2025年3月期有価証券報告書より
  • 社員数
    113名(単体) 2,684名(連結)
  • 平均年齢
    38.2歳(単体)
  • 平均勤続年数
    9.4年(単体)
  • 平均年収
    7,939,258円(単体)

従業員の状況

 

5 【従業員の状況】

(1) 連結会社の状況

令和7年3月31日現在

セグメントの名称

従業員数(人)

エンタテインメント

2,342

(99)

アミューズメント

56

(184)

全社(共通)

286

(267)

合計

2,684

(550)

 

(注) 1.従業員数は就業人数(連結会社外への出向者を除き、連結会社への出向者を含む)であります。また、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む)は、年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門、不動産及びその他セグメントに所属している人員数であります。

 

(2) 提出会社の状況

令和7年3月31日現在

従業員数(人)

平均年齢(歳)

平均勤続年数(年)

平均年間給与(円)

113

(42)

38.2

9.4

7,939,258

 

 

セグメントの名称

従業員数(人)

全社(共通)

113

(42)

合計

113

(42)

 

(注) 1.従業員数は就業人数(社外への出向者を除き、当社への出向者を含む)であります。また、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む)は、年間の平均人員を( )内に外数で記載しております。

2.平均年齢、平均勤続年数、平均年間給与の算定にあたっては、臨時雇用者数(パートタイマー、人材会社からの派遣社員を含む)を含まない人員数によっております。

3.平均勤続年数の算定にあたっては、当社グループからの転籍により当社で就業している従業員については、各社における勤続年数を通算しております。

4.平均年間給与は、賞与及び基準外賃金を含んでおります。

5.全社(共通)として記載されている従業員数は、管理部門に所属しているものであります。

 

 

(3) 管理職に占める女性管理職比率、男性労働者の育児休業等取得率及び労働者の男女の賃金差異

① 提出会社

当事業年度

管理職に占める女性労働者の割合(%)

(注1)

男性育児休業等取得率(%) (注2)

労働者の男女の賃金の差異(%) (注1)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

21.1

100.0

58.1

85.1

61.8

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

 2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

3.職群及び等級により異なる賃金水準を設定しております。男女では職群及び等級毎の人数分布の差があるため、賃金において差異が生じております。

 

 ② 連結子会社

当事業年度

名称

管理職に占める女性労働者の
割合(%)
(注1)

男性育児休業等取得率(%)

(注2)

労働者の男女の賃金の差異(%) (注1)

全労働者

正規雇用

労働者

パート・

有期労働者

㈱コーエーテクモゲームス

5.7

76.5

76.1

78.1

82.1

㈱コーエーテクモクオリティ
アシュアランス

16.7

-

102.6

95.9

93.9

㈱コーエーテクモウェーブ

0.0

-

42.4

72.8

81.2

㈱コーエーテクモネット

0.0

-

58.1

79.1

-

 

(注)1.「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」(平成27年法律第64号)の規定に基づき算出したものです。

 2.「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(平成3年法律第76号)の規定に基づき、「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律施行規則」(平成3年労働省令第25号)第71条の6第1号における育児休業等の取得割合を算出したものです。

 3.「男性育児休業等取得率」の「-」は育児休業取得の対象となる男性労働者がいないことを示しております。

 4.「労働者の男女の賃金の差異」の「-」は男性労働者がいないことを示しております。

 5.職群及び等級により異なる賃金水準を設定しております。男女では職群及び等級毎の人数分布の差があるため、賃金において差異が生じております。

 

(4) 労働組合の状況

労働組合は組織されておりませんが、労使関係は極めて良好であります。

 

サステナビリティに関する取り組み(人的資本に関する取組みを含む)

 

2 【サステナビリティに関する考え方及び取組】

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、以下のとおりです。なお、本記載には将来に関する事項が含まれており、これらは当連結会計年度末現在における当社グループの判断に基づくものです。

 

当社グループは、コーエーテクモの精神「創造と貢献 新しい価値を創造して、社会に貢献する」及びコーポレートスローガン「Level up your happiness 新しい面白さでもっと幸せに」を存在意義としております。存在意義を実現するために、ビジョン「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」を掲げ、サステナビリティ基本方針に基づくサステナビリティ活動を経営戦略と紐づけて実行し、ともに推進することで、持続可能な価値の創出を目指しています。

 

なお、サステナビリティ基本方針は、令和6年度にサステナビリティ委員会で審議・決議し、取締役会に報告したものです。

 

<サステナビリティ基本方針>

コーエーテクモグループは「創造と貢献」の精神のもと、「新しい面白さ」を創出し、世界中のみなさまの心の豊かさや幸せに貢献することを存在意義とします。私たちを支えてくださる様々なステークホルダーの期待に応えるように、社会課題へ積極的に取り組み、「人」を中心に考え、企業価値向上と持続可能な社会を目指します。

 

(1)サステナビリティ共通

① ガバナンス

当社グループは、社会と当社グループの持続的な成長を目指し、サステナビリティに関する施策を戦略的に推進するため、令和5年にサステナビリティ委員会を設置しました。サステナビリティ委員会は、当社の代表取締役社長(令和7年6月19日以降は、代表取締役 社長執行役員CEO)が委員長を務め、CSuO(Chief Sustainability Officer)、当社並びに国内グループ会社の各事業部・本部の責任者が委員となります。サステナビリティ委員会では、サステナビリティに関する方針及び戦略、取組事項について四半期に1回以上、定期的に審議し、決議を行います。サステナビリティ委員会での審議・決議の内容は年に1回以上、取締役会に報告し、取締役会が監督を行っています。サステナビリティ委員会で決議された内容に基づき、サステナビリティ推進室を中心に、社内関連部署及びグループ会社が連携して施策の推進にあたっています。

