リスク
3 【事業等のリスク】
当社は、事業活動に影響を与える様々なリスクを正しく把握し、評価・分析して(Plan)、発生の未然防止、発生した時には影響を最小限にする対策を施し(Do)、その効果を検証(Check)、再発の防止(Action)を行っております。こうしたPDCAサイクルを実施・確認するため、取締役会において「リスク・コンプライアンス管理規程」を定め、四半期に1回以上、リスク・コンプライアンス委員会を開催しております。リスク・コンプライアンス委員会においては、継続的なリスクの把握と改善活動となるリスクマネジメントに取組み、議論、検討された事項については、定期的、または重要なリスクが発生した場合には随時に取締役会に報告を行っております。
また、2024年3月期に定めた人権方針に則り(https://www.et-x.jp/company/human_rights/)継続的・自律的なデュ・ディリジェンスを実践しております。2025年12月のリスク・コンプライアンス委員会においては、進捗および結果のモニタリングを行い、課題の確認と今後の取組みについて意見を交わしました。その中で、重大な人権を侵害する事象が発生していないことと、課題の解決にむけた改善状況を確認いたしました。
当社が認識するリスク事象につきましては、
のカテゴリごとに想定する事象を潜在リスクとして抽出しております。次に、抽出した事象を発生可能性(4段階)と財政状態及び経営成績に与える影響(4段階)の区分で分類した象限に評価・プロットし、リスクマップを作成しております。このリスクマップにプロットされたリスクは、発生可能性と影響度の高いものから低くする取組みとともに、社会や市場の環境、経営状況や人材の状況を勘案して、定期的に見直しを行っております。
こうした手続きを踏まえた上で、有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、投資者の判断に重要な影響を及ぼす可能性のある事項には、以下のようなものがあります。
当社はこれらの事業等のリスクを認識した上で、その回避及び発生した場合の対応に努めておりますが、当社株式への投資判断は本項及び本項以外の記載も併せて、慎重に検討した上で行われる必要があると考えております。なお、文中の将来に関する事項は、本書提出日現在において当社が判断したものであります。
(1) 製品及びサービスについて
① 製品競争力について
「ESS REC(REC)」は、克明な操作記録と優れた検索性によりシステム証跡監査ツール市場を創出してきた主力製品でありますが、近年は市場認知の向上に伴い、海外製品を含む新規参入が続いております。
また、企業のDX推進に伴うIT環境の拡大やサイバー攻撃の高度化を背景に、特権ID管理ツールへの需要は一段と高まっております。次世代型特権ID管理ソフトウエア「ESS AdminONE」は、後発ながら「REC」と組み合わせた統合提案により差別化を図っております。クラウド環境へ対応した「ESS REC Cloud」は従来から提供しておりますが、2026年4月には「ESS AdminONE Cloud」の提供も開始し、サーバー構築や保守が不要なクラウドサービスとして利用可能とすることで、導入負荷の軽減と利便性向上を実現しております。さらに、本人確認機能を高めてセキュリティを確保した「ESS REC 6」を2026年5月にバージョンアップいたしました。本番システムに対する重要操作のリモート作業監視を徹底する仕組みを強化するなど、統制強化と運用効率の両立を実現し、継続的に競争力強化を図っております。
当社成長の源泉はこれらの製品によるライセンス売上であるため、当社製品と比較して高機能であったり、同等の機能でありながら「低価格」を設定するような強力なライバル製品の出現によって「REC」の優位性が失われた場合や、「ESS AdminONE」等他製品でも競争力が保てない場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
② 製品開発について
当社の製品開発の基本スタンスは、システム運用の安全と安定を実現するためのパッケージソフトウエアを提供することにあります。当社では、システム運用のあるべき姿を汎用的に捉えて製品を企画し開発を行うため、開発した製品やサービスが顧客ごとのシステム運用現場の環境や実運用に適さないことにより、市場に受け入れられない場合があります。また、使い易さ、技術革新への対応の遅れなどの機能面や価格面において他社製品に劣るなどの理由によって、売上貢献できない場合もあります。さらに、企画した時点の計画よりも大幅に製品開発に時間を費やした場合や、開発した製品の不具合、生成AIを利用した製品で未知の脆弱性が発見されるなど、当該不具合の改修に多大な工数を要する場合もあり、いずれの場合においても開発費用の回収を実現できず、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
③ ライセンスに付随する保守サポートサービス及び品質について
