2024年3月期有価証券報告書より

リスク

 

3 【事業等のリスク】

以下、当社グループ事業推進において、リスク要因となる可能性があると考えられる主な事項を記載しております。なお、文中の将来に関する事項は、提出日現在において、当社グループが判断したものであります。

 

(1)競合製品により収益が圧迫される可能性

「eBASE」と一部機能が類似するソフトウェアとしては多数存在し、今後も新たな競合製品がリリースされる可能性が高いと想定しています。当社グループは、これらの競合製品に対し機能面での優位性を保つべく開発を行い、また、ビジネス戦略として「商品情報交換プラットフォームのデファクト化」を推進し、これら競合製品との差別化を行うことによって、「eBASE」の優位性の確保を実現する努力を行っております。しかしながら、当社グループの努力にもかかわらず、例えば競合製品が圧倒的資本により開発された場合等には、当社グループソフトウェアの機能面での優位性を確保することが困難となり、あるいは、価格戦略や営業戦略面で当社グループが遅れをとった場合等には当社グループソフトウェアの機能的差別化の実現によってもそれが収益に結びつかない等、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(2)当社グループビジネスモデルの競合出現の可能性

「商品情報交換プラットフォームのデファクト化」が、当社グループビジネスモデルの原点になっていますが、このビジネスモデル自体を模倣した競合製品が出現する可能性もあります。デファクトビジネスは、市場の占有率が高まれば、そのビジネス強度は必然的に高まります。占有率を高めるために、当社グループは、業界を特定しながら「eBASE」の普及、デファクト化を推進しています。結果的に、ターゲットから外れた業界での「商品情報交換プラットフォームのデファクト化」は未着手となり、競合他社が、当社グループのビジネスモデルと類似サービスを開始することが想定され、当社グループが想定した業界展開に障害が生じる可能性があります。また、デファクトを確保したと思われた業界でも競合製品の出現により逆転現象が生じる可能性もあります。これらのような場合には、当社グループの事業展開や業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(3)インターフェイス開示による競争激化の可能性

当社グループは継続的社会貢献こそが企業の中長期成長を実現できるという経営理念を掲げています。当然の事ながら、当社グループのビジネス戦略である「商品情報交換プラットフォームのデファクト化」も社会貢献を実現します。従って、より社会に貢献できる策を見出すことができれば、当社グループの短期的利益の障害となろうとも、社会貢献できるビジネス戦略への転換を図っていきます。現状でも「eBASE」のインターフェイス開示を行っていますが、これによって、商品情報交換プラットフォームは、低価格「eBASE」を採用し、バックエンドの商品情報データベースシステムは他社製品ということが可能です。この開示をしなければ、当社グループ利益モデルである低価格「eBASE」から高価格「eBASE」へのグレードアップがより確実になりますが、それでは、ユーザー企業の選択肢が狭まりますし、自由競争原理もなくなります。単なる独占ビジネスとなってしまえば、社会に容認されることもなく、中長期的には社会から見放されると考えます。しかしながら、このような考え方による「eBASE」のインターフェイス開示は競合他社との競争が激化する要因でもあり、当社グループ事業の成長を阻害する可能性があります。

 

(4)技術革新による陳腐化の可能性

IT業界においては、日々新しい技術の開発が進められており、この技術革新がIT関連企業のビジネスモデルを崩壊させた例も稀ではありません。当社グループの「商品情報交換プラットフォームのデファクト化」戦略においても、「eBASE」の有するプラットフォーム機能自体が、Microsoft/Windows等のOS機能として提供される可能性もあります。また、商品情報交換手法もXML化によりプラットフォームインディペンデントになる可能性が高いと予想されます。このような技術革新が現実のものとなる前に、当社グループの戦略であるデファクトを実現することが重要であり、そのためには、米国市場と中国市場でのデファクト確保も必要となりますが、決して容易とはいえず、技術革新によって「eBASE」の有するプラットフォーム機能が陳腐化する場合には、当社グループの事業活動の継続自体が影響を受ける可能性があります。

 

(5)業界環境が激変する可能性について

国際紛争によるテロや戦争、金融危機、エネルギー供給障害、地震・台風・水害等の天災及び新型コロナウイルス(COVID-19)等の感染症の影響によるマクロ経済の変化に対しては成す術がありません。あえて言えば、マクロ経済の変化に耐えられるだけの高収益モデルを構築するしかないと言えます。マクロ経済の変化には対応できませんが、企業の安定成長を「社会貢献を目的としたデファクト戦略」で推進しようとしています。自由競争社会において、デファクトビジネスは自由競争を阻害した独占ビジネスが可能です。当社グループは、デファクトを確保し、競争社会での優位を確保しながら社会貢献型ビジネスモデルを構築し、経営環境を安定させようと努力しています。しかし、現状では当社製品のユーザーは主に食品業界、日雑業界、住宅業界等に属しているため、当社の業績は、当該業界の設備投資動向の影響を受ける可能性があります。