 

<令和6年度 サステナビリティに関する主な審議内容>

会議体

(開催頻度)

令和6年度実績

主な審議内容

報告

決議

取締役会

(年1回

以上)

計6回

・令和5年度サステナビリティ委員会の活動報告

・サステナビリティ基本方針の改定について

・温室効果ガスの削減目標、シナリオ分析

・マテリアリティの見直し

サステナビリティ委員会

(四半期に

1回以上)

第1回

・ESG評価機関の評価

・令和6年3月期 有価証券報告書サステナビリティ項目の開示について

・サステナビリティ委員会の委員構成

第2回

・令和6年3月期 有価証券報告書のサステナビリティ項目振り返り

・人的資本に関する目標の検討

・マテリアリティの見直しの進捗

第3回

・マテリアリティの目的・見直しの方向性

・ワーク・エンゲイジメント分析結果

・サステナビリティ基本方針の改訂

第4回

-

・マテリアリティのロングリストの検討

第5回

-

・マテリアリティの特定

第6回

・温室効果ガス シナリオ分析

・令和7年度サステナビリティ委員会の委員の交代

・ESG評価機関の評価分析

・温室効果ガス 削減目標の設定

 

 

 

② 戦略

当社グループは、「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」をビジョンとしています。ビジョンの実現に向け、10年先を見据えて、事業活動に関連する社会課題及び社会的要請のうち、当社グループの事業領域と親和性の高い課題に重点的に取組むため、令和6年度にマテリアリティを見直しました。また、このマテリアリティを踏まえて第4次中期経営計画を策定しており、持続的な成長のための重要な指針としています。

現在、各マテリアリティに対する推進体制の構築、目標の明確化、及び施策の策定に取組んでいます。

 

<マテリアリティの定義>

「創造と貢献」に基づき、ビジョン「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」に向け、中長期的に持続的な成長及び企業価値向上のために、特に重点的に取組むべき課題をマテリアリティとしています。

 

<マテリアリティ検討プロセス>

マテリアリティの見直しに際しては、社会課題及び経営方針の両面から課題を抽出し、マテリアリティ候補の重要性を評価した上で、計4回にわたりサステナビリティ委員会で審議・決議を行いました。その後、取締役会の決議を経て、最終決定をしています。

 

プロセス

検討内容

STEP1

マテリアリティ改定の目的・体系整理

・中長期的なビジョンを見据えて、サステナビリティ委員会にて当社グループのマテリアリティの目的及び定義を設定。

STEP2

マテリアリティ候補リスト作成

・攻め(経営方針等を踏まえた候補をリスト化)と守り(国際的な動向・要請等から候補をリスト化)の観点からマテリアリティ候補を整理。

①攻めの観点

ビジョン、経営基本方針、中期経営計画等を踏まえ、攻めのマテリアリティ候補をリスト化(7項目)

②守りの観点

国際ガイダンス、ガイドライン(ISO26000、GRI Standards、CSRD、SASB Standards)及び業界のガイドライン(CESA)に基づき、社会課題を把握し、守りのマテリアリティ候補をリスト化(30項目)

STEP3

絞り込み・マテリアリティの仮案の作成

・各項目をリスクと機会の側面から、ステークホルダーにとっての重要度を検討し、ESG評価機関(FTSE Russell、MSCI、CSA)及びSASBの評価項目から優先順位付けを実施。

・当社にとっての重要度を検討するため、以下の場を設けてレビュー及び討議を実施。

①サステナビリティ委員会

②全社外取締役(5名)にグループインタビュー

③代表取締役社長、代表取締役副社長に個別インタビュー

・ステークホルダーにとっての重要度と当社にとっての重要度の観点を踏まえ、37項目から26項目に絞り込み。

STEP4

経営討議を通じた最終化

・サステナビリティ委員会に加え、代表取締役副社長も参画し、マテリアリティ候補の重要度評価と「コーエーテクモの中長期的に持続的な成長及び企業価値向上のために、特に重点的に取組むべき課題」という観点に基づき、討議。意味合いが重複する項目を統合、重要な要素を抽出し、26項目から9項目を選定。

・サステナビリティ委員会で選定されたマテリアリティは取締役会にて審議、承認。

 

 

 

