2024年6月期有価証券報告書より

事業内容

セグメント情報
セグメント情報が得られない場合は、複数セグメントであっても単一セグメントと表記される場合があります

オプティカル事業 ライフサイエンス・機器開発事業
  • セグメント別売上構成
  • セグメント別利益構成 セグメントの売上や利益は、企業毎にその定義が異なる場合があります
  • セグメント別利益率

最新年度

セグメント名 セグメント別
売上高
(百万円)
売上構成比率
(%)
セグメント別
利益
(百万円)
利益構成比率
(%)
利益率
(%)
オプティカル事業 1,240 79.0 595 104.5 48.0
ライフサイエンス・機器開発事業 330 21.0 -26 -4.5 -7.8

事業内容

3【事業の内容】

当社グループ(当社及び当社の関係会社)は、当社(株式会社ジェイテックコーポレーション)、及び子会社1社(電子科学株式会社)により構成しております。

当社は、「世の中にないオンリーワンの技術により製品を作り出し、広く社会に貢献する」を経営理念とし、「科学技術イノベーションの創出に貢献する製品開発を推進する」という経営方針のもと、産学連携を中心に技術開発、製品開発を推進しております。

当社グループの事業内容は次のとおりであり、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業(電子科学株式会社を含む)」の3つの事業を有しております。

 

(1) オプティカル事業

当事業では、兵庫県にある大型放射光施設「SPring-8」<注1>やX線自由電子レーザー施設「SACLA」<注2>のような国内外の先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設等で使われる反射表面の形状精度が1ナノメートル(10億分の1メートル、以下nmと表記。)以下の超高精度の表面形状をした集光ミラー、高調波カットミラーや回折格子基板等各種X線ミラーをユーザーに合わせて設計し、カスタムメイドで製造・販売しております。

本X線ミラーは、2005年に大阪大学と理化学研究所が共同開発した世界で初めて硬X線領域で理論限界まで集光することに成功したX線ナノ集光ミラーを製品化したもので、大阪大学の独自のナノ加工、ナノ計測技術により製造し“OsakaMirror”と商標登録し、2006年より販売を開始し、現在も世界の特に先端的な放射光施設やX線自由電子レーザー施設の研究者から高い評価を得ております。顧客は主に国内外の国立研究機関や大学の研究者であり、毎年積極的に最先端の分析研究が提案され、当社ではそれに応えるべく各種X線光学系の開発を行ってまいりました。近年、これら施設は各国の多様な地域発研究開発・実証拠点(リサーチコンプレックス)において、コアな機関として位置づけられ、イノベーションを強力に推進しており、国内では第四世代の放射光施設 NanoTerasuの稼働が開始し、海外では主に中国及び欧米において第4世代へのバージョンアップやあるいは新設計画が進む中、これまで以上に高度な科学分析の需要が拡大する傾向と相まって当社“OsakaMirror”の需要も増えており、今後も受注拡大が見込まれております。

当連結会計年度においては、海外の競合他社に対して技術的優位性を保持するために独自のナノ加工、ナノ計測技術のさらなる高度化研究を基に、様々な新しいX線光学システムを継続的に提案、提供しました。また、半導体及び宇宙分野などの成長産業分野で用いられる光学部品において従来の加工技術では不可能なナノメートルレベルの表面形状精度が望まれ、そのニーズに応えるため、現在保有するナノ加工技術であるEEMに加え、大阪大学の表面加工技術であるプラズマCVMやCARE(触媒基準エッチング法)加工技術などの実用化開発も進め、一部の製品においては実用実績を得ました。

 

 

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

図1.オプティカル事業系統図

 

なお、2024年6月期のオプティカル事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が16,157千円(1.3%)、企業が397,610千円(32.1%)、公的研究機関が826,473千円(66.6%)となっております。

 

 