当社製品の使用許諾(ライセンス)契約をされた顧客に対しては、原則として保守サポートサービス契約を締結していただき、当社製品の最新バージョンの提供と顧客のシステム環境下で安定的に使用いただけるようサポートを行っております。顧客のシステム更改で新システムに当社製品が採用されない場合や、システムの縮小・廃止などによる保守契約の解除や変更、また重大な製品の欠陥やインシデントの解決が長期化するなどによって顧客の信頼を損ね保守契約の更新に繋がらない場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
④ コンサルティングサービスについて
当社はコンサルティングサービス業務として、当社製品の導入にあたっての導入支援やシステム構築支援をメニュー化して提供しております。「ESS SmartIT Operation」の展開に伴って、従来の単体製品のインストールや各種支援からIT全般統制に向けたシステム構築の支援へと、システム要件や役務提供範囲の拡大だけでなく、技術面での高度化・複雑化が顕著になっております。
そのため、要件の実現に向けては、当社の役務提供範囲や検収条件及び納期設定、提出書類の品質に至るまで広範で高度なマネジメント力が要求されます。何らかのトラブルによって検収の遅れや見積以上の工数が発生しても顧客に請求できない場合、あるいは顧客の要求仕様との齟齬が生じ、損害賠償や補償作業を要求された場合、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(2) 特定取引先に対する取引依存について
当社においては、全売上高に占める株式会社NTTデータへの売上高の割合が高く、2025年3月期は22.2%、2026年3月期は19.7%、となっております。株式会社NTTデータとは代理店契約を締結し、取引開始以来永年にわたり安定した取引を継続しておりますが、今後当該契約が何らかの理由で変更あるいは解消された場合には、当社の財務状況及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 人材の確保及び組織的経営について
① 人材確保について
当社は、AI技術やクラウドサービス、最新のセキュリティ対策などを盛り込んだ次世代型新製品の開発、既存製品の拡張・改良及び製品の統合化などの研究開発テーマに取り組んでおり、これらの業務にあたる開発技術者の増強を図っております。またコンサルティング業務やサポートサービス業務に従事するシステム技術者の増員に加え、営業職の人材に関しても、その獲得だけでなく、IT/セキュリティ知識の習得、育成も喫緊の課題となっております。国内ではIT技術者不足による賃金の高騰とこれに伴う人材市場の流動化、少子化による新卒採用の売り手市場化により、今後も採用は困難な状況が続くものと考えております。
当社の人事制度は、育児・介護に関する諸制度や在宅勤務、時短勤務など柔軟な働き方を導入するとともに、職務記述書にもとづく公平・公正な評価制度を実施しております。2026年4月の新卒社員から初任給を300千円にすることで人材採用時の競争力を高めるとともに、社員に支給する賞与の標準月数を年4ヶ月から5ヶ月へ見直すことで6%の年収増加を計画し、離職の防止に取り組んでおります。採用した経験の浅い社員に対しては専門技術教育とOJTによる育成を、次世代リーダーと目される社員に対してはPL、PMに向けた教育やマネジメントの教育を行い、スキルアップによる能力の発揮と、さらなるモチベーション向上による定着化を図っております。また、在宅勤務が定常化する中でも一般社員と経営者、幹部社員間のコミュニケーションを密にする一体感醸成施策を実施するなど、生産性の向上と仕事や会社生活に関する不安や不満を解消し離職防止にも努めております。
IT技術者の確保が計画通りに進まない場合、研究開発の遅れによる製品リリースの遅延が発生する可能性があり、これにより、連携する営業施策を変更する可能性があります。加えて営業職の人材確保が計画通りに進まない場合は顧客開拓の遅延や競合製品による商談の失注などにより、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
なお、当社は「人材」をマテリアリティ(重点項目)と位置付けており、「2 サステナビリティに関する考え方及び取組」に具体的な内容を記載しております。
② 組織的経営について
当社が持続的な成長と中長期的な企業価値の向上を図るためには、事業計画の立案と実行、その業務進捗管理や部門間の連携などを担う多様なマネジメント人材の育成強化が課題となっております。事業基盤の拡大に併せて組織を成長させていくためには、業務執行レベルで部門責任者が迅速に意思決定を行い、全社横断的な課題を解決することが必要になります。
そのため、継続して次世代を嘱望される若手リーダーの育成に取り組んでおり、業務管理や部門間連携を図るなどのマネジメントスキルを体得する機会を創出しております。また、従来は所属する組織の年長者が経験の浅い社員のメンターとなっておりましたが、前事業年度より人事部門の有識者がメンターとなって社員のメンタルを手厚くサポートする体制を整えております。
