2025年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

本書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。当社グループは、これらリスクの発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応について最大限の努力をする所存であります。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、事業等のリスクはこれらに限定されるものではありません。

 

(1) 事業環境に関するリスク

① 自然災害及び国際情勢等について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、地震、台風、洪水等の自然災害や、感染症の流行、紛争、国際的な政治・経済の不安定要因に対応するため、リスクマネジメント体制を強化し、顧客や仕入先の分散、事業拠点の分散、システムインフラの整備、財務健全性の確保などのリスクに対応する施策を実施しておりますが、これらの事象により観光インフラや交通機関の停止、渡航制限、旅行需要の減退が発生する可能性があります。また、海外に子会社を有するため、各国の政治・経済情勢の変化や現地法規制の改定によって事業活動が制限される可能性もあります。予測を超える大規模な事象が発生した場合には、当社グループ全体の業績や事業運営に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

 

② 人口動態について

(発生可能性:中、発生時期:長期、影響度:中)

当社グループは、日本企業との取引が多く、国内人口の減少や少子高齢化による影響を受けやすい状況にあります。この影響を軽減するため、新規取引先を開拓し取引企業数の拡大に努めており、現在は利用企業数も手配件数も増加しておりますが、国内の労働人口減少に伴い、企業の従業員数が減少することで、全体的な出張需要が縮小する可能性があります。その場合、当社グループの受注が減少し、業績や事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

 

③ 市場の動向について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:中)

当社グループは、法人顧客向けサービスを中心に提供しており、企業の購買行動や景気変動などの市場動向に対応し、競合他社に対するサービス競争力を維持するため、定期的に事業戦略を見直していますが、景気後退による出張需要の減少や、出張を代替するサービスの普及により、当社サービスへの需要が低下する可能性があります。その場合、受注の減少が生じ、当社グループの業績や事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

 

(2) 事業に関するリスク

① 競合について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、競合他社に対して顧客ニーズに応じたシステムソリューションの提供、クラウド出張手配システムのUI/UXの改善及び新機能の開発、24時間365日のサポートデスクの付帯、割安な手数料設定、専任オペレーターによるオフライン手配などによりサービスや顧客対応の差別化に努めておりますが、既存の旅行会社との競争に加えて、新興企業が革新的なビジネスモデルで市場に参入する可能性や、航空会社等のサプライヤーが直販を強化する可能性、技術の進化が急速に進む中で既存のシステムが陳腐化する可能性もあります。競争が当社の想定以上に激化した場合や技術革新に遅れを取った場合、当社グループの競争力が低下し、業績や事業展開に重大な影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

② 取引先サプライヤーについて

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、旅行関連商品やサービスの提供において、多様なサプライヤーの確保や関係性の強化に努めておりますが、結果として特定のサプライヤーとの取引が多くなる場合があります。これらのサプライヤーに不測の事態が発生した場合や当社との取引条件が変更された場合、当社グループの業績や事業展開に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

 

③ 個人情報の漏洩について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、プライバシーマーク(JIS Q 15001)の認定を取得し顧客の個人情報を取り扱う業務において、個人情報保護マネジメントシステムを構築し、社内規程の整備、リスクアセスメント、全従業員への定期的な教育、内部監査、安全管理措置の実施などに努めておりますが、サイバー攻撃や従業員の不正行為、過失による個人情報の漏洩が発生する可能性があります。これにより、社会的信用が失墜し、法的責任や罰則が生じ、当社グループの業績や事業運営に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

 

④ システム障害について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、BTMサービスにおいてご契約企業に出張手配システムをご利用いただくため、システムの安定稼働に向けたセキュリティーおよび冗長化等の対策に努めておりますが、システム障害や通信ネットワークの不具合が発生する可能性があります。特に、ハッキングやウイルス感染、自然災害等によるシステム停止が発生した場合、サービス提供に支障をきたす可能性があり、長期化した場合には受注が停止し、当社グループの業績や業務運営に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

 

⑤ 公募入札による取引について

(発生可能性:高、発生時期:不特定、影響度:中)