(2) ライフサイエンス・機器開発事業

ライフサイエンス事業では、創業当初より創薬スクリーニングに関連する各種細胞培養操作の自動化の開発を手掛け、カスタム製品である各種の大型自動細胞培養装置「CellMeister®」を製造販売してまいりました。その後、独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとに再生医療分野に展開し、また2013年に日本で初めてiPS細胞に特化した低価格量産汎用型の自動細胞培養装置CellPet®の開発を行い、現在は後継機種「MakCell®」にバージョンアップし販売を推進しています。新型コロナウイルス感染症禍以降、その治療薬の探索や、働き方改革や労働時間短縮を理由に「CellMeister®」「MakCell®」を中心に自動化装置の引き合いが活発になっております。iPS細胞等向けの回転浮遊培養装置「CellPet 3D-iPS®」やスフェロイド分散化装置「CellPet FT®」、オルガノイド培養装置「CellPet® CUBE」については、これまでに実績を上げてきた国内に加え、今後は海外展開を図り受注につなげてまいります。再生医療分野においては、産業技術総合研究所と長年にわたり共同研究を推進してきた独自の3次元浮遊培養技術「CELLFLOAT®」をもとに、再生医療向け3次元細胞培養システム「CellMeister® 3D」の試作開発に成功し、2016年度からは国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下、AMED)の競争的資金を得て、東京大学の医師主導の治験に参画し申請準備を進めております。また、公益財団法人神戸医療産業都市推進機構(神戸)と共同開発を進めております「脳梗塞治療用の幹細胞分離機器」(AMED事業)は、一定の成果を得、今後は一般病院・企業向け医療機器としての製造・販売を目指してまいります。

機器開発事業では、各種培養装置をはじめ、オプティカル事業に関連する各種集光装置、その他カスタム製品の開発・製造に加え、2022年から大阪大学独自の加工技術をベースにした基材表面をナノレベル、原子レベルで加工する装置の開発を積極的に進めてまいりました。この技術は半導体デバイスや電子部品の基材となる各種ウェハの表面仕上げ加工に主に活用されます。すでに販売実績を持つ水晶ウェハの平坦化加工技術(プラズマPVM)に加え、SAWデバイス用のウェハの加工に適したCARE(触媒基準エッチング法), ダイヤモンドをはじめとする硬質・難加工材に向けた加工法であるPAP(プラズマ援用研磨法)の開発装置を完成させ、顧客と一緒に実用化に向けたテスト加工、共同研究開発を進めており、既に複数の企業へ納入も始めました。さらに昨年からは、立命館大学と共同でECMP(電気化学機械研磨法)の開発に着手しました。この技術は、パワーデバイス用ウェハとして着目されているSiCウェハの表面研磨への適用を目指しています。

 

 

〔事業系統図〕

以上述べた事項を事業系統図によって示すと次のとおりであります。

 

図2.ライフサイエンス・機器開発事業系統図

 

なお、2024年6月期のライフサイエンス・機器開発事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が14,195千円(4.4%)、企業が280,924千円(87.2%)、公的研究機関が27,033千円(8.4%)となっております。

 

(3) その他事業

その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社は、昇温脱離分析装置(TDS)のメーカーで、本装置「TDS-1200Ⅱ」は、超高真空環境に設置した試料を独自の加熱方式(赤外線)により試料から微量に放出される成分(水素、酸素、二酸化炭素、水など)を四重極質量分析装置(QMS)で、独自の分析ソフトウェアにより高感度でリアルタイムに検出する装置です。

現在、半導体、液晶、カラーフィルター業界を中心に材料の研究や、製造工程の評価、品質管理に用いられており、高い評価を得ております。当連結会計年度では、主要取引先である韓国、台湾に加えて、営業活動を積極的に行うことによって複数の日本企業からの受注を獲得することができました。

