2023年8月期有価証券報告書より
  • 社員数
    4,448名(単体) 10,200名(連結)
  • 平均年齢
    36.5歳(単体)
  • 平均勤続年数
    12.3年(単体)
  • 平均年収
    4,827,332円(単体)

従業員の状況

5【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

 

2023年8月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

物品販売事業

10,062

(7,507)

BSデジタル放送事業

104

(   15)

その他の事業

34

(   12)

合計

10,200

(7,534)

(注) 1. 従業員数は、当社グループから当社グループ外への出向者を除き、当社グループ外から当社グループへの出向者を含む就業人員数であります。

2. 臨時雇用者数(アルバイト、派遣社員を含む)は、最近1年間の平均人員(1日1人8時間換算)を( )外数で記載しております。

 

(2) 提出会社の状況

当社は、単一セグメントであるため、部門別の従業員数を示すと次のとおりであります。

 

2023年8月31日現在

部門の名称

従業員数(人)

営業部門

4,085

(1,663)

管理部門

363

(   69)

合計

4,448

(1,732)

 

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

4,448

(1,732)

36.5

12.3

4,827,332

(注) 1. 従業員数は、当社から社外への出向者を除き、社外から当社への出向者を含む就業人員数であります。

2. 臨時雇用者数(アルバイト、派遣社員を含む)は、最近1年間の平均人員(1日1人8時間換算)を( )外数で記載しております。

3. 管理部門は、総務部門、経理部門及び物流部門等に所属している従業員であります。

4. 平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

 

(3) 労働組合の状況

労働組合は、提出会社の他、連結子会社のうち、株式会社コジマ、株式会社ソフマップの2社に各々の労働組合があり、各組合は上部団体のUAゼンセンに加盟しております。

なお、労使関係は良好に推移しており、特記すべき事項はありません。

 

(4)管理職に占める女性労働者の割合、男性労働者の育児休業取得率及び労働者の男女の賃金の差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

9.4

66.7

66.4

81.6

96.1

(注) 1. 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2. 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注)1.

男性労働者の育児休業取得率(%)

(注)2.

労働者の男女の賃金の差異(%)

(注)1.

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

㈱ソフマップ

3.2

100.0

78.4

85.2

81.0

㈱ビックロジサービス

0.0

66.0

67.0

80.3

92.7

㈱ラネット

14.5

81.0

78.8

78.0

93.2

㈱じゃんぱら

2.6

100.0

72.2

87.5

101.5

日本BS放送㈱

27.6

㈱コジマ

5.0

76.7

48.4

82.8

82.6

(注) 1. 「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものであります。

2. 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の4第1号における育児休業等の取得割合を算出したものであります。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

2【サステナビリティに関する考え方及び取組】

 当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

 サステナビリティ経営に関する考え方

  当社の考えるサステナビリティ経営とは、当社の提供価値や当社グループの能力を活かすことにより、様々なお客様のニーズや社会課題に対して幅広くカバーし、きめ細やかにアプローチするものです。私たちの提供価値を最大限に発揮することで、より良い暮らし、より良い社会に貢献してまいります。

 

(1)ガバナンス

① 推進体制

 サステナビリティ経営を推進するにあたり、代表取締役社長を委員長、全執行役員を構成員としたサステナビリティ推進委員会を設置し、最重要経営課題について議論し、取締役会に報告する体制を整えています。そして、取締役にはサステナビリティのスキルを求め、そのスキルをマトリックスにて開示しております。取締役会とサステナビリティ推進委員会が連携し、さらなるサステナビリティ経営の推進を図ってまいります。

 

 更に、サステナビリティ経営における重点項目において、よりきめ細やかでスピーディに解決を図るため、サステナビリティ協議会を新設いたします。本協議会は、旗艦店を中心とした店舗の店長および本部の各部署において中心となって活躍している従業員で構成していきます。そして、ここで協議した様々な課題をサステナビリティ推進委員会に上程する仕組みを構築していきます。また、サステナビリティ担当役員を専属で任命すると共に、主管部署である社長室に経営戦略及びグループ戦略、サステナビリティ経営推進機能を全て集約し、経営戦略と直結させながらサステナビリティ経営の推進を強化していきます。これは特定の組織のみが行うものではなく、全執行役員が、サステナビリティ推進委員会を基軸として一丸となって様々な課題の解決に邁進いたします。

 

② リスク管理

 経営における全てのリスクは、リスク管理委員会がその課題進捗をモニタリングし、その結果は取締役会へ報告される体制を構築しております。このリスク管理とサステナビリティ経営の両輪が機能することでより強固な経営戦略の推進に直結するという考えから、リスク管理委員会及びサステナビリティ推進委員会で連動し活動にあたる必要があります。

 

 その中で、サステナビリティ経営における重要課題については、それぞれに対して負の影響の特定・評価・対策まで、グループ内部統制統括部長、サステナビリティ担当役員が中心となり点検しております。この機能は、サステナビリティにおける各種協議会の構成員に担当役員が配置され、常にリスク管理の観点でも協議ができる環境を整備しています。

サステナビリティ経営に関連する会議体とその役割

会議体または部門

役割

取締役会

業務執行において承認された経営課題・サステナビリティ関連課題に関する取組みの進捗を監督する。

・議長:代表取締役社長  ・開催頻度:毎月

執行役員会

経営課題・サステナビリティ関連課題に対する具体的な取組み施策を含む全社的な経営に係る施策について審議する。決議事項は取締役会へ報告される。

・議長:代表取締役社長  ・開催頻度:毎月

サステナビリティ推進委員会

サステナビリティ関連課題の解決策を検討し、KPI・施策立案等を定め、推進する。審議項目は取締役会へ報告される。

・委員長:代表取締役社長  ・構成員:すべての執行役員  ・開催頻度:毎月

リスク管理委員会

経営にまつわる全てのリスクについて、進捗をモニタリングし、その結果は取締役会へ報告される。

・委員長:グループ内部統制統括部長  ・開催頻度:四半期

社長室

経営課題・全社的なサステナビリティ関連課題について対応する。

サステナビリティ推進委員会の事務局を担当する。

グループ内部統制統括部

各部門から報告されるリスクについて管理する(改善策、再発防止策の検討含む)。リスク管理委員会の事務局を担当する。

 

(2)私たちの提供価値

 小売業の価値は店舗であるとの考えから、企業理念に掲げる『専門性と先進性で、より豊かな生活を提案する進化し続ける“こだわり”の専門店の集合体』に磨きをかけることで店舗の価値を高め、企業価値向上が果たせると考えております。当社が目指す“こだわり”の専門店とは、2つの要素を兼ね備えているものです。

