2024年3月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 当社グループの業績は、今後起こり得る様々な要因により大きな影響を受ける可能性があります。

 以下に当社グループの事業展開上のリスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。当社グループは、当社グループでコントロールできない外部要因や事業上のリスクとして具体化する可能性は必ずしも高くないと見られる事項も含め、投資家の投資判断上重要と考えられる事項については、積極的に開示しております。当社グループは、これらのリスクが発生する可能性を認識したうえで、その発生の予防および対応に努力する方針ですが、当社グループの経営状況および将来の事業についての判断は、以下の記載事項を慎重に検討したうえで行われる必要があると考えております。また、以下の記載は当社株式への投資に関するリスクを全て網羅するものではありません。

 なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものであります。

 

① 業績の変動について

A 経営成績について

 当社グループは、従来の音声認識のアプリケーションやサービスを販売するビジネスを経て、販売するばかりでなく、顧客集団がそれらを使い顧客集団の目的、例えば、生産性の向上や営業効率・効果を高めるなどの課題を解決する支援サービスの提供をも併せたビジネスを目指しております。それをBSR(Beyond Speech Recognition)と名付け、目標値を超えるビジネス活動と定義して、顧客集団が製品・サービスを使い始めるBSR導入期から、その利用を継続させるBSR展開期を経て、製品・サービスの拡大やそれらを利用する顧客集団の数を増大させるBSR拡大期へとその活動を進めてまいりました。当社グループは2024年3月期にスタートしたBSR拡大期の目標値を2027年3月期に売上高100億円、営業利益25億円に変更し、現行ビジネスの拡大に「仕事における新たな日常を創る」という新規ビジネスへの挑戦の成果を加えることで目標値超えを行ってまいりますが、掲げているビジネス活動の遅延、音声認識市場や外部環境の変化等、当社が想定できない諸般の要因で、当社の事業が計画どおりに進捗しなかった場合には、想定している経営成績に影響する可能性があります。

 

B 四半期毎の業績の変動
 当社グループの音声事業は、プロダクト販売やソリューションビジネスというフロービジネスとサブスクリプションサービスなどのストックビジネスで成り立っています。現状においてストックビジネスの比率が向上しているものの、フロービジネスの出荷および検収が毎年9月および3月に集中する傾向があり、売上比率の関係から当社グループ全体の売上も第2四半期と第4四半期に偏重しております。

 

C 予算編成

 予算は経営推進本部を中心とした予算編成体制を構築し、予実精度の向上に努めております。しかし、音声認識市場の創造を行いながらビジネスを進めており、当社が手掛ける各事業の将来予測が難しい部分があることや、昨今の経済環境の急激な変化等想定できない外部要因による影響を受ける場合があります。よって、各事業で予算と実績の管理を徹底し、予実の乖離が起こらないように努めますが、今後も乖離が発生する可能性があります。なお、当社は予算と実績の乖離が発生した段階で、速やかに業績予想の修正の開示を行います。

 

② 音声認識市場開拓において市場展開から市場拡大が遅延すること

 当社グループは今後の音声認識市場開拓の分野をコールセンター、医療・介護、議事録作成・文字起こし、音声認識エンジンプラットフォーム、モバイル・ビジネスソリューション、金融・保険、製造・物流・小売、建設・不動産等と考えております。「仕事における新たな日常を創る」という新規ビジネスにより、既に市場導入に成功した現行ビジネスを展開から拡大フェーズへとその移行を加速させてまいりますが、新規ビジネスの導入と現行ビジネス自体の展開から拡大フェーズへの移行が想定どおりに行えず、長い時間を要する可能性もあります。

 

③ AI音声認識について

A 新製品及び新技術の開発
 現在、AI音声認識の基礎的な開発は終了し、既に様々な商品を販売しておりますが、今後とも技術の革新と向上が必須です。「音声入力インターフェース」として利用者が「ないと困る」を感じるためには、単なる音声認識精度の向上のみならず、対話機能の高度化、口語体文章認識能力の向上、辞書・言語モデルの広汎化および耐雑音性の強化等の技術開発が必要であり、当該開発に資金や時間が想定以上に必要となった場合、あるいは当社グループが想定する売上計画が達成できなくなり、先行的に支出された研究開発費等の回収が困難になった場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

B AI音声認識に代替する新技術の誕生

 AI音声認識に代わる新しいインターフェース等の誕生、普及により、当社の技術優位性がなくなる等、当社が明確な競争優位性を確保できなくなった場合には、当社グループの経営に影響を与える可能性があります。

 

C 競合他社について
 当社グループの音声事業の競合製品には、国内外の音声認識事業者や各社の音声認識事業部門が開発した製品やそれらを利用した製品等が挙げられます。現時点では当社の製品は、高い認識率、速い認識処理、不特定話者対応、発話スピードへのフレキシブルな対応、発話者のイントネーションやアクセント等の違いへの対応、耐雑音性能等の点で国内外の競合他社の製品と差別化されると考えておりますが、将来的に高い技術力および開発力を有する競合企業が出現する可能性は否定できず、競争の激化によって当社の優位性が失われた場合、また、競合他社が他の有望な音声認識市場を創造開拓し、当社グループが後塵を拝した場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。
 また、当社のAI音声認識が技術的に秀でていたとしても、他の音声認識事業者がアライアンス・パートナー戦略で優位に立った場合、当社のAI音声認識が音声認識市場での高シェアを獲得できない可能性があります。

 

