の製品・技術等に偏ることなく事業を展開しております。

 

(3)情報サービス業界特有の法的規制・取引慣行・経営方針、及びその他事項

  (情報セキュリティに関するリスク)

 当社は、マーケットニーズの変化に対応するため、SaaS型ITサービスの提供を推進しており、これに伴い当社に管理責任が生じる顧客情報・個人情報の取り扱いが増えておりますが、当該情報が外部に流出する等の事態が発生した場合は、顧客等からの損害賠償請求、当社の信用失墜等の事態を招く可能性があります。

 当社は、社長を委員長とする情報セキュリティ委員会のもと、情報セキュリティ専門組織である情報セキュリティ部を設置し、社内ルールや体制の整備、教育啓発活動等の諸施策を実施するとともに、プライバシーマークをはじめとする各種認証取得に積極的に取り組む等、顧客情報や機密情報等の保護に努めてまいりました。激化するサイバー攻撃に対応するため、これらの取組みを一層強化するとともに、システムによるセキュリティ対策を強化すると共に、顧客向けシステム開発、サービス開発において、設計段階からセキュリティ要件を取り込む開発プロセスの導入や、全社標準のSaaS型ITサービス開発・本番基盤「Nestorium」の活用によるセキュリティの担保を進めております。

 

  (情報システム構築に関するリスク)

 情報システムの構築ビジネスは、請負契約で受託することが一般的でありますが、プロジェクトを受注する際には、当該プロジェクトに必要な工数を見積ったうえで請負金額を決めることで、費用見積りにおける不確実性を低減させております。一方で、システム構築は、案件ごとの個別性が強く、納期までに顧客の要求に沿ったシステムを完成・納品する完成責任を負っております。システムへの要求が一層高度化かつ複雑化するとともに、短工期の完成・納品が求められる中、契約当初に予見しなかったプロジェクト進捗の阻害要因等が発生した場合は、当初想定以上の費用を要する可能性があります。また、プロジェクトを完遂できない等で契約不履行が生じた場合、顧客等からの損害賠償請求、当社の信用失墜等の事態を招く可能性もあります。

 さらに、業務の受委託に伴う他社との協業機会が多く、委託先管理において労働関連法規制に抵触した場合や、委託先との価格決定において政府のガイドラインや独占禁止法・下請法に抵触した場合、或いは、公共入札案件における独占禁止法抵触リスクが発現した場合等、行政処分、当社の信用失墜等の事態を招く可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社はプロジェクトリスク管理機構を設け、プロジェクトの提案段階からリスクの洗い出しと対策検討を徹底して行い契約面からのリスク回避に努めるとともに、受注後の実行段階においても組織的なレビューを継続的に行って課題の早期検知と対策実施を進めております。

 

  (ITサービス提供に関するリスク)

 データセンターサービスやクラウドサービス等当社が提供するITサービスにおいて、電力・通信障害、機器・設備の故障、人的作業ミス等によるサービス障害等が発生した場合は、顧客等からの損害賠償請求、当社の信用失墜等の事態を招く可能性があります。

 これらのリスクに対し、当社はプロジェクトリスク管理機構を設け、サービスの提案段階からリスクの洗い出しと対策検討を徹底し契約面からのリスク回避に努めるとともに、受注後の実行段階においても組織的なレビューを継続的に行って課題の早期検知と対策実施を進めております。

 

  (知的所有権に関するリスク)

 製品及び技術の高度化・複雑化等、特に近年では生成AIの活用等に伴い、提供するサービス又は製品に対して第三者から知的所有権の侵害を理由とする訴訟提起又は請求を受け、その結果、当社グループが損害賠償を負担し、又は代替技術の獲得もしくは開発をしなければならなくなる可能性があります。

 当社では各部門内に知的財産責任者を配置するとともに、法務・知的財産部を中心として知的所有権に関する社内教育の徹底、他者特許侵害の監視等を行い、リスクの発現防止に努めております。

 

(4)労務管理に関するリスク

 労務管理リスクにつきましては、グループ各社においてシステムを活用した当社社員の勤務実態の適正な把握、継続的なモニタリング・管理を行うとともに、業務プロセスの標準化、生成AI活用や全社開発標準プラットフォーム導入等システム化の促進等による業務負荷軽減に取り組んでおります。またハラスメントリスクに対して、意識啓発活動の継続や教育の徹底、ヘルプライン活用強化等にグローバルで取り組み、徹底防止を図っております。

 

