2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】
経営理念・長期経営計画に基づき、当社は気候変動や人的資本等のサステナビリティに関連する課題について、リスク低減のみならず収益機会にもつながる重要な経営課題であると認識し、CSV経営を積極的・能動的に推進することで、中長期的な企業価値の向上とサステナビリティ課題の解決の両立を目指しています。当社はサステナビリティ課題全般およびテーマごとに、「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の観点から考え方を整理し、取り組みを強化しています。
 
(1) サステナビリティ課題全般
 
|   | (図1) 
   ※1:Group Materiality Matrix ※2:経営理念を社会的存在意義に翻訳 ※3:出席者: KH機能部門 企画担当者、国内外主要事業会社 企画担当 ※4:委員長: キリンホールディングス(KH)会長・社長 委員: KH機能部門 担当役員、国内外主要事業会社 社長   (図2) 
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| 戦略 | ①グループ・マテリアリティ・マトリックス  当社は社会とともに持続的に存続・発展していくうえでの重要課題をグループ・マテリアリティ・マトリックス(GMM)に整理しています。GMMを元に経営理念を社会的存在意義に翻訳した指針としてCSVパーパスを策定し、その実現に向けてCSV経営を推進することで社会課題を解決するとともに経済的価値も創出することを目指しています。詳細は、1[経営方針、経営環境及び対処すべき課題等](1)経営の基本方針 に記載をしています。 ②マテリアリティ選定プロセス  マテリアリティは「経営諸課題の抽出」、「社内評価の実施」、「ステークホルダー・エンゲージメントの実施」、「マテリアリティの決定」の4つのプロセスで選定しています。各プロセスの詳細については以下の通りです。  経営課題の抽出においては、ISO26000、GRI、SASBなどの報告ガイドライン、FTSE、MSCI、Sustainalytics等の評価項目、SDGsのターゲット等をベースに、課題を洗い出しました。  社内評価の実施においては、NGO・NPOのレポートやメディア情報等の社会課題に関する客観的情報に基づき社会課題の事業活動への影響と事業活動による社会への影響について、グループ経営戦略会議での意見交換を実施しました。  ステークホルダー・エンゲージメントにおいては、社内評価結果を元に、投資家・NGO・NPO・従業員(労働組合)から意見を得ました。  マテリアリティの決定においては、ステークホルダーの意見を反映した結果について、グループCSV委員会での意見交換を実施したうえで、取締役会で決議しました。 ③課題別の対応  サステナビリティ全般への考え方や取り組みを受けて、環境・ビジネスと人権・健康経営については課題別の会議体を通じて社会と当社のリスクと機会を評価し、方針や戦略・計画を議論しています。各会議体の開催報告は幅広いステークホルダーへ積極的に情報開示を行っています。 | 
 
 
| リスク管理 |  当社はグループCSV委員会及びその傘下会議体において、サステナビリティ課題のリスクと機会について議論しています。またサステナビリティ課題を含む事業へのリスクについて、四半期ごとに開催するグループリスク・コンプライアンス委員会で検討・モニタリングを実施しています。リスク管理の詳細は、3[事業等のリスク] に記載をしています。  その他、個別のテーマについては、それぞれのリスクに対してシナリオを設定して分析・評価することで重要リスクを抽出・検討する新しいアプローチを導入・運用しています。気候変動・自然資本に関するリスク管理については、(2)テーマ別内の[気候変動・自然資本への対応] に記載をしています。 | 
 
 
 
(2) テーマ別
当社グループは、気候変動に対するレジリエンスを高め、適切かつ継続的に自然資本を利用し、循環型社会の構築に貢献するために、緩和や適応などの移行戦略を推進しています。当社は気候変動・自然資本・人的資本など、様々なサステナビリティ課題が社会と企業に与えるリスクと機会や戦略のレジリエンスを評価し、幅広いステークホルダーへ情報開示を行っています。
 
