リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであります。当社グループは、これらリスク発生の可能性を認識した上で、発生の回避及び発生した場合の対応に努める方針です。また、本書に記載した事項は事業等に関連するリスクを全て網羅するものではありませんので、この点ご留意下さい。
(1) 個別受注契約及び売上検収時期の変動について
当社グループの高精度ミラーや装置関係はユーザーごとによる個別受注契約が基本となり、販売単価が高額になること、かつ受注から売上検収までに長期間要する事業になります。受注契約時の見積り時に、期間、工数や金額を検討しておりますが、製品を製造している過程で、開発要素が多くなることや製造遅延等により見積りを上回る工数を要する内的要因と製造中にユーザーによる仕様の変更等の外的要因により、売上検収時期が変動する場合があります。計画通りに売上を計上するように努めてまいりますが、変動した場合には業績に与える影響が大きくなる可能性があります。
(2) 技術の陳腐化について
当社グループのオプティカル事業における製造技術は、大阪大学独自の原子数個レベルの平坦さを実現する究極のナノ加工技術(ナノ加工技術EEMとナノ計測技術RADSI及びMSI)を基にしたもので、1ナノメートルレベルの形状精度を実現しております。本書提出日の現在においてこの状況に変化はありません。
しかしながら、将来において当社の製造方法と同等の精度レベル(本技術を超える精度は極めて困難と考えられます)を実現する新たな製造方法が万が一確立された場合には、価格面で影響を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 国内外政府の施策とその影響について
当社グループの主要事業であるオプティカル事業の製品である放射光施設用のX線ナノ集光ミラー等は、放射光施設という専門性の高い施設等で使用されるもので、その施設の多くは国内外の公的研究施設、公的プロジェクトまたは大学等がビームライン(実験ハッチ)ごとに別々に研究事業を運営しております。
現在、国内では東北において、新しい放射光施設NanoTerasuが完成し、2024年4月に稼働を開始いたしました。また、海外では中国、欧州、アメリカ、ブラジルなどに第4世代の放射光施設の建設やバージョンアップの計画が進んでおり、少なくとも今後20年程度は世界的に需要が拡大傾向にあると判断しております。ただし、国内外の研究事業者の多くは公的研究機関となりますので、研究事業の実施方針や制度等に大きな変更があった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 外注委託先について
当社グループのオプティカル事業は、社内加工によるナノ加工の前工程である研削や研磨等、ライフサイエンス・機器開発事業及び電子科学では社内工程の設計・開発以外の装置製造に関しては外注委託先へ依頼しております。
外部委託先については年次で事業継続性・製造能力・品質に関する評価を実施しておりますが、品質及び納期等において何らかの不具合を発生させる事象が確認された場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
特に、特殊な部品調達や加工を要する場合、代替先が少数であるため、特定の外注委託先への依存度が高い状況になっております。そのため、当社グループでは継続して、新しい外注委託先の開拓に努めております。
(5) 為替リスクについて
当社グループは、製品の海外輸出が多く、為替レートの変動は外貨建て直接取引の売上高に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、想定を超える為替レートの変動が生じた場合には、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(6) 輸出について
輸出にあたり、仕向地ごとの政治や経済情勢、さらには文化や習慣等について調査・把握に努めておりますが、もしそれらが要因となる予期せぬ事件、事故等の事象が発生した場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。
(7) 知的財産権について
当社グループは、新たな技術や独自のノウハウを蓄積し、知的財産権として権利取得するなど法的保護に努めながら研究開発活動を推進しています。また、仮に特許侵害が試みられたとしても同様の製品が製造されないよう独自のノウハウは公開しておりません。しかし、特定地域での法的保護が得られない可能性や、当社の知的財産権が不正使用される可能性があることは否めず、さらに人材移転や悪意を前提とする情報漏洩等により技術・ノウハウが外部に流出する可能性もあります。このような状況が生じた場合、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
他方、他社が有する知的財産権についても細心の注意を払っておりますが、当社が第三者の知的財産権を侵害していると司法判断された場合、当社グループの生産・販売の制約や損害賠償金の支払いが発生する可能性もあります。