(5)自然災害・感染症等の発生

当社が事業活動を展開する地域が大規模な地震、津波、風水害等に見舞われ、事業拠点及び従業員、パートナーに大きな被害が発生した場合、或いは、感染症の発生・拡大により、当社の事業活動に支障が生じる可能性があります。

当社は、これら災害等による事業継続リスクへの対応力強化として、事業継続計画(BCP)の策定、安否確認システムの構築、防災訓練及び建物の耐震調査、在宅勤務制度の拡充、テレワーク環境整備等の対策を講じております。また当社のデータセンターにつきましては免震又は耐震構造を採用し、自家発電による無停電電源装置を装備するとともに、強固なセキュリティを確保しております。システム開発や自社サービス提供につきましては、クラウドサービス型の社内開発基盤「TetraLink」の活用による国内外での分散開発体制の拡大や、同じくクラウドネイティブな提供型ITサービスプラットフォーム「Nestorium」の活用による自社サービスの継続性向上に取り組んでおります。

 

  (6)重要な訴訟事件等について

  (実在性を確認できない取引に関する事項)

当社は、みずほ東芝リース㈱より、2020年3月31日付(当社への訴状送達日は、2020年6月24日)で、東京地方裁判所にて、違約金請求訴訟の提起を受けました。なお、同訴訟については、2021年1月18日付で、予備的請求として、売買契約に基づく代金支払請求を追加する旨の訴えの変更がなされております。

本訴訟は、同社が、2019年8月、当社との間で、当社が同社よりサーバ及びその周辺機器等を購入する旨の売買契約(以下「本売買契約」)を締結したところ、同年11月に当社が本売買契約を解約した旨主張して、当社に対し、当該売買代金と同額の違約金を請求するとともに、予備的に、本売買契約に基づき当該売買代金を請求するものであり、請求額は10,926百万円及びこれに対する遅延損害金であります。

本訴訟について、この度、紛争の早期解決等の観点から、当社からは和解金5,000百万円を支払うとする裁判所の和解案に応じることとし、2025年5月19日付で和解が成立いたしました。なお、本和解金については2025年5月30日付で支払が完了しております。

本訴訟は2019年度に明らかとなった実在性の確認できない取引に関するものであり、この和解による本訴訟終了後において、和解金支払債務以外に債権債務は認識されないこととなります。これに従い、実在性の確認できない取引に関連する未精算残高である仮受金2,926百万円について、前連結会計年度においてはその他の非流動負債に表示しておりましたが、上記和解金の支払に充てるため、当連結会計年度においてその他の流動負債に振り替えております。また、和解金額と仮受金の差額及び訴訟関連費用について、訴訟損失引当金として2,260百万円計上し、引当金繰入額をその他費用として表示しております。

 

(7)役員・大株主・関係会社等に関する重要事項等

  (当社の株式について)

当連結会計年度末日現在、日本製鉄㈱は当社の発行済株式総数183,002,000株のうち116,067,600株(出資比率63.4%)を保有しております。

 

配当政策

 

3 【配当政策】

当社は将来にわたり競争力を維持強化し、企業価値を高めていくことが重要と考えております。利益配分につきましては、株主の皆様に対する適正かつ安定的な配当、及び事業成長に向けた投資や事業リスクに備えた内部留保を確保することを基本としております。配当につきましては、連結業績に応じた利益還元を重視し、連結配当性向50%を目安としております。

当社は、剰余金の配当の回数につきましては、3月31日、9月30日及びその他取締役会が定める日を基準日とする旨、また配当の決定機関につきましては、自己の株式の取得、準備金の額の減少及び剰余金の処分に関する会社法第459条第1項各号に定める事項を取締役会が定めることができる旨を定款に規定しております。

当期末日(2025年3月31日)を基準日とする剰余金の配当につきましては、直近の配当予想から1株につき1円増配の37.5円の配当を実施いたしました。2024年9月30日を基準日とする剰余金の配当につきましては、1株につき36.5円を実施しており、年間合計では74.0円の配当を実施したこととなります。これは、前期(2023年度)と比較して31.5円(注)の増額となります。

なお、次期の剰余金の配当につきましては、年間合計で1株につき80.0円とする予定であります。

 

(注)1.前期は年間合計で1株につき85.0円の配当を実施しておりますが、2024年7月1日付で普通株式1株につき2株の割合で株式分割を行っており、当該株式分割を考慮すると前期の配当は42.5円となります。

   2.基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、次のとおりであります。

 

決議年月日

配当金の総額(百万円)

1株当たり配当額(円)

2024年10月29日

取締役会決議

6,678

36.50

2025年5月19日

取締役会決議

6,861

37.50