2025年4月期有価証券報告書より

リスク

3【事業等のリスク】

 有価証券報告書に記載した事業の状況、経理の状況等に関する事項のうち、経営者が連結会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を与える可能性があると認識している主要なリスクは、事業上のリスクとして具体化する可能性は必ずしも高くないと見られる事項も含め、以下のとおりであります。当社グループは、投資家の投資判断上重要と考えられる事項については、投資家及び株主に対する情報開示の観点から積極的に開示しており、これらのリスクが発生する可能性を認識した上でその発生の予防及び対応に努力する方針ですが、リスク要因が網羅されているわけではありません。

また、以下の記載のうち将来に関する事項は、本書提出日現在において判断したものであり、現時点では想定できないリスクが発生する可能性もあります。本株式に対する投資判断は、これらの事項も十分踏まえた上で、慎重にご検討ください。

 

(1)市場環境リスク

① 景気変動について

当社グループの主要事業である通信・インターネット関連サービスは、比較的景気変動の影響を受けにくいビジネスモデルとなっております。一方で、当社グループ売上の大きなシェアを占めるギガプライズが展開する集合住宅向けISPサービスは、主に不動産業界向けにサービスを提供しており、当該業界は、国内の景気動向、金利動向、地価動向等の影響を大きく受けるため、不況による国内不動産市況の大幅な悪化が起きた場合、提供サービスの新規受注の減少等により、当社グループの業績が影響を受ける可能性があります。また、主にフルスピード、株式会社フォーイットがサービスを展開するインターネット広告業界も、国内景気の変動を大きく受ける傾向があり、急激に国内景気が悪化した場合、企業収益の大幅悪化に伴い広告需要が減退し、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

② 技術革新について

当社グループが主たる事業を展開する通信・インターネット関連市場は技術革新の早い業界であり、日々新しい技術が生まれております。5G/web3/AIなどの最新技術は、これまでの既存の産業構造の形を変えてしまう可能性を持っており、当社グループもこれらの技術へ深くかかわるとともに、既存事業の着実な成長と利益創出を行うことで安定的な事業を運用し、同時にこれら最新技術の既存事業へのネガティブな影響も考慮しながら、これら最新技術を利用した今後のビジネスモデルの構築を推進しております。当社グループでは、インターネットインフラを中心に、これらの技術革新に対応するため、専門の知識を持った従業員を採用し、研究開発に努めております。また、長年のインターネット接続サービスの提供で培ってきたネットワーク技術やノウハウを活用することで、web3領域においてレイヤ1ブロックチェーンにおいて世界でも有数のノード数を運用するなど、一定の成果を上げております。しかし、何らかの理由で当社グループにおいて対応が困難であるほどの技術の変化や、多大な投資を必要とする技術革新が起こった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 法的規制について

当社及び当社子会社である株式会社ドリーム・トレイン・インターネット、ギガプライズ及び株式会社ベッコアメ・インターネット等は、いずれも電気通信事業者として総務省に届出を行っており、電気通信事業法及び関連する省令等を遵守しております。一方で、インターネット上の誹謗中傷の厳罰化や法的な手続の明確化の検討、電気通信事業者と消費者との契約ルールの明確化、インターネット上のプライバシー保護の観点から個人情報保護法の改正や様々なガイドラインや規制が実施されるなど、インターネットを取り巻く法令等の整備は日々進んでおります。当社グループも業界団体と連携しながら随時対応に努めておりますが、今後新たにインターネット関連業者を対象とした法的規制等が制定された場合、またはこれらの法令に違反した場合に、当社グループの業務が一部制約を受け、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