 
[気候変動・自然資本への対応]
気候変動問題はグローバル社会の最重要課題の1つであると同時に、農産物と水を原料とし「自然の恵み」を享受して事業を行うキリングループにとって重要な経営課題です。この認識の元、キリングループは、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)が2017年に公表した提言に準拠し、2018年からいち早くシナリオ分析とその開示を実施しています。2022年には、世界に先駆けて自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のフレームワークβ版のLEAPアプローチによる開示を行い、2023年にはTCFDとTNFDの両フレームワークに基づいて気候変動情報と自然資本情報を統合的に開示しました。気候変動や自然資本などの環境課題に対して統合的(holistic)にアプローチすることで、キリングループのレジリエンスを高め、脱炭素とネイチャー・ポジティブをリードしていきます。
| ガバナンス | 内容 | □取締役会は環境関連課題全体の基本方針、中長期戦略、年度計画、環境を含む重要な非財務目標とKPIを審議・決議し、非財務目標の進捗モニタリングを通して気候変動や自然資本・循環型社会などのグループ環境業務の執行を四半期ごとに監督します。 グループリスク・コンプライアンス委員会事務局から、事業会社が評価・特定したリスクと機会の報告を受け、月次で監視し、特定された重要リスクやマテリアリティについて決議します。以上により、環境マネジメントの有効性を監督しています。 □気候関連課題や自然資本など環境関連課題の重要な目標設定や改定、投資計画はグループ経営戦略会議で審議・決議します。2022年からは、グループCSV委員会の下にCSV戦略担当役員を議長、関係役員および部門長を委員としたグループ環境会議を置き、サステナビリティ関連リスクと機会、環境課題別に設定したロードマップの進捗状況のモニタリングや方針・戦略・計画に対する意見交換を行うことで体制を強化しています。議論した内容はグループCSV委員会および取締役会に対して報告します。 ※グループCSV委員会、および環境課題の役員報酬への反映については、(1)サステナビリティ課題全般に記載しています。 | 
| 進捗 | □グループCSV委員会を年3回開催し、委員長がCSVの推進に必要と思われる改善指示等を行い、委員会で決定したCSV方針・戦略の実効性を高めています。 □グループCSV委員会傘下会議体である、グループ環境会議を年2回開催しています。特に2024年度は環境戦略の一部見直しや、Scope3の確実な目標達成に向けた議論を行い、環境ビジョン2050の達成に向けて環境経営を推進しています。 | 
 
 
| 戦略 | 内容 |  気候変動による温暖化や降雨量の変化、自然災害は、農産物や水といった重要な原料に大きな影響を与えています。一方で、自然資本の保全・回復は「自然に根差した社会課題の解決策」として、気候変動の緩和策や適応策になることが理解されています。当社は、研究・技術開発力およびエンジニアリング力を活用し、環境課題の解決に向けて統合的にアプローチしています。 □気候変動では、TCFDのシナリオ分析をインプットとして2020年に改訂した「キリングループ環境ビジョン2050」で、2050年のネットゼロ目標を設定しました。SBT1.5℃目標の設定、RE100への加盟(以上、2020年)により中間目標にブレイクダウンし、自社主体の削減に加えて、取引先の削減を促進します。 □自然資本では、場所固有・依存性を考慮し、「持続可能な生物資源利用行動計画」の下、TNFDが提唱するLEAPアプローチを活用しながら、持続可能な原料農産物の調達と水資源の利用を図るとともに、気候変動問題の緩和策としても活用し、事業のレジリエンスを向上させます。 □容器包装では、2027年の日本でのペットボトルのリサイクル樹脂使用率50%目標達成と持続可能な容器包装の開発により、プラスチックが循環する社会構築に貢献するとともに、Scope3でのGHG削減、自然環境への影響低減を目指します。 □気候変動・自然資本等の環境課題への統合的アプローチの推進とルールメイキングへの貢献を目的として、以下に参画・活動しています。 ・Alliance To End Plastic Waste(2021年に加盟) ・SBTs for Natureのコーポレートエンゲージメントプログラム(2021年に国内医薬品・食品業界初として参加) ・TNFDシナリオ分析のパイロットテスト(2021年からThe TNFD Forumに参加。2022年にパイロットテストに参加。2023年にTNFD Adopter登録) | 
 
