リスク
3 【事業等のリスク】
当社グループは、「リスク管理規程」を定め、当社代表取締役社長を委員長とするリスク管理委員会を設置しております。同委員会にて、リスク管理に関わる重要事項の調査・企画・立案について審議し、取締役会に報告するとともに、リスク管理に関わる役職員への啓蒙等の全社的な取り組みを推進しております。また、実際にリスクが顕在化するなどして、緊急事態が発生した場合には、当社代表取締役社長の指揮下に緊急事態対応体制を取り、迅速かつ的確な対応を実施することとしております。
本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の事業、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。また、必ずしもリスク要因に該当しない事項についても、投資者の投資判断上、重要であると考えられる事項については、投資者に対する積極的な情報開示の観点から開示しております。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、将来において発生の可能性があるすべてのリスクを網羅することを保証するものではありません。
(1) 事業環境に関するリスク
① AIビジネス市場について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループが属するAIビジネス市場は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等」に記載しましたように、今後も拡大を続けていくと考えております。また、当社グループの事業展開も当該市場の拡大をその基本的条件としております。しかしながら、同市場の成長は、AI技術の開発、利用、普及等を制限するような法規制、政策、景気動向、技術革新、関連する市場の動向等の様々な要因により影響を受けます。当社グループは、こうした同市場の動向が経営戦略の根幹をなすものと位置付け、日々その動向を注視しながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込んでまいります。
しかしながら、同市場の成長ペースが大きく鈍化した場合や当社グループの想定どおりの規模に成長しない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、AI技術の開発、利用、普及等に係る法規制が強化された場合や当該規制に基づき罰則等を受けた場合、当社グループの事業展開が制約を受ける他、当社グループサービスのレピュテーションの低下や解約等に繋がることで、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 競合他社の参入について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループが事業を展開するAI関連事業分野においては、本書提出日現在で競合他社が全世界に存在しているほか、新規参入事業者も多く見受けられ、今後も他業種大手企業から高度に専門化した新興企業に至るまで、様々な事業者が新規に参入する可能性があります。これらの競合他社や新規参入事業者は、その資金力、技術開発力、価格競争力、顧客基盤、営業力、ブランド、知名度などにおいて、当社グループよりも優れている場合があり、その優位性を活用してサービスの開発に取り組んだ場合、当社グループが競争で劣勢に立たされ、当社グループの期待どおりにサービスを提供できない、又は顧客を獲得・維持できないことも考えられます。また、AIビジネスの市場はいまだ未成熟であるため、かかる新規参入や競合他社の動向等により、市場シェアの構成が急激に変化する可能性があります。
当社グループとしましては、これまで培ってきたAI技術に関する専門性やビジネス活用の知見等を活かして、世の中のニーズに合致したAIサービスの開発を継続していく所存ですが、競争環境の更なる激化等、競合の状況によっては、価格低下圧力による利益率の悪化、対策のための追加コストの負担等により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 技術革新について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
AI関連技術は、全世界で研究開発が進んでおり、技術革新の速度が極めて速いという特徴があります。当社グループはそうした技術革新に対応すべく、国内外の大学等の機関との共同研究を含む研究開発に努めており、引き続きAIを活用したビジネスにより収益の拡大を図っていく所存ですが、今後において技術革新のスピードやこれに伴う新たなビジネスモデルの出現を含む市場環境の変化に当社グループが適時適切に対応できない場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 研究開発の不確実性について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
AIの開発には相当程度の時間と投資を要しますが、画期的なイノベーションの出現による市場環境の変化等や規制当局からの要望・指導、関連する法的規制の変更等によって計画に不確実性が生じます。当社グループとしては、上記動向を日々注視しながら、適宜当社グループの経営戦略に織り込んでいくとともに、当該動向に柔軟に対応できる体制構築に努めてまいりますが、当社グループのサービスの開発方針の変更、開発の延期もしくは中止などを招いた場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