 

(6)eBASE稼働環境の変化について

「eBASE」の稼動環境は、現在主流として認知されているMicrosoft製品をプラットフォームとしていますが、そのプラットフォーム自体の仕様が変更された場合や新たなプラットフォームが出現した場合等には、これらに対応した「eBASE」ソフトウェアの仕様の変更や新規移植等の開発のために多大な費用と時間を費やさざるを得ず、当社グループの業績及び今後の事業展開に影響を及ぼす可能性があります。また、そのプラットフォームのライセンスルール、価格等の変更によっても「eBASE」の販売や収益率が影響を受ける可能性があります。

 

(7)開発費の増大について

当社グループは、これまで最大公約数的市場ニーズに対応したソリューションソフトウェアとして「eBASE」を開発することで投資対効果の高いソフトビジネスを構築してきましたが、今後は「eBASE」の多種市場への浸透や顧客別にカスタマイズしたコンテンツマネジメントソフトの開発環境である「ミドルウェアeBASE」の開発提供を目指しており、その実現のために、「ミドルウェアeBASE」を使った受託開発を行う必要があります。必然的に、多くの受託開発型IT企業のように、大幅に見積以上のコストが発生し、「eBASE」ソフトビジネスの利益率が低下する可能性があります。また、当社グループが正しく市場ニーズを認識できない場合には、先行投下した開発費が収益に結びつかず、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(8)ソフトウェア価格の低下について

当社グループは、商品情報交換用の商品データベースプラットフォームとしてデファクト確保を起爆剤として拡販することをビジネスモデルとしていますが、このデファクト確保のために「eBASE」の販売価格を一定程度減額する施策を行う可能性があり、このような場合には販売数量の増加にもかかわらず売上及び利益率の低減が生じる可能性があります。

 

(9)ソフトウェアの契約不適合

当社グループは「eBASE」ソフトウェアに契約不適合が生じないよう十分留意し、また、ソフトウェアの使用許諾契約において、当社グループソフトウェア「eBASE」の契約不適合を原因とした顧客の損害についての賠償責任がないことを明記しておりますが、万一「eBASE」に契約不適合が発見された場合には、その対応に多大なコストが発生するほか、不適合の程度によっては当社グループのビジネスモデル自体の遂行が不可能または著しく困難となる等、当社グループの業績や事業継続そのものに影響を及ぼす可能性があります。

 

(10)知的所有権侵害

「eBASE」は、知的所有権の侵害が無きよう、調査を行った上で開発を行っていますが、知的所有権の認識違いや、知的所有権の主張変更、調査の限界等、様々な理由で、第三者の知的所有権を侵害していないという保証はありません。万一、「eBASE」が第三者の知的所有権を侵害している場合には、損害賠償義務やロイヤリティ支払い等が生じ、あるいは当社グループの社会的信用が低下する等して、当社グループの事業に影響を及ぼす可能性があります。

 

(11)研究開発について

当社グループは、新しい製品や技術・サービスの開発のために、継続的に研究開発投資を行っております。しかし、市場のニーズに合致し、開発投資に見合った付加価値を生む魅力ある製品を継続的に開発できる保証はありません。その結果、当社グループの財政状態及び経営成績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(12)情報管理について

当社グループは、業務受託やシステム開発において入手する顧客の機密情報や個人情報の管理を徹底することはもとより、当社グループ自体の保有する「商材えびす」のコンテンツデータ及び内部情報、機密情報やノウハウの社外流出を防止することを経営の重要課題のひとつと位置付けております。そのため、情報管理については管理部を責任部門として、規程を整備し、取扱方法について、全社員に徹底した社内啓発と教育を行い、情報管理意識向上に努めております。しかしながら、不正アクセスその他により、万が一、情報漏洩が発生した場合、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼすだけでなく、当社グループの信用失墜につながる可能性があります。

 

(13)システム障害リスクについて

事業の拡大及び効率化の維持対策を進めた結果、当社グループの事業はコンピューターネットワークシステムに業務の多くを依存しております。そのため、セキュリティの強化、ハードウェアの二重化等多くのトラブル対策を講じております。しかしながら、これらの対策にもかかわらず、人為的過誤、自然災害等によるトラブルが発生した場合には、当社グループが提供するサービスに対する信頼性の低下を招く等、当社グループの業績及び財務状況に悪影響を及ぼす可能性があります。