 
|   | 進捗 | □TCFD新ガイダンス※1に完全準拠したシナリオ分析の中でアセットのリスクと機会を分析・評価する等、気候変動による財務インパクト把握の精緻化(2022年~)を行うとともに、自然資本の依存度・影響度・リスクと機会を把握するための評価を実施して、気候変動と自然資本の財務インパクトを統合的に開示しました(2023年)。 □気候変動の緩和策として、2030年までのGHG排出量削減ロードマップを策定(2023年)し、グループ会社の削減目標・行程を確定して実行を開始しています。主な取り組みは以下の通りです。 ・大規模太陽光発電をPPA方式(横浜工場除く)でキリンビール全工場(2021年)、協和キリン宇部工場・メルシャン藤沢工場(2023年)、協和発酵バイオ防府工場(2024年)に設置。協和キリン高崎工場およびライオン豪州およびニュージーランドの全拠点(2023年)、シャトー・メルシャンの全ワイナリー(2022年)、キリンビール全工場・全営業拠点(2024年)での調達電力再生可能エネルギー比率100%を達成 ・食品企業として世界で初めてSBTネットゼロの認定を取得(2022年) ・その他、低GHG排出の原料農産物や資材の調達検討、ペットボトルの再生樹脂使用比率の増加等のバリューチェーン全体のGHG排出量削減を推進中。主要なサプライヤーへのアンケートやキリンサプライチェーン環境プログラムを通じて把握した各社の削減計画と削減進捗状況をもとに削減施策を協同検討する等、エンゲージメントを重視して削減を実施(2023年~) □適応策として、スリランカの紅茶農園での持続可能な農園認証の取得支援、水ストレスを考慮した適切な節水を継続しています。 □気候変動の事業機会では、オーストラリアで初のカーボンニュートラルなアルコールフリービール「XXXX Zero」(2022年)を発売しました。免疫機能の機能性表示食品を外部パートナー企業と連携してラインアップを拡大し、デング熱・新型コロナウイルスなど気候変動の影響でリスクが拡大すると言われている感染症対応研究も継続しています。 □自然資本では、気候変動の緩和・適応に寄与する再生型農業の知見獲得と推進を目的として、スリランカでレインフォレスト・アライアンスと共同で「リジェネラティブ・ティー・スコアカード」を開発し、農地への展開を進めています。椀子ヴィンヤードは、生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で新しい世界目標として採択された「30by30」の目標達成に向けた環境省の自然共生サイトに正式認定(2023年)されました。アメリカコロラド州のニュー・ベルジャン・ブルワリーでTNFDと共同で実施したシナリオ分析結果はTNFDフレームワークβ版「ディスカッションペーパー」で紹介され、2023年9月に開示されたTNFD正式版の中でもオーストラリアでの水資源のリサイクル施設の導入が事例紹介されました。 | 
 
 
| リスク管理 | 内容 | □グループリスク・コンプライアンス委員会を設置し、気候変動や自然資本、法規制などの環境関連リスクと機会を、他のサステナビリティ関連を含めたリスクマネジメントの中で統括し、リスク管理の基本方針を審議します。 ※リスク管理の詳細は、3[事業等のリスク]に記載しています。 | 
| 進捗 | □危機事象個々に対するアプローチ方法を見直し、経営資源の喪失にスポットを当てて対策を検討する「オールハザード型BCP」に移行(2021年以降)しています。 □シナリオ分析では各種の研究論文、Aqueductなどの科学的根拠に基づいたリスク評価ツールを活用しています。2023年からは、TNFDが推奨するENCORE、IBATといったツールの活用も開始しています。 | 
 