(2) 事業展開または事業体制に関するリスク
① 個人情報管理について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは、「P.A.I.」(パーソナル人工知能)の研究開発に利用する個人のWeb・SNSの行動履歴や、Communication Intelligence「AI GIJIROKU」の販売に関して取得するクレジットカード等の決済情報といった個人情報を扱っております。当社グループでは、個人情報の保護に関する法令及び当社グループの「個人情報保護規程」に従い、当社経営管理部主導のもとに個人情報の管理を行うとともに、情報セキュリティについて適切な保護体制を構築するため、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)の認証を取得しております。
しかしながら、個人情報の漏洩や不正利用等の事態が生じた場合、取引先からの契約の解除や損害賠償の請求、当社グループや当社グループのサービスに対する信頼性の低下等により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 情報管理について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループが提供するサービス上、ユーザー側で保有している機密情報や個人情報に触れる場合があります。情報の取扱いについては規程及びルールの整備と的確な運用を義務づけるとともに、情報セキュリティについて適切な保護体制を構築するため、ISMS(情報セキュリティマネジメントシステム)認証を取得しております。
このような対策にも関わらず、不正アクセスやハッキング等の第三者からのサイバー攻撃によるシステム障害、人的オペレーションのミスによる情報漏洩等、その他予期せぬ要因等が生じた場合、取引先からの契約の解除や損害賠償の請求、当社グループや当社グループのサービスに対する信頼性の低下等により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。また、競合他社において第三者からのサイバー攻撃によるシステム障害や情報漏洩等が発生した場合、AIビジネス市場へのレピュテーションの低下による影響として、当社グループのサービスの解約等に繋がることで、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 法的規制について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは、事業を展開する上で、個人情報の保護に関する法律、電気通信事業法、下請代金支払遅延等防止法等の規制を受けます。当社グループはこれら法令を遵守するため、当社経営管理部が中心となり、各部署と連携して法令に抵触しない実務運用を整備する他、関連法令等の改廃動向についても常に情報収集を行うとともに、適宜顧問弁護士と連携する体制を整備しております。また、当社代表取締役社長を委員長とし、四半期に1回開催されるコンプライアンス推進委員会においても、これら法令遵守に関するリスクの管理・把握を行っております。
しかしながら、今後において法改正等があった場合に当社グループが対応できない可能性または法令違反に該当するような事態が生じた場合、当社グループの事業展開が制約を受ける他、当社グループのサービスのレピュテーションの低下や解約等に繋がることで、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 事業上の重要な許認可等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社グループは、主に次の許認可を受けて事業を展開しております。
当該許認可等に基づく売上高が当社グループの売上高の全体に占める割合は僅少であり、当社グループでは、これら許認可等の規制に係る関係法令等の遵守に努めているため、現時点で事業運営上の支障をきたすような状況は生じておりません。
しかしながら、今後法令違反等が発生することでこれらの許認可等が停止又は取消しとなった場合や法規制の厳格化が生じる場合は、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑤ 知的財産権について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは「知的財産管理規程」を定め、当社経営管理部主導のもと知的財産権の管理を行っております。当社グループの開発する技術及びサービスに関する知的財産権の保護のためその獲得に努めるとともに、第三者の知的財産権の侵害を防ぐために、当社グループが知的財産権を登録・申請する際には弁理士等の専門家を活用した事前調査を行っております。
