2023年11月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。

 なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社グループが判断したものであり、不確実性が内在しているため、実際の結果と異なる可能性があります。

 

1. 経営環境について

 (1) 金融環境の変化について

  今後、金利水準が上昇した場合には、資金調達コストの増加、顧客投資家の期待利回りの上昇、不動産市場の流動性の低下等の事象が生じる可能性があります。そのような事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

 (2) 不動産市況の動向について

 今後、経済のファンダメンタルズの急速な悪化や税制・金融政策の大幅な変更が行われた場合には、不動産投資市場も中期的に悪影響を受け、投資環境が悪化し、国内外の投資家の投資マインドの低迷等が生ずる可能性があります。そのような事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 競合の状況について

 今後、新規参入会社や既存会社との競合が激化し、市場価格の上昇等により安定した収入の獲得が期待できる不動産の取得が困難となった場合には、投資案件の取得速度の低迷や投資収益率の低下が生じる可能性があります。そのような事態が発生した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 法的規制について

 当社グループは、現時点の各種法的規制に従って業務を遂行しており、主には「宅地建物取引業法」、「金融商品取引法」、「貸金業法」、「建築士法」、「不動産投資顧問業登録規程」、「旅館業法」などの法的規制等を受けております。当社グループは、かかる法的規制等を遵守するため、コンプライアンスを重視した経営を行っており、法令等の変更に対しても迅速に対応できるよう努めておりますが、法令違反、法令の改廃や解釈の変更など何らかの理由により当社グループが業務の遂行に必要となる許認可若しくは登録の取消し、又は一定期間の営業停止等の行政処分等を受けた場合には、当社グループの事業活動に支障をきたし、業績に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、当社グループにおいて、現状、これらの許認可及び登録が取消しとなる事由は発生しておりません。

 

2. 当社グループの事業体制について

(1) 小規模組織であることについて

 当社は、2023年11月30日現在において、取締役6名、監査役3名(うち非常勤監査役2名)、グループ全体で従業員数172名と比較的小規模組織であり、内部管理体制もこの規模に応じたものとなっております。当社グループでは、今後の事業拡大に対応すべく人員増強等によりさらなる組織力の充実を図っていく所存でありますが、人材の確保及び内部管理体制の充実が円滑に進展しない場合、既存の人材が社外に流出した場合には、当社グループの事業運営に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 特定人物への依存について

 当社の代表取締役をはじめとする経営陣は、経営責任者として経営方針や事業戦略の決定をはじめ、当社グループの事業推進上、重要な役割を果たしております。

 このため当社では、現役員へ過度に依存しない経営体制を目指し、有能な人材の確保、育成による経営体制の強化を図り、経営リスクの軽減に努めておりますが、不測の事態により、現役員が当社の経営者として業務を遂行することが困難になった場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 有能な人材の確保、育成について

 当社グループの営む事業は、金融及び不動産等の分野において高い専門性と豊富な経験を有する人材により成り立っており、今後の事業展開において有能な人材を確保・育成し、成長への基盤を確固たるものとする方針であります。しかし、必要とする人材の確保・育成が計画どおりに実現できなかった場合には、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 また、人材の確保・育成が順調に行われた場合でも、採用・研修に係るコスト、人件費等の固定費が増加することが想定され、当該コスト増に見合う収益の成長がない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

3. 投資運用事業及び投資銀行事業について

(1) 特別目的会社の連結に係る方針について

 当社グループが私募ファンドの組成のために設立し、アセットマネジメント業務を受託している特別目的会社(SPC)については、当社グループの匿名組合出資比率や支配力等の影響度合いを勘案し、「連結財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第22号)、「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)、及び「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」(企業会計基準委員会実務対応報告第20号)に基づき、個別に連結の要否を決定しております。

 今後、SPCの連結の範囲に関する会計基準が改正された場合には、当社グループの連結の範囲に変更が生じ、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 自己勘定投資(自己資金による投資)が業績に与える影響について

 当社グループは、賃貸不動産等の安定的な収益を見込むことが期待できる投資案件に対する投資を行っております。また、中長期的な企業価値の向上を目的として、再生可能エネルギー関係分野への投資や、スタートアップ企業への投資等、当社グループが強みを持つ分野における新規投資を積極的に行っております。