(2)ビジネス・戦略リスク

① 競争リスクについて

当社グループのインターネット・通信関連事業は、ネットワークインフラ及び技術力を利用してサービスを提供することを特徴としており、事業開始時に相応の設備投資を必要とするため、比較的参入障壁が高い事業に属していると認識しております。また、インターネット広告事業におきましても、業界知見、人材・ノウハウ等の蓄積、独自のアフィリエイトプラットフォーム「afb」等が当社グループの競争力の源泉となっております。しかしながら、今後登場する可能性がある他社の競合サービスに対して技術的、価格的に優位性を保持しうる保証はありません。また、当社グループの事業である、ISP事業、データセンター事業、MVNO・MVNE事業、クラウドコンピューティング関連事業、インターネット広告事業等において、資本力、マーケティング力において、当社より優れ、より高い知名度や専門性を有する大手企業等が存在しております。これらの競合に相対するため、当社グループは商品・サービスの差別化を図るべく諸々の施策を展開しております。しかしながら、競争の激化やその対策のためのコスト負担等が大幅に増えた場合には、収益性や販売力が低下し、当社グループの事業展開及び業績に影響を与える可能性があります。

② 依存リスクについて

(調達に関する依存)

当社グループが提供する通信・インターネット関連サービスは、主にNTTドコモビジネス株式会社、株式会社NTTドコモ、NTT東日本株式会社、NTT西日本株式会社が提供する通信回線を利用してサービスを提供しております。今後、これらの企業の経営方針変更等により、サービスの提供条件や通信回線の仕入価格上昇等、取引条件の悪化等があった場合、また大規模な障害が生じた場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、インターネット広告についても、取引形態の性格上、Google LLC、LINEヤフー株式会社、Meta Platforms,Inc.からの仕入の依存度が高くなっております。これは、現状の広告市場が上記企業による寡占状態にあることに起因するものでありますが、これらの企業の事業方針の変更等により、係る取引が継続されない場合又は取引条件が変更された場合には、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

(特定事業・販売先に関する依存)

当社グループのインターネット広告関連事業においては、リスティング広告やアフィリエイトプラットフォーム「afb」等が売上の大部分を占めております。上記事業等に何らかの問題が生じた場合、当社グループの業績に重大な影響を及ぼす可能性があります。また、集合住宅向けISPサービス事業における主なサービス提供先の売上高合計は、当社グループ連結売上高の約3割を占めております。当該サービス提供先の経営方針の変更等により、想定を超えるサービス提供価格の下落、競合企業等の進出によるサービス提供数の減少や取引停止等が発生した場合には、当社グループの業績及び財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。

 

(設備に関する依存)

当社グループは、ネットワーク回線及びデータセンターの設備の一部を自社で保有することなく、NTTドコモビジネス株式会社等他社の回線及び施設内に自社の仕様に合わせた機器を設置し、顧客にサービスを提供する形態により事業展開しております。当社グループといたしましては、ネットワーク回線及びデータセンターの設備所有者との間でサービス提供契約及び賃貸借契約を締結し、契約期間満了後も賃貸借契約の継続を予定しております。しかしながら、その可能性は低いと判断しておりますが、所有者が何らかの理由で、契約の継続を全部もしくは一部拒絶した場合又は契約内容の変更等を求めてきた場合には、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

 

③ 調達コストについて

インターネット上では帯域を多く利用するリッチコンテンツや、IoTのための通信が急激に増加しており、流通データ量が急激に増えております。また、在宅勤務・テレビ会議等の利用が多くなったことで、職場だけではなく家庭での通信に対する需要が増えたことにより、インターネット業界全体で、通信回線設備の需給バランスの不安定化や、帯域の不足の可能性が指摘されております。当社では、回線・帯域調達の効率化やデータの最適化を含めた高効率のネットワーク運用を行うなどの努力を行い、また、長年培ってきた技術力を最大限に活かし、これらの環境に対応すべく努めております。しかしながら、通信速度等のサービス品質を維持するための新規回線や帯域の確保増加等により原価が上昇した場合や、設備メーカーの政治的・経済的な国際競争の影響や半導体不足、為替の影響等による設備機器の価格高騰を含め、更なる設備供給不足や、巨額の設備投資が必要となるような技術革新が進んだ場合には、これらの要因により、当社の事業運営及び拡大が制約され、調達の遅れやコスト増加により、機会損失や採算への影響が生じる可能性があります。

