リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。なお、文中における将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。
当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針でありますが、以下の記載はすべてのリスクを網羅したものではなく、現時点では予見出来ないまたは重要とみなされていないリスクの影響を将来的に受ける可能性があります。
当社では、代表取締役社長を委員長とし、取締役、執行役員、営業本部長、コーポレートスタッフ部門長、経理部長、経営企画部長、内部監査室長及び人事総務部長により構成されるリスク管理委員会を設置し、当社グループのリスク評価、リスク対策の方針決定及び審議結果を取締役会へ報告もしくは諮問しております。
(1) 事業環境に関するリスク
① 主要市場の政治・経済動向・気候変動による影響、地政学リスクについて
(主要市場の政治・経済活動による影響)
当社グループが事業活動を行う主要な市場である日本、アジア、北米、欧州、オセアニア等の国及び地域の政治・経済の動向が、当社グループの取扱商品の需給バランスに変動をもたらす可能性があります。政治・経済動向により取扱商品の需給バランスに変化が生じた場合には、仕入価格や販売価格を通じて、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(気候変動による影響)
当社グループの取扱商品である乳原料、チーズ、食肉及び食肉加工品等はその原料が動物に由来します。これらは、工業製品とは異なり、生産量は天候や環境等に左右されやすく、需給バランスも崩れやすい商品といえます。特に、酪農業においては、気温上昇が生乳生産量の減少につながるほか、干ばつや多雨による飼料の作柄なども生乳生産量に影響するため、気候変動による影響が大きいといえます。生産量の増加等で国際的に需給が緩和した場合には、国産品に対する輸入品の価格競争力が増し、販売数量が増加する傾向がありますが、逆に異常気象などで生産量が減少し、需給が逼迫した場合には、価格が高騰するとともに販売数量が減少する可能性があります。なお、極端な温暖化が進んだ場合、酪農業において生乳生産量が減少し乳原料、チーズの調達に影響が及ぶ可能性があります。
(環境関連規制による影響)
酪農畜産業は、牛によるメタンガスの排出など、温室効果ガスの排出量が多く、糞尿処理による水質・土壌汚染、さらには牧草地の開発に伴う森林破壊など環境負荷が大きい産業とされています。取扱商品のサプライチェーンに酪農畜産業を含む当社の事業活動においては、低炭素社会への移行に伴い温室効果ガスの排出規制がさらに強化されるなど、環境負荷を軽減するために各種規制が強化される場合、規制に適合するために必要なコストが増加する可能性があります。また、酪農畜産業においてこれらへの対応が不十分であったり遅れたりした場合、当社グループの円滑な事業活動に影響が及ぶ可能性があります。
(地政学リスク)
当社グループは日本およびアジアを中心にグローバルに事業を展開しております。一方で、近年では、ロシア・ウクライナ紛争やイスラエル・パレスチナ紛争など世界各地で国際紛争が発生しており、アジアにおいても台湾や北朝鮮に係る有事が懸念されています。当社が事業を展開している地域における有事の際には、商品の調達、輸送、さらには販売といった当社グループのサプライチェーンに混乱が生じ、当社グループの業績に影響が及ぶ可能性があります。
以上のような事業環境の変動により取扱商品の調達や販売が困難になる、または、仕入価格や販売価格が大きく変動するなど、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループでは、サプライソースの多様化や代替原料の開発・調達の推進、サステナブルな酪農畜産業の構築にむけて取り組んでいくことに加えて、食品をコアとする事業の多角化に取り組むことで当該リスクの軽減を図ってまいります。
② 貿易の自由化について
2018年12月には環太平洋戦略的経済連携協定(CPTPP)が、2019年2月にはEUとの経済連携協定(日EU・EPA)が、さらに2020年1月には日米貿易協定が発効するなど、わが国では貿易自由化の流れが進んでいます。当社グループにとって貿易自由化の進展は、わが国における高い関税障壁に対処するため当社が構築してきた海外ネットワークやノウハウの活用を難しくする可能性がある一方で、関税の引き下げや撤廃などにより、輸入品に対する需要が高まり当社の販売数量を増加させる効果も期待できるところであります。そのため貿易協定の見直しなどが行われた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
③ 法的規制について
当社グループは事業活動を遂行するにあたり、日本においては食品衛生法、消費者安全法等、その他事業を展開している各国において法的規制を受けております。今後これら規制の改廃もしくは新たな法的規制が設けられた場合には、それらに対応するための追加コストが発生し、当社グループの事業及び業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは、事業活動に必要な各種許認可を受けておりますが、法令違反等により、許認可等が取り消された場合には、当社グループの事業活動が制限され、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
上記のようなリスクに対応するため、当社は会社組織として品質アセスメント室を設けており、品質に関する法規制の対応及び情報収集を行い、新たな法的規制に対しても適切かつ迅速に対応できる体制を整えております。
④ 感染症拡大によるリスク
社会・経済活動に甚大な影響を及ぼす感染症が発生・蔓延し流行が長期化した場合、経済活動の縮小や人流の減少による食品需要の低迷、海外も含めた食品原料の需給バランスの変化による輸入商品の価格変動、物流の混乱による商品供給の停滞等が生じるリスクがあります。
(2) 商品の製造及び販売・調達に関するリスク
① 食の安全性について
当社グループの取扱商品は、食品原料や食品製品であります。当社グループではアジアにおいて自社ブランドの業務用チーズの製造を行っております。万一、当社の過失や悪意のある第三者により異物が混入した場合や原料の表示に誤りがあった場合、さらには輸送・保管方法を原因とした成分変化による風味不良が発生した場合には、原料を取り扱う商社の立場、または製品を製造したメーカーとしての立場において、それぞれ商品回収や損害賠償請求を受ける可能性があり、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