 これらの自己勘定投資については、投資リスクの吟味のため、社内諸規程に従い経営会議、取締役会等により慎重な審議を経た上で行うこととしておりますが、外部環境の変化等により投資収益が悪化し、あるいは投資対象の評価損が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 四半期及び通期業績の変動と投資案件の取得、売却時期の変動について

 当社グループの運用するファンド又は自己勘定投資において投資案件の取得又は売却を行う際には、取得・売却に伴うフィー(アクイジションフィー、ディスポジションフィー及びインセンティブフィー)や売却益(売却損)により、多額の利益(損失)が計上される可能性があります。また、投資案件の取得・売却は市況を勘案しながら行っているため、その時期が偏る可能性があります。これらにより、当社グループの四半期及び通期業績は大きく変動する可能性があります。

 また、投資案件の取得、売却の時期については、売買相手先の意向が反映されるため、当社グループが想定した時期に実施することが必ずしも可能ではなく、それらの時期が見込みどおりとならない場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 有利子負債の水準と資金調達について

 当社グループが自己勘定投資(自己資金による投資)として投資案件の取得を行う際には、資本効率を上げること等を目的として、自己資金に加え金融機関からの借入金を投資資金に充当しております。

 当連結会計年度末における当社グループの連結有利子負債残高は58,454百万円であり、連結総資産額に占める有利子負債残高の割合は65.0%の水準でありますが、今後においても自己勘定により積極的に投資案件(賃貸不動産等)を取得することを計画しており、これに伴い有利子負債残高の水準は上昇することが想定されます。現時点では、取得した賃貸不動産等からの収益が十分に支払金利と元本返済の合計額を上回っている状態であり、今後もそのような条件での調達を継続する予定ですが、経済情勢の変化等により市場金利が大幅に上昇した場合には、支払利息の増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。当社グループは、このような市場金利の上昇リスクをヘッジするため、金利スワップ取引を用いた支払金利の一部固定化を行っております。

 また、借入金の調達にあたっては、特定の金融機関に依存することなく、投資案件毎にその性質や状況等を総合的に勘案したうえで最も適切と考えられる手法、期間、借入先等を選択しております。現時点では、複数の金融機関から超長期の借入金を安定的に調達できておりますが、外部環境の変化や当社グループの信用力の低下等により、当社グループの希望する条件での融資が受けられない等、資金調達に制約を受けた場合は、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

4.施設運営事業について

(1) 風評について

 施設運営事業は、お客様に直接サービスを提供しているため、法令違反、自然災害・事故・感染症等の発生、顧客情報をはじめとする情報漏洩、長時間勤務等の内部告発等が生じ、施設ブランドイメージが損なわれた場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2) 食中毒や食品管理について

 施設運営事業では、旅館、レストラン、宴会場等で食事の提供や販売を行っております。品質管理や食品衛生には十分注意しておりますが、食中毒事故が発生した場合は営業停止の処分を受けるほか、当社グループの信用やブランドイメージをき損し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3) 人材の確保及び育成

 施設運営事業では、一定数の従業員の確保が必須であり、少子高齢化により今後若年層の人材確保がさらに困難になることが予測され、最低賃金の引き上げや社会保障政策に伴う社会保険料率の引き上げ等による人件費の上昇、人材不足による既存従業員へのしわ寄せによる長時間労働や、これに伴う離職率の増加、採用コストの増加等により、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(4) 光熱費、食材価格、外注費用の高騰について

 施設運営事業では、原油価格等の上昇による光熱費の高騰、天候不順等による食材価格の高騰、人材不足等による外注費用の値上げにより、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(5) 気候変動について

 大型台風、豪雨に伴う風水害、冷夏、酷暑、降雪のほか、治療方法が確立されていない感染症が流行した場合等において施設の休業や出控えによるお客様の減少により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

5.災害等によるリスクについて

 当社グループの運用するファンドの投資対象となっている不動産や、自己勘定投資の対象として保有している不動産の所在する地域において、台風、洪水、地震等の自然災害や、火災、テロ、戦争その他の人災等を含む何らかの異変が発生した場合には、想定していた収入の減少及び消失、当該不動産の価値の毀損等により、当社グループの業績及び財政状態に影響を与える可能性があります。また、それらの多くは東京及びその周辺地域に集中しているため、当該地域において何らかの異変が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に影響を及ぼす可能性があります。

 なお、新型コロナウイルス感染症拡大は世界規模でマクロ経済に影響を与えており、感染状況や影響期間が長期化した場合は、施設運営事業をはじめ当社グループの業績等に影響を及ぼす可能性があります。