当社グループは、官庁および在日米軍との取引において安定した契約を維持するため、対応品質の向上に努めておりますが、これらの取引は公募入札を通じて決定されるため、結果によっては契約が終了または大幅に縮小する可能性があります。また、予算削減や方針変更により公募条件が見直される場合、当社グループの業績や事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

 

⑥ 売掛金の比率について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:中)

当社グループは、法人企業との取引が多いため、業界の商慣習や清算業務の効率化を目的として、旅行代金を売掛方式で清算するケースが一般的です。売掛金には顧客企業に請求する旅行代金全体を総額計上する一方で、売上高は「収益認識に関する会計基準」に基づき、企画旅行では総額計上、企画旅行以外の手配では純額計上を適用しています。2025年3月期の売上高に占める純額計上の割合は68.7%、売上総利益に占める純額計上の売上高から構成される割合は91.6%となっております。なお、売上高の計上については、BTMサービス、官庁・公務サービス、海外サービスでは純額計上の割合が大きく、個人サービス、米軍サービスでは総額計上の割合が大きくなっております。

このため、2025年3月期では、売上高2,694,038千円に対し、売掛金3,137,665千円を計上しており、総資産に占める売掛金の割合は64.2%になります。こうした状況を踏まえ、当社では売掛金の管理強化や与信管理に努めておりますが、取引先の業績悪化や破産等により売掛金の回収が困難になる可能性があり、万一、回収不能が生じた場合には、当社グループのキャッシュ・フローや業績に影響を及ぼすリスクがあります。

 

 

⑦ 同一商号による混同について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:中)

当社グループは、「IACEトラベル」の商号で日本、カナダ、メキシコにて事業を展開しておりますが、当社グループとは別にWorld Joint Corp社も「IACEトラベル」の名称を用いてアメリカにて事業をおこなっております。同社とは創業者である石黒一光が創業メンバーとして設立に関与したほか、2007年から2017年まで当社子会社として資本関係を有していた時期もありますが、現在は人的にも資本的にもそれぞれ独立した法人として事業をおこなっております。当社グループがアメリカに進出し事業を展開することに制限はありませんが、現時点では日本国内でのシェア拡大に注力することを優先事項としており、アメリカ市場への進出は計画しておりません。なお、同社とは同社がアメリカ以外の地域で事業を行う場合には、当社の承諾を得た場合を除き、「IACEトラベル」(英語などの表記方法に限らず当該呼称を用いるものを含む)の名称を使用しないことで合意しております。当社では両社の混同を避ける目的から、適切な情報発信、開示体制の構築、定期的なWEBモニタリングを実施し誤解を招く記載に対しては削除依頼をおこなっておりますが、万が一、同社にてブランドイメージを毀損する事案が発生し、当社グループと混同されその情報が拡散した場合には、当社グループの信用やブランドイメージが損なわれ、業績に影響を及ぼすリスクがあります。

 

(3) 組織体制に関するリスク

① 人材確保・育成について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:中)

当社グループは、持続的な成長のために、採用活動や育成の強化に努めておりますが、労働市場における人材不足や競争の激化により、当社グループが求めるスキルや経験を持つ人材を確保できないリスクや、人材が流出した場合に当社グループの事業運営や将来の成長戦略に影響を及ぼすリスクがあります。

 

(4) 法規制に関するリスク

① 訴訟等について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、法令および契約の遵守を目的としてコンプライアンス規程を定め、社内教育や体制の強化に努めておりますが、事業活動の中で顧客、取引先、その他の第三者から提供するサービスや品質に関するクレームが発生する可能性があり、これが予期せぬトラブルや訴訟に発展するリスクがあります。これらのクレームや訴訟の内容および結果によっては、当社グループの業績や事業展開に大きな影響を及ぼすリスクがあります。なお、現時点で第三者との間で重要な訴訟・クレーム等はありません。

 

② 認可・法規制等について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:高)