2つの要素

要素を支える能力

暮らしを支える“信頼”

こだわり抜いた品揃えやお客様の立場に立った親切丁寧なご案内で、「目的のものが必ずある」「購入後も安心できる」という、お客様にとことん寄り添う人間力

ワクワクする“楽しさ”と“新しさ”

想像性と創造性による“提案力”で「お客様の期待を大きく上回る驚き」や「新しいライフスタイルが想像できる発見」が店内のいたるところにある

 

 この両輪で成り立つものであり、どちらが欠けても当社の考える“こだわり”の専門店とは言えません。

 当社の店舗は、祖業であるカメラをはじめ、生活家電やパソコン、スマートフォンなどのデジタル家電を中心とし、一方で様々な領域の非家電製品も幅広く取り揃えており、これらの商品群で構成される大型店舗を大都市圏の多くのターミナル駅前に構えております。取り扱う各領域すべてが専門店であり、その集合体こそがビックカメラです。そしてその専門性を支える専門人財が各領域で活躍しています。

 また、生活家電やパソコン関連などに付随する設置工事や様々なアフターサービスも創業来長い時間をかけてノウハウを積み上げてまいりました。これらの強みは今後も競争優位性であり続けるものであり、当社の提供価値と言えます。更には駅前立地の当社に対して、郊外に拠点がある株式会社コジマや、サポート・買い取り・リユース・リサイクルを強みとする株式会社ソフマップをはじめとした当社グループとの連携により、より高いサービスの提供や、サステナブルな循環型社会の醸成にも寄与できると考えています。

 

(3)戦略

 当社は、中長期的な経営戦略として「ビックカメラらしい強い店舗を取り戻す」を掲げ、「人を成長の原動力とする」ことを施策の筆頭として位置づけております。従業員一人ひとりが主体性や想像性、創造性を発揮し、従業員の「個」の能力を最大限に活かすことが企業価値向上の源泉であり、当社の企業理念に掲げる“こだわり”の専門店の集合体の重要な資本であると考えております。そのため、当社サステナビリティ経営における最重点項目を“人財”と位置づけ、人にフォーカスした活動に力点を置いてまいります。また、“環境”についても引き続きエコ・ファースト企業として、当社グループ全体で取り組み、社会に貢献してまいります。

 

① 人財

イ 人的資本経営

 従業員一人ひとりの能力を最大限に発揮させることこそが当社グループの人的資本経営であり、経営戦略に掲げる「ビックカメラらしい強い店舗」を形成するための最も重要な資本と考えております。お客様のニーズが多様化し、変化のスピードが速くなっている現代において、小売業の“変化対応業”としての力がこれまで以上に問われています。その変化に対応するためには、日々お客様と接している現場の従業員一人ひとりが主体性をもって取り組まなければ要望に応えきれません。従業員一人ひとりが変化を敏感に察知し、先回りしてお客様の潜在的なニーズを発見し、こだわりの専門店を磨き続けることが、企業としての優位性につながると考えております。

 

a. 人財基本方針

 当社が考える育成は、内発的動機付け、つまり「ハートに火をつける活動」に重きを置くものです。従業員一人ひとりが最大限に能力を発揮するためには、お客様喜ばせ業としての使命感や志から来る熱意が不可欠であると考えています。この、内面から湧き上がるものから主体性が生まれ、従業員自ら提供価値を磨き表現することを大切にしていきます。私たちは、お客様喜ばせ業であることを自覚し、主体性を持って行動することで、私たちの店舗を、どこにも真似のできない唯一無二のものにしていくことを目指し続けます。このように、当社においては、お客様喜ばせ業としての使命感や志から来る熱意を原動力として企業理念を主体的に体現する人財の育成を目指し、人財基本方針を定めました。

[人財基本方針]

 当社は従業員を大切な宝であるという考えと、自らその価値を磨く内発的動機付けに働きかけることに重点を置くため、人材育成方針ではなく人財基本方針として掲げていきます。

1.企業理念に共感し体現する人財を育てる

 従業員の主体的活動は、企業理念を前提としたものとし、全ての判断基準は企業理念によるものとする

2.個の提供価値に着目した能力開発を行う

 従業員の多様な能力に着目し、一人ひとりの専門性や強み、人間力の最大化を図る

3.OJT教育をベースとして、各現場において成長の機会提供を行う

 教育研修ではなく日々の実体験によって学ぶことに主眼を置き、現場でのPDCAにて能力開発を促す

4.上司が従業員の主体性を尊び、「対話」をしながら伴走する

 従業員自ら考え行動することを目的とし、上司は指示をするのではなく見守り支援する

5.ハートに火をつけることで自走する人財を育てる

 自ら学びたいという意欲や熱意を持つための働きかけを行うことに重点を置く

 本方針に則り、社内環境整備を行うことで、従業員のハートに火をつけ、求める人財を追求していきます。

 

b. 社内環境整備方針

 従業員のハートに火をつけ、求める人財を追求するためには、下記3要素に則り、社内環境整備を行う必要があります。この3要素全てを満たすことが、ハートに火を灯し続けられる状態と考え、本3要素に対して指標及び目標を設定いたします。

 社内環境整備は、この3要素に定める指標・目標を達成するための施策と位置づけ、本方針といたします。

 

[社内環境整備方針]

3要素

内容

方針

(1)従業員が仕事に誇りと情熱を持つ

ハートに火がつく前提となる要素。『お客様喜ばせ業』として相手の幸せが自分の喜びとして捉え、自己の存在意義実感へ繋げる

方針1:企業理念への共感

(2)従業員が働きがいを感じる

従業員自ら考え行動したことがどう貢献できたかの実感や、その多様な能力に着目した能力開発を行うことで得られる成長実感によってハートに火がつくものと考える

方針2:個人への権限委譲

方針3:マネジメントスタイルの変更

方針4:多様な能力に着目した制度設計

(3)従業員が働きやすい環境であることを実感できる

ハートに火がついた状態が一過性でなく継続するための基盤を整えるもの

主に心身の充実や柔軟な働き方を可能にするための制度設計や風土づくりを行う

方針5:お客様にとことん向き合うための基盤づくり

 本方針から以下の通り社内環境整備を行います。

(ⅰ) 従業員が仕事に誇りと情熱を持つための環境整備

◇方針1:企業理念への共感

 従業員がお客様喜ばせ業としての自覚を今まで以上に持つために、全社をあげてお客様の声に着目した取り組みを行っております。2023年1月より社長はじめ各部門の役員を中心に部署を横断した「NPSプロジェクト」というもので、お客様よりいただいたご意見を数値化し共有・対策を検討しながらタイムリーに対応し、進捗を確認しています。また、販売員へのお客様からの感謝のお声に対しては、全部署が参加する朝礼での共有や社内報を活用した発信を行っております。