 
| 指標と目標 | 気候変動に関連する目標 |   
| 項目 | 目標 | 実績※2 |  
| バリューチェーン全体のGHG排出量 | ネットゼロ(2050年) | 3,942千tCO2e |  
| Scope1+2 | 50%削減(2030年/2019年比) | 31%削減 |  
| Scope3※3 | 30%削減(2030年/2019年比) | 10%削減 |  
| 使用電力の再生可能エネルギー比率 | 100%(2040年) | 42% |      | 
| 自然資本に関連する目標 |   
| 項目 | 目標 | 実績※2 |  
| スリランカ大農園認証取得トレーニング数 | 累計15農園 (2022年~2024年) | 4農園 (2022年~2023年累計) |  
| スリランカ小農園認証取得トレーニング数 | 累計5,350農園 (2022年~2024年) | 629農園 (2022年~2023年累計) |  
| 国内での持続可能なパーム油への対応比率 | 100%維持 | 100% |  
| ライオン用水原単位 (オセアニア地域) | 2.4kl/kl(2025年) | 3.3kl/kl |      | 
| 容器包装に関連する目標   |   
| 項目 | 目標 | 実績※2 |  
| ペットボトルの再生樹脂使用比率 | 50%(2027年) | 28.0% |  
| キリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンにおける紙製容器包装へのFSC認証紙採用比率 | 100%維持 | 100% |      | 
 
 ※1:2021年10月に公開された「 TCFD 指標、目標、移行計画に関するガイダンス」および「TCFDの提言の実施(2021年版)」を指します。
※2:2023年末実績です。
※3:各年度のScope3算定には産総研 IDEA Ver2.3、Ver.3.3を使用しています。
 
リスク・機会の事業インパクト評価と対応戦略
2017年以降、継続的に気候変動のシナリオ分析を行うことで、気候変動によるリスクと機会の把握レベルと戦略を向上してきました。2023年からは、自然資本や容器包装のインパクト評価を依存性や影響なども考慮して試算し、統合的に開示しています。
 
 
財務影響の分析
|   | 事業リスク/社会課題 | 財務インパクト | 対応 | 
| 物理的リスク | 農産物の収量減 | 2℃シナリオ:約13億円~約34億円 4℃シナリオ:約36億円~約137億円 (2050年)※4 | ・大麦に依存しない醸造技術 ・植物大量増殖技術 ・持続可能な農園認証取得支援 | 
| 洪水による操業停止 | 約10億円 (200年災害、国内20カ所合計) | ・洪水の知見共有 ・洪水への設備対応 | 
| 渇水による操業停止 | 約0.3億円~約6億円 | ・渇水の知見共有 ・節水技術開発・展開 | 
| ペットボトルのマイナスの影響 | 約11億円 | ・メカニカルリサイクルの拡大 ・ケミカルリサイクルの製造技術確立 | 
| 移行リスク | カーボンプライシングによるエネルギー財務インパクト | 2℃シナリオ:約94億円 4℃シナリオ:約51億円 (2030年)※5 | ・GHG排出量削減の実現 ・損益中立でのエネルギー転換 | 
| カーボンプライシングによる農産物財務インパクト | 2℃シナリオ:約9億円~約44億円 4℃シナリオ:約24億円~約88億円 (2050年)※6 | ・植物大量増殖技術 ・持続可能な農園認証取得支援 | 
| 持続可能な農園認証の農園からの認証品の調達 | 約0.6億円 | ・持続可能な農園認証取得支援 ・持続可能な原材料の調達 | 
| 事業機会 | 健康な人の免疫機能の維持 | 免疫健康サプリメント市場: 28,961.4Mn米ドル(2030年) | ・ヘルスサイエンス領域での貢献 | 
| 熱中症の予防 | 熱中症対策飲料市場:940~1,880億円(2100年、4℃シナリオ) | ・熱中症対策飲料での貢献 | 
| フードウェイスト削減 | 約9億円 | ・製品廃棄の削減 | 
| ベトナムコーヒー農園での化学肥料、農薬削減による財務インパクト | 約1.1億円※7 | ・エンゲージメントの強化 | 
 
 ※4:価格変動予測データ分布の中央の50パーセンタイル幅で評価しています。
※5:GHG排出量削減を行わなかった場合で評価しています。
※6:価格変動予測データ分布の中央の50パーセンタイル幅で評価しています。
 ※7:現地コーヒー農園からのヒアリングより試算しています。
 