本装置は、その他鉄鋼、電機、自動車、水晶振動子等様々な産業分野においても適用できる可能性があり、また、最近は中国や米国からの引合いもあります。このような案件については、当社のオプティカル事業の海外チャンネルを利用することにより、営業体制の強化、拡販を進めております。また、中長期の売上拡大を目指し、水素量に特化した昇温脱離水素分析装置「Cryo TDS-100H2」や現行の「TDS 1200Ⅱ」に自動サンプル機能を追加した「TDS 1200ⅡALS」の共同開発を急いでおります。

なお、2024年6月期のその他事業の顧客属性別の売上高(売上高比率)については、大学が18,975千円(4.2%)、企業が428,534千円(95.7%)、公的研究機関が435千円(0.1%)となっております。

 

 

注1:大型放射光施設「SPring-8」(Super Photon ring-8 GeV)

「SPring-8」とは、兵庫県の播磨科学公園都市にある世界最高性能の放射光を生み出すことができる大型放射光施設です。放射光とは、電子を光とほぼ等しい速度まで加速し、磁石によって進行方向を曲げた時に発生する、細く強力な電磁波のことです。「SPring-8」では、この放射光を用いて、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等の基礎科学研究分野から、産業利用ニーズも高まりをみせ、化粧品、食料品、電池、タイヤ等身近な製品の開発も行われています。「SPring-8」の名前はSuper Photon ring-8 GeV(80億電子ボルト)に由来しています。

「SPring-8」は国内外の産学官の研究者等に開かれた共同利用施設であり、1997年から放射光を大学、公的研究機関や企業等のユーザーに提供しています。課題申請などの手続きを行い、採択されれば、誰でも利用することができます。

「SPring-8」の施設者は理化学研究所であり、「SPring-8」の運転・維持管理、並びに利用促進業務を高輝度光科学研究センターが行っています(図3参照)。

 

注2:X線自由電子レーザー施設「SACLA(SPring-8 Angstrom Compact Free Electron Laser)」

2006年3月に策定された第3期科学技術基本計画(2006年3月28日閣議決定)において国家基幹技術の一つとして選定されたX線自由電子レーザー施設として、2006年度から理化学研究所と「SPring-8」を運営する高輝度光科学研究センターが共同で施設の建設・整備を行い、2011年3月に完成、0.063nm(0.63Å(オングストローム:微小な長さを表すのに用いられる単位。1Å=0.1nm))の世界最短波長のX線レーザー生成に成功した施設であり、2012年3月7日より供用運転を開始しています(図3参照)。

図3 大型放射光施設「SPring-8」、X線自由電子レーザー施設「SACLA」

 

注3:次世代放射光施設 NanoTerasu

東北大学青葉山新キャンパスに共創の場として設けられた「サイエンスパーク」エリアに、新たに第4世代放射光施設が建設され、2024年4月に本格稼働が開始しました。(図4参照)

図4 建設中のNanoTerasu(ナノテラス):東北大学 ホームページより

 

 

業績

4【経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析】

(1) 経営成績等の状況の概要

①財政状態及び経営成績の状況

当連結会計年度における我が国経済は、自動車産業での品質不正問題発生による出荷停止の影響も緩和され、半導体などの成長産業や人手を補う省力化に向けた設備投資計画が旺盛で、製造業を中心とした景気回復のモメンタムは上昇傾向が続いております。

このような経済環境のもと当社グループは、オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業及びその他事業(電子科学株式会社を含む)という独自の技術を利用した3つの事業によって、高品質な製品提供と研究開発活動の強化に取組み、経営基盤拡充と企業価値向上に努めてまいりました。

