事業内容
セグメント情報
※セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
※セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
-
売上
-
利益
-
利益率
最新年度
| セグメント名 | 売上 (百万円) |
売上構成比率 (%) |
利益 (百万円) |
利益構成比率 (%) |
利益率 (%) |
|---|---|---|---|---|---|
| オプティカル事業 | 1,234 | 84.8 | 527 | 111.0 | 42.7 |
| ライフサイエンス・機器開発事業 | 221 | 15.2 | -52 | -11.0 | -23.6 |
事業内容
3【事業の内容】
当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社ジェイテックコーポレーション)、及び子会社1社(電子科学株式会社)により構成しております。
当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」を経営理念とし、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」という経営方針のもと、産学連携を中心に技術開発、製品開発を推進しております。
当社グループの事業内容は次のとおりであり、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。
(1) オプティカル事業
当事業では、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」<注1>やX線自由電子レーザー施設「SACLA」<注2>のような国内外の先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設等で使われる反射表面の形状精度が1ナノメートル(10億分の1メートル、以下nmと表記。)以下の超高精度の表面形状をした集光ミラー、高調波カットミラーや回折格子基板等各種X線ミラーをユーザーに合わせて設計し、カスタムメイドで製造・販売しております。
本X線ミラーは、2005年に大阪大学と理化学研究所が共同開発した世界で初めて硬X線領域で理論限界まで集光することに成功したX線ナノ集光ミラーを製品化したもので、大阪大学の独自のナノ加工、ナノ計測技術により製造し“OsakaMirror”と商標登録し、2006年より販売を開始し、現在も世界の特に先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設の研究者から高い評価を得ております。顧客は主に国内外の国立研究機関や大学の研究者であり、毎年積極的に最先端の分析研究が提案され、当社ではそれに応えるべく各種X線光学系の開発を行ってまいりました。近年、これら施設は各国の多様な地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)において、コアな機関として位置づけられ、イノベーションを強力に推進しており、国内では第四世代の放射光施設 NanoTerasuの稼働が開始、海外では主に中国及び欧米において第4世代へのバージョンアップやあるいは新設計画が進む中、これまで以上に高度な科学分析の需要が拡大する傾向と相まって当社“OsakaMirror”の需要も増えており、今後も受注拡大が見込まれております。
当連結会計年度においては、当社のみが到達できる精度を有するX線ミラーの提供はもとより、新しい手法の光学システムの実証にも成果を得ることができました。また、特に半導体及び宇宙分野などの成長産業分野で用いられる光学部品を対象にした新しい加工・計測技術の研究開発を加速するため、国家プロジェクトへの参画や研究機関との共同研究を積極的に進めてまいりました。さらに、国内外の放射光施設における高精度ミラーの需要増加に対応するため、生産効率の向上活動を進め、一部の工程においては大きな改善の成果が得られております。今後は、当社の強みである精度、新規性をさらに強化する研究開発に取り組むとともに、生産効率の向上を促進することで、技術と生産力においても競合他社に対し優位性が保持できるよう努めてまいります。
〔事業系統図〕
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
図1.オプティカル事業系統図
なお、2025年6月期のオプティカル事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が36,569千円(3.0%)、企業が187,362千円(15.2%)、公的研究機関が1,010,199千円(81.8%)となっております。
(2) ライフサイエンス・機器開発事業
ライフサイエンス事業では、創業当初より創薬スクリーニングに関連する各種細胞培養操作の自動化の開発を手掛け、カスタム製品である各種の大型自動細胞培養装置「CellMeister®」を製造販売してまいりました。その後、独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとに再生医療分野に展開し、また2013年に日本で初めてiPS細胞に特化した低価格量産汎用型の自動細胞培養装置「CellPet®」の開発を行い、現在は後継機種「MakCell®」にバージョンアップし販売を推進しています。新型コロナウイルス感染症禍以降、その治療薬の探索や、働き方改革や労働時間短縮を理由に「MakCell®」を中心に自動化装置の引き合いが活発になっております。対象市場も製薬・創薬だけでなく食品・化粧品市場からの照会も増えつつあり、それらに向けた装置対応も進めてまいります。また、お客様の要求、仕様に応じた完全カスタムの全自動細胞培養システムについても市場が立ち上がりつつあるため、積極的に対応してまいります。一方、「CellPet®」につきましては、これまでに実績を上げてきた国内に加え、今後は海外展開を図り受注につなげてまいります。また、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構と共同開発を進めております「脳梗塞治療用の幹細胞分離機器」(AMED事業)は、一定の成果を得たので、今後は脳梗塞治療だけでなく認知症治療として一般病院・企業向けの医療機器としての製造・販売を目指してまいります。
