2024年2月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 以下において、当社の事業の展開上、投資家の判断に重要な影響を及ぼす可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、必ずしも事業上のリスクとは捉えていない事項についても、投資家の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資家に対する情報開示の観点から積極的に開示しております。

 ここに記載したリスク以外にも、当社を取り巻く環境には様々なリスクを伴っており、ここに記載したものが全てではありません。

 また、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社が判断したものであり、実際は見通しと乖離する可能性があります。

 

① 不動産市況の動向

発生可能性:中

発生可能性のある時期:中期的

影響度:大

●リスク

経済環境が悪化した場合、賃貸需要の低下により不動産市場の流動性が低下する可能性があり、当社が保有する不動産を想定の時期および価格で売却できなくなる可能性があり、また、業績連動賃料を含む賃料の低下により、収益が低下する可能性があります。

 

○機会

資産価値の観点から潜在力のある不動産を、安価に取得することが可能な機会と捉え、株主価値向上の観点から効果のある資産取得を行っていく方針です。

★対応策

不動産投資の際に、様々な想定のもと市場変動への耐性を検証し、長期的かつ安定的な運用が可能な物件を取得しております。また、市場環境の変化に応じて定期的に必要な再構成を行っており、不動産市場の動向が当社の財政状態および経営成績に及ぼす影響を少なくするよう細心の注意を払っております。

 

② 災害等の影響

発生可能性:低

発生可能性のある時期:特定時期なし

影響度:大

●リスク

当社が運用する不動産または発電設備が所在する地域において、地震、台風、豪雨、テロ、火災等の災害が発生した場合、当該資産の価値が毀損する可能性があり、その結果、賃料収入や手数料収入等が減少する可能性があります。

★対応策

当社は、不動産の取得にPML値の基準を設け、取得時にハザードマップの確認と併せ、技術部門が防災設備の検証を行っており、自然災害の発生に一定の耐性を持つ資産の取得を行っております。

また、ITを用いた災害情報ネットワークを構築しており、災害発生時には速やかに被害状況の把握を行い、現地協力会社との提携による即時対応フローを運用しております。本社被災時には事業継続計画に基づき、段階的に事業復旧が可能となる体制および災害備蓄を整備しております。

 

 

 

③ 感染症拡大によるリスク

発生可能性:中

発生可能性のある時期:特定時期なし

影響度:中

●リスク

感染症の拡大により、当社が属する不動産業界においても、ホテル宿泊需要の大幅な減少や各種テナントの業況悪化が予想されます。また、感染症拡大に伴う影響の想定以上の長期化により、賃料の未収や減免が多数発生した場合、当社の保有する不動産の収益性低下による評価損または減損損失の発生により、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

〇機会

業務のIT化の推進により、就業場所を選ばず、効率性が確保された業務推進体制を整備する機会と捉えております。

★対応策

資金調達については、テナントの状況を注視し、金融機関との情報共有および連携を強化し、必要な場合には事前の対応を行ってまいります。
また、フレックスタイム制度による時差出勤およびITを活用したテレワーク体制を構築し、衛生管理を強化することにより、感染症拡大に伴う影響が長期化した場合にも、業務の効率性に影響のない業務推進体制の確保に取り組んでおります。

 

④ 有利子負債への依存および金利の動向

発生可能性:低

発生可能性のある時期:長期的

影響度:中

●リスク

心築事業およびクリーンエネルギー事業においては、自己資金によるエクイティ投資のほか、個別案件毎に金融機関からの借入金により資金を調達しております。このため、金利水準が上昇した場合、資金調達コストの増加、不動産価格の下落等の事象が生じる可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

●リスク

アセットマネジメント事業において、顧客である投資家の期待利回りの上昇により、新規ファンドの組成が困難となる可能性があります。

★対応策

金利の上昇リスクに対しては、借入のうち一定の割合について、金利スワップおよび金利キャップ取引を利用し、金利上昇リスクをヘッジしております。また、アセットマネジメント事業において、複数のJ-REITおよび私募不動産ファンドの組成、運用実績として、数多くのトラックレコードを有しており、心築事業と連動した事業運営を行うことにより、投資家の要求する期待利回りに合致した競争力のあるファンド組成、運用体制を構築しております。

 

 

