2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中における将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。また、以下の事項は当社グループに関する全てのリスクを列挙したものではありません。

1.当社グループの事業内容について

(1)経営上の重要な契約について

経営上の重要な契約として、下記に記載の契約があります。

①メディア事業

当社は、当社の主要な事業であるメディア事業における電話帳の電話番号情報データに関して、下記のとおり西日本電信電話株式会社と「番号情報データベース利用に係る利用契約」を締結して、電話帳発行地区における最新の電話番号情報のオンラインによる提供を受けております。

 

契約会社名

相手方の名称

契約の内容

契約年月日及び期間

株式会社

サイネックス

(当社)

西日本電信電話株式会社

番号情報データベース

(TDIS)の利用契約(注)

平成13年7月18日契約

自 平成13年7月19日

至 平成14年3月31日

以降1年ごとの自動更新

 (注)番号情報データベースシステム(TDIS=Telecom Directory Information Systemの略)とは、東日本電信電話株式会社、西日本電信電話株式会社、NTTコミュニケーションズ株式会社等の電気通信事業者が保有する電話番号情報を、電話帳発行事業者・番号案内事業者等が同一の条件で利用できるようにするために、各事業者の要望を踏まえ、西日本電信電話株式会社が設置・運営するものであります。

上記契約では、当社グループが情報流出防止のための措置を講ずること等「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン(令和4年3月31日個人情報保護委員会・総務省告示第4号)」の遵守を義務付けられており、契約解約事由は下記のとおりであります。

イ.当社が、正当な理由によらないで本契約の全部もしくは一部を履行しないとき

ロ.当社の責に帰すべき理由により、当社が契約を履行する見込がないと認められるとき

ハ.当社が、第三者より差押え、仮差押え、仮処分、競売の申請、租税公課の滞納による差押えまたは支払いの停止処分を受けたとき

ニ.当社が、「個人情報保護ガイドライン等」(「電気通信事業における個人情報保護に関するガイドライン(平成10年郵政省告示第570号)」等の法令)に違反したまたは違反する恐れがあるとき

ホ.当社が利用する契約者の番号情報の取り扱いにあたって、以下に掲げる事項を遵守せず、または遵守しない恐れがある場合

・当社は、契約者の番号情報の提供を受けた場合には、当社の取得済の番号情報を遅滞なく修正すること

・当社は、登録事業者の契約者の権利利益を不当に害しないこと(50音別電話帳の掲載事項を電磁的記録その他の方法により調整したものを提供する場合にあっては、50音別電話帳と同等の態様(逆検索機能(契約者の氏名または名称(契約者回線番号の終端のある場所等を指定する場合を含む)を指定して契約者回線番号を検索する機能をいう)およびダウンロード機能(具体的な契約者の氏名または名称を指定することなく契約者回線番号等を抽出することをいう)を利用できないよう技術的に必要な措置を講ずること)とすること)

・当社は、自ら(他事業者に業務を委託する場合を含む)電話帳掲載または番号案内をおこなう目的のためだけにTDISに登録された番号情報を利用すること

・その他「個人情報保護ガイドライン等」を遵守すること

当社グループでは、情報漏えい防止策として、取扱作業マニュアルを定め作業従事者に対し教育を実施するとともに、指紋認証や社員証カード等による入退室管理、サーバの常時施錠をおこなっており、現時点までにおいて、情報管理に関する事故やトラブルは、発生しておりません。しかし、今後情報管理に関して何らかの問題が生じ、契約を解除された場合には、電話帳を発行することが不可能となり、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

他方、当該データを利用して当社が発行する50音別電話帳に記載される個人データについては、「個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号  最終改正  令和6年政令第22号)」において、個人情報取扱事業者の義務は課されない旨規定されております。

②ロジスティクス事業

株式会社エルネットのDMソリューション事業において、日本郵便株式会社と、株式会社エルネットの指定する荷受人への日本郵便株式会社のゆうメールやゆうパケットとする荷物の運送業務の委託に関する契約を締結しております。本契約が解除された場合、顧客から受託したゆうメールやゆうパケットとする荷物を発送することができなくなり、株式会社エルネットの経営や、当社グループの経営成績に影響を与える可能性があります。現在の契約内容は次のとおりであります。

 

契約会社名

相手方の名称

契約の内容

契約年月日及び期間

株式会社

エルネット

(連結子会社)

日本郵便株式会社

株式会社エルネットの指定する荷受人への日本郵便株式会社のゆうメールとする荷物の運送業務の委託に関する契約

令和6年3月28日契約

自 令和6年4月1日

至 令和7年3月31日

株式会社

エルネット

(連結子会社)

日本郵便株式会社

株式会社エルネットの指定する荷受人への日本郵便株式会社のゆうパケットとする荷物の運送業務の委託に関する契約

令和5年5月12日契約

自 令和5年5月15日

至 令和6年5月14日

以後1年ごとの自動更新

(2)知的財産権について

 当社は提供する製品・サービスについて商標権を取得しております。また、他者の知的財産権を侵害しないよう社内のチェック体制整備に努めており、過去において、知的財産権侵害に係る損害賠償や使用差止め等の訴えを起こされた事実はありません。しかしながら、特許権、実用新案権、商標権、著作権等の知的財産権が、当社のおこなっている事業にどのように適用されるのか全てを正確に想定するのは困難であり、第三者の知的財産権を侵害した場合には、当社の事業展開および経営成績に影響が生じる可能性があります。