④ 事業投資リスクについて

当社グループは、顧客ニーズに即したサービスの提供を行うために、新規に事業を立ち上げることがあります。新たに手掛けた事業を早期に一定の事業規模にまで成長させ、市場における地位を確立するため、必要に応じ人材投資、システム投資、広告投資等を積極的に行うことがありますが、これらの投資が必ずしも収益に結びつかない場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。また、自社での新規事業立ち上げに加え、早期の規模拡大、事業リソースの補完及び強化等を目的に企業買収を実施する場合があります。対象となる企業の事業面や法務面、財務面についてデューデリジェンスを実施し、事前にリスクの把握を行うよう努めておりますが、買収時には一定規模ののれんを計上することもあり、買収後に不測の債務などが発生した場合や経営環境、事業環境の変化によって当初想定したグループシナジーによる成果が十分に得られなかった場合、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

⑤ 知的財産権について

当社グループでは特許として登録される可能性のある独自技術については特許出願を行うことにより権利化を図るとともに、第三者の知的財産権を侵害する事態を可能な限り回避するべく努力しております。しかしながら、当社グループが事業の展開を進めている各国において成立している特許権の全てを検証し、さらに将来的にどのような特許権が成立するかを正確に把握することは困難です。このため、当社グループの事業に現在利用されている技術と抵触関係をなす特許権などの知的財産権を第三者が既に取得している可能性や将来的に当社グループの事業における必須技術と抵触関係をなす特許権などの知的財産権が第三者に取得される可能性を完全に否定することはできず、そのような可能性が現実化した場合には、当該特許権の知的財産権に関する侵害訴訟の結果として当社グループに損害賠償義務が課せられたり、当社グループの事業の全部あるいは一部が差し止められて継続できなくなる可能性があります。

⑥ 人材確保・育成について

当社グループが今後も継続して成長していくためには、優秀な人材を確保し、育成していくことが重要であると考えており、積極的に採用活動を進めております。しかしながら、インターネット市場の急速な拡大で専門的知識や技術を有する人材が恒常的に不足しており、今後、当社グループが必要とする数の人材を適時に確保できる保証はなく、人員計画に基づいた採用が行えなかった場合、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社及び当社子会社は、事業規模の拡大や多様化に対応するべく、人員増強及び内部管理体制の充実を図り、同時に福利厚生の充実、教育体制の確立により人員の社外流出の防止にも努めていく方針であります。しかし、人材等の拡充が予定どおり進まなかった場合や予想外の人員の社外流出が生じた場合には業務運営に支障をきたし、当社グループの業績に影響を及ぼす可能性があります。

(3)財務リスク

① 資金調達リスクについて

当社グループでは、ネットワーク並びにサーバ設備、ソフトウエア、システム等の開発、調達及び新規事業・M&A等に投資し、当社グループのサービスの更なる差別化を推進し事業拡大を図る計画です。しかしながら、業績や財務悪化等により、計画を実行する上で必要な投資資金の確保が困難な場合、事業機会を逸し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。また、当社グループでは事業拡大に伴う効率的な資金調達の手段として、金融機関からの借入金を積極的に活用しておりますが、当社の金融機関からの借入金の一部には財務制限条項が付されており、その財務制限条項に抵触し、当該借入金の弁済を求められた場合、当社の財政状態に重要な影響を及ぼす可能性があります。また、急激な金利上昇により当社グループの経営成績及び財政状態が影響を受ける可能性があります。

② 在庫リスクについて

当社グループでは、主に集合住宅向けISPサービスにおいて、受注見込み等に基づき必要数量の機器を確保し、原材料及び貯蔵品として計上しております。今後受注見込みの大幅な落ち込み、または技術革新による保有機器の陳腐化等が生じた場合には、棚卸資産の評価額が下落し、当社グループの業績に重要な影響を及ぼす可能性があります。