当社グループは、本書提出日現在において、他社の知的財産権を侵害している事実は認識しておりませんが、当社グループの認識していない知的財産権が既に成立していることにより当社グループの事業運営が制約を受ける場合や第三者の知的財産権侵害が発覚した場合などにおいては、信用失墜や損害賠償請求等が発生し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑥ 重要な訴訟等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは、本書提出日現在において、当社グループの経営成績等に重要な影響を与えうる訴訟等には関与しておりません。
しかしながら、当社グループの事業活動等が今後重要な訴訟等の対象となった場合、その結果によっては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑦ システム障害について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループのCommunication Intelligence「AI GIJIROKU」は、自社でサーバーを持たず、Amazon Web Services(アメリカ合衆国に本社を置くAmazon Web Services Inc.が提供するクラウドコンピューティングサービス。以下「AWS」と言う。)及びGoogle Cloud Platform(アメリカ合衆国に本社を置くGoogle LLCが提供するクラウドコンピューティングサービス。以下「GCP」と言う。)を利用しております。なお、AWSは主に音声認識に、GCPはWebページのホスティング、アカウント管理、データベースに利用しております。
これらのクラウドコンピューティングサービスを利用することで、24時間365日安定したサービスを提供しておりますが、災害や事故等の発生により通信ネットワークが切断された場合、急激なアクセス数の増大によりサービス提供のためのサーバーが一時的に作動不能になった場合あるいはサーバーハードウェアに不具合が発生した場合等には、安定したサービス提供ができなくなる可能性があります。この場合、ユーザーに直接的な障害が及び、当社グループのサービスのレピュテーションの低下や解約等に繋がることで、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクを踏まえ、当社グループではAWS及びGCPそれぞれについて事業継続計画(Business Continuity Plan、BCP)を策定し、障害発生時の体制やサービス復旧手順等を定めております。
⑧ のれんの減損に係るリスク
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは、のれんを保有していますが、「固定資産の減損に係る会計基準」及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」により、当社グループが保有する固定資産が、収益状況の悪化等の事由により、減損処理が必要となった場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
⑨ 有利子負債比率及び資金調達に係るリスク
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは、事業活動の維持拡大に必要な資金の確保及び資金需要に対する機動的な対応のために、資本コスト等を勘案しながら内部資金及び外部資金を有効に活用しています。外部資金としては主に金融機関借入等を実施しており、当連結会計年度末における有利子負債残高は1,572,463千円であり、総資産に占める有利子負債比率は23.2%となっています。
また、市場金利が急速に上昇した場合には、支払利息が急激に増加する可能性があるほか、資金調達コストが上昇し、必要な資金を適時に借り入れることができなくなる可能性があります。このような場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑩ 継続企業の前提について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは継続的な成長のために、新規サービスの開発等に必要な研究開発活動や優秀な人材等への投資を継続する必要があると考えており、これまで積極的にこれらに係るコストに投資を行ってきました。その結果として、当連結会計年度においては、営業損失2,324,616千円及びマイナスの営業キャッシュ・フロー2,419,421千円を計上している状況ではありますが、上場時に公募増資による調達資金を行い、当連結会計年度末の現金及び預金4,617,501千円となり、キャッシュ・フローも確保できていると考えており、継続企業の前提に関する重要な不確実性は認められないと判断しております。また、今後も費用対効果を勘案しながら上述のような投資活動を行う一方で、「1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (5) 優先的に対処すべき事業上及び財務上の課題」に記載しましたように、単価の向上及びマーケティングの効率化等により早期の黒字化を図ってまいります。
⑪ 特定のサービスへの依存について
発生可能性:大、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当連結会計年度において、当社グループの売上高に占めるCommunication Intelligence「AI GIJIROKU」の売上高の割合は88.0%と依存度が高くなっております。従って、当該サービスについて、景気低迷等による顧客ニーズの低下や有力な競合の出現による当社グループのサービスの優位性の低下等により売上高が減少した場合あるいは新たな収益の柱となるサービスが想定どおりに成長しない場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