当社グループは製品の製造にあたっては、フードディフェンス等の安全管理を徹底するなど品質の確保に最大限努めています。
② 競合他社の事業戦略と販売先の系列化について
当社グループの競合他社としては、乳製品原料や食肉及び食肉加工品の仕入・販売を行っている大手総合商社や大手食品メーカーがあげられます。これら大手企業が当社の仕入先もしくは販売先に資本参加し、系列化した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 経営、財務等に関するリスク
① 為替相場について
当社グループは、商社として欧米及びアジアを中心とした輸出入取引を行っております。また、海外連結子会社の財務諸表は現地通貨建てとなっており、円換算する際の為替レートによっては、為替換算調整勘定を通じて連結財務諸表の純資産の部が変動するリスクがあります。
また、当社の行う大半の営業取引は仕入契約と販売契約を同時に締結しており、輸入取引における本邦顧客に対する円建ての売値は原則として仕入契約締結時における為替相場に基づいて決定されます。輸入取引における仕入契約は原則として外国通貨建てとなっておりますが、仕入契約締結の際に金融機関と為替予約を結び為替変動リスクを回避しております。ただし、円安が進んだ場合、邦貨換算の仕入金額が増加し、それに伴い販売価格も増加いたします(売上高の増加)。円高が進んだ場合はその逆となります(売上高の減少)。また、期末に向けて為替相場が急激に変動した場合において仕入代金決済後、在庫として保有し翌期に販売するときは、翌期の売上原価に影響を与える可能性があります。そのため、大幅な為替変動が生じた場合、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローに影響を及ぼす可能性があります。
② 有利子負債について
営業活動によるキャッシュ・フローについては、各連結会計年度の数値を記載しております。
当社グループの主要事業である、乳原料・チーズ部門、食肉食材部門及びアジア事業・その他における卸売部門においては、商社としての事業形態をとっており、仕入⇒在庫⇒販売⇒資金回収という事業フローのため、業容の拡大イコール運転資金の増加となり、営業活動によるキャッシュ・フローがマイナスとなる場合があります。引き続き、収益体質の改革による利益の確保や運転資金の効率化等を通じて自己資金の創出には努めてまいります。
このような状況の下、金融情勢の変化等により資金調達が困難になり、投資計画の実行ができなくなる場合や、市場金利の上昇により資金調達コストが増大した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。なお、当社は、主要取引金融機関とのコミットメントライン付シンジケートローン契約を締結しており、同契約には財務制限条項が付されております。これに抵触した場合には当該借入金の返済を求められ、当社グループの財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
③ 人材について
当社グループは、最重要経営資源として、新卒及び中途採用を通じて優秀な人材の獲得及びその育成に力を入れております。しかしながらこれら人材の退職または人材市場の状況によりタイムリーに優秀な人材が獲得できない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
④ 情報セキュリティについて
当社グループは、事業活動を行う上で多種多様の情報を取り扱っております。このような状況下、予期できないシステム障害や不正アクセス等により、情報の漏洩・改ざん・消失等が発生し、社会的信用の失墜や事業活動の広範囲に制約を受けることで、当社グループの財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があります。
上記のリスクに対応するため、情報資産を保護し、情報セキュリティに関する法令等を遵守するため情報セキュリティポリシーを定め、営業会計部を中心にセキュリティ研修の実施などの情報セキュリティ対策を実施しております。社員のSNS使用に関しては、ソーシャルメディアガイドラインを明文化し、周知徹底しています。また、在宅勤務などのテレワークの増加に伴い、これに対応した情報取り扱い方法の規則化及びセキュアなネットワーク環境の整備を行っております。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆さまに対する適切な利益還元を重要な経営課題の一つと位置付けております。剰余金の配当につきましては、将来の成長に向けた事業展開と経営基盤強化のために必要な内部留保を確保しつつ、配当性向の向上に取り組むことを基本方針としております。当社では、昨年度に策定した長期ビジョンにおいて、「乳製品専門商社」から「複合型食品企業」への成長を図ることとしております。そのための重点施策のひとつとして、アジアのチーズ製造販売事業の中核となるシンガポール新工場の建設を進めておりますが、これまでの事業成長を通じて財務基盤も相応に強化されてきたことから、配当性向向上への取り組みを推進すべく、2024年11月期の1株当たり配当金は、年額62円00銭(うち、中間配当は31円00銭)への増配を予定しております。
当期の年間配当は、先に実施しました中間配当金24円を含め、前期から8円増配し、1株につき48円となります。
なお、当社は中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。
また、当社が締結しているシンジケートローン契約には、各年度の決算期の末日において、連結貸借対照表における純資産の部の金額を、当該決算期の直前の決算期の末日または2022年11月に終了する決算期の末日における当社連結貸借対照表における純資産の部の金額のいずれか大きい方の75%の金額以上に維持すること、各年度の決算期における経常損益が連結損益計算書において損失を計上しないこと、及び各年度の決算期の末日における当社連結貸借対照表における有利子負債の金額を決算期の末日における当社連結貸借対照表における純資産の部の金額で除した数値を、0以上5以下に維持するという財務制限条項が付されております。(契約ごとに条項は異なりますが、主なものを記載しております。)