リスク
3【事業等のリスク】
当社グループのリスク管理体制及び財政状態、経営成績等に重要な影響を与える可能性があると考えられる主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当該リスクが顕在化する可能性の程度や時期、当該リスクが顕在化した場合に当社グループの事業、業績及び財政状態に与える影響につきましては、合理的に予見することが困難であるため記載しておりません。
(1) 需要動向等に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、顧客密着型のビジネス展開を行い、生産用部品・材料のサプライヤーとして広範囲な産業に供給しており、通商政策の変更に伴う世界的な需給環境の変動や取引先の購買方針の変更等により、当社グループの取扱製品あるいは取扱商品に対して、需要が短期間に減退する可能性があります。当社グループは持続的に競争優位の確保に努めているものの、これら製品や商品の需要が急速に減少あるいは価格が下落した場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
(2) 自然災害及び不測の事態に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループが事業活動を展開する国や地域において、大規模な自然災害(地震、水害等)、感染症の流行、テロ・紛争等の予期せぬ事態が発生し、サプライチェーンの混乱や業務の停止が生じた場合、顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止など、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
(3) 法令違反に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、国内外において事業を行う際にはさまざまな法令の適用を受けております。当社は、グループ会社各社における業務の適正を図るため、法令の定めに基づいて内部統制システムに関する基本方針と、それに基づく各種の会社規則を定め、法令遵守に関する教育施策の実施や公益通報窓口の設置を実施しているほか、コンプライアンスに関する委員会を開催するなどして各種法令等の遵守に努めています。
(4) 品質保証に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループでは、国際品質マネジメント規格(ISO9001、IATF16949やその他の適用規格)や顧客が求める基準に従い、品質マネジメントを行っております。しかし、当社グループが供給する製・商品について品質不良等が発生して顧客から求償を受けることがあり、仕入先に起因する要因については、仕入先に補填をしていただくように努めておりますが、顧客や仕入先との協議により当社グループが損害賠償費用を負担せざるを得なくなった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当該リスクについては、仕入先との取引開始時に、可能な限り取引基本契約書に加え、品質保証協定書等も取り交わし、顧客及び仕入先と取り交わす図面や仕様書等を踏まえて責任範囲を明確にするように努めております。
(5) 情報セキュリティに関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、事業活動を通じて取引先の機密情報を入手することがあります。情報セキュリティに関連する法令、規範、取引先との契約事項、規程類を遵守し、特定部門でのISMS認証基準の国際規格であるISO27001を取得しています。また、情報セキュリティ担当役員を責任者とする情報セキュリティマネジメント体制を確立しております。更に、ISO27001の取得拡大を通じ、情報セキュリティに関する規程類、情報セキュリティマネジメント体制について、継続的に見直し、改善を行う様にしておりますが、サイバー攻撃によるウイルス感染や不正アクセス等の不測の事態により、万一、当社のシステムや通信ネットワークに重大な障害が発生し、正常に利用できない場合や機密情報が外部へ漏洩した場合、当社グループの顧客へのサービス提供や製・商品出荷等の停止、業務処理の遅延などにより、信用失墜及びそれに伴う損害賠償費用が発生し、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
(6) 重大な訴訟に関するリスク
(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、広範な事業活動を展開する中で様々な訴訟の対象となるリスクがあり、重大な訴訟が提起された場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。このリスクを軽減するため、重要な契約については当社法務部門の確認を受けるほか、グループ各社の紛争にあっては当社がこれに関与して解決に当たっております。また、適宜、国内外の外部の弁護士を活用するなどして訴訟リスクの低減に努めております。
(7) 信用に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループでは、「黒田グループ与信・債権管理規程」を定めて顧客と円滑な取引を実施し、顧客ごとに与信限度額を設定して与信管理を実施するとともに、グループ各社の営業部門が主要な顧客の状況を定期的にモニタリングし、担当経理部門が顧客ごとの期日管理及び残高管理を行い、貸倒れリスクの回避を図っております。しかしながら、各国の経済環境や景気の変化、取引先固有の事情等によって債権等が回収不能になった場合、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