 

6.個人情報の取扱いについて

 当社グループでは、事業活動を通じて取得した個人情報及び当社グループの役職員に関する個人情報を保有しております。当社グループでは、個人情報の取扱いについては個人情報保護規程を策定の上、細心の注意を払っております。

 しかしながら、万一、当社グループの保有する個人情報が外部に漏洩した場合あるいは不正使用された場合には、信用の失墜又は損害賠償等により当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

7.不動産の瑕疵について

 当社グループは、資産運用会社として、主に不動産を中心に投資を行っておりますが、不動産には土壌汚染や建物の構造上の欠陥など、不動産固有の瑕疵が存在している可能性があります。

 当社グループは、投資不動産の瑕疵等による損害を排除するため、投資前には専門業者によるエンジニアリングレポート(対象不動産の施設設備等の詳細情報や建物の修繕履歴、地震リスクや地盤調査の結果等を記したもの)等を取得するなど十分なデューデリジェンス(投資対象の調査)を実施しておりますが、投資不動産取得後に瑕疵が判明し、それを治癒するために追加の費用負担が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

8.新株予約権の行使による株式価値の希薄化について

 当社は、企業価値の向上を意識した経営の推進を図るとともに、役員及び従業員の業績向上に対する意欲を高めることを目的として、役員及び従業員にストック・オプション(新株予約権)を付与しております。2023年11月30日現在、新株予約権による潜在株式数は238,400株であり、同日現在の発行済株式総数14,445,000株の1.7%に相当しており、これらの新株予約権が行使された場合には、1株当たりの株式価値が希薄化することになります。

 なお、新株予約権の詳細は、後記「第4 提出会社の状況 1 株式等の状況(2)新株予約権等の状況」をご参照ください。

 

配当政策

3【配当政策】

 当社は、株主価値の向上という観点から、内部留保資金を成長投資に充てる必要があると認識する一方で、株主の皆様に対する利益還元を経営の重要な施策の一つと位置付けており、配当については、継続的かつ安定的に行うとともに、会社の成長に応じて中長期的に増加させていきたいと考えております。

 当社グループの業績は、その事業の特性から、不動産市況をはじめとするマクロ経済の動向、取引の相手方の意思決定等を含む様々な外部要因の影響を受けます。また、特に不動産投資案件については、個別案件の取引額が比較的大きいため、特定の売買取引の成否及びその実現時期が期間損益に影響を与える結果、当社グループの業績は短期的に大きく変動する傾向にあります。

 したがって、当社は、配当額の決定に際しては、毎期の利益に連動して配当額が変動する配当性向の基準ではなく、比較的安定かつ逓増傾向にある株主資本に連動する株主資本配当率(以下、DOE)を基準として採用しております。配当については、年1回の期末配当を短期的な業績の変動によらず継続的かつ安定的に行うことを基本方針とし、必要な内部留保資金の水準等も考慮し、原則としてDOE2.0%を目安としております。

 他方でDOE基準による配当金の増加ペースは緩やかであり、業績が大きく上振れした場合にはその利益還元を即座に反映できないという側面もあるため、業績に応じた株主還元とROE向上等の資本効率向上の観点から、従来からのDOE2.0%を目安とした期末配当に加え、直前期の当期純利益が一定水準を超過した場合に、それを超える部分を利益連動型の配当として還元(中間配当)することとし、2024年11月期より、直前期の連結損益計算書における「親会社株主に帰属する当期純利益」の額が20億円を超過した場合、その超過分の40%相当額を中間配当として還元する方針です。

 内部留保資金については、引き続き、当社が当社グループの成長の源泉として位置付け、既に事業の中核となっている自己勘定投資のための資金として活用することで、更なる企業価値の向上を実現し、株主資本の増加による株主の皆様への利益還元の拡大を目指してまいります。

 

 当期におきましては、1株当たり32円の配当を実施いたしました。

 なお、当社は、剰余金の処分の額及び剰余金の配当その他会社法第459条第1項各号に定める事項の決定は、法令に別段の定めがある場合を除き、取締役会の決議による旨、また、期末配当の基準日は毎年11月30日、中間配当の基準日は毎年5月31日とする旨定款に定めております。

 (注)基準日が当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額(千円)

1株当たり配当額(円)

2024年1月19日

448,745

32

取締役会決議