④ 当社の組織について

A 人材の育成について

 当社グループは、現段階では事業運営に適した従業員数および組織形態となっております。しかしながら、業務を従業員個人の技量や経験・ノウハウに依存している部分もあります。そのため、各部署における既存の人材の社外流出・病欠等による長期休暇・欠勤等が生じた場合、当社グループの事業活動に支障が生じ、業績に影響を及ぼす可能性があります。このため、従業員間における技量、ノウハウの共有化を組織として進めるとともに、従業員個人の技量や経験・ノウハウなどの研鑽環境の充実と成長を促す仕組みの活性化を経営の重要課題と捉えています。

 

B 人材の確保について

 当社グループでは優秀で意欲に満ちた魅力ある人材を確保できるよう、自由で創造性に満ちた企業文化の醸成に力を入れておりますが、今後当社グループが必要とする人材が、必要な時期に確保できる保証はなく、人員計画に基づいた採用が行えなかった場合、当社グループの経営に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 法的なリスクについて

A 知的財産権について

 当社グループが第三者の知的財産権を侵害する可能性、および当社グループが今後進出する事業分野において知的財産権を取得できず、さらに第三者から必要なライセンスを取得できない可能性があります。当社の音声認識技術及び音声認識ソリューションは広範囲にわたる技術を利用しており、その技術が第三者の保有する知的財産権を侵害しているという主張が当社に対してなされる可能性が皆無ではなく、当社グループの事業展開に影響を及ぼす可能性があります。

 

B 特有の法的規制・取引慣行について
 現在、当社グループの事業に悪影響を与えるような法的規制はありませんが、今後も制定されないという保証はありません。もし、かかる法的規制が制定されたり、解釈が不明瞭な規制が制定されたりした場合、当社グループの業績に影響を与えたり、事業展開のスピードに悪影響を及ぼす可能性があります。

 

C 情報セキュリティについて
 当社グループは、個人情報を含む重要情報の管理については、プライバシーマークの取得に加え、入退室管理システムやPC操作ログの管理システムを全社に導入し、情報管理を徹底しております。しかしながら、個人情報を含む重要情報が当社グループ関係者や業務提携・委託先などの故意または過失により外部に流出したり、悪用されたりする可能性が皆無ではありません。このようなことが起こった場合、当社グループのサービスが何らかの悪影響を受けたり、ブランドイメージが低下したり、法的紛争に巻き込まれる可能性があります。

 

⑥ 投資・M&A等の事業展開について
 当社グループは、AI音声認識を活用した新サービスの立上げおよびアジアを中心としたグローバルなビジネスの展開を計画しております。そのため、それらの計画を早期に達成するために投資やM&A等は、迅速かつ効率的・効果的手段の一つと考えております。
 そこで当社グループは、投資やM&A等を行う場合においては、対象企業の財務内容や契約関係等について詳細なデューデリジェンスを行うことによって、極力リスクを回避するように努めてまいります。しかし、買収後その他における偶発債務の発生等、未認識の債務が判明する可能性も否定できません。また、投資やM&A等にあたっては、事業環境や競合状況の変化等により当初の事業計画の遂行に支障が生じ、当社グループの事業展開への影響が生じるリスクや、投資を十分に回収できないリスク等も存在しており、結果的に当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性もあります。また国外企業を対象とした場合には、上記のリスク以外にカントリーリスクや為替リスクを被る可能性もあります。

 

⑦ 感染症、自然災害に関するリスク

 新型コロナウイルスなどの感染症で事業活動に何かしらの制限や要請がなされた場合、計画している事業が遅延する可能性があります。また、その影響が長期化する場合や、自然災害による不測の事態が生じた際には、当社グループの業績および財政状態に影響を与える可能性があります。

 

⑧ サイバー攻撃等について

 当社グループの事業活動においては、情報システムの安定運用の重要性が増大しています。サイバー攻撃やコンピュータウイルスへの感染等による情報セキュリティ事故が発生した場合、情報システムの深刻な不具合やデータ改ざんが、当社グループの社会的信用やブランド価値の棄損に繋がり、当社グループの業績と財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

⑨ 配当政策について

 当社は、株主の皆様に対して利益還元を経営の重要事項のひとつと位置付け、当社の事業拡大に向けた戦略的投資や財務体質強化のために必要な内部留保を勘案し、連結配当性向30%(1株当たり当期純利益の30%を1株当たりの配当金とする)を基準として、株主への利益還元に取り組むことを基本方針としております。

 しかしながら、通期業績、財政状態及びその他の状況の変化によっては、配当政策に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3【配当政策】

当社は、株主の皆様に対して利益還元を経営の重要事項のひとつと位置付け、当社の事業拡大に向けた戦略的投資や財務体質強化のために必要な内部留保を勘案し、連結配当性向30%(1株当たり当期純利益の30%を1株当たりの配当金とする)を基準として、株主への利益還元に取り組むことを基本方針としております。

また、自己株式の取得につきましては、株主還元及び資本効率の向上等を目的に機動的かつ弾力的に実施する方針であります。

このような方針のもと、2024年3月期においては1株当たり当期純利益が64.87円となったため当社普通株式1株につき19.50円(連結配当性向30.1%)とさせていただきました

2025年3月期の年間配当金予想につきましては、配当性向30%を基準とし配当をする予定であるものの、その具体的な金額は未定とさせていただきます。

 

 なお、当事業年度に係る剰余金の配当額は以下のとおりであります。

決議年月日

配当金の総額

(千円)

1株当たり配当額

(円)

2024年5月10日

303,029

19.50

取締役会決議

 

当社は、「会社法第459条第1項の規定に基づき、取締役会の決議をもって剰余金の配当等を行うことができる。」旨定款に定めております。