この結果、当連結会計年度の財政状態及び経営成績は以下のとおりとなりました。

 

a. 財政状態

当連結会計年度末における資産合計は、前連結会計年度末に比べ102,503千円増加し、3,567,522千円となりました。

当連結会計年度末における負債合計は、前連結会計年度末に比べ115,364千円減少し、870,746千円となりました。

当連結会計年度末における純資産合計は、前連結会計年度末に比べ217,868千円増加し、2,696,776千円となりました。

 

b. 経営成績

当連結会計年度における経営成績は、売上高2,010,340千円(前期比5.3%増)、営業利益285,836千円(前期比6.8%減)、経常利益310,955千円(前期比14.6%減)、親会社株主に帰属する当期純利益199,591千円(前期比16.2%減)となりました。

 

セグメントごとの経営成績は次のとおりであります。

オプティカル事業は、売上高は1,240,241千円(前期比3.8%増)、セグメント利益は595,237千円(前期比18.8%増)となりました。

ライフサイエンス・機器開発事業は、売上高は330,303千円(前期比1.7%増)、セグメント損失は25,659千円(前期はセグメント利益1,533千円)となりました。

その他事業は、売上高は447,945千円(前期比15.4%増)、セグメント利益は51,567千円(前期比40.5%減)となりました。

 

②キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度における現金及び現金同等物(以下、「資金」という。)は、前連結会計年度末に比べ172,898千円減少し、当連結会計年度末には610,230千円となりました。

当連結会計年度における各キャッシュ・フローの状況とそれらの要因は次のとおりであります。

 

(営業活動によるキャッシュ・フロー)

当連結会計年度における営業活動の結果獲得した資金は62,651千円(前連結会計年度は210,359千円の獲得)となりました。これは主に、売上債権の増加235,962千円及び法人税等の支払額89,655千円による支出があった一方で、税金等調整前当期純利益284,742千円及び減価償却費106,771千円、のれん償却額42,382千円、契約負債の増加18,283千円による収入があったことによるものであります。

 

(投資活動によるキャッシュ・フロー)

投資活動の結果使用した資金は160,706千円(前連結会計年度は84,742千円の使用)となりました。これは主に、有形固定資産の取得による支出141,406千円及び投資有価証券の取得による支出15,000千円などによる資金減によるものであります。

 

(財務活動によるキャッシュ・フロー)

財務活動の結果使用した資金は75,526千円(前連結会計年度は75,504千円の使用)となりました。これは主に、長期借入金の返済による支出75,456千円などによる資金減によるものであります。

 

 

③生産、受注及び販売の実績

a. 生産実績

当連結会計年度の生産実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

 至 2024年6月30日)

生産高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

1,209,546

114.5

ライフサイエンス・機器開発事業

322,667

99.0

その他事業

351,954

70.7

合計

1,884,168

100.2

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

 

b. 受注実績

当連結会計年度の受注実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

 至 2024年6月30日)

受注高(千円)

前年同期比(%)

受注残高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

1,017,946

88.5

652,178

74.6

ライフサイエンス・機器開発事業

221,855

48.9

30,779

23.5

その他事業

363,864

83.4

155,418

64.9

合計

1,603,666

78.6

838,376

67.3

(注)1 セグメント間の取引については相殺消去しております。

2 金額は販売価格によっております。

 

c. 販売実績

当連結会計年度の販売実績をセグメントごとに示すと、次のとおりであります。

セグメントの名称

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

 至 2024年6月30日)

販売高(千円)

前年同期比(%)

オプティカル事業

1,240,241

103.8

ライフサイエンス・機器開発事業

322,153

99.2

その他事業

447,945

115.4

合計

2,010,340

105.3

(注)最近2連結会計年度の主な相手先別の販売実績及び当該販売実績の総販売実績に対する割合は次のとおりであります。

相手先

前連結会計年度

(自 2022年7月1日

  至 2023年6月30日)

当連結会計年度

(自 2023年7月1日

  至 2024年6月30日)

金額(千円)

割合(%)

金額(千円)

割合(%)

Advanced Photon Source Argonne National Laboratory

216,097

11.3

国立研究開発法人理化学研究所

209,631

11.0

208,288

10.4

(注)販売実績の総販売実績に対する割合が10%未満のものについては記載を省略しております。

 