<コーエーテクモグループのマテリアリティ>

マテリアリティ

詳細説明

①期待を超える新しいコンテンツで最高の感動を提供

新しいコンテンツを生み出し続けることが、私たちの持続的成長の土台であり、人々に最高の感動を提供し続けることによって、活力ある社会にしていきます。

②IPの展開による新たな魅力を創出

私たちが持つIPを様々なエンタテインメントコンテンツとして展開・活用させ、新しい魅力を生み出すことで、人々に新たな面白さを提供します。

③新たな価値を生み出す人材の育成

私たちは、創造力と技術力を持つ人材の育成を通じて、新たな価値を生み出し、企業の成長とより良い社会の実現に貢献します。

④多様な人材が活力に満ちて働ける職場環境の実現

社員の多様な価値観を尊重し、活力に満ちた環境を整えることで、エンゲージメントを向上させ、高いモチベーションを維持しながら、企業の競争力向上につなげます。

⑤経済価値の適切な分配

私たちの企業活動を通じて生み出した利益を株主・社員・地域社会をはじめとしたステークホルダーに適切に還元し、社会への貢献を通じて持続的な成長を続けます。

⑥コーポレートガバナンスの強化

透明性・公正性を重視し、持続的な成長と企業価値の向上を実現します。また、取引先を含めた腐敗防止や汚職防止に取り組み、ステークホルダーからの信頼を高めます。

⑦文化や歴史の魅力を世界に発信

コンテンツを通じて、日本やアジアをはじめとした歴史や文化に配慮しながら、その魅力を世界に発信することで、異なる文化への理解を深め、尊重し合う社会を目指します。

⑧消費者を保護し、安心して楽しめる環境の提供

消費者保護やカルチャライズ、情報セキュリティ等に配慮して、世界中のお客様が安心して楽しめるプレイ環境を整え、お客様との信頼関係を高めていきます。

⑨心の豊かさへの貢献

私たちは、新たな体験や感動を通じて、お客様の心を豊かにし、コミュニティを育んでいきます。社会の一員として積極的に地域社会や学術活動に参画することでより良い社会の実現に寄与します。

 

 

③ リスク管理

全社的なリスク管理プロセスは、代表取締役社長(令和7年6月19日以降は、代表取締役 社長執行役員CEO)が委員長を務めるリスク管理委員会にて全社一元的に管理されております。

リスク管理委員会は、委員長である代表取締役社長(令和7年6月19日以降は、代表取締役 社長執行役員CEO)の判断により必要に応じて適宜開催され、リスク管理基本方針及び諸施策に関する審議を行っております。また、従業員等への適切な指示及び教育を通じて、リスク対応体制の整備を推進し、全社的なリスク管理の実効性向上に努めています。

 

(2)気候変動

① ガバナンス

当社グループは気候変動に関する環境問題を社会の一員として取組むべきものとして捉え、気候変動に関するガバナンスについては、前項の(1)サステナビリティ共通 ①ガバナンスに準じた体制に基づき、サステナビリティ委員会で定期的に審議・決議し、取締役会に報告を行っています。

また、令和6年度に行ったマテリアリティの見直しにおいて、当社グループにとっての重要度等を総合的に検討した結果、気候変動に関する課題は、現段階ではマテリアリティに該当しないとの結論に至りました。また、シナリオ分析において、定量リスク及び短期的な定性リスクが総じて低い結果となりました。一方で、中長期的には気候変動に対する取組が必要と考えており、今後も継続的に対応を続けてまいります。

 

 

<令和6年度気候変動に関する審議・報告事項>

会議体

(開催頻度)

令和6年度実績

主な審議内容

取締役会
(定期報告は

年1回以上)

計3回

・令和5年度サステナビリティ委員会の活動報告として、Scope1・2・3実績について(報告)

・温室効果ガスの削減目標、シナリオ分析(報告)

・マテリアリティの見直しにおける気候変動の項目に対する検討結果(報告)

サステナビリティ委員会

(年2回以上)

計3回

・令和6年3月期 有価証券報告書サステナビリティ関連開示Scope1・2・3実績について(報告)

・温室効果ガス 削減目標の設定(決議)

・温室効果ガス シナリオ分析(報告)

・マテリアリティの見直しにおける気候変動の項目に対する検討

 

 

② 戦略及びリスク管理

ア.気候変動関連シナリオに基づく定性的なリスクと機会

気温上昇が1.5℃に抑えられた世界、気温上昇が4℃に進む世界などを想定し、各シナリオにおいて、気候変動が当社グループの財務に与えるリスクと機会を分析しました。シナリオ分析の検討に際し、国際的な信用性が高く「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」の提言においても引用されるIEA(International Energy Agency、国際エネルギー機関)及びIPCC(Intergovernmental Panel on Climate Change、国連気候変動政府間パネル)の設定するシナリオを参照しました。なお、気候変動のリスクと機会の検討にあたっては、検討期間を「短期」「中期」「長期」の3期に分類し次のように定義しています。

 

<気候変動のリスクと機会の検討における「短期」「中期」「長期」の定義>

期間

想定年数

短期

1~3年

中期

3~10年

長期

10~15年

 

 

<気候変動のリスクと機会の検討における影響度についての評価>

影響度は財務に負の影響を与える蓋然性の程度を低、中、高とし評価しています。

 

a.移行リスク(1.5℃シナリオ:参照シナリオ「Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)」)

移行リスクでは、現行の規制や新たな規制において調達での影響があると予測されます。当社グループの主要調達先である情報通信業は、電力使用にともなうCO2排出量が大きく、GX-ETS(グリーントランスフォーメーション排出量取引制度)が令和8年から開始されることから経営状況に負の影響を与える蓋然性があり、短期、中期、長期のいずれも新たな規制によるリスクが高くなりました。また、ゲームソフトの購入やモバイルゲームでの課金による収入が売上の大半を占めるなど、対個人サービスの売上比率が高いため、当社グループの製品・サービスに対する規制強化による影響は中長期的に高くなりました。

その他、技術リスクでは、一般的に低炭素製品や技術へのシフトが進み、当社グループの主要調達先である情報通信業では、サーバー設置の整備等が求められることにより中期的にリスクが高くなりますが、長期的にはある程度の新技術対応が進むと考えられることから、影響度が中程度に減少しております。