機器開発事業では、2022年から大阪大学の独自加工技術をベースにした基材表面をナノレベル、原子レベルで加工する装置の実用化開発を積極的に進めてまいりました。この技術は半導体デバイスや電子部品の基材となる各種ウェハの表面仕上げ加工に主に活用されます。すでに複数台の販売実績を持つ水晶基板の平坦化加工技術(プラズマPVM)に加え、硬質で難加工材であるダイヤモンドの加工に適したPAP(プラズマ援用研磨法)、SAWデバイス用LT/LNウェハやパワーデバイス用GaNウェハの加工に適したCARE(触媒基準エッチング法)のプロセス確立と装置の実用化を進めています。特に、PAP(プラズマ援用研磨法)では開発用の装置を完成させ、顧客と一緒に実用化に向けたテスト加工や共同研究開発を進めており、複数の企業への納入も始めました。さらに昨年からは、立命館大学と共同でECMP(電気化学機械研磨法)の開発に着手しました。この技術は、パワーデバイス用基板として注目されているSiC基板の表面研磨装置としての実用化をまずは目指しています。
各種培養装置、ナノレベル・原子レベルの加工装置のほかオプティカル事業に関連する各種集光装置やその他カスタム装置の開発・製造も手掛けております。
〔事業系統図〕
以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。
図2.ライフサイエンス・機器開発事業系統図
なお、2025年6月期のライフサイエンス・機器開発事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が8,495千円(3.9%)、企業が184,752千円(83.7%)、公的研究機関が27,395千円(12.4%)となっております。
(3) その他事業
その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社は、昇温脱離分析装置(TDS)のメーカーで、本装置「TDS-1200Ⅱ」は、超高真空環境に設置した試料を独自の加熱方式(赤外線)により試料から微量に放出される成分(水素、酸素、二酸化炭素、水など)を四重極質量分析装置(QMS)で、独自の分析ソフトウェアにより高感度でリアルタイムに検出する装置です。
現在、半導体、液晶、カラーフィルター業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理に用いられており、高い評価を得ております。当連結会計年度では、主要取引先である韓国、台湾に加えて、営業活動を積極的に行うことによって複数の日本企業からの受注を獲得することができました。
本装置は、その他鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等様々な産業分野においても適用できる可能性があり、また、最近は中国や米国からの引合いもあります。このような案件については、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを利用することにより、営業体制の強化、拡販を進めております。また、中長期の売上拡大を目指し、水素量に特化した昇温脱離水素分析装置「Cryo TDS-100H2」や現行の「TDS 1200Ⅱ」に自動サンプル機能を追加した「TDS 1200ⅡALS」の共同開発に成功しました。新製品を投入することで新規顧客の開拓を進め、収益力の拡大に努めてまいります。
なお、2025年6月期のその他事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が10,527千円(2.2%)、企業が458,670千円(97.4%)、公的研究機関が1,620千円(0.4%)となっております。
注1:大型放射光施設「SPring-8」(Super Photon ring-8 GeV)
「SPring-8」とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。「SPring-8」では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の基礎科学研究分野から、産業利用ニーズも高まりをみせ、化粧品、食料品、電池、タイヤ等身近な製品の開発も行われています。「SPring-8」の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来しています。
「SPring-8」は国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、1997年から放射光を大学、公的研究機関や企業等のユーザーに提供しています。課題申請などの手続きを行い、採択されれば、誰でも利用することができます。
「SPring-8」の施設者は理化学研究所であり、「SPring-8」の運転・維持管理、並びに利用促進業務を高輝度光科学研究センターが行っています(図3参照)。
注2:X線自由電子レーザー施設「SACLA」(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)
2006年3月に策定された第3期科学技術基本計画(2006年3月28日閣議決定)において国家基幹技術の一つとして選定されたX線自由電子レーザー施設として、2006年度から理化学研究所と「SPring-8」を運営する高輝度光科学研究センターが共同で施設の建設・整備を行い、2011年3月に完成、0.063nm(0.63Å(オングストローム:微小な長さを表すのに用いられる単位。1Å=0.1nm))の世界最短波長のX線レーザー生成に成功した施設であり、2012年3月7日より供用運転を開始しています(図3参照)。
図3 大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」
注3:次世代放射光施設 NanoTerasu
東北大学青葉山新キャンパスに共創の場として設けられた「サイエンスパーク」エリアに、新たに第4世代放射光施設が建設され、2024年4月に本格稼働が開始しました。(図4参照)
図4 建設中のNanoTerasu(ナノテラス):東北大学 ホームページより
業績
4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】
(1) 経営成績等の状況の概要
①財政状態及び経営成績の状況
当連結会計年度における世界経済は、継続的な物価の上昇や急激な為替変動に加えて、米国の政策動向、中国経済の低迷、中東やウクライナでの地域紛争などにより依然として景気への懸念事項が多く、先行き不透明な状況が続いております。
国内経済は、良好な企業業績を背景とした設備投資が引続き増加しており、賃上げによる実質賃金の改善によって個人消費も改善傾向にあり、堅調なインバウンド需要が加わって国内景気は緩やかな回復を続けております。
このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。
この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。
a. 財政状態