    (2) 経営者の視点による経営成績等の状況に関する分析・検討内容

経営者の視点による当社グループの経営成績等の状況に関する認識及び分析・検討内容は次のとおりであります。

①財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

a. 財政状態

(資産)

当連結会計年度末における流動資産は1,815,729千円となり、前連結会計年度末に比べ138,413千円増加いたしました。これは主に、現金及び預金が172,898千円減少した一方で、売掛金が226,498千円、商品及び製品が67,723千円増加したことによるものであります。固定資産は1,751,793千円となり、前連結会計年度末に比べ35,909千円減少いたしました。これは主に、のれんの償却が進んだことによって無形固定資産が44,910千円減少したことによるものであります。

この結果、総資産は3,567,522千円となり、前連結会計年度末に比べ102,503千円増加いたしました。

 

(負債)

当連結会計年度末における流動負債は413,185千円となり、前連結会計年度末に比べ38,248千円減少いたしました。これは主に、買掛金が47,242千円減少したことによるものであります。固定負債は457,560千円となり、前連結会計年度末に比べ77,116千円減少いたしました。これは主に、約定返済が進んだことにより長期借入金が75,456千円減少したことによるものであります。

この結果、負債合計は870,746千円となり、前連結会計年度末に比べ115,364千円減少いたしました。

 

(純資産)

当連結会計年度末における純資産合計は2,696,776千円となり、前連結会計年度末に比べ217,868千円増加いたしました。これは主に、親会社株主に帰属する当期純利益を199,591千円計上したことによるものであります。

 

b. 経営成績

(売上高及び営業利益)

当連結会計年度における売上高は、2,010,340千円(前連結会計年度比5.3%増)となりました。これは主に、オプティカル事業において、放射光施設及びⅩ線自由電子レーザー施設用のⅩ線ナノ集光ミラーの売上が牽引するとともに、ライフサイエンス・機器開発事業及び子会社の電子科学株式会社の売上が寄与しております。この結果、売上総利益は1,252,754千円(前連結会計年度比7.5%増)となりました。また、販売費及び一般管理費は966,917千円(前連結会計年度比12.7%増)となり、当連結会計年度における営業利益は285,836千円(前連結会計年度比6.8%減)となりました。

 

(経常利益)

営業外収益では、経済産業省による戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン)における補助金収入等を計上しました。また、営業外費用では、支払利息及び投資事業組合運用損等を計上しました。これらの結果、当連結会計年度における経常利益は310,955千円(前連結会計年度比14.6%減)となりました。

 

(当期純利益)

特別損失を26,213千円計上いたしましたが、当連結会計年度における親会社株主に帰属する当期純利益は199,591千円(前連結会計年度比16.2%減)となりました。

 

 

c. セグメントごとの財政状態及び経営成績の状況に関する認識及び分析・検討内容

(オプティカル事業)

当連結会計年度は、国内市場ではSPring-8、SACLA、NanoTerasu、アジア市場ではSHINE(中国)、TPS(台湾)、ANSTO(豪州)、アメリカ市場ではAPS、LCLS、欧州市場ではEu-XFEL(ドイツ)、PSI(スイス)、ESRF(フランス)への売上が中心となり経営成績を牽引いたしました。過去と比較して当連結会計年度は受注数、生産数の増加が見られると同時に、これまでにない更なる高精度化の追加要求や、当社のみが実現できる高精度ミラーを基材とした成膜や刻線などの付加加工の要求が多数あり、一部生産計画の変更や遅れが発生することとなりました。オンリーワンの技術を追求する当社の経営理念上、今後も同様の要求が増えることが想定されるため、これまで以上に積極的な生産及び付加加工の能力向上に努めてまいります。