しかしながら、Communication Intelligence「AI GIJIROKU」はあくまで当社グループが開発してきた要素技術を製品として発現させた一形態に過ぎず、当社グループが有する各要素技術を用いて今後も様々な製品・サービスの提供が可能となると考えており、このようなリスクに対して、今後も同サービスの取引の安定的な拡大に努めると同時に、他サービスの取引の拡大を図ってまいります。
⑫ 海外展開について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループのCommunication Intelligence「AI GIJIROKU」の販売について、今後、アジア諸国への海外展開を検討しております。
このような状況において、現地政治情勢の変化等により事業運営に支障をきたす事態が生じた場合、自然災害や伝染病等が発生した場合、当社グループの事業展開に係る法規制等の成立・改正が行われた場合、当社グループの事業の海外展開に一定の影響が及び、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクがすぐに顕在化する可能性は低いものの、リスクは常に存在すると認識しており、当社グループは、当該リスクに対する迅速な情報収集と適切な対応を検討する体制を構築し、リスクの軽減を図ってまいります。
⑬ 特定の販売パートナーへの依存について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループのCommunication Intelligence「AI GIJIROKU」の販売については、国内外ともに、販売パートナーの拡充が必要となります。
当連結会計年度における当社グループの売上高に占める販売先のうち、株式会社ジークスへの販売実績が3,283,954千円(54.2%)、前事業年度は1,026,474千円(38.5%)となっております。株式会社ジークスによる顧客獲得は当社グループの売上に大きく寄与しており、「5 経営上の重要な契約等」に記載しました同社とのCommunication Intelligence「AI GIJIROKU」ライセンス販売に関する販売パートナー契約は、当社グループの主要な事業活動の前提となる事項と捉えております。本契約の契約期間は「2021年6月16日から2022年6月30日まで(6ヶ月ごと更新)」となっており、また契約上、天災地変その他当社グループ及び株式会社ジークスの責に帰することができない事由により、本契約の目的を達することが不可能となった場合は契約解除に至ることとなっているものの、本書提出日現在において、当社グループは株式会社ジークスと有効な関係を継続しており、契約解除等の取引が中止、縮小する可能性がある事象は発生しておりません。
当社グループとしては販売先が固定化されないよう取引先の分散を図っておりますが、今後販売先の構成比の分散ができず、株式会社ジークスとの契約解除を含む上位販売先との取引が中止、縮小した場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑭ 特定の外注先への依存について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社は、株式会社フィーアコーポレーション及び株式会社APTOと開発委託に関する基本契約を締結し、開発業務を外注しております。当連結会計年度における総外注金額に占める割合はそれぞれ22.3%、9.0%と依存度が高くなっております。従って、各社の事業方針の変更または事業動向によっては、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
上記会社はAI開発に強みを持つ重要なパートナーであり、当社は、各社との取引関係を今後も維持してまいります。一方で、上記会社に過度に依存しないよう、継続的に外注先を開拓し、外注先の分散に努めてまいります。
⑮ 継続的な投資について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは、継続的な成長のため、認知度、信頼度を向上させることにより、より多くのリード(見込み顧客)を獲得することが必要であると考え、積極的に先行投資として広告宣伝費等にコストを投下してきており、創業以来赤字を継続しております。今後も、収益性の向上に努めながらも、継続して先行的に広告宣伝等を行っていく方針であり、一定期間においては赤字が継続することを想定しております。広告宣伝費の支出にあたっては、費用対効果(LTV/CAC)を検証し、最適化に努めておりますが、経営環境の急激な変化等何らかの理由により広告宣伝費の費用対効果が悪化し、先行投資が想定どおりの成果に繋がらなかった場合には、営業収益の減少や広告宣伝費の追加的な支出により、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑯ 子会社管理について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループでは、子会社を3社有しております。当該子会社は、当社グループの連結子会社となってからの期間が短く、また、事業規模も小さいことから、今後の急速な事業成長に管理体制の整備が追い付かない可能性があります。当社の管理部門において内部統制を含め管理体制の強化に努めておりますが、管理体制が不十分であることにより、法令違反や許認可に関わる手続き不備等によって、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 会社組織に関するリスク