当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ120,608千円増加し、3,688,131千円となりました。
当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ41,858千円増加し、912,604千円となりました。
当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ78,750千円増加し、2,775,527千円となりました。
b. 経営成績
当連結会計年度における経営成績は、売上高1,925,592千円(前期比4.2%減)、営業利益113,823千円(前期比60.2%減)、経常利益102,017千円(前期比67.2%減)、親会社株主に帰属する当期純利益60,348千円(前期比69.8%減)となりました。
セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。
オプティカル事業は、売上高は1,234,131千円(前期比0.5%減)、セグメント利益は526,759千円(前期比11.5%減)となりました。
ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は220,642千円(前期比33.2%減)、セグメント損失は52,055千円(前期はセグメント損失25,659千円)となりました。
その他事業は、売上高は471,148千円(前期比5.2%増)、セグメント利益は41,111千円(前期比20.3%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ102,149千円増加し、当連結会計年度末には712,379千円となりました。
当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。
(営業活動によるキャッシュ・フロー)
当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は286,478千円(前連結会計年度は62,651千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の減少124,442千円、税金等調整前当期純利益101,389千円、契約負債の増加65,710千円及びのれん償却額42,382千円による収入があった一方で、棚卸資産の増加121,948千円による支出があったことによるものです。
(投資活動によるキャッシュ・フロー)
投資活動の結果使用した資金は104,294千円(前連結会計年度は160,706千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出103,659千円による資金減によるものであります。
(財務活動によるキャッシュ・フロー)
財務活動の結果使用した資金は79,911千円(前連結会計年度は75,526千円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出75,456千円による資金減によるものであります。
③生産、受注及び販売の実績
a. 生産実績
当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|
|
生産高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,460,902 |
120.8 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
136,657 |
42.4 |
|
その他事業 |
427,965 |
121.6 |
|
合計 |
2,025,525 |
107.5 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
b. 受注実績
当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|||
|
受注高(千円) |
前年同期比(%) |
受注残高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,902,520 |
186.9 |
1,320,567 |
202.5 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
228,802 |
103.1 |
38,939 |
126.5 |
|
その他事業 |
320,727 |
88.1 |
5,327 |
3.4 |
|
合計 |
2,452,050 |
152.9 |
1,364,834 |
162.8 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 金額は販売価格によっております。
c. 販売実績
当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。
|
セグメントの名称 |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
|
|
販売高(千円) |
前年同期比(%) |
|
|
オプティカル事業 |
1,234,131 |
99.5 |
|
ライフサイエンス・機器開発事業 |
220,642 |
68.5 |
|
その他事業 |
470,818 |
105.1 |
|
合計 |
1,925,592 |
95.8 |
(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。
2 最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。
|
相手先 |
前連結会計年度 (自 2023年7月1日 至 2024年6月30日) |
当連結会計年度 (自 2024年7月1日 至 2025年6月30日) |
||
|
金額(千円) |
割合(%) |
金額(千円) |
割合(%) |
|
|
国立研究開発法人理化学研究所 |
208,288 |
10.4 |
- |
- |
(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。
(2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容
経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。
①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
a. 財政状態
(資産)