国内ではNanoTerasuの稼働開始、そしてSPring-8のアップグレード計画が報告され、また国外においては欧州でDLS、BESSYⅡ、PETRAⅢ、ALBA、Elettraなど複数施設のアップグレード計画、そしてアジアは中国の合肥市や深圳市で新設計画が明らかになっており、すでに関係施設から多くの問い合わせを受け、順次詳細仕様の検討を進めております。特にエネルギー、半導体に関する最先端研究の活性化に伴い、欧州の中規模放射光施設において、これまで以上に高精度なミラーの需要が高まっており、現在進めている市場開拓の成果が順調に表れております。

営業活動につきましては、国内外の主たる放射光分野の学会での発表を通じて、当社の研究・開発成果の進捗報告することによる当社技術のアピールに加え、光学全般を対象にした展示会においても当社の超精密加工・計測技術のアピールを継続的に続けております。また、各国施設の研究者の訪日機会も増加し、商談のみならず共同研究の機会も確保され、売上向上を見据えた積極的な営業活動に努めてまいりました。

この結果、売上高は1,240,241千円(前期比3.8%増)、セグメント利益は595,237千円(前期比18.8%増)となりました。

 

(ライフサイエンス・機器開発事業)

当連結会計年度においては、昨年度に続きライフサイエンス・機器開発事業の重点新規事業分野として、各半導体材料を主たる対象としたナノ表面加工技術であるプラズマ化学気相加工法(PCVM)、プラズマ援用研磨法(PAP)、触媒基準エッチング法(CARE)による表面加工装置の商品化、受注並びに販売活動を推進してまいりましたが、プラズマ化学気相加工法装置2台(小型開発機1台及び大型自動量産機1台)を受注し、いずれも第4四半期に納入いたしました。当社は新たな事業の柱として独自の表面加工・研磨技術及び装置の開発推進、実用化へと展開を図ってまいりましたが、上記の受注は当社技術を高くご評価いただいた結果であると考えております。

一方、個別顧客訪問による営業活動やホームページからの問い合わせ対応だけでなく、第2四半期には「SEMICOM Japan 2023」へ出展し、新たな顧客開拓も行ってまいりました。その結果、複数企業からテスト加工の依頼を受け、試作と顧客評価を進めてまいりました。しかしながら、まだ顧客の要求する加工精度や生産性を完全に満足できておらず、新規顧客からの受注には至りませんでした。今後更なる技術のブラッシュアップを図り、市場ニーズに合致した製品の提供と、営業の展開力アップにより、販路拡大や大手企業との共同開発契約締結に繋げるなど、製品展開と売上拡大を推進してまいります。

一方、ライフサイエンス機器では「MakCell®」をはじめとする自動培養装置が、顧客の予算の都合や方針変更により計画に沿った受注・売上に至らず苦戦を強いられましたが、第4四半期に出展した「ファーマラボ2024」においては、自動培養装置は依然として市場ニーズの高い製品であることが直に感じられ、初めて出展いたしました「単核球分離装置」も多くの来場者に興味をお持ちいただけました。今後はこれらの顧客への丁寧な対応だけでなく、潜在顧客の掘り起こしを進めてまいります。

その他、Spring-8における光源高度化に必要となる開発品の設計・製造、グラビア印刷試験機(GP-10)用制御基板、水冷式冷却器等が売上に貢献いたしました。

この結果、売上高は330,303千円(前期比1.7%増)、セグメント損失は25,659千円(前期はセグメント利益1,533千円)となりました。

 

(その他事業)

その他事業は子会社の電子科学株式会社であり、同社の売上構成は、装置販売(TDS:昇温脱離分析装置)及び大型工事、装置のメンテナンス業務、受託分析業務の3つに分かれますが、受注金額が大きくなる主力事業の装置販売及び大型工事において6件(販売先:韓国、台湾、国内)の売上を計上したことにより昨年度実績を上回る結果となりました。また、装置販売につきましては、今回は日本企業の中国支店における導入でしたが、初めて中国(上海)での設置・導入作業を行い、今後大きな市場となる中国企業への販売に向けて重要な一歩となりました。一方、事業拡大に向けての人員増及び材料費の高騰によって費用が増加し、利益を圧迫する要因となりました。

