2025年2月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 本書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重大な影響を及ぼす可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。

 

(1)経済情勢について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの収益の大部分は、現時点で国内のメーカーへの役務の提供に依存していることから、当社グループのビジネスは、国内メーカーを取り巻く経済状況により影響を受ける可能性があります。国内メーカーの停滞、技術への投資の大幅な減少、又はその他の市場環境の悪化は当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループの技術力や課題解決力を向上させることで、特定の業界や取引先に過度に依存しない体制を構築していく方針であります。

 

(2)技術革新について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループが手掛けるテクノロジー分野においては、技術革新や顧客ニーズの変化の速度が非常に早く、極めて激しい開発技術競争や販売競争が行われております。当社グループが予期しない技術革新や顧客ニーズの急激な変化への対応が遅れた場合には、当社グループの競争力が低下し、当社グループの業績に大きな影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、常に最新の技術動向や市場動向を分析し、新技術や製品の研究開発に努め、製品サービスの競争力向上に取り組むことで、技術や顧客ニーズの変化に対応できるよう努めてまいります。

 

(3)他社との競合について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは製品開発プロセスにおける設計開発領域に高い専門性を有し、デジタル技術を活用して設計開発プロセスそのものを企画するとともに、デジタルツールの選定や実装、運用定着までを担うワンストップサービスの提供に強みを有しております。今後の事業展開を通じて更なる競争優位性を構築していく予定ですが、当社グループの事業領域において、競合他社が存在している他、今後新たな事業者が参入してくる可能性もあります。当社グループを上回る技術力や資金力、その他の経営リソースを有した競合他社が出現した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4)人材の確保と育成について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは設計開発分野における一気通貫のサービス提供を行っており、当該サービス領域に精通した経験豊富で有能な人材の確保と育成が重要な経営課題になります。当社グループが必要とする人材の確保が計画どおりに進まずに事業上の制約要因になる場合には、当社グループの事業展開及び業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、新卒採用に加え、専門技術や知識を有する優秀な人材の中途採用に努めるとともに、教育制度の充実、人事評価制度の見直し、労働環境の整備など、従業員の働きがい・働きやすさを向上させる取り組みを強化していく方針であります。

 

(5)請負契約に関するリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 ソリューション事業の一部においては、請負契約によって受託することがあり、納期までに顧客の要求に沿ったソリューションを完成・納品する完成責任を負っております。ソリューションへの要求が一層高度化かつ複雑化すると共に、短工期の完成・納品が求められる中、契約当初の納期及び作業工数見積もりどおりにプロジェクトを完遂できず、顧客からの損害賠償請求、当社グループの信用失墜等の事態を招いた場合には、当社グループの事業展開及び業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、契約前にプロジェクトのリスクを洗い出し、適切な進捗管理を行うことでトラブルや損失発生の抑止に努めてまいります。

 

(6)知的財産権について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループでは知的財産権の経営資源としての重要性を認識の上、リスク管理上も留意すべき領域であると捉え、事業活動を行っております。当社グループによる第三者の知的財産権の侵害リスクについては、顧問弁護士及び弁理士事務所等と連携し、調査可能な事前の調査を行っておりますが、第三者の知的財産権の完全な把握は困難であり、当社グループが認識することなく他社の特許等を侵害してしまう可能性を完全に否定することは出来ません。万が一、これらの事象が発生した場合、ロイヤリティの支払いや損害賠償請求等により、当社グループの事業、業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

(7)のれん・固定資産の減損に関するリスクについて(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、当連結会計年度末時点で、コーポレートストラクチャーの再構築によって生じたのれん4,964百万円を連結財政状態計算書に計上している他、その他の有形固定資産・無形資産も計上しております。今後これらの固定資産に係る事業の収益性が低下する場合、当該固定資産の帳簿価額と回収可能価額との差を損失とする減損処理により、当社グループ全体の業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループが認識しているのれんは、単一セグメントを単一の資金生成単位としてすべて配分されており、毎期減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しています。また、その他の有形固定資産・無形資産については、減損の兆候の有無を確認し、有るものに関して減損テストを実施し、回収可能価額が帳簿価額を上回っていることを確認しています。

 

(8)情報管理について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは提供するサービス上、顧客側で保有している未公表の製品開発情報や技術情報等の機密情報等に触れる機会があります。情報の取り扱いについては規程及びルールの整備と的確な運用を義務づけるとともに、役職員向けの情報管理に係る教育や研修を定期的に実施しています。

 しかしながら、不正アクセスやハッキング等の第三者からのサイバー攻撃によるシステム障害、人的オペレーションのミスによる情報漏洩等、その他予期せぬ要因等が生じた場合、取引先からの契約の解除や損害賠償の請求、当社や当社のサービスに対する信頼性の低下等により、当社の事業及び経営成績に影響を与える可能性があります。