(4)ハザードリスク

① 情報セキュリティについて

当社グループの主要事業である通信・インターネット関連事業において、そのサーバ群には、顧客の通信行為にかかる通信記録やサービス利用者の個人情報がデータとして蓄積されております。また、インターネット広告事業においても会員等の個人情報(氏名、メールアドレス、住所等)を取得しております。このため、当社グループ各社は、個人情報保護法に定める個人情報取扱事業者に該当し、個人情報の取扱いについての規制の対象となっております。当社グループでは、これら情報の重要性に鑑み、情報保護に関する各種規程を定め、技術的措置、従業員教育、外部委託先との機密保持契約を締結するなど厳格に運用しており、プライバシーポリシー等を定めて当社グループ各社のサイトに提示しております。現時点までにおいて、情報管理に関する重大な事故やトラブルの発生は認識しておりませんが、これら情報等が何らかの形で外部漏洩したり、不正使用されたりする可能性が完全に排除されておらず、これらの事態に備え個人情報漏洩に対応する保険に加入しておりますが、すべての損失を完全に補填するものではありません。そのため、これらの事態が起こった場合、とりわけ通信記録の漏洩が発生した場合には、監督官庁より業務改善命令が発せられる可能性もあり、当社グループへの損害賠償請求や当社グループの信用の低下等によって当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

② システムトラブルについて

 当社グループの使用するネットワーク回線及びデータセンターは、主にNTTドコモビジネス株式会社、株式会社NTTドコモ及び三菱電機デジタルイノベーション株式会社等からサービス提供契約及び賃貸借契約を締結して提供を受けております。当該データセンターは、登録電気通信事業者として基準とされている迂回経路を確保した冗長構成、大規模地震に耐えられる耐震構造、消火設備、停電時に備えたバックアップ電源等、24時間365日安定した運用ができるよう最大限の業務継続対策が講じられております。また、インターネット広告事業においては、リスティング広告、アフィリエイト広告、ディスプレイ型広告等の提供をインターネット環境において行っております。そのため、当社はサービスの安定供給を図るためのセキュリティ対策と、コンピュータウィルスやハッカーの侵入等を回避するために必要と思われる対策を講じております。しかし、これらの対策を講じているものの、サイバーアタック、システム又はハードウェアの不具合、電力会社の電力不足や大規模停電、想定したレベルをはるかに超える地震、台風、洪水等の自然災害、戦争、テロ、事故等、予測不可能な事態によってシステム障害が発生した場合には一定期間サービスの停止を余儀なくされる可能性があり、当社グループの信用が毀損、損害賠償請求等が発生し、当社グループの事業及び業績に影響を及ぼす可能性があります。

配当政策

3【配当政策】

当社は、中長期的な観点による事業拡大及び企業成長によって株主の期待に応えることを重視しており、そのための内部留保を拡充しそれを投資財源とすることで、独自技術の開発や今後の事業拡大を行っていくことを基本方針としております。一方で、株主への利益還元を継続的に実施していくことも重要であると認識しております。

そして、剰余金の配当につきましては、期末配当の年1回を基本的な方針としております。当社は投資・還元・財務体質維持のバランスを考慮し、配当性向等も総合的に勘案し、適正に利益還元を実施してまいりたいと考えております。

また、当社は剰余金の配当を会社法第459条第1項の規定に基づき取締役会の決議により行う旨を定款に定めております。なお、当社は取締役会の決議により、毎年10月31日を基準日として、中間配当を行うことができる旨を定款に定めております。

当事業年度については上記方針に基づき、1株当たり30円の期末配当を決議いたしました。

決議年月日

配当金の総額

(百万円)

1株当たり配当額

(円)

2025年6月13日

653

30.0

取締役会決議