 また、社内組織において企業理念浸透のための専門部署を設け、社内外に社の方向性や理念を一貫して伝えられるよう、広報機能もここに移管しております。ここを中心に執行役員や次世代を担う従業員による企業理念をテーマとしたワークショップの実施、社長と店舗従業員の対話の機会提供、社長と組織長による1on1の実施など様々な施策を行い従業員の理解を深めました。教育面では入社から3年目までの育成プログラムの中に企業理念を盛り込み、若い世代のモチベーション向上に繋げてまいりました。

 

[1年目~3年目研修]

研修

受講人数

対象時間

新入社員研修

196名

8時間×2日+7時間×1日

入社1年目フォローアップ研修

183名

6時間

入社2年目フォローアップ研修

124名

6時間

入社3年目フォローアップ研修

153名

6時間

 

(ⅱ) 従業員が働きがいを感じるための環境整備

◇方針2:個人への権限委譲

 店舗においては、「ハンドレッド計画」制度の磨き込みを行いました。

 この制度は、商品カテゴリごとに担当者を定め、責任範囲の明確化と権限を委譲するもので、従業員一人ひとりが、その担当分野の店長になったつもりで“どこにも負けない専門店”を主体的に構築することを求めています。権限委譲による主体的な行動は、お客様にとってより良い提案になっているか、お客様のニーズに寄り添えているかなど、お客様起点によるものかどうかを常に意識したものでなければいけません。この基準が曖昧になることの無いよう、新たに表彰制度を導入いたします。全社をあげて本制度を活用し、従業員の主体的活動が企業理念や経営戦略に基づくものであるという認識を揃えてまいります。また、評価制度においても、企業理念を主体的に体現する人財を公平公正に評価できる仕組みを目指し、より戦略に沿った評価になるよう更なるブラッシュアップについて協議しております。

 

◇方針3:マネジメントスタイルの変更

 指導・管理型から支援・伴走型へ上司の関わり方を変えることにより、従業員が自ら考え行動する習慣が身につきます。上司は従業員と“対話”の機会を増やし、悩んだ時には全てをカバーするのではなく、ヒントを伝え自ら壁を乗り越える機会を作ります。この上司のマネジメントスタイルにより、従業員は安心して様々なことに自ら考えチャレンジし、上司に見守られていることを実感しながら、より向上心を持つための関係性を構築します。

 また、精度の高い支援・伴走を行えるように人事管理システムの見直しを行い、従業員のこれまでの昇給昇格、面談内容、異動履歴などの管理ツールを導入し上司からのアドバイスを的確に行い、課題解決に寄与していきます。

 

◇方針4:多様な能力に着目した制度設計

 多様な人財の専門性や強みに着目した人事制度を設計することで自信と主体性を持てる環境を整えていきます。

1) 多様性と主体性を重視したキャリア支援

1. 人事制度複線化

 昨年より、マイスター制度/統括制度を導入いたしました。専門性を磨き、お客様に提供するマイスター制度や、売場全体のマネジメントを担う統括制度を導入することにより個の特性に応じて専門職の道、管理職の道を明確にし、自らの強みを生かし主体的にキャリア選択ができる制度設計を行いました。

 

 マイスター制度におきましては、より専門性の高い従業員への称号であるシニアマイスターが9名誕生いたしました。本制度において、第一階層のマイスター認定も選考を潜り抜けた従業員で構成されておりますが、第二階層のシニアマイスターはさらに狭き門となっており、難関を突破した従業員のみが得られるもので多くの従業員の目標・憧れとして更なる活躍が期待できます。また今期より、一芸に秀でた専門販売員のためのエキスパートマイスターを新設し、専門店として様々な能力を活かすキャリア支援制度を構築しています。

[2023年11月1日時点]

階層

エントリー

合格者

合格率

既存

合計

マイスター

361名

82名

22.7%

211名

293名

うちシニア

マイスター

90名

9名

10.0%

0名

9名

うちエキスパート

マイスター

3名

1名

33.3%

0名

1名

 管理職の道を選択した従業員におきましては、2023年9月に220名が任命され、将来店長職を担うための研修を実施いたしました。

 

2. チャレンジ制度

 当社グループは、従業員自らの希望により、キャリア選択を行う各種チャレンジ制度があります。経営戦略に基づき強化する部署・店舗がグループ全社に異動の公募をするポストチャレンジ制度は、組織や会社問わずチャレンジが可能であり、新たな道で自己の能力開発に繋げることができます。また、希望する新卒入社のメンバーが内定時に専門分野の部署に立候補ができる職種チャレンジ制度も用意しております。入社1年間は店舗勤務を経験し、現場を把握したのちに、2年目に各部署への異動が約束されるもので、いずれも面接などの試験が用意されています。

 

2) 資格取得支援

 専門性を高めるため、各分野における資格取得支援を行っております。

 生活家電アドバイザー資格は勿論のこと、登録販売士や薬剤師、自転車整備士等、専門性の高い資格に対しても幅広く支援し、多くの資格取得者が店舗で活躍をしています。

資格

家電

アドバイザー

登録販売士

薬剤師

自転車整備士

フォト

マスター

店舗有資格者

1,104名

155名

36名

104名

198名

 

3) ダイバーシティ&インクルージョンの推進

 多様なお客様ニーズへのきめ細やかな対応は、多様な従業員の能力の発揮が不可欠です。当社は創業より、従業員の“個”の力を信じ、性別や国籍、年齢を区別することなく、成長の機会提供をしてまいりましたが、管理職の更なる意識改革につなげるため、個の強みやキャリアに着目した個別面談、各種研修等を実施しました。従業員満足度調査では、外国籍従業員やシニア層の従業員のモチベーションが非常に高く、低水準の結果だった女性従業員においてもここ数年で大幅に改善しています。

 

従業員満足度調査 ※マイスター、外国籍、嘱託(シニア)は特に高い満足度

23/8期

全体

マイスター

外国籍

嘱託

総合DI(%)