 
2023年~2024年、TCFD新ガイダンスが求めるアセットに対する気候変動の影響分析を実施しました。自然災害などによる財務影響は小さいと評価しています。Coke Northeast及び2023年中にグループに加わったBlackmoresについては2024年実績からグループの環境データに反映し、その影響を評価していきます。
|   | 分析項目 | 影響 | 
| リスクに晒されている資産 | 国内事業所20カ所の200年災害によるエクスポージャー※8 | 約10億円 | 
| 関連設備残存簿価※9 | 約11億円 | 
 
 ※8:自然災害モデルAIR洪水シミュレーションでの算出結果です。自然災害によるエクスポージャーも小さいと考えていますが、今後事業所の現地調査等を行い付保の可否についても検討していきます。
※9:気候変動に伴う法規制または社会的な情勢を主要因として耐用年数に達さず更新せざるを得なくなる可能性は低いと判断しています。参考としてキリンビール、キリンビバレッジ、メルシャンのボイラー、および物流グループ会社所有のトラックの残存簿価の合計値を提示しています。
 
移行計画
気候変動の緩和に対するロードマップを策定し、グループ経営戦略会議で審議・決議して2022年1月より運用を開始しています。自然資本については、生態系保全に加えて「自然に根差した社会課題の解決策」として気候変動の緩和策や適応策を含めたロードマップの策定を検討しています。ペットボトルに関しては、2027年の国内再生樹脂使用比率50%に向けたロードマップを策定して運用を開始しています。
 
| Scope1とScope2の排出量削減
 | □省エネルギー推進、再生可能エネルギー拡大、エネルギー転換の3つを主要テーマとしています。 □2030年までは、省エネルギーの推進と再生可能エネルギー比率の拡大が中心になります。 □2030年以降は、蒸気製造工程の燃焼燃料を化石燃料から水素などへ転換を想定しています。 □新たな再生可能エネルギー電源を世の中に作り出し増やしていく「追加性」と、環境負荷や人権の観点でエネルギー利用の「倫理性」を重視しています。   事業会社別GHG排出量削減実績および予定※10(単位:千tCO2e) 
|   | 2019年 | 2024年 | 2027年 | 2030年 |  
| キリンビール | 199 | 140 | 88 | 68 |  
| キリンビバレッジ | 45 | 39 | 30 | 11 |  
| メルシャン | 60 | 33 | 26 | 25 |  
| ライオン | 114 | 65 | 53 | 50 |  
| 協和キリン | 56 | 22 | 22 | 22 |  
| 協和発酵バイオ | 243 | 136 | 97 | 79 |    ※10:2019年は実績。2024年以降は、2024年にロードマップを策定した時点での想定値であり、今後順次見直す可能性があります。 | 
| Scope3の排出量削減 | □GHGプロトコルで定めたカテゴリのうち、約66%を占めるカテゴリ1(原料・資材の製造)、次に排出割合の大きいカテゴリ4(輸送)、カテゴリ9(販売)を重点領域に設定しています。 □「取引先の削減促進」では、キリンサプライチェーン環境プログラムを立ち上げ、19社のサプライヤーと「GHGの実排出量データの相互開示」「SBT水準のGHG排出量削減目標設定依頼・支援」「GHG排出量削減に向けた協働取り組み」を推進しています。主要なサプライヤーとの連携を通じて各社の削減計画と定量・定性の進捗状況を把握し、エンゲージメントを重視した協働を探索しながら、サプライチェーン一体となって推進し、従来品よりもGHG排出量を4割削減できるアルミ新地金の使用量を削減した再生缶蓋を導入する等、GHG排出量の少ない原料・資材への切り替えを進めていきます。農産物へのアプローチとしては、サプライヤーと大麦の環境再生型農業による炭素貯留効果の検証を開始しました。 □「自社主体の削減」では、自社で容器包装の開発を行う研究所を持つ強みを活かし、容器包装の軽量化、ペットボトルの樹脂使用率向上を推進しています。 | 
 
  
 