現在のところ、技術部門のみならず全社において他社でのマネジメント経験を有するシニア・ミドル層の人材獲得とともに女性の幹部社員登用も進んでおりますが、次世代のリーダーや幹部社員候補育成の遅れなどによって事業計画の推進に支障を来した場合には、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(4) 知的財産権の侵害による訴訟リスクについて
当社は自ら開発した製品に関わる技術要件および商標について知的財産権を登録申請することによって、他社からの権利侵害の防止を図っております。しかし、当社が認識していない知的財産権が既に成立している可能性や、使用しているフリーソフトウエアが第三者の知的財産権を侵害している可能性は否定できません。当社は、当社ならびに当社製品を使用することによって顧客が、他社の権利を侵害していることについて、第三者からの請求に対応する義務を負っております。
このような知的財産権に関する損害賠償請求、使用差し止め請求、ロイヤリティ支払要求が発生した場合、その訴訟対応や費用負担により当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
(5) 情報セキュリティに関するリスクについて
当社においては、オフィスでの執務だけでなく在宅勤務や協力会社のリモートワーク環境も取り入れ、常にインターネットを利用したデータセンターのサーバー利用、メールの送受信や情報の収集などを行っております。こうした環境では、コンピュータウイルスの侵入や標的型メールの攻撃等により、顧客や当社の機密情報又は個人情報の流出や、ランサムウェアによって当該情報が利用できなくなる危険性が常に存在しております。また、社員(協力会社社員を含む 以下「社員」)だけでなく退職した社員が営業機密や技術情報などを不正に入手し、外部へ持ち出す可能性もあります。
当社では、ネットワークの脆弱性を狙った攻撃やウイルス付メールなどに対し、ハードウエア、ソフトウエアによるシステム環境の防御とともに、社員への情報セキュリティ教育や啓蒙など、継続的かつ適切なセキュリティ向上対策を講じております。また、社内からの不正な手段による情報の持ち出しや漏洩に対しても、「ESS REC」「ESS AdminONE」など当社製品を導入することにより、対策を強化しております。特に「ESS REC 6」では、常時本人認証の機能を活用して、PC画面の覗き見や他人のなりすましによるPC利用を制御しております。
組織体制においても、リスク・コンプライアンス委員会の下に情報セキュリティ部会を設置し、情報セキュリティ対策として活動計画の策定、実行の評価、情報セキュリティインシデントへの対応、社員に対する情報セキュリティに関する啓発と教育に取り組んでおります。
しかし、過去に例の無いウイルス攻撃等により当社が講じた対策が十分に機能しない場合や、当社製品の機能を無効化するなどの悪意により、情報セキュリティに関するリスクが現実のものとなった場合には、社会的な信用の失墜等によって、当社の財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。
配当政策
3 【配当政策】
当社は、株主の皆様への適切な利益還元を経営の重要課題のひとつとして位置づけており、配当政策に関しては、各事業年度における利益水準、次期以降の見通し、設備投資に係る資金需要及び内部留保の状況等を総合的に勘案した上で、配当性向33.3%以上に加え、純資産配当率(DOE)5%程度を目安として、期末配当の年1回、株主の皆様への利益配当を実施していく方針であります。
また、内部留保資金の使途につきましては、IT人材の確保に投資を行うとともに、日々変化し続ける情報技術の進歩に対するIT投資及び研究開発投資、並びにM&Aなどに充当し、事業基盤の安定と企業価値の向上に努めてまいります。
当社の配当の決定機関は、中間配当は取締役会、期末配当は株主総会であります。また、当社は中間配当を取締役会の決議によって行うことができる旨を定款に定めております。
第24期事業年度の剰余金の配当につきましては、上記の方針に基づいて、普通株式につき、1株当たり前事業年度比1円増配の26円(配当性向81.4%、純資産配当率4.9%)を予定しております。
なお、次期の配当につきましては、継続的かつ安定的な配当の観点から、1株当たり27円(配当性向80.7%、純資産配当率5%))の期末配当を予定しております。
当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
(注) 2026年6月19日定時株主総会決議による配当金の総額には、「株式給付信託(J-ESOP)」導入において設定した株式会社日本カストディ銀行(信託E口)が保有する当社株式に対する配当金額1,357千円が含まれております。