(3)官民協働事業における地方自治体との協定について

当社は、行政情報誌『わが街事典』をはじめとする地方自治体との官民協働事業を積極的に展開するにあたり、地方自治体と地域活性化に貢献することを目的として協定を締結しておりますが、協定に定めのない事態等の発生や、協定の目的とする事項が履行されない場合には、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

2.ICTを活用した新規事業の取り組みについて

当社グループでは、Society5.0や通信5Gなど、あらゆる分野で生じているデジタル・トランスフォーメーション(DX)に対応すべく、各事業の収益性と将来性との兼ね合いを総合的に勘案・検討しながら、最適な事業ポートフォリオを構築するための取り組みを進めております。

メディア事業の主力商材である官民協働型の行政情報誌『わが街事典』および50音別電話帳『テレパル50』の発行事業に加えて、官民協働によるデジタルサイネージ『わが街NAVI』の設置など、ICTを活用した新規事業の拡大に努めております。

しかしながら、メディア事業に比べ収益性の低い、ICTを活用した新規事業が高い収益性を生み出すまでには時間を要する可能性があり、結果として当社グループ全体の利益率が低下し、財政状態および経営成績に影響を与える可能性があります。

3.原材料の市況変動の影響について

 当社のメディア事業における出版物は、印刷用紙を原材料として使用しております。ロシアによるウクライナ侵攻の影響を受け、紙の市況が上昇しており、コスト削減等で吸収しておりますが、今後、市況がさらに高騰した場合には、原材料費の上昇を押さえられず、当社の経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.当社を取り巻く事業環境について

スマートフォンやタブレット等のデバイスの進化・多様化の追い風を受けて、検索連動型広告をはじめ、情報媒体としてインターネットの利用が一般化しており、当社もそのような環境変化に対応するために、インターネット上において、他社との提携により広告商材の提供や、自治体向けAIチャットボット、行政情報誌『わが街事典』を電子書籍として閲覧できる体制をとるなど、インターネット上のウェブプロモーションにも注力しております。しかしながら、スマートフォンやタブレット等の利用拡大により、メディア事業において、紙媒体による出版物の利用頻度が減少し売上高が減少するなど、当社の経営成績、今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

5.法的規制について

(1)個人情報の保護に関する法律について

当社グループは、番号情報データベースシステム(TDIS)以外にICT事業や、ロジスティクス事業のDMソリューション事業において登録顧客情報や荷受人等の個人情報を取り扱っており、個人情報保護法が定める個人情報取扱事業者としての義務を課されております。社内での個人情報の取扱い、管理についてルール化し、役職員の教育をおこない、その徹底をはかっております。

しかしながら、外部からの侵入者や当社関係者の故意または過失によりユーザーの個人情報が流出する等の問題が発生した場合には、当社への損害賠償請求や信用の低下により、当社の事業および財政状態、経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)その他法的規制について

当社グループのメディア事業や、ICT事業における広告掲載やeコマースサイト、ロジスティクス事業、ヘルスケア事業および投資事業においては、「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」(不正アクセス禁止法)、「特定電子メールの送信の適正化等に関する法律」(特定電子メール法)、「旅行業法」、「特定商取引に関する法律」、「不当景品類及び不当表示防止法」(景品表示法)、「食品衛生法」、「健康増進法」、「医療法」、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(医薬品医療機器等法)、「毒物及び劇物取締法」、「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)」等の各種法令や、監督官庁の指針、ガイドライン等による規制を受けております。

こうした法令の制定や改正、監督官庁による許認可の取消または処分、新たなガイドラインや自主的ルールの策定または改定等により、当社グループの事業が新たな制約を受け、または既存の規制が強化された場合には、当社グループの事業、業績に影響を及ぼす可能性があります。

6.システム障害について

 当社グループが提供するICTを活用したサービスについて、品質管理に努めているものの、誤作動やバグ(瑕疵)等が生じた場合、損害賠償責任が発生する可能性があり、当社の財政状態に影響を及ぼす可能性があります。さらに、そのような場合には、当社の信用が低下し、当社の事業および経営成績に影響を与える可能性があります。

7.電子データのセキュリティについて

(1)メディア事業

 メディア事業におきましては、データ漏洩を防止するため、社員教育の徹底をおこなうとともに、システムアクセス時のパスワードの設定、サーバへのアクセスリストの履歴管理により、不正アクセスの防止と不正発見にも努め、またTDISデータ処理室に、社員証カード等による入退室管理システムを設置し、入退室管理並びに履歴管理を実施、さらに夜間・休日は警備会社と契約し、ビル全体の入退室管理をおこなっております。しかし、万一データの漏洩が発生した場合は、前掲(1.(1)経営上の重要な契約について)記載の「番号情報データベース(TDIS)の利用契約」により、データの提供を停止されるおそれがあるほか、当社の信用が低下し、財政状態、経営成績、今後の事業展開に大きな影響を与える可能性があります。