当連結会計年度末における流動資産は1,939,634千円となり、前連結会計年度末に比べ123,905千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が102,149千円、仕掛品が98,171千円、原材料及び貯蔵品が35,795千円増加した一方で、売掛金が113,442千円減少したことによるものであります。固定資産は1,748,497千円となり、前連結会計年度末に比べ3,296千円減少いたしました。これは主に、のれんの償却が進んだことによって無形固定資産が44,396千円及び投資有価証券が3,081千円減少した一方、リース資産が44,550千円増加したことによるものであります。
この結果、総資産は3,688,131千円となり、前連結会計年度末に比べ120,608千円増加いたしました。
(負債)
当連結会計年度末における流動負債は493,038千円となり、前連結会計年度末に比べ79,852千円増加いたしました。これは主に、契約負債が65,710千円及びリース債務が10,692千円増加したことによるものであります。固定負債は419,566千円となり、前連結会計年度末に比べ37,993千円減少いたしました。これは主に、約定返済が進んだことにより長期借入金が75,456千円減少した一方、リース債務が38,313千円増加したことによるものであります。
この結果、負債合計は912,604千円となり、前連結会計年度末に比べ41,858千円増加いたしました。
(純資産)
当連結会計年度末における純資産合計は2,775,527千円となり、前連結会計年度末に比べ78,750千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を60,348千円計上したことによるものであります。
b. 経営成績
(売上高及び営業利益)
当連結会計年度における売上高は、1,925,592千円(前連結会計年度比4.2%減)となりました。これは主に、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーの売上が牽引するとともに、ライフサイエンス・機器開発事業及び子会社の電子科学株式会社の売上が寄与したことによります。この結果、売上総利益は1,178,776千円(前連結会計年度比5.9%減)となりました。また、販売費及び一般管理費は1,064,953千円(前連結会計年度比10.1%増)となり、当連結会計年度における営業利益は113,823千円(前連結会計年度比60.2%減)となりました。
(経常利益)
営業外収益では、役員報酬返納額や受取出向料等を計上しました。また、営業外費用では、為替差損や支払利息等を計上しました。これらの結果、当連結会計年度における経常利益は102,017千円(前連結会計年度比67.2%減)となりました。
(当期純利益)
当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は60,348千円(前連結会計年度比69.8%減)となりました。
c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容
(オプティカル事業)
当連結会計年度は、国内市場ではSPring-8、SACLA、NanoTerasu、アジア市場では中国のSHINE(上海)、HALF(合肥)、IASF(深圳)、台湾のTPS、アメリカ市場ではLCLS、欧州市場ではEu-XFEL(ドイツ)、PSI(スイス)、ESRF(フランス)への売上が中心となり経営成績を牽引しました。世界各国において多くのアップグレードや新設を控えるに従い、ミラーの需要がこれまで以上に増大しておりますが、いずれの施設もより高い精度を実現するための綿密な設計検討に想定以上の時間を費やしたため、多くの案件で受注計画の変更や遅れが発生することとなりました。遅れて受注した案件については、生産計画の見直しにより一部の製品において大幅な工期短縮を果たしたものの、全体としては当初計画を下回る出荷数に留まり、売上高は前期比微減となりました。またセグメント利益につきましては人員増に伴う労務費の上昇などに伴い前期比減益となりました。
営業活動につきましては、国内外の主たる放射光分野の学会での発表を通じて、当社の研究・開発成果の進捗報告をすることによる当社技術のアピールに加え、光学全般を対象にした展示会においても当社の超精密加工・計測技術のアピールを継続的に展開しております。また、各国施設の研究者の訪日機会も増加し、商談のみならず共同研究の機会も確保され、売上向上を見据えた積極的な営業活動に努めてまいりました。
この結果、売上高は1,234,131千円(前期比0.5%減)、セグメント利益は526,759千円(前期比11.5%減)となりました。
(ライフサイエンス・機器開発事業)
当連結会計年度においては、機器開発事業はその重点分野として、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術の装置化及び受注・販売活動を推進してまいりました。従来から継続している「プラズマ化学気相加工法(PCVM)」、「プラズマ援用研磨法(PAP)」、「触媒基準エッチング法(CARE)」に「電気化学機械研磨法(ECMP)」を加えた4つの新しい研磨プロセスによる拡販活動、潜在顧客の掘り起こし活動に注力してまいりました。その結果、設備導入を前提にした試作評価案件は大幅に増加し、そのうち、プラズマ援用研磨装置2台を受注し、売上に貢献しました。しかしながら、期初計画に沿った営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。
一方、ライフサイエンス事業では「MakCell®」や各種CellPetシリーズが売上に貢献しました。しかしながら、自動培養装置や大型の細胞培養システムは、顧客の予算や方針変更により、期初計画に沿った受注・売上営業成果には至らず、実績は低調に推移する結果となりました。
そのため事業としての収益は前期比減収減益となりました。
営業活動の状況につきましては、個別顧客訪問による営業活動やホームページからの問い合わせ対応だけでなく「SEMICON Taiwan 2024」、「SEMICON Japan 2024」、「SiC・GaN加工技術展」等半導体関連の専門性の高い展示会へ出展し、積極的な広報活動と新規顧客開拓を行ってまいりました。その結果、プラズマ援用研磨法(PAP)、電気化学機械研磨法(ECMP)を中心に複数企業からテスト加工の依頼を受け、試作と顧客評価を進めてまいりました。今後更なる技術のブラッシュアップと営業の展開力アップを図り、市場ニーズに合致した装置の提供と、販路拡大や顧客との共同開発等の実現によって売上拡大を推進してまいります。