 

(9)特定の販売先への依存が高いことについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループの最近2連結会計年度における販売実績のうち、10%を超える販売先は、以下のとおりであります。

 

相手先

第4期連結会計年度

(自 2023年3月1日

至 2024年2月29日)

第5期連結会計年度

(自 2024年3月1日

至 2025年2月28日)

金額(百万円)

割合(%)

金額(百万円)

割合(%)

本田技研工業グループ

1,403

27.4

2,056

36.4

日立Astemo株式会社

727

14.2

787

13.9

 (注)本田技研工業グループの販売実績は、本田技研工業株式会社及び株式会社本田技術研究所への販売実績を合計したものであります。

 

 当社グループでは、これらの主要顧客との取引を維持・継続するために、日常の業務を通じて主要顧客との事業上の連携関係を強化することに加えて、主要顧客以外の顧客や新規顧客の開拓を進めることで、顧客基盤のより一層の拡大に努めております。しかしながら、何らかの理由により主要顧客との取引が終了あるいは大幅に縮小した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)法的規制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、製品開発プロセスの上流工程に特化した各種サービスを提供しており、その一部は労働者派遣法に基づく形でコンサルタントやエンジニア等の派遣を行っております。このため、労働者派遣法、「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準」(昭和61年当同省告示第37号)、その他の関連法令の規定に従い、労働者派遣業務の許可を取得しております。法令に抵触した場合には、労働者派遣事業の許可の取消、事業停止の処分等を受けるおそれがあります。本書提出日現在において、本許可の有効期限は2029年5月31日であり、許認可取消事由に該当する事実はありませんが、将来何らかの理由により登録の拒否、更新できない事由の発生または登録の取消があった場合、当社グループの事業活動に重大な支障をきたし、当社グループ全体の業績及び財政状態に重大な影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、法令遵守体制の強化や社内教育などを継続して行っていく方針であります。また、法令改正の動向などの情報収集に努め、適時に対応することで、リスクの軽減を図ってまいります。

 

 

(11)内部統制について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:大)

 当社グループは、今後の事業運営及び事業拡大に対応するため、当社グループの内部管理体制について一層の充実を図る必要があると認識しております。事業規模に適した内部管理体制の構築に遅れが生じた場合、当社グループの事業、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 また、当社グループは法令に基づき財務報告の適正性確保のために内部統制システムを構築し運用していますが、当社グループの財務報告に重大な欠陥が発見される可能性は否定できず、また、将来にわたって常に有効な内部統制システムを構築及び運用できる保証はありません。

 更に、内部統制システムには本質的に内在する固有の限界があるため、今後、当社グループの財務報告に係る内部統制システムが有効に機能しなかった場合や財務報告に係る内部統制システムに重大な不備が発生した場合には、当社グループの財務報告の信頼性に影響が及ぶ可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、専門人材の採用や育成により、内部管理に係る組織体制をより強固なものにするとともに、当社の事業や組織の特性に合わせた内部統制システムの運用レベルを向上させていく方針であります。

 

(12)事業投資について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループは、今後の事業拡大のために、事業会社への出資や子会社の設立、他社とのアライアンス、M&A等の投資を実施する可能性があります。投資の実施においては、当社グループの事業とのシナジーや収益性・投資効率、投資金額やその回収可能性を含めた総合的なリスクを勘案の上、判断を行う予定です。

 しかしながら、投資判断の前提条件の変更等により、当初の目論見通りに投資回収や事業シナジーの創出が実現しなかった場合には、当社グループ全体の業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 

(13)特定人物への依存について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社の代表取締役である中山岳人は、当社の創業以来、当社グループの経営方針及び事業戦略を決定するとともに、既存ビジネスにおける営業活動、新規ビジネスの開拓およびビジネスモデルの構築から事業化に至るまでのプロセスにおいて重要な役割を果たしております。当社グループは、権限の委譲や人材の育成、取締役会や経営会議等において役員及び幹部従業員の情報共有を図ることで、同氏に過度に依存しない経営体制の構築を進めております。

 しかしながら、今後において、何らかの理由により同氏の当社グループにおける業務遂行の継続が困難となった場合、当社グループ全体の業績及び財政状態に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)大株主について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社は、国内の独立系のジャフコ グループ株式会社が投資助言を行うファンドから、純投資を目的とした出資を受けており、2025年5月2日時点において、当社の発行済株式数の45.32%を当該ファンドが保有しております。

 当該ファンドの当社株式の保有・処分方針によっては、当社株式の流動性及び株価形成に影響を及ぼす可能性があります。加えて、当該ファンドが相当数の当社株式を保有する場合、当社の役員の選解任、他社との合併等の組織再編、減資、定款の変更等の当社の株主総会決議の結果に重要な影響を及ぼす可能性がありますが、その程度や当該リスクが顕在化する可能性、時期については現時点で認識しておりません。