評判リスクは、当社グループの気候変動の取組に対し、中期的に個人の顧客や株主からの信用度におけるリスクや消費者の嗜好面でのリスクがあることを予想し売上への影響としては高くなりますが、長期的には技術発展が進み、リスクが下がることが考えられます。当社グループはこのように高まるリスクに向けて準備すべく、中期期間中の令和12年度を目標年として、③指標及び目標の記載のように、温室効果ガス排出量の削減目標を策定し、削減の取組を進めてまいります。

 

 

<移行リスク>

分類

影響先

短期

中期

長期

現行の規制

・カーボンプライシングの仕組み
・排出量報告義務の強化
・既存製品・サービスの義務付けと規制

調達

売上

新たな規制

・カーボンプライシングの仕組み
・排出量報告義務の強化
・既存製品・サービスの義務付けと規制

調達

売上

法規制

・訴訟へのエクスポージャー

調達

売上

技術リスク

・既存製品・サービスを低排出オプションに置換
・低排出技術への移行

調達

売上

市場リスク

・顧客行動の変化

調達

売上

評判リスク

・消費者の嗜好の変化

調達

売上

 

 

b.機会(1.5℃シナリオ:参照シナリオ「Net Zero Emissions by 2050 Scenario (NZE)」)

市場の機会における調達面では、中期的に主要調達先の情報通信業に対するインセンティブ制度が充実することから、調達コストが低減する可能性が高いと考えられます。また、レジリエンスにおいても、一般的に省エネ対策や再エネプログラムへの参加が進むことが予想され、主要調達先の一つであるゲームプラットフォーム企業では使用エネルギー量が高い点から、中期的にメリットを受ける蓋然性が高くなります。資源の効率性では、ゲームのパッケージ販売からオンライン販売へのシフト等を含む生産手段のデジタル化や運送手段の効率化による影響が高く、輸送費や生産コストの低減が見込まれることから、メリットが大きくなると考えられます。エネルギー源においては、低排出なエネルギー源の使用により、中期的には顧客や株主からの信用度を獲得する蓋然性が高くなりますが、長期的には、これらの新エネルギーが一般的になっていくことが考えられ、長期的な機会は中程度になります。製品・サービスにおいては、消費者の嗜好も変化する点から、当社グループが低排出に配慮した製品・サービスを提供するなどした場合、中長期的に機会が高くなると考えられます。

 

<機会>

分類

影響先

短期

中期

長期

市場

・新市場への参入
・インセンティブ導入

調達

売上

レジリエンス

・再エネプログラムへの参加及び省エネ対策実施
・リソースの代替・多様化

調達

売上

資源の効率性

・効率的な輸送手段の利用
・生産・流通プロセスの効率化
・リサイクルの利用
・効率的な建物への移転
・水の使用量・消費量の削減

調達

売上

エネルギー源

・低排出エネルギー源の利用 

・支援的な政策インセンティブの利用 

・新技術の活用

調達

売上

製品・サービス

・低排出製品・サービスの開発及び拡大
・R&D・技術革新を通じた新製品やサービスの開発
・事業活動の多様化
・消費者の嗜好の変化

調達

売上

 

 

 

c.物理的リスク(4℃シナリオ:参照シナリオ「IPCC RCP8.5」)

急性リスクでは、干ばつ、熱波、竜巻、地滑り、地盤沈下、山火事など多様なリスク要因が業績に影響を与えると予測しています。調達に関しては、ゲームプラットフォーム企業を中心とした情報通信業や現時点での調達先実績の比率の高い不動産業を対象として、数年から15年までの期間において、洪水、台風、大雨、地盤沈下などの影響を受けると考えられます。当社グループの取引先である情報通信業では通信障害などのリスクが考えられ、不動産業界でも不動産価値の低下や修復費用の増大などの影響があることから、中程度のリスクとなります。売上に関しては、ゲームを購入する対個人向けサービスが10年以内に自然災害の影響を大きく受けることは想定されにくいものの、10年以上の長期では、自然災害の蓋然性が増大することから、その影響を受けられると考えられます。

慢性リスクでは、温度変化、降水パターンの変化、海面上昇、熱ストレス、海洋の酸性化などが各産業の業績に影響を与えると予測しています。調達先の情報通信業に関しては、3年以内に慢性的な変化が起きる蓋然性は低いですが、それ以上の中長期になると徐々にこれらの影響が大きくなると考え、当社グループのリスクは中程度となりました。売上は、売上実績の比率が高い対個人向けサービスや不動産業界の影響が、10年以上の長期にはリスクが増大することから、影響度は中程度になると考えられます。

<物理的リスク>

分類

影響先

短期

中期

長期

急性リスク

・台風、豪雨

・洪水

・熱波

・山火事

調達

売上

慢性リスク

・温度変化(空気・淡水・海水)

・降水パターンと降水の種類の変化(雨、雹、雪/氷)

・海岸浸食

調達

売上

 

 

イ.気候変動関連シナリオに基づく定量的なリスク

当社グループは、気候変動に関する定量的分析として、ゲームソフト開発が当社グループ事業の大半を占めている点を考慮し、電力の価格変化による影響について検討しました。また、当社グループや従業員が利用しているビルや社宅、寮という自社所有の不動産を考慮し、資産の物理的被害の影響も分析しました。下記の定量的なリスクの分析の結果は、サステナビリティ委員会及び取締役会に報告され、影響は限定的であると評価しております。