73.2

79.8

90.3

82.5

 また、当社は社員だけでなく、アルバイトにおいてもキャリア支援を行っています。アルバイトのランク付けに伴うランク認定制度や、社員への転換が可能な社員登用制度があり、毎年キャリア面談も実施しながら、雇用形態に捉われず、働きがいを促進しています。障がい者雇用に関しましては、教育面においてジョブコーチや職業生活相談員資格取得支援、管理職研修の実施、定着面では定期面談や店舗の受入支援、採用面においては支援学校との連携による店舗実習の実施や合同面会に積極的に参加しております。2023年6月時点の雇用率は2.39%となっております。

 

(ⅲ) 従業員が働きやすい環境であることを実感できるための環境整備

◇方針5:お客様にとことん向き合うための基盤づくり

 日々安心してお客様に向き合うための基盤の整備が不可欠であり、この土台を整えることで、初めて従業員の主体性や多様な能力の発揮が実現するものと考えます。

1) お客様に集中できる環境づくり

 お客様に集中できる環境づくりを目的に、2023年5月より「BPRプロジェクト」を発足いたしました。店舗において従業員がお客様のご案内やハンドレッド計画遂行への時間を多く捻出するため、阻害要因を無くす改善や業務効率化を実行するものです。本プロジェクトは、本部が店舗に入り、店舗従業員に寄り添い意見を尊重しながら進め、本部と店舗一体となって取り組んでまいりました。現時点の成果として、発足時点から31,782時間の時間を捻出できました。この生み出した時間をお客様へのご案内やハンドレッド計画遂行に充てるとともに、今後も引き続き、より生産性を向上させてまいります。また、本部人員をスリム化し、店舗人員をさらに増強することで、これまで以上に店舗従業員がお客様に向き合えるよう支援いたします。

 

2) 多様な働き方に対応する制度設計

 従業員が自己のキャリアを描けるよう、多様化する従業員のライフスタイルに応じた柔軟な働き方を整備することが重要です。当社はこれまで、出産によるキャリアの男女差を無くすべく、男性育児休業取得促進、法定以上の短時間勤務及び育児休業制度や、ジョブリターン制度の構築、企業主導型保育事業、子育て中の女性の管理職登用などを手掛けてまいりました。結果、プラチナくるみんを取得しており、従業員満足度も向上しております。

プラチナくるみん認定

男性育児休業取得率

企業主導型保育事業

 

3) 心理的安全性の確保

 企業理念に基づき、従業員の多様な価値観や視点を活かすために、心理的安全性の確保に注力いたします。この考えから、役員はもとより、強い店舗を取り戻すための施策として店長への360度サーベイの他、管理職研修や個別面談の機会と質の向上に取り組みました。これに加え、前述のマネジメントスタイルの変更や個人への権限委譲を進め、従業員が個々に考える「お客様にどう喜んでいただけるか」を自由に表現できる環境を整えていきます。

 

c. 推進体制

 人的資本経営を推進するにあたり、ハートに火をつけるための3要素ごとに協議会を設け、社内環境整備を具体化します。

 本協議会で定めた内容はサステナビリティ推進委員会にて報告し、常に改善する体制を整え、推進してまいります。

 

d. 指標と目標

 当社人的資本経営におけるKPIは、3要素に対する従業員エンゲージメント数値で設定し、3要素全て向上した状態が、従業員のハートに火がついた状態であるとします。この3要素を測る手段として、当社グループにて実施する従業員への各種アンケート結果を活用いたします。当社グループはもとより、この各種アンケートを用いて従業員エンゲージメントを定期的に測定し、共通の目標を掲げ、人財戦略に落とし込んでおります。具体的には、従業員満足度を計る社員向けの自己申告アンケート調査や、アルバイトまで対象としたウェルネスサーベイを毎年実施しており、当社グループにおいて結果の共有をしております。この各種数値を経年で追いながら、課題にアプローチをすることで従業員のハートに火がついた状態を維持してまいります。そして、その結果として、eNPS(ビックカメラ推奨度)の数値も向上していくと考え、ここをゴール目標として位置付けてまいります。

(ⅰ) 各種指標とゴール目標

 従業員満足度調査結果についてテーマ別指標を下記の通り設定します。アンケートの設問に対する回答状況に対して、ポジティブ回答率の合計(%)-ネガティブ回答率の合計(%)を算出したものをDI値とし、数値が高い方が満足度が高くなります。また全体指標としてワークエンゲージメントのポジティブ回答割合、ゴール目標については、ビックカメラ推奨度のポジティブ回答割合を指標といたします。

[2030年に向けた全体指標]

テーマ

テーマ別指標

全体指標

ゴール目標

測定手段

数値

測定

手段

現状

数値

目標

数値

測定

手段

現状

数値

現状

数値

従業員

満足度調査

現状

数値

目標

数値

ウェルネスサーベイ

ウェルネスサーベイ

仕事への誇り・情熱を持つ

仕事適応感数値

75.9%

80.0%

ワークエンゲージメント

44%

55%

以上

推奨度

eNPS

56%

70%

以上

仕事が好きか・向いていると思うか・存在意義を実感出来るか

働きがいを感じる

能力発揮度

66.7%

73.0%

強みを生かしているか・成長実感があるか・公正な評価を受けているか

働きやすい環境である事を実感できる

職場適応感数値

77.0%

82.0%

人間関係は良好か・制度や設備に満足しているか

 

●従業員満足度調査

 上記3つの設問に対して「適している・どちらかといえば適している・どちらかといえば適していない・適していない」と4段階で回答。

 DI値は「適している・どちらかと言えば適している」のポジティブ回答率(%)‐ネガティブ回答率(%)を算出したもの。数値が高い方が満足度が高い事になる。

●ワークエンゲージメント

 測定尺度は、新職業性ストレス簡易調査票ワークエンゲージメント関連2問に独自質問3問を追加した5問で構成した質問紙により調査。回答結果をスコア化し、FiNCウェルネスサーベイ導入企業全回答者を母集団とする偏差値と、その全回答者平均を算出し、自社従業員結果においての偏差値50以上の従業員割合を指標としている。

 5問の構成は以下である。

・仕事をしているとき、活力が湧いてくると感じることがある  Yes・No

・仕事に熱意を持って取り組んでいる             Yes・No

・仕事に没頭しているとき、幸せや喜びを感じることがある   Yes・No

・仕事をしていると、活力がみなぎるように感じる       そうだ・まぁそうだ・ややちがう・ちがう

・自分の仕事に誇りを感じる                 そうだ・まぁそうだ・ややちがう・ちがう

●eNPS

 従業員の満足度指標となる質問をもとに回答結果をスコア化し、FiNCウェルネスサーベイ導入企業全回答者を母集団とする偏差値と、その全回答者平均を算出し、自社従業員結果においての偏差値50以上の従業員割合を指標としている。