この結果、売上高は447,945千円(前期比15.4%増)、セグメント利益は51,567千円(前期比40.5%減)となりました。

②キャッシュ・フローの状況の分析・検討内容並びに資本の財源及び資金の流動性に係る情報

a. キャッシュ・フローの状況

当連結会計年度のキャッシュ・フローの状況につきましては、「(1) 経営成績等の状況の概要 ②キャッシュ・フローの状況」に記載のとおりであります。

 

b. 資本の財源及び資金の流動性

当社グループの運転資金需要のうち主なものは、製造のための材料及び部品の購入費、人件費や研究開発費のほか、借入金の返済や法人税等の支払いです。このほか、会社の成長に必要な設備投資やM&A投資等を含め、収入と支出のバランスを考慮して資金運用を実施することを主たる方針としています。

一方、販売には季節的要因の影響は少ないものの、販売先の決算月に納期を指定されることや製品の受注から完成までに1年前後の期間が必要であるため、受注及び販売の状況によっては一時的な売上債権、仕入債務、棚卸資産等の増減があり、営業活動によるキャッシュ・フローの増減に影響を及ぼす可能性があります。

運転資金、設備投資資金及びM&A投資資金については、原則として自己資金で賄うこととしておりますが、多額の設備投資資金やM&A投資資金が必要となった場合は、必要資金の内容に応じて金融機関からの借り入れや資本市場からの直接調達を検討する方針であります。

なお、当連結会計年度末における借入金である有利子負債残高は521,963千円となっております。

 

③重要な会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定

連結財務諸表の作成に当たって用いた会計上の見積り及び当該見積りに用いた仮定のうち、重要なものについては、「第5 経理の状況 1 連結財務諸表等 ⑴ 連結財務諸表 注記事項(重要な会計上の見積り)」に記載のとおりであります。

 

セグメント情報

(セグメント情報等)

【セグメント情報】

1.報告セグメントの概要

 報告セグメントの決定方法

 当社グループの報告セグメントは、当社の構成単位のうち分離された財務情報が入手可能であり、取締役会が、経営資源の配分の決定及び業績を評価するために、定期的に検討を行う対象となっているものであります。

 当社グループは、製品・サービス別のセグメントから構成されており、「オプティカル事業」、「ライフサイエンス・機器開発事業」及び「その他事業」の3つを報告セグメントとしております。

 「オプティカル事業」は放射光施設用X線ナノ集光ミラーを製造・加工しております。「ライフサイエンス・機器開発事業」は、iPS細胞をはじめとする各種自動細胞培養装置や創薬自動スクリーニング装置といったバイオ関連機器などの自動化装置を製造しております。「その他事業」は、電子科学株式会社で昇温脱離分析装置(TDS)を製造しております。

 

2.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産その他の項目の金額の算定方法

 報告されている事業セグメントの会計処理の方法は、「連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項」における記載と概ね同一であります。

 

3.報告セグメントごとの売上高、利益又は損失、資産その他の項目の金額に関する情報

前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額 (注)1

連結財務諸表書計上額(注)3

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

売上高

 

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

1,195,387

324,885

388,102

1,908,375

1,908,375

1,195,387

324,885

388,102

1,908,375

1,908,375

セグメント利益

501,175

1,533

86,696

589,404

△282,732

306,672

セグメント資産

1,000,160

256,958

820,418

2,077,537

1,387,481

3,465,019

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

74,854

1,010

75,864

26,905

102,770

のれんの償却額

42,382

42,382

42,382

有形固定資産及び無形固定資産の増加額(注)2

72,776

2,803

885

76,465

3,231

79,697

(注)1.「調整額」の区分は、各報告セグメントに配分していない全社費用、管理部門等の減価償却費、管理部門等の有形固定資産及び無形固定資産であります。

2.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、建設仮勘定の増加額は含めておりません。

3.セグメント利益は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

 