当社グループは、旅行業法に基づき観光庁に登録し、5年ごとの更新が義務付けられています。現時点では法令に違反する事実はないと認識しておりますが、万一、同法に基づく登録取消処分を受けた場合、旅行業を営むことができなくなり、当社グループの事業および業績に大きな影響を与える可能性があります。また、旅行業法以外にも、景品表示法、消費者契約法等の法規制のもとで事業を運営しており、また、1995年8月にIATA(国際航空運送協会)から公認旅客代理店として認可を受け、自社で国際航空券の発券業務をおこなっています。これまでコンプライアンス体制を整備し適正な運用に努めておりますが、今後新たな法規制の導入や既存法規制の改廃、解釈の変更が行われた場合、または法令違反が発生し認可が取り消された場合には、当社グループの業績や事業展開に大きな影響を及ぼすリスクがあります。

当社の旅行業に関する登録内容は次のとおりです。

 

登録区分

登録番号

有効期間

登録行政庁

取消事由

第1種旅行業

第883号

2028年3月9日

観光庁

同法第19条

 

 

 

(5) 会計に関するリスク

① 為替変動について

(発生可能性:中、発生時期:不特定、影響度:低)

当社グループは、総仕入額の1%未満ではありますが外貨建の取引に伴い、外貨建の収益・費用および資産・負債が発生しております。これに対して為替レートの変動による影響を軽減するために為替予約等のリスクヘッジに努めておりますが、急激な為替変動があった場合には、当社グループの財政状態および業績に影響を及ぼすリスクがあります。また、在外連結子会社の財務諸表を邦貨換算して連結財務諸表を作成しているため、為替レートが変動した場合にも、当社グループの財政状態および業績に影響を及ぼすリスクがあります。

 

② 配当政策について

(発生可能性:低、発生時期:不特定、影響度:低)

当社グループは、株主への利益還元を重視し、安定した配当政策を目指しておりますが、業績や財務状況によっては、配当額の減少や一時停止が発生する可能性があります。特に、業績が予想を大きく下回った場合、当初の配当計画を見直すことが求められる可能性があります。また、成長分野への投資や設備投資を優先することで、株主還元が減少する可能性もあり、環境の変化により配当政策に影響を及ぼすリスクがあります。

 

③ 固定資産等の減損について

(発生可能性:低、発生時期:不特定、影響度:低)

当社グループは、事業運営のためにシステムソフトウェア等の固定資産を保有しています。これらの固定資産については、四半期ごとに減損の兆候を確認し、減損損失の認識および測定をおこなっておりますが、事業計画や市場環境の変化によって、見積もりの前提条件や仮定に変更が生じた場合には、減損処理が必要となる可能性があります。現時点では減損リスクを認識しているものはありませんが、特に、当社グループの固定資産の時価が著しく下落した場合や、事業の収益性が悪化した場合には、減損会計を適用することにより減損損失が発生し、当社グループの業績および今後の事業展開に影響を及ぼすリスクがあります。

 

④ 有利子負債について

(発生可能性:低、発生時期:不特定、影響度:低)

当社グループは、必要に応じて借入を実施し、これに伴う金利負担に対して財務体質の強化を図り、自己資本と負債のバランスを踏まえた調達を方針としておりますが、金利の上昇や負債の増加により利払い負担が増加した場合、または借入条件や返済条件が厳格化された場合、当社グループのキャッシュ・フローや業績に影響を及ぼすリスクがあります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を経営の重要課題の一つとして認識しております。配当につきましては、将来の事業展開と財務体質の強化に留意しつつ、安定的かつ継続的な利益還元を基本として、配当性向を25%~30%を目安に実施することを方針としております。また、当社の剰余金の配当は、期末の年1回において行うことを基本としております。なお、会社法第454条第5項に規定する中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。配当の決定機関は、期末配当は株主総会、中間配当は取締役会であります。

一方で、当事業年度においては、経営基盤の安定化に向けた財務体質強化及び事業の継続的な発展を目指すべく、配当を実施しておりません。また、内部留保資金につきましては、今後の事業拡大のための運転資金や設備投資に充当していく予定です。