リスク
3【事業等のリスク】
1.当社のリスクマネジメント体制
①リスクマネジメントに関する基本的な考え方
当社グループは「事業と環境に関わるリスクを包括的に把握し、重点的に対応すること」により事業の永続性を図っております。
リスクを「将来に向けた不確実な事象」と定義し、会社にとっての「機会」と「脅威」に分け、未だ顕在化しない広義のリスクと既に具現化した狭義のリスクを、それぞれ担当する機関がアプローチし、リスク管理を重点化することで、脅威の極小化、機会の最大化に努めております。
なお、経営会議及びグループサステナビリティ委員会、グループリスクマネジメント委員会は、相互の役割を認識し、それぞれの機能に応じたアクションプランを設定して、「機会」及び「脅威」のリスクに対応しています。また、取締役会、経営会議では四半期又は半期ごとに各機関から報告を受け、リスク管理のモニタリングを行っています。
②グループリスクマネジメント体制及び運用フロー
当社グループは、業務執行上の重要な意思決定ないし事業遂行等に内在するリスクは、経営会議において管理することとし、同会議における審議、報告事項等に対して、経営企画・総務・経理・法務等の管理部門がそれぞれ想定されるリスクを分析し、必要な報告を行う体制を構築しております。
緊急事態の発生、あるいは緊急事態につながるおそれのある事実が判明した際は、グループリスクマネジメント委員会が事業会社の危機管理組織等と連携して、情報開示も含む対応策を協議し、迅速かつ適正な対応を行い、早期解決及びリスクの低減に取り組んでいます。
2.事業等のリスク
当社グループの経営成績及び財務状況等(株価等を含む)に影響を及ぼす可能性のあるリスク要因を以下に記載しています。以下に掲げるリスクは、当社グループを取り巻くリスク事象のうち脅威とその対応について示しております。なお、文中の将来に関する事項は、2023年12月31日現在において当社グループが判断したものです。
(1)経済情勢及び人口動態の変化について
グローバルな経済情勢の変化により、景気が悪化し、主要製品の出荷変動や保有資産の価値の低下につながる可能性があり、競争関係がさらに激化した場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
また、当社グループでは、多様な人財が活躍できる環境を整備するために、ダイバーシティ&インクルージョンの環境整備や、ワークエンゲージメント向上策等を推進しています。しかしながら、国内の少子高齢化に伴う需要の縮小や、それに伴う従業員の雇用に関する競争激化、人財の流動化、また、職場環境の悪化による生産性の低下や退職者増加による人財不足等により、事業活動に必要な人財を十分に確保できない場合は、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(2)気候変動によるリスクについて
当社グループでは、「サッポログループ環境ビジョン2050」を踏まえ、中期経営計画とあわせたサステナビリティ重点課題である「環境との調和」「社会との共栄」「人財の活躍」及び「責任ある飲酒の推進」「安全な製品、施設の提供」の実現に向けて、取組を推進しております。また、当社は、2019年5月に「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言に賛同しました。当社は今後も、環境保全に関する活動を一層強化しながら、TCFDの提言を踏まえた情報開示に取り組んでまいります。なお、本報告書では、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」において、TCFDの提言を踏まえた記載をしております。
しかしながら、将来的な気候変動によって主要な原材料や必要な水資源が確保できない場合、操業停止による機会損失が発生する可能性があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(3)法的規制等の影響について
当社グループは、酒税法や食品衛生法、製造物責任法、労働関連規制、贈収賄規制、競争法、GDPR等の個人情報保護規則、環境関連法規等の様々な法的規制の適用を受けております。また、事業を展開する各国の法的規制の適用も受けております。このような中、法的手続による権利の保全にも万全を期しておりますが、将来において新たな法的規制等が設けられる可能性もあり、これらの法的規制等の適用を受けることとなった場合、事業活動の制限や、新たな費用が発生するなど当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。例えば、酒税や消費税の増税等が実施されることによる需要の減少、ビール・発泡酒を始めとする酒類の広告に対する規制や、酒販店店頭での販売時間、酒類販売場所に対する規制が広がっていく場合など、需要の減少や新たな規制に対応するための費用等が発生する可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(4)特定事業分野への依存度について
当社グループの売上収益において酒類事業の占める割合は約7割となっており、またその多くは国内市場での売上となっております。さらなる収益性の拡大を目指すため、事業ポートフォリオの見直しを適宜進め、海外市場での事業活動の拡充を図っております。
しかしながら、依然、国内市場への依存は高く、国内市場での需要が減少する中での競合他社との価格競争、2020年から段階的に実施されている酒税の税率変更、消費者の嗜好の変化、原料・資材及びエネルギーコストの高騰を受けた商品値上げ、冷夏や長期間にわたる梅雨等の要因によって売上が減少した場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(5)海外における事業活動について
当社グループは、海外市場での事業活動を拡充することにより利益の拡大を図っており、米国・カナダを中心に酒類事業を拡充しております。アジアにおいては、シンガポールを起点にマレーシア、中東などで飲料の事業活動を行っております。また、ベトナムにおいては、ロンアン工場で製造されたビールをベトナム国内で販売するとともに輸出も行っています。