⑤ 財務制限条項について

発生可能性:低

発生可能性のある時期:中期的

影響度:大

●リスク

借入の一部において、財務制限条項が付されており、これらの条項に抵触した場合、追加の担保設定または借入金の一部弁済を求められる可能性があります。また、期限の利益を喪失し、当該借入金を一括返済する必要が生じる等の可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

★対応策

当社は、借入時に財務制限条項の当社に与える影響について、細心の注意を払って貸付人と交渉を行い、リスクが抑制された水準での合意を行っております。また、投資不動産に変動が生じた場合、速やかに財務制限条項への抵触可能性についてシミュレーションを行い、適切な判断と対応を行うとともに、貸付人とは緊密に情報を共有し、良好な関係を継続し、協議可能な関係の維持に努めております。

 

⑥ その他新規事業について

発生可能性:中

発生可能性のある時期:中期的

影響度:中

●リスク

ノンアセットの新たな事業の立ち上げに取り組んでおりますが、これら事業への参入には様々な不確実性を伴うため、既存事業と比較し損失の発生可能性は高く、損失発生時には、財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

〇機会

新規事業の構築により、新たな安定的収益基盤の構築が達成されるとともに、新たな事業パートナーとの協働によるイノベーションが期待されます。

★対応策

当社では、新規事業にかかる初期コストおよび人的リソースの上限を、当期の経営状況から許容できる範囲に限定しており、社内におけるモニタリング体制および内部管理体制の充実、人財の採用教育、必要に応じて保険の付保等を行うなど、リスク顕在時の影響を限定する施策を講じております。新しい事業分野においては、当該分野の専門家の雇用または提携を前提とし、既存の事業とのシナジーが見込まれる範囲に留めております。本社にはこれら新規事業の進捗状況を確認、監督する部門を設け、その情報分析のもと、撤退の判断を迅速に行える体制を整備しております。

 

⑦ 競合について

発生可能性:中

発生可能性のある時期:中期的

影響度:中

●リスク

当社の営む事業は、不動産投資に関する高い専門能力と知識、経験が不可欠であります。しかしながら、競合他社との間で投資対象となる収益不動産案件の獲得競争が厳しくなっていることから、当該収益不動産案件の確保が出来なかった場合には、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

★対応策

当社は、不動産技術とノウハウを活用し、一つ一つの不動産に心をこめた丁寧な価値向上を図り、現存不動産に新しい価値を創造し、日本における100年不動産を目指す「心築」を行っております。当社は保有する心築の総合力を最大限発揮させ、独自の顧客の広範囲なネットワークを構築しており、潜在的な案件の確保に取り組んでおります。

 

 

⑧ 人材の確保について

発生可能性:中

発生可能性のある時期:中期的

影響度:中

●リスク

当社の事業は、高度な知識と経験に基づく人的資本により成り立っております。しかしながら、役員もしくは重要な使用人が退職した場合、疾病等により業務遂行の支障が生じた場合、または、必要な能力を有する人材が確保できなかった場合、収益の低下および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

★対応策

当社は、健康経営をスローガンに、役職員の健康管理を重視し、法定以上の健康診断、予防接種、社内の衛生管理を徹底しております。また、内部通報制度の構築やコミュニケーションの重視、適正な人事評価制度の運用を重視しており、働きやすい環境の整備に努めております。

 

⑨ 特有の法的規制について

発生可能性:低

発生可能性のある時期:特定時期なし

影響度:小

●リスク

当社は、現時点の各種規制に従って、業務を遂行しておりますが、将来において各種規制が変更された場合や、何らかの理由により、当社が業務を遂行するために必要な許認可および登録(以下、「許認可等」という。)の取消などの行政処分を受けた場合には、当社の事業活動に支障をきたし、財政状態および経営成績に重要な影響を及ぼす可能性があります。当社が規制を受ける主なものは、金融商品取引法、宅地建物取引業法、各税法、資産の流動化に関する法律、投資事業有限責任組合契約に関する法律、貸金業法、建築士法等があります。

★対応策

当社では、各種規制変更の決定前からその動向を注視し、状況に応じた対応を取り、影響を最小限とするよう対策を行うとともに、許認可等を受けるための諸条件および関係法令の遵守に努めております。なお、現時点において当該許認可等が取消となる事由は発生しておりません。

 

当社および当社子会社では、上記の法令等に基づき、主たる事業において以下の許認可等を受けております。

 

(いちご株式会社)