① 特定人物への依存について
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社代表取締役社長である米倉千貴は、当社の創業者であり、創業以来代表を務めております。同人は、当社グループの事業領域に関する豊富な経験と知識を有しており、当社グループの経営方針や事業戦略の決定及びその遂行において極めて重要な役割を果たしております。当社は、取締役会等における役員及び幹部社員との情報共有や経営組織の強化を図り、同人に過度に依存しない経営体制の整備を進めておりますが、何らかの理由により同人が当社グループの業務を継続することが困難となった場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
② 優秀な人材の確保・育成について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは、今後の企業規模の拡大に伴い、当社グループのミッション及びビジョンに共感し高い意欲をもった優秀な人材を継続的に活用し、強固な組織を構築していくことが重要であると考えており、次のような取り組みを行っております。
・優秀な人材の確保のため、即戦力人材を中途採用にて採用し、リファラル(社員紹介)、人材紹介など複数のチャネルを組み合わせた採用アプローチを採っております。
・採用のミスマッチを防ぐため、明確な採用基準を策定して採用活動を行っております。特に全てのポジションに共通して、スキルや経験はもちろんのこと、当社グループの企業文化と価値観を十分理解し、候補者が当社グループの企業文化にフィットするであるかどうかを、当社代表取締役社長を始め、複数名で判断した上で採用合否をつけております。
・入社後の教育研修や福利厚生の充実等により、定着率向上を図っております。
しかしながら、当社グループの求める人材が十分に確保・育成できなかった場合や人材流出が進んだ場合、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
③ 小規模組織であることについて
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
当社グループは小規模な組織であるため、役職員一人一人が担う業務の質及び貢献度は高く、現時点では社内の人員に加えて、外部の人材を効率的に活用し、業務を遂行しております。しかしながら、重要な役職員による職務遂行が困難となった場合や退職等による人材流出が進んだ場合、事業運営に支障をきたしたり、代替としての業務委託の費用が嵩んだりする可能性があります。当社グループは、今後の事業拡大に伴い必要な人員補強を図っていく方針でありますが、十分な人員の確保・教育が適時適切に進行しなかった場合には、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
④ 内部管理体制の構築について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:大
当社グループは、当社グループの継続的な成長のために、コーポレート・ガバナンスが有効に機能することが必要不可欠であると認識しております。そのために、適正な人員の配置、教育の実施、業務及び財務報告の適正性の確保、社内規程及び法令の遵守徹底等を行ってまいりますが、事業の急拡大等によりコーポレート・ガバナンスが有効に機能しなかった場合、適切な業務運営を行うことができず、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
⑤ 社歴の浅さについて
発生可能性:中、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
当社は、2014年11月に設立された社歴の浅い会社であります。当社グループは今後もIR活動などを通じて経営状態を積極的に開示してまいりますが、当社グループの過年度の経営成績は期間経営成績比較を行うための十分な材料とはならず、過年度の実績のみでは今後の経営成績を判断する情報としては不十分である可能性があります。
(4) その他のリスクについて
① 大規模な自然災害・感染症等について
発生可能性:低、発生可能性のある時期:特定時期なし、影響度:中
大地震、台風等の自然災害や火災等の事故または新型コロナウイルス感染症等の感染症の流行が想定を上回る規模で発生し、設備損壊、電力供給制限、その他当社グループの事業継続上の支障が発生した場合には、当社グループの事業展開・サービス提供に影響し、当社グループの事業、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。
このようなリスクに対して、当社グループは、緊急時においても事業・サービス提供が継続できるよう、システムの冗長化、Web会議システム等を活用したリモートワーク、緊急時の連絡・対応体制の整備等により対応してまいります。