投資計画
2030年までは損益中立を原則とし、省エネ効果で得られたコストメリットで投資による減価償却費や再生可能エネルギー電力調達の増加分を相殺します。GHG排出量削減を主目的とした環境投資の指標としてNPV(Net Present Value)を使用し、投資判断枠組みにはICP(Internal Carbon Pricing:7千円/tCO2e)を導入しています。再生PET樹脂の調達及び工場におけるヒートポンプシステム導入への支出を資金使途とするグリーンボンド(期間:2020年~2024年、100億円)に続き、2023年1月には、当社がScope1とScope2の温室効果ガス(GHG)排出量削減に向けて推進する省エネ、および再生可能エネルギー関連のプロジェクトに充当する国内食品企業初のトランジション・リンク・ローンによる資金調達(期間:2022年~2042年、500億円)を実行しました。本ローンについては、経済産業省による令和4年度温暖化対策促進事業費補助金及び産業競争力強化法に基づく成果連動型利子補給制度(カーボンニュートラル実現に向けたトランジション推進のための金融支援)が適用されます。2024年には、省エネルギーに3億円、再生エネルギーの拡大に22億円を充当しています(エネルギー転換への充当はありません)。
 
ネットゼロを達成するために必要だと試算する投資額※11
                          (単位:億円)
|   | 2019-2021年 | 2022-2024年 | 2025-2027年 | 2028-2030年 | 
| 省エネルギー投資・施策 | 15 | 74 | 104 | 48 | 
| 再生可能エネルギー使用拡大※12 | 15 | 150 | 237 | 362 | 
| エネルギー転換 | 0 | 0 | 9 | 12 | 
| 合計 | 30 | 224 | 350 | 422 | 
 
 ※11:2019-2021年中計は実績。2022~2030年はトランジション・リンク・ローン策定時の想定であり、今後修正される可能性があります。
※12:再生可能エネルギー使用拡大には再生可能エネルギー電力調達に関わる全ての投資額を含めております。
 
 
[人的資本への対応]
人財戦略を取りまく環境は社内外で大きく変化しており、キリングループの人財戦略も大きな転換期を迎えています。環境の変化や個人の価値観の多様化もあいまって、働き方をはじめ労働市場環境は劇的に変化し、また、キリングループにおいては事業ポートフォリオの転換によって、経営戦略実行に求められる人財も変化しています。
キリングループでは、「人財」を価値創造・競争優位の源泉とあらためて位置づけ、その価値を最大限引き出すことで、KV2027の実現と、グループの持続的成長・価値向上を実現していきます。 
| 項目 | 内容 | 
| 戦略 | 1.キリングループの人事の基本理念   人財戦略の基盤となる基本理念は、人間の無限の可能性を信じる「人間性の尊重」という考え方で、キリンビールの醸造フィロソフィーである「生への畏敬」にも通じます。従業員一人一人が、新たな価値創造に向かって挑戦し、活き活きと働くことで、仕事を通じて成長し続ける環境を提供していきます。   
   2.グループ経営課題から見る人財戦略の課題認識  キリングループでは、「人財」を価値創造、競争優位の源泉と位置付け、人財に投資していくことで、「人財が育ち、人財で勝つ会社」を目指します。  経営戦略が人財戦略の方向性を規定すると同時に、人財のケイパビリティは将来の経営戦略を策定する重要な要素となり、経営戦略の可能性を広げます。そのキーとなるのは「専門性」と「多様性」です。従業員がそれぞれの専門性を高めるとともに、食からヘルスサイエンス・医領域にわたるユニークな事業ポートフォリオの中で多様な事業経験と多様な視点を養う環境を提供し、専門性と多様性を兼ね備えた人財を育成していきます。  また、外部人財や障害者の採用、女性の活躍推進に加え、多様な価値観を受容する組織文化を醸成するとともに、組織やチームを超えた共創を増やすことで、CSV経営を推進し、グループの持続的成長と企業価値向上を実現していきます。     
   | 
 