事業活動を行う海外子会社との連携を密にして、現地の経営環境を踏まえた事業運営の適切な管理・サポート等を実施するとともに、経営管理・リスク管理体制の整備にも努めております。しかしながら、これらの当社グループの海外における事業活動においては、経済の動向、競争環境の変化や為替相場の変動に加えて、投資、貿易、税及び為替等に関する法的規制の変更、商慣習の相違、労使関係、地域紛争、テロリズム、伝染病並びにその他の政治的・社会的・経済的混乱等の要因により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(6)R&Dの影響について
当社グループでは「おいしさ」と「健康」を基軸に、お客様ニーズや生活様式の変化に対応した価値を提案できる研究開発、商品提案を継続的に実施しておりますが、消費者嗜好の変化や技術革新、法改正等によって予測できない事業環境の変化が起こり、市場における競争力が低下した場合には、グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(7)食品の安全性について
当社グループでは、お客様への安全な商品提供を最優先課題とし、グループ各社の関係部門・部署に対してリスクマネジメント、リスクコミュニケーションに関する仕組みの維持及び啓発・講習を実施する等、品質保証体制の確立に向けて取組を強化しております。しかしながら、当社グループ固有の品質問題のみならず、社会全般にわたる一般的な製品及び原料に係る品質及び表示の問題等が発生した場合、製品回収、出荷不良品発生、製造物責任を追及される等の可能性があります。外食事業においては、食中毒が発生した場合、一定期間の営業停止等を命ぜられ、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(8)製造委託品及び仕入商品の安全性について
当社グループは一部の商品について外部に製造委託を行っております。また、仕入商品も取り扱っております。製造委託商品や仕入商品についても品質等については監査等により万全を期しておりますが、取組の範囲を超えた品質等の問題が発生した場合、販売休止、製品回収等の可能性があり、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(9)原料・資材調達及び価格について
当社グループの使用する主要な原料・資材には、その価格が商品相場や為替市場等の状況により変動するものがあります。また、継続する地域紛争は、グローバルサプライチェーンに悪影響を与えることがあります。市況の最新情報収集強化、調達先の分散・多様化、適正在庫の水準の維持、為替予約等様々な対策を進めておりますが、それら原料・資材の価格が高騰することにより、売上原価が上昇し、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(10)サプライチェーンに係るリスクについて
当社グループが主に事業展開する、酒類・食品の製造販売業界において、サプライチェーンは重要な機能となっております。国内の物流環境は、少子高齢化による労働人口減少に加え、働き方改革関連法における「時間外労働の上限規制」等の影響もあり運送ドライバーや荷役作業員の人手不足の拡大が予想されます。必要な物流機能を適切なコストで維持することが安定的な事業展開には不可欠ですが、サプライチェーン全体でのコスト上昇や機能低下により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。また、サプライチェーンにおける人権侵害や環境破壊等の問題が発生した場合、安定的なサプライチェーンを維持できず、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(11)事業・資本提携について
当社グループでは、成長に向けた競争力強化の一環として国内外他社との事業・資本提携を実施する可能性があります。その場合、対象会社の財務内容や契約関係等について、詳細なデューデリジェンスを行い、将来の損失を最大限回避するように努めております。しかしながら、市場環境や事業環境の変化等によっては、当初想定していた成果を得られず、場合によっては、提携先及び出資先の事業、経営及び資産の悪化等が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(12)アルコール関連問題について
アルコール関連問題につきましては、WHO(世界保健機関)が2010年に「アルコールの有害な使用を低減するための世界戦略」を採択し、日本でも2014年に「アルコール健康障害対策基本法」が施行されるなど、過度の摂取による健康面、社会的側面での悪影響が指摘されています。将来は世界的に規制の一層の強化が行われることが予想され、健康志向の高まりにより、アルコールに対する消費者需要が縮小し、当社グループの業績及び財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
当社グループでは、アルコール関連問題に関係する広告表示・表現、販売促進企画に対し、自主ガイドラインに沿った事前審査を複数の部署で実施し、不適切な広告表現等を未然に防止しております。また、ビール酒造組合などと協働して情報収集に努め、「20歳未満飲酒」「飲酒運転」「妊産婦飲酒」等の不適切飲酒撲滅に向けた「責任ある飲酒の推進」を実施しております。
(13)固定資産の減損について
当社グループでは、減損会計を適用しております。重要かつ企業価値向上に資する買収・合併及び設備投資について、その事業環境や収益性に鑑み、慎重な投資を実施しておりますが、将来、当社グループが保有する固定資産及び企業結合により取得したのれん等について、経営環境の著しい悪化等による収益性の低下や市場価格の下落等により、減損損失が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(14)金融負債について
当社グループでは、各事業の必要資金の多くを、社債や金融機関からの借入れにより調達しており、金融市場のリスクに晒されております。資金調達先の分散、借入期間の適正化、金利環境等を勘案のうえで必要資金の調達を行っておりますが、当社グループでは成長戦略の遂行に伴い大規模な投資等を行うことにより、さらに金融負債が増加する場合もあります。また、今後、市場金利が上昇した場合や、格付機関が当社の格付を引き下げた場合には、金利の負担や、資金調達の条件の悪化等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(15)退職給付債務について