(2)ICT事業

 当社グループが運営するウェブサイト運営上、メールマガジンの発信等のため、個人情報のデータベースを構築しております。現在まで個人情報の流出による問題は発生しておりませんが、外部からの不正な手段により、当社システム内への侵入等の犯罪や、役職員の過誤等によって、当社システム内の重要なデータが消去される、あるいは、外部に流出する恐れがあります。これらの障害が発生した際には、当社に直接的・間接的な損害が生じ、財政状態が悪化する可能性があり、当社の事業に悪影響を及ぼす可能性があります。

(3)ロジスティクス事業

株式会社エルネットにおけるDMソリューション事業において、ダイレクトメールにかかる荷受人の個人情報を電子データにて保有しております。株式会社エルネットはプライバシーマークを取得して、個人情報が漏洩しない体制を整えておりますが、万一個人情報が漏洩した場合には、信用失墜により、株式会社エルネットの経営、当社グループの財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

8.大規模災害について

当社は、大阪市に本社を、三重県松阪市に第二本社機能を持つ製造拠点を、また北海道から沖縄までの36都道府県に営業拠点を配置しております。いずれかの地域において大規模災害が発生した場合、当社設備の損害や停電、システム障害などにより、業務遂行上、多大な影響を受け、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

9.M&Aについて

当社グループは、M&Aにより既存事業や新規事業の積極的な拡大に取り組んでおります。M&Aにあたっては、対象企業の財務・法務・労務・事業等について事前にデューデリジェンスをおこない、リスクを吟味し収益力を分析したうえで決定いたしますが、対象企業における偶発債務の発生や未確認債務の判明等、事前の調査によって把握できない問題が生じた場合や、事業計画が予定どおり進捗しない場合には、のれんの減損処理をおこなう必要が生じるなど、当社の業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

10.不動産価値の低下について

当社グループは、投資事業において賃貸用不動産を保有しておりますが、不動産市況の悪化による賃料水準の低下や空室率の上昇などにより、事業用不動産に対する減損処理が必要となった場合、評価損等の発生によって、当社グループの経営成績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

11.労務関連法規の改正等について

当社グループは、700人を超える従業員を雇用しており、労働関係法令を遵守するとともに、従業員を人的資本と捉え、労働意欲を引き出すべくさまざまな施策を実施しておりますが、政府主導の働き方改革により、法改正の検討や法執行の強化がおこなわれており、これらの法規制への対応により新たな費用の支出や事業の見直しが必要となるなど、当社グループの業績、財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

12.資金調達による金利変動について

当社は、令和3年3月期(第56期)において、新本社ビルの建設資金ならびに新型コロナウイルス感染症拡大による影響に備えた手元流動性確保のため、長期借入金3,650百万円を調達しております。資金調達に際しては、借入時点での金利水準により経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性がありますが、借入期間は10年から20年、概ね固定金利での借入とし、借入時に債務をほぼ確定させますので、金利変動による影響は限定的であります。

13.新型コロナウイルスなど感染症について

令和5年5月に「2類相当」から「5類」に移行した新型コロナウイルス感染症につき、当社としては、引き続き、マスクの着用やこまめな手洗い・消毒、テレワークの実施など、顧客および役職員の安全を第一に考えた対応をとっておりますが、今後新型コロナウイルスの変異種を含むさらなる感染拡大が生じたり、新たな別の感染症が発生した場合、事業遂行上、多大な影響を受け、当社の経営成績および財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

14.気候変動対応について

昨今、気候変動(地球温暖化)に対する対応が世界的に広がりを見せております。その対応に係る調査コスト等の発生、さらに原材料費高騰や外部支払費用のアップCO2削減義務の強化に伴う諸設備対応化石燃料の価格上昇による製造原価や販売管理費の増加などによって当社グループの経営状況に影響をもたらす可能性がありますまた気候変動対応に関する顧客からの要望に応えられないことによる信用失墜や取組み不足との投資家判断によるイメージダウンを招く可能性があります

配当政策

3【配当政策】

 当社は、健全な財務体質の維持・向上をはかりながら、株主のみなさまに安定的な利益配分を年1回継続しておこなうことを基本方針にしており、業績などを総合的に勘案して、原則として株主総会の決議に基づき、適切な期末配当を実施してまいります。

 内部留保資金につきましては、主に新事業分野における新たな製品・サービスの開発と設備投資に充当し、これらを活用することで業績をさらに向上させ、株主のみなさまのご期待に応えてまいりたいと考えております。

 第59期の期末配当につきましては、上記基本方針に基づき1株につき15円の配当を実施することを決定しました。この結果、第59期の配当性向は22.4%となりました。当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

 なお、当社は、「会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議により定めることができる」旨定款に定めております。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

令和6年6月27日

84,119

15.0

定時株主総会決議