  
|   | 3.グループ経営課題から見る人財戦略の課題  人財戦略では、短期的に事業ポートフォリオ転換の実効性を高める組織能力の強化を加速するとともに、中長期では専門性と多様性を兼ね備えた人財を輩出します。現時点では、経営戦略と人財戦略の連動を踏まえて5つの課題を捉えています。 ① 事業ポートフォリオ転換に伴う、組織能力の強化(ヘルスサイエンス・新規事業など) ② 将来を見据え、先が見えない時代にこそ求められる、専門性・多様性の人財マネジメント ③ 挑戦する人財とそれを支える風土づくり=高度な戦略を実現する、戦略実行力 ④ 労働市場や個人の価値観の変化に対応した、働きがいの創出 ⑤ 人的資本への注目を契機とした、ステークホルダーとの対話による戦略進化   4.人財戦略を価値創造につなげるストーリーと開示指標  人財戦略の課題や重点取り組みは、国・地域、事業によって異なる場合もありますが、人財戦略を価値創造につなげていくストーリーは共通です。持続的な成長・企業価値向上には、人財と組織の両面の「専門性」と「多様性」を高める必要があり、「キリンらしい人財戦略」を推進すべく、グループ共通で、Well-Being、Growth、DE&I、KABEGOEの4つのキーファクターとそのストーリーを設定しました。   〔Well-Being〕 健康で活き活きと働き、CSV経営への共感を通じて自らの仕事へのやりがいを生み出し、 〔Growth〕 自律的なキャリアに向けて、主体的に専門性を高め、多様な経験を得て価値観を豊かにし、 〔DE&I〕 自分とは異なる多様な価値観を受け入れる意識と、仲間と共創するマインドを持ち、 〔KABEGOE〕 何事にも興味を持って行動し、失敗も学びに変えて、主体的に創意工夫・価値創造を実践する    Well-Being、Growth、DE&I、KABEGOEの4つのキーファクターを軸とした「キリンらしい人財戦略」ストーリーをベースに、下記の指標を設定しました。今後もステークホルダーとの対話を通じて、人的資本経営を継続的に進化させていきます。   □理念・価値観・CSVへの共感(エンゲージメント調査の持続可能なエンゲージメント)*Well-Being □専門性と多様性の人財育成(機能軸のタレントマネジメント/2領域以上経験者)*Growth □多様性を受容するカルチャー変革(エンゲージメント調査の多様性インデックス)*DE&I □チャレンジが称賛される組織文化の形成(組織・事業・国境を越えた主体的な創意工夫・価値創造の実践)*KABEGOE   | 
 
  
 
|   | 《取り組み事例》 ■グループ理念・価値観・CSVの体現を称える「キリングループ・アワード」  当社グループの理念・価値観・CSVを体現した取り組みを表彰する「キリングループ・アワード」は、国や地域、事業を越えたさまざまな専門性と多様性のある人財との共創機会を称える場です。2023年に、さらなるグループ一体感の醸成を図るために、従業員をより主役と位置づけた内容に刷新するなど、今後も進化し続けます。   ■個人の価値観を豊かにし、多様性を受容するカルチャーを育む越境体験  グループの越境体験は、多様な経験を通じて個人の価値観を豊かにすることに加えて、多様性を受容する組織風土の醸成も狙いとしています。2019年の「留職プログラム制度」からスタートし、2020年には「副業」を解禁して、外部からの副業受け入れも開始しました。さらに、2021年以降は、延べ27社の企業間相互副業へと幅を広げていきます。   | 
 
 
| 指標と 目標 |  キリングループは、KV2027において非財務指標の一つに「従業員」(従業員エンゲージメント、多様性向上達成度、休業災害度数率)を設定し、役員報酬とも連動しております。また、人的資本に関する情報開示およびステークホルダーとの対話強化にも取り組んでいきます。   非財務指標「従業員」:2024年実績(2024年12月31日時点) 
| 従業員エンゲージメントスコア | 71 |  
| 女性経営職比率 (注1) | 15.9% |  
| キャリア採用比率 (注1) | 42.9% |  
| 休業災害度数率 | 0.97 |      非財務指標「人的資本」:2025年目標 
| CSVの実践スコア | 72 |  
| 従業員エンゲージメントスコア | 72 |  
| LTIRスコア | 2.50 |  
| プレゼンティーイズム (注2) | 63.6% |  
| 国内女性経営職比率 (注1) | 18.0% |      (注)1 女性経営職比率およびキャリア採用比率は、集計対象をキリンホールディングス原籍者としています。 (注)2 心と体が健康で、活き活きと働いている従業員の増加を意味しています。 |