許認可等の名称

所管官庁等

登録番号

有効期間

取消、解約その他の事由

宅地建物取引業免許

東京都

東京都知事(4)

第90527号

2029年5月22日まで

不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消

(宅地建物取引業法第66条)

(いちご投資顧問株式会社)

許認可等の名称

所管官庁等

登録番号

有効期間

取消、解約その他の事由

宅地建物取引業免許

東京都

東京都知事(2)

第99098号

2026年4月28日まで

不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消

(宅地建物取引業法第66条)

取引一任代理等認可

国土交通省

国土交通大臣認可第42号

有効期間の定めはありません。

不正な手段による認可の取得や業務に関し取引の相手に損害を与えた場合は認可の取消

(宅地建物取引業法第67条の2)

金融商品取引業登録

(投資運用業、投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)

金融庁

関東財務局長

(金商)第318号

有効期間の定めはありません。

不正な手段による登録や資本金不足、業務または財産の状況に照らし支払不能に陥る恐れがある場合は登録の取消

(金融商品取引法第52条)

不動産特定

共同事業者許可

金融庁、

国土交通省

金融庁長官・

国土交通大臣

第69号

有効期間の定めはあり
ません。

役員や法人としての欠格条項に該当する場合や不正な手段による登録がある場合は登録の取消

(不動産特定共同事業法第36
条)

(いちご地所株式会社)

許認可等の名称

所管官庁等

登録番号

有効期間

取消、解約その他の事由

宅地建物取引業免許

東京都

東京都知事(3)

第93181号

2026年7月15日まで

不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消

(宅地建物取引業法第66条)

金融商品取引業登録

(投資助言・代理業、第二種金融商品取引業)

金融庁

関東財務局長

(金商)第18号

有効期間の定めはありません。

不正な手段による登録や資本金不足、業務または財産の状況に照らし支払不能に陥る恐れがある場合は登録の取消

(金融商品取引法第52条)

(いちごオーナーズ株式会社)

許認可等の名称

所管官庁等

登録番号

有効期間

取消、解約その他の事由

宅地建物取引業免許

東京都

東京都知事(2)

第100428号

2027年4月7日まで

不正な手段による免許の取得や役員等の欠格条項に該当する場合は免許の取消

(宅地建物取引業法第66条)

不動産特定

共同事業者許可

東京都

東京都知事

第153号

有効期間の定めはあり
ません。

役員や法人としての欠格条項に該当する場合や不正な手段による登録がある場合は登録の取消

(不動産特定共同事業法第36
条)

 

 

⑩ 連結の範囲決定に関する事項

発生可能性:低

発生可能性のある時期:長期的

影響度:中

●リスク

当社は、「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会 実務対応報告第20号 2011年3月25日改正)に基づき、各投資事業組合等毎に個別に支配力および影響力の有無を判定した上で連結子会社および関連会社を判定し、連結の範囲を決定しております。
今後、新たな会計基準の設定や、実務指針等の公表により、投資事業組合等に関する連結範囲の決定について、当社が採用している方針と大きく異なる会計慣行が確立された場合には、当社の連結範囲決定方針においても大きな変更が生じ、当社の財政状態や経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

★対応策

当社は、新たな会計基準の設定や実務指針等の決定前からその動向を注視し、状況に応じた対応を取り、影響を最小限とするよう対策を行っております。

 

⑪ 大株主について

発生可能性:低

発生可能性のある時期:長期的

影響度:小

いちごトラスト・ピーティーイー・リミテッド(以下、「いちごトラストPTE」という。)は、当社株式を長期安定株主として保有する方針のもと、2024年2月29日現在、当社の総議決権の51.11%を保有する当社の筆頭株主であります。

いちごトラストPTEは、投資を事業目的とする、法人格を有さない外国籍のユニット・トラストである、いちごトラストから100%の出資を受けております。

いちごトラストおよびいちごトラストPTEはIchigo Asset Management International, Pte. Ltd.(以下、「Ichigo Asset International」という。)に投資を一任しており、Ichigo Asset Internationalに対しては、いちごアセットマネジメント株式会社が投資助言を行っております。Ichigo Asset Internationalおよびいちごアセットマネジメント株式会社は当社との間に資本関係はございませんが、当社の取締役および代表執行役会長であるスコット キャロンはいちごアセットマネジメント株式会社の代表者を兼任しており、Ichigo Asset Internationalの大株主であります。

