リスク
3【事業等のリスク】
有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況に関する事項のうち、経営者が提出会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、以下のとおりであります。
なお、文中の将来に関する事項は、当事業年度末現在において当社が判断したものであります。
(1) 当社の事業全体に共通する業績変動要因
①問題プロジェクトの発生
当社では、納期遅延、お客様クレーム、過大勤務を発生させたプロジェクトを問題プロジェクトと定義しております。問題プロジェクトは必ずしも不採算プロジェクトではありませんが、過去の実績では多額な原価を発生させて不採算となるケースが多く、問題プロジェクトが大型プロジェクトである場合には、当社全体の業績に影響を及ぼすことがあります。
また、問題プロジェクトを発生させたことでお客様からの信用が失墜して、取引が減少あるいは停止となった場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
②大型プロジェクトの採算
大型プロジェクトは事業効率が高いなどのメリットも大きく積極的に受注していく方針であります。当社は原則としてプロジェクト全体を一括して受注する契約形態を基本としていることもあり、開発要員などの経営資源の多くの割合を投入する大型プロジェクトの採算は、当社全体の業績に影響を及ぼすことになります。
③大型プロジェクトの組み替え不調
大型プロジェクトの場合、開発工程が完了すると多くの開発技術者が一斉に手空きとなる一方で、都合良く多くの開発技術者を要する後続のプロジェクトを用意できていることはまれであり、技術者の稼働率が低下しがちで、大型プロジェクトの切り替えが不調の場合には当社業績に影響が及ぶことがあります。
④受注価格水準の変動
当社の売上原価の大部分は、ソフトウェア開発に関する人件費と外注費で構成されていますが、最近のIT人材争奪戦と社会的要請から、いずれも増加傾向にあります。当社は、高付加価値化による受注価格の引上げやQCD(品質・コスト・納期)改善活動の一環として生産性向上によるコスト削減に努力しておりますが、増加したコスト分を受注価格に反映できなかった場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
⑤先行投資の影響
当社は、これからも研究開発・製品開発投資、研究開発型ベンチャー企業への投資、事務所移転・拡張、社内開発環境の最新化などを実施してまいりますが、当社の計画どおりに投資効果が得られなかった場合や、投資先企業の経営が悪化した場合などには、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑥取引先の事業再編や組織変更
当社の取引先において、グループ再編やM&Aなどにより経営体制が代わり、外注への発注方針が変更になった場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑦取引先の事業計画や研究開発計画の変更
当社の取引先自体の激しい競争や環境の変化を背景に、事業計画や研究開発計画の変更や中止が発生し、それに伴い技術者の稼働率が大きく変動した場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑧新しい要素技術の適用
当社の事業領域では、新しい要素技術を実装する案件が多く、経験に基づく見積が困難な難度の高い新技術の一括受託契約での見積を誤った場合には不採算になりがちで、逆に新しい要素技術の適用が減少した場合には、需要そのものが減少する可能性があり、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑨公的セクターの予算変動や規制
当社の社会公共分野の事業領域では、公的セクターの予算の増減や規制が業績変動要因となっております。当社では、社会公共分野での新事業領域への拡大に努力をしておりますが、予算削減や予算の執行が滞ると、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
⑩競争入札の拡大
当社の公的セクターや大手民間企業の開発案件は、競争入札になります。当社では、技術力を背景とした積極的な提案活動を展開しておりますが、戦略的な低価格での落札や失注した場合には、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(2) 主要取引先への依存度が高いことについて
当社では、継続して営業活動を強化して取引先バランスの確保に努めてまいりますが、上位取引先の受注動向等によっては当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(3) 需要構造の変化やイノベーションの停滞について
当社では、創業以来、技術革新などによる需要構造の激変を何回か経験してきましたが、研究開発・製品開発活動によりニューエレメントを得て、それを核とした主体的ビジネスで業績成長を果たしてまいりました。今後も研究開発による変化先取りで対応していく方針ですが、需要構造の変化に対して当社が適切に対応できなかった場合やイノベーションが停滞した場合には、当社業績に影響が及ぶことがあります。
(4) 人材の確保について