シナリオ分析の検討に際しては、地球環境産業技術研究機構(RITE)の温暖化対策評価モデルDNE21による電力価格予測を参照し、資産の物理的被害は、国土技術研究センター(JICE)の洪水による浸水リスク試算ツール及び国土交通省の浸水ナビを用いています。影響期間は、定性的分析と同様に短期(1~3年)、中期(3~10年)、長期(10~15年)とし、リスクや機会の程度(影響度)は、売上額に対する影響額が10%以上の場合は高、1%以上10%未満は中、1%未満は低という3段階で評価しています。

 

a.電力の価格変化による財務的影響

地球環境産業技術研究機構(RITE)の「排出上振れシナリオ」では、1.5℃未満シナリオにおいて、主要先進国の炭素価格が高まらず、また「成長実現シナリオ」の想定ほど技術が進展しない状況での電力料金の推移を予測しています。当社のベースラインである令和5年度の使用電力量(国内のみ)に基づき、電力量が増加しない前提で、電力料金の上昇影響を分析した結果、短期・中期・長期的に増加するコストの影響は、低と評価され、当社グループの中長期的な計画には大きな影響が及ばない見込みです。

 

b.資産の物理的被害による財務的影響

4℃シナリオにおける当社グループ所有の事務所の浸水深から、気候変動後の資産被害額を概算しました。売上高に対する割合から財務的影響を分析した結果、いずれの資産も被害額は生じず、財務的影響もないと評価されます。当社グループの中長期的な計画に負の影響はない見込みです。

 

③ 指標及び目標

  当社グループは、気候関連リスク・機会への対応の一環として、温室効果ガス排出量を指標として設定し、自社排出となるScope1,2を、令和12年度までに令和5年度比50%削減すること、令和32年度までには、ネットゼロにすることを目標とします。目標達成に向けて当社グループの資産を管理する不動産部を中心に当社管理本部が施策を検討し、サステナビリティ委員会にて決議します。目標達成に向けての省エネルギー対策の更なる推進や再生可能エネルギーの購入等を進めてまいります。

 

 

指標

目標

令和12年度(2030年度)

令和32年度(2050年度)

Scope1・2のGHG排出量

令和5年度(2023年度)比で

50%に削減

ネットゼロ

 

 

<コーエーテクモグループの温室効果ガス排出量>

(単位:t-CO2)

分類

令和5年度

令和6年度

Scope1

127

112

Scope2(マーケットGHG排出量)

5,225

5,464

Scope3

 94,861

 81,200

 

※Scope3のカテゴリ別の内訳については下記のとおりです。

分類

令和5年度

令和6年度

カテゴリ1

購入した製品・サービス

69,500

55,411

カテゴリ2

資本財

4,208

3,634

カテゴリ3

Scope1、2に含まれない燃料及びエネルギー活動

1,309

1,337

カテゴリ4

輸送・配送(上流)

833

1,131

カテゴリ5

事業から出る廃棄物

93

123

カテゴリ6

出張

76

101

カテゴリ7

雇用者の通勤

613

671

カテゴリ11

販売した製品の使用

17,445

18,029

カテゴリ12

販売した製品の廃棄

90

70

カテゴリ13

リース資産(下流)

694

693

 

(注)1.算出範囲:国内外の連結子会社

2.算定基準:サプライチェーンを通じた温室効果ガス排出量算定に関する基本ガイドライン(ver.2.5 環境省/経済産業省)

3.排出係数:燃料と国内電力は環境省「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」によって公表されている排出係数を使用。海外の電力については各国政府が公表する排出係数もしくはGES((公財)地球環境戦略研究機関)のCDMデータベースにおける排出係数を使用。

4.カテゴリ8、9、10、14、15は対象外

5.算定対象期間は、令和5年度は令和5年4月~令和6年3月、令和6年度は令和6年4月~令和7年3月です。

6.令和6年度より温室効果ガス排出量の算定方法について変更を行いました。過年度分も遡及適用し、令和5年度のScope3カテゴリ1、カテゴリ3、カテゴリ5は変更後の温室効果ガス排出量に変更しています。

 

 

(3)人的資本

当社グループにとって人的資本の強化は中長期的な成長に向けて最優先で取組むべき課題であると考え、人材育成方針、育成すべき人材像、人材戦略を定め、施策を行っています。令和6年度に見直したマテリアリティにおいても「③新たな価値を生み出す人材の育成」と「④多様な人材が活力に満ちて働ける職場環境の実現」を中長期的な重要課題として定め、人材戦略と紐づけて取組を進めています。

 

① 人材育成方針及び戦略

ア.人材育成方針

「良きクリエイターは良きビジネスパーソンであれ」の考えの下に、新しい面白さを実現するクリエイターと、成長性と収益性を実現するビジネスパーソンの2つの両立を人材育成方針としています。この人材育成方針に基づき、会社の持続的な成長を支えるための育成すべき人材像を3つの視点から定義しております。

 

