リスク
3 【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。当社は2023年7月にリスク管理委員会を設置し、気候変動や災害リスク、地政学的リスクを含め、当社事業を取り巻く各種リスクの把握、発生可能性や発生した場合の当社事業への影響などを総合的に議論しております。
なお、下記事項のうち、将来に関する事項は、有価証券報告書提出日現在において判断したものであります。
(1) 自然災害や事故、新型感染症等に係るリスク
当社グループは自然災害や事故等から受ける生産活動への影響を可能な限り限定化し早期復旧を図るための対策・手順として危機管理マニュアルを作成するほか、従業員の安否確認等を適宜実施するなど事業継続のための体制の整備を進めております。しかし台風、豪雨、地震、津波又は火山活動等の自然災害や、事故、火災、テロ、ストライキ、騒乱等により、生産活動の停止、設備の損壊や給水・電力供給の制限等の不測の事態が発生する可能性があります。また、取引先においても同様に生産活動に支障をきたす可能性があり、いずれも長期間におよんだ場合には当社グループの業績等に影響を与える可能性があります。
また、新型コロナウイルス感染症は5類に移行していますが、引き続き事業への影響を最小限とすべく状況を注視しております。今後変異ウイルスや新型感染症の拡大による影響により、受注の先送りや取消しが多数発生した場合、当社グループの従業員に感染者が多数発生し、長期間の生産活動停止に陥った場合、仕入先や外注先の生産活動や物流等、サプライチェーンに発生した混乱や分断が長期間におよんだ場合には、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(2) 半導体・FPD関連業界の需要変動に関わるリスク
当社グループの主力である溶射加工(単体)の中で、2001年3月期以降、半導体・FPD製造装置分野の売上高が大幅に増加し、2024年3月期では連結ベースの総売上高に占める割合は41.8%となっております。
このため、半導体・FPD関連業界の市況、関連装置の需要動向が悪化した場合や、特に海外などで競合企業との価格競争が本格化した場合には、装置メーカー等からの受注減や値下げ要請により当社グループの業績に影響を与える可能性があります。また、半導体・FPD製造装置が溶射を必要としない構造に変更された場合にも、当社グループの業績に大きな影響を与える可能性があります。
これらのリスクに対応するため、既に納入された装置部品へのメンテナンス需要や非溶射部品の溶射化等の開拓、次世代装置の適用皮膜の開発を進め、半導体装置メーカー向けの受注変動による影響を最小限に止めるよう努力してまいる考えであります。
(3) 顧客による表面改質加工の内製化リスク及び顧客工場の海外等の移転リスク
溶射加工は、当社のような専業者だけでなく、材料メーカーやメタリコン業者が手がけているほか、大手機械メーカー等が製造プロセスの一部として自社内で溶射加工を行っている場合もあります。これらの大手機械メーカー等は、生産能力的にオーバーフローした場合や、自社で技術対応できない場合、自社に当該溶射装置を保有しない場合などに当社をはじめとする溶射加工業者に委託しておりますが、これらの大手機械メーカー等が全面的に溶射加工を内製化したり、内製化の比率を高めたりした場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
また、当社グループは顧客から被加工品を受け入れて、当該被加工品に表面改質を行なっていることから、主要顧客の近隣に加工工場を設けるなど、顧客密着型の事業展開を行なっておりますが、主要顧客が生産拠点を海外等の遠方に移転させた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(注) メタリコン業者とは、構造物等の防食目的で、亜鉛、アルミニウム及びそれらの合金溶射による加工を行なう企業をいいます。
(4) 特定の取引先(東京エレクトロン株式会社グループ)への依存リスク
当社グループの東京エレクトロン株式会社グループへの販売依存度(総売上高に占める同社グループへの売上高の割合)は高水準であるため(2024年3月期については27.0%)、同社グループの半導体・FPD製造装置等の生産動向や同社グループからの受注動向が、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(5) 製造物責任に係るリスク
当社グループは、多様な業界に顧客を有し、溶射加工を中心とした表面改質加工を提供しており、それぞれの製品に合わせた品質管理体制のもと、製品を出荷しております。製品の不具合を防止するため、品質保証に関わる人員と組織の充実を図るとともに、新たな品質管理手法を取り入れるなど体制の強化に努めております。