(8) 為替相場の変動等に関するリスク
(顕在化の可能性:高/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループの海外事業の現地通貨建て財務諸表の各項目は、円換算時の為替レート変動の影響を受けます。外国通貨建て取引については、月次単位で為替予約等によるリスク回避の措置を講じておりますが、予測を超えた為替変動が発生した場合、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。
(9) 人材の確保に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループでは、「これから」の価値をつくり、事業の継続性を高めるために、既存の従業員に加え、各事業分野で十分な知識とマネジメントに精通した人材の確保・育成が不可欠であると認識しております。人材の育成と実務能力の向上のため、財務会計、語学、ビジネス教養、PCスキル等、各人の興味関心や能力に合う内容が豊富なeラーニングを従業員に提供し、「学び直し」をテーマに、従業員の自発的な能力開発を企業文化として定着させることを目的に、組織あるいは従業員が選択する教育ツールの費用負担、外部研修のさらなる活用、自己研鑽への取り組みを実施しております。しかし、少子高齢化や労働人口の減少、エンジニアなどの高度なスキルを持つ人材への需要増加により、優秀な人材の確保が難しくなっております。これにより、想定どおりに人材の確保及び育成が進まない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 多額の借入れ、金利の変動及び財務制限条項への抵触に関するリスク
(顕在化の可能性:低/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、今後も、当社グループの事業強化に資する投資資金や事業を継続するための資金の確保を必要とする可能性があります。しかし、金融市場の環境、金利動向、資金需給の状況等の変化が、当社グループの資金調達に悪影響を及ぼす可能性があり、当社グループが必要とする資金の調達を適時かつ好条件で行うことが出来ない場合には、当社グループの事業、業績、財政状態に悪影響を及ぼす可能性があります。
また、当社グループでは、2018年3月に黒田電気株式会社が非公開化した際のLBOローンを2024年9月にシンジケートローン契約に基づくコーポレートローンに借り換えております。借入金残高が2025年3月31日現在28,402百万円あり、IFRSに基づく総資産額に占める有利子負債比率は29.7%となっております。
今後の金融市場等の動向により、金利が上昇局面となった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当該シンジケートローン契約には、財務制限条項が課せられており、当該条項違反が発生した場合は、貸付人の同意により、期限の利益を喪失する可能性があります。また、直ちに借入金を返済しなければならない等、当社財政状態及び資金繰りに影響を及ぼす可能性があります。なお、契約の内容につきましては、「第2 事業の状況 5.重要な契約等」に記載のとおりであります。
(11) 減損に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、本書提出日現在、MBKパートナーズグループがKMホールディングス株式会社を通じて黒田電気株式会社の株式を取得することを目的として2017年12月15日まで実施された公開買付け及び黒田電気株式会社により2017年12月25日から2018年1月26日まで実施された自己株式公開買付けにより生じたのれん19,024百万円を連結財政状態計算書に計上しているほか、その他の有形・無形の固定資産を有しております。今後、これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と回収可能価額の差を損失とする減損処理により、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社グループが認識している主なのれんは、内部報告目的で管理されている事業単位である「製造事業」「商社事業」を資金生成単位として配分されており、減損の兆候の有無に関わらず、年に1度減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しております。当社グループにて実施しているのれんの減損テストについては後記「第5 経理の状況 1連結財務諸表等 連結財務諸表注記 14.のれん及び無形資産 (2)のれんの減損テスト」をご参照ください。
(12) 配当政策について
(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、株主への利益還元を経営上の重要な課題として認識しており、事業を継続・発展させていただくことが、長期にわたる株主への利益還元に繋がると考えております。事業の成長による中長期的な株式価値の向上とともに、業績推移や財政状態等を勘案しながら配当を継続的に実施していく方針でありますが、通期業績、財政状態及びその他の状況によっては、配当政策に影響を及ぼす可能性があります。
(13) 大株主がファンドであること等について
(顕在化の可能性:低/影響度:大/顕在化の時期:特定時期なし)