 また、当社は同社より、当社株式について中長期的には売却等によって所有比率を低下させる方針であり、当社株式の処分時期や手法については未定であるものの、市場価格への影響を極力抑えた手法で対応する旨を聴取しております。

 

(15)自然災害・感染症等のリスクについて(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループには様々な領域の技術者が所属し、メーカーに対して様々なソリューションやサービスを提供しております。当社グループの拠点所在地や顧客企業の設計開発現場において、通信・交通機関等の社会インフラや、当社グループの事業拠点・従業員等に被害が生じた場合、業務の全部または一部が停止し、当社グループの事業展開及び業績に一定の影響を及ぼす可能性があります。

 これらのリスクに対応するため、当社グループでは定期的なデータのバックアップ、システム稼働状況の監視等により、自然災害等による事業への影響を最小化するよう努めてまいります。

 

 

(16)財務資本に関するリスク(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:中)

 当社グループはLBOの実施に関連して、多額の借入を行いました。このため、当連結会計年度末時点における借入金の残高は2,777百万円であり、IFRSに基づく資本合計額に占める割合は75.94%となっております。

 LBOローンは2023年9月をもって借換えを実施し、現時点の借入には財務制限条項が付されていない等、一般のコーポレート・ローンと同水準に借入条件は改善しておりますが、今後の金融市場等の動向により、金利が上昇局面となった場合、当社グループの業績及び財政状況に影響を及ぼす可能性があります。

 

(17)配当政策について(顕在化の可能性:中、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループは、株主に対する利益還元を重要な経営課題と認識しており、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を勘案し、利益還元政策を決定していく方針でありますが、現在のところは配当を実施しておらず、今後の配当実施の可能性及びその実施時期等については未定であります。

 現時点では、当社グループの事業は成長過程にあり、内部留保の充実及び事業拡大のための投資、財務基盤の強化を行うことが、株主に対する利益還元に繋がると考えております。

 

(18)新株予約権の行使による株式価値の希薄化について(顕在化の可能性:高、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 当社グループは、業績向上に対する意欲向上を目的として、会社法の規定に基づく新株予約権を当社グループの役職員等に付与しております。2025年4月末時点における新株予約権の目的となる株式数は369,860株であり、当社発行済株式総数の7,779,400株に対する潜在株式比率は4.8%に相当しております。これらの新株予約権の行使が行われた場合には、当社の株式価値が希薄化し、株価形成に影響を与える可能性があります。

 

(19)資金使途について(顕在化の可能性:低、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:小)

 株式上場時における公募増資による調達資金の使途については、今後の事業拡大に向けた人材の採用に関連する費用、ソリューション事業及びデジタルツイン事業強化のための人件費、借入金の返済等に充当する予定です。

 しかしながら、急速に変化する経営環境に柔軟に対応していくため、現時点の資金使途計画以外の使途へ充当する可能性があります。また、当初の計画に沿って資金を使用したとしても、想定どおりの投資効果を上げられない可能性があります。

 今後、資金使途を変更する場合には、適時適切に情報開示を行ってまいります。また、投資効果については継続的に測定・改善を行い、想定通りの成果を上げられるよう取り組んでまいります。

 

(20)訴訟等について(顕在化の可能性:不明、顕在化の時期:特定時期なし、影響度:不明)

 当社グループは、顧客(販売先、仕入先等)、競合他社、従業員等との関係において、訴訟その他の法的手続きを提起される、あるいは提起するリスクがあります。本書提出日現在において、当社グループの経営に重大な影響を及ぼす訴訟を提起されている、あるいは提起している事実はありませんが、今後、何らかの事由により当社グループが訴訟を提起される、あるいは提起する可能性があり、訴訟等の発生により、当社グループの社会的信用力の低下や、多額の損害賠償・和解金の支払いや受け取り等により、業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、いまだ成長過程にある企業であり、更なる財務体質の強化、競争力の確保を経営上の主要課題の一つとして位置づけております。そのため現時点においては、内部留保の充実を図り、収益力強化、事業規模拡大のための投資に充当することが、株主に対する安定的かつ継続的な利益還元に繋がると考えており、当事業年度を含め、配当は実施しておりません。

 将来的には、各事業年度の財政状況、経営成績等を勘案しながら株主への利益還元を実施していく方針ですが、現時点では配当実施の可能性及びその時期等については未定であります。

 内部留保資金につきましては、人的資本への投資を含めた将来の事業成長に向けた投資や財務体質の強化のための投資に充当していく方針であります。

 当社の剰余金の配当は、中間配当と期末配当の年2回を基本方針としており、剰余金の配当の決定機関は取締役会であります。また、当社は、剰余金の配当等を会社法第459条第1項各項に定める事項については、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる旨を定款に定めております。