 設問は以下である。

・友人や知人にあなたの会社への入社を薦めたいと思う  非常にそう思う・そう思う・どちらでもない・そう思わない・まったく思わない

 

 本指標・目標の中で、現状の水準が特に低い層は女性と20代男女となっております。この課題に注力することで全体の底上げとなります。そのため、課題解決の為の指標も設定いたしました。

[2030年に向けた課題解決の指標]

課題

現状数値

課題に対する指標

女性管理職比率

9.4%

15%以上

男女勤続年数差

4.0年

2年以下

男性育児休業取得率

66.7%

80%以上

        (注)「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)に基づき算出したものであります。

●女性管理職比率については、2023年8月末時点の当社で雇用している正社員のうち「管理職」を「労働基準法で定めれられている管理監督者およびビックカメラ店舗における店長職、副店長職」と定義し算出しております。

●男女勤続年数差については、2023年8月末時点の当社で雇用している正社員における数値となります。

●男性育児休業取得率については、当社で雇用している正社員及びアルバイトのうち、2022年9月~2023年8月に「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)で定める育児休業もしくは出生時育児休業を開始した従業員数を、2022年9月~2023年8月に子が生まれた従業員数で割ったものになります。

 

(ⅱ) 各種施策における戦略マップ

 3要素における指標と目標をクリアするために実行する社内環境整備内容を下記の戦略マップにて従業員のハートに火がつくまでの工程をお示ししております。この戦略マップにはそれぞれ取り組みとその効果測定としてKPIを設定しているため、定期的に確認・共有を行い、PDCAをまわしていきながら従業員のエンゲージメントを高めていきます。一例をご紹介しますと、テーマ別指標である従業員満足度調査結果では、女性従業員の水準が低くなっておりましたが、社内環境整備の中で、「個人への権限委譲」における「ハンドレッド計画」の推進や、「多様な能力に着目した制度設計」における「マイスター制度」の確立によって、「仕事適応感」及び「能力発揮度」の数値に大きく影響し、改善しております。このように、社内環境整備を実行するだけでなく、各種施策に対する指標と結果数値を明らかにすることで、どの施策がどの指標や目標に影響を及ぼすかを、この戦略マップを活用し検証していきます。

 従業員のエンゲージメント向上がお客様エンゲージメント向上に直結し、結果として当社グループの企業価値向上、業績向上に繋がるものと考え、本マップは作られております。このような好循環を生み出すことを念頭に、全従業員のハートに火をつけることを最重点項目として注力していきます。

 

ロ 健康経営

a. 方針

 従業員とそのご家族の健康は当社サステナビリティ経営の基盤となるものであり、心身の充実があってはじめて個の力が発揮できるものであると考え、健康経営の推進はこれまでも積極的に取り組んでまいりました。

 我々の健康経営は、強みである「“こだわり”の専門店の集合体」としての専門性を活用しながら推進いたします。専門店である当社には多くの健康にまつわる商品とその情報を保持し、その分野の専門知識と資格を保有した多様な人財もおります。

 これらの個の能力・知見・情報をお客様のみならず、自社の仲間に活かせるという自覚は、より従業員のエンゲージメント向上にも効果があると考えております。

 

b. 戦略

 健康経営においては当社グループ全体で推進しており、従業員満足度調査やストレスチェック、ウェルネスサーベイを活用し、従業員の心身の充実度をフィジカル・メンタル・エンゲージメントの観点で数値化し、定期的に点検・共有しながら、各社で課題抽出の上経営戦略に落とし込んでおります。

 当社においても今期は経営戦略の施策に掲げ、戦略マップを策定し、ここに則って推進しています。

 

c. 推進体制

 代表取締役社長がCWO(チーフ・ウェルネス・オフィサー)となり、総務人事部やサステナビリティ担当役員、健康保険組合は勿論のこと、各事業所の安全衛生委員会、ソフトボールチームも含め、体制を構築しています。

 更に労働組合とも連携しながら、課題認識や施策実行など労使協働で推進しております。

 

d. 取り組み

 当社戦略マップに則り、当社従業員の専門性を活かし各種施策を実行しています。

(ⅰ) メンタルヘルスへの取り組み

 メンタルヘルスへの取り組みとして、労働安全衛生法により定められている法定設問のストレスチェックに加え、オリジナル設問による「ウェルネスサーベイ」をあわせて実施し、フィジカル・メンタル・エンゲージメントの側面から従業員の状態を調査しております。より多角的な視点で従業員のメンタルヘルスを把握し、職場環境の改善に取り組んでおります。改善に向けた施策については、各事業所の健康推進担当者が中心となり、安全衛生委員会にて自店舗の結果を元にアクションプランを策定し、実行しております。

 また、従業員自らが「健康であろう」とする姿勢を尊重するべく、セルフケアに対する取り組みを行っております。一人ひとりが自身に向き合い、ストレスに気づきこれに対処していくことが欠かせません。セルフケア実践に必要な知識や方法を身につけるため、eラーニングと理解度テストを行い、ヘルスリテラシー向上に努めております。

 あわせて、各店舗の責任者に対するラインケア研修を実施し、事業所の中でもメンタルヘルスケアができるよう、体制を整えております。

 特に、店長を対象としたラインケア研修では、臨床心理士を講師に招き、「職場のメンタルヘルスの現状」「メンタルヘルス問題への対応」「部下のメンタルヘルス維持・向上のための効果的かかわり」についてグループディスカッションや事例共有をおこないました。

 それらを通じて、当社の業務内容と従業員の特性を踏まえたラインケア体制の構築を続けてまいります。

 また現在、復職者支援制度の整備をおこなっております。メンタルヘルスの不調による休職からの復職については、所属店舗・部署、人事担当者、産業保健スタッフが連携して復職をサポートしております。復職後に関しても、再休職を防ぐため産業医・保健師などの産業保健スタッフによる支援を行うなど、スムーズな復帰の支援を継続しております。

 

(ⅱ) 女性の健康への取り組み

 女性がいきいきと働ける職場環境を目指し、女性特有の健康課題に対する支援にも取り組んでおります。

 本部主導の施策のみならず、現場発信の健康経営推進の一環として「働く女性の健康セミナー」をおこないました。これは、日頃より同僚と接している店舗勤務の登録販売者メンバーが、働く女性の健康に課題感を抱き、社外研修に参加しその後ビックカメラ労働組合と共同で開催したものとなります。第一弾では80名以上の参加者が集まり、「知識が無かったので勉強になった」「セミナーを受け、フェムテックを実際に活用してみようと思う」といった感想がありました。