ライフサイエンス事業におきましては、自動培養装置は営業活動や展示会、学術誌への寄稿に対する反響を受け、医療現場の労働環境改善という点から市場ニーズの高い製品であることを改めて認識しました。また、日本医療研究開発機構(AMED)の成果である単核球分離装置も新たな医療活動に貢献できる製品であることから今後は技術を前面に押し出した潜在顧客の掘り起こしを更に進めてまいります。
この結果、売上高は220,642千円(前期比33.2%減)、セグメント損失は52,055千円(前期はセグメント損失25,659千円)となりました。
(その他事業)
その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事・装置のメンテナンス業務・受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において6件(販売先:韓国、中国、国内)の売上を計上したことにより昨年度実績を上回る結果となりました。また、装置販売につきましては、初の中国企業への納入実績を積むことができ、今後大きな市場となる中国企業への販売に向けて重要な一歩となりました。一方、事業拡大に向けての人員獲得及び積極的な研究開発投資によって費用が増加し、セグメント利益を圧迫する要因となりました。
この結果、売上高は471,148千円(前期比5.2%増)、セグメント利益は41,111千円(前期比20.3%減)となりました。
②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報
a. キャッシュ・フローの状況
当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。
b. 資本の財源及び資金の流動性
当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料、外注加工費及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資やM&A投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。
一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。
運転資金、設備投資資金及びM&A投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金やM&A投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。
なお、当連結会計年度末における借入金及びリース債務の有利子負債残高は495,512千円となっております。
③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定
連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 (1) 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。
セグメント情報
(セグメント情報等)
【セグメント情報】
1.報告セグメントの概要
報告セグメントの決定方法
当社グループの報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。
当社グループは、製品・サービス別のセグメントから構成されており、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業」の3つを報告セグメントとしております。
「オプティカル事業」は放射光施設用X線ナノ集光ミラーを製造・加工しております。「ライフサイエンス・機器開発事業」は、iPS細胞をはじめとする各種自動細胞培養装置や創薬自動スクリーニング装置といったバイオ関連機器などの自動化装置を製造しております。「その他事業」は、電子科学株式会社で昇温脱離分析装置(TDS)を製造しております。
2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産その他の項目の金額の算定方法
報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であります。
3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産その他の項目の金額に関する情報
前連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
|
報告セグメント |
調整額 (注)1 |
連結財務諸表書計上額(注)3 |
|||
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
||
|
売上高 |
|
|
|
|
|
|
|
外部顧客への売上高 |
1,240,241 |
322,153 |
447,945 |
2,010,340 |
- |
2,010,340 |
|
セグメント間の内部売上高又は振替高 |
- |
8,150 |
- |
8,150 |
△8,150 |
- |
|
計 |
1,240,241 |
330,303 |
447,945 |
2,018,490 |
△8,150 |
2,010,340 |
|
セグメント利益又は損失(△) |
595,237 |
△25,659 |
51,567 |
621,145 |
△335,309 |
285,836 |
|
セグメント資産 |
1,244,542 |
330,995 |
841,014 |
2,416,552 |
1,150,970 |
3,567,522 |
|
その他の項目 |
|
|
|
|
|
|
|
減価償却費 |
76,204 |
- |
3,603 |
79,807 |
26,963 |
106,771 |
|
のれんの償却額 |
- |
- |
42,382 |
42,382 |
- |
42,382 |
|
有形固定資産及び無形固定資産の増加額(注)2 |
84,553 |
23,857 |
14,634 |
123,045 |
1,597 |
124,642 |
(注)1.「調整額」の区分は、各報告セグメントに配分していない全社費用、管理部門等の減価償却費、管理部門等の有形固定資産及び無形固定資産であります。
2.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、建設仮勘定の増加額は含めておりません。
3.セグメント利益又は損失は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
当連結会計年度(自 2024年7月1日 至 2025年6月30日)
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
|
報告セグメント |
調整額 (注)1 |
連結財務諸表書計上額(注)3 |
|||