(8) 有形固定資産及びのれんの減損について
当社グループでは、土地、建物、機械設備等多くの有形固定資産及び関係会社株式に関わるのれんを保有しています。当該資産から得られる将来キャッシュ・フローの見積りに基づく残存価額の回収可能性を定期的に評価していますが、当該資産から得られる将来キャッシュ・フロー見込額が減少し、回収可能性が低下した場合、有形固定資産及びのれんの減損を行う必要が生じ、当社グループの経営成績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 製品に関する不具合、クレームについて
これまで当社グループが販売・開発する製品等に関し、ユーザー等から訴訟を提起され、または損害賠償請求を受けたことはありません。また、不具合が生じたとしても早期に発見し是正するべく、サポート体制を構築しておりますが、当社が販売した製品等に予期しがたい欠陥等が発生し、製品回収や損害賠償等が発生した場合、顧客からの信用失墜や受注減少のおそれが生じ、多大な損害賠償金及び訴訟費用が必要となること等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 情報セキュリティについて
当社グループは、事業に関わる技術情報、インサイダー情報や顧客情報等を保有しております。近年、クラウド化の推進や社内インフラの整備とセキュリティ強化に努めております。ただし、サイバー攻撃等でデータに障害が生じたり、情報が流出した場合には当社グループの信用や業績に影響を及ぼす可能性があります。
情報セキュリティ基本方針に則り情報セキュリティ委員会を設けて、社内教育の実施やIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の「SECURITY ACTION」二つ星を取得済みであり、さらに第三者保証の取得を視野に体制強化を図ってまいります。
(11) 人材について
グローバルニッチトップを掲げる当社グループでは、製造や研究社員は物理学や工学等理系の専門性の高い人材を確保する必要があります。社員教育などを通じて、技術や技能についても円滑な伝承に努めております。特に高度専門技術を担う人材は、採用市場において獲得競争が激化しており、研究開発人材の獲得に遅れが生じた場合、技術革新のスピードが鈍化する可能性があります。
(12) 自然災害・テロ及び感染症について
当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点や関係先が地震、豪雨、防風などの自然災害やテロなどによって甚大な被害を被った場合には復興に際して多大なる費用と時間を要することになります。加えて、当該事象が発生することで当社グループ及び当社グループ取引先の事業拠点が被害を受けることによって商取引の継続が困難となり、当社グループの経営成績に著しい悪影響を及ぼす可能性があります。また、感染症の発生によるパンデミックに至った場合には、当社グループ及び当社グループ取引先の従業員の安全確保と感染拡大防止のために行動が制限されることで、当社グループの事業活動に様々な制約を受ける可能性があります。
(13) 非財務情報の開示不足について
非財務情報におきましては、マテリアリティ(重要課題)やこれらのKPI等ターゲットを特定し、管理指標と目標を設定する等の情報開示が不足していることを認識しております。情報開示に向けて体制等整えているところではありますが、株価やファイナンスにおいて不利な条件等を負う可能性があります。
配当政策
3【配当政策】
当社は、利益配分につきましては、将来の事業展開と経営体質の強化のために必要な内部留保を確保しつつ、安定した配当を継続して実施していくことを基本方針としております。
当社は、期末配当のみの年1回の剰余金の配当を行うことを基本方針としております。
当社は、会社法第454条第5項に規定する中間配当をすることができる旨及び同法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる旨定款に定めております。
内部留保資金につきましては、今後予想される経営環境の変化に対応すべく、今まで以上にコスト競争力を高め、市場ニーズに応える技術・製造開発体制を強化し、既存事業においてはさらに市場占有率を高めるとともに、当社の企業価値を一層高める新規事業確立のために有効投資を行ってまいりたいと考えております。
当面は、コスト競争力の強化や生産能力向上のための設備拡充、及び急成長市場での事業展開を実現するために今以上の研究開発体制を構築するための投資が重要になると考え、その原資となる内部留保の充実を図る方針であります。ただし、これらにある一定の目処が立てば、安定的・持続的な配当による株主様への利益還元政策をとる方針であります。
なお、当事業年度の配当につきましては、当期純利益を計上いたしましたが、経営体質及び今後の事業展開、内部留保の充実を図るために、無配とさせていただきました。