<育成すべき人材像>

a.自立(自律)したプロフェッショナルなクリエイター

・担当する業務に関する知識・技術が卓越しており、また、周辺業務についての知識も有している人材

・ブランド力を向上するクオリティの高い商品を、妥協せず徹底的にチェックを行いながら期限内に仕上げられる人材

 

b.価値創造を支え、ビジネスを推進・強化する人材

・新分野の開拓や新たなグローバルIPの創造と展開に向けて、自ら新しい企画を立ち上げ、商品化できる人材

・全社的な視点で最大の成果を出すために、自ら動き、必要な支援や仕組みづくりを行うことができる人材

 

c.グローバルな視点でIPの価値を高める人材

・異文化や多様性を理解・尊重し、グローバルな観点で主体的にビジネスを推進する人材

・コーエーテクモのIPの価値を理解し、海外のパートナー企業やグループ内海外拠点をはじめとした多様な文化背景を持つメンバーと協働して価値を醸成できる人材

 

イ.戦略

当社グループでは、人材育成方針に基づく「育成すべき人材像」の実現に向けて、3つの人材戦略を策定し、実行しています。

 

a.新卒入社者を中心とした多様な人材の確保

・新卒採用への取組

当社グループは長年にわたり新卒採用を最重要事項として取組んでいます。変化の激しいゲーム業界で継続して成長するためには、フレッシュな感性や新しい能力・価値観を持った新入社員の存在が必要です。好きな気持ちこそが原動力であるという考えから「ゲームファンの採用」を一貫して続けており、日本のみならず海外においても就職活動イベントへの参加や積極的な学校訪問等の活動を行い、多様な人材の採用に力を入れています。

 

・女性活躍推進の取組

当社グループは、社員への公平な評価・処遇を掲げ、実力本位で平等な昇進、登用の機会を確保しています。キャリア促進をさせることで、女性が活躍しやすい環境づくりに取組んでいます。令和6年度には、管理職層の意識改革と女性部下育成スキルの向上を目的とした研修を実施しました。

 

・外国籍社員が活躍できるオープンな環境

多様性を推進し、グローバルで活躍できる優秀な人材を確保すべく、新卒を中心に外国籍社員を積極的に採用しております。その採用にあたって入社当初の生活面での不安を軽減し、安心して勤務を開始できるよう、社員寮といった住居支援等を含む福利厚生制度から安心して働ける環境を整備しています。最近では管理職やリーダー職として活躍する外国籍社員も増加するなど、多様な人材が活躍できる組織となっており、当社グループの競争力の強化につながっています。

 

 

b.成長を実現する人材育成制度

当社グループには、ゲームファンとして入社した新入社員を育成し、ディレクターやプロデューサーへと成長させるための仕組みが整備されており、これが卓越したヒューマンパワーを生み出しています。社員の成長を後押しするために、将来的にディレクター・プロデューサーとして必要な基礎知識を補強し、社内のノウハウを共有するための「プロデューサー研修」をはじめとして、様々な研修を実施しています。また、各部署内で社員が講師となり、お互いに必要なスキルを教え合う各部署主幹研修が自発的に行われており、部署全体で成長を促していく風土作りにつながっています。その他にも、社員の適性に応じた複線的なキャリアパスを用意し、外部研修や社内講演会、通信教育制度等の学びをサポートすることで、社員個々人が自分のキャリアを具体的に描けるようにしています。

 

c.安心して働ける環境の構築(社内環境整備方針)

当社グループは、社員が能力を発揮し、長く活躍できるための環境を整備しています。また、業界でも屈指の福利厚生を完備することで、社員の離職防止及びモチベーション向上を図っています。

・働きやすい勤務制度の整備

フレックスタイム制の導入、子どもが小学6年生まで利用できる時短勤務制度や時差出勤(スライド出勤)を導入し、育児と仕事を両立しながら活躍できる職場環境を整備しています。令和6年度からは育児・介護のための在宅勤務の制度化、フレックスタイム制におけるコアタイムの短縮により、様々なワークスタイルや柔軟な働き方の拡充をしています。

 

・モチベーションを高める支援制度

当社グループは、令和7年度を含め10年連続のベースアップを実施しております。また、社宅・独身寮の提供といった生活の安定を支える施策に加え、報奨金制度、業績表彰制度等、モチベーションを高める支援制度に取組んでいます。

 

・キャリア支援施策の実施

社員が望むキャリアを実現し、自分に合った業務で能力を発揮していけるように、キャリア面談、キャリアステージ研修、社内公募制度、自己申告制度等を通じて会社としてキャリアを支援しています。こうした支援を通じて社員のキャリアに対する意識を高めています。

 

・健康経営に向けて

社員が安心して長く働けるよう健康増進に向け、産業医体制の拡充、再検査受診補助、長時間労働者へのケア、メンタルヘルスケアに関する研修、24時間利用可能なメール相談、オンライン産業医面談、ストレスチェック等のサービスを提供し、社員が自身の状況を把握し、カウンセリングを受けられる環境整備をしています。経済産業省及び日本健康会議が選出する「健康経営優良法人2025(大規模法人部門)」にも認定されており、今後も積極的に社員の健康増進に取組んでいきます。

 

・エンゲージメント向上

令和5年度よりエンゲージメントサーベイを実施し、従業員エンゲージメントを測定しています。調査で分かった「強み」と「弱み」に対して全社的取組だけでなく、各職場主導で注力課題を設定し、個別の対応策を検討・実施し、継続的な改善活動を行っていきます。

 

・多様性を活かす風土の醸成

多様な人材が互いに尊重し合い活躍できる組織を目指し、ダイバーシティとLGBTQ+に関する意識向上を図る研修も行っております。また、令和6年4月からは、国内グループ会社で、同性パートナーを社内規程上の配偶者と同じ扱いとし、慶弔見舞金や慶弔休暇等の対象とするパートナーシップ制度を導入しています。