本書提出日現在において、ケイエム・ツー・エルピー(MBKパートナーズグループが運営するファンドであり、「当該ファンド」という。) は、当社の発行済株式数(自己株式を含む44,683,980株)の63.7%を所有しております。また、当社取締役である金子哲也及び太田光俊は、MBKパートナーズ株式会社から派遣されており、当社取締役会において、事業セグメントの業績管理の精緻化、投資案件の検討、既存投資案件のリターンの検証等で当社グループ企業価値向上のための建設的な意見・助言を行っております。
当該ファンドの保有・処分方針によって、当社株式の流動性及び価格形成等に影響を及ぼす可能性があります。当社は、当該リスクを軽減するため、当該ファンドとの取引等について、取引の合理性及び取引条件の妥当性を確認し、取締役会の承認を得ることとしております。
(14) 海外販売に関するリスク
(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループの売上高の約37%はタイ及びインドネシア等のアセアン地区と中国に所在する会社の海外販売であります。各国の政治・経済状況等を常にモニタリングし、迅速に対応できる体制を整えておりますが、政治の不安定化によりビジネス環境が変わり、法律や税制の変更によってコストが増加したり、各国の政策変更によって競争環境が変わったりすることが考えられます。また、経済状況の急変や自然災害、戦争やテロの社会的な混乱は、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
(15) 在庫の評価損や廃棄損に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:中/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループでは、商社事業の重要な機能として顧客への継続的な安定供給を目的とした一定水準の在庫を保有しております。顧客の生産計画の変更、所要見込みの減少により、滞留在庫又は過剰在庫となり、棚卸資産の廃棄損や評価損を計上する場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。
適正在庫水準は顧客要求や商品によって異なりますが、このようなリスクに対して当社グループでは、日々顧客から発行される変動指示数について増減を確認し、変更があった場合には仕入先との調整を行うことで適切な在庫水準を保っております。また、滞留在庫の管理や定期的な在庫会議を通じて、顧客との協議を行い、過剰な在庫や不要な在庫を防止する対策に取り組んでおります。
(16) 投資有価証券の評価損に関するリスク
(顕在化の可能性:中/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、上場及び非上場の株式等の投資有価証券を保有しております。市場経済の動向や投資先の財政状態等により、株価及び評価額に著しい変動が生じる場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。対応策として発行体の財務内容を定期的に確認するための定量的な評価基準を設けております。
(17) 仕入先に関するリスク
(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループの商社事業において、仕入先の事業戦略や市場戦略等により取引の商流が変更される可能性があります。現在の主要仕入先との取引は代理店契約のみによる取引ではないものの、主要仕入先との取引が変更となった場合には、当社グループの業績及び財政状態が悪影響を被る可能性があります。当社グループの商社事業では、顧客の課題を読み取り、各仕入先の製品の最適な販売提案による拡販とともに信頼と企業価値の向上に取り組んでおります。
(18) 新株予約権の行使による株式価値の希薄化リスク
(顕在化の可能性:低/影響度:小/顕在化の時期:特定時期なし)
当社グループは、当社及びグループ会社の役員に対するインセンティブを目的として、新株予約権を付与しております。本書提出日現在、これらの新株予約権による潜在株式数は1,273,500株であり、発行済株式数の約2.9%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合、発行済株式数が増加し、1株当たりの株式価値が希薄化する可能性があり、この株式価値の希薄化が株価形成に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、取引先とともに事業を継続・発展させていただくことが、長期にわたる株主の皆様に対する利益配分に繋がると考えております。そのような観点から、当社の配当にかかる基本方針として、以下のように定めております。
(1)当社は、安定的な配当を実現するために、期首の親会社所有者帰属持分(除くその他の包括利益)をベースとするDOE(株主資本配当率)を採用し、目標水準を7%で年間の配当額に設定する。
(2)数年間は累進配当(注)を想定する。
(3)手元現預金は月商1ヵ月程度の水準とし、余剰資金は「成長投資」「財務健全性」も勘案の上、追加の株主還元を機動的に検討、実施する。
(4)配当は中間、期末の年2回とする。
(5)期末配当の決定機関は取締役会とする。
(6)内部留保資金の使途は技術開発、DX、M&Aなどの成長投資とする。
(注)累進配当とは、原則として減配を行わず、配当の維持若しくは増配を行う配当政策
なお、当社は、取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる旨を定款に記載しております。