 このように、多様な人財の能力を最大限に活かしながら、従業員同士で健康意識を高めていく環境を引き続き整えてまいります。

 

(ⅲ) ビックカメラ健康保険組合との連携

 ビックカメラ健康保険組合は、1999年に成立した単一型健保組合です。従業員や、そのご家族の健康維持の一助となることで、健康的な生活を送るための「安心」を支えています。

 取り組みの一例としまして、毎年秋にインフルエンザ予防接種の職場巡回接種を実施し、本格的な流行シーズンに備えております。安定した店舗運営を行い、お客様にご安心いただくのはもちろん、従業員が罹患し休まざるを得なくなる状況を避けるため、医療機関と提携しております。昨年度は補助金制度を利用した接種を含め当社グループ全体で7,230本のワクチン接種を行いました。

 また、健康診断事業については、病気を早期発見しQOLを高めるとともに、自分の健康を自身で維持するためのヘルスリテラシーを根付かせるため取り組みを強化しております。生活習慣病検診については30歳以上の被保険者及び被扶養配偶者が受診対象となり、40歳以上の被保険者及び被扶養者については人間ドックを受診することができます。健診機関と個別契約や検診を取りまとめ機関と契約することで、勤務先または自宅近くで受診しやすい環境を整えております。その後、特定保健指導の対象となった従業員には、各事業所と協力し専門家による指導を行っております。

 

(ⅳ) 新型コロナウイルス ワクチン職域接種の実施

 当社グループでは、従業員やそのご家族はもちろんのこと、お取引先様や関連会社の方々の健康も大切に考えてまいりました。2021年において、新型コロナウイルス感染症に対する感染防止対策として、新型コロナウイルスワクチンの職域接種を実施いたしました。この取り組みにおいては、感染予防のみならず、従業員とお客様のエンゲージメント向上にも直結するものと捉え、従業員、ご家族の方々、お取引先様や関連会社の皆様など、幅広く受け入れたことで、大変喜ばれました。今回の接種に際しては、準備期間から接種後の事務処理までを、医療関係者に任せず、運営面はビックカメラの従業員が担当しました。当時の状況から、日本全体の不安を少しでも軽減すべく、従業員が高い志のもと、グループ間の企業の垣根を越えて一致団結しました。引き続き、地域社会への貢献や当社グループに関わるすべての方々の健康を守るため、健康経営に力を入れてまいります。

(ⅴ) スポーツエールカンパニーとして

 ビックカメラはスポーツ庁による「スポーツエールカンパニー」に認定されており、従業員の健康増進のためにスポーツ活動の促進へも積極的に取り組んでおります。

 からだを動かすことによる身体的な健康増進はもちろんのこと、心の活力の源泉としてもスポーツは重要な要素です。

 スポーツによる「楽しさ」や「喜び」を認識してもらえるよう、ビックカメラ女子ソフトボール高崎 BEE QUEEN所属のアスリートへの活動支援を行うとともに、従業員が参加できる応援ツアー等も開催しております。

 新型コロナウイルス感染症の5類感染症移行後には運動やコミュニケーションの向上の一環として、従業員及びご家族参加のソフトボール交流会を開催致しました。

 実施後のアンケート調査におけるイベント満足度は4.88(1~5の5段階回答の平均値)となっており、「世界を相手に戦っている選手たちと同じグランドに立つことができ、嬉しかった」「子どもも『試合見に行く!』とソフトボールを好きになってくれました」といった感想に加え、「久しぶりに会う方も多く、有意義な時間を過ごせた」との意見もあり、コミュニケーションの場の提供にもつながりました。

 また、スポーツ推進企業として、社内に留まらず、地域社会全体における健康推進として、市区と連携した取り組みも行っております。過去と比較し運動の場所や機会が少なくなっているお子様向けの企画として、小学生を対象にしたボール投げ教室なども開催しており、若年層の基礎体力構築へも力を入れております。

 

 

e. 指標と目標

 健康経営における戦略マップに基づき、それぞれの指標・目標を設定し、公表いたしました。

健康関連数値

2020

2021

2022

目標(2025年)

定期健康診断受診率

98.9%

98.8%

97.8%

100.0%

特定保健指導の実施率

52.9%

49.2%

55.0%以上

平均月間所定外労働時間

9時間

12時間

13時間

13時間以下

平均年次有給取得日数

10.2日

12.9日

13.2日

13日以上

ストレスチェック・ウェルネスサーベイ受検率

92.6%

94.1%

95.8%

99%以上

40歳以上の喫煙率

26.8%

26.3%

25.8%

20%以下

40歳以上の飲酒習慣者率

※頻度が時々または毎日かつ飲酒日の1日当たりの飲酒量が清酒換算で2合以上の人の割合

13.3%

11.7%

11.5%

10.7%以下

40歳以上の適正体重維持者率

※BMIが18.5~25.0未満の者

59.2%

59.1%

58.9%

59.2%以上

40歳以上で「睡眠により十分な休養が取れている人」の割合

59.7%

59.9%

58.0%

60.0%以上

高血圧者率

11.2%

6.7%

7.5%

6.7%以下

高血圧のうち治療中率

70.6%

67.2%

70.7%

71.0%以上

高血圧のうちコントロール率

30.1%

41.7%

47.2%

48.0%以上

40歳以上の運動習慣者比率

※1週間に2回、1回当たり30分以上の運動を実施している人の割合

20.9%

22.3%

23.0%

25.0%以上

総合健康リスク

95

92

91

90以下

高ストレス者率

19.6%

20.1%

19.7%

19%以下

メンタルヘルス不調による年間休職者率

0.5%

0.8%

1.3%

2025年目標値は設定せず、まずは不調者の支援に注力する

メンタルヘルス不調以外の疾病による年間休職者率

0.5%

0.3%

0.4%

アブセンティーズム(時間/月)

※直近3ヶ月で、健康上の問題による欠勤・遅刻・早退で会社にいなかった時間はどのくらいありましたか?という設問からの回答者平均

2.6時間

3.1時間

4.4時間

2.6時間以下

プレゼンティーイズム

※健康な状態で発揮できるパフォーマンスを100% とした場合の、直近1ヶ月のパフォーマンス平均

76%

76%

75%

80%以上

平均勤続年数

※3月31日を基準日とし、同日に在籍している正社員・嘱託社員・アルバイトの入社日から基準日までの勤続年数の平均

9.4年

10.4年

10.8年

11年以上

ワークエンゲイジメント

45%

44%

44%

50%以上

(注)計算方法

アブセンティーイズム :直近3ヶ月で、健康上の問題による欠勤・遅刻・早退で会社にいなかった時間はどのくらいありましたか?という設問からの回答者平均。たとえば、直近3ヶ月で欠勤を2回、1時間の遅刻を3回した場合には、通常の勤務時間を8時間とすると、(8時間×2回)+(1時間×3回)=19時間となります。時間を割合に換算する際の1月の労働時間は173時間としている。