 

・人権の尊重に向けた取組

当社グループは、全従業員一人ひとりの人権を尊重することを企業活動の基本としており、行動規範に人権に関する方針を明記しています。また、平成28年度から英国現代奴隷法2015に基づく声明を公表し、毎年更新を行っています。

 

ハラスメント防止は、人権尊重の取組の一環として重要であると考えております。当社グループでは、快適で安全な職場環境を実現するため、ハラスメント防止に関するグローバル規則の策定、社員を対象とした教育研修の実施など、各種対策を推進しております。また、ハラスメントに関する相談や通報に対して迅速かつ適切に対応できるよう、複数の相談窓口とハラスメント対策委員会を設置し、プライバシーに配慮した対応を行っております。「人権の尊重」の観点から、ハラスメント防止をはじめとした職場環境の整備に努め、今後「人権」に関する取組を更に強化してまいります。

 

 

② 指標及び目標

3つの人材戦略に沿って更なる強化に資する指標と目標を策定し、取組んでいます。

 

戦略

指標

範囲

(注1)

令和4年度
 実績

令和5年度
 実績

令和6年度
 実績

目標

(目標年度) (注2)

多様な人材の確保

女性管理職比率

()

国内

7.8

7.8

7.2

12.0

(令和12年度)

(全社)

(13.3)

(14.6)

(14.3)

開発職人員数 (注3)

()

全社

1,928

国内1,449
海外479

2,077

国内1,538
海外539

2,217

国内1,664
海外553

-

(全従業員に占める割合)

(%)

(83.3)

(83.6)

(84.2)

外国籍社員数 (注4)

()

全社

666

国内120
海外546

747

国内140
海外607

783

国内159
海外624

-

(全従業員に占める割合)

(%)

(28.8)

(30.1)

(29.1)

新卒採用人数

()

国内

150

158

199

200

(全社)

(200)

(215)

(244)

新入社員女性比率

()

国内

24.0

33.5

28.1

30.0以上

(全社)

(27.5)

(36.3)

(31.6)

人材育成制度

従業員一人当たりの
総研修時間

(h/年)

国内

-

-

49.6

60.0以上

(令和12年度)

従業員一人当たりの
各部署主幹研修時間

(h/年)

国内

-

-

20.1

24.0以上

(令和12年度)

通信教育制度(自己啓発支援)利用率

()

国内

22.2

19.6

25.4

30.0以上

(令和12年度)

安心して働ける環境の構築

従業員エンゲージメント (レーティング)

偏差値

国内

-

50.4 (B)

50.4 (B)

58.0 (A)

(令和15年度)

離職率

()

国内

4.6

5.1

4.7

5.0以下

(参考:定年退職を除く)

(4.4)

(5.0)

(4.6)

新入社員3年後離職率

()

国内

5.4

4.8

5.9

-

(全社)

(6.7)

(4.7)

(6.7)

定期健診受診率

()

国内

-

-

100.0

100.0

定期健康診断後の精密検査受診率

()

国内

-

-

42.1

50.0以上

年次有給休暇取得率

()

国内

85.4

84.9

81.8

80.0以上

育児休業取得率

()

国内

75.8

男性66.7

女性100.0

72.3

男性64.9

女性100.0

85.2

男性80.0

女性100.0

100.0

育児休業からの復職率

()

国内

100.0

100.0

100.0 (注5)

100.0

ハラスメント防止研修受講率

()

国内

96.7

99.5

100.0

100.0

 

(注)1.国内に含まれるのは㈱コーエーテクモホールディングス、㈱コーエーテクモゲームス、㈱コーエーテクモクオリティアシュアランス、㈱コーエーテクモウェーブ、㈱コーエーテクモネットであります。

2.目標年度の記載がない指標は目標年度を定めずに継続して目標とする指標

3.執行役員・正社員で、開発関連部署に所属している者

4.日本からの海外出向者は海外子会社社員に含めております。

5.復職予定者を含む

 

 

(4)知的財産

当社グループは、グローバルIPの創造と展開によって重層的な収益構造を構築し、高い成長性と収益性を実現しており、そのためには、知的財産権の保護・強化が不可欠であることから、以下の2点の取組を継続して行っております。


① 戦略

ア.知的財産権の保護・権利化の取組

新規グローバルIPを保護するため、特許権・商標権等の適切な権利取得と、併せて出願件数の増加のための発明奨励に取組んでおります。新規で開発するゲームの全てにおいて発明発掘のヒアリングを行い、漏れのない権利化を実施しております。出願にあたっては、ゲームシステムの根幹に関するものを重要発明として優先的に出願し、IP保護に努めております。加えて、発明の顕現性を定数評価し、評価が高いものを優先的に出願対象とすることで、収益性を高める権利化を実施しております。出願の根幹となる発明奨励については、出願時の職務発明補償金のみならず、権利化できた際には、発明者に対して報奨金制度に基づいたインセンティブを付与し、更なる新規発明の創出への意欲向上に努めております。また、従業員向けに特許・商標権の社内研修会を定期的に開催し、IPに関連する法令知識の普及に努めております。

 