また、当社の品質不具合を原因として製造物責任賠償を請求されるような万一の事態に備えるため生産物賠償責任保険等にも加入し、こうした事態の発生にともなう費用負担に対応しております。
しかし品質に対するクレームの内容や不具合の規模によっては製造業としての当社グループの評価の低下につながり、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(6) 知的財産権に係るリスク
当社は、新皮膜開発を通じて多くの新技術やノウハウを生み出しており、これらの知的財産を特許出願し、権利保護と経営資源としての活用を図っておりますが、特定の地域では十分な保護が得られない可能性や知的財産権の対象が模倣される可能性があり、知的財産権が侵害されるリスクがあります。また、当社グループが認識しない第三者の特許が既に成立しており、当該第三者より知的財産権を侵害しているとの事由により、損害賠償等の訴えを起こされた場合、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(7) 情報セキュリティに係るリスク
当社グループは、半導体・FPD関連をはじめとして、顧客から預かった部品図面など重要技術情報を多数保有しております。これらを適切に管理するため、情報セキュリティに係る規程・細則の整備のみならず、情報技術の進歩や社会情勢の変化に応じた情報セキュリティルールの強化、適切な技術的対策のための設備投資、社内管理体制の整備や社員教育に努めております。しかし不正アクセスによる重大なシステム障害が発生した場合や、不測の事態により情報漏洩が明らかとなった場合等には、対応のための多額の費用負担や顧客からの信用の失墜等により、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
(8)国際的な事業活動に係るリスク
当社グループは、中国・台湾などのアジアや米国にて海外事業を展開しております。そのため、事業展開している各国の文化、宗教、商慣習、社会資本の整備状況等の影響を受けるとともに、経済情勢、政治情勢及び治安状態の悪化や急激な為替変動が、当社グループの財政状態及び業績に影響を与える可能性があります。
また、主要な顧客の中には国際的に広く事業展開している企業もあるため、国際政治情勢の変化により、懲罰的な関税措置を含む輸出入規制や、商品販売に係る許認可等の一方的な規則変更などにより、当該顧客が深刻な事業活動の制限を受ける可能性があります。この場合、間接的に当社グループの業績に影響を与える可能性があります。
(9)気候関連のリスク
当社は「人と自然の豊かな未来に貢献する」ことをビジョンに掲げ、気候変動対応を経営における重要課題の一つと位置づけています。温室効果ガス排出削減をはじめとする様々なサステナビリティ課題の対応が遅れた場合には、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。その対応策として、情報収集を図るとともに、「第2 事業の状況、2 サステナビリティに関する考え方及び取組(2)」に記載の戦略に基づき、気候変動による環境問題の深刻化という社会的課題に対する取り組みを進めてまいります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主に対する利益還元を経営の重要政策と位置づけており、収益力の向上を通じて企業体質の強化を図りながら、安定的な配当を継続することを基本方針としております。この基本方針のもと、連結配当性向50%程度及び純資産配当率(DOE)5%以上を目標としています。また、自己株式の取得につきましても、株主に対する有効な利益還元のひとつと認識しており、事業環境や財務状況などを考慮しつつ機動的に実施してまいります。
また、当社の剰余金の配当は、中間配当及び期末配当の年2回を基本としており、これらの決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
当事業年度の配当につきましては、1株当たり53円(うち中間配当25.0円)といたしました。この結果、当事業年度の連結配当性向は50.2%、純資産配当率(DOE)は5.8%となりました。
内部留保資金につきましては、事業の発展・拡大を通じた中長期的な株式価値の向上に資するためにも、事業の成長、企業体質の強化に必要不可欠な研究開発や設備投資の原資として充当してまいります。
なお、当社は「毎年9月30日を基準日として、取締役会の決議をもって、株主又は登録株式質権者に対し、中間配当金として剰余金の配当を行うことができる」旨を定款に定めております。
(注) 基準日が当事業年度に属する剰余金の配当は、以下のとおりであります。