② 税務上の繰越欠損金について
発生可能性:高、発生可能性のある時期:数年以内、影響度:小
当社は、当事業年度末時点において、税務上の繰越欠損金を有しております。当社の経営成績が事業計画に比して順調に推移することにより、繰越欠損金が解消した場合には、通常の税率に基づく法人税、住民税及び事業税が計上されることとなり、親会社株主に帰属する当期純損益及びキャッシュ・フローに影響を与える可能性があります。
③ 新株予約権行使による株式価値の希薄化について
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:1年以内、影響度:中
当社グループでは、取締役、従業員等に対するインセンティブを目的としたストック・オプションとしての新株予約権及び金融機関等からの新株予約権付融資を利用するにあたっての新株予約権を発行しております。当連結会計年度末現在における新株予約権による潜在株式数は2,713,100株であり、発行済株式総数34,694,700株の7.82%に相当します。なお、新株予約権の詳細については、「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況 (2) 新株予約権等の状況」に記載のとおりであります。
また、ストック・オプションについては今後においても活用していくことを検討しており、現在付与している新株予約権に加え、今後付与される新株予約権について行使が行われた場合には、保有株式の価値が希薄化する可能性があります。
④ ベンチャーキャピタル等の当社株式保有割合について
発生可能性:高、発生する可能性のある時期:1年以内、影響度:中
当連結会計年度末現在における当社の発行済株式総数は34,694,700株であり、このうちベンチャーキャピタル(コーポレートベンチャーキャピタルを含む)及びベンチャーキャピタルが組成した投資事業有限責任組合(以下、「VC等」という。)が保有する株式数は15,184,700株と、発行済株式総数に対する割合は43.77%となっております。一般に、VC等が未上場会社の株式を取得する場合、上場後に保有株式を売却しキャピタルゲインを得ることがその目的のひとつであり、今後もVC等による保有株式の売却が想定されます。VC等が保有する当社株式の一部または全部を市場にて売却した場合には、当社株式の需給バランスが短期的に損なわれ、株価の形成に影響を与える可能性があります。
当社としては、大株主である当社代表取締役社長米倉千貴、事業上の協業・提携を行う事業会社である株主など、安定株主の確保に努めてまいります。
⑤ 配当政策について
発生可能性:低、発生する可能性のある時期:特定時期なし、影響度:小
株主への利益還元の重要性を認識しておりますが、当社グループは成長過程にあると考えていることから、競争力の確保と更なる成長の継続を経営上の最重要課題としております。また、内部留保の充実を図り、それを原資として中長期的な事業拡大のための投資に充当していくことが、将来的な株主への利益還元に繋がると考えております。以上の理由から、当社は創業以来配当を実施しておりません。
将来的には、財政状態、経営成績、事業計画等を勘案し、株主への利益還元策を決定していく所存でありますが、配当実施の可能性及びその時期等については現時点で未定であります。
⑥ 資金使途について
発生可能性:中、発生する可能性のある時期:数年以内、影響度:大
株式上場時における公募増資による調達資金は、主に人員拡充における採用費用及び人件費、認知向上に向けた広告宣伝費、「P.A.I.」(パーソナル人工知能)実現に向けた研究開発費及び借入金の返済等に充当しており、今後も引き続きこれらの使途に充当していく想定です。
しかしながら、急速に変化する外部環境その他の事由により、当初の予定以外の使途となる可能性があるほか、当初の予定に沿って資金を充当したとしても計画どおりの効果が達成できない可能性があります。なお、資金使途に関して開示すべき事項が生じた場合には、速やかにお知らせいたします。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営上の重要課題の一つとして認識しておりますが、財務体質の改善に加えて事業拡大のための内部留保の充実等を図り、収益力強化と事業拡大のための投資に充当していくことが株主に対する最大の利益還元につながると考えております。このことから、創業以来配当は実施しておらず、今後についても現時点において配当実施の可能性及び実施時期は未定であります。
なお、内部留保資金につきましては、財務体質の強化と人員の拡充・育成をはじめとした収益基盤の多様化や収益力強化のための投資に活用する方針であります。将来的には、収益力の強化や事業基盤の整備を実施しつつ、内部留保の充実状況及び企業を取り巻く事業環境を勘案したうえで、株主に対して安定的かつ継続的な利益還元を実施する方針でありますが、本書提出日現在において配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。
なお、当社は、剰余金の配当を行う場合には、年1回の剰余金の配当を期末に行うことを基本としており、期末配当の決定機関は株主総会であります。また、当社は、取締役会の決議によって、毎年6月30日を基準日として中間配当をすることができる旨を定款に定めております。