イ.知的財産権の活用・価値向上のための取組

知的財産権の価値向上を図るため、第三者による侵害事案に対しては、法的手続きを含めた適切な対応を講じております。特にインターネット上での侵害に対しては、発見後速やかにプラットフォームに通報して削除を求め、令和6年度は1,123件の侵害コンテンツの削除を行いました。前年度から連続して1,000件を超える削除を実施しており、今後も引き続き侵害コンテンツの削除に注力していきます。加えて、新たにヤフーオークションの知的財産権保護プログラムBに登録し、昨今増加傾向にある当社IPを侵害する商品に対しては、必要な対応を行うことで、当社IPの保護及び価値向上に取組んでおります。悪質な権利侵害に対しては、必要に応じて適切な措置を講じることで、正規ライセンシーの権利を保護し、当社IPに関心を寄せるユーザーの皆さまが安心してコンテンツを利用できる環境の整備に努めております。これにより、当社IPの継続的な価値向上を図ってまいります。

 

(5)情報セキュリティ

当社グループの成長には、ステークホルダーからの信頼を確保することが不可欠であると考えております。このため、情報セキュリティを経営上の重要課題の一つとして考え、グローバルに事業を展開するグループ全体で、不正アクセス、情報漏洩、内部不正などの情報セキュリティ上の事故を未然に防止するとともに、個人情報の保護に向けた取組を継続的に実施しております。

 

① ガバナンス

リスクに関する情報を入手した際のエスカレーションプロセスを定めており、万が一インシデントが発生した場合には、情報セキュリティ統括責任者の指揮下で対応する体制が整備され、状況に応じ代表取締役社長(令和7年6月19日以降は、代表取締役 社長執行役員CEO)を委員長とするリスク管理委員会が開催されます。

また、各部門において個人データ取扱マニュアルを整備しており、プライバシーに関するインシデントが発生した場合には、各部門の個人データ取扱責任者から関係部署責任者等の関係者への速やかな報告が行われる体制を構築しております。併せて、状況に応じて代表取締役社長(令和7年6月19日以降は、代表取締役 社長執行役員CEO)への報告が行われる運用としております。

 

② 戦略

ア.リスクコントロール

a.不正アクセス、マルウェア(※)対策

外部からの攻撃に備えるとともに、不正アクセスなどのリスクに対して、多層的な防御策を採用した統合的かつ効果的な施策を実施しています。新たな基準やトレンドについても常に情報を収集し、必要性を見極めながら最適な対策を実施できるよう、情報セキュリティ管理のアップデートを行っています。

※コンピュータウイルスやワーム、ランサムウェアなどの悪意のあるソフトウェアの総称。システムへの侵入や情報の盗難、破壊等を目的とする。

 

b.情報漏えいリスクへの対策

情報漏えいのリスクを低減するために、個人情報や機密情報を含むファイルは情報保護ツールを用いて暗号化しており、データが漏えいしても関係者以外は内容を閲覧できないように保護する対策を講じています。また、従業員の情報持ち出し管理の強化に加えて、操作ログの取得を行い、社内からの情報漏えいの抑止に努めています。

 

 

c.自然災害リスクへの対策

事業の継続性を高めるために、国際的な基準に準拠したクラウド環境の活用を促進し、大地震などの自然災害やサイバー攻撃による基幹システムの停止を防いでいます。また、当社グループ内の各拠点間のネットワークのバックアップ網を強化し、単一障害点を作らない設計と各拠点網の冗長化、バックアップ網の強化を進めています。

 

イ.社員教育

情報セキュリティ教育や標的型攻撃メール訓練などを定期的に実施し、社員の意識向上とスキル向上に努めています。具体的には、Eラーニングによる情報セキュリティ教育を国内外のグループ会社の全社員を対象に実施しており、受講率は100%を達成しています。また、標的型攻撃メール訓練では、疑似攻撃メールを社員に送信し、適切な対応を学ばせることで、攻撃に対する認識と対応力を強化しています。訓練結果においては、開封率及び報告率のいずれにおいても、国内日本企業の平均より対応力が高く、令和6年度は令和5年度と比較して改善が見られており、継続的な教育効果が認められています。

 

ウ.国内外グループ会社の管理

グループ各社の社内情報インフラの管理を当社の情報システム部に集約し、責任の明確化と運用の標準化を図ることで、管理体制の強化と運用効率の向上を実現しています。また、社内情報インフラの管理を一元化することで、統一的なセキュリティ運用の実現にも寄与しており、脅威への迅速な対応や情報漏えいリスクの低減を図り、グループ全体の情報資産の安全性を確保しています。これらの取組により、安定した運用と高いセキュリティレベルの維持に努めております。

 

エ.アクションプランの整備(BCP対策)

情報セキュリティインシデントの事象ごとに検知、初動対応、トリアージ、レスポンスの具体的内容を取りまとめたアクションプランを整備し、有事に備えています。これにより、緊急時にも迅速かつ的確に対応できる体制を整えています。万が一インシデントが発生した場合には、上記(5)情報セキュリティ ① ガバナンス に記載のエスカレーションプロセスに従い、関係部署が連携して対応を行います。 
 

③ リスク管理

当社グループは、情報セキュリティに関する事業上のリスクとして、以下のようなものがあると考えています。

・不正アクセスやサイバー攻撃によるシステム停止、データ流出・損失・改ざん

・関連法令や規制の遵守に伴うコストや手間の増加

・情報セキュリティ事故の発生に伴う訴訟や罰金・損害賠償の負担

・情報セキュリティ事故の発生に伴う社会的な信用の低下

これらのリスク管理のため、前項の取組及び施策を実施し、情報セキュリティの強化に努めております。