当社グループの従業員退職給付費用及び債務は、割引率等の数理計算上で設定される前提条件に基づいて算出されております。企業年金基金に適切な人材を配置し、運用状況の適宜モニタリングを実施しておりますが、制度資産の公正価値の変動、金利の変動、年金資産の変更等、前提条件に大きな変動があった場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(16)自然災害の発生によるリスクについて
当社グループは、国内外に事業拠点を有しております。各拠点では自然災害に対する防災、事業継続性の確保に努めております。しかしながら、大規模な自然災害及び二次災害の影響により、想定をはるかに超えた震災や風水害及び土砂災害等が発生した場合は、当社グループの所有する建物、設備等に損害を受ける可能性があります。一時的な事業停止や物流網の混乱に伴い商品供給に支障を来し、機会損失、製品廃棄による損失等が発生した場合、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても常にあるものと認識しております。
(17)感染症等のリスクについて
感染症等の感染拡大への対応について、当社グループでは、酒類や食品飲料の製造や外食に携わる企業として、お客様への供給責任を果たすべく、感染症リスク低減に対策を講じながら国内及び海外における各事業拠点で生産・物流業務を継続しております。あわせて、不動産事業において管理・運営する複合商業施設やオフィスビル等においても、感染防止に向けた取組を継続しております。
感染症等の流行や感染拡大により経済状況が悪化した場合は、原材料や資材コストの高騰、外出自粛要請による消費の減退、外食産業の低迷、業務用商品の需要低迷等により、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(18)コーポレートガバナンス上のリスクについて
当社では持株会社体制のもと、グループ内における業務監督機能の強化及び、グループ各社における内部統制の整備・運用に努めております。しかしながら、コーポレートガバナンスや、グループ内における内部統制が機能不全に陥った場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(19)コンプライアンスに関するリスクについて
当社グループでは、従業員への啓発活動や内部統制の強化を通じて、コンプライアンス違反の防止に努めております。しかしながら、グループ内において不正行為や犯罪行為、贈収賄など法令や社会要請に反した行為が行われることがあれば、当社グループの業績や財政状態に悪影響を与える可能性があります。また、そのことが各種メディアやSNS等で非難を受けることにより、会社のブランド、信用にも悪影響を与える可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(20)訴訟や罰金等の発生するリスクについて
当社グループでは、事業の遂行に当たり従業員啓発のための研修等コンプライアンスの推進により、各種法令違反等の低減に努めております。しかしながら、国内外の事業活動の遂行上、当社グループ各社及びその従業員の法令等に対する違反の有無にかかわらず、製造物責任法、知的財産法、税務等の問題で訴訟を提起される、又は罰金等を科される可能性があります。訴訟が提起される事態、また訴訟の結果によっては、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(21)情報セキュリティについて
当社グループでは、事業運営を行うために様々なシステムがあり、多くの重要情報を取り扱っております。外部からの攻撃に対して多層的な防御・監視体制を構築するとともに、標的型攻撃メール訓練による従業員への啓発を行い、情報システムの適切な管理体制の構築に努めております。しかしながら、サイバー攻撃等により、重要情報の改ざん、個人情報の流出等が発生した場合、業務運営に支障を来し、当社グループの業績や財政状態に重大な影響を与える可能性があります。当該リスクは、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
(22)得意先の信用リスクについて
当社グループは、得意先や投資先の信用リスクに備えておりますが、予期せぬ倒産等の事態により債権回収に支障が生じた場合、当社グループの業績や財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。当該リスクが顕在化する可能性は、翌期以降においても相応にあるものと認識しております。
配当政策
3【配当政策】
当社は、2020年2月に公表しました「グループ経営計画2024」を見直し、2023年を期初とする4ヶ年計画「中期経営計画(2023~26)」をスタートし、株主還元方針を定めました。
株主の皆様への利益還元は、経営上の重要政策と位置付けており、業績や財務状況を勘案して安定した配当を行うことを基本方針としています。今後の配当水準につきましては、連結配当性向30%以上を基本に、現状水準を下限として、企業価値向上を伴わせた配当水準の向上を図ります。なお、特殊要因にかかる一時的な損失や利益計上により、当期利益が大きく変動する場合は、その影響を考慮して配当金額を決定することがあります。
当期につきましては、上記の方針どおり業績や財務状況を勘案して、1株当たり47円の配当を実施しました。当社は、中間配当を支払うことができる旨を定款で定めておりますが、現在年間を通しての配当とさせていただいております。これらの剰余金の配当の決定機関は、期末配当につきましては株主総会、中間配当につきましては取締役会であります。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は、以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額(百万円) |
1株当たり配当額(円) |
|
2024年3月28日 |
定時株主総会 |
3,667 |
47 |