 

(14)受託開発案件の不採算リスクについて

当社グループでは、「eBASE」を使ったカスタマイズ開発時には、原則として請負契約を締結しており、請負契約による受託開発の場合、受注時に顧客の諸要件を確認し、作業工程及び外注金額等を検討した後、当社グループより見積金額及び納期等を顧客に提示し契約締結に至ります。受注段階での見積精度の向上に努め、開発段階においてはプロジェクト管理及び品質管理の強化に努めることにより、不採算案件の発生防止に注力しております。しかしながら、受注時に採算性が見込まれるプロジェクトであっても、新技術仕様での開発であるものや開発進行途中で想定外の仕様変更・追加が発生する場合があり、作業工程が当初の見積以上に増加すること等により、最終的に案件が不採算化する可能性があります。

 

(15)業績の季節変動について

当社グループが行うeBASE事業は、顧客(企業)から見ればシステム導入に伴う投資であり、各顧客(各企業)においてシステム投資は年度予算化されているため、多くの企業では決算が3月及び9月である事から3月末及び9月末に売上が集中する傾向にあります。しかしながら顧客(企業)の検収時期が遅延した場合、当社グループの業績に影響を与える可能性があります。従いまして現状では当社グループの経営成績を分析するに当たり、このような季節性を考慮する必要があります。

なお、当連結会計年度における四半期別の売上高及び営業利益の構成は、次のとおりであります。

 

第1四半期

第2四半期

第3四半期

第4四半期

通期

売上高(千円)

1,082,694

1,288,755

1,226,191

1,594,480

5,192,122

構成比(%)

20.9

24.8

23.6

30.7

100.0

営業利益(千円)

227,264

401,229

352,957

669,811

1,651,262

構成比(%)

13.8

24.3

21.4

40.6

100.0

 

 

(16)法的規制について

当社グループが行うeBASE-PLUS事業は、常用雇用型のIT開発アウトソーシングビジネスについて、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」(以下、「労働者派遣法」という。)による規制を受けております。当社グループは、関係法令を遵守して事業を運営しておりますが、労働者派遣法に定める派遣事業主としての欠格事由に該当もしくは法令に違反する事項が発生した場合には、事業の停止や派遣事業者の許可の取り消しをされる可能性があり、その場合には事業を営むことが出来なくなる可能性があります。現時点において認識している限りでは、これらの法令に定める欠格事由に該当する事実はありません。しかしながら将来、何らかの理由により許認可等の取消が発生した場合には、事業運営に大きな支障をきたすとともに、財政状態及び経営成績に大きな影響を与える可能性があります。また、労働者派遣法をはじめとする関係諸法令は継続的に見直しが行われており、当社グループの事業に対して著しく不利となる改正が行われた場合は、財政状態及び経営成績に影響を与える可能性があります。

(許認可等の状況)

許認可等の名称

有効期限

許認可等の番号

規制法令

所轄官庁等

取消事由等

労働者派遣事業の許可

2020年5月1日から2025年4月30日まで

派27-302549

労働者派遣法

厚生労働省

労働者派遣法第6条に定める欠格事由に抵触した場合

 

 

 

(17)人的資源について

国際競争の激化や急速な少子高齢化による労働人口の減少、デジタルトランスフォーメーションの進展により、IT人財の獲得競争は厳しさを増しております。当社グループの成長と業績は、人材に大きく依存しております。高度な能力を有する技術者の採用・育成が重要な経営課題となっております。そのため、当社グループでは、経営戦略に基づいた人材の採用・育成のため、中長期視点での新卒採用・第二新卒等のポテンシャル層や即戦力となるキャリア層等の採用を実施しております。また、より高度なスキルを習得できるよう、研修・制度の充実を図る等、IT人材の育成施策を展開しております。人材の採用・育成または既存社員の流出を防止できない場合は、当社グループのeBASE-PLUS事業の成長と業績に大きく影響する可能性があります。

 

(18)M&Aによる事業拡大について

当社グループは、既存事業の強化、事業規模の拡大に寄与すると判断出来、且つ、リスク検討の結果が低いと判断される場合等には、M&Aを有効に活用していく方針であります。M&Aにおいては、対象となる企業の財務内容、契約関係及び事業の状況等について事前にデューデリジェンスを実施し、十分にリスク検討をしておりますが、対象企業における偶発債務の発生や未認識債務の判明等事前の調査によっても把握できなかった問題が生じた場合や、事業展開が計画通りに進まない場合、投下資本の回収が困難になる等、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、M&Aにより、当社グループが従来行っていない新規事業が加わる際には、当該事業固有のリスク要因が加わる可能性があります。