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
||
|
売上高 |
|
|
|
|
|
|
|
外部顧客への売上高 |
1,234,131 |
220,642 |
470,818 |
1,925,592 |
- |
1,925,592 |
|
セグメント間の内部売上高又は振替高 |
- |
- |
330 |
330 |
△330 |
- |
|
計 |
1,234,131 |
220,642 |
471,148 |
1,925,922 |
△330 |
1,925,592 |
|
セグメント利益又は損失(△) |
526,759 |
△52,055 |
41,111 |
515,814 |
△401,991 |
113,823 |
|
セグメント資産 |
1,231,387 |
235,446 |
798,355 |
2,265,189 |
1,422,942 |
3,688,131 |
|
その他の項目 |
|
|
|
|
|
|
|
減価償却費 |
84,947 |
433 |
6,288 |
91,668 |
24,693 |
116,362 |
|
のれんの償却額 |
- |
- |
42,382 |
42,382 |
- |
42,382 |
|
有形固定資産及び無形固定資産の増加額(注)2 |
84,881 |
21 |
24,783 |
109,686 |
8,568 |
118,254 |
(注)1.「調整額」の区分は、各報告セグメントに配分していない全社費用、管理部門等の減価償却費、管理部門等の有形固定資産及び無形固定資産であります。
2.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、建設仮勘定の増加額は含めておりません。
3.セグメント利益又は損失は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。
【関連情報】
前連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
1.製品及びサービスごとの情報
セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。
2.地域ごとの情報
(1)売上高
|
(単位:千円) |
|
日本 |
アジア |
欧州 |
米州 |
合計 |
|
704,189 |
716,826 |
371,674 |
217,649 |
2,010,340 |
(注)1.売上高は、販売先の所在地を基礎とし、国または地域に区分しております。
2.アジアの売上高には、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める中国の売上高329,982千円及び台湾の売上高302,400千円、米州の売上高には、米国の売上高217,649千円が含まれております。
(2)有形固定資産
本邦以外に所在している有形固定資産がないため、該当事項はありません。
3.主要な顧客ごとの情報
|
(単位:千円) |
|
顧客の名称又は氏名 |
売上高 |
関連するセグメント名 |
|
国立研究開発法人理化学研究所 |
208,288 |
オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業 |
当連結会計年度(自 2024年7月1日 至 2025年6月30日)
1.製品及びサービスごとの情報
セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。
2.地域ごとの情報
(1)売上高
|
(単位:千円) |
|
日本 |
アジア |
欧州 |
米州 |
合計 |
|
780,030 |
762,352 |
270,158 |
113,051 |
1,925,592 |
(注)1.売上高は、販売先の所在地を基礎とし、国または地域に区分しております。
2.アジアの売上高には、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める中国の売上高526,532千円が含まれております。
(2)有形固定資産
本邦以外に所在している有形固定資産がないため、該当事項はありません。
3.主要な顧客ごとの情報
連結損益計算書の売上高の10%以上を占める顧客が存在しないため、記載を省略しております。
【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】
前連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
|
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
全社・消去 |
連結財務諸表計上額 |
|
減損損失 |
- |
23,857 |
- |
23,857 |
- |
23,857 |
当連結会計年度(自 2024年7月1日 至 2025年6月30日)
|
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
全社・消去 |
連結財務諸表計上額 |
|
減損損失 |
- |
21 |
- |
21 |
- |
21 |
【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】
前連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
|
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
全社・消去 |
連結財務諸表計上額 |
|
当期償却額 |
- |
- |
42,382 |
42,382 |
- |
42,382 |
|
当期末残高 |
- |
- |
307,276 |
307,276 |
- |
307,276 |
当連結会計年度(自 2024年7月1日 至 2025年6月30日)
|
|
|
|
|
|
|
(単位:千円) |
|
|
オプティカル事業 |
ライフサイエンス・機器開発事業 |
その他事業 |
計 |
全社・消去 |
連結財務諸表計上額 |
|
当期償却額 |
- |
- |
42,382 |
42,382 |
- |
42,382 |
|
当期末残高 |
- |
- |
264,893 |
264,893 |
- |
264,893 |
【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】
前連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)
該当事項はありません。
当連結会計年度(自 2024年7月1日 至 2025年6月30日)
該当事項はありません。