なお、スコット キャロンは、Ichigo Asset Internationalの業務執行を行っておらず、Ichigo Asset Internationalの当社株式の売買に関する投資判断には関与しておりません。

さらに、Ichigo Asset Internationalは、日本国の法令規則等を遵守するとともに、コンプライアンス等に係る社内規則を定め、未公表の重要事実の入手時における売買停止を実施する等、必要とする情報統制の体制を整備し運用しております。

 

●リスク

現時点で、いちごトラストPTEは当社の長期安定株主として一定数を保有する方針でありますが、今後の経済情勢および国際情勢が著しく変動した場合、保有方針が変更される可能性があり、当社の経営体制に影響を及ぼす可能性があります。また、当社の商号に含まれる「いちご」の商標権は、Ichigo Asset International が保有し、当社はその使用許諾を受けていることから、継続的な使用許諾または商号変更等の対応が必要となる可能性があります。

★対応策

当社は、事業の意思決定に際し、いちごトラストおよびいちごトラストPTEから制約を受けることはなく、当社の意思決定は当社の責任のもとで行われ、独立性を確保しているものと考えております。また、事業においても、いちごトラスト、いちごトラストPTE、Ichigo Asset Internationalおよびいちごアセットマネジメント株式会社に依存しておらず、独立した事業を行っており、仮に大株主の保有方針が変更となった場合においても、事業に影響はありません。また、商標権の使用許諾が停止された場合でも、影響は軽微であります。

 

 

⑫ クリーンエネルギー特有のリスク

発生可能性:低

発生可能性のある時期:長期的

影響度:中

当社は、環境と地域社会に配慮した発電事業の社会的意義のもと、クリーンエネルギー(太陽光発電等)事業を展開しております。
●リスク

当社のクリーンエネルギー事業は、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法により定められた全量固定価格買取制度に基づき、電力会社との契約により売電価格が20年間保証されております。
しかしながら、電力会社が当該契約通りに買取を行わなかった場合、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
●リスク

当該事業における発電量は気象条件に大きく左右されるほか、天災・火災等の災害に見舞われた場合には、設備の損傷等により発電量が大幅に低下する可能性があり、当社の財政状態および経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

★対応策

当社は、固定価格買取制度の制度変更にかかる行政、電力会社の動向を常に把握し、採算ラインを意識して事業の検証を行っております。また、電力会社以外の電力卸先、小売事業の検討も行っており、販売先の多様化にも取り組むほか、風力やバイオマスなど、太陽光発電以外の再生可能エネルギーの多様化を進め、事業の安定化を図っております。
発電設備の災害対策においては、専門家のアドバイスのもと、各自治体、地域市民との協議を重ね、想定以上の災害に対応できる防災設備を設けるとともに、常時監視システムと現地協力会社との連携により、防災に務めております。

配当政策

3【配当政策】

当社では、株主の皆様に対する利益の還元を経営上の重要な施策の一つとして位置づけており、将来における安定的な企業成長と経営環境の変化に対応するために必要な内部留保資金を確保しつつ、株主還元の基本方針として「累進的配当政策」を導入しております。各年度の1株当たり配当金の下限を前年度1株当たり配当金とし、原則として「減配しない」ことにより、配当の成長を図るとともに、配当の安定性と透明性を高めております。

また、当社は「長期VISION いちご2030」の経営目標(KPI)を刷新しており、「株主資本配当率(DOE)」を3%から4%に引き上げることといたしました。当社は、徹底的なキャッシュ・フロー経営のもと、キャッシュの創出に注力しており、創出したキャッシュは、将来の利益に繋がる成長投資と株主の皆さまへの還元の原資であり、この株主還元策に基づき、剰余金の配当の方針を決定しております。

なお、当社は毎年8月31日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に定めておりますが、現在のところ中間配当を行っておらず、期末配当のみを実施する方針であります。また配当の決定機関については、会社法第459条第1項の規定に基づき、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議をもって配当を行うことができる旨を定款に定めております。

この結果、当期につきましては2024年5月26日の株主総会において、1株当たり9円(総額3,963百万円)の配当を実施することを決定いたしました。

 

(累進的配当政策について)

累進的配当政策とは、企業の株主に対する長期的なコミットメントを示す株主還元策です。原則として「減配なし、配当維持もしくは増配のみ」を明確な方針とする累進的配当政策は、持続的な価値向上に対する企業から株主へのコミットメントといえます。