 

(19)保有有価証券における価格下落のリスクについて

当社グループでは、資産運用上の効率性に着目し、余剰資金の一部を市場で流通している債券(社債)やファンドへの投資で運用しております。余剰資金の運用にあたっては、安全性の高いものを選択しておりますが、急激な市場金利や為替の変動、発行主体の急激な業績悪化により、保有する有価証券の市場価額が著しく下落した場合、減損損失が発生し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(20)環境(気候変動)に係るリスク

近年、気候変動に伴う温室効果ガスの排出抑制等の取り組みは世界中で進みつつあり、経済・社会・環境に大きな影響を及ぼしています。当社グループにおいては、「不確実性を高める将来的な要素」と捉え、企業の社会的責任として温室効果ガス削減や省エネルギー化に取り組む等、気候変動リスクへの対応を進めております。具体的な運営についてはサステナビリティ推進に関する委員会を設置し、サステナビリティ委員会による活動推進、OA用紙・電力使用量の削減等やサステナビリティに関する方針の策定・見直し等に取り組んでおります。しかしながら、こうした取組みが不十分である、もしくは不十分とみなされた場合、社会的信用の低下に伴う事業機会の逸失や収益の減少等、当社グループの企業価値向上、及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(21)感染症への対応

ヒト・モノ・カネ・情報のグローバル化の進展に伴い、感染症のリスクは確実に増加しております。現在、収束しました新型コロナウイルス感染症によって、そのリスクは顕在化いたしました。今後も新型コロナウイルス感染症に限らず、様々な感染症リスクが顕在化し、拡大した場合、経済の停滞による顧客企業のIT投資への中止や先送りが生じれば、当社グループの事業運営及び業績に甚大な影響を与える可能性があります。コロナ禍以降、ニューノーマルにより変化した顧客ニーズの把握に対して、適切なサービスが提供できない場合や、緊急事態宣言等の発令、また、当社グループ内における感染者や重篤者の発生等によって事業活動の停滞を余儀なくされる場合には、業績へ影響を及ぼす可能性があります。

 

(22)新規事業モデルの進出について(BtoBtoCモデル)

当社グループが行うeBASE事業は、自社パッケージソフトウェアの販売・サポート、業務受託やシステム開発を主たる事業としていますが、既存事業モデル(BtoB)の強化・拡大の他に、更なる成長のため、新規事業モデル(BtoBtoC)の進出を積極的に展開する方針であります。しかしながら、新規事業モデルの展開は大きな先行投資を伴うことがあり、今後、当社グループが展開する新規事業モデルが計画通りに進捗しない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

配当政策

3 【配当政策】

当社は、株主に対する利益還元を重要な経営課題として、安定的な配当の継続と利益還元、企業基盤の強化、今後の事業の拡充を勘案し利益配当を行うこと、また、中長期的な事業展開を勘案し、内部留保とのバランスを考慮しつつ、配当性向を総合的に勘案し決定することを基本方針としております。

当社の剰余金の配当は、期末配当の年1回を基本的な方針としております。剰余金の配当の決定については、「当会社は、剰余金の配当等会社法第459条第1項各号に定める事項については、法令に別段の定めのある場合を除き、取締役会の決議によって定めることができる。」旨定款に定めております。

当事業年度の剰余金の配当につきましては、株主の皆様への利益還元の更なる充実を期して中長期に株式保有してくださる皆様のご期待にお応えするため、親会社株主に帰属する当期純利益ベースでの配当性向を「32.5%を基準に算出した額及び直近の配当金予想額のいずれか高い方」とする方針を公表しておりましたが、2024年3月31日を基準日とする期末配当金は配当性向を40.0%を基準として算出した額まで引き上げ、普通配当を1株当たり10円10銭(配当金総額459百万円)にて実施することを決定いたしました。

また、2025年3月期の配当予想に関しましては、株主の皆様への更なる利益還元の充実を期して、配当性向を「32.5%を基準に算出した額」から「50.0%を基準に算出した額」へ引き上げ、配当方針を「50.0%を基準に算出した額と直近の配当金予想額の高い方」といたします。

なお、当社は会社法第454条第5項に規定する中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

 

(注) 基準日が当期に属する剰余金の配当の取締役会の決議年月日は2024年5月27日であります。