プレゼンティーイズム :質問は東大WG策定の1項目版を採用。“通常、あなたが健康な状態で発揮できるパフォーマンス(業務を進めるスピードや仕事の成果)を100%とします。現在あなたが持っている健康上の問題を考慮すると、直近1ヶ月で何%のパフォーマンスを発揮することができましたか?”という設問からの回答者平均。

 

ワークエンゲージメント:測定尺度は、新職業性ストレス簡易調査票ワークエンゲージメント関連2問に独自質問3問を追加した5問で構成した質問紙により調査。回答結果をスコア化し、FiNCウェルネスサーベイ導入企業全回答者を母集団とする偏差値と、その全回答者平均を算出し、自社従業員結果においての偏差値50以上の従業員割合を指標としている。

株式会社FiNC Technologiesが提供するFiNCストレスチェック・ウェルネスサーベイより計測(2022年対象者人数6,506人/回答率 95.8%)

 

ハ 人権の尊重

a. 方針

 当社グループにおける事業活動の前提が、当社グループの事業に関わるすべての人の人権の尊重です。人権に関する国際規範や関係法令を遵守するとともに、その精神に従い、事業に関するすべての人の人権を尊重するため、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則」にもとづき、「ビックカメラ人権方針」を定めています。

 本方針に伴い、重要な課題は以下の通りです。

重要課題

1.一切の差別を行わないこと

2.安全で健康的な労働環境の整備

3.公正な労働条件の確保

4.結社の自由

5.建設的な労使対話

6.児童労働・強制労働やその他の非人道的な扱いの禁止

7.プライバシーの保護

 本方針は、当社役員及び従業員に適用し、事業に関連する全てのビジネスパートナーに対しても理解と実践への協力を求めていきます。

 

b. 人権デュー・デリジェンス

 人権に対する負の影響を特定・評価し、これの防止および軽減に継続的に取り組むべく、人権デュー・デリジェンスの仕組みの構築を開始いたします。特定された負の影響に対して、それぞれ現状実施している予防策の点検及びその結果をまとめ、更なる対策を講じる必要があるかを検討いたします。ここで整理された負の影響に対する予防策については、リスク管理委員会にて定期的に点検し、課題が浮き彫りになったものはサステナビリティ推進委員会(ガバナンスの項を参照)にて協議していく仕組みを整えていきます。

 

 本方針が効果的に実行されるよう、すべての役員及び従業員に対し理解を深めるための機会提供を積極的に行います。また、ビジネスパートナーへの啓発活動を行うことで、本方針の浸透を図り、人権にかかわる問題を未然に防げるよう環境を整備します。

 

 

c. 救済措置

 一般社団法人ビジネスと人権対話救済機構(JaCER)が提供する「対話救済プラットフォーム」に正会員企業として加盟し、ステークホルダー全般にわたる幅広い人権侵害への苦情・通報を受け付け、対応することで、サプライチェーン全体での人権尊重の取り組みを強化しております。

 

② 気候変動

 当社は、脱炭素社会構築に貢献することは企業の重要な役割のひとつであり、気候変動への対応は重要な経営課題のひとつと認識していることから、2021年12月に「気候関連財務情報タスクフォース(TCFD)」提言への賛同を表明しました。TCFDに基づく情報開示の拡充に取り組むとともに、気候関連リスクおよび機会を分析・評価し、経営戦略に反映させることにより持続可能な事業を展開してまいります。

イ 戦略

a. シナリオ分析

 当社は地球温暖化を主因とする自然災害の深刻化をはじめとした気候変動緩和に向けた取り組みを重要な経営課題として位置づけ、気候関連課題への対応の議論・監督を行っております。気候変動が当社の事業に及ぼす影響(リスク及び機会)を明らかにするため、シナリオ分析を実施いたしました。シナリオ分析の範囲は、当社グループすべての事業を対象に、短期・中期・長期の3つの期間で、(ⅰ)「IEA 2DS(2℃シナリオ)」(ⅱ)「IPCC RCP 8.5(4℃シナリオ)」の2つのシナリオをもとに分析、評価を行いました。

気候シナリオ分析の前提条件

対象事業

当社グループのすべての事業

期間

短期:2022年~2024年、中期:2025年~2030年、長期:2031年~2050年

参照したシナリオ

(ⅰ) IEA 2DS(2℃シナリオ)、(ⅱ) IPCC RCP 8.5(4℃シナリオ)

 

(ⅰ) IEA 2DS(2℃シナリオ)

 国際エネルギー機関(IEA)の「Energy Technology Perspective」で示されている、2100年までの世界平均気温の上昇が少なくとも50%の確率で2℃に抑えられるシナリオである「2℃シナリオ(2DS)」を用いて、低炭素社会への移行リスクを分析しました。本シナリオでは、エネルギー部門のCO2排出量が2060年に現状の70%削減となり、2100年にはカーボンニュートラルになるほか、2060年の1次エネルギー消費における化石燃料への依存度は、35%に下がります。また多くの石炭火力が耐用年数を迎える前に閉鎖され、残った石炭火力はCCSを実施する設備となります。本シナリオの予測を元に、低炭素社会への移行に伴うリスクと機会、および当社への具体的な影響を分析しました。

 

(ⅱ) IPCC RCP 8.5(4℃シナリオ)

 気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の「代表濃度経路(Representative Concentration Pathways)シナリオ」のうち、21世紀末の世界平均気温の上昇が最大で4.8℃になる、「RCP8.5」を用いて、気候変動による物理的な影響を分析しました。本シナリオは、世界が化石燃料依存型のまま気候変動に対する政策や対策が行われず温室効果ガスが大量に排出されるシナリオです。地域や季節により降水量の差が激しくなり、海水面は最大0.82m上昇します。また、極端な高温や大雨、干ばつなどが起こる可能性が高まります。