当社成長の元は優秀な人材の獲得・定着にあります。当社では、上場企業であることの信用力や知名度を活かし、また処遇面も向上させ、優秀な人材を獲得していく方針ですが、IT人材争奪戦の激化に伴い、こうした獲得策が成果に繋がらない場合、当社の更なる成長機会を逸する可能性があります。また、獲得した人材が定着しなかった場合、技術の伝承・再利用が途切れたり、プロジェクト編成に支障をきたしたりして、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(5) 安全衛生・労働災害について
当社は、従業員の安全、衛生及び健康の確保に向けて、労働安全衛生法その他の法令や通達の遵守など安全衛生管理に努めておりますが、プロジェクトに予期せぬ事態が発生して過大な勤務が続くなどで、精神性疾患や体調に不調をきたす従業員が発生し発病した場合、士気の低下や休職者・退職者の増加に繋がり、当社の業績に影響が及ぶことがあります。
(6) 優良な外注先の確保について
当社は、受注責任を全うできる範囲に外注範囲を限定することを基本方針として、業容の拡大、高収益の維持、受注弾力性の確保などを期して外注体制の強化を図っておりますが、優良な外注先が確保できない場合、当社の更なる成長機会を逸する可能性があります。
(7) 法令違反・内部統制について
当社では、法令・規制要求事項やISO 9001、ISO 14001、ISO/IEC 27001、ISO 22301、JIS Q 15001、プライバシーマークなどを含め、広くお客様の要請を満たしていく経営をコンプライアンス経営と定義しておりますが、何らかの事故が発生した場合、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社は効率的な内部統制の仕組みを構築しておりますが、何らかの財務報告上の指摘があった場合には、業績に影響が及ぶ可能性があります。
(8) セキュリティ事故について
当社は、情報セキュリティマネジメントシステム(ISO/IEC 27001)や個人情報保護マネジメントシステム(JIS Q 15001)の認証、プライバシーマーク使用許諾を得て、サイバーセキュリティ経営ガイドラインに則り組織を挙げてセキュリティ事故の防止に努めておりますが、何らかのセキュリティ事故が発生し、信用の失墜による取引停止や賠償金の支払いなどが発生した場合、当社の業績に影響が及ぶ可能性があります。また、セキュリティ要求レベルの高い案件を受注する場合には、取引先から特別なセキュリティ設備の設置を要請されることもあり、その設備投資の金額によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(9) 大規模な自然災害の発生や感染症の拡大について
当社は、事業継続マネジメントシステム(ISO 22301)認証を取得し、地震や台風などの自然災害、火災、テロなどの発生、感染症の拡大に備え、事業継続計画(BCP)を整備して被害の最小化を図っておりますが、社員や設備、取引先の被害状況によっては、当社の業績に影響を及ぼす可能性があります。
(10) 賠償責任の発生について
当社が提供した技術サービスの瑕疵が原因でお客様が経済的損害を被った場合に、損害賠償金等を請求されることがあります。当社では、賠償責任保険に加入して備えておりますが、当該保険の免責事項に該当する、ないし支払限度額を超えた損害を発生させた場合には、当社の業績に影響が及ぶことになります。
(11) 売上高計上について
当社では、請負契約案件について、案件毎に費消製造原価を発生主義で認識し、原価進捗率(費消製造原価の見積り総製造原価に対する割合)に応じて売上高を認識し、計上しております。
そのため、売上高の認識には受注総額と総製造原価の見積りが不可欠であり、契約・見積管理や計画管理を厳格に行うことが求められます。この受注総額と総製造原価の見積りを誤った場合には、請負契約案件の期末日時点の適時・適正な売上高計上が阻害される可能性があります。
当社は経営上の主要なリスクについて、毎年取締役会において棚卸を実施し、リスクを評価しております。
上記のリスクの中で、当事業年度末現在において特に重要な影響を与えうる可能性があるのは、需要構造の変化や上位取引先の受注動向の変化、問題プロジェクトの発生、大型プロジェクトの採算であると認識しており、対応をより一層強化してまいります。
配当政策
3【配当政策】
当社では、業績成長を継続して株主に適切な利益還元を図っていくことは当社経営の重要課題のひとつであると認識しており、当面、配当性向につきましては40%を目指してまいります。
剰余金の配当回数は、期末配当の年1回とすることを基本方針としております。なお、当社は、「取締役会の決議により、毎年9月30日を基準日として中間配当を行うことができる。」旨を定款に定めております。
剰余金の配当の決定機関は、期末配当については株主総会、中間配当については取締役会であります。
また、内部留保金につきましては、当社成長の元であるイノベーションの連鎖を断たないための研究開発・製品開発投資と、ビジネスや技術の変化適応力を強化するための社員教育への投資に、より多くを配分する方針としております。
なお、当事業年度に係る剰余金の配当は以下のとおりであります。
決議年月日 |
配当金の総額 (千円) |
1株当たり配当額 (円) |
2024年6月26日 |
443,442 |
87 |
定時株主総会決議 |