 

当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

報告セグメント

調整額 (注)1

連結財務諸表書計上額(注)3

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

売上高

 

 

 

 

 

 

外部顧客への売上高

1,240,241

322,153

447,945

2,010,340

2,010,340

セグメント間の内部売上高又は振替高

8,150

8,150

△8,150

1,240,241

330,303

447,945

2,018,490

△8,150

2,010,340

セグメント利益又は損失(△)

595,237

△25,659

51,567

621,145

△335,309

285,836

セグメント資産

1,244,542

330,995

841,014

2,416,552

1,150,970

3,567,522

その他の項目

 

 

 

 

 

 

減価償却費

76,204

3,603

79,807

26,963

106,771

のれんの償却額

42,382

42,382

42,382

有形固定資産及び無形固定資産の増加額(注)2

84,553

23,857

14,634

123,045

1,597

124,642

(注)1.「調整額」の区分は、各報告セグメントに配分していない全社費用、管理部門等の減価償却費、管理部門等の有形固定資産及び無形固定資産であります。

2.有形固定資産及び無形固定資産の増加額には、建設仮勘定の増加額は含めておりません。

3.セグメント利益又は損失は、連結財務諸表の営業利益と調整を行っております。

 

【関連情報】

前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

1.製品及びサービスごとの情報

 セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

 

日本

アジア

欧州

米州

合計

904,996

554,089

214,663

234,626

1,908,375

(注)1.売上高は、販売先の所在地を基礎とし、国または地域に区分しております。

2.アジア、米州地域の売上高には、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める中国の売上高309,547千円、米国の売上高225,493千円が含まれております。

(2)有形固定資産

 本邦以外に所在している有形固定資産がないため、該当事項はありません。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

Advanced Photon Source Argonne National Laboratory

216,097

オプティカル事業

国立研究開発法人理化学研究所

209,631

オプティカル事業

 

当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)

1.製品及びサービスごとの情報

 セグメント情報に同様の情報を開示しているため、記載を省略しております。

 

2.地域ごとの情報

(1)売上高

(単位:千円)

 

日本

アジア

欧州

米州

合計

704,189

716,826

371,674

217,649

2,010,340

(注)1.売上高は、販売先の所在地を基礎とし、国または地域に区分しております。

2.アジアの売上高には、連結損益計算書の売上高の10%以上を占める中国の売上高329,982千円及び台湾の売上高302,400千円、米州の売上高には、米国の売上高217,649千円が含まれております。

(2)有形固定資産

 本邦以外に所在している有形固定資産がないため、該当事項はありません。

 

3.主要な顧客ごとの情報

(単位:千円)

 

顧客の名称又は氏名

売上高

関連するセグメント名

国立研究開発法人理化学研究所

208,288

オプティカル事業、ライフサイエンス・機器開発事業

 

【報告セグメントごとの固定資産の減損損失に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

減損損失

2,803

2,803

2,803

 

当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

減損損失

23,857

23,857

23,857

 

 

【報告セグメントごとののれんの償却額及び未償却残高に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

当期償却額

42,382

42,382

42,382

当期末残高

349,659

349,659

349,659

 

当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)

 

 

 

 

 

 

(単位:千円)

 

オプティカル事業

ライフサイエンス・機器開発事業

その他事業

全社・消去

連結財務諸表計上額

当期償却額

42,382

42,382

42,382

当期末残高

307,276

307,276

307,276

 

【報告セグメントごとの負ののれん発生益に関する情報】

前連結会計年度(自 2022年7月1日 至 2023年6月30日)

 該当事項はありません。

 

当連結会計年度(自 2023年7月1日 至 2024年6月30日)

 該当事項はありません。