 本シナリオの予測を元に、気候変動による物理的な影響に焦点を当て、当社の事業および財務に及ぼす可能性について分析しました。

 

b. シナリオ分析結果

 2つのシナリオで分析を行った結果、どちらのシナリオにおいても「移行リスク」である炭素税や排出量取引制度などが導入され、GHGの排出に対するコストが増加するほか、排出量報告義務の強化や家電製品に対する省エネ基準の強化や消費者の気候変動意識の向上と購買行動の変化などの影響が生じることが明らかになりました。また、「物理的リスク」である大型台風や集中豪雨など、極端な気象事象が増加し、店舗や物流網の被害が増え、猛暑や平均気温の上昇など、当社の店舗運営と商品販売に影響を及ぼすことが分析の結果明らかになりました。

 IEA 2DS(2℃シナリオ)においては、脱炭素や排出量取引制度の導入・強化によるコストの増加が見込まれる一方で、サステナビリティ経営への対応遅れによるブランド価値の低下の懸念が増大するほか、省エネ家電のニーズ高まりによる売上げ増加が見込まれることが予想されます。サステナビリティ経営を重要課題とし企業価値の向上に努めるとともに、省エネ家電のニーズに対応していくことで消費者からの信頼を得ていくことは、非常に重要な取り組みであると認識しております。

 IPCC RCP 8.5(4℃シナリオ)においては、炭素税や排出量取引制度の導入・強化によるコストの影響は微量なものの、気温上昇による自然災害の増加により店舗や物流拠点等の被害による損益、省エネ家電のニーズ高まりに対応できない場合の消費者からの信頼失墜が懸念されます。

 

予想されるリスクおよび機会一例

リスク

移行リスク

(主に2℃シナリオ)

技術

低CO2排出製品への転換遅れによる売上減少

政策・法規制

炭素税や排出量取引制度の導入・強化によるコストの増加

政策・法規制

家電製品に対して省エネルギー基準の強化による商品価格の上昇

市場

低炭素を求める消費者意識や行動の変化に対応できないことによる売上低下

評判

サステナビリティ経営への対応遅れによる企業ブランド価値の低下

物理リスク

(主に4℃シナリオ)

急性

大型台風など異常気象の増加による店舗の被害や休業

慢性

平均気温の上昇により、店舗、物流拠点、子会社の工場等の冷房コストの増加

機会

製品・サービス

電力消費量が少ない家電製品に対する消費者ニーズの高まりによる売上増加

運用

CO2削減のために空調設備の運用改善や照明器具の高効率化による収益改善

 

ロ 指標と目標

 当社は、気候変動に関するリスクを低減・回避し、機会を最大化するために、以下の目標を策定し、気候変動対策に取り組んでいます。また、省エネ製品・サービスの提供を通じて、お客様へ重要性を理解頂くための提案活動など、脱炭素社会実現に向けた取組みを積極的に行っております。

a. 指標と目標

 当社は、気候変動に関するリスク・機会を管理する指標として、Scope1・2・3のCO2排出量を指標と定め、温室効果ガス排出量の削減目標を設定し、取り組んでおります。2030年度までに当社の事業活動から排出される温室効果ガスの排出量を2014年度比46%削減することを目標として、2050年度までに、温室効果ガスの排出量をカーボンニュートラルとすることを目標に取り組みます。

 

b. 温室効果ガス排出量(Scope1・Scope2・Scope3)

 当社は、事業活動における当社グループ3社(ビックカメラ、コジマ、ソフマップ)の温室効果ガス排出量の算定に取り組んでおります。当社グループ3社のScope1・2・3の温室効果ガス排出量は以下の通りです。

温室効果ガス排出量実績

(単位:t-CO2)

 

 

2014年度 ※2

2021年度

2022年度

2014年度対比

(削減率)※3

Scope1

7,004

5,258

4,306

△39%

Scope2

133,078

86,520

79,621

△40%

Scope3 ※1

5,731,871

5,436,187

△5%

※1 Scope3の情報開示(カテゴリ1,2,3,4,5,6,7,11,12)

※2 2014年度は地球温暖化対策推進法に基づいて算出

※3 Scope3の削減率は2021年度対比

 

ハ 取り組み

a. 環境省認定「エコ・ファーストの約束」

 当社は環境省が環境の分野において「先進的、独自的でかつ業界をリードするような事業活動」を行う企業を認定する「エコ・ファースト制度」の第1号企業として、制度発足の2008年より認定を受けており、業界の環境分野におけるトップランナーとして「エコ・ファーストの約束」を結び、取組みを行ってきました。

 2022年に更新された「エコ・ファーストの約束」では、以下5つを実現することを約束しております。

(ⅰ) サーキュラー・エコノミー(循環型社会)の実現に貢献します。

(ⅱ) 脱炭素社会実現のため、再生可能エネルギー事業を推進します。

(ⅲ) 省エネ家電製品・サービスの普及促進を強力に推進します。

(ⅳ) 低炭素・脱炭素社会における新たな市場を創出するソリューション企業を目指します。

(ⅴ) 持続可能な経営を実現するために、事業活動の温室効果ガス(GHG)排出量を削減します。

 

b. エネルギー使用量の削減

 将来の温室効果ガス排出規制の強化に備え温室効果ガスの排出削減を行うため、2016年より店舗で使用する空調機器を省エネ性能の高いものへ付け替えたほか、2015年より店舗内の照明を蛍光灯から省エネ性能の高いLED照明へ切り替えました。また、社内で省エネルールの徹底をすることにより、エネルギー使用量の削減を進めています。さらに、エレベーターのインバーター化やヒートポンプチラーの導入をすることでエネルギー使用量の削減に貢献しております。

 

c. 再生可能エネルギー

 2022年12月、当社の物流センターの一つである東松山センターに自家消費型太陽光発電(オンサイトPPA)を導入しました。この電力量は、東松山センターの年間使用電力量の約22%で、CO2削減量は年間430tになることを見込んでおります。今後もオンサイトPPA、オフサイトPPAの設置拠点の拡大を検討してまいります。

 

d. モーダルシフト

 2023年3月より大阪→福岡、同年7月より千葉→札幌区間の在庫移動手段の一部に鉄道によるコンテナ輸送を採用し、輸送の際に発生するCO2排出量削減に取り組んでおります。

 

e. 気候変動(CDP2022気候変動調査)

 当社は、国際的に企業等の環境への取り組みを評価し、開示する非政府組織(NGO)であるCDPの2022気候変動調査のスコアリングにおいて、「B」にランクされました。これは、8段階評価(A、A-、B、B-、C、C-、D、D-)の上位から3番目のマネジメントレベルに該当するものであり、当社が「環境リスクやその影響に対するアクションをとっていることを示す」「環境リスクやその影響をトラッキングし、緩和したりなくしたりしようとしている」と評価されたものであります。今後も気候変動対策を推進し、持続